【シノドス総会】参加者全員による19日夕の「移民・難民のための祈り」が18日の会見の基調に

Press briefing of 19 OctoberPress briefing of 19 October 

(2023.10.19 Vatican News   L’Osservatore Romano)

 シノドス総会参加者は19日夕、聖ペトロ広場で移民・難民のための祈りの集いを開いたが、それに先立って同日午後行われたルッフィーニ広報長官による定例記者会見も、同席したツェルニー総合人間開発省長官たちからの苦難と犠牲を強いられている人々を教会としてどう受け止め、対応するかについての説明が中心となった。

 会見ではまず、ルッフィーニ長官から18日午後から19日朝にかけての35の作業部会での討議について説明があり、「聖霊における対話」に時間が割かれ、さらに準備要綱のセクションB3に焦点を当て、「参加、責任、権限」という一般テーマのさまざまな側面について議論が続けられた、という。

 (準備要綱B3の主題は、B3/3 が宣教の使命を負ったシノダル(共働的)な教会を強固にするために、どのような仕組みが必要か?」。 B3/4 が「現地教会のグループ化を含む synodality(共働性) and collegiality (合議性)の特徴は形成することができるか?」。B3/5が「すべてのシノダルな教会の中で司教による合議制を示すことができるように、世界代表司教会議(シノドス)をどのように強化することができるか」となっている)

 

*ツェルニー総合人間開発省長官「地球上で最も弱い立場にある人々と共に歩む」

 記者会見に同席した総合的人間開発省の長官、ミヒャエル・ツェルニー枢機卿は、19日夕の移民・難民のための祈りの集いについて「今回のシノドス総会で、教会として共に歩む方法を学んでいるが、これは地球上で最も弱い立場にある人々、すなわち、戦乱や虐待などから避難を余儀なくされている人々と、教会が共に歩むことを象徴するものとなることになるでしょう」と述べた。

 そして、聖ペトロ広場での祈りの中心に置かれるティモシー・シュマルツ制作のブロンズ像は「あらゆる年齢、あらゆる場所で、何らかの形で故郷からの避難を余儀なくされたすべての人々を象徴」しており、そこに表現された「移民・難民の人々の不安、無力さ、疎外感、そして、こうした現実を拒絶する私たちの社会の恐ろしい沈黙」と、「シノドス総会の会場内で私たち参加者が経験する調和と善意、そして…本当に深い交流」の「劇的なコントラスト」を指摘した。

 

*米ブランズビルのフローレス司教「メキシコ 国境の教区で、増加する中南米からの入国者を受け入れる」

 

また、会長代議員で総会準備委員会のメンバーでもあるダニエル・アーネスト・フローレス司教は、メキシコとの国境にあるテキサス州ブラウンズビルの教区長だが、「世界中の各教区の代表が、それぞれの現地の教会の賜物や経験を携えて、この総会に集まっている」としたうえで、自身の教区について「このところ、中南米から私の教区を通って米国に来る人の数が増えていますが、教区の信徒たちは彼らを迎える態勢をしっかり整えている。入国してくる母親や子どもたちの世話をするために時間を割くボランティア、レストランのオーナー、医師、看護師たちが活発に活動しています。カトリック教会だけでなく、キリスト教の諸宗派、イスラム教徒、ユダヤ人など他のコミュニティのメンバーも重要な貢献をしています」と説明。

 そして、「私たちの教区には、豊富な”物質的資源”があるわけではありませんが、住民の心はとても広く、貧困とは何かをある程度知っているので、非常に前向きに対応してくれています。 私たちが守るべき原則は、入国してくる人たちを家族として尊重し、最大限の敬意を持って扱うよう努める、ということです」と語った。

 

 

*マロン派修道会のアルワン前総長「世界最高の難民比率のバノンの国民は巨額の財政負担にあえいでいる」

 レバノンのマロン派宣教会の前総長、ハリル・アルワン神父は、東方カトリック教会協議会の事務局長で、ベイルートのレバノン大学の教授でもあり、東方諸教会を代表し、中東の総会参加者の調整役も務めているが、「シノドス総会には、これまで4回参加してきましたが、今回の総会は、討議の方法や内容が、従来とは違っている。 現実がすべて表現され、 それに参加することは、私たちにとって、教会の幸せな未来への希望を与える大きな恵みです」と述べた。

 そのうえで、レバノンにおけるシリア難民の状況について説明。「 国際社会がレバノンに彼らを留まらせ、欧州に行くことを妨げており、レバノンには現在、シリア難民が200万人以上、出生届も多く出されている。人口500万人のレバノンは世界で最も難民の割合が高い国になっています」と語った。

 そして、「このような状況を緩和するために、ある程度の人道援助が提供されていますが、最も求められているのは、難民が人としての尊厳を持って迎えられるようにすることです」と訴え、「 レバノン人は人間性ゆえに罰を受けています。難民はレバノンの国家経済に負担をかけている。国際政府機関では対処できないほどの巨額に上っており、結果として、レバノン国民はますます貧しくなっており、大きな怒りを引き起こしている。難民問題を”人道問題”とすることはレバノンに難民を留めておくための口実だ、と受け止めており、シリア人の難民の人たちの間に、欧州行きを求める多くの声が上がっている」と強調。

私たちは人類の悲劇に直面しており、世界の大国がこの悲劇を終わらせるために働き、シリア人がいつか自分たちの国と文化に戻れるよう、祈ります」と述べた。

 

*南アフリカ司教協議会副会長のムパコ司教「アフリカで最大の移民・難民受け入れ国、司牧ケアが課題」

 

 プレトリア大司教で南アフリカ司教協議会の副会長であるダブラ・アンソニー・ムパコ大司教は、南アフリカにおける移民・難民状況について概説した。

 ムバコ大司教は「自分の出身地を振り返って、多くのアフリカ諸国が既にこの”シノドスの道”を歩むための肥沃な土壌を持っていることに気づきました」としたうえで、「南アフリカは、アフリカで最も多い290万人以上の難民を受け入れており、彼らに司牧ケアを提供するという課題に直面しています」と指摘。さらに、「南アフリカに流入する難民の最大の原因は貧困。彼らの大半は『経済移民』です」と説明した。

 また大司教は、「難民・移民にとって最も人気のある目的地の一つであるプレトリアには、教会が『移民と難民のための司牧的ケアのための確立された奉仕』の態勢が整えられ、食料の提供や、 衣服、医、必要な書類作成などの支援を行っている」とし、「地元の教会は、彼らの言語で典礼を提供したり、移民・難民担当の宣教司祭を任命したりするなど、状況に応じた司牧的ケアを提供しながら、彼らが地域社会に溶け込めるよう努めています」と語った。

 

 

*カトリック教会におけるシノダリティ(共働性)とヒエラルヒー(ピラミッド型階層構造)

 

 記者団からは、「シノダリティに基づいた教会改革が、教区における司教の権威と特権を損なう可能性があるか」という質問が出たが、これに対して、フローレス司教は「その問題は新しいものではない。 教会による権威や奉仕は、回心に基づいていなければならない。いかなる組織にとっても前向きな目標を達成するために不可欠だからです」と述べる一方、この刷新がどのように行われるかについて多くの意見があることを認めた上で、「キリストにおいて互いに奉仕することに注力する人々に洗礼を施し、叙階することへの強い願望について、懸念している」と指摘した。

 ムパコ大司教は、「教会におけるシノダリティとヒエラルヒーという2つの構造が共存せねばならない、ということは万人に受け入れられているが、私たちが考えるべきは、教会のヒエラルヒーの運営方法にシノダリティが浸透する形で、この二つがどのように機能することができるか、ということです」と述べた。

 ツェルニー枢機卿は、「教会の階層構造は、聞くことから始まるプロセスを恐れるものではありません。 それが教会の階層的性質を損なうなどということはあり得ないのです」と強調した。

*難民とLGBTQ+

 

 難民の中のLGBTの人々の存在についての記者の質問では、ムパコ大司教が「どのように対応についての教会の立場は明白です。教皇はそれを非常に印象的で素晴らしい方法で体現されていると思います」としたうえで、「しかし、私たちが扱っているのは伝統的なキリスト教人類学であり、その人類学がこの問題にどのように関係しているのかを、調べようとしている段階です。 そして私の印象では、この問題はすぐには解決されないでしょう。私たちはキリスト教人類学を守りながら、私たちはLGBTQ+の人々が教会でくつろげる方法を模索しています」と説明した。

 一方、フローレス司教は、「自身の教区において、困難な状況にある家族を受け入れることが、『教会の慈善の使命』だ、と考えています。私たちは、すべてのボランティアに『苦しんいる人の中に、キリストの顔を探す』よう奨励している」とし、「私たちは、彼らにカトリック教徒かどうかは尋ねないし、キリスト教徒かどうかも尋ねません… 私たちは彼らに、政治信条を尋ねないし、性的指向についても尋ねません。ただ、苦しむキリストに仕えたいだけなのです」と強調した。

*ラテンアメリカ文化とシノドス

 またフローレス司教は、ラテンアメリカ文化におけるシノドスについての見方について質問を受け、「容易なことではありませんが、異なる文化を一つに結びつけることは、シノダリティの表現です。私自身は、ラテンアメリカ文化と英米文化を分け隔てしないバイリンガルの家庭で育ちましたが、それは、ある世界を別の世界に翻訳しようとする問題です。若い人たちはこれをうまくやる方法を知っていますし、特に国境地域に住んでいる人たちにとって、それは財産にもなります」と語った。

 だが、そのことを、「教会レベルで単純化することはできない。 地域のさまざまな教会の間で、対話に向けて前進するよう努力する必要があります」と述べ、 同様に、二つの世界に生きてきたツェルニー枢機卿も、自分にとって「人生は”翻訳”であり、両方の文化の中で生まれていても、いなくても、『synoding』は、”翻訳”する方法を学ぶことでもあるのかもしれません」と語った。

*「シノドス総会は外部からの圧力や”陰謀”の影響を受けていない」

 この後、ルッフィーニ長官から、作業部会の発言と総会の取りまとめ文書への賛否投票など総会の運営方法について説明があり、ツェルニー枢機卿からは「叙階された奉仕職に関する秩序と職権の関係」についての発言があり、「私は、秩序と職権の識別は克服されていると考えています。つまり、秩序を理解することはすべての職権には必要でなく、これまで聖職者、高位聖職者、場合によっては枢機卿が行使してきた職権に秩序は必要でないということです」とし、「教会の本質に危険はありません。すでに責任があり、おそらく枢機卿以外、司教以外、司祭以外の者に、その責任が委ねられることがますます増えていくからです」と付け加えた。

 また、記者からの追加の質問に対して、フローレス司教とムパコ大司教は、「現在のシノドス総会は、外部からの圧力や”陰謀”の影響を受けていない」と口をそろえ、フローレス司教は「”陰謀”があるとは思わない。 私はただ、使徒ペトロのケアの下で、正直で、誠実で、忠実で、慈しみにあふれた参加者の言葉に耳を傾けているのです。 それは信仰に対する脅威にはなりません」と言明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

Cardinal Czerny then spoke about the relationship between order and office with regard to ordained ministries, saying, “I think that the identification between orders and offices is something that is being overcome. In other words, we’re understanding orders not to be necessary for every office, which until now has been headed by a cleric and in fact a hierarch and in some cases even a cardinal”.

