*世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会の第2会期閉幕へー最終文書を発表

Pope Francis with all the Synod participants at the conclusion of the work of the General AssemblyPope Francis with all the Synod participants at the conclusion of the work of the General Assembly  (VATICAN MEDIA Divisione Foto)

 なお、教皇は26日の総会全体会議での最終講話の中で、「今シノドス総会後に使徒的勧告を出さないことを選択しました…最終文書は、すぐにすべての人に公開されます」と言われた。

 その理由などについて教皇は「この文書にはすでに、特定の大陸と状況における教会の使命の指針となり得る非常に具体的な指示が含まれている。文書で示された共通の経験が、神の民に奉仕する具体的な行動を促すことを確信しています」と説明されている。

 

*序文―復活した方の傷は今も血を流し続けている…

 最終文書は序文 (1-12項) で、今シノドス総会の本質を「復活祭の夜に弟子たちが上階の部屋で復活した方と出会った新たな経験」とし、続けて、「復活した方を黙想し、私たちは主の傷の跡を見た (…) それは私たち自身の過ちによっても、多くの兄弟姉妹の体の中で今も血を流し続けている。主を見つめることは、歴史の悲劇から私たちを遠ざけるものではない。むしろ、それは私たちの周りの人々の苦しみに私たちの目を開き、私たちの中に染み込む。戦争で恐怖に襲われた子供たちの顔、泣く母親、多くの若者の打ち砕かれた夢、恐ろしい旅に直面する難民、気候変動と社会的不正の犠牲者だ」 (2項)。

 そして、シノドス総会は、今も続いている多くの戦争を想起し、教皇フランシスコの「暴力、憎悪、復讐の論理を非難し、平和を繰り返し訴える姿勢」に賛同する (2項)としている。

 さらに、シノダル(共働的)な手法は、明らかにエキュメニカルなものであり、「キリスト教徒の完全で目に見える一致」を目指している (4項)。そして、「(第二バチカン)公会議の真のさらなる受容を構成し、それによってそのインスピレーションを深め、今日の世界に対するその預言的力を再び活性化する」(5項)。

 また最終文書は、「私たちは、疲労、変化への抵抗、そして福音に耳を傾け、識別の実践よりも自分たちの考えを優先させようとする誘惑に直面してきたことを否定できません」(6項)とし、取りまとめが用意でなかったことも認めている。

*第1部―シノダリティ(共働性)の核心

 最終文書の最初の部分(13-48項)は、「神の民としての教会、一致の秘跡」(15-20項)と「神の民の秘跡のルーツ」(21-27項)についての共通の考察から始まっている。

 「近年の経験」を通じて、「シノダリティ(共働性)」と「シノダル(共働的)」という用語の意味が、「よりよく理解され、それらが表すものがより生き生きと実践されるようになった。それらは、人々により近く、より関係のある教会、つまり神の家であり家族である教会への願いと、これまで以上に深く結びついている」「簡潔に言えば、シノダリティ(共働性)とは、教会がより参加的かつ宣教的になり、キリストの光を放ちながらあらゆる人々とともに歩むことができるようにするための、霊的な刷新と構造改革の道である」(28項)。

 「教会の一致は画一性を意味するものではないこと」を認識し、「文脈、文化、多様性、そしてそれらの関係性を理解することが、宣教的なシノダル(共働的)教会として成長するための鍵だ」(40項)。そして、他の宗教的伝統との関係を復活させ、教会は「彼らとともにより良い世界を築く」(41項)よう努める。

 

 

*第2部-人間関係の転換

 

最終文書の第2部 (49-77項) は、「関係を育む能力を高める教会への要請- 主との関係、男女の関係、家族、地域社会、社会集団や宗教、地球そのものとの関係」(50項) の認識から始まっている。

 同時に、今シノドス総会は、一部の人々が「結婚状況、アイデンティティ、または性的指向のせいで疎外されたり、批判されたりしている」という苦痛を経験し続けていることを認識し、「シノダル(共働的)な教会であるために、私たちは各人の優先順位を変える真の人間関係の転換に心を開く必要があり、人間関係に注意を払うことは単なる戦略や組織の有効性を高めるための手段ではないことを、福音からもう一度学ばなければならない。人間関係と絆は、父なる神がイエスと聖霊においてご自身を明らかにされた手段なのだ」(同上)としている。

 さらに、「シノダル(共働的)プロセスにおいて、あらゆる地域や大陸の多くの女性、一般信徒、聖職者らが広く表明した痛みと苦しみ」を認め、「この理想に沿えないことがいかに多いかを明らかにしている」(52項)。特に、「主イエスにおける新たな関係への呼びかけは、弟子たちが生きるさまざまな状況で栄え」、さらに「多様な文化」と結びついているが、「多様な文化的背景を持つ人々の交流は、福音にそぐわない歪んだ関係につながることもある」(53項)ことも認めている。

 そして、「私たちの世界を悩ませている悪は…こうした力学に根ざしている」と文書は断言し、「最も過激で劇的な拒絶は、人間の生命そのものに対する拒絶である。これは、まだ生まれていない子どもや高齢者の拒絶につながる」(54項)と指摘している。

*宣教のための聖職

 「カリスマ、召命、宣教のための聖職」(57-67項)は、この文書の中心にあり、特に一般信徒の男性と女性の参加拡大に焦点を当てています。叙階された聖職は「調和に奉仕する」(68項)ものであり、司教の聖職は「聖霊の賜物を識別し、一致させる」(69-71項)ことを目指す。

 司教の聖職に関する議論の中で、最終文書は「今日の名目上の司教の場合、司教と地方教会との間の構成的関係は、例えば教皇の代表者とローマ教皇庁で奉仕する者の場合のように、十分に明確には現れていない」(70項)と認めている。

 そして、司祭と助祭は、司教とともに、「シノダル(共働的)教会で叙階された聖職者間の協力」(74項)のために奉仕する。したがって、「シノダリティ(共働性)の霊性」の経験は重要だ。それは、「個人レベルと共同体レベルの両方で霊的な深みが欠けている場合、シノダリティ(共働性)は組織的な便宜に陥る」からだ (44項)、と警告する 。

 それゆえ、「謙虚に実践すれば、シノダル(共働的)なスタイルは、教会が今日の世界において預言的な声となることを可能にする」と述べている。

*第3部―プロセスの転換

 最終文書は第 3 部 (79-108項) で、今シノドス総会は「祈りと対話において、教会の識別、意思決定プロセスへの配慮、説明責任への取り組み、および決定の評価は、宣教の道を示す御言葉に応答するための実践であると認識した」と述べている (79項)。

 特に、「これら 3 つの実践は密接に絡み合っている。意思決定プロセスには教会の識別が必要であり、そのためには透明性と説明責任に支えられた信頼の雰囲気の中で耳を傾ける必要がある。信頼は相互的でなければならない。意思決定者は神の民を信頼し、耳を傾けることができねばならない。そして、神の民は権威を持つ人々を信頼できねばならない」(80項)。

 実際、「宣教のための教会の識別」は「組織的な手法ではなく、むしろ生きた信仰に根ざした霊的実践であり」、「決して個人またはグループの観点を述べたり、異なる個人の意見をまとめたりするものではない」(82項)。

 「意思決定プロセスの構造」(87-94項)、「透明性、説明責任、評価」(95-102項)、「シノドス性と参加機関」(103-108)は、今シノドス総会の経験から生まれた、この文書に含まれる提案の核心だ。

*第4部―絆の転換

 

 最終文書の第 4 部 (109-139項) の本質は、最初の段落に表現されている。

 「教会が根を下ろし巡礼している場所で大きな変化が起きているこの時代に、私たちは贈り物の交換と私たちを結びつける絆のネットワークの新しい形を育む必要がある。この中で、私たちは司教たち同士、そしてローマ司教との交わりの中で司教たちの奉仕によって支えられている」(109項)。

 「しっかりと根を下ろしながらも巡礼者」(110-119項) という表現は、「教会は、特定の地域、救いの神との出会いの共有体験が起こる空間と時間における、その根から切り離して理解することはできない」(110項) ことを思い起こさせる。

 最終文書のこの部分は、「人口移動」(112項) と「デジタル文化の普及」(113項) という現象にも十分な配慮をしている。この観点から、「イエスの弟子として、さまざまなカリスマと奉仕活動を持ちながら、教会間で賜物の交換に携わる私たちが共に歩むことは、キリストにおける神の愛と慈悲の効果的なしるしである」(120項)。

 「教会間の関係の指針となる原則は、賜物の共有による交わりの観点である」(124項)。この出発点から、文書は「一致の絆:司教協議会と教会会議」(124-129項)を詳しく説明しています。

 「ローマ司教の奉仕」(130-139項)に関するシノダル(共働的)な考察は特に重要だ。一層の緊密な協力と傾聴の促進に言及し、今シノドス総会はバチカンの各部局に対し、「重要な規範文書」を公表する場合は、その前に、「司教協議会および東方教会の同様の組織との協議を開始する」よう強く勧めている(135項)。

 

 

 

*第5部―宣教的弟子の民の形成

 

 最終文書は第 5 部(140-151項)の冒頭で、「神の聖なる民は、福音の喜びを証しし、シノドスの実践において成長するために、適切な養成を必要としている。まず第一に、イエス・キリストに従う神の息子と娘の自由において、祈りの中で黙想され、貧しい人々に認められることである」(141項)と断言している。

 「シノダル(共働的)プロセスで、あらゆる状況から最も強く浮かび上がった要求の 1 つは、キリスト教共同体が提供する養成が一体的で継続的なものであることである」(143項)。この点でも、私たちは「異なる召命の間で賜物を交換すること(交わり)、遂行すべき奉仕の観点(宣教)、そして差別化された共同責任における関与と教育のスタイル(参加)」(147項)が緊急に必要だ、と考える、と主張。

 そして、もう一つの非常に重要な分野は、「すべての教会の文脈において保護の文化を促進し、コミュニティを未成年者や弱い立場の人々にとってより安全な場所にすること」(150項)としている。

 最後に、「平和と正義への取り組み、共通の家への配慮、異文化間およ​​び異宗教間の対話など、教会の社会教義のテーマも、神の民の間でより広く共有されなければなりません」(151項)と締めくくっている。

