・ヨハネ・パウロ2世狙撃事件から40年ー憎しみに愛と祈りが勝った!

(2021.5.13 バチカン放送 アレッサンドロ・ジソッティ

 1981年5月13日にバチカンの聖ペトロ広場で教皇ヨハネ・パウロ2世が狙撃される衝撃的な事件が起きてから40年。憎しみに愛と祈りが勝った出来事として、世界中の人々が共有する記憶となっている。教皇フランシスコの当時の回想とともに、この事件を振り返る。

  ある出来事に結びついて、歴史書の中だけでなく、私たちの人生のページに消えない記憶として刻まれた日付、というものがある。その刻印はあまりにも深く、長い年月が過ぎた後も、そのニュースを聞いた時、自分がどこにいて何をしていたかをはっきりよみがえらせる、そうした日付である。

 1981年5月13日、それは間違いなく、こうした日付の一つだ。あの日、信じがたい、想像を超えた出来事が現実となって飛び込んで来た。聖ペトロ広場で教皇が撃たれたのだ。

 40年たった今も、あの場面の一つひとつに戦慄し、あの春の午後に響いた騒音を再び聴く思いがする。

 午後5時19分、ヨハネ・パウロ2世は、水曜日の一般謁見に訪れた信者たちの間をいつものようにめぐっていた。教皇は小さな子どもを抱き上げ、そして母親に返した。その直後、鈍い発砲音が聞こえ、さらにもう一度、それが続いた。教皇は腹部を撃たれ、幌なしのジープの上に崩れ落ちた。それは大きな動揺の瞬間だった。人々は愕然とした。最初のうちは何も理解できず、それが本当に起きたことだとは、信じられなかった。

 巡礼者の多くは泣き出した。その場にひざまずく者もたくさんいた。そして、人々はロザリオで祈り始めた。そのロザリオは教皇に祝別してもらおうと、皆が手にしていたものだった。中には、64年前の5月13日、ファティマの牧童に聖母が現れたことを思い出す人もいた。

 「Totus tuus, Maria! (すべてはあなたものです、マリアよ!)」。聖母への愛で知られる教皇は、こうして神の民によっておとめマリアに託された。後に、ヨハネ・パウロ2世は、自身が死を免れたことは、まさに聖母の取り次ぎのおかげであったと述懐している。一つの手が命を奪おうとした時、より力ある別の手が弾丸を反らし、教皇の命を救った。

 あの5月13日の午後、バチカンから始まった祈りの輪は、急速に世界に広がっていった。教皇が生死の闘いにあると知るやいなや、無数の人々が自発的に祈り始めた。

 祈る人々の中に、ブエノスアイレス郊外サン・ミゲルのサン・ホセ神学院の院長、後に教皇フランシスコとなるホルヘ・マリオ・ベルゴリオ神父の姿もあった。ベルゴリオ神父もまた、この事件に衝撃を受けていた。教皇フランシスコは、今日、あの5月13日をこのように振り返られている。

 「その時、駐アルゼンチン教皇大使館にいた。昼食前の時間で、ウバルド・カラブレージ教皇大使とベネズエラ出身のウガルデ神父が共にいた。そこへ、当時、同大使館秘書だったクラウディオ・マリア・チェッリ師がこの恐ろしい知らせをもたらした」と。

 信者たちの祈りは絶え間なく、それはヨハネ・パウロ2世が危機を脱するまで続けられた。この信者たちの祈りはある意味、その後も、とりわけ苦しみや病気の日々に寄り添いながら、教皇の生涯の終わりの日まで、すなわちもう一つの春、2005年の春まで、続いていったと言える。

 事件直後の動揺のうちにも、バチカン放送局の解説者、ベネデット・ナルダッチが冷静をもってこの出来事を伝えることができた意義は大きい。水曜恒例の一般謁見が、今や前例のない状況に急展開したことを、彼は中継でこのように伝えた。

 「これはバチカンにおける初めてのテロと言えるでしょう。常に愛と調和と平和のメッセージを発信してきたこの市国でテロが発生しました」。

 実際、あの犯罪行為が解き放った憎悪は、終末的と言えるほど恐ろしいものであった。しかし、それよりはるかに大きかったのは、愛と慈しみの力だった。愛と慈しみは、輝かしく、同時に神秘的な形で、ヨハネ・パウロ2世の残りの生涯を導いていった。

 事件発生から4日後、ヨハネ・パウロ2世が入院先のジェメッリ総合病院の病室からレジーナ・チェリの祈りを唱えた時、慈しみは驚くべき形で示された。教皇は、狙撃者を「私を撃った兄弟」と呼び、赦しを約束されたのである。教皇は犯人を「兄弟」と呼んだのである。

 たとえ地上で何が起きても、天に記されているこの普遍的な兄弟愛は、もう一つの忘れがたい日、1983年12月27日に再びクローズアップされることになる。この日、ヨハネ・パウロ2世は、ローマのレビッビア刑務所に狙撃犯アリ・アジャを訪ねた。教皇はそれを公に行った。これを見たある人は言った。「教皇はご自分の命を狙った者の命を救おうとされたのだ」と。

 ヨハネ・パウロ2世は面会後に、こう言われた。「私たちは人間同士、兄弟同士として出会いました。なぜなら、私たちは皆兄弟だからです。私たちの人生のすべての出来事は、『神は私たちの御父だ』という事実から来る兄弟愛を、証明するものでなくてはなりません」。

 教皇フランシスコは、今日、この同じ兄弟愛を、人類の未来において進むべき唯一の道として示しておられる。

2021年5月24日

・中国など14か国で深刻な信教の自由の侵害ー米信教の自由委員会など報告書発表(BW)

The USCIRF Report 世界の信教の自由の侵害状況に関する二つの報告書が、ここ数日相次いで発表され、中国など多くの国で信教の自由が侵されていることが改めて浮き彫りになった。

 米国の国際信教の自由委員会(USCIRF)は、国内法に準拠した超党派の米政府の委員会で、米大統領と二大政党の議会指導者によって任命された委員で構成されている。

 その2021年年次報告書は、中国など14か国で深刻な信教の自由への侵害がされているとして、「特に懸念される国」(CPC)に指定することを米国務省に提言している。

 CPCには、2020年12月に国務省によってすでにCPCとして指定されている中国、ミャンマー、エリトリア、イラン、ナイジェリア、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの10か国に、インド、ロシア、シリア、ベトナムの4か国だ。

 同報告書では、また12か国を国務省の特別監視リスト(SWL)に信教の自由の侵害国に載せることも求めている。このうちキューバとニカラグアは既にリスに載せられているが、さらにアフガニスタン、アルジェリア、アゼルバイジャン、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、マレーシア、トルコ、ウズベキスタンの10か国が加わった。