He added the assurance, “There’s no danger to the nature of the Church because there are responsibilities which are already being, and which perhaps increasingly will be entrusted to non-Cardinals, non-bishops, non-priests.

Responding to further questions from the media, Bishop Flores and Archbishop Mpako assured reporters that the synodal reflection was not influenced by external pressures or “conspiracies”: “I do not see a conspiracy”, said Bishop Flores. “I have simply heard honest, sincere, faithful, charitable conversations under, shall I say … ‘sub tutela Petri’, under the care of Peter. That is not a threat to the Faith”.

Finally, Cardinal Czerny, the Prefect of the Dicastery for the Service of Integral Human Development took the floor to give some details about tonight’s celebration in St. Peter’s Square for migrants.

2023年10月20日

【シノドス総会】総会後半にー「参加、責任と権威の役割。共に歩む宣教的教会におけるプロセス、構造、制度」についての討議続く

開催中のシノドス 2023年10月18日のミサ バチカン・聖ペトロ大聖堂開催中のシノドス 2023年10月18日のミサ バチカン・聖ペトロ大聖堂  (Vatican Media)

(2023 .10.18  バチカン放送)

 「共に歩む教会のため − 交わり、参加、そして宣教」をテーマに、バチカンで開催中の「世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会・第1会期」の討議と作業は、現在、全スケジュールの後半部に入っている

 4日から始まった同会議は18日、開催2週間目を迎えた。

 会議では、先週13日から17日まで、討議要綱のセクションB「交わり、宣教、参加。共に歩む教会のための3つの優先課題」のうち、B2.「宣教の共同責任者。福音への奉仕のためにいかに賜物と課題を分かち合うか」をめぐり作業が続いた。

 そして、18日、テーマは討議要綱の最終項目、セクションB中の「B3.「参加、責任と権威の役割。共に歩む宣教的教会におけるプロセス、構造、制度」に移った。同テーマの討議・作業は、21日まで続き、その後、23日から、29日の閉会に向けた最終的なまとめの作業が行われていく。

 このシノドスでは、新しい討議テーマに入る毎にミサが捧げられる。 最終テーマの討議が始まった18日午前、バチカンの聖ペトロ大聖堂の「司教座の祭壇」で、ヴィリニュス(リトアニア)の大司教、ジンタラス・グルサス師の司式でミサがとり行われた。

 ミサの説教でグルサス大司教は、ルカ福音書10章のイエスが72人を任命の上、派遣し、どこかの家に入ったら「この家に平和があるように」と命じたエピソードを取り上げ、「イエスが言われる平和は、この世が与える平和ではなく、シャローム、神の御心から来る平和です」とし、「神の平和は、慈しみと同じように、すべての人に与えられるものですが、イエスは、それをすべての人が受け入れるわけでないことをご存じでした。内的平和の恵みを得るには、まず神の慈しみを求めねばなりません」と説いた。

(編集「カトリック・あい」)

2023年10月19日

( シノドス総会ファイル)③「シノダリティ(共働性)」は、「新たな福音宣教」と同じ道をたどるのか?(Crux)

(2023.10.17 Crux Editor  John L. Allen Jr.)

ローマ発 – 10月4日に始まったシノダリティ(共働性)に関する世界代表司教会議(シノドス)総会は、日を追うにつれて、10年ほど前のシノドス—教皇ベネディクト16世の下で2012年10月7日から28日まで開かれた「新しい福音宣教」に関するシノドス—にますます似てきたように思われる。

 二つのシノドス総会の類似点は次のようなものだ。

・ヨハネ・パウロ2世教皇とベネディクト16世教皇のもとでは「新しい福音宣教」が教皇にとっての最優先事項と理解され、教皇フランシスコのもとでは、「シノダリティ(共働性)」が最優先事項とされている。

・この二つの buzzword(もっともらしいが実際には 意味があいまいな 言葉)は、その明確さよりもその遍在性によって、いずれの場合も際立っていた。 「新しい福音宣教」は、「信仰から遠く離れたカトリック教徒への布教」という単純な考えとして始まったが、使われ過ぎて、意味が非常に柔軟になり、ほとんど「善い」の同義語になった。 同様に、「シノダリティ」は、「互いに耳を傾け合うことと対話を基礎に置く教会のスタイル」への言及として始まったかも知れないが、やはり、使われ過ぎるうちに、それが「システムが承認するものすべてを包括する用語」に変わりつつある。

・二つのシノドス総会はともに、大きな国際危機の下で開かれている。 2012年のシノドス総会の場合は、シリア内戦の勃発だったが、今回の総会は、ガザ地区でイスラエルとハマスの間で渦巻く戦乱の勃発だ。 2012年のシノドス総会は、世界の教会を代表して懸念を表明するためにシリアに代表団を派遣しようとしたが、安全上の問題と政治的介入の疑念で瓦解した。今回の総会が、ガザ地区の戦乱にどのような具体的な対応をするのか、まだ分からない。

・二つのシノドス総会はともに、大スキャンダル発覚で注目を集めるバチカンでの裁判と同時進行の形で開かれている。 2012年10月は、イタリア人ジャーナリストへの機密文書漏洩で元教皇秘書パオロ・ガブリエレが有罪判決を受けた。今は、教皇の側近だったアンジェロ・ベッチュウ枢機卿を含む10人の被告が、さまざまな金融犯罪容疑で裁かれる「世紀の裁判」が大詰めを迎えている。

 そして、2012年のシノドス総会は、カトリック教会における「ヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世の時代」の最後の大行事となった。 閉幕からわずか3か月余り後の2013年2月11日に当時85歳だったベネディクト16世が辞任を発表し、教皇フランシスコ選出の準備が整えられたのだ。

 今、教皇フランシスコは86歳で、シノドス総会を主宰している。現時点で教皇に健康危機の兆候はないが、少なくとも来年10月の第2回会期を含むこのシノドス総会の大事業を自らの手で終了させる可能性はある。

 だが、より基本的な問題は、ヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世の後に、「新しい福音宣教」に降りかかったのと同じ運命が、このフランシスコの後の「シノダリティ(共働性)」に降りかかるかどうか、ということである。

 「新しい福音宣教」という言葉を主導してきた教皇たちが去った後、その言葉への言及が公式の隠語や実践から、驚くべき速さで消え去った。 2012年のシノドス総会で出された「カトリック大学への『新しい福音宣教』の部門新設」「世界中の教区への『新しい福音宣教のための養成センター』の新設」「司教協議会やその他の教会組織内への『新しい福音宣教のための新委員会の発足」は勧告で終わった。

 新教皇にフランシスコが選出され、ローマの地盤が変わると、「新しい福音宣教」はもはや新教皇の関心事ではないことが明らかになり、勧告を実現する動きはほとんど起こらなかった。 2010年に鳴り物入りで設立されたバチカンの「教皇庁新福音宣教評議会」は、2022年に活動が停止され、新しい福音宣教省に吸収されるまで、わずか12年間しかもたなかった。

 一般に官僚組織が専門の部門を作ることで(職務の)優先順位を示していることを考えると、そのような部門を廃止することは通常、「関心が薄れていること」と同義、あるいは反語である。 官僚組織以外でも、話はほぼ同じだ。たとえば、米国の司教のウェブサイトを調べてみると、「新しい福音宣教」の専門ページは、ベネディクト16世の治世の後期以降、基本的にバチカンのテキストで更新されていないことがわかる。

 これは「新しい福音宣教」の旗印の下に放出されたエネルギーが単に消滅したと言っているわけではない。 堕落したカトリック教徒に手を差し伸べる取り組みは、この運動が最高潮に達していた時期にいくつも生まれ、その多くは大きな成功を収めています。

 さらに、教皇フランシスコの「シノダリティ」は新しい福音宣教の独自のバージョンであり、この考えは語彙的に消え去ったのではなく、むしろ新しい装いをとったと主張するでしょう。 それにもかかわらず、「新しい福音宣教」と銘打たれた取り組みは、10年前と同様に教皇から直接的、かつ明示的に、奨励されていないと言えるのは依然としてバランスを欠く。そしてそれは、教皇の出入りに応じてカトリック教会において認識されている優先事項がしばしば変わることを思い出させる。

 将来、2012年に行われたのと同様の”廃止”が、「シンノダリティ」を取り巻くかどうかは、時間が経てば分かるだろう。 しかし、新しい福音宣教とシノドス総会の両方の信奉者にとって良いニュースは、カトリック教会では、実際に消えることはないということです。 カトリックは、おじいちゃんの屋根裏部屋のようなものです。 おじいちゃんが持っていたものはすべて、まだそこにあり、ホコリを払って再び使用できるのを待っている。その時、車輪が回転すると突然、それが再び価値のあるものになるのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年10月18日