*結語―聖母マリアへの託し

 最終文書は、結語の最後から2番目の段落で「シノダル(共働的)プロセスを再び経験して、私たちは、受け取られ、宣言されるべき救いが本質的に関係性に基づくものであることに気づいた」と述べている。「私たちはそれを共に生き、証しする。歴史は、戦争、権力争い、そして何千もの不正と虐待によって悲劇的に特徴づけられているが、私たちは、聖霊がすべての人間の心に本物の関係と真の絆への欲求を植え付けたことを知っている。創造そのものが、一致と共有、多様性、そしてさまざまな形で相互につながった生命について語っている」(154項)。

 そして、「このシノドス総会の成果を、聖母マリアに託す」祈りで締めくくられている。「聖母マリアが… 私たちに、弟子と宣教師が共に集い、シノダル(共働的)な教会となることを教えてくださいますように」(155項)。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年10月27日

(評論)シノドス総会で女性助祭の叙階問題は…神学者たちはまだバチカンの”検閲”に遭っている(La Croix)

(2024.10.25  La Croix  Luca Badini Confalonieri)

    シノダリティ(共働性)に関する世界代表司教会議(シノドス)総会の第2会期が27日に閉幕するが、女性助祭の叙階を含むいくつかのトピックについての判断は最終文書から除外されることになった。

 カトリッWomen from religious movements fighting for the ordination of women in Roman Catholic Church attendク教会学の専門家であるルカ・バディーニ・コンファロニエリは、「教皇の教えに対する神学者たちの批判が、教会の権威者たちから、いまだに疑惑の目で見られていること」に遺憾の意を表明した。

 特定の教皇の教えをめぐる議論は、カトリック内では禁止されたままだ。それには今、女性助祭の叙階というおなじみのターゲットが含まれている。

 女性助祭の叙階というテーマを、 教皇フランシスコは、今シノドス総会の議題から一方的に削除した。 カトリック神学者にとって、そのような表現の自由の制限は、高位聖職者がこれまで長い間、彼らの学問の自由を制限してきたため、あまりにも”身近”なものになってはいる。

 バチカンは昨年、道徳神学者であるマーティン・リントナー神父があるカトリックの研究所の部長に選任されることに対して、拒否権を行使した。Servite の会員の52歳のリントナー神父は穏健派として知られ、さまざまな神学の専門家集団を率いてきた。

 彼の何が拒否権行使の理由にされたのか?避妊と同性愛への支持を公にしたからか。それとも…。欧州カトリック神学協会とカトリック神学協会国際ネットワークの会長を務めるリントナーは昨年7月、カトリック神学者に対するバチカンの検閲の多くのケースを目の当たりしている、と批判した。

 カトリック神学者たちに対するバチカンの検閲は、何十年もの間、よく知られた”秘密”だ。神学者たちのキャリアに 永続的な損害 をもたらすため、多くの人が沈黙を守っていたが、それを破った、とみなされたのか。

 私は、Wijngaards Institute for Catholic Research(カトリックの現代神学における論争的なテーマに関する研究を行うイギリスの「進歩的な」シンクタンク)の調査研究部長を務めているが、私自身にもそのような経験がある。

 私たちが避妊や同性婚などの倫理的問題に関する声明を出すにあたって、カトリックの学者たちに共同署名を呼びかけた際、彼らは関心を示したものの、所属するカトリック大学の非難を恐れて署名に応じようとせず、署名に応じた学者たちも、”雇用者”から圧力を受けて、後になって自分の名前を署名簿から削除するよう求めたきた。

  リントナーは声明で「これは単に 個々の問題ではなく、制度的な問題だ」と指摘しているが、それは正しい。教会法によれば、カトリック教徒は、たとえそれが教義と関係なく、誤りでなくとも、すべての教皇や司教の教えに従う義務があり、公けに批判することは避けねばならない(752~754条)としている。それには、避妊、婚前交渉、同性愛の禁止、離婚と再婚、そして女性助祭の叙階など、議論になっているほとんどのテーマが含まれる。

 公けの場で批判することも教会法違反であり、職を失うなどの罰則を受ける可能性がある(教会法 1365条、1371条、1373条)。さらに、近代主義危機の時と同様に、カトリックの神学者たちは、「忠誠の誓い」を立て、これらの教えに決して異議を唱えないことを誓わねばならない。これは教会法上の「教えの義務」を得るための前提条件である(教会法 229 条3項、812条 Ad tuendam fidem、1998)。教会当局は、この義務を付与または撤回する、ほぼ完全な裁量権を持ち、正当化や控訴手続きを提供する義務はない。

 さらに、カトリックの「反体制派」を裁くために用いられる教会法上の裁判は、基本的な国際公正裁判基準を満たしていない。教義裁判は秘密裏に行われ(世界人権宣言第10条および第11条に違反している)、被告は証人に質問できず、検察が裁判官を務めることが多く、事実上、上訴権はない。

 

 

 今年1月、ドイツのボーフムにある応用司牧研究センターによる学術調査で、「位階的統制が、カトリック神学に悪影響を及ぼしている」という実証的証拠が示された。この調査では、教える許可(nihil obstat)を得るために、カトリック神学者のほぼ3分の1が「教会の教え」に沿うように研究を調整し、41%が若い研究者にnihil obstatを危険にさらす可能性のあるトピックを避けるよう助言し、8.7%が私生活の側面(同性関係、離婚、再婚など)を秘密にしていることがわかった。驚くべきことに、若いカトリック神学者は年長者よりも”自己検閲”をする傾向がある。

 これは、多くのカトリック神学者がparrhesia(包み隠さず話すこと)、つまり大胆にその使命を遂行できる、ということを否定するものではない。結局のところ、調査では、約60%が「研究を制限する必要性を感じていない」ことが分かった。しかし、この学問の自由は、現在のシステムにもかかわらず、存在しているのであって、現在のシステムの”おかげ”で生じるのではない。

 

 問題を解決するには、「nihil obstat 」(教会に対する攻撃的なものを含まない、と判断するカトリック教会の公式の検閲官によって使われる用語。 権威筋の承認)の制度の単なる改革では十分ではないだろう。より深い問題は、「カトリック神学者の学問の自由が依然として制限されるべきかどうか」だ。第二バチカン公会議は、位階制的統制と検閲はカトリック教徒を「混乱」から守り、「純粋に」教義を受け入れるために必要だ、という議論を脇に置いた。

 公会議は、まず、良心の自由の権利は「真理を探求し、それに従う義務を果たさない人々の間でも」存続することを確認した (「信教の自由に関する宣言」2項参照)。「良心の自由を尊重する」という、この義務に対する「宗教上の例外」を避けるため、信仰を広めることはいかなる「強制の兆候」も正当化できない、とし、それに反対することは「権利の濫用であり、他者の権利の侵害とみなされるべきである」と付け加えた(「信教の自由に関する宣言」 4項参照)。さらに、洗礼を受けたすべての人は「啓示された真理の神学的精緻化においても当然の自由を保持する」(「エキュメニズムに関する教令」4項参照)。

 最後に、教義上の「純粋さ」を守るために必要だ、という司教の検閲の正当化は、経験的、論理的、神学的に欠陥があり、「教義上の純粋さ」は常に絶対確実ではない教えの中に見出されると仮定している。教義を除くほぼすべての位階制的教えを構成するこれらの教えは、本質的に誤りやすく、したがって潜在的に欠陥がある。その結果、公開討論や公開批判さえも、神学的な理解を深めるために不可欠であるため、許可され、奨励されるべきである。第2バチカン公会議が指摘したように、この成長はすべてのカトリック教徒の識別力を通じて起こる(「神の啓示に関する教義憲章」8項参照)。

 位階的統制と神学的な検閲の残りの正当性は、教会法が現在求めているように、主にカトリック教徒に「服従」を課すことによって、教皇と教皇の教えを、批判から守ることである。バチカンの検閲が、最も論争の多い教皇の教え、つまり教会の統治(女性の叙階を含む)と性倫理に関係する教えに焦点を合わせる傾向があるのは、偶然ではない。

 これらの問題に信憑性を結び付けることによって(時には信者の信念と専門家の助言の両方に反して、例えば「人工的な」避妊を禁止したパウロ6世の回勅『Humanae vitae』のように)、これらの分野における教皇の教えについては、それに異議を唱える神学や聖書の研究を、良く言えば「無視」し、悪く言えば「検閲」する傾向がある。

 

 教会法が位階的な教えに対する公けの批判を罰しているの現状をそのままにして、教会は「会議」や「相互傾聴」について語ることができるのだろうか?この義務付けを撤廃するために教会法の改正は、すべてのカトリック教徒、特に神学者にとって緊急の課題である。

 カトリック教会の神学は、聖公会やルーテル教会(教会指導者が管理していない)と同じ学問の自由を享受し、その価値は受容によって認識されるべきである。第2バチカン公会議は、古代の「神学」を再確認した。教会の同意が教義の規範であるという信念(「教会憲章」12項)。これが真実であれば、「良い神学」が学界や信者に受け入れられる一方で、「質の悪い神学」は、学術的な神学者、司教、教皇のいずれによるものであっても、受け入れられない、と考えられる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2024年10月26日

・バチカン教理省長官、「女性たちがもっと多くの場を得、もっと多くの役割を果たせるように検討しよう」

 「シノダリティ(共働性)」をテーマとする世界代表司教会議(シノドス)総会の 24 日午後、「グループ 5」の作業グループのメンバーと会談したビクター・マヌエル・フェルナンデス教理省長官は、女性助祭に関する決定を「成熟した」ものとは考えなかった理由を説明し、「それが、(女性助祭の)可能性を閉ざすことを意味するものではありません」と語った。

 24日午後、バチカンのパウロ 6 世ホールで行われた会談は、長官によると「1 時間半にわたる自由で友愛的で率直な対話」が行われた。会談は、先週、第一回が行われたが、教理省側から職員 2 名が出席したものの、長官が欠席したことで参加者から不満の声が出たが、長官の欠席は「別の約束が決まっていた」という理由で、事前に公表にされていた。

 フェルナンデス長官は24日午後、ゲスト、専門家を含む約 100 人のシノドス総会参加者との会談に参加し、質問を聞き、提案を受け取り、教理省 で女性の助祭など聖職の可能性について検討している「グループ 5」の作業を評価した。会談の模様は、参加者との合意のもとに、例外的に音声録音全体を公開することを決めた。この音声録音はVatican News で公開される。