 一方で、2020年の年次報告書でSWLへの掲載が適当、とされていたバーレーン、中央アフリカ共和国(CAR)、スーダンの3か国は、信教の自由を巡る状況に改善がみられるとして、対象から外された。

 また報告書では、パキスタンの信教の自由を巡る状況について「悪化を続けている」とし、「パキスタン政府は、非国家主体による虐待から、宗教的少数派を保護できていない。アフマディー教徒、シーア派イスラム教徒、ヒンズー教徒、キリスト教徒、シーク教徒などの少数派を標的にした殺害、冒涜事件、強制改宗、ヘイトスピーチが急増している」と指摘している。

 報告書は、バイデン政権に対し、世界で最悪の信教の自由の侵害国の一つとしてのロシアに対する姿勢を強めるよう求め、次のように説明している。 「2020年に、ロシアの信教の自由の状況は悪化した。ロシア政府は引き続き、少数派宗教関係者を罰金、拘留、および刑事告発の標的にしたうえ、ロシアの法律は、用語を適切に定義しないまま、『過激主義』の犯罪と決めつけ、広範囲の非暴力の宗教活動を司法当局が訴追するのを可能にしている」。

 さらに、ロシアでは、ロシア正教会に対する批判が「名誉棄損」として扱われることがしばしばあり、同国を「パキスタン、イラクに次ぐ、名誉棄損を犯罪とする件数の顕著な国」とし、ソーシャル・メディアに関連する名誉棄損の犯罪扱い件数で群を抜いている、と指摘。新興宗教の「エホバの証人」への苛烈な迫害、米国に本拠を置くサイエントロジーの信者に対しても、否定声明に署名を迫るなどの圧力がかけられている、としている。

 中国に関しては、矯正収容所での悪名高い思想改造を取り上げたほか、中国当局が「何百万のイスラム教徒について、長いあごひげを生やす、飲酒を拒むなどを「宗教的過激主義」の証拠と見なし、収容所送りにしている、と指摘。逮捕・拘禁された経験のある複数の人物が「拷問、性的暴行、不妊手術の強制などの虐待を受けた」と証言している、としたうえで、専門家は、中国政府が新疆ウイグル自治区で進めている、こうしたイスラム教徒に対する行為が国際法上の”ジェノサイド”になり得る、との懸念を表明している、としている。また、新疆ウイグル自治区の収容所や刑務所、工場、工業団地でウイグル人たちを強制労働させていること、ウイグル人たちの宗教施設の閉鎖と破壊が継続していること、についても指摘している。

 さらに、中国政府・共産党は、このようなウイグル人イスラム教徒に対する迫害だけでなく、「チベット仏教徒に対するの広範な統制と抑圧」がなされているほか、キリスト教についても言及。「カトリックの司教の任命に関して、バチカンと中国政府が合意したにもかかわらず、中国当局は、カトリック”地下教会”の司教や司祭、信徒に脅迫、拘禁、拷問を続けている。これは、プロテスタントの家庭教会に対する行為と同様だ」と述べ、キリスト教会の聖堂、十字架、さらに仏教や道教の寺院や像の破壊なども進んでいる、とBitter Winterの報道を引用している。

 こうした中国における信教の自由の深刻な侵害の”根拠”となっている法・規則についても「2018年に改訂された宗教問題に関する規則が、すべての”無許可”の宗教的活動を効果的に禁止し、宗教活動の管理について地方政府の役割を拡大している。また中国刑法第300条によって、法輪功や全能神教会など特定の宗教団体に属するだけで信徒たちは3年から7年の懲役、または当局がより深刻とみなす場合は終身刑に処せられる」と説明した。

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Examples of persecution from ChinaAid’s report

Examples of persecution from ChinaAid’s report.

 USCIRFの年次報告書と前後して、国際NGOのChinaAidが発表した2020年度迫害年次報告では、中国政府が管理・統制下に置いているプロテスタントの「三自愛国教会」に属さない「家庭教会」に対する迫害や、バチカンと中国の司教任命に関する合意後の現在も続く、政府管理・統制下にある「中国天主愛国協会」への参加を拒否する”地下教会”の司教、司祭、信徒に対する迫害について、その詳細を説明している。そして、現在の新型コロナウイルスの大感染に対する措置の一環という名目での、信徒たちへの監視体制の強化が、迫害をさらに悪化させる要因となっている、と指摘した。

 またChinaAidのこの報告書は、「2020年が、習近平がキリスト教を中国化するための5カ年計画の3年目に当たっていた」とし、プロテスタント教会では、政府管理の「三自愛国教会」に加盟している教会の中にも脅迫を受け、説教や祈りなどに「愛国的で、共産党を讃える内容を含めることが、当局から強要されている、三自教会への参加を拒む「家庭教会」に対する迫害はますますひどくなり、主要な指導者はすべて当局に呼ばれ、尋問され、一部は逮捕されるなど、活動を根絶する動きが強まっている、としており、特に顕著な事例として、四川省の成都におけるEarly Rain Covenant Churchを実例として挙げている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

2021年4月28日

・「世界の人口の3分の2が住む国々で信教の自由が脅かされている」-国際NGO「信教の自由報告」最新版(Crux)

 A displaced woman holds her child outside a school while waiting with others to receive food being distributed by Catholic Relief Services in Kaya, Burkina Faso. Catholic and Muslim leaders are working jointly to deter youth from terrorist violence in Africa’s Sahel region. (Credit: Olympia de Maismont/Catholic Relief Services via CNS.)

(2021.4.20 Crux  ROME BUREAU CHIEF  Inés San Martín)

ROME – 国際カトリックNGO「Aid to the Church in Need (ACN)」が20日発表した2021年版「信教の自由報告」によると、世界の約52憶人が信教の自由が確保されない国に住んでおり、最も迫害を受けているのはキリスト教徒だ。

 多くの人々が深刻な宗教的迫害を受けているのは、中国、インド、パキスタンで、宗教的少数派の人々が標的にされており、特に最近、(注:中国など)独裁専制政権による迫害が酷くなっている、という。

 また報告書では、これらの国々では、宗教的少数者たちに対する”武器”として性的暴力を振るうケースが増加しており、成人女性や少女たちを拉致、強姦、強制的な棄教などが目立っている。

 アジアのヒンズー教徒や仏教徒が多数を占めている国の中には、宗教的少数者を”二級国民”とするなど差別をする国もある。インドは最も極端な例だが、パキスタン、ネパール、スリランカ、ミャンマーなどでも同様の政策がとられている。

 さらに、信教の自由は、それ自体の中に「人間の良心が関わり、したがってすべての人の尊厳に関わっており、すべての自由の核心。したがって、いかなる形でもこれに違反する行為は認められない」とする一方、 「残念ながら、国連などのイニシアチブによる信教の自由確保への努力にもかかわらず、宗教を理由にした暴力や、その他の理由での宗教的迫害に対する国際社会の対応は鈍すぎる」と国際社会の真剣な努力を訴えた。

