【シノドス総会】「シノドス総会は”トーク・ショー”ではない、世界でどのように教会が歩むべきか熟慮する場だ」

A working group at the General AssemblyA working group at the General Assembly  (Vatican Media)

(2023.10.17 Vatican News   Salvatore Cernuzio)

 シノドス総会の17日昼までの進行状況などについて、バチカン広報省のルッフィーニ長官が17日夕、定例の記者会見を開き、4日以来、総会に参加している枢機卿、司教、司祭、修道女、修道者、信徒の話し合いの模様などについて説明。全体会議や35の作業部会では、司教の務め、女性の役割、教会法改正の可能性、信徒の貢献などが話し合われている、と述べた。

 長官の会見には、モロッコ・ラバト大司教のクリストバル・ロペス・ロメロ枢機卿、オセアニア地域司教協議会連盟会長で豪ブロークン・ベイ教区長のアンソニー・ランダッツォ司教、それに著名な神学者である レネー・ケーラー=ライアン・シドニー・ノートルダム大学教授とナイジェリアのイエズス会士アグボンキアンメゲ・エマニュエル・オロバトル教授が同席し、「聴いて学ぶ」という総会での経験」に満足していると口をそろえた。

*「協力」から「共同責任」へ―教会法改定の可能性

 

 記者会見の冒頭、ルッフィーニ長官は、17日の朝に聖テレジアに関する教皇の使徒的勧告「C’est la confiance」が総会参加者に改めて配布された、としたうえで、今週初め、16日から17日昼にかけての全体会議と作業部会では、準備文書の「福音宣教の使命における共同責任」に関するモジュールB2をもとに意見を交換した。 「共同責任」とは、「改正」が求められている教会法における「協力」に代わる導入が提案されている言葉だ。

 教会法の専門家であるランダッツォ司教は、「教会法はその前提としているものが変われば、当然、変わり得ます。法規の中には、特定の地域社会や状況、状況のニーズに応じて適応させることが可能なものもある」と述べた。

 

*「女性たちの関心は『叙階』だけだと考えると、世界の大半の女性たちの関心を忘れてしまう」

 また教会改革に関して、総会参加者たちは、まず「diaconate(叙階)の本質」を明確にしたうえで、それを女性に開放する可能性について議論した。 教会における女性の役割に関して、ルッフィーニ長官は、参加者たちの議論では「イエスが女性を retinue(随行者)として扱われたこと」が想起され、「最初に主の復活を宣言した女性たちが説教をしなかっただろう、ということを想定することは可能でなかったかのかどうか、という問いが持ち上がった」と説明。

 また、 「(教区や小教区の)司牧評議会に女性が出席することで、意思決定がより現実的になり、地域社会がより創造的になる」という意見も出た、とし、会議で語られた格言を引用して、「何かについて話したいなら 男性だけの集まり、何かをしたいなら女性の集まりを開くといい」と述べた。

 このように、教会における女性の役割に議論の多くが割かれたが、女性の司祭叙階については、それが唯一の役割ではなく、あるいは主要な役割とする意見はなかった。ケーラー=ライアン教授は、女性の司祭叙階は、「女性たちの要請を必ずしも反映していない”ニッチ”な問題です… (女性の司祭叙階に関する)問題が強調されすぎていると思う」と述べ、「この問題を重視しすぎると、世界中のほとんどの女性が求めていること、つまり住居、食べ物、衣服、そして子供たちの将来についての問題を忘れてしまうことになりかねない」と指摘。 「子供たちに未来を、そして教会に迎え入れられる未来、そして知っている人や愛する人全員が教会に歓迎される未来を持ってほしいと思っています」と語った。

 

*「信徒の奉仕を司祭不足の一時しのぎにしてはならない」

 作業グループと個々の参加者の発言について出された報告では、「教区—”給油所”ではなく、交わりの場—とコミュニティの重要性」、「 信徒の奉仕を司祭不足の一時しのぎの手段としない、聖職者化しない」「そして受洗者の共同体は司祭の奉仕なしでは成り立たない」などを指摘する意見も出ている。

 

*「司教は、何でも抱え込まず助けが必要、虐待被害者の声を聴く時間と場も必要」

 

 シノドス総会情報委員会のシーラ・ピレス氏によると、17日の午前の会議では、司教の奉仕活動にも同様の関心が払われ、「司教は信者たちに寄り添い、愛、配慮、懸念を表現する父親のような人物とみなされている」という発言や、「 司教は、諸宗教間および信仰一致のための対話を促進しなければならず、財政、経済、法的側面を管理しなければならない。まさにそのような問題に忙殺されないように、協力者や専門家から助けを受けることができた」という報告もあった。 「司教は、『自分だけが教区ではない』ことを理解せねばなりません。一人ですべてを行うことはできず、助けが必要です」と述べた。

 会議ではまた、司教候補の育成、司教と聖職者、および新司教との関係にも関心が集まり、「司教は、虐待被害者の声に耳を傾けることを避けるべきではない」といことが強調された。そして、彼らの声を聴くための時間と空間が必要です」と語った。