 会談の冒頭、長官は、今シノドス総会以前から、検討を委ねられた教理省で「教会のおける女性の役割」というテーマの議論を深化し、女性に捧げられた奉仕活動の新たな可能性を模索することに取り組んできたことを説明した。次に、女性たちを含む数多くの関係者からの意見、提案を聞くことから始まった検討の進め方について説明。「検討作業の進め方は、シノダル(共働的)であり、世界中の司教や枢機卿も参加していることから、作業はさまざまな感受性や文化を考慮に入れて進められた」と強調。

 また、シノドス総会の参加者たちにも、意見や提案を出してくれるよう求めており、アマゾン地域だけでなくアフリカやアジアでも、女性が教会共同体の指導者を務めるという、すでに進行中の事例も考慮に入れている。それは、現実から始めることを重視し、おそらく欧州の神学ではほとんど知られていない、すでに進行中の経験を理解し、評価するためであり、これまで意見、提案を聞いた以外の個人や組織、団体からも胃炎聴取を続ける、と長官は説明した。

 長官は、「グループ5」の基本的な目的は「教会における女性の役割」であり、ペトロッキ枢機卿が委員長を務める教皇が設置した委員会が取り組んでいる「女性助祭の可能性」の検討に抵触するものではない、と述べた。

 そのうえで、「女性は自分の意見を聴いてもらうこと、評価してもらうことを望んでいる。女性は権威を持ち、カリスマ性と能力を伸ばすことを求めているが、そのほとんどの声は、助祭職を求めていない、つまり『聖職者化』を求めていない。それが、当面の間、教理省の検討が、この道に沿って『非常に具体的な』段階を踏む必要があると判断する理由だ」と説明。

 さらに、「聖職と権力の違いを探ることが基本であり、それによって信徒、ひいては女性にも教会の指導的役割を委ねることができるようになることから、重要な合意を得られる可能性がある」と述べた。

 長官はその後、「もし過去に女性がミサ聖祭で説教をしたり、助祭に叙階されないまま権力を行使していたことが判明した場合、これ(女性助祭の叙階)はあまり意味がないのではないか?」と問いかけ、さらに、「助祭職という特定のテーマについては、ペトロッキ枢機卿が率いる委員会が、シノドス総会や世界各地からの提案に耳を傾けながら、より精力的に作業を再開する。提案や助言はシノドス事務局を通じて出すことができる」と語った。

 また長官は、教皇フランシスコのこの問題に関する立場を要約し、「女性助祭職に関する決定は成熟していない」と言うことは、教皇がこの問題に終止符を打とうとしているのではなく、「委員会の作業の結論が一義的ではないことを踏まえ、さらに検討を続けたいということです」と強調した。

 さらに、「過去に女性が助祭に任命された例があったとする歴史家がいる一方で、それは祝福であって真の叙階ではなかったとする歴史家もいる」と述べ、「聖職と切り離せないものとそうでないものを区別することから始めて、教会で女性に力を与える明確で具体的なステップを踏んで前進できると確信している… 聖霊が私たちをどこに導くのかを見るために心を開くように」と総会参加者たちに求めて締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年10月25日

・シノドス総会第2会期・10月23日定例会見:総会参加者たちが最終文書策定で1000件超える修正案を提示

(2024.10.23  Vatican News  Christopher Wells)

 世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期が終盤を迎える中で、シノドス情報委員会のルッフィーニ委員長が23日の定例記者会見で、総会最終文書の策定に関わる討議の現状を説明した。

 それによると、先日、参加者全員に配布された最終文書草案に対して、1000件を超える修正案が提示されている。このうち900件以上はシノドスの小規模な作業グループによって出されたもので、各提案は単純多数決で承認される必要がある。

 最終文書の作成を担当する執筆グループは、総会参加者たちから個人的に約100件の修正案も受け取っており、これらをもとに現在、文書の最終案を作成中で、26日の朝の総会全体会議に提案、午後に賛否の投票がされる予定だ。

 また、この日を含めてあと2回となった定例会見に出席したゲストたちからは、司教の役割と権威、教会法がシノドス性を反映する必要性、司教協議会の教義上の権威、東方カトリック教会について発言があった。

 ルッフィーニ委員長はまた、22日の記者会見での質問に対するフリドリン・アンボンゴ枢機卿の回答に関するティモシー・ラドクリフ次期枢機卿の声明を記者たちに伝えた。

 22日の会見では、記者から、バチカン教理省が昨年12月に発表した、祝福の司牧的意味に関する宣言「Fiducia supplicans」に対するアフリカの対応の背後に金銭的配慮があったという噂について質問があり、答えるよう求められたアンボンゴ枢機卿が、「ラドクリフ次期枢機卿と話をしたが、彼は、ロッセルバトーレ・ロマーノ紙の記事のような噂について示唆したことは一度もない」と言明した、と述べていた。

 23日に発表された声明で、ラドクリフ次期枢機卿は、「アンボンゴ枢機卿との会話は、ロッセルバトーレ・ロマーノ紙に掲載された元の演説ではなく、カトリック文化のウェブサイトに掲載されたフィル・ローラーの記事について言及したものだ」とし、「オッセルバトーレの記事の解釈は、私の書いた内容を誤解している… 私は、アフリカのカトリック教会の立場が財政上の配慮に影響されているなどと書いたり示唆したりしたことはない。アフリカのカトリック教会が、外部から十分な資金を得ている他の宗教や教会から多大な圧力を受けていることを認めただけだ… 私の立場を明確に擁護してくれたアンボンゴ枢機卿に非常に感謝している」と述べている。

 

 

 

*プレボスト司教庁長官「司教は”ビジネス管理者”でなく、司牧者として『神の民』と共に歩まねばならない」

 

 この日のゲスト出席者からは、まず、司教省長官のロバート・プレボスト枢機卿が登壇し、司教選任プロセスに関する今総会での議論の説明から始めて、司教と司教会議の役割と権威について語った。さらに、司教は「ビジネス管理者」ではなく、何よりもまず司牧者であり、自らに託された神の民と共に歩む必要がある、と強調した。

 枢機卿は、司教たちが父親や司牧者としての役割と、時には裁判官や懲戒者の役割に関して感じている緊張を指摘。司教の権威は「奉仕」に基づいていることを繰り返し強調し、教区のすべてのメンバーに奉仕する必要性を強く認識することで、「教会内の権力構造の力学を変えること」が非常に重要だ、と述べた。そして、この文脈で、司教が司​​祭、修道者、信徒、および教会法ですでに認められているさまざまなシノダリティ(共働性)の成員と相談し、協力する必要があることを強調した。

 さらに、司教たちに対して、「自分たちの民を知り、彼らの声に耳を傾ける」よう、強く促し、社会の周縁にいる人々や、自分たちが神に信頼されていないと感じている人々に手を差し伸べ、教会の一員となるよう招くことが「非常に重要」であると述べた。そして、教皇フランシスコの「すべての人、すべての人、すべての人」という繰り返しを引用し、「司教たちは特に、その歓迎と開放性の表現者となるよう求められている」と語った。

 

 

*ワイレンズ教授「シノダリティ(共働性)に関する教会法の役割、説明責任、透明性、評価の重要性」

 ミリアム・ワイレンズ教授は、シノダリティ(共働性)に関する教会法の役割について語った。まず、以前に行った講義に言及して「リセットボタンを押す」という比喩を使い、「これは特定のタスクの作業条件を最適化するために、システムを変更することを含みます。このシノドス総会は、教会の福音宣教の任務を最適化するために、教皇の求めに応じ、教会が活動主体を『再構成』することにあります」と述べた。

 そして、「これは第2バチカン公会議に根ざしており、教会のメンバーが、召命やカリスマなどの多様性、そして彼らが置かれているさまざまな状況を踏まえて、教会の使命をより信頼性が高く効果的なものにするためにどのように貢献できるかを共に見極めることを意味します」とし、このシノドス総会によって開始された変革プロセスには「教会法上の構造が伴わなければならない」と主張してきた神の民の「大きな一貫性」についても言及。大陸レベルを含む教会のあらゆるレベルで神の民全体を巻き込んだ司教および教会の集会の呼びかけ、および強制的な司牧評議会の呼びかけを指摘し、「これらは強化されるべきです」と主張した。

 最後に、ウィレンズ教授は「説明責任、透明性、評価の重要性」を強調し、「教会内の(性的)虐待が教会の信頼性に影響を与えてきたこと」、また、「すべての信者が結束し、互いに支え合う責任を意味するという認識が高まっていること」を指摘。「この認識は社会的な観点からではなく、深い神学的な観点から生まれたものです」と語った。

 

 

*教会論の専門家、ルーティエ神父「司教協議会には新たな協議を提案する権限がない、教会全体と教皇に連携して働くもの」

 

 神学者で教会論と教会史の専門家でもあるジル・ルーティエ神父は、司教協議会の教義上の権威の問題について発言した。

 「この問題は新しいものではない。第二 バチカン公会議以来、いくつかの教義文書で取り上げられています」としたうえで、「司教協議会」という用語の意味を厳密に説明し、「司教協議会には新しい教義を提案する権限はなく、教会全体および教皇と連携して行動せねばなりません」と語った。

 また神父は、特定の人々の要請に応える形で教会の共通の信仰を教える司教協議会の権限に言及。「それは、教会の教えを抽象的な考えとして残すのではなく、人々が必要としていることと課題に対応することです」と述べた。

 

 

*マロン派教会のアルワン神父「東方カトリック教会の信徒は、シノドス総会で多様性に富んだ教会の一致と豊かさを体験した」

 

 最後に、マロン派教会から”シノドスの道”に携わってきたカリル・アルワン神父が発言し、まず、今開かれているシノドス総会が、教皇フランシスコの主導のもとで、総会参加者を司教に限定せず、司祭、助祭、修道女、信徒も完全な投票権を持つメンバーとして参加させていることを挙げ、「これは信徒に非常に高く評価されており、この総会が普遍教会の信仰心の最高の表現となることを可能にしています」と述べた。

 また、東方カトリック教会について、「東方カトリック教会は単なる『現地教会』ではなく、独自の管轄権、伝統、遺産を持つ使徒教会および総主教教会です」としたうえで、「東方カトリック教徒は、移民として故郷を離れ、戦争を含むさまざまな苦難に苦しんでいることが多い。その現実を世界中の教会に持ち込みました。世界中に散らばる東方カトリック教徒は、出身地に愛着を持ちながらも痛みを抱えている。しばしば『殉教』を特徴とする彼らは、復活への希望を持ち続けています」と語った。