 この報告書では序文で 「シリア、イエメン、ナイジェリア、中央アフリカ共和国、モザンビークのいずれであっても、暴力的な紛争の背後には、人類の最も深い信念を操作し、権力を求めて、宗教を道具化しようとする人々がいる 」と指摘している。

 報告書は1999年以来、2年毎に、英、仏、独、伊およびポルトガル、スペインの6か国語で発行され、800ページにのぼる膨大な内容が盛り込まれている。本文では、「チリ:教会の深刻な事態」「ナイジェリア:学童の大量誘拐」「パキスタン:性的暴力と強制改宗」など、個別国の事例研究が盛り込まれる一方、地域ごとの最近の傾向についての論述もあり、アフリカ大陸、特にサハラ以南と東アフリカでの虐待の過激化が目立ち、聖戦を唱えるイスラム過激派が急激な増加を見せていること、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、コモロ、コンゴ民主共和国、マリ、モザンビークを含むすべてのアフリカ諸国の42%で、信教の自由の侵害(大量殺戮などの極度の迫害を含む)が発生している、指摘。

 また、報告書は、サハラ以南アフリカからインド洋、そして南シナ海のフィリピンに広がる国境を越えたイスラム主義ネットワークの台頭ー大陸横断的なイスラム支配ーについても言及。「いわゆる”イスラム国”とアルカイダは、中東からのイデオロギー的および物質的な支援を受け、赤道に沿った”イスラム国”を確立するために、現地の武装民兵連携して、さらに過激化している。イスラム過激派の暴力は、マリからサハラ以南のアフリカのモザンビーク、インド洋のコモロ、そして南シナ海のフィリピンにまで及んでいる」と説明。

 さらに、こうしたイスラム過激派がインターネットなどデジタル技術を活用した攻撃手段を手にすることで、世界規模の”サイバー・イスラム支配”を目指しかねない状況にある、と警告している。

 報告書に記載されている「主要調査結果」をもとにした指摘で、特に目立つものが三つある。

 その第一は、迫害抑制効果があると考えられる正しい宗教教育の放棄だ。宗教教育が若者の宗教的理解を深め、過激な運動に走るのを抑制する効果があることを、各国政府が認めているにもかかわらず、西欧の多くの国が、学校での宗教教育を取りやめるなど、過激化抑制のためのツールを自ら放棄していることである。

 第二に、直接的な形をとらない”丁寧な迫害”ー個人の良心の静寂な暗闇に、あるいは教会、シナゴーグ、モスクの閉鎖空間に、宗教を追いやる「新しい文化的規範の台頭」と教皇フランシスコが名付けた現象と呼ぶものーの増加だ。そうした法規範は、良心と信教の自由に対する個々人の権利と法令順守の義務の対立をもたらす、と報告書は指摘する。

 また”丁寧な迫害”は、いつくかの西側諸国で現実のものとなっている。つまり、そうした国で、中絶と安楽死について宗教的理由から良心的拒否をする医療専門家たちの権利が、もはや法的に保証されなくなっている、そして、特定の大学の卒業生たちが特定の職業に就くことを拒否されるケースが増えている。同様に、宗教学校が自身の宗教的信念に従うことが、ますます困難になっている。

 だが、第三には、宗教間対話を促進するバチカンの前向きな、新たな動きを挙げている。その代表的な動きが、教皇フランシスコが、イスラム教スンニ派の指導者、アルアザールのアーマド・アルタイーブと「世界平和と共生のための人類の友愛」と題する文書に共同署名したことだ。

 

*地域別の状況

 アフリカの問題について、報告書は、「この大陸がイスラム武装勢力に対する次の戦場になるかどうか、ではなく、すでに何十万の人が殺され、何百万の人が故郷を追われ、さらにその数が増えようとしている時に、国際社会が行動するかどうかだ」と、世界各国に速やかな対応を求めている。

 とくにサハラ以南のアフリカにはイスラム主義のイデオロギーが十分に浸透しているが、その背景には、何世代にもわたる貧困、汚職、土地の権利をめぐる遊牧民と農民の共同体間の武装対立、弱い国家構造があり、追い詰められ、欲求不満を抱えた若者たちが、腐敗した当局の追放すること、富と権力を約束するイスラム過激派に参加する土壌を作っている、と指摘している。

 中南米とカリブ海地域については、「「キリスト教の優位性が、信仰の自由を保証するものとなっていない」とし、特に信教の自由が脅かされている国として、キューバ、ニカラグア、ベネズエラなどを挙げている。そして、「これらの国の政府は、宗教指導者が汚職を非難し、社会的および政治的政策が公益に有害であると判断した時に、カトリック教会と非カトリック教会の両方に対する敵意を示し、攻撃の姿勢をとった」としている。

 南アジアのパキスタンから北西アフリカのモロッコに至る大陸横断地域には、世界の人口の6%以上が住んでおり、さまざまな文化的および民族的グループが存在する。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など、世界の偉大な一神教の発祥の地であるこれらの国々には、世界のイスラム教徒の20%以上が住み、世界の石油埋蔵量の60%が埋蔵されており、そうしたことが政治と宗教に影響を与えている。

 「この分野のいくつかの国は、レビュー対象期間中に前向きな政治的および社会的変化を経験しましたが、人権の促進と保護を促進するには至っていません」と報告書は述べています。 「主に非イスラム教徒に対する差別的な法律や慣行が続いているため、法的および社会的環境は変化することに消極的です。」

 報告書によると、イスラム国のテロ組織は現在弱体化しているが破壊されておらず、過去2年間にジハード主義グループによる凶悪犯罪はそれほど多くなかったが、武装イスラム主義狂信は依然として主要な軍事的懸念材料だ。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2021年4月20日

・子供たちを性的虐待から守るオンライン・シンポジウムへ、教皇が成果期待のメッセージ

(2021.4.8 Vatican News  Linda Bordoni) 

 米国のハーバード大学がバチカンの未成年者保護委員会、アメリカカトリック大学と共催する国際オンライン・シンポジウム「Faith and Flourishing: Strategies for Preventing and Healing Child Sexual Abuse(信仰と繁栄:子供たちを性的虐待から守り、癒すための戦略)」が8日から3日間の日程で始まった。

 シンポジウムには世界の宗教関係者、様々な分野の学者、専門家が参加。教皇フランシスコも、未成年性的虐待根絶のための取り組みへの支持と期待を表明するメッセージを寄せた。

 メッセージで教皇は「今回のシンポジウムを通じて、宗教指導者、学者、さまざまな分野の専門家が、調査・研究、実際の活動、司牧の経験と成果を共有することで、未成年に対する性的虐待という深刻で重大な悪を根絶するために社会のあらゆるレベルでの効果的な協力促進につながること」への期待を強調した。