【シノドス総会】「シノドス総会は”トーク・ショー”ではない、世界でどのように教会が歩むべきか熟慮する場だ」

A working group at the General AssemblyA working group at the General Assembly  (Vatican Media)

(2023.10.17 Vatican News   Salvatore Cernuzio)

 シノドス総会の17日昼までの進行状況などについて、バチカン広報省のルッフィーニ長官が17日夕、定例の記者会見を開き、4日以来、総会に参加している枢機卿、司教、司祭、修道女、修道者、信徒の話し合いの模様などについて説明。全体会議や35の作業部会では、司教の務め、女性の役割、教会法改正の可能性、信徒の貢献などが話し合われている、と述べた。

 長官の会見には、モロッコ・ラバト大司教のクリストバル・ロペス・ロメロ枢機卿、オセアニア地域司教協議会連盟会長で豪ブロークン・ベイ教区長のアンソニー・ランダッツォ司教、それに著名な神学者である レネー・ケーラー=ライアン・シドニー・ノートルダム大学教授とナイジェリアのイエズス会士アグボンキアンメゲ・エマニュエル・オロバトル教授が同席し、「聴いて学ぶ」という総会での経験」に満足していると口をそろえた。

*「協力」から「共同責任」へ―教会法改定の可能性

 

 記者会見の冒頭、ルッフィーニ長官は、17日の朝に聖テレジアに関する教皇の使徒的勧告「C’est la confiance」が総会参加者に改めて配布された、としたうえで、今週初め、16日から17日昼にかけての全体会議と作業部会では、準備文書の「福音宣教の使命における共同責任」に関するモジュールB2をもとに意見を交換した。 「共同責任」とは、「改正」が求められている教会法における「協力」に代わる導入が提案されている言葉だ。

 教会法の専門家であるランダッツォ司教は、「教会法はその前提としているものが変われば、当然、変わり得ます。法規の中には、特定の地域社会や状況、状況のニーズに応じて適応させることが可能なものもある」と述べた。

 

*「女性たちの関心は『叙階』だけだと考えると、世界の大半の女性たちの関心を忘れてしまう」

 また教会改革に関して、総会参加者たちは、まず「diaconate(叙階)の本質」を明確にしたうえで、それを女性に開放する可能性について議論した。 教会における女性の役割に関して、ルッフィーニ長官は、参加者たちの議論では「イエスが女性を retinue(随行者)として扱われたこと」が想起され、「最初に主の復活を宣言した女性たちが説教をしなかっただろう、ということを想定することは可能でなかったかのかどうか、という問いが持ち上がった」と説明。

 また、 「(教区や小教区の)司牧評議会に女性が出席することで、意思決定がより現実的になり、地域社会がより創造的になる」という意見も出た、とし、会議で語られた格言を引用して、「何かについて話したいなら 男性だけの集まり、何かをしたいなら女性の集まりを開くといい」と述べた。

 このように、教会における女性の役割に議論の多くが割かれたが、女性の司祭叙階については、それが唯一の役割ではなく、あるいは主要な役割とする意見はなかった。ケーラー=ライアン教授は、女性の司祭叙階は、「女性たちの要請を必ずしも反映していない”ニッチ”な問題です… (女性の司祭叙階に関する)問題が強調されすぎていると思う」と述べ、「この問題を重視しすぎると、世界中のほとんどの女性が求めていること、つまり住居、食べ物、衣服、そして子供たちの将来についての問題を忘れてしまうことになりかねない」と指摘。 「子供たちに未来を、そして教会に迎え入れられる未来、そして知っている人や愛する人全員が教会に歓迎される未来を持ってほしいと思っています」と語った。

 

*「信徒の奉仕を司祭不足の一時しのぎにしてはならない」

 作業グループと個々の参加者の発言について出された報告では、「教区—”給油所”ではなく、交わりの場—とコミュニティの重要性」、「 信徒の奉仕を司祭不足の一時しのぎの手段としない、聖職者化しない」「そして受洗者の共同体は司祭の奉仕なしでは成り立たない」などを指摘する意見も出ている。

 

*「司教は、何でも抱え込まず助けが必要、虐待被害者の声を聴く時間と場も必要」

 

 シノドス総会情報委員会のシーラ・ピレス氏によると、17日の午前の会議では、司教の奉仕活動にも同様の関心が払われ、「司教は信者たちに寄り添い、愛、配慮、懸念を表現する父親のような人物とみなされている」という発言や、「 司教は、諸宗教間および信仰一致のための対話を促進しなければならず、財政、経済、法的側面を管理しなければならない。まさにそのような問題に忙殺されないように、協力者や専門家から助けを受けることができた」という報告もあった。 「司教は、『自分だけが教区ではない』ことを理解せねばなりません。一人ですべてを行うことはできず、助けが必要です」と述べた。

 会議ではまた、司教候補の育成、司教と聖職者、および新司教との関係にも関心が集まり、「司教は、虐待被害者の声に耳を傾けることを避けるべきではない」といことが強調された。そして、彼らの声を聴くための時間と空間が必要です」と語った。

 

 

*「我々は半分まで来た、まだあと一年、作業が残っている」

 今総会の会議では、幅広い問題について話し合われているが、ロペス・ロメロ枢機卿は、「これは2021年10月に始まり、2024年まで続く”シノドスの旅”の半分に過ぎません」と述べた。

 そして、「私たちがここローマで経験している事だけが”シノドスの道”ではない。過去2年間に世界中の小教区、教区、修道会で経験した何千回もの会合は、それだけの価値はあった。私たちは灰から、新しい火を灯すことができました」とする一方、「現段階では具体的提案を期待すべきではありません。まだ少なくとも1年の作業が残っており、なすべき課題があります。それをこなしたうえで、より具体的な提案に至るための結論を導き出すのです」と強調した。

 

*「普遍的な教会として、私たちはどのような立場にあるのかを理解する」

 

 ケーラー=ライアン教授は「このシノドス総会で今起きているのは、普遍的な教会として非常に多くの異なる声を聞く機会がもたらされ、祈りの気持ちを持って互いに耳を傾けることに重点を置くという非常に重要だということだと思います」とし、「信徒の参加」が「このシノドス総会の最も重要な点の一つ」だと指摘した。。

 また、今総会は、「普遍的な教会としての私たちがどのような立場にあるのか、また私たちが全世界で多くの点で共通した立場にあることを理解するための素晴らしい機会になっています。私たちにはキリストとその母についての普遍的な教えがあり、私たちの教会について知らない人々に手を差し伸べようと、真剣に努力している…  そして、まだデジタル技術にアクセスできない人々がいることを理解しながら、デジタル技術など様々な方法で、それを実現しようとしています」と述べた。

*「世界中の信者が、皆同じ条件にあるわけではない、『欧州的見方』をすべきではない」

 デジタルの問題については、ランダッツォ司教も、「デジタル通信とデジタル世界のシンノダリティ(共働性)について話すとき、 『燃料を積んだ船が、しばしばそばを通る島』を思い起すといい。島に 船が来なければ、燃料が手に入らず、発電機も動かず、コンピューターがあっても接続できず、孤立してしまいます」と述べ、物事を「欧州的な見方」で見ないよう、つまり、「ある場所から別の場所に移動したり、たとえば教区に行くために、誰もがタクシーや電車に乗れるのが当然」と考えないように促した。 

 そして、「このシノドス総会で私にとって本当に素晴らしい経験の一つは、欧州の伝統的な教会に所属する人たちだけでなく、世界中から来た人たちとテーブルを囲み、時折コーヒーを皆で飲むことです」とし、これは私にとって、とてもシノダリティ(共働性)を感じます。そして、教皇フランシスコの天才的なところは、これが何もない所から生まれるものではない、ということです」と語った。

*「シノドス総会は、『結果』よりも『プロセス』が重要になる」

 オロバトル神父もランダッツォ司教の意見に同意し、「この総会は、神学者にとって『生きがい』の一環、つまり”資源”を引き出すプロセスの一環です。おそらく、結果よりもプロセスの方が重要になるだろうと確信している。教会というコミュニティとして、人々を誰でも、立場や地位や状況に関係なく、新しい生き方を体験できるように導く枠組みとメカニズム、だと信じています。また、教会では、自分たちの意見を聞いてもらうだけでなく、識別のプロセスに貢献することもできます」と述べた。

 

*「総会参加者の間に多くの意見の相違があるが、”派閥同士の衝突”ではない」

 また、ロペス・ロメロ枢機卿は、「シノドス総会参加者の間には、多くの意見の相違が生じていますが、それらは決して”派閥同士の衝突”ではなく、”憎しみや敵意”を伴ってもいません。この会議の趣旨は、『対話すること』であり、『相手に応答すること』ではありません」と指摘した。

 関連して、ルッフィーニ長官は「シノドス総会は、記者からの問いに答えるように設計されているのではなく、プロセスから生じる教会の識別のために設計されています。  その識別は、『教会が世界でどのように歩むことができるか』に関係しています」と説明した。

*「女性問題やLGBT+の人々の問題は、記者だけでなく、多くの信徒が関心を持って見ている」

 これに対し、記者からは、「いくつかの問題、特に教会における女性の役割とLGBT+の人々を受け入れる問題は、単なる記者の関心の問題として扱われるべきではない。 まさにこれらの問題については、これまでの(司教区、小教区レベルなどの「”シノドスの道”の歩みで、多くの信徒たちが時間とエネルギーを費やして議論してきており、今、その答えを待っている人々が多くいる」との意見が出された。

 長官は、「指摘された問題は、総会での議論の対象となっている」ことを認めたうえで、「シノドス総会は確かに単なる”円卓会議”ではなく、もちろん”トーク・ショー”でもなく、『聖霊による対話』です。今総会では、報告書をまとめ、それが世界の『神の民』に送られ、その後再び総会が開かれます。 ロペス・ロメロ枢機卿が語ったように、それはまだ長いプロセスであり、忍耐と希望が必要です」と説明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年10月18日

