・「女性の司祭叙階と女性の役割拡大は別問題」と国際修道会連盟事務局長

(2021.2.2 Crux SENIOR CORRESPONDENT Elise Ann Allen)

 ローマ発―世界のカトリック教会で最も有力なシスターの一人である国際修道会連盟(UISG)のシスター(UISG)・パトリシア・マリー事務局長が、1日開かれたオンラインセミナーで、女性の司祭叙階を巡る議論について「この問題は、叙階された聖職と教会の意志決定への参加とを分けて考える必要性を強調する、もっと深い問題を提示している」との考えを明らかにした。

 「女性の力・昨日と今日」をテーマにしたこのセミナーは、駐バチカン・アイルランド大使館が主催したもので、マリー事務局長は講演で、まず、現在カトリック教会で話し合うべき主要課題として、「識別」の重要性を強調。

 彼女が所属している女子修道会、The Institute of the Blessed Virgin Mary の霊的な伝統は、教皇フランシスコの”本籍”であるイエズス会の創設者である聖イグナチオ・ロヨラの(識別を重視する)教えがもとになっている、としたうえで、「全世界のカトリック教会の奉仕に聖霊が何を求めておられるのか深く考察することを、まさに『識別』が求めているのです」と指摘。

 そして、「それは性急にできるものではありませんが、試みられるべきもの。X、YあるいはZについて”圧力団体”に即座に答えるのではなく、世界が求めるもの、特定の場で教会が求めるものに対する人々の意見表明に深い関心をもち、吟味し、それから、何がしかを試し、すこしずつ前に進むようにするのです」と説明した。

 さらに、アイルランドの尊者ナノ・ネーゲル(18世紀にSisters of the Presentation of the Blessed Virgin Maryを創設)と尊者キャサリン・マコーレー(19世紀にthe Sisters of Mercyを創設)の生涯に触れ、「この二人は、最終的に成し遂げたことよりも異なる点の多い計画を立てていました。歩き続けながら見識を得たために、そうなったのです」と述べた。

 そして、カトリック教会で議論が高まっている女性の司祭叙階問題について、「教皇フランシスコが私たちに言われていることの一つは『確かにこの問題についてさまざまな声が出ているが、司祭職を変えることについて、私たちが司祭職を一般的にどう見るのかについて、もっと奥の深い問い掛けがある』ということです」とし、「教会におけるすべての司牧活動は、それがカトリック要理を教えることであろうと、病気の人や瀕死の人のケア、貧しい人への奉仕であろうと、育成される必要があります… 世界には、神に奉仕するためにさまざまな仕方があるのです」と語った。

 さらに、「聖職にもさまざまなものがあり、叙階された司祭職のように、特定の聖職は時間をかけて育てられると思います… 叙階された司祭職は、確かにとても重要ですが、同じように重要な他の聖職には、ふさわしい重さが置かれていません」とし、「私見では、教会における女性の役割の問題は、司祭叙階だけに絞ることはできない、と思います」と言明。

 また、「現代世界における女性の力と信仰」についての考察で、 教会組織における女性と、神の民の一員、修道者、そして一般信徒として教会共同体全体に奉仕する女性に焦点を合わせ、北半球の先進国で生活し奉仕する多くの女性の一方で、女性信徒の大多数は南半球に住んでおり、貧困、紛争、戦争、差別が北半球よりも横行しているが、北半球でも貧富の格差が広がりつつあり、それが女性が奉仕する環境に複雑さを付け加えている、と指摘。

 そして、教区の活動に奉仕する女性、ミサで朗読をする女性、聖体を配る女性、教える女性、医療施設や刑務所、ホームレス保護施設、難民キャンプで働く女性など、何百万人という女性たち、アマゾンや南スーダンなど辺境や危険地域で働く宣教師たち、人身売買の犠牲者や新型コロナウィルスに感染した人々を助けている人々を称賛し、聖職者、一般信徒の区別なく、世界中で、女性たちは信仰の故に「連帯と慈しみに招かれていることを感じています… これらの女性すべてが、イエスの使命を実際に感知できる手段を通して、目に見えるものにしているのです」と語った。

 教会の組織運営に関して、この数十年の間に、女性たちは「教会の役に立つために、自分たちの見方や洞察を通して、意思決定に参加したい」と自由に発言することが増えてきています」とし、実際に、第二バチカン公会議以降、教会の中で女性が自分たちの場所をさらに拡大させてきたことに注意を向けた。

 具体的には、神学や教会法を学んだり、高い水準のテーマを教えたり、書物にしたりする女性、教会法の専門家の中に一般信徒の女性が増えていること、数え切れないほど多くの女性が教皇庁で重要な地位に任命されてきていること、多くの女性が世界代表司教会議に招かれていること、などを挙げ、「カトリック会の脱聖職化と、叙階制度と教会運営に関する政策決定過程の繋がりを絶つプロセスに焦点が合い始めており、重要な変化が必要になるでしょう」とも述べた。

 また、洗礼を通してカトリック教徒は「教会の使命と司牧を平等に分かち合っている」とし、教皇フランシスコが2013年に出された使徒的勧告「Evangelii Gaudium(福音の喜び)」で語られている言葉を引用したー「私たちが秘蹟の力について話すとき、私たちの役割は『働く』ことであり、『威厳』や『聖性』をもたらすことではありません」。

 このように、さまざまな司牧活動で、教皇の見方に倣う必要があり、「教会の組織の中で、女性は役割と機能の両方を広げつつある」ことを付け加えた。「私自身、ローマにいた時、様々なレベルでの考察、識別、政策決定への、女性の参加という変化を、数多く目の当たりにしました」と述べた。

 そして、「今の教会で女性にとって最も大きな課題は、依然として、私たちの声が聞き届けられること、教会のあらゆるレベルで女性が参加できる場所ができること、なのです」と強調。「教皇フランシスコはその模範となってくださっている、と思います。簡単なことでありません。困難はつきものです。しかし、女性のための場所が作られ、小教区や教区でもそれが起こりつつあるのです」。

 この変化は、一様ではなく、世界の場所、段階によって異なっているが、「その方向に物事が進み始めれば、それ以降の進展は時間の問題です… 私たちは尊厳と勇気を持って真実を語り、私たちの場所を主張せねばなりません」と訴えた。

(翻訳「カトリック・あい」田中典子・南條俊二)

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2021年2月5日