 

 

*「我々は半分まで来た、まだあと一年、作業が残っている」

 今総会の会議では、幅広い問題について話し合われているが、ロペス・ロメロ枢機卿は、「これは2021年10月に始まり、2024年まで続く”シノドスの旅”の半分に過ぎません」と述べた。

 そして、「私たちがここローマで経験している事だけが”シノドスの道”ではない。過去2年間に世界中の小教区、教区、修道会で経験した何千回もの会合は、それだけの価値はあった。私たちは灰から、新しい火を灯すことができました」とする一方、「現段階では具体的提案を期待すべきではありません。まだ少なくとも1年の作業が残っており、なすべき課題があります。それをこなしたうえで、より具体的な提案に至るための結論を導き出すのです」と強調した。

 

*「普遍的な教会として、私たちはどのような立場にあるのかを理解する」

 

 ケーラー=ライアン教授は「このシノドス総会で今起きているのは、普遍的な教会として非常に多くの異なる声を聞く機会がもたらされ、祈りの気持ちを持って互いに耳を傾けることに重点を置くという非常に重要だということだと思います」とし、「信徒の参加」が「このシノドス総会の最も重要な点の一つ」だと指摘した。。

 また、今総会は、「普遍的な教会としての私たちがどのような立場にあるのか、また私たちが全世界で多くの点で共通した立場にあることを理解するための素晴らしい機会になっています。私たちにはキリストとその母についての普遍的な教えがあり、私たちの教会について知らない人々に手を差し伸べようと、真剣に努力している…  そして、まだデジタル技術にアクセスできない人々がいることを理解しながら、デジタル技術など様々な方法で、それを実現しようとしています」と述べた。

*「世界中の信者が、皆同じ条件にあるわけではない、『欧州的見方』をすべきではない」

 デジタルの問題については、ランダッツォ司教も、「デジタル通信とデジタル世界のシンノダリティ(共働性)について話すとき、 『燃料を積んだ船が、しばしばそばを通る島』を思い起すといい。島に 船が来なければ、燃料が手に入らず、発電機も動かず、コンピューターがあっても接続できず、孤立してしまいます」と述べ、物事を「欧州的な見方」で見ないよう、つまり、「ある場所から別の場所に移動したり、たとえば教区に行くために、誰もがタクシーや電車に乗れるのが当然」と考えないように促した。 

 そして、「このシノドス総会で私にとって本当に素晴らしい経験の一つは、欧州の伝統的な教会に所属する人たちだけでなく、世界中から来た人たちとテーブルを囲み、時折コーヒーを皆で飲むことです」とし、これは私にとって、とてもシノダリティ(共働性)を感じます。そして、教皇フランシスコの天才的なところは、これが何もない所から生まれるものではない、ということです」と語った。

*「シノドス総会は、『結果』よりも『プロセス』が重要になる」

 オロバトル神父もランダッツォ司教の意見に同意し、「この総会は、神学者にとって『生きがい』の一環、つまり”資源”を引き出すプロセスの一環です。おそらく、結果よりもプロセスの方が重要になるだろうと確信している。教会というコミュニティとして、人々を誰でも、立場や地位や状況に関係なく、新しい生き方を体験できるように導く枠組みとメカニズム、だと信じています。また、教会では、自分たちの意見を聞いてもらうだけでなく、識別のプロセスに貢献することもできます」と述べた。

 

*「総会参加者の間に多くの意見の相違があるが、”派閥同士の衝突”ではない」

 また、ロペス・ロメロ枢機卿は、「シノドス総会参加者の間には、多くの意見の相違が生じていますが、それらは決して”派閥同士の衝突”ではなく、”憎しみや敵意”を伴ってもいません。この会議の趣旨は、『対話すること』であり、『相手に応答すること』ではありません」と指摘した。

 関連して、ルッフィーニ長官は「シノドス総会は、記者からの問いに答えるように設計されているのではなく、プロセスから生じる教会の識別のために設計されています。  その識別は、『教会が世界でどのように歩むことができるか』に関係しています」と説明した。

*「女性問題やLGBT+の人々の問題は、記者だけでなく、多くの信徒が関心を持って見ている」

 これに対し、記者からは、「いくつかの問題、特に教会における女性の役割とLGBT+の人々を受け入れる問題は、単なる記者の関心の問題として扱われるべきではない。 まさにこれらの問題については、これまでの(司教区、小教区レベルなどの「”シノドスの道”の歩みで、多くの信徒たちが時間とエネルギーを費やして議論してきており、今、その答えを待っている人々が多くいる」との意見が出された。

 長官は、「指摘された問題は、総会での議論の対象となっている」ことを認めたうえで、「シノドス総会は確かに単なる”円卓会議”ではなく、もちろん”トーク・ショー”でもなく、『聖霊による対話』です。今総会では、報告書をまとめ、それが世界の『神の民』に送られ、その後再び総会が開かれます。 ロペス・ロメロ枢機卿が語ったように、それはまだ長いプロセスであり、忍耐と希望が必要です」と説明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年10月18日