 8日の最初のセッションは、ハーバード大学の健康・宗教・精神に関する問題担当部門長であるジェニファー・ウォーサム博士の司会で始まり、カトリック教会を代表して、バチカン弱者保護委員会のショーン・オマリー委員長・枢機卿が発言し、「教会の信徒たち、特に未成年者、若者、精神的・肉体的な弱者を保護しケアする道徳的、法的義務」を強調。

 さらに、「すべての宗教的、市民的、社会的集団で、私たちが奉仕する対象となる人々は、当然、保護を受けることを期待している。にもかかわらず、そうした相手への彼らの信頼は、『魂を世話する』という神聖な責任を負う人々によって裏切られるケースがあった」と述べ、「『性的虐待』という裏切りは、人間の尊厳をひどく傷つける行為だ」と指摘した。

 そして、教会が聖職者による性的虐待の根絶を約束し、そのための取り組みを続ける過程で、被害者と関係者たちを精神面でケアすることに十分に気を配る必要がある、とし、最後に「自らに起きたことを勇気をもって語ってくれる虐待の被害者たちを高く評価し、感謝したい。子供たち、若者たち、精神的・肉体的に弱い成人たちの保護、そしていくつもの被害者支援プログラムは、私たちのあらゆる生活の場面で中心的な構成要素になりつつあります」と締めくくった。

 World Childhood Foundationの創設者であるスウェーデンのシルビア王妃は、20年前にこの財団を創設する決意した時、「児童の性的虐待はほとんど社会的な問題になっていませんでした。当時は、被害者たちは『だれにも話したくない』、他の人たちは『被害者たちに会いたくない』という状況でした」と振り返った。

 そして、今、ようやく虐待被害を認め、予防のための一歩が踏み出されたものの、「テクノロジーの進歩とインターネットが新しい形態の性的虐待を招来し、新型コロナウイルスの世界的大感染が事態を悪化させています」と指摘。

 「”沈黙”は、虐待する者以外の誰も守らない。子供たちに”恥辱の重荷”を負わさないように、沈黙を破らねばなりません」とし、「重要なのは、声を上げる勇気をふるう子供たちの話に耳を傾け、彼らを信頼すること」と強調した。

 2018年のノーベル平和賞受賞者でコンゴの産婦人科医・社会活動家デニス・ムクウェゲ氏は、戦乱の中で性的暴行が”武器”として広く行われていたコンゴ民主共和国での医師としての自身の体験を語り、「私がパンジの町の産科病院で目撃した痛みと恐怖はたとえようもなかった。祈りとすべての関係者の信仰だけが、被害者たちが生きる力になりました」と述べた。

 そして、「私は、世界で最も壊滅的な暴力の中で、信仰、精神力、希望を持つことの重要性を痛感し、身体的な治療だけでは、彼らが負った傷から立ち直るのを助けるのに十分でないことが分かった」とし、その経験をもとに、医療と心理社会的支援、法律サービス、活動への参加の四つの柱からなるケアモデルを開発したが、具体的には、地方レベルで、宗教関係者や地域の指導者が協力し、男女の平等と女性と子供の権利についての住民たちの理解を深める機会を作り、国レベルでは、市民社会組織や政府機関と協力して、性的暴力の被害者支援ネットワークを構築し、補償し、安全・安心を保証する永続的な体制作りに取り組んでいる、と説明した。またコンゴはまだ安定的な平和に時間が必要で、国際的な支援も欠かせない、とも述べた。

 さらに、ムクウェゲ氏は、性的暴行は今でも、世界の多くの地域で戦争の”武器”に使われている。それを終わらすために、私たち宗教者には果たすべき重要な役割がある。また、被害者が受けた虐待に恥辱を感じないようにケアする責任があります。彼らを理解し、敬意を払い、彼らが無力感を抱くことなく、物事を変える力を持てるようにすべきです。沈黙することなく、語る機会を作る必要があります」と訴えた。

 シンポジウムでは3日間に「児童の性的虐待を防止するための課題と機会」「デジタルの分野での安全確保と新型コロナの世界的大感染に関連する緊急かつ新たな課題への対処」「子供たちに対する性的虐待の防止と癒しにおける信仰と、信仰の指導者の役割」「児童の性的虐待の防止と癒しにおける宗教指導者の重要性」などがテーマとして取り上げられる予定。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2021年4月9日

・バイデン米大統領、信仰に基礎を置く組織を再開(Crux)

(2021.2.15 Crux National Correspondent John Lavenburg)

 米国のバイデン新大統領は14日、国内の宗教関係者や団体の要請に応えて、ブッシュ政権の下で創設され、オバマ政権まで続けられていたホワイトハウスの「信仰を基盤とし隣人との協力を推進する室」を再開する大統領命令に署名した。

 オバマ大統領当時の2013年から2017年にかけて室長を務めたメリッサ・ロジャース氏がトップに復帰し、大統領選挙でバイデン候補の信仰面を補佐したジョシュ・ディクソン氏が副所長に就任する。また選挙中にアフリカ系米国人との連絡役を務め、現在はホワイトハウスで市民参加担当の上級顧問になっているトレイ・ベイカー氏は、同室の黒人コミュニティとの連絡を担当する。

 バイデン大統領は14日の発表で、再開される部署は、米国が直面する問題のいくつかを解決するのを助けるために超党派で対応するためのであることを強調。「危機に瀕している地域社会の最前線であり、私たちの癒し、団結、再建を支援できる、さまざまな信仰と背景を持つ指導者と協力するため」にこの部署を再開することを決めた、と説明した。

 そして、「現在の新型コロナウイルスの感染の中で、命を落とし、職を失い、飢え、住まいの立ち退きを迫られ、人種差別や気候変動の危機の矢面に立たされたりする人々に、民主党員も共和党員もありません。皆、同じ人間。米国人です。私たちの国は、周りで苦しんでいる人々を黙って見ている国ではない。私たちが何者かでもない。どのような信仰が私たちを動かすかでもありません」と、苦しむ隣人を助ける努力を結集するよう訴えた。

 Jubilee USA Networkのエリック・レコンテ代表はCruxのインタビューに、「大統領が、この部署を再開するのは素晴らしいことだが、何より素晴らしいのは、この部署が、このような5つの分野を推進する使命を帯びていることです」と期待を込めて語った。Jubilee USA Networkは、就任式の翌日に大統領に、部署の再開を求める書簡を送った50の信仰を基盤とする組織・団体の一つ。

 他には、「NETWORK Lobby for Catholic Social Justice」「 Church World Service」「 Pax Christi USA」「 Leadership Conference of Women Religious」「 Catholic Labor Network」「National Advocacy Center of Sisters of the Sisters of the Good Shepherd」などが所管の署名に参加しており、「NWTWORK…」代表のシスター・シモン・キャンベルは「オフィスが再開されたことにとても感謝しています。すべての信仰共同体に役立つでしょう。協力して対処することを楽しみにしています」と、ロジャース室長にエールを送っている。

