・中国など14か国で深刻な信教の自由の侵害ー米信教の自由委員会など報告書発表(BW)

The USCIRF Report 世界の信教の自由の侵害状況に関する二つの報告書が、ここ数日相次いで発表され、中国など多くの国で信教の自由が侵されていることが改めて浮き彫りになった。

 米国の国際信教の自由委員会(USCIRF)は、国内法に準拠した超党派の米政府の委員会で、米大統領と二大政党の議会指導者によって任命された委員で構成されている。

 その2021年年次報告書は、中国など14か国で深刻な信教の自由への侵害がされているとして、「特に懸念される国」(CPC)に指定することを米国務省に提言している。

 CPCには、2020年12月に国務省によってすでにCPCとして指定されている中国、ミャンマー、エリトリア、イラン、ナイジェリア、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの10か国に、インド、ロシア、シリア、ベトナムの4か国だ。

 同報告書では、また12か国を国務省の特別監視リスト(SWL)に信教の自由の侵害国に載せることも求めている。このうちキューバとニカラグアは既にリスに載せられているが、さらにアフガニスタン、アルジェリア、アゼルバイジャン、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、マレーシア、トルコ、ウズベキスタンの10か国が加わった。

 一方で、2020年の年次報告書でSWLへの掲載が適当、とされていたバーレーン、中央アフリカ共和国(CAR)、スーダンの3か国は、信教の自由を巡る状況に改善がみられるとして、対象から外された。

 また報告書では、パキスタンの信教の自由を巡る状況について「悪化を続けている」とし、「パキスタン政府は、非国家主体による虐待から、宗教的少数派を保護できていない。アフマディー教徒、シーア派イスラム教徒、ヒンズー教徒、キリスト教徒、シーク教徒などの少数派を標的にした殺害、冒涜事件、強制改宗、ヘイトスピーチが急増している」と指摘している。

 報告書は、バイデン政権に対し、世界で最悪の信教の自由の侵害国の一つとしてのロシアに対する姿勢を強めるよう求め、次のように説明している。 「2020年に、ロシアの信教の自由の状況は悪化した。ロシア政府は引き続き、少数派宗教関係者を罰金、拘留、および刑事告発の標的にしたうえ、ロシアの法律は、用語を適切に定義しないまま、『過激主義』の犯罪と決めつけ、広範囲の非暴力の宗教活動を司法当局が訴追するのを可能にしている」。

 さらに、ロシアでは、ロシア正教会に対する批判が「名誉棄損」として扱われることがしばしばあり、同国を「パキスタン、イラクに次ぐ、名誉棄損を犯罪とする件数の顕著な国」とし、ソーシャル・メディアに関連する名誉棄損の犯罪扱い件数で群を抜いている、と指摘。新興宗教の「エホバの証人」への苛烈な迫害、米国に本拠を置くサイエントロジーの信者に対しても、否定声明に署名を迫るなどの圧力がかけられている、としている。

 中国に関しては、矯正収容所での悪名高い思想改造を取り上げたほか、中国当局が「何百万のイスラム教徒について、長いあごひげを生やす、飲酒を拒むなどを「宗教的過激主義」の証拠と見なし、収容所送りにしている、と指摘。逮捕・拘禁された経験のある複数の人物が「拷問、性的暴行、不妊手術の強制などの虐待を受けた」と証言している、としたうえで、専門家は、中国政府が新疆ウイグル自治区で進めている、こうしたイスラム教徒に対する行為が国際法上の”ジェノサイド”になり得る、との懸念を表明している、としている。また、新疆ウイグル自治区の収容所や刑務所、工場、工業団地でウイグル人たちを強制労働させていること、ウイグル人たちの宗教施設の閉鎖と破壊が継続していること、についても指摘している。

 さらに、中国政府・共産党は、このようなウイグル人イスラム教徒に対する迫害だけでなく、「チベット仏教徒に対するの広範な統制と抑圧」がなされているほか、キリスト教についても言及。「カトリックの司教の任命に関して、バチカンと中国政府が合意したにもかかわらず、中国当局は、カトリック”地下教会”の司教や司祭、信徒に脅迫、拘禁、拷問を続けている。これは、プロテスタントの家庭教会に対する行為と同様だ」と述べ、キリスト教会の聖堂、十字架、さらに仏教や道教の寺院や像の破壊なども進んでいる、とBitter Winterの報道を引用している。

 こうした中国における信教の自由の深刻な侵害の”根拠”となっている法・規則についても「2018年に改訂された宗教問題に関する規則が、すべての”無許可”の宗教的活動を効果的に禁止し、宗教活動の管理について地方政府の役割を拡大している。また中国刑法第300条によって、法輪功や全能神教会など特定の宗教団体に属するだけで信徒たちは3年から7年の懲役、または当局がより深刻とみなす場合は終身刑に処せられる」と説明した。

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Examples of persecution from ChinaAid’s report

Examples of persecution from ChinaAid’s report.

 USCIRFの年次報告書と前後して、国際NGOのChinaAidが発表した2020年度迫害年次報告では、中国政府が管理・統制下に置いているプロテスタントの「三自愛国教会」に属さない「家庭教会」に対する迫害や、バチカンと中国の司教任命に関する合意後の現在も続く、政府管理・統制下にある「中国天主愛国協会」への参加を拒否する”地下教会”の司教、司祭、信徒に対する迫害について、その詳細を説明している。そして、現在の新型コロナウイルスの大感染に対する措置の一環という名目での、信徒たちへの監視体制の強化が、迫害をさらに悪化させる要因となっている、と指摘した。

 またChinaAidのこの報告書は、「2020年が、習近平がキリスト教を中国化するための5カ年計画の3年目に当たっていた」とし、プロテスタント教会では、政府管理の「三自愛国教会」に加盟している教会の中にも脅迫を受け、説教や祈りなどに「愛国的で、共産党を讃える内容を含めることが、当局から強要されている、三自教会への参加を拒む「家庭教会」に対する迫害はますますひどくなり、主要な指導者はすべて当局に呼ばれ、尋問され、一部は逮捕されるなど、活動を根絶する動きが強まっている、としており、特に顕著な事例として、四川省の成都におけるEarly Rain Covenant Churchを実例として挙げている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

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2021年4月28日