 そして、今回のシノドス総会では、「東方カトリック教徒は多様性に富んだ教会の一致と豊かさを体験しました。そして、聖霊の識別を通じて、私たちは他者の側に思いやり、理解、そして希望を見出しました」と述べ、相互理解と共通の利益のために協力することを目指して「関係を築き、対話の架け橋を築く」ことの重要性を強調した。

 また、教皇フランシスコが中東のカトリック教徒に宛てた最近の手紙や、聖地での戦争の「残虐行為」を終わらせるために祈りと断食の日を呼びかけたこと、そして20日の主日のミサ中にダマスカスの殉教者11人を列聖したことなど、連帯の具体的な兆候にも言及。

 最後に、国際社会と国連安全保障理事会に聖地での戦争を終わらせるよう呼びかける声に加わった後、アルワン神父は、「キリスト教の希望は、単なる表面的な楽観主義ではありません」とし、「神は苦しみの中にあっても人生の道を用意し、遠くに思えても、中東の平和な未来への希望を与え、私たちに前進する希望を与えてくれています」と発言を締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
2024年10月24日

・シノドス総会第2会期・10月22日定例会見:最終文書草案への提案、修正の検討が行われ、若者と女性の役割が焦点に

(2024.10.22  Vatican News   Lorena Leonardi and Edoardo Giribaldi)

     世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期は大詰めを迎え、21日に参加者全員に配布された草案をもとに最終文書の内容について検討が進められ、教会における若者と女性の役割に関してどのように言及するかが主要テーマとなり、それらを含めて修正の提案がされた。また、ウクライナ、中東などで多くの人が戦争に苦しめられている現状を直視し、戦争に明確な「ノー」を表明することが提起されている。

 シノドス情報委員会のルッフィーニ委員長が22日午後の定例会見で説明したもの、また、この日の会見にはゲストとして、コンゴ民主共和国キンシャサ大司教のフリドリン・アンボンゴ・ベスング枢機卿、カメルーンのベマンダ教区のアンドリュー・ンケア・フアニャ大司教、ドイツ・エッセン教区のフランツ・ヨーゼフ・オーバーベック司教、マレーシア・カトリック研究センター所長のクラレンス・ダヴェダサン神父が出席した。

 会見ではまず、ルッフィーニ委員長から、21日午後からこれまでの総会での討議状況などについて説明があり、「22日の午前の会合で特別責任者のジャコモ・コスタ神父が新しい作業段階の手順を詳しく説明した。22日午後と23日朝の数時間は、小グループによる最終文書原案の策定に充てられる」と述べた。

 そして、原案の修正は総会参加者または総会参加者のグループが提案でき、その修正案は総会における投票権を持つメンバーの投票に付されるが、採択されるためには絶対多数の支持を得る必要がある」とし、グループによる修正の提案は23日午前中を期限とすること、総会の各メンバーはシノドス事務局に個別の提案を送ることもできるが、修正案は当然、提案よりも重視されること、などが説明された。

​​ また、委員長は、「最終文書の草案は公用語であるイタリア語で書かれたが、非公式の形で可能な限り多くの言語に翻訳された。これはすべて、さまざまな会員の識別を容易にするために行われた」と指摘し、翻訳された言語の中にはウクライナ語と中国語があり、総会に出席した2人の中国人司教が「大いに感謝した」と述べた。

 

 

*総会参加者の若者が「私たちを置き去りにしないで、あなたがたと共に歩みたい」と訴え

 また情報委員会のピレス事務局長によると、22日の全体会議には343人が出席し、教皇フランシスコも同席された。21日の最終文書草案の発表に続く、小グループに分かれての討議では、特に22日午前の自由発言はすべて草案文書に集中し、そのバランス、深さ、密度が高く評価する意見が出る一方、修正や追加についての提案もなされた。

 事務局長は「これまでに取り上げられたシノダリティ(共働性)に関するさまざまなトピックについて40件の発言があり、その中で総会の最年少参加者からの『若者を置き去りにせず、共に歩んでください。私たちはあなたがたと共に歩みたい』という訴えがあった」と説明。また、「教会における女性の役割についても発言があり、女性の果たす役割の基本的な重要性が再確認された。信徒、司教協議会、司祭、奉献生活、小規模なキリスト教共同体の役割についても取り上げられた」と報告した。

 

*「戦争に『ノー』を繰り返すべき」との主張も

 さらに、進行中の世界のニュースがシノドス総会の会場に届き、「教会は戦争に対して、強く明確な『ノー』を繰り返すべきだ、との主張もあった。『私たちはこれらの紛争の終結を求め、懇願し続けなければならない。さもなければ、この文書を読むことができる人間はもう誰も生きていないだろう』と強く訴えがされた」と述べた。

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*コンゴのベスング枢機卿「総会は、教会の新たなあり方を共に構想する方法を考える機会になった」

続いてゲストによる意見表明があり、まず、ベスング枢機卿から、「私たちは特定の問題を解決するために集まったのではなく、教会の新たな在り方を構想するために集まったのです」とし、「今総会は、自らが設定した目的から逸脱せず、基礎を築きました。そこから出発して、各自を自分の家に戻し、普遍教会と同様に、このシノダリティ(共働性)の精神をあらゆる問題に適用しなければなりません」と強調した。

 そして、「我が国は依然として宣教の地とみなされており、私たちの教会も最近まで宣教の地でした。そして社会文化的状況の現実に適応しなければなりません、総会への招きは、決断の機会、恵みの瞬間であり、教会の新しいあり方を共に構想する方法を考える機会となりました」と述べ、「アフリカの教会は、アフリカの兄弟姉妹とともに、この新しいダイナミクス、つまりカトリック教会の変革に取り組もうとします」と語った。

*カメルーンのフアニャ大司教「アフリカはシノダリティ(共働性)の肥沃な大地」

 カメルーンのフアニャ大司教は、草の根共同体やカテキスタをはじめとするアフリカのシノダリティ(共働性)への貢献についてコメントした。「シノダリティ(共働性)は、私たち全員にとって終末論的な兆候。総会には、世界のさまざまな地域からさまざまな考えを持ってやって来た」と述べ、シノドス総会の参加者が、シノダリティ(共働性)を受動的に受け入れた人々としてだけでなく、積極的な”大使”として故郷に帰ることを希望している…シノダリティ(共働性)は『本当に未来だ』と私は信じている」と述べた。

 また、「教会が”満員”のアフリカの状況では、問題はどうやって、それを維持するかです… 私たちはシノダリティ(共働性)を通してそれを実現します」と語り、カテキスタ、特にカテキスタ全体の約半数を占める女性が果たす基本的な役割を強調した。そして、「アフリカはシノダリティ(共働性)にとって特別な場所。小さな共同体でも問題を解決し、平和を実現できるほど(の力がある)」と語った。

 

 

 

*ドイツのオーバーベック司教「ポスト世俗化の時代にカトリック教会を『再文化』化する必要」

 ドイツの”ポスト世俗化”の状況について、オーバーベック司教は、カトリック教会を「再文」化化する必要性を強調した。

 司教は、「ドイツの人々は長い間、カトリックかプロテスタントかどちらかでしたが、今では約8400万人の国民のうちの半数が、信仰も宗教もなく、神が誰なのかも知りません。残りの半数はカトリックとプロテスタントがほぼ半々で、400万人以上のイスラム教徒がいる」としたうえで、「新しい小さな共同体は機能しているが、『新たな福音宣教』と『教会における女性の役割に関する新たな答え』を出すことが求められています」と強調。

 さらに「教会が、一方では構造と、他方では新しい精神性の間で緊張関係にある”ポスト世俗化”の中で、シノダリティ(共働性)は、私たちが何年も前から歩んできた道」とし、「ドイツでは、(聖職者による性的)虐待スキャンダルが深刻な問題として表面化したのを受けて、シノダリティ(共働性)による具体的な対応策が開発されています」と説明した。

 

 

 

*マレーシア・カトリック研究センターのダヴェダサン所長「信仰を表現する場がますます狭くなっている、対話による調和を求めねば」

 

 マレーシアのカトリック研究センターの所長、ダヴェダサン神父は、教会内で、そして教会外の他者と共にしたシノダリティ(共働性)の生きた経験について語った。

 「フィリピンと東ティモールなどを除けば、アジアはカトリック教徒が少数派の大陸です。信仰は非常に生き生きとしていますが、それは、世俗化やその他の問題が存在しないことを意味するものではありません」と述べた。

 そして、「多くの地域で、信仰を表現する場が、政治的、宗教的過激主義のせいだけでなく、ますます狭くなっているようです。そうだからこそ、対話を進めることで調和を求めなければなりません… 対話は『選択肢』ではなく、生き残るためにとらねばならない。目新しいものではなく、必要不可欠なものであり、多元主義文化の中で私たちが日々経験している一部です」と強調。

 さらに、「シノダリティ(共働性)は、すべての基盤であり、あらゆる場所で実践されています。そして家族の絆は強まり、それは実を結び続けています」としたうえで、「アジアにおける課題は、『他者と共に生きる』という観点から神学を学ぶことと、『信仰を公けに表現できない場所』で福音宣教することを、学ぶことです」と語った。

 また神父は、多くのアジア人が世界の他の地域に住むようになった”移住現象”について言及し、「彼らは新しい”宣教師”です。なぜなら、彼らは移住するときに、収入を得ることだけを目的とせず、信仰も一緒に持っていく。そして、世界の多くの場所で彼らが教会を活気づけ、信仰を生かし続けることに貢献しています」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

Asia, a living faith in dialogue

Father Clarence Sandanaraj Davedassan, director of the Catholic Research Centre in Kuala Lumpur, Malaysia, spoke about the experience of living synodality ad intra, within the Church; and ad extra, with others.

Apart from the Philippines and Timor Leste, he explained, Asia is a continent where Catholics are a minority.

While the faith is very much alive, he said, “this does not mean that secularisation and other problems are not present.”

If, he continued, “the public space for the expression of faith seems to be getting smaller and smaller” in many places, not least due to political and religious extremism, in such a context “one must seek harmony by engaging in dialogue.”

In such context, he insisted, dialogue “is not an option” but rather “a matter of survival. It is not a novelty but a necessity and is part of the experience we live daily within a pluralist culture.”

Synodality, he continued, is “at the foundation of all this” and is being lived everywhere, starting with the family, and it continues to bear fruit.

Thus, he said, the challenge in Asia involves learning to do theology “from the perspective of living with others” and learning to evangelise “where faith cannot be expressed in a public way.”