【シノドス総会】「シノダリティ(共働性)は”決まり文句”でなく、日々の実践だ」16日午後の記者会見で

Synod briefing (file photo)Synod briefing (file photo)  (Vatican Media)  cliche

(2023.10.16 Vatican News   Federica Piana)

   シノドス総会の16日月曜午前までの討議状況などについて、バチカン広報局のルッフィーニ長官が16日午後、記者会見した。

 それによると、全体会議や35に分かれた作業部会では、シノダリティ(共働性)の真の意味、多様性における豊かさ、教会での受洗者の役割、宣教活動、キリスト教一致と宗教間対話、女性助祭からみた女性の教会での役割、デジタル革命、 最新技術から完全に切り離されている世界の貧しい国の若者たちの問題、などが忘れないこと、などが話題に上っている。

 長官によると月曜の全体会議は冒頭、教皇が前日15日に出された、リジュ―の聖テレジア生誕150年を記念する使徒的勧告「C’est la confiance」に注目することから始まった。また、これまでの各作業部会からの最初の討議報告についての検討もされた。

 記者会見にゲストとして出席したスリランカ出身の神学者ヴィマル・ティリマンナ神父(C.S.R.)は今総会に出席しての感想について、「シノダリティ(共働性)は、その人が実行するときに起きることを実感した… 総会に参加するまでは『シノダリティ』は単なる決まり文句だ、と思っていた」が、「霊的な対話の仕方に補完された素晴らしい祈りの雰囲気のおかげで、私たちはシノドスの道、シノドスの生活様式が、実際に、どのように生きているかをしることができました」と語った。

 神父は、これがテーブルの配置にもどのように反映されているかを強調し、枢機卿、司教、信徒、特に女性が「ピラミッド型の教会ではなく、同心円状の教会… 互いに肩を触れ合った経験」を指摘。 「この総会には、シノダリティの文化が息づいています。私たちの 課題は、それを会議場の外に持ち出すことです」と述べ、また、シノドスの道は、「教皇フランシスコの個人的な課題ではなく、第二バチカン公会議の継続なのです」と強調した。

 

 女子修道会の世界的な集まりである国際修道会総長連盟(UISG)の事務局長、シスター・パトリシア・マレーは、「シノダリティが、ますます現実のものになっていることを、うれしく思っています」とし、「女子修道会のメンバーとして、私たちは20年以上にわたって、シノダリティ(共働性)を実践してきたと感じています… 特に人生において重要なことについて決断を下し、結論を出した時には、そうでした」と語った。 そして、「イエスと聖霊を私たちの生活の中心に据え、修道会の全員の声に耳を傾けて、今、神が私たちをどこに召されているのか、どこに神が会衆を召されているのかを見極めることが、多くの集会で実践されてきました… ですから私にとって、このシノダリティ共働性)という言葉が普遍的な教会に広まるのは、さらなる喜びです。これが私たちが生き、共にいたい、と願う方法であり、参加、交わり、使命の言葉なのです」と述べた。

 

 プラハ補佐司教のズデネク・ヴァッサーバウアー司教は、リジューの聖テレジアについての使徒的勧告に感動したと述べ、「私は、この使徒的勧告の中にシノドス全体の羅針盤を見ています… これまでの総会の話し合いで、『使命』という言葉が私たちにとって重要なポイントであることをはっきりと認識しました」とした。

 そして、なぜこの使徒的勧告が導き手または道しるべとみなされるのかについて、「まず、私はこの総会で400人の会員全員が毎日、他者の利益や救いを求めて集まっていることに気づきました。 そして、1856年にリジューの聖テレジアは魂の中で感じた暗い夜に言及し、今日も、三千年紀の教会は暗闇の中にある、と言う人がいますが、この総会は、暗闇を照らす光となっているからです 

 LGBTQ+の人々の「痛み」について議論されたかどうかについての記者の質問に、シスター・マレーは「35全部ではありませんが、多くの作業部会で、意見が述べられ、話し合われました。そして、教会がどのようにその傷を表現できるかについても議論されています。また引き起こされた痛みと苦しみについて深い認識があります」と説明。

  別の記者の「同性カップルへの祝福の問題が取り上げられたか」との問いには、ルッフィーニ長官が、その問題は「中心的なものではありません」とだけ答え、その問題よりも、組織形成、聖職者任命、貧しい人々への優遇措置、植民地主義についてもっと議論がなされています」と説明。「カトリックの教義は、総会での議論のすべての中心になっている」と付け加えた。

  さらに、長官は、シノドス総会に出席している中国の司教たちが明日、バチカンを離れる、という情報が間違っていなことを確認し、それぞれの教区に戻る司牧上の理由からそうするのです」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2023年10月17日

【シノドス総会】「一致点と相違点を強調し過ぎないように、前向きな提案を」総会総括責任者が作業部会での討議で注意

Cardinal Hollerich presents the theme of the third module of the General Assembly of the Synod of BishopsCardinal Hollerich presents the theme of the third module of the General Assembly of the Synod of Bishops 

(2023.10.13  Vatican News   Christopher Wells)

 シノドス総会の総括責任者、ジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿が13日朝、同日からの全体会議、作業部会での分かち合いのテーマとなる準備要綱のモジュールB2「宣教の使命における共同責任—福音の奉仕において、私たちはどのようにして、賜物と仕事をより良く分かち合えるか」について説明した。

 枢機卿は、『宣教のテーマは、昨日までの分かち合いの中でも継続的に取り上げられました。『交わり』は内に閉じこもらず、宣教へと駆り立てます。そして宣教は、その交わりの範囲を広げること」と述べ、世界で新たに形成されつつある”デジタル大陸”を取り上げ、「この”大陸”は、その”住民”によって宣教されねばならない、新たな宣教の領域です… それは同時に『共同責任』の概念も際立たせています。そして、デジタル大陸に当てはまることは、教会の使命の他の側面にも当てはまります」と説明。

 さらに、各作業部会が取り組む5つのワークシートについて手短に説明し、「これらには、使命の意味と内容を深めることが含まれます- 聖職者、 女性の役割。 叙階された聖職と洗礼を受けた者の聖職の関係、 そして司教の聖職についてです」と述べ、「互いの言葉のためのスペース」を作り続ける必要を強調した。

 また枢機卿は、「全体会議での参加者の自由な意見の表明は、会議直前の作業部会で共有された洞察と共有されるものであること」「これまでの作業部会の分かち合いの結果の報告と報告者の発言で、参加者の意見の一致と相違に重点が置かれる傾向が顕著になってきていますが、総会期間中に、探求すべき課題と、具体的な方策を提案することが重要です。今日これからは分かち合うモジュールB2では、今総会での重要なポイントのいくつかに触れますが、難しい設問のあらゆる側面を考えたり、性急に答えを出そうとしたりしないようにしましょう」と参加者の理解と協力を求めた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2023年10月14日

【シノドス総会】戦争ではなく、友愛の 追求が、紛争解決の唯一の道だー12日の記者会見で

An image from a briefing on the Synod at the Holy See Press OfficeAn image from a briefing on the Synod at the Holy See Press Office  (Vatican Media)

 ガザ地区での戦闘に関連しては、「イスラエルでは多くの人が、ガザに住む人々と対話の橋を架けることに疑問を持っていますが、私のユダヤ人の友人は、イスラム教徒と同時に祈り、祈りの中で団結することを決意しています」と説明。和平に向けた交渉が再開され、紛争解決が緊急の課題であることを多くの人が認識するように、世界の国、世界の人の協調行動の必要を訴え、 「まだ沈黙が多すぎる。 私の声だけでは成果は出ません。 人権の尊重と民族間の和解を促進するには、世界中の人々の関与が必要です」と強調した。

 

*アフリカとシノダリティ(共働性)

 カメルーンの司教協議会会長、アンドリュー・エンケア・フアンヤ大司教は、「シノダリティ(共働性)はアフリカ文化の一部を形成している。なぜなら、私たちは常に家族として一緒に物事を行うからです」と述べたうえで、「今回のシノドス総会は、アフリカにとって非常に大きな慰めになると思います… アフリカは多くの問題を抱えており、私たちは時々孤立し、見捨てられた、と感じています。 しかし、この総会に参加して、私たちは、ここに参加していない地元の教会の人々と共に、アフリカで起きている問題、特に戦争の影響を受けている国々のために祈ります。これはアフリカにとって、シノドス総会に自らの足跡を残す非常に素晴らしい機会だと思います」と語った。

*「異なる言語を結びつける福音」

  バグダッド保健センターの医師で Congregation of the Daughters of the Sacred Heart of Jesusの会員、シスター・キャロライン・ジャルジスも、今のシノドス総会で「一つの家族」になる経験をした。12日朝の祈りの集いで、他の参加者と共に、自国語のアラビア語で福音書を読み、自分の言葉がどのようにすべての人に理解されたかを知って、衝撃を受けた、という。 「神は、私たちがシノドス総会で行う働きの中におられます。 私たちを選び、ローマに来る前に備えさせてくれました。私たちはすべてを分かち合った最初のキリスト教徒の経験を共にしています」と語った。

*「イラク殉教者たちによってもたらされた教会の豊かさ」

 

 また、シスターは、 「私は戦争中の国から来ています。キリスト教徒は少数派ですが、私たちの教会の豊かさは、殉教者たちの存在によってもたらされています。 殉教者たちの血は、私たちに前へ進もうとする力を与えてくれます。私は、普遍的な教会との交わりの経験から得られる、大きな力を持って家に帰ります」と述べた。

 イラクでは、ラシド大統領からキリスト教の長と認める布告を取り消されたサコ枢機卿がバグダッド総主教庁本部から退出することを決めたことについて、記者から質問を受けたシスターは、「殉教の地で、キリスト教徒として尊厳を持って生きるのは正しいことです。私たちは二級国民ではありません」と答えた。

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 12日の午後、シノドス総会参加者たちは、聖ペトロと聖パウロの遺物を一時保管している聖セバスチャンのカタコンベ、聖カリストスと聖ドミティラのカタコンベへの巡礼をした。

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*8回目の全体会議は「使命における共同責任」がテーマに

 