 

2021年2月16日

・「女性の司祭叙階と女性の役割拡大は別問題」と国際修道会連盟事務局長

(2021.2.2 Crux SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen)

 ローマ発―世界のカトリック教会で最も有力なシスターの一人である国際修道会連盟(UISG)のシスター(UISG)・パトリシア・マリー事務局長が、1日開かれたオンラインセミナーで、女性の司祭叙階を巡る議論について「この問題は、叙階された聖職と教会の意志決定への参加とを分けて考える必要性を強調する、もっと深い問題を提示している」との考えを明らかにした。

 「女性の力・昨日と今日」をテーマにしたこのセミナーは、駐バチカン・アイルランド大使館が主催したもので、マリー事務局長は講演で、まず、現在カトリック教会で話し合うべき主要課題として、「識別」の重要性を強調。

 彼女が所属している女子修道会、The Institute of the Blessed Virgin Mary の霊的な伝統は、教皇フランシスコの”本籍”であるイエズス会の創設者である聖イグナチオ・ロヨラの(識別を重視する)教えがもとになっている、としたうえで、「全世界のカトリック教会の奉仕に聖霊が何を求めておられるのか深く考察することを、まさに『識別』が求めているのです」と指摘。

 そして、「それは性急にできるものではありませんが、試みられるべきもの。X、YあるいはZについて”圧力団体”に即座に答えるのではなく、世界が求めるもの、特定の場で教会が求めるものに対する人々の意見表明に深い関心をもち、吟味し、それから、何がしかを試し、すこしずつ前に進むようにするのです」と説明した。

 さらに、アイルランドの尊者ナノ・ネーゲル(18世紀にSisters of the Presentation of the Blessed Virgin Maryを創設)と尊者キャサリン・マコーレー(19世紀にthe Sisters of Mercyを創設)の生涯に触れ、「この二人は、最終的に成し遂げたことよりも異なる点の多い計画を立てていました。歩き続けながら見識を得たために、そうなったのです」と述べた。

 そして、カトリック教会で議論が高まっている女性の司祭叙階問題について、「教皇フランシスコが私たちに言われていることの一つは『確かにこの問題についてさまざまな声が出ているが、司祭職を変えることについて、私たちが司祭職を一般的にどう見るのかについて、もっと奥の深い問い掛けがある』ということです」とし、「教会におけるすべての司牧活動は、それがカトリック要理を教えることであろうと、病気の人や瀕死の人のケア、貧しい人への奉仕であろうと、育成される必要があります… 世界には、神に奉仕するためにさまざまな仕方があるのです」と語った。

 さらに、「聖職にもさまざまなものがあり、叙階された司祭職のように、特定の聖職は時間をかけて育てられると思います… 叙階された司祭職は、確かにとても重要ですが、同じように重要な他の聖職には、ふさわしい重さが置かれていません」とし、「私見では、教会における女性の役割の問題は、司祭叙階だけに絞ることはできない、と思います」と言明。

 また、「現代世界における女性の力と信仰」についての考察で、 教会組織における女性と、神の民の一員、修道者、そして一般信徒として教会共同体全体に奉仕する女性に焦点を合わせ、北半球の先進国で生活し奉仕する多くの女性の一方で、女性信徒の大多数は南半球に住んでおり、貧困、紛争、戦争、差別が北半球よりも横行しているが、北半球でも貧富の格差が広がりつつあり、それが女性が奉仕する環境に複雑さを付け加えている、と指摘。

 そして、教区の活動に奉仕する女性、ミサで朗読をする女性、聖体を配る女性、教える女性、医療施設や刑務所、ホームレス保護施設、難民キャンプで働く女性など、何百万人という女性たち、アマゾンや南スーダンなど辺境や危険地域で働く宣教師たち、人身売買の犠牲者や新型コロナウィルスに感染した人々を助けている人々を称賛し、聖職者、一般信徒の区別なく、世界中で、女性たちは信仰の故に「連帯と慈しみに招かれていることを感じています… これらの女性すべてが、イエスの使命を実際に感知できる手段を通して、目に見えるものにしているのです」と語った。

 教会の組織運営に関して、この数十年の間に、女性たちは「教会の役に立つために、自分たちの見方や洞察を通して、意思決定に参加したい」と自由に発言することが増えてきています」とし、実際に、第二バチカン公会議以降、教会の中で女性が自分たちの場所をさらに拡大させてきたことに注意を向けた。

 具体的には、神学や教会法を学んだり、高い水準のテーマを教えたり、書物にしたりする女性、教会法の専門家の中に一般信徒の女性が増えていること、数え切れないほど多くの女性が教皇庁で重要な地位に任命されてきていること、多くの女性が世界代表司教会議に招かれていること、などを挙げ、「カトリック会の脱聖職化と、叙階制度と教会運営に関する政策決定過程の繋がりを絶つプロセスに焦点が合い始めており、重要な変化が必要になるでしょう」とも述べた。

 また、洗礼を通してカトリック教徒は「教会の使命と司牧を平等に分かち合っている」とし、教皇フランシスコが2013年に出された使徒的勧告「Evangelii Gaudium(福音の喜び)」で語られている言葉を引用したー「私たちが秘蹟の力について話すとき、私たちの役割は『働く』ことであり、『威厳』や『聖性』をもたらすことではありません」。

 このように、さまざまな司牧活動で、教皇の見方に倣う必要があり、「教会の組織の中で、女性は役割と機能の両方を広げつつある」ことを付け加えた。「私自身、ローマにいた時、様々なレベルでの考察、識別、政策決定への、女性の参加という変化を、数多く目の当たりにしました」と述べた。

 そして、「今の教会で女性にとって最も大きな課題は、依然として、私たちの声が聞き届けられること、教会のあらゆるレベルで女性が参加できる場所ができること、なのです」と強調。「教皇フランシスコはその模範となってくださっている、と思います。簡単なことでありません。困難はつきものです。しかし、女性のための場所が作られ、小教区や教区でもそれが起こりつつあるのです」。

 この変化は、一様ではなく、世界の場所、段階によって異なっているが、「その方向に物事が進み始めれば、それ以降の進展は時間の問題です… 私たちは尊厳と勇気を持って真実を語り、私たちの場所を主張せねばなりません」と訴えた。

(翻訳「カトリック・あい」田中典子・南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2021年2月5日

・14日まで一週間で少なくとも10人のカトリック高位聖職者がコロナで死亡(Crux)