Finally, Fr Davedassan spoke about the phenomenon of migration, which has led many Asians to live in other parts of the world: “They are the new missionaries, because when they leave they are not just looking for an income but they take their faith with them.” he concluded, “And I know that in many places in the world they animate the Churches, contributing to keeping the faith alive.”

2024年10月23日

・シノドス総会第2会期・10月21日の記者会見:最終文書草案が全体会合に提出、参加者全員に配布されたが内容は非公開

(2024.10.21  Vatican News   Tiziana Campisi and Roberto Paglialonga )

 シノドス情報委員会のルッフィーニ委員長は21日の定例記者会見で、現在開催中の世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期の最終文書の草案が同日の全体会合に提出され、全参加者に配布されたことを明らかにした。

 また、25日午後 5 時からPalazzo San Calistoで、Athletica Vaticanaとバチカン文化教育省が主催する「スポーツ シノドス」が開催される、と述べ、「多くのシノドス参加者がこのイベントに申し込んでおり、アスリート (難民、パラリンピック選手、オリンピック選手) と平和と相互奉仕をテーマにした話し合いが行われる」と説明した。

 また、情報委員会の ピレス事務局長は、「シノダリティ(共働性)を主題とする世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期」が最終週に入った21日の討議について説明した。

 この日は聖ペトロ大聖堂でのミサで始まり、シノドス事務局のグレック局長が説教で、「このシノドス総会は、『神の言葉をすべての人に宣べ伝えることを目的とした新たな始まり』とみなされるべきです」と強調した。続いて、351 名が出席した総会の全体会議の冒頭、ティモシー・ラドクリフ神父の指導で「自由と責任」をテーマにした瞑想がされ、次に総会文書総括責任者のオロリッシュ枢機卿から総会第2会期の最終文書の草案が発表された。

 「provisional text(暫定テキスト」と説明されたこの草案は、「透明性の欠くためではなく、前向きな議論の雰囲気を維持するために機密性が必要」と枢機卿は強調。総会参加者の”共同作業”の結果であるこの草案は「総会での議論の成果であるだけでなく、豊富なプロセスを活用し、”シノドスの旅”のさまざまな段階で長年にわたって行われたすべての作業が組み込まれている」と語った、という。

 ピレス事務局長は、「特別報告者と専門家は、発言を注意深く聞き、小グループからの報告を精査するために懸命に働いた」と述べ、神学者の貢献は「文書とフォーラムの両方にとって重要だった」と説明。21日の午後は、「小グループに分かれて真の”贈り物”を交換し、グレック・シノドス事務局長の言葉を借りれば、『最終文書の草案に目を通すことで浮かび上がった課題、将来への夢、内なる力学、新しい動機を共有』します。これは黙想を体験する新しいやりかたであり、おそらく馴染みのないやりかたです… したがって、21日は祈りと黙想、そして最終文書の草案の検討に充てられます」と説明した。

 また、午前の全体会合は、メキシコのチアパス州サン・クリストバル・デ・ラス・カサスの近隣にあるクシュティタリ教区でミサの直後に殺害されたイエズス会のマルセロ・ペレス神父のために祈ることで終わりました」と付け加えた。

 

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この日の記者会見には、シノドス総会参加者会長のイタリア司教協議会のマッテオ・ズッピ枢機卿、シノドスの霊的顧問のティモシー・ピーター・ジョセフ・ラドクリフ神父(12月7日に枢機卿に昇格予定)、シノ007ドス事務局のシスター・ナタリー・ベッカー次長、ギリシャのビザンチン典礼カトリック大司教であるマヌエル・ニン・グエル大司教の3人がゲスト参加し、次のように発言した。

ズッピ枢機卿はシノド全体を通じての対話の経験を振り返り、対話は「手段ではなく、教会そのものの基礎」であると述べ、参加者たちが互いに耳を傾け、互いに出会う円形の小テーブルを指さし、「今総会の会合での討議は、常に霊的なものです」と強調した。

 

 

*ラドクリフ神父「最終文書には『天の王国』のイメージが反映されるだろう」

 

ラドクリフ神父は、教会が現在進めている「改革の旅」を振り返り、「その旅は、今総会の最終文書に反映されるでしょう… それは決定や見出しを飾る声明として見るべきではありません」と述べ、「社会の崩壊、戦争、そして様々な困難の中に世界がある時代の中で、「教会には、特別な使命がある。それは、キリストのしるし、平和のしるしとなり、キリストとの交わりを保つことです」と強調。今回のシノドス総会を通じて、教会をイメージする新しい方法が生まれつつあり、最終文書は、イエスが王国を告げるためにたとえ話を使ったのと同じように、それを示すイメージが提示されるでしょう」と述べた。

 

*ベッカー・シノドス事務局次長「今シノドス総会でキリスト教一致への新たな段階が開かれた」

 シノドス事務局次長のシスター・ベッカーは、今総会を特徴づけた「キリスト教一致の代表同士の友愛的な雰囲気について述べた。「今総会で、教皇が参加者の間に座り、耳を傾けている姿や、参加者が聖ペテロの殉教を思い起こしながら一緒に祈ったキリスト教一致のための祈祷会の姿に言及し、「教会に新しいイメージを与えてくれます」と強調。「この総会は、教皇の首位権の行使と司教たち、神の民全体の collegiality(合議制)を理解する新しい方法を導入しており、これがキリスト教の一致の新たな段階を開いたのです」と語った。

*東方カトリック教会のグエル大司教「シノドス総会は、東方カトリック教会の役割を知ってもらう機会を提供した」

 ギ​​リシャのビザンチン典礼カトリック教徒の使徒座大司教で、 1 世紀前に設立された小さな教会共同体を率いるグエル大司教は「今シノドス総会は、他宗派間の互いの深い理解の機会を提供している」と述べた。彼の教会共同体は、ギリシャ・トルコ戦争後に多くのギリシャ難民がアテネに逃れて来た時に形成された。

 大司教区は 2 つの小教区から成り、1 つはアテネの大聖堂を中心に、もう 1 つは北約 500 キロのテッサロニキ近く、ヤニツァにある。司祭は 7 人で、内訳はギリシャ人 2 人、スロバキア人 1 人、カルデア人 1 人だ。 信徒は、ギリシャ・カトリック教徒、ウクライナの共産主義崩壊後 の約30年前にやって来たウクライナ・カトリック教徒、東シリアの伝統を持つイラクからのカルデア・ カトリック教徒から成る。また、正教会信徒とイスラム教徒が協力する援助団体カリタスを運営しており、自閉症の人々を支援する財団も持っている。

 大司教は、ギリシャの大司教区は「カトリックの伝統における独自の教会」であると指摘。「誰もがこのことを知っているわけではありませんが、シノドス総会は、正教会の姉妹教会と同じ典礼、神学、霊性、教会法規を共有する東方カトリック教会の役割を知ってもらう機会を提供してくれました」と語った。

 

 

 

*「女性の教会での真の役割増大には『発想の転換』が必要、女性助祭の問題だけに集中すると極端な『聖職者主義』に陥りかねない」

 

 教理省のフェルナンデス長官は21日の声明で「教皇は、女性の助祭の問題にはまだ取り組む準備ができていないと感じている」ことを強調したが、この問題は、この記者会見でも焦点の一つとなった。

 ラドクリフ神父は、女性助祭叙階の問題だけに注目するのではなく、「教会博士として歴史を通じて女性が担ってきた高い地位」などについても考える必要がある、とし、「女性の教会における役割の向上の問題全てを女性助祭の叙階に帰してしまうと、極度の聖職者主義に陥る危険がある」と、暗に長官を支持する発言をした。

 ベッカー事務局次長も「カトリック大学の学長、カリタスのような組織のリーダー、司教協議会事務局の部門長など、教会ではすでに女性が高位の地位に就いています」と強調したうえ、「女性の指導的地位を促進する方法は数多くあり、多くの司教が現在、女性を教区の代表団の一員に任命し、統治の役割を与えている」と説明。

さらに「教会は社会の一部であることから、社会的、文化的障害が依然として残っています。例えば、聖公会の司教たちと話をすると、女性が叙階された場合でも、教会での男性の貢献が女性よりも重視されることが多い… 真の発想の転換が必要であり、それには時間がかかるでしょう。私たちは教会からだけではなく、私たちが住む社会からも(伝統的な)考え方を受け継いでいる」と語った。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年10月22日

・バチカン教理省長官、「女性助祭」問題への自身の対応への批判に強く反論(Crux)

Cardinal Victor Manuel Fernandez. (Credit: Vatican Media.)

(2024.10.21  Crux Staff)

Vatican’s doctrinal czar fires back at criticism over women deacons

 ローマ発 – バチカン教理長のフェルナンデス長官が18日に開かれた世界代表司教会議(シノドス)総会参加者による女性助祭の問題を含む討論に出席しなかったことで、関係者から批判されているが、長官は21日、声明を発表し、「教皇フランシスコは今はその問題を”解決”する時期ではないと明言されているが、それ以前に、関係法令で定められている女性の権利拡大のための他の可能性が十分に活用されていない」と”反論”した。

 また、教皇が2020年に創設しペトロッキ枢機卿が長を務める「女性助祭の可能性を調査する委員会」が「間もなく”部分的な結論”を公表するが、検討作業は『継続』しており、『検討すべき内容、提案、懸念に関する意見』を公募している」とも説明した。

 長官が欠席した18日の会合は、教皇が、今開かれているシノドス総会第2会期に先立って最も論争の多い問題のいくつかを検討するために設置した10の研究グループのメンバーと総会参加者が交流する機会をもつことを目的としたものだった。総会参加者側で会合に最も多く出席したのは、「聖職に関する神学および教会法上の問題」を扱うグループ。このグループは、女性助祭の問題も担当しており、総会第2会期の冒頭で長官がグループの任務の概要を語っていたことから、長官にさらに明確な説明をすることを期待していたのだ。

 長官が欠席したため、18日の会合の参加者の多くは失望と苛立ちを表明して帰ったが、代理に会合に出たのがバチカンの”下級職員”で、ほとんどの質問に答える権限を与えられていなかったことで、参加者の失望と苛立ちはさらに増した。

 

