・フランスの聖職者性的虐待対策委員会に6500件の訴え(LaCroix)

 

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according to France’s Independent Commission on Sexual Abuses in the Church, the majority of victims are men over 50 years of age, and 50% of the cases date back to the 1950s and 1960s. (Photo : ADOBESTOCK)

(2020.11.13 LaCroix  Christophe Henning)

 フランスのカトリック教会の性的虐待に関する独立機関(CIASE)が、18か月近くの関係者への聞き取り調査をもとにした第一次報告を発表した。

 CIASEの責任者、Jean-Marc Sauvéが11日、フランスの男女修道会代表者のオンラインによる会議の席上、発表したもので、調査結果によると、聖職者による性的虐待の訴えは6500件に上り、うち42%が被害者と判定された。被害者に対しては2時間の聴取が120回にわたってなされた。

 それらの結果、被害者の62%は男性で、虐待がされた時期は、1950年代と1960年代が半分を占めたが、1970年代は18%、1990年代は7%、2000年代は3%。さらに2010年代が5.7%を占めている。現在の年令は50歳から69歳が半分を占め、30%が70歳以上だ。

  Sauvé氏は、徹底した被害者への聴取をもとに、「性的虐待は、被害者の人格を壊すなど、ひどい結果をもたらしている。彼ら、彼女らの追った心の傷は深く、見えないもの」と指摘し、被害者の心身の痛みについて個人として、集団として深く認識する必要がある、と強調した。

 調査結果の最終報告の発表は来年秋になるが、「個人的、集団的、制度的な過ちと失敗」だけでなく、調査する必要のある体系的な側面についての反省を行なうべきことは、今回の一時報告で既に明らかになっています… 弱者を保護すべき立場にある権威の失敗、信頼を裏切る行為が目に余る」と強く批判。

 調査結果では、性的虐待の被害者の87%は当時未成年。うち3割は6歳から10歳、35%は11歳から15歳だった。また被害者の13%は若い成人で、その3分の1は神学生または宗教的な訓練中に被害に遭っている。ただ、調査で明らかになった被害者で法的な措置をとった者は14% に過ぎず、それ以外の人々も含めて「何らかの形で被害者に正義を行う必要がある」と述べる一方、これまで彼らに適切な対応がとられたかどうかを完全に知ることは難しい、とも語った。

 さらに Sauvé氏は「虐待は死を運ぶ者、物理的な死をもたらし、命を、おそらく数世代にわたって破壊してしまう可能性があります。それは、人としての存在の無限の荒廃。それほど、深刻な犠牲をもたらすのです」と強調。「私が知っている、被害当時12歳の少年だった人のことを今でも覚えています。苦しんでいるのに何もできないことを疑問に思いましたが、60年経った今、CIASEの責任者になって、自分の疑問が十分に根拠があることに、ようやく分かったのです」と自己の体験を語った。

 一次報告書の発表を受けて、修道会代表者の会議では「被害者たちがどのような種類の補償を受けられるか」をテーマに議論がなされ、300人近くの修道会代表者が昨年11月にフランスの司教団が提案した”金銭面の賠償”を超えた「修復的司法(注:犯罪に関係する全ての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来への関わりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス)」の様々な側面について、意見が交換された。

 「赦し求める」をテーマにした議論では、修道会が「性的虐待で受けた傷のそれぞれ異なったケース」に着目して、被害者たちそれぞれに必要な対応を考える必要がある、との指摘があった。

 このオンライン会議には、2人の虐待被害者からも話を聴いたが、2人とも、被害者の傷を癒すためには長い時間かけての対応が必要、と強調。そのうちの1人は「教会の道徳的信頼性は粉砕されてしまった」と訴えた。

 この会議を主宰したフランス男女修道会総長連盟議長のシスター・ベロニク・マルグロンは「これは私たち一人一人が旅しなければならない道だと信じています。自分を低くし、美しいものをすべて残し、恥ずかしさを痛感し、許しを懇願します。そして、『すべてをコントロールし、大きく変える』という私たちのこれまでの願いを放棄します」と述べた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2020年11月20日