 13日の朝は、コンゴ民主共和国のアンボンゴ・ベスング枢機卿が司式する聖ペトロ大聖堂祭壇でのミサの後、8回目の全体会議が開かれ、「使命における共同責任: 福音への奉仕において賜物と任務をよりよく分かち合うにはどうすればよいか?」というテーマで、準備要綱の 3 番目のモジュールに取り組む。 これに先立つ「交わり」をテーマにした2番目のモジュールについては、11日午後と12日午前に作業部会の後の全体会議で、各作業部会からシノドス事務局長に報告書を提出している。

 

*7回目の全体会議では36人が発言

 12日の7回目の全体会議には343人が出席し、36人から、 「宗教間および異文化間の対話」「 植民地主義が先住民族コミュニティに与えた影響」「 罪の赦しを求めれば受け入れられる『和解の秘跡』の重要性」、 そして、「イエスに会いたいと願う若者たちの声に耳を傾け、それに参加すること」などをテーマに発言があった。また、シノドス総会の働きの中心として「カルカッタのマザー・テレサの姿と彼女の病人へのケア」が挙げられ、「 カトリック指導者の平和促進への取り組みの緊急性」「疎外された女性たちのドラマ」「教会活動における互いを包み込み、耳を傾ける必要性」なども語られた。

*シノドス総会におけるマリアの存在

 

 記者会見の最後に、ルッフィーニ長官は、12日が「アパレシダの聖母」と「ピラールの聖母の祝日」であることを挙げ、「今朝、シノダル(共働的)な教会におけるマリアの姿の重要性が強調されました。 マリアは母であり、信徒であり、預言であり、対話であり、カリスマであり、聖性であり、生きた福音です」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2023年10月13日

【シノドス総会】12日朝の全体会議でイスラエルとハマスの戦いの最中にある中東の人々のために祈り

(2023.10.12 Vatican News   Deborah Castellano Lubov)

 シノドス総会は12日の全体会議での朝の祈りを、特に聖地の平和を祈ることに捧げ、バグダッドのカルデア・カトリック教会のルイ・ラファエル・サコ総主教が「世界中で戦争に苦しみ、恐怖の中で暮らしているすべての人々」のために祈った。

 総主教は祈りの前に「世界、特に聖地だけでなく、ウクライナ、イラク、イラン、レバノンでの暴力の平和のために祈っていただきたいと思います… それぞれの国の人たちは、将来に大きな希望を抱き、恐れや不安を抱えながらではなく、尊厳と友愛のうちに生きることを待っています」と述べ、「人類が暴力のない一つの家族となるように」と、祈り、友愛、そして苦しんでいるすべての人々との連帯を呼び掛けた。

 参加者たちは詩編130章(Vatican News は「129章」としているが、130章の間違い)の「主よ、深い淵の底からあなたに叫びます。わが主よ、私の声を聞いてください」(1‐2項)など、いくつかの祈りを唱え、サコ総主教も「ああ、すべてを顧みられる神よ、あなたを起源とする人類全体が、暴力もなく、不条理な戦争もなく、兄弟の精神をもって一つの家族を形成し、平和に団結して暮らせますように」と祈った。

 また、フォコラーレ運動の指導者でパレスチナ人のカトリック教徒、マーガレット・カラム氏も 「主よ、私たちは聖地のために、前例のない暴力にさらされているイスラエルとパレスチナの人々のために、犠牲者、特に子供たちのために、負傷者のために、人質にされた人々のために、行方不明者とその人々のために祈ります。苦悩と停滞のこの数時間において、私たちは教皇の声と、平和を願う世界中の人々の合唱の祈りに声を合わせます」と祈った。

 さらにカラム氏は、中東の他の国々や戦争中のすべての国が恐怖と破壊の中で暮らしてきたことを振り返り、 「主よ、これらの民族と、不安定と暴力による紛争という同じ状況にある人々が、正義、対話、和解が不可欠な手段となる人権尊重の道を見つけることができるよう、兄弟的な世界の構築に尽力できるよう私たちを助けてください。 平和を築いてください」と主に願った。。

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 教皇フランシスコは、これまで、水曜の一般謁見などの機会に、聖地や中東で暴力に見舞われた国々など、戦争に苦しむ国々の平和のために数え切れないほどの祈りを捧げてきた。 昨年2月にロシアの軍事侵攻が始まって以来、苦しみ続けているウクライナの和平実現に数え切れないほど祈り、行動してきた。 中東にも、2021年3月にイラクを訪問している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年10月12日

【シノドス総会】参加者全員が、戦争の犠牲者たちのために祈りを捧げるー11日の記者会見での報告

Participants in the briefing at the Holy See Press OfficeParticipants in the briefing at the Holy See Press Office 

*ガザ地区で起きている「血なまぐさい戦争」の悲惨さを念頭に黙祷

 

 ルッフィーニ長官によると、シノドス総会の6回目の全体会合は、ハマスが引き起こしたパレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとの「血なまぐさい戦争」の悲惨さを思い起こすアーサー・ロシュ枢機卿が主導する黙祷で幕を開けた。

 ラクロワ枢機卿は、これまでの会議での「豊かさ」の経験について報告。ウラキア氏は、パプアニューギニアの「小さな」コミュニティの声を届けた。

 地中海での数千人の死者に対する「憤り」から生まれ、海上での人命救助に当たっているNGO「Mediterranea Saving Humans」の創設者のカサリーニ氏は、「Mare Nostrum(私たちの海)」での取り組みについて説明。自己の経験を二つの貧困の「出会い」と呼び、「それは、『唯一の資産である土地』を離れることを余儀なくされた人々の物質的な貧困と、『恐怖を悼み、拒絶する能力』を失ったかに見える西洋諸国の精神的な貧困だ」と語った。

 ルッフィーニ長官は、10日に聖マルタの家で開かれた「小さな『作業部会』」について報告。ローマ市内の貧困者が食事会に招かれ、教皇フランシスコと慈善事業担当のコンラッド・クライェフスキーから、教会に期待することについて意見を聞かれた。「彼らの答えは、ただ『愛』でした」と長官は述べた。

*61年前に聖ヨハネ23世が始められた第二バチカン公会議とシノドス総会

 

 10日の全体会議の出席者は339人、11日朝の祈りには345人が参加し、この日、誕生日を迎えたイタリア司教協議会会長のマッテオ・ズッピ枢機卿が先唱、1962年10月11日に第二バチカン公会議が始まった記念日でもあるこの日、公会議の唱道者である聖ヨハネ23世のとりなしを求めた。

 ラクロワ枢機卿がヨハネ23世は『預言的』な方でした。高齢で病弱であったにもかかわらず、聖霊によって公会議開催の霊感を受け、実行されました。しかし、その結末は生きてご覧になることはできなかった」と語り、「私たちが使っている方法論は、主、主の言葉、洗礼を受けた一人ひとりの中の主の存在、を聴くことに向けられています。そしてこのことが、私たちの心を他者に開かせるのです」という、聖ヨハネ23世が公会議の開催に当たって言葉を読み上げた。そして、「神の言葉を聞くことによって、私たちは微妙なニュアンスを受け、自分の考えを変えられます。そうすることで、神がすべての人々の中で働き、働いていることが分かるのです… その働きを生きることで、私たちは自分の考え方を調整し、洗練し、少し変えることができるのです」と強調した。

 その延長に、今回のシノダリティ(共働性)をテーマとするシノドス総会が支持する考え方として、これまでなおざりにされていた人々が声を上げられるようにするとともに、「他者の介在で明らかになったことに挑戦を受けさせる」ことがある。

 この点に関して、ワラキア氏は、ソロモン諸島とパプアニューギニアの代表をシノドスに招待されたた教皇に感謝し、「何年もの間、私たちは他の人の声に耳を傾けてきましたが、今度は自分から話したいと思います。そして、皆さんにそれを聴いてもらいたい。 私たちには世界に提供できるものがある。私たちが心から提供できるのは、私たちの暮らし方、交わりの中で暮らし、共に暮らし、関係を築くことです」と語った。

 

*戦争、貧困、気候変動の犠牲者たちへの対応は

 また、ルッフィーニ長官は、作業部会や全体会合の内容について、「多くの発言者が、平和と戦争に苦しむ人々について触れた」とし、「戦争と暴力によって損なわれた今の世界で、キリスト教徒がどのようにして、平和と和解のしるしとなり得るか、について語り、 紛争に苦しむ国々と「一部の東方教会の苦しみ」に真剣に対応するよう「強い訴え」がなされた、と説明した。

 総会の広報担当のシーラ・ピレス氏によると、一連の会合で、浮上したもう一つのテーマは「貧困に寄り添い、謙虚で、自らを低くし、貧しい人々と共に歩む教会の在り方」。 「さまざまな顔を持つ」貧しい人々、排除された人々、移民・難民、気候変動の犠牲者、さらには世界の一部地域の女性や姉妹たちも、「二級国民とされ、虐待されることから守られるべき存在」であることも強調された、という。

 

*性的虐待スキャンダルで教会の信頼性に疑問符が付いている

 

 性的虐待を含む虐待への対応も、もう一つの中心テーマだった。 「性的虐待などのスキャンダルによって、私たちの教会の信頼性に疑問符が付いている。性的、物理的、精神的な虐待をすべて根絶するために、あらゆることを行い、あらゆることを継続し、被害者に寄り添う必要がある」という意見も出された、という。

 作業部会や全体会合での報告では、「性的同一性」の問題も取り上げられた。 長官は、「この問題は、福音と教会の教えに忠実でありつつ、責任と理解を持って取り組まなければならない問題です」とし、「性に関する教会の教えに対するさらなる洞察を求める人もいましたが、一方で、今以上に識別する必要はない、という意見もありました」と述べた。

 また長官は、総会参加者たちが自問したのは、「教会の教えに忠実でありつつ、離婚した同性愛者のカップルへの、愛に関する司牧的配慮を具体的にどのようにするか」だった、とし、「これらの問題について発言した人たちは、多かれ少なかれ、『あらゆる形の同性愛への嫌悪を否定せねばならない』という意見でした。また何人かから、『現実と個人の個人的な歩みを知らないことから、多くの困難が生じるのだ』との指摘がありました」と説明した。