(2021.1.18 Crux Inés San Martín

 新型コロナウイルスの世界的大感染が続く中で、カトリックの高位聖職者の感染、死亡が相次いでいる。

 新年に入って8日から14日のわずか一週間で、世界中で10人の司教が亡くなり、さらに17日には、南アフリカの主要教区であるダーバンのアベル・ガブザ大司教がコロナで命を落とした。教区長のポストを彼に引き渡す予定だったウィルフリード・ネイピア枢機卿は同日、声明を発表。「ガブザ大司教は、その優しさと思いやり、温かな性格を通して、全ての人に大きな影響を与えてきました。彼の死は南部アフリカの教会にとって大きな損失です」と追悼した。

 この期間で司教の死亡が集中したのは1月13日で、3つの大陸でザンビアのハムンゴレ司教を含めて4人の司教が亡くなった。英スコットランド最大のカトリック教会共同体、グラスゴー教区を率いてきたフィリップ・タータグリア大司教(70)、イタリア・ファーノ教区のマリオ・チェッキーニ司教(87)、ブラジル・リオデジャネイロ教区の教区長を引退していたエウゼビオ・オスカー・シャイド枢機卿(88)だ。

 このうちシャイド枢機卿は、コロナウイルス感染が分かり入院して、数日後に亡くなった。枢機卿が亡くなった際の慣習として、教皇フランシスコは、リオデジャネイロ大司教のオラニ・ジョアン・テンペスタ枢機卿に弔電を送り、深く哀悼を示すとともに、その功績を讃えた。ブラジルは、コロナ感染で米国に次ぐ多くの死者を出している。

 また、この一週間の初めに亡くなったのは、ベネズエラ・トルヒーヨのカストル・オズワルド・アズアヘ・ペレス司教(69)。ベネズエラの司教として初のコロナによる死者となったが、同国では、少なくとも8人の司祭と数人の修道女がコロナで亡くなっている。

 南米では、コロンビア・サンタマルタのルイス・アドリアーノ・ピエドラヒタ・サンドバル司教(74)が、昨年12月23日から入院治療中だったが11日に亡くなり、コロンビアで最初の司教の死者となった。。

 スコットランドでは、タータグリア大司教が亡くなった翌日の14日に、ダンケルド教区のヴィンセント・ローガン名誉司教(79)が死亡している。

 欧州では、ほかにポーランドのアダム・ディツコウスキー名誉司教(88)が10日に、ルーマニア・クルージュゲルラのフロレンティン・クリハルメヌ司教(61)が12日に、それぞれ亡くなった。

 南米メキシコも大感染が続いており、すでに100人近くの司祭が死亡しているが、メキシコシティの元大司教、ノルベルト・リベラ・カブレラ枢機卿も、コロナ感染で16日に入院している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年1月18日

・アイルランドのカトリック施設で未婚の母の子どもたち9000人が無名で埋葬

world/taoiseach-primate-apologize-for-abuse-at-mother-and-baby-homes-in-ireland

June 2014 file photo showing a handwritten note painted on the site of a mass grave of up to 800 children on the site of the former Mother and Baby home in Tuam, in western Ireland. (Photo by EPA /AIDAN CRAWLEY/ MaxPPP)

(2021.1.13  La Croix International staff )

  アイルランド政府の母子家庭調査委員会が13日、調査報告書を発表、1960年代半ばまで80年以上の間に、国内に18あった未婚の母子収容施設で9000人に上る乳幼児が死亡、名もなく集団埋葬されていたことを明らかにした。

 これらの施設の大部分は、カトリック教会によって運営されていたもので、全アイルランドの教会を代表してイーモン・マーチン主席大司教が被害者たちに陳謝した。

 報告書によると、施設は、救貧院、孤児院などで、出産を諦めたり、出産しても自分の子として育てるのを諦めた未婚の女性たちが祈りと無給労働で過ごしていた。1998年までにそうした施設は閉鎖されたが、これらの施設の未婚の妊婦は合わせて5万6000人に上り、死亡した乳幼児は無名で埋葬され、命の助かった多くの乳幼児は国の内外に養子として出されていた。

 大量死に関する政府の調査のきっかけは、2014年。アマチュアの歴史家が、アイルランド中西部のチュアムの町で女子修道会が運営する18の家の1つの敷地内に約800人の乳幼児が印のない墓に埋葬されているのを明らかにするために、彼らの死亡診断書をまとめたことだった。

 マーチン主席大司教は、生存している全ての関係者に深く謝罪するとともに、「教会が『人々が非難され、裁かれ、拒否される文化』の明確な一部だったことを認めます… 嘆かわしいことですが、アイルランドの多くの家庭の体験に触れる今回の報告書を私たち全員が、生かしていくことが重要です」と述べ、「私たちは、報告書の中心を占める証言をされた人たちと心を通わせる方法を見つけ続けねばなりません。報告書は、私たちが共有する歴史の何年にもわたって隠されてきた部分に光を当てるようにし、『未婚の母と子どもたち』が経験させられた『隔離、秘密、社会からの追放の文化』を明るみに出すものです」と自省を込めて語った。

 さらに大司教は「関係の全ての生存者が自己の個人情報を入手する権利を完全に保証されること、実態解明に残された障害を確実にすることを、政府に改めてお願いしたい。亡くなられた方と家族が決して忘れられることのないように、埋葬地を全て確定し、記録される必要があります」と政府に要望。「教会、国、そして社会は、一体となって、アイルランドの全ての子どもたち、母親たちが、求められ、歓迎され、愛されている、と確信できるようにしなければなりません」と訴えた。

 ミホル・マーティン首相も、議会下院で、この問題について政府の責任を認めることにしており、「これは、アイルランドのごく最近の歴史の中で、政府、社会、教会の重大な過ち。暗く、恥ずべき一章。私たちは、性的な面、親密さの面で完全に歪んだ態度をとり、若い母親と幼児たちにその代償を払わせた。歪んだ宗教的道徳と統制を押し付け…社会全体がそれに加担した。人間の尊厳を致命的に損なった。国家ぐるみの“共謀”、怠慢です」と謝罪した。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

 

2021年1月15日

・世界で毎日13人のキリスト教徒が信仰ゆえに殺害ー「OpenDoors」年次報告

Christians march in Abuja during a prayer and penance gathering for peace and security in Nigeria on 1 March 2020 Christians march in Abuja during a prayer and penance gathering for peace and security in Nigeria on 1 March 2020   (AFP or licensors)

 

2021年1月14日

・米連邦議会議事堂乱入、死傷者発生の事態にキリスト教関係者も憂慮

Supporters of President Trump climb on walls at the US Capitol on 6 January 2021Supporters of President Trump climb on walls at the US Capitol on 6 January 2021 

(2021.1.7 Vatican News staff writer)

 米国ワシントンで次期大統領を選出する上下両院合同会議が開かれていた連邦議会議事堂に6日、トランプ大統領の支持者が乱入、死者4人、負傷者13人と大量の逮捕者が出た事件に対し、世界中から批判があがっているが、カトリックなどキリスト教関係者も、米国社会の分断と嫌悪、暴力の高まりに強い懸念を示すとともに、民主主義の価値と共通善に重きを置いた平和なアメリカの回復を訴え、祈った。