 長官が21日の声明で、こうした批判に対して、「自分がこの(女性助祭の問題を扱う)グループのコーディネーターではなく、教理省の教理部門のアルマンド・マッテオ局長がその役割を担っている」としたうえで、マッテオ局長は18日に「診察の予約」があったため出席できず、他の職員が出席した」と釈明。「皆さんが私の出席を希望されていることが分かったので、24日に改めて研究グループメンバーと総会参加者の交流の場を設ける。その際、研究グループのメンバーの個人名も明らかにする」とのべ、自身の欠席と研究グループのメンバーが具体的に秋からにされてこなかったことへの不満に応えることを約束した。

 また声明で長官は、女性の助祭という核心的な問題について、「教皇はこれまで『まだ成熟していない』と明言されているが、同時に、教会における女性の役割を非常に重視しておられる」と強調。「聖職に関係のない他の可能性を模索するよう担当部署に要請している」と述べた。

 さらに長官は、助祭職に焦点を当てても「教会における何百万人もの女性の問題は解決しない」と主張。「女性に力を与える具体的な方法は既に存在しているが、十分に活用されていない」とし、具体例として、まず、2021年5月に教皇が創設し、女性にも開放された新しいカテキスタの職務を挙げ、「これは、司祭不在の時に実際に信仰共同体を率いるカテキスタであり、真のリーダーシップと権威を意味し、女性が果たすことができる役割だ。だが、これに具体的に対応しようとしている世界の司教協議会はごくわずかにとどまっている」と批判。

 また教皇は2021年1月に侍者奉仕の職を女性に開放したが、「実際に、世界の教区のうちこの職を認めているのはごく一部にとどまっており、司祭たちはこの奉仕に女性を司教に紹介することを希望しない場合が多い」とした。

 加えて長官は、「男性の助祭職さえもまだ十分に普及していない。世界中の多くの教区には助祭がまったくおらず、助祭がいる教区の多くは、助祭を司祭職へのステップとしてしか扱っていないと指摘した。(バチカンのデータによると、世界には約4万8000人の終身助祭(通常は結婚していて司祭職の準備をしていない男性)がいるが、その97%が北米と欧州の教会所属だ。)

 

 長官は「これらのいくつかの例を見ても、女性助祭の叙階実現を急ぐことが、女性の教会における役割を高めるための最も重要な対応ではないことが分かる」と強調。女性が助祭に叙階されなくても、教会で重要な役割を果たせるようにする方法に重点を置いている教区を擁護し、「『現実』は『考え』よりも優れている」と述べた。そして、女性が果たしてきた指導的役割は「教会共同体に押し付けられたからでも、研究の結果によるのでもなく、聖霊の働きのもとで、人々の真の必要性に直面して、女性がこの権威を獲得したからだ」と述べた。

 声明の最後に長官は「私は、一歩一歩前進し、あらゆる具体的な事柄に到達できると確信している。そうすれば、女性の性質には、女性が教会の指導的立場に就くのを妨げるものは何もないことを理解できるだろう… 聖霊から真に来るものは止められない」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年10月22日

・北米・中南米の大学生140人とシノドス総会のリーダーたちが対話

File Photo of SynodFile Photo of Synod  (Vatican Media)

 

*グレック枢機卿「”シノドスの道”がそのための取り組み。他者の声を、聖霊の導きを聴くことは教会をシノダルにする基本」

 

問「なぜ、教会と関係しない若者がシノダリティに関心を持つべきなのか?傷ついた人のための場は、教会はどのように作れるのか?」

 中東で育ったベネズエラの学生、アレクサンドラは、「教会と関わっていない若者が、なぜシノダリティ(共働性)に関心を持つ必要があるのか」「教会は傷ついた人々のためにどのように場を作れるのか」と質問した。

*オロリッシュ枢機卿「シノダリティ(共働性)は、二極分化する世界で人々を結びつける、教会に対話の場を作る」

  オロリッシュ枢機卿は、「今日の二極化する世界で、人々の『主張』だけでなく、人々の『声』に耳を傾けることの重要性」を指摘。現在の米国を特徴づけている意見の衝突を例に挙げ、「二極化はシノダリティ(共働性)からかけ離れた概念であり、デジタルの世界も同様です。自分と同じ意見を持つ人だけをフォローし、反対意見があれば非常に対立的になる… しかし、意見の異なる人は敵ではない。私たちは同じ人類の一員です。共通の解決策を見つけねばなりません」と強調した。

 そして、「教会では、私たちは兄弟姉妹であり、同じ洗礼を受けている。ですから、共通の解決策を見つけるのはやさしい。世界はそこから学べると思うし、私たちも、他の信仰や宗教を持った人々に心を開き、世界の大きな問題について世界的な友愛の精神で議論できればいいと思います。なぜなら、シノダリティ(共働性)は人々を結びつけ、共通の人間性を認識する方法を提供するからです」と語り、世界は教会のシノダリティへの取り組みから、特に平和、正義、環境などの地球規模の問題に取り組む敬意ある対話の場を作ることを学ぶことができるでしょう」と述べた。

 

問「シノダルな振る舞いは、教会の伝統と真理への忠実さに影響を与えないか」

 サンフランシスコの学生サンドラは、「シノダル(共働的)な取り組みいを重視することが、伝統と真理への忠実さに影響を与えること」に懸念を表明した。

*フローレス司教「シノダリティは福音宣教という教会の使命を損なわない、教会の教えへの理解を深めるのに役立つ」

 フローレス司教は、「シノダリティ(共働性)は福音を宣べ伝えるという教会の使命を損なうものではありません」と述べ、異なる意見を持つ人々の意見に耳を傾けることの難しさを認めつつ、そうすることは、「人々が直面している現実を理解するために欠かすことができません」と強調。

 また、「教会に忠実であり続けるにはどうすればいいのでしょうか。教会は2000年もの間、混乱を続けてきましたが、聖霊がその教会をのbまとめています。南テキサスからローマに何を持ち込むのでしょうか。お互いに耳を傾ければ、教会の信仰が損なわれる心配はありません… シノダルな振る舞いは、教会の核となる教えを損なうことなく理解を深めるのに役立ちます」と述べた。

 

問「今のシノドス総会の議論を行動にするにはどうすべきか」

 青年奉仕に携わるニューオーリンズの学生ジョセフは「このシノドス総会での議論を具体的な行動にするにはどうすればいいのか」と尋ねた。

*シスター・サラザール「シノダリティは互いの中にイエスを見つける方法、この場の体験を自分の場所に持ち帰り、実践するように」

 シスター・サラザールは、「シノダル(共働的)な取り組みの、これまでの教会の取り組みに与える変革」の意味を強調。

 「それは、まるで自分がその場にいるかのように聖書を体験する」という聖イグナチオ・デ・ロヨラの言葉を使って、「今、皆さんがしている、シノドス総会の参加者と同じテーブルに就くということは、それ自体が、交わりと変革を促す強力な体験なのです」と語り、「皆さんがこの体験をそれぞれが属する共同体に持ち帰り、シノダリティ(共働性)を現実のものにしてくれることを期待しています」と語った。

 また、この取り組みは単なる理論ではなく、一つの教会として、共に識別し、構築する方法だ、とし、「皆さんが、この場で過ごした後、何が起こるのでしょうか?  私のサンバーナーディーノ教区で、そして願わくは教会全体で引き継がれることになるでしょう… それはお互いの中にイエスを見つける方法であり、単なる概念ではなく、神の意志を共に構築し、共に識別することです」と言明。

 さらに、「今の分極化の時代にあって、シノダリティは、非常に敬意を持って良い知らせを穏やかに発表する方法。米国の人々がそうなることを、とても期待しています」と述べ、「素晴らしいのは、私たちは独りではない、ということです。教皇フランシスコは『自分の使命を一人で果たそうとしたくない』とされ、世界の教会全体に、自分と一緒に使命を果たすように、と呼びかけられました。それを現実のものにしてください!」と学生たちに求めた。

 

問「神学校と大学の神学部はシノダリティをどう促進できるか」

 エルサルバドル出身の神学者ファビオは、神学校と大学の神学部がシノダリティをどう促進できるかを尋ねた。

*フローレス司教「学術的環境から抜け出し、社会の周辺の人々の生活を体験すること、シノダリティを聖職者養成のあらゆるレベルに浸透させる必要」

 フローレス司教は、神学者と神学生に、彼らが奉仕する人々の現実に向き合うよう促し、「学術的な環境から抜け出して、社会の周縁にいる人々の生活を体験すること」の重要性を強調した。

 グレック枢機卿は、神学校と神学プログラムは「シノダリティのレンズを通して再評価されなければなりません」とし、神学生と神学者にこの進行中の対話に貢献するよう呼びかけ、「シノダリティが教会の聖職者養成のあらゆるレベルに浸透せねばなりません」と述べた。

 

 

問「宗教間対話の促進に、信徒の果たす役割は?シノダリティは他宗教からどのような教訓を学べるか?」

 シンシナティ出身のミカは、「教会が宗教間対話を促進するために、信徒をどのような役割を果たせるか。シノダリティ(共働性)は、他の宗教の伝統からどのような教訓を学べるか」と尋ねた。

*オロリッシュ枢機卿「シノダリティは紛争の原因でなく、より深い友愛への道。他宗教の人々と共に世界的な課題に取り組むように」

 オロリッシュ枢機卿は、さまざまな宗教の学生を教えた日本での経験を振り返り、「神が全ての文化や宗教におられることを認識するのに、いかに役立ったか」を語った。そして、「シノダリティは、『宗教は紛争の原因ではなく、より深い友愛への道であるべきだ』ということを世界に教えることができます」と述べ、「教会が他の信仰の伝統と共に共通の使命で結ばれた兄弟姉妹として、社会的正義や環境的正義などの世界的な課題に取り組むように」と呼びかけた。

 そして、「私たちは、ただ話すだけではなく、共に行動し、出会い、尊敬、愛、友情を深め、人類の利益のために行動すべきことを示さなければなりません。それが私たちの使命の一部であり、神を宣言することです」と語った。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年10月19日

・シノドス総会第2会期・10月18日定例記者会見「より分権的な教会に向けて」

(2024.10.18 Vatican News   Edoardo Giribaldi and Roberto Paglialonga)

 開催中の世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期の会合の状況などについて、シノドス情報委員会が18日、定例記者会見を開き、17日午後から18日昼までの討議では、世界の現地の教会と普遍教会の関係を中心に議論され、「分権化は、確固とした原則に導かれる場合、健全」と主張がされたことを明らかにした。ゲスト発言者として会見に出席したアヴェリン枢機卿、ルエダ・アパリシオ枢機卿、ムッラ枢機卿からは、世界が「苦しみに満ちている」状況における今回のシノドス総会の果たすべき役割の重要性などについて語った。