*移民・難民問題への対応は

 移民・難民の問題に関しては、一部の司教から「移民・難民の受け入れでより良い状況にある他国の司教協議会に助けを求めた。これは、受け入れられた人々が確実に社会に溶け込めるように開発された手法から恩恵を受けられる方法です」との説明があった。 移民・難民への対応では、「自分たちの国の法律を尊重する必要もある」ことも再確認された、という。

 シノドス総会では、「怒りと憤りを、敬虔さに変える方法を学んでいます。私が学んでいるのは、相手の立場に立つことです。自分ですべてを解決できると期待せず、行動してくださるのは聖霊だ、と確信することです。聖霊に働きは、 とてもクレイジーなことが起こすこともある… 私がシノドス総会に出席しているということも」とカサリーに氏は語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年10月12日

【シノドス総会】10日午後の記者会見で、「扉が開かれる時、教会は『最も素晴らしい教会』になる」とトービン枢機卿

Sister Gloria Liliana Franco Echeverri, a Colombian religious of the Company of Mary Our Lady, US Cardinal Joseph William Tobin (right) and Paolo Ruffini (left)Sister Gloria Liliana Franco Echeverri, a Colombian religious of the Company of Mary Our Lady, US Cardinal Joseph William Tobin (right) and Paolo Ruffini (left) 

 またシスター・エチェヴェリは「私たちの作業部会では、互いに対する敬意、交流、相互認識から生まれる尊厳を正確に認識されています。意見交換では、貧しい人々の叫びに耳を傾けよう、という呼びかけが心に響き、貧しい人々の顔、移民、人身売買、社会的な排除が念頭に置かれました」と指摘した。

 トービン枢機卿は、「私たちの作業部会には、ロシアの若い女性、ウクライナの母親、ガーナのペンテコステ派の牧師、マレーシアの神学者、シンガポールのコーディネーターも参加していました。これほど多様な人々が参加し、互いの声に耳を傾けることができるのは、私にとって最適な環境になっています」と述べ、デトロイトの多文化環境で育ち、司祭として45年間「自分のものではない文化、少なくとも私が育った文化」で暮らしてきた自分にとって、「とても感動的な経験であり、私がこれまで参加した中で、最も多様なシノドス総会になっている。教会が選ぶべきは『友愛』、誰にも余地がある場となることです」と指摘。

 また、ニューアーク大聖堂での「性的指向のせいで疎外されていると感じた人々の巡礼」という具体的な司牧体験についても語り、司祭がグループに行った説明を思い出し、「この教会は素晴らしい教会ですが、扉が開いているときが最も素晴らしいのです」と述べ、「排他的なナショナリズムと外国人排斥によって特徴づけられ、国境にフェンスを立てることに熱心な指導者が存在する世界で、教会が選択すべきは友愛であり、私たちが皆兄弟であることを理解することを可能にすること」、「私たちが自分たちを兄弟姉妹だと考える教会には、誰にとっても参加の場があるのです」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年10月11日

【シノドス総会】第二週始まるー総括報告者、オロリッシュ枢機卿が問題提起、「いかにすれば、私たちを全人類の一致の道具にできるのか」

Synod participants begin the 4th General CongregationSynod participants begin the 4th General Congregation  (Vatican Media)

 全体会合ではまず、オロリッシュ枢機卿がモジュールB-1の内容を確認。モジュールAをもとにした先週の全体会合、分科会で「私たちは過去2年間にわたる神の民の”共に旅する”経験を思い起こし、包括的なビジョンとして、シノダル(共働的な)教会の在り方について、さらに注目するよう努めました」と振り返った。

 そのうえで、次の段階として、「神の民の声に耳を傾けることから明らかになり、この会合が洞察力を働かすよう求められている3つの問題のうちの1番目に取り組む」ことを提案。

 その主題は、「四方に広がる交わり」であり、「どうすれば私たちは、もっと完全な神との結び付き、全人類の一致のしるしとなり、道具となることができるのか」を考察することが優先事項になる、と述べた。

  ホレリッヒ枢機卿は総会参加者たちに、これからの先にあるものを繰り返し指摘し、 「9日の午後と10日の朝、私たちはすでに実践した聖霊との対話に触発された共同体の識別の仕方に従って、Circuli Mineres(小さな集まり=分科会)で作業をします。私たちは互いの声に耳を傾け、御霊の声に耳を傾けます… 私たちはそれぞれの分科会の報告書の草案を作り、報告者が全体会合で行うスピーチの準備をし、共通の認識をさらに深めるために、分科会が全体会合に提起したいと考えている点に焦点を当てます」と説明した。

 オロリッシュ枢機卿のあいさつと会議の進め方についての説明の後、参加者たちは討議要綱のモジュールB-1に示されたテーマに関するいくつかの意見を専門家などから聞いた。

 (注:英国のドミニコ会の修道士で説教師の)ティモシー・ラドクリフ師からは、「井戸に水を汲みに来たサマリア人の女」(ヨハネ福音書4章7-30節」について霊的な考察があり、 英国のダーラム大学神学・宗教学部のンナ・ローランズ教授からは、「交わり:小羊の婚宴」というテーマでの神学的な考察がされた。 

 また、カトリック教会と正教会の神学対話国際委員会の共同委員長であるギリシャ正教のジョブ・ゲッチャ・エキュメニカル総主教からは、正教会におけるシノダリティ(共働性)についての考察を述べ、マレーシアのクラレンス・ダヴェダサン師は、「どのようにすれば私たちはより完全に神との結合、そして全人類の結合のしるし、手段となることができるのか」について語った。香港出身のカトリック教徒、シウワイ・ヴァネッサ・チェン氏は、シノダリティ(共働性)と文化、特に「シノダリティとアジア文化」について語った。

 この後、9日午後から分科会が再開され、討議要綱のモジュールB1をもとに分かち合いが行われた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年10月10日

【シノドス総会】分科会で「奉仕に生きる代わりに、権力の独占に走る危険性」も指摘されたーバチカン広報長官、二度目の記者会見

シノドス会場、バチカン・パウロ6世ホールのアトリウムの「サン・ダミアーノの十字架」と参加者たち 2023年10月6日シノドス会場、バチカン・パウロ6世ホールのアトリウムの「サン・ダミアーノの十字架」と参加者たち 2023年10月6日  (Vatican Media)

(2023.10.8 バチカン放送)

 シノドス総会の広報責任者のルッフィーニ・バチカン広報長官が6日夕、総会に関する二度目の記者会見を開き、5日午後の35に分かれて続けられた作業部会(分科会)と6日午前の二度目の全体会議について説明した。

 まず5日午後の分科会では、午前の部会に続いて、シノドス事務局から事前に配布されていた討議要項の中のセクションA「共に歩む教会のために。一つの統合的体験」についての意見の交換が行われた。

 6日午前に開かれた二度目の全体会議には、教皇フランシスコも出席され、前半は分科会の報告者18人が、それぞれの意見交換の結果を「レポート」として発表。後半では、22人の個人による発表が行われた。発表は1人3分で、4つの発表ごとに沈黙と祈りの時間が設けられた。

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 記者会見に同席したシノドス広報委員会のシェイラ・ピレス氏は、分科会の雰囲気について、「非常にシノドス的であり、参加者らは互いについて知ろうとしながら、まさに『共に歩んで』います」とし、それぞれの分科会は様々な大陸の出身者から構成され、ピレス氏が所属する分科会には、アジア、アフリカ、北米、欧州からのメンバーが集まり、「多様性の中にも兄弟的な精神があり、『共に歩もう』という意欲があります」と強調した。

 ルッフィーニ長官とピレス氏によると、5日の分科会の2セッションで取り上げられたテーマとして、「家族のように、すべての人を受け入れる教会」をめぐる考察が多くなされ、「信仰一致」「諸宗教対話」「若者たちに対する認識」「女性の参加の重要性」や「教会法、教皇庁、育成などの観点からの教会制度の見直し」「東西教会の関係」「移民・難民への対応」「牧者としての司教の奉仕の在り方」なども話されたという。

 さらに、ルッフィーニ長官は、ある分科会参加者は、パウロ6世ホールのアトリウムにもコピーが掲げられている「サン・ダミアーノの十字架」に言及し、アッシジの聖フランシスコがその十字架の前で祈っている時に「行って、私の家を建て直しなさい」というキリストの声を聞いたエピソードに触れながら、「教会を建て直すための奉仕」というテーマを提示した、と説明した。

 このほか、「教会、また信者として、キリストに似ていないすべてと、福音にそぐわないことのすべてを、脱ぎ捨てることの重要性」が強調され、この中で注意すべき点の一つとして、「奉仕に生きる代わりに、権力の独占に走る危険性」が指摘されたという。

 シノドス総会の参加者たちは、迫害や戦争など重大な危機のため会議に参加できなかった人々を思い、特にウクライナの「苦しむ教会」に連帯を確認した、という。

(編集「カトリック・あい」)

2023年10月10日

【シノドス総会ファイル】②開かれた窓、閉じられた扉、そして司祭不足という困難な問題(Crux)

(2023.10.8  Crux  Editor John L. Allen Jr.)