 全米カトリック司教協議会のホセ・オラシオ・ゴメス会長は声明を発表し、「これは私たちアメリカ人の姿ではない。平和的な権力の移譲はわが国の特徴の一つであるはずだ」と言明。人々が賢明さと健全な真の愛国精神の道を歩めるよう祈った。ワシントン大司教のウィルトン・グレゴリー枢機卿も「この危機の中、私たちは歩を止めて、平和のために祈らなくてはならない。私たちの中にある分裂の雰囲気は変わらねばならない」とし、平和的な政権移行への国民の一致した協力と民主主義の価値と共通善の尊重を呼びかけた。

 カトリック系の国際平和運動組織Pax Christi の米国本部は、今回の事件を極めて遺憾とし、「今日の出来事が一部の人々にとって回心の機会となる」ように希望を表明した。

 ジュネーブに本拠を置き、120か国以上の340を超える会員団体を持つ世界教会協議会は、今回の事件を極めて深刻な事態と受け止め、事務局のイオアン・サウカ牧師は「このところの米国社会の分裂を加速させたポピュリスト政治の結果であり、米国の民主主義の基盤を脅かすもの。米国に留まらず、国を超えた影響を世界に及ぼす懸念をもたらしている」とし、関係者すべてに対して、「目先の政治的利益にとらわれず、他者と、より広い社会に責任を負うやりかたで行動するように」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2021年1月8日

・フランスの聖職者性的虐待対策委員会に6500件の訴え(LaCroix)

 

religion/frances-commission-on-clergy-sex-abuse-has-received-6-500-denunciations

according to France’s Independent Commission on Sexual Abuses in the Church, the majority of victims are men over 50 years of age, and 50% of the cases date back to the 1950s and 1960s. (Photo : ADOBESTOCK)

(2020.11.13 LaCroix  Christophe Henning)

 フランスのカトリック教会の性的虐待に関する独立機関(CIASE)が、18か月近くの関係者への聞き取り調査をもとにした第一次報告を発表した。

 CIASEの責任者、Jean-Marc Sauvéが11日、フランスの男女修道会代表者のオンラインによる会議の席上、発表したもので、調査結果によると、聖職者による性的虐待の訴えは6500件に上り、うち42%が被害者と判定された。被害者に対しては2時間の聴取が120回にわたってなされた。

 それらの結果、被害者の62%は男性で、虐待がされた時期は、1950年代と1960年代が半分を占めたが、1970年代は18%、1990年代は7%、2000年代は3%。さらに2010年代が5.7%を占めている。現在の年令は50歳から69歳が半分を占め、30%が70歳以上だ。

  Sauvé氏は、徹底した被害者への聴取をもとに、「性的虐待は、被害者の人格を壊すなど、ひどい結果をもたらしている。彼ら、彼女らの追った心の傷は深く、見えないもの」と指摘し、被害者の心身の痛みについて個人として、集団として深く認識する必要がある、と強調した。

 調査結果の最終報告の発表は来年秋になるが、「個人的、集団的、制度的な過ちと失敗」だけでなく、調査する必要のある体系的な側面についての反省を行なうべきことは、今回の一時報告で既に明らかになっています… 弱者を保護すべき立場にある権威の失敗、信頼を裏切る行為が目に余る」と強く批判。

 調査結果では、性的虐待の被害者の87%は当時未成年。うち3割は6歳から10歳、35%は11歳から15歳だった。また被害者の13%は若い成人で、その3分の1は神学生または宗教的な訓練中に被害に遭っている。ただ、調査で明らかになった被害者で法的な措置をとった者は14% に過ぎず、それ以外の人々も含めて「何らかの形で被害者に正義を行う必要がある」と述べる一方、これまで彼らに適切な対応がとられたかどうかを完全に知ることは難しい、とも語った。

 さらに Sauvé氏は「虐待は死を運ぶ者、物理的な死をもたらし、命を、おそらく数世代にわたって破壊してしまう可能性があります。それは、人としての存在の無限の荒廃。それほど、深刻な犠牲をもたらすのです」と強調。「私が知っている、被害当時12歳の少年だった人のことを今でも覚えています。苦しんでいるのに何もできないことを疑問に思いましたが、60年経った今、CIASEの責任者になって、自分の疑問が十分に根拠があることに、ようやく分かったのです」と自己の体験を語った。

 一次報告書の発表を受けて、修道会代表者の会議では「被害者たちがどのような種類の補償を受けられるか」をテーマに議論がなされ、300人近くの修道会代表者が昨年11月にフランスの司教団が提案した”金銭面の賠償”を超えた「修復的司法(注:犯罪に関係する全ての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来への関わりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス)」の様々な側面について、意見が交換された。

 「赦し求める」をテーマにした議論では、修道会が「性的虐待で受けた傷のそれぞれ異なったケース」に着目して、被害者たちそれぞれに必要な対応を考える必要がある、との指摘があった。

 このオンライン会議には、2人の虐待被害者からも話を聴いたが、2人とも、被害者の傷を癒すためには長い時間かけての対応が必要、と強調。そのうちの1人は「教会の道徳的信頼性は粉砕されてしまった」と訴えた。

 この会議を主宰したフランス男女修道会総長連盟議長のシスター・ベロニク・マルグロンは「これは私たち一人一人が旅しなければならない道だと信じています。自分を低くし、美しいものをすべて残し、恥ずかしさを痛感し、許しを懇願します。そして、『すべてをコントロールし、大きく変える』という私たちのこれまでの願いを放棄します」と述べた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2020年11月20日

・紛争続くカメルーン西部で武装集団が90歳の枢機卿を拉致、翌日解放

クリスチャン・トゥミ枢機卿クリスチャン・トゥミ枢機卿 

(2020.11.6 バチカン放送)

 アフリカ中部のカメルーンで、11月5日、クリスチャン・トゥミ枢機卿(90)が武装集団に拉致される事件が発生。同枢機卿は、翌6日、解放された。

 同国西部では、政府軍と独立強硬派が紛争を続け、治安が悪化を続けており、先月24日にも主要都市クンバで、銃や刃物で武装した集団が学校を襲撃し、生徒少なくとも8人が死亡、12人が負傷している。

この事件に対し、教皇フランシスコは、深い悲しみを表され、暴力の停止と、若者たちに教育と未来が保証されるようアピールされているが、その後も、武装集団によって何人かの教師が誘拐され、11月5日に解放されたばかりだった。

 トゥミ枢機卿が襲われたのは同国西部のバメンダとクンバを結ぶ道で、現地時間11月5日午後。児童らに学校に行くことを励ましたことが、武装集団の拉致の動機とみられるが、翌6日、解放されたことが現地ドゥアラ教区のサムエル・クレダ司教の声明によって確認された。