 会見で情報委員会のルッフィーニ委員長は、総会のここ数日の議論は、討議要綱の第3部「場所」に集中している、としたうえで、「現地教会の重要性を強調する発言が多く出されており、それは、害を与えるのではなく、教会全体の一致に役立つ。脅威ではなく、『特別な贈り物』です」と説明。

 東方カトリック教会を例に挙げ、「その伝統は、普遍的なカトリック教会全体の宝。不可欠な不可欠な一部として保護されねばならず、その起源の地域と離散地域の両方で存在を確保する必要がある」と指摘し、討議では、「これまでの教会の歴史で、一致についての理解は必ずしも正しくなかった。ラテン教会は、東方『sui iuris(権利能力を持つ)』教会に対して不当に振る舞い、彼らの神学を二次的なものとみなした」と主張する意見も出た、と述べた。

 また、主要な課題の 1 つは「『単なる物理的な空間ではない』場所の概念を再定義すること」とも述べた。

 

*復活の主日を「姉妹教会」と同じ日にすることで合意している

 

 カトリック教会と「姉妹教会」が同じ日に復活の主日を祝うという広く議論されている問題について、ルッフィーニ委員長は「来年、それ(復活の主日を同じ日にすること)が行われることで合意に達した」ことを明らかにした。ただ、総会の討議では、「恒久的な共通の日を求める今シノドス総会参加者全員からのメッセージ」を求める声が出ている、という。

 

*「健全」な分権化の基準が、秘跡も含めて検討されている

 バチカンから現地教会への分権化については、これまで総会で何度も検討されてきたが、情報委員会のピレス事務局長は、「健全な分散化」を定義するための基準が検討され、その中には「近接性と秘跡性」、つまり秘蹟も含まれている、と述べた。

 また討議では、小規模な草の根共同体も「シノダル(共働的)な教会の特権的な空間」として強調され、そうした共同体にとって、デジタル環境は「仮想的」にだけでなく、「地域的」にもつながりを保つのに役立つことから、非常に重要、との指摘があった、という。

 

*「シノダリティの推進を恐れるな」「苦しむ人々の叫びにもっと耳を傾けよう」などの声も

 

 ピレス事務局長によると、会合では、多くの発言者から「シノダリティ(を推進すること)を恐れてはならない。シノダリティはさまざまなカリスマや聖職、あるいは場所の特殊性を弱めるものではない」との意見が出された。小教区についての課題についてさらに議論を深めるように、との主張もあり、教会運営の仕事が(重荷となって)福音宣教の熱意を抑えることがあるので、創造的に考えなければならない」、あるいは、「苦しむ人々の叫びに耳を傾ける必要がある。現地の教会のシノダリティは、苦しみに特徴づけられる現実にも表れている」との意見も出た、という。

 

 

*「世俗化した社会で信仰の戦いには、信徒と共に歩むことが重要」「教会の健全な分権化は、統一の枠組みの中ですすめること」

 世俗化した社会で信仰の戦いには、聖パウロが語った「信徒と共に歩む」ことが重要だ」という言葉を思い起こし、「教会の健全な分権化は、神の民の間で共有される責任の次元を高めることができる」が、常に統一の枠組みの中で、「教導権への忠誠、ペトロの後継者との教会の交わり、地方教会への尊重、補完性、シノダリティを進めることが重要」との指摘も出た、という。。

 またピレス事務局長は、「福音はあらゆる文化とあらゆる場所に具現化され、運動と新しい教会の現実の共同体に身を置き、強化されなければならない」という言葉で、教会の「多様性の中の一致」への呼びかけがあったこと、教会を「キリストを心臓とする生きた有機体であり、人々の存在を通じて体として生きている」と表現する意見があったことを強調した。

 

*「女性助祭の実現」求める意見、若者に対して「デジタル空間での司牧」提案も

 女性助祭の問題については、「教会は『男性だけの』ものであってはならない」「女性が意思決定プロセスへの関与を求めているとしても、それだけでは十分ではない」と強調する発言もあった。

 また若者の「自分は霊的ではあるが宗教的ではない」と言う声に対しては、「教会は、デジタル空間でも司牧者になるよう促されるべき。デジタル空間では、若い男女が時間を過ごし、交流することが増えている」との指摘もあった、という。

*来週は最終文書草案の議論が決定的な段階を迎える

 最後にルフィニ委員長は、18日の午後、作業部会の会合に加えて、教会法委員会の会合と、一夫多妻制に関する神学的・司牧的な識別のためのアフリカ・マダガスカル司教協議会(SECAM)のシンポジウムが行われる、と発表した。また、来週は、最終文書の草案に関する議論が決定的な段階を迎えるが、草案は、熱烈な祈りの雰囲気の中で取り組む必要がある、と述べた。そのために、21日の全体会議は午前8時30分の聖ペトロ大聖堂の聖霊への奉納ミサで始まる。

 

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 続いて記者会見は、ゲスト3人からの発言に移り、地中海からアフリカ、ラテンアメリカまで地理的に離れた地域が、同様の課題とそれを解決したいという共通の願いによって結ばれている、ことが基調となった。。

 

 

*フランスのアヴェリン枢機卿「地中海は単なる”研究対象”ではない、様々な悲劇が起きている現場で、教会はどのような貢献ができるか」

 最初に発言したのは、フランスのマルセイユ教区のアヴェリン枢機卿。「地中海地域における教会の取り組みを調整する」という教皇フランシスコから与えられた自身の役割を強調した。枢機卿は、約40人の司教と共に始め、教皇が「この仕事を継続し、調整し、支援したい」という希望を表明された昨年9月の会合などを通じて続いた取り組みの経緯を説明し、「焦点は、さまざまな教会共同体の困難に耳を傾けることにあった。地中海は、単なる”研究対象”ではありません。戦争、自由の侵害、腐敗など、悲劇的なシナリオが展開されている現場です」と付け加えた。

 そして、「この地域の正義と平和のための取り組みに、教会がどのように貢献できるか、を理解する必要があります」と強調し、地中海に特化した代表司教会議(シノドス)の検討を提案したことを思い起した。

 

 

 

*コロンビアのアパリシオ枢機卿「ラテンアメリカの貧困が、北米への移住だけでなく、麻薬の密売で悪化する中で、教会は『総合的福音宣教』に努めている」

 

 次に、コロンビアのボゴタ教区のアパリシオ枢機卿が、自国とラテンアメリカ全域での信仰体験について語った。「ラテンアメリカは、苦しみと希望の両方を持つ若い大陸。現地の教会は『貧困者に一層、近づく精神性』を育むよう努めています。貧困は、北米への移住だけでなく、麻薬密売に関連する問題によっても悪化している」と現状を説明。このような困難な状況に、「教会は団結し、信仰と希望の目を通して現実を見るよう努めながら、現実に近づく方法を見つけてきました」と努力を語った。大陸全体にわたる「総合的な福音宣教」の達成を目指して、具体的な「王国の存在」を広げようとしている、という。

 

 

 

*南スーダンのムラ枢機卿「自由を求めた戦ったが、いまだに多くの問題が未解決、大雨による災害も。シノダルな対話に期待」

 南スーダンのジュバ大司教、ムラ枢機卿は、自国と隣国スーダンが直面している課題について語った。

 「 南スーダンの人々は自由を求めて戦争を戦ったが、多くの未解決の問題に悩まされ、依然として平和からは程遠い状況にある」と述べ、「南スーダンで調印された和平協定は、まだ部分的にしか実施されていません。これは、2018年に教皇フランシスコとの歴史的な会談で高官代表団が取り上げた問題ですが、それ以来、教皇がこの国を​​訪問した後も、ほとんど何も変わっていない」としたうえで、「シノダル(共働的)な対話が、私たちが直面している社会的、政治的問題に対処できると信じています」と期待を語った。

 南スーダンを苦しめているもう一つの問題は地球温暖化だ。ムラ枢機卿は、大雨被害で現在も水没状態にあるベンティウ市を例に挙げ、「ますます相互につながり合う世界において、『そのような問題は自分たちと無関係だ』と言う人はいないでしょう」と語った。

*アウグスティノ会のマルティン司教「総会では、『世界が直面する課題』が強調。その中で教会が依拠すべき4つの柱は」

 最後に発言したアウグスティノ会のマルティン司教は、これまでの総会での討議で強調された「世界が直面している課題」について振り返った。 司教は、「シノドス総会がこれらの問題に「対応」し、今日の問題に対処できる明確な言葉で開かれた教会を育む方法」を説明。 教会が拠って立つべき4つの基本的な柱として、キリスト中心、友愛的、包括的(「シノドス総会で権力闘争を見ている人は間違っている。そんなものは存在しない」と司教は付け加えた)、そしてダイナミックであること、を挙げた。

そして、シノドス総会の議論は、シノダリティと時代のしるしに耳を傾けること、統一性と多様性、中心と周辺性といった、いくつかの二分法を中心に展開してきたが、「私たちを時折、捕らえる悲観主義」に落胆してはならない、と訴えた。

ゲスト発言者との質疑応答

 記者会見では、いつものように記者の質問に答える時間が設けられた。「多様性の中の一致」という概念の実践について、アパリシオ枢機卿は、この概念はすでに「新しく革新的なシノドス スタイル」に反映されており、女性の総会参加者の存在は「新しさと進歩」の最も目に見えるしるし、と指摘した。

 シノドス総会に「即時回答」を求める人々への対応について、マルティン司教は、シノドス総会をキリスト教の信仰そのものに例え、「それはキリストの体験。それを生きなければ、完全に理解することは決してないでしょう」としたうえで、シノドス全体のプロセスは抽象的なままではなく、「現実に根ざしたもの」でなければならない、と強調。それゆえ、教区は「主要な共同体」として依然として重要、と指摘した。

 司教の役割と権威に関する議論についても質問があり、「それは広範囲に議論されてきました」とアパリシオ枢機卿は認め、信仰の遺産は「常に同じ」ままでも、「それぞれの状況に適応しなければならない」という聖ヨハネ23世教皇の言葉を引用した。また、自国が直面している困難、たとえば「有害な二極化」について触れ、同様の見解を持つ共同体が互いに「敵」になる原因となっている、と指摘。

 アヴェリン枢機卿は、シノドス総会の最終文書の起草についていくつかの見解を示し、自分が所属する「とりまとめ委員会」の目的は、「投票に付すための文書原案が、この数週間の総会での討議で表明された意見から大きく逸脱しないようにすること」にある、と説明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年10月19日