 ローマ 発– 今月、世界のさまざまな地域で 2 つの統治のドラマが同時に展開されており、それぞれが、もう一方の落とし穴と課題をかなり完璧に捉えているようだ。ローマでのシノダリティ(共働性)に関するシノドス総会と、米国での先行き混とんとした議会下院議長ポストをめぐる抗争だ。

 シノドス総会はこれまで少なくともある程度の公開性を持って開かれてきた催されたイベントだったが、今回は総会出席者の議論への自身の貢献さえ明らかにすることが禁じられるなど、新たな厳格な機密保持の条件下で開かれている。 一方、米議会下院では、通常は非公開で行われる議長選出プロセスが公の場で進行しており、明らかに悲惨な結果をもたらしている。 どちらの場合も、一方の状況が、もう一方の主な困難を示しているようだ。

 関係者の立場が公の場で展開され、妥協の努力が軌道に乗る前に硬化する、という事実によって増殖する議長レースの有害な側面を抑え、合意を形成しようとするなら、 多くの場合、スポットライトをしばらく避けるのが良い考えだ。 現在、一部の有力な共和党議員は下院議員に対し、”フォックスニュース・フォーラム”の計画を撤回するなど、トークショーやソーシャルメディアに、論争に参加しないよう求めている。これは、再び明らかな内破が起こる前に、解決策が出てくる余地を作るためだ。 ある共和党議員は昨日、CNNに対し、「良いことは何もないが、『失敗を公にすることが、議会にとっても国にとっても最善だ』とは多くの人は考えていない」と語っている。

 一方、シノドス総会での参加者の発言内容などのの機密保持(教皇フランシスコは、やや婉曲的に「断食」と呼んでいる)をめぐる論争は、あらかじめ作られた結果をもとに”デッキ”を積み上げているのではないか、との疑いをさらに強めてしまっており、そうすることで、ある種の試みがなされていることを想起させている。

 暗闇に紛れて重要な政策決定を行うことには、それ自体に危険が伴う。 例えば、対中国をめぐる姿勢などで教皇を頻繁に批判している元香港司教で陳日君・枢機卿は最近、司教たちに書簡を回覧し、シノドス総会の主催者を「”操作技術”に非常に優れている」人々と揶揄し、「総会での誠実な議論を抑圧しようとしている」と批判した。当然のことながら、広報担当者や総会参加者が内部で何が起こっているかについて話すことが禁じられている場合、このような批判にに反論するのはかなり困難になる。

 以上をまとめて言えば、米議会下院の混乱は「透明性が高すぎる」ことのマイナス面を示し、シノドス総会の運営に関する騒動は、これとは正反対の「秘密の過多」がもたらす問題を浮き彫りにしている、ということだ。

 米議会下院では、ケビン・マッカーシー前議長のほかに、”犠牲者”として挙げられるのは、2017年に設立された超党派のグループ「プロブレム・ソルバーズ・コーカス」かもしれない。 共和党は政府機関閉鎖を回避するための超党派の合意を支持したマッカーシー氏を民主党が救わなかったことに激怒し、一斉に行動を起こすと脅している。

  教皇フランシスコは、シノドス総会がこのような結末を迎えるのは避けたい、と考えており、4週間続く総会の早い段階で世論の圧力にさらすことが、米下院議会のようなリスクをもたらす、と確信している。その結果、ここにはとてつもない皮肉が働いている。教皇は、”シノドスの道”の究極の目的は「第二バチカン公会議の精神を復活させることだ」と繰り返し述べており、それは教皇ヨハネ23世の「今こそ、 カトリック教会の『窓を開け』、新鮮な外の空気を取り入れよう」という言葉につながる。

 だが、教皇フランシスコは、窓を開けるために、少なくとも今のところはシノドス総会の扉を閉めることに決めた。 それが正しいアプローチであるかどうかについては、明らかに議論の余地がある。だが、避けようとしている問題が完全に彼の頭の中にあるわけではないことを理解するには、現時点での米議会下院の動きを注視するだけで十分だろう。

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 シノドス総会の情報公開に対する人々の声に、少なくとも若干の譲歩をするしるしとして、主催者は昨日、記者会見で、2人の参加者の発言を公開した。その2人は、コンゴ民主共和国のフリドリン・アンボゴ・ベスング枢機卿と、聖マリア修道女会の会員で米カリフォルニア・サンバーナディーノ教区の尚書担当のシスター・レティシア・サラザール。彼らは、機密保持に関する会議のルールを擁護しつつ、作業部会などで議論されている内容について一般的な洞察を提供した。

 アンボンゴ枢機卿は、世界の一部の地域で神学生の数が減少する事態が生じていることを認める一方で、この問題は「世界中で起きている問題ではない」と指摘。 自国の首都で彼の担当教区であるキンシャサだけでも「約130人の神学生がさまざまな育成段階にあり、『どこの神学校も空いている』と言うのは正確ではない」と述べた。

 総会でこの話題が大きく取り上げられる場合に備えて、枢機卿の主張に簡単な背景を追加しておくといいだろう。

 確かに、最近アフリカでは、西欧や北米よりもはるかに速いペースで、司祭職や修道生活への新たな召命が生まれています。だが、このことは、『アフリカで司祭が余っている』ということを決して意味しない。実際、アフリカはカトリック人口全体に対する司祭の割合という点で、ひどく不十分なサービスを受けている。

  現在、カトリック教徒に占める司祭の割合は、米国では1300人に1人、欧州では1700人に1人だ。これに対して、アフリカでは、5000人以上の信者に対して1人の司祭しかいない。 特に、サハラ以南のアフリカでは、20 世紀後半から 21 世紀初頭にかけて、カトリック教徒が急速に成長しているため、司祭不足は改善されるどころか、一段と悪化している。理由は単純で、この地域の成長サイクルの中でカトリック教会が人々を叙階するよりもはるかに短期間で洗礼を施しているからだ。

 そうした現実にもかかわらず、先進国の多くの地域では、アフリカだけでなくフィリピンなど他の地域出身の外国人司祭への依存がますます高まっている。フィリピン人司祭などは宣教師として世界各地に散らばり、奉仕活動を行っている。

 このような傾向に対して、一部の批評家は、カトリック版の「頭脳流出」であり、「最も切実に司祭を必要としている地域から人材を吸い上げ、裕福な教区が他の教区への影響を考慮せずに自分たちの穴を塞ごうとする利己的な取り組み」と見ている。 米国のベイラー大学で世界の宗教を研究するフィリップ・ジェンキンス氏は「世界的な観点から見ると、このような政策は、痛ましいほど近視眼的であり、悪く言えば、カトリック教徒を自殺に追い込むように運命づけるものだ」と述べている。

 もっとも、これは決して新しい見方ではない。 2001年、改革前の福音宣教省は「宣教地域からの教区司祭の海外派遣および滞在に関する指示」と題する文書を発表し、 当の長官、ジョセフ・トムコ枢機卿は「世界の南から北への司祭の異動が、ますます懸念されるようになっている」と指摘。「 (2001年現在で)イタリアだけでも 1800 人の外国人司祭がおり、そのうち 800 人以上が直接、司牧的ケアに従事している… これほど多くの教区司祭がいれば、(注:まだカトリックの教えが十分伝えられていない)宣教地域に、多くの新しい教区が設立されるはずだ」と強調していた。

 カトリック教会が多国籍企業であれば、システムアナリストが「教会の市場とその資源配分の間に深刻な不一致があること」に気づくのに、それほど時間はかからないだろう。

 現在、世界のカトリック教徒の3分の2はアフリカ、アジア、ラテンアメリカに住んでいるが、それらの地域の司祭の数は世界の総司祭数の3分の1をわずかに超える程度だ。 「カトリック教会にとって本当に必要なのは、”事業”が成長している地域に、司祭を”再配分”する計画を進めることだ」という強力な主張が、これからのシノドス総会の議論の中でなされる可能性がある。

 たとえ総会参加者たちがその問題について話しているかどうか明らかにされないとしても、会議の議論が進むにつれて、それは興味深い考えの材料になるかも知れない。

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*10月4日から29日までのシノダリティに関する司教会議の間、Crux編集者のジョン・アレンが「シノドス・ファイル」のタイトルで定期的に分析を提供する。

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(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年10月9日

【シノドス総会】「移民・難民、女性、貧困などが作業部会のテーマになっている」—広報長官、5日夕の会見で

Briefing on SynodBriefing on Synod  (Vatican Media)

(2023.10.6 Vatican News  By Salvatore Cernuzio)

 シノドス総会情報委員長のパオロ・ルッフィーニ・バチカン広報省長官は5夕、二度目の記者会見を行い、5日の段階で351人による35の作業部会で取り上げられ、自由な意見交換もされている「家庭としての教会」「虐待」などのテーマの概要を説明。私たちはできる限りのことを皆さんに提供できるよう、毎日最善を尽くします」と約束した。

 長官によると、5日の作業部会は、司祭、神学生、信徒、カテキスタなど「全員」の参加の確認に始まり、「誰もが居場所を持つ家庭としての教会」「祈り」「女性や一般信徒、叙階された聖職者、そうでない人の役割」「 聖体と神の言葉の中心性」、 そして「教会の選択肢としての貧しい人々の重要性」「移民難民、虐待、迫害と苦難の中で暮らすキリスト教徒の問題」などが主なテーマとなった。参加者は、戦争中の苦しみについての感動的な物語を聞いたウクライナ人に拍手を送った。

 また会見に同席した情報委員会事務局長のシーラ・ピレス氏は、「非常に会議的」な雰囲気で会合する予定のさまざまな作業部会について、「人々はお互いのことを知り始めている… 私たちは本当に一緒に歩んでいます」。もちろん「緊張感もないわけではない」が、なによりも「楽しい」雰囲気が進めらている。

 そして、アフリカ南部でカトリックとのコミュニケーションに長い経験を持つモザンビーク人にとって、最も興味深い点は、各グループに異なる大陸からの人々が集まっている、という事実であり、「例えば、私のグループには、アジア、アフリカ、北米、そして欧州の人々がいます。多様性があり、友愛の精神があり、共に歩みたいという願望を持っています」と参加しての印象を語った。

 またルッフィーニ長官は、作業部会で扱われているテーマの中で、特に「すべての人を歓迎する家庭としての教会」に注目し、「これは総会の会議で繰り返し取り上げられるテーマの一つです」と述べ、「エキュメニズムと宗教間の対話」「若者の認識と女性の参加の重要性」なども主要テーマとして挙げた。

 そして、教皇が総会の冒頭で述べたように、優先事項は「耳を傾けること」であり、「聴くことだけでなく、聴くことを学ぶことは、シノダリティ(共働性)に関するこのシノドス総会の初めの数日間の課題であり、いくつかの祈りの瞬間が散りばめられています。それは熟考と洞察力を助ける休みの時」とピレス氏は述べた。