 拉致から解放されたトゥミ枢機卿は、1930年生まれ。チャドとの国境に近いカメルーン北部で、貧困問題や民族分裂などの地域問題の第一線に立ってきた。カメルーン北部と南西部の平和推進と、少数派のアングロフォンへの差別反対のために闘ってきた同枢機卿は、2019年、ネルソン・マンデラ賞を受賞している。

(編集「カトリック・あい」)

2020年11月7日

・仏ニースの大聖堂が襲撃を受け、3人殺害される、イスラム過激派か

(2020.10.29 カトリック・あい)

 フランスのニースにあるカトリックのニース・ノートルダム大聖堂で29日、イスラム過激派のテロとみられる襲撃事件があり、3人が死亡、数名のけが人が出ている模様だ。

 現地からの複数の報道によると、襲撃は現地時間同日午前9時ごろ発生。ニース市長の発表では、襲撃犯は犯行時、アラビア語で「神は偉大なり」と叫んだという。仏メディアによると、被害者3人のうち2人は教会内でのどを切られるなどして死亡。1人は教会付近のバーに逃げ込んだが、追いかけてきた襲撃犯に殺害された。襲撃犯は警官に撃たれ、病院に搬送された、という。

 フランスでは今月16日に、イスラム教預言者ムハンマドの風刺画を教材にした中学教員が刺殺され、マクロン仏大統領は犠牲となった教員を「英雄」と称賛し、国家追悼式を実施。「(表現の)自由への闘い」を重視するとして、ムハンマドの風刺画を擁護した。

 さらに、仏政府は、暴力を誘発するツイッターを拡散したとして、イスラム教徒の人道団体やモスクに対する閉鎖を命令。イスラム主義への対決姿勢を鮮明にしており、「国内の分断をあおる」とする懸念の声も出ていた、という。

 イスラム人口は仏国内で1割近くを占めるが、風刺画をめぐっては、イスラム圏のトルコやパキスタン、アラブ諸国で反発が広がり、仏製品に対するボイコット運動に発展している。

2020年10月29日

・「戦争とコロナ大感染の封じ込めに、指導者たちも、善意の全ての人も力を合わせよう」ー「ローマ2020平和アピール」に教皇たち署名

(2020.10.20  Vatican News staff writer)

 教皇フランシスコは20日午後、世界の主な宗教指導者たちとともに、ローマのカピトリーノの丘で開かれた聖エギディオ共同体が主催する宗教間平和会議「誰も一人では救われないー平和と友愛」に出席。共に平和への祈りを捧げるとともに、世界に平和を訴える「ローマ2020平和アピール」に署名した。

 内容は以下の通り。

 私たちは、「アッシジの精神」をもってこのローマに集まり、世界中の宗教を信じる人たち、すべての善意の男女と精神的に一つの体となり、私たちの世界に平和の賜物がもたらされるように、互いに共に祈りました。人類の傷を思い起こすように呼びかけました。私たちは苦しんでいる多くの兄弟姉妹の静かな祈りと共にあります。私たちは今、厳粛に誓いますーこの平和を、私たち自身で作り上げ、各国の指導者たちや世界の人々に求めることを。

 このカピトリーノの丘では、史上最大の戦いとなった第二次世界大戦を教訓に、関係国が欧州統一の夢の実現を目指してローマ条約(1957年)を結びました。この不確実な時代に、今、不平等と恐怖を悪化させることで平和を脅かす新型コロナウイルスの世界的大感染の影響を感じる時、私たちは誰も一人で救われることはできないと断言します。

 戦争と平和、大感染と健康管理、飢餓と食糧供給、地球温暖化と持続可能な開発、人口の移動、核の脅威の排除、不平等の削減ーこれらは個々の国だけに関係する問題ではありません。私たちは、密接につながっていますが、友愛の感覚をしばしば欠いている世界で、私たちはこのことを、もっとはっきりと理解します。

 私たち皆が兄弟姉妹なのです!この試練の時を経て、もはや「他者」ではなく、多様性に富んだ偉大な「私たち」が存在する可能性があることを、至高の方に祈りましょう。平和が可能であり、必要であり、戦争のない世界がユートピアではないことを、改めて大胆に、理想として掲げる時が来ました。それが、私たちがもう一度、このように言いたい理由ですー「No more war(戦争をこれ以上繰り返すな)」!

 誠に嘆かわしいことですが、多くの人にとって、戦争はいまだに「国際紛争を解決するための、一つの可能​​な手段」であるように思われています。そうではありません。手遅れになる前に、「戦争はいつも、世界を以前よりも悪くさせる」ということを、皆に思い起こさせましょう。戦争は政治の失敗、人類の失敗です。

 私たちは各国政府の指導者たちに、しばしば、恐れと不信に基づいて発せられる分裂の言葉を拒絶するように、そして、戻ることのできない道に踏み出さないように、強く訴えます。一緒に犠牲になっている人々に目を向けましょう。あまりにも多くの紛争が現在も進行中です。

 国の指導者たちに私たちは呼びかけますー平和の新しい建築物を作り上げるために協力しましょう。力を合わせて、生命、健康、教育、平和を推進しましょう。破壊的で致命的な武器を生産するの使われてきた資源を、生命を選び、人類と私たちの共通の家をケアすることに転用する時が来ているのです。時間を無駄にしないでください!達成可能な目標から始めましょう。すべての人に適切で、利用可能なワクチンが完成するまで、ウイルスの拡散を封じ込める努力を今すぐ、一致して進めてください。大感染は、私たちが血を分けた兄弟姉妹であることを、思い起こさせています。

 すべての宗教を信じる人たち、そして善意の男性と女性に、私たちは呼びかけますー平和の創造的な職人になり、社会的友愛を築き、私たち自身の対話の文化を作りましょう。正直で、粘り強く、勇気ある対話は、不信、分裂、暴力の解毒剤です。対話は、まず手始めとして、私たちの人間の家族が求められている友愛を破壊する戦争への論争を取り壊します。

 誰もこの努力を免除されていると感じることはできません。私たち全員が責任を共有しています。私たち全員が赦し、許される必要があります。世界と歴史の不正は、憎しみと復讐によって癒されるのではなく、対話と許しによって癒されるのです。

 神が、私たちに、このような理想と、皆が共にする旅への決意を励ましてくださいますように。神が、すべての人の心に触れ、私たちを平和の先駆者としてくださいますように。

         ローマ、カピトリーノの丘にて、2020年10月20日

 

 

 

2020年10月21日

・20日に世界の諸宗教指導者たちが参加して「平和の祈りの集い」、教皇も参加

Pope Francis Pope Francis  

 集いの模様は、各種のウエブ、ソーシャルメディアを通じ、8か国語で動画配信される予定。詳しくはhttps://preghieraperlapace.santegidio.org/pageID/31256/langID/en/Roma-2020.html

 

 

 

2020年10月18日