 「友情の絆」を強めることも重要な課題、と長官は指摘し、「作業部会の小さな集まりから友情が生まれ、皆で教会が何を必要としているかを理解しようと努めました。…確かに困難はあったし、常にある、と言われていますが、苦しむキリストの肉体を思えば、多くの障壁はなくなるでしょう」と付け加えた。

 長官は、現在行われている作業部会では、「教会法典などの教会の仕組みの改定、教皇庁の規模、そしてやはり組み立て」や「東西関係」にも焦点が当てられており、「移民・難民問題」では、彼らに寄り添い、司牧者としての司教たちの奉仕がその基本になること、「女性の役割」については、教会における促進、教会活動の様々なプロセスに女性を積極的に参加させることの重要性が繰り返し述べられているという。「若者」や「貧困者」への懸念にも強い関心が集まり、「対応の遅さ」を克服する必要も指摘されている、という。

 移民という現象に関しては、移民の同行と牧師としての司教の奉仕の必要性が「この同行の基本である」と繰り返した。 女性の役割については、教会における女性の役割を促進し、さまざまなプロセスに女性が積極的に参加することの重要性が繰り返し語られた。 若者や貧しい人々についても同様の懸念が示され、ある種の「遅さ」を克服することが求められていました。

  アッシジ聖フランシスコ回心きっかけとなったサンダミアーノの十字架が会場のパウロ6世ホールに置かれているが、作業部会での議論で、 「(この聖人に倣って、『教会を修復する』というテーマも浮上しました。(…)奉仕に身を置く人々は、教会を修復し、診断と予後を提供し、純粋な心で時代のしるしを読み取るのです」と説明。

 作業部会では、「教会として、また信者として、キリストに似ていないものすべて」と「福音に適合しないものすべて」を取り除くことの重要性も強調され、「重要な点の一つ」として、「モノを懸命にため込むよりも、奉仕に徹すること」も強調されたという。さらに、参加者たちは「シノダリティ(共働性)は教会のDNAの一部である」という点で同意した。

 さらに、「迫害を受け、あるいは国家危機の重大な状況の中にいて、総会に出席できなかった世界の人々に思いを向け」、とくにロシアの軍事侵略の長期化で苦しみ続けるウクライナの教会に注目が集まり、「ある発言には、賛意を示す拍手も起きましたが、これは、戦乱の中にある人たちとの交わりを感じる手段の一つとなりました」と長官は説明した。

 とりわけ、ウクライナの「苦しむ教会」に注目が集まった。「拍手を誘発する言及があった」とルフィニ博士は述べ、これは「戦争中の人々との交わりを感じる」方法だと説明した。 苦しみ続けているウクライナのキリスト教徒とともに。 別の拍手が、理由は異なりますが、今日誕生日を祝うレティシア・サラザール姉妹と、司教叙階記念日にちなんでチャールズ・シクルーナ大司教に捧げられました。

 会見では、複数の記者から、シノドス総会に関する米国のテレビ番組で5日に放映された、教理省の前長官、ゲルハルト・ミュラー枢機卿のインタビューに関する質問が出された。

 質問によると、このインタビューで、枢機卿は、教皇フランシスコが「公の発言を”断食する”ように」とシノドス総会の参加者たちに求めたことに、不快感を覚えた、と述べたといい、記者の中には、 「懲罰」が考えられているのか、との問いかけもあったが、長官は、「(懲罰は)誰によってされるのですか?私によってですか?」と冗談交じりに答えたうえで、「沈黙の中に識別力がある。あなたを罰する憲兵はいない… 総会は、自らに”活動の一時停止期間”を課した兄弟姉妹の集まりです。教皇が参加者に求めたのは個人的な識別力です。 私たちが話していることをあなたに説明する際にもそうです。識別力は人それぞれに委ねられているのです」と説明した。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年10月7日

【シノドス総会ファイル】① 陳枢機卿の書簡が”沈黙”を破り、バチカン裁判が議論に影響を与える(Crux)

(2023.10.6 Crux Editor   John L. Allen Jr.

ローマ – 5日のシノドス総会の会議に関連する大きなニュースは、外部からもたらされたものだった。イベントが行われているバチカンのパウロ 6 世謁見の間からではなく、むしろその場にいない人物—香港の元司教、陳日君・枢機卿—から発せられたのだ。陳枢機卿が公表して9月21日付けの批判的な書簡は、さまざまなカトリック・メディアで話題になっている。

*バチカン広報省長官の第一回定例会見-「何が語れないか」を弁明

 5日の総会内部から発せられた公式の唯一の情報は、バチカン広報省長官を務めるイタリア人信徒パオロ・ルッフィーニ氏の記者会見からだった。彼は総会開催中に予定される定例会見の第一回目を行ったが、記者たちに「何が起こったのかを語れない」というよりも、「なぜ語れないのか」の弁明が印象に残った。

 総会のRegolamento、つまり”ルール・ブック”には、総会参加者が自分自身の貢献や他者の貢献を話し合うことを禁止するなど、ほとんど絶対的な機密保持という要件が盛り込まれていたが、その説明に、ルッフィーニ氏は”最善”を尽くした。

 彼は、そのような措置は「suspension of time(時間の一時的な停止)」をもたらし、「それによって『耳を一時的に聞こえなくする沈黙』を生むことを目的としている、定型的な論点や対位法に慣れ親しんだ通常のやり方とは全く異なるものだ… 教会のような大きな組織が信仰、ミサ典礼、祈りにおいて沈黙の時を持つことが、”ニュース”なのです」と”勇気”を奮って弁明した。

 公平を期すために言うと、ルッフィーニ氏には困難な仕事が課せられている。あるイタリアメディアの(アクション映画「007」のタイトルをもじった)見出しにあるように、「情報が遮断された行事の広報担当を務めるのは基本的に”mission impossible(不可能な任務)”なのだ。

*長官が強調する”沈黙”は、陳枢機卿の総会に疑問を呈する書簡で既に破られている

 

 ルッフィーニ氏が記者会見で「沈黙」という言葉を二度使っていることに注目しよう。昨日、我々が得たのは、全くの”静寂”ではなく、陳枢機卿の書簡をめぐる多くの”喧噪”だ。その主な理由は、シノドス総会に関して他に興味深い発言を耳にすることができなかったことにある。

 

 

*ベッチュウ枢機卿ら10人の金融犯罪をめぐる裁判の影響も避けられない

 今回のシノドス総会には詳細な議題が予定されているが、会議場とは別の所で起きていることが議論に影響を与えるのは避けられない。

 その一つが、(注:元の教皇フランシスコの側近でバチカンの国務省副長官だった)アンジェロ・ベッチュウ枢機卿を含む10人の被告の様々な形態の金融犯罪に関して、最終段階に入っているバチカンでの裁判だ。 この裁判は、教皇フランシスコの下で進められてきたバチカン改革に対する厳しい試練であり、実際に起きているのは「正義」の遂行ではなく、失敗から目をそらすことが目的の、その場限りの法的駆け引きに基づく“いけにえの羊”だ、との非難の中で行われている。

  今総会が始まる前日、フィリッポ・ディ・ジャコモ神父(70)の発言が注目を集めた。神父 は、イタリアのメディア、特に国営放送RAIでバチカン情勢について頻繁にコメンテーターを務めている。ベネディクト十六世教皇のもとで国務長官を務めたタルチシオ・ベルトーネ枢機卿の大学教員当時の学生であり、教理省で当時長官だった後の教皇であるラッツィンガー枢機卿の下で15年間働いた。

 10月3日に、ベッチュウ枢機卿の裁判についてコメントを求められた神父は、クリスマス前に判決が出ると予想される、と述べ、「個人に対するバチカンの法的慣習で、イタリアの法律がバチカンのシステムに受け入れられたことがないことを考慮すると、おそらくその時になって初めて、どの訴訟法典が適用されたのかが分かるでしょう」と語った。

 そして「この裁判は、『世紀の裁判』と呼ぶ人が頑固に主張するようなものではなく、19世紀の凡庸な俳優によるメロドラマです」 と批判。訴追の法的根拠には重大な疑問が残されており、 まず第一に、「この裁判では、教皇が4つの勅令を用いて介入し、とりわけ検察官の裁量権を強化し、捜査の範囲を拡大したことが明らかになった」。そして第二に、「この裁判の異常なことは、実際には、ロンドンの不動産取引に関する事件、サルデーニャのカトリック慈善団体事件、そして自称”諜報専門家”セシリア・マローニャ事件の少なくとも3つの異なる事件を合わせる裁判であるということです。 誰が何の罪で起訴されるのか混乱している」と指摘した。

 さらに、神父は、ベッチュウ枢機卿に対する一連の容疑について言及し、「現在のバチカンの法規の下では犯罪とされているこれらの罪状の一部が、実際に起きたとされる時点で実際に行われていたかどうかも明らかではない」と批判。かつて検察側の”スター証人”だったイタリアのモンシニョール・アルベルト・ペルラスカが、彼の証言の一部がベチュウ氏を攻撃するための明らかな軸を持つ二人の人物によって台本にされていたことが明らかになった後、”視界から消えてしまった”ことなど、他のおかしな点も指摘した。

 主任検察官であるイタリアの弁護士アレッサンドロ・ディッディに関して、神父は、今年のニュースなどで注目される有力候補者となる彼のカトリック教会に対する理解を軽蔑し、「彼は、聖別されたホスチアと目玉焼きの違いを区別できないことで、それが十分に証明されています」と皮肉った。

その観点からどう考えても、シノドス総会の会議の中で、裁判とその苦しい試練が話題として浮上するのは避けられない。つまり、教皇とそのチームがどれほど「教会の明日」に焦点を当てようとしても、そうはならない、ということだ。 彼らは、「昨日の影」から完全に逃れることはできないのだ。

*10月4日から29日までのシノダリティに関する司教会議の間、Crux編集者のジョン・アレンが「シノドス・ファイル」のタイトルで定期的に分析を提供する。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年10月7日