・シノドス総会第2会期・10月17日 記者会見:移民の声に耳を傾ける地中海会議、障害のための特別評議会の設立が提案されている

(2024.10.17  Vatican News  Antonella Palermo and Roberto Paglialonga)

 開催中の世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期の会合の現況を説明する定例記者会見が17日午後行われ、16日午後から17日午前にかけての会合では、人間の移動に対する司牧的ケアに取り組んでいる教会の活動、若者や障害者への配慮にも焦点が当てられ、バチカンと世界の現地の教会と連携強化を求める意見も出た。また、移民・難民の声に耳を傾けるための「地中海教会会議」の構想が提案された。

 また、今回の会見では、ゲストとして、Sisters of the Sorrowful Motherのシスター・サムエラ・マリア・リゴン総長、アジア司教会議連盟 (FABC) の前会長のチャールズ・ボー枢機卿、カナダ・ケベック州のジェラルド・シプリアン・ラクロワ枢機卿の3人が発言した

 シノドス情報委員会のルッフィーニ委員長によると、16日午後から17日午前にかけての会合では、準備要綱の第二部「道筋」」第三部「場所」をもとにした参加者の自由発言で議論が続けられ、教区の役割の活性化、若者のより直接的な関与、障害者への真の配慮、障害者のための特別評議会の設立などが求められた。

 また、Talitha Kum のような「仮想ネットワーク」の役割とそれを司教協議会に取り入れる方法、カトリック学校に通うさまざまな宗教の学生のための共通プラットフォームの提案などが出された。関連して、18日にシノドス総会総括責任者のオロリッシュ枢機卿、シノドス事務局のグレック局長らが大学生の代表と会い、シノドス総会に出されているテーマについて意見を交換する。

*ルフィーニ・シノドス情報委員長「公会議から長い年月が経った今も、司教協議会の神学的地位が不明確なのは驚くべきこと」

 ルッフィーニ委員長は、会合の討議の中で出された教育の場における大きな苦しみや苦悩、修道会が果たす重要な役割、17日まで二回の公開神学・司牧フォーラムで議論されたシノダリティ(共働性)と首位権の関係を強化することの重要性を強調。

 関連して、「第二バチカン公会議から長い年月が経った今も、司教協議会の神学的地位が不明確なままになっているのは驚くべきことだ」と委員長は語り、「バチカンの諸部局は、文書を作成する際に現地の教会ともっと話し合い、小規模な教会共同体や教区をもっと頻繁に訪問する必要がある」と強調した。

 

 

*Sisters of the Sorrowful Motherのシスター・リゴン総長「総会参加者の4分の1が一般信徒、若者、修道者。意見も多極化している」

 シスター・リゴンは、自身のシノダル(共働的)な経験について語り、兄弟愛の関係を築くことの重要性を強調。「今回のシノドス総会の参加者の約4分の1が一般信徒、若者、修道者であり、全員が発言の機会を持っています… 特定のトピックに関する異なる見解から緊張が生じることがありますが、これは”分極化”ではなく、男女の関わり方の違いなど”多極化”を示すものです」と説明した。

*アジア司教協議会連盟 (FABC) 前会長のボー枢機卿「一部の司教の抵抗にかかわらず、”シノドスの道”で成果を上げている」

 ミャンマーのヤンゴン大司教であり、アジア司教協議会連盟 (FABC) の前会長のボー枢機卿は、アジアにおける”シノドスの道”の歩みを説明。”デジタル福音宣教”、創造的な教会活動への若者の参加の増加、”聖職者主義”がもたらしている課題について語り、「一部の司教からの抵抗にもかかわらず、FABC は、特に『すべての人に耳を傾ける』という教会の取り組みなど、これまでに達成された成果に満足している」と述べた。

 

*カナダ・ケベックのラクロワ枢機卿「福音宣教、メディア、霊的生活の深化において、教会に構造的変化が求められている」

 カナダのラクロワ枢機卿は、教会が「耳を傾ける」こと、特に異なる人々に耳を傾けること、そして暴力のみで問題を解決するのを避けることの必要性を改めて指摘。特に福音宣教、メディア、そして霊的生活の深化に関して、教会に構造的変化が求められていることを強調した。

 

 

 

*「バチカンから世界の現地の教会に権限をいかに委ねるかは、第二バチカン公会議以来の検討課題」とルッフィーニ委員長

 記者たちとのやり取りでは、バチカンと司教協議会との分権化、傾聴と改革の実施の関係についても触れられた。ルッフィーニ委員長は、世界の現地の教会にさらなる権限を委ねる考えは、「第二バチカン公会議以来、教会内で長年検討されてきたもの」と説明した。

 

 

*「傾聴省」の設置が提案されている、今総会で結論を持ち越される課題の検討継続の一環として「教区シノドス」開催を期待

 

 また会見で明らかになったのは、シノドス総会で「傾聴省」設置が提案されたこと。まだ議論が続いているというが、ボー枢機卿は、「開催中のシノドス総会は、まさに”プロセス”であり、ここで始まった検討作業の継続の一環として、世界のそれぞれの司教が『教区シノドス』の開催を検討することを期待している」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2024年10月18日

・シノドス神学・司牧フォーラム2「世界の現地の教会は、多様性を通して対話に豊かさを提供している」

Panelists at the theologial-pastoral forum at the AugustinianumPanelists at the theologial-pastoral forum at the Augustinianum 

 

 

 

*列聖省神学顧問のアマラル神父「全ての現地教会には秘跡と霊的賜物の力と豊かさが宿っている」

 アマラル神父は、フォーラムで検討されたものも含め、「すべての関係は、現在のシノドス総会が推進する力学に基づいています」と述べ、さまざまな教会の現実を結びつける関係の重要性を強調した。

 また、第二バチカン公会議がこの方向への最初の道筋を示し、現地の教会を「(普遍教会)全体の一部」と呼び、同時に「全体の中に存在し活動している」と指摘している、とし、同公会議の「教会憲章」を引用して、「すべての現地教会」には「すべての秘跡と霊的賜物の力と豊かさ」が宿っている、と強調。普遍教会と現地教会の関係を、切り分けられたケーキに例えて、「すべての部分に、すべての味とすべての神の民がいるのです」と説明した。

 発言の締めくくりにアマラル神父は、「分極化、個人主義、戦争、そして現実の一部しか教えない、必ずしも私たちを一致させるわけでもない『グローバリゼーション』を特徴とする現在の世界情勢」を指摘した。そして、「この状況に直面して、『司牧者たち』は、『教会』と『真の人間関係を結び、他者への開放性を生かす、教会のさまざまな分野』を強く押し広げるよう求められているのです」と述べた。

 

 

 

*ナポリ教区司祭のアウティエロ神父「現地の教会は、シノダリティ(共働性)と宣教活動を体験できる場」

 次に、ナポリ教区司祭のアウティエロ神父は「現地の教会は、その活動を通して、教会全体のシノダリティ(共働性)と宣教活動を体験できる場となっている」と指摘。現地の地域共同体と普遍共同体の関係は「場所の概念の分類に関連している」としたうえで、「『場所』は「さまざまな主体が集まり、共通の意図、共通の願望によって一致する教会の地平を表している… 場所の特性は二次的な要素に還元されるものではなく、教会全体の本質に深くかかわるものです」と述べた。

 そして、教会についての個人の経験は主に地域的なものだが、それぞれが地元の司教と普遍的な教会との共同関係を通じて「一致の原則」を利用できる、とし、こうした主張をすることで、教会論の枠組みが疑問視され、挑戦を受けるが、「単に手続き上の調整や確立された慣行のわずかな改善」を求めるよりも、関係的かつ文脈的な転換の必要性を心に植え付けるものだ、と指摘した。

*シノドス事務局顧問のウェイレンズ教授「オーストラリアに倣い、国レベルでの司教、司祭、信徒による『全体評議会』を提案」

 

 ウィレンズ教授は、さまざまな形態の教区および教区司牧評議会、そして総会について語り、「『神の民』は多くのことを期待しています。自分たちをシノダル(共働的)な教会の真の媒体に変え、キリストの”王”としての職務に参加できるようにする教会法の規範を望んでいます」と指摘。

 また、全体評議会を地域共同体と普遍共同体の中間に位置付け、地域の現役司教全員が参加するが、総代理や司教、神学校の学長、神学部長など、他のいくつかのカテゴリーの人々も招待できるし、招待すべきだ、と主張した。

 そして、オーストラリアの教会を例に挙げ、「オーストラリアの教会は、性的虐待スキャンダルによる深刻な危機の中で、全体評議会を設けた。そして、司教たちは、『自分たちだけでは教会に対する信頼を回復できない』ことを認め、全ての信者に、行動を起こし、共に立ち上がるよう求めた。全体評議会に司教、司祭、信徒を参加させることは、バチカンの許可を得、44人の司教と275人の司祭、信徒で構成することになりました」と説明。「決定は司教以外のメンバーも参加して、完全に行われました」と述べ、このような仕組みが他の国や地域の現地教会が求めていることにも適用されるよう、希望を表明した。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年10月17日

・シノドス総会・10月16日の定例会見-「 合意を見極める重要性」会合の討議最終段階に

(2024.10.16 Vatican News   Alessandro Di Bussolo and Roberto Paglialonga)

 10月16日のシノドス総会の定例記者会見では、4人のゲスト発言者の一人、神学者と教会法学者の作業グループのダリオ・ヴィタリ神父が「聖霊に耳を傾けながら、教会を前に進める合意を見極める重要性」指摘。15日午後から16日の昼までの会合では、教会の一致や司教協議会の権限などがテーマとして取り上げられた。

 

*言語グループから提案の原案が報告

 会見ではまず、会合での討議状況について、シノドス情報委員会のルッフィーニ委員長とピレス事務局長から、15日から16日にかけて、討議要綱の最後、第3部「場所」について討議が続けられ、5つの言語グループが、討議要綱に示された課題に対する提言の原案の取りまとめに取り組んだことが説明された。

*教会はデジタルの世界でも活動する必要

 委員長は、「教会は常に都市、つまり教会が存在している場所で、司教の指導のもと、地域と密接な関係を築いてきた」としたうえで、「教会は(従来の物理的場所に限定することなく)デジタルの世界でも活動せねばならなくなってきている」と述べ、小グループの議論では、「『出会いの場』としての教区への注目が高まる」中で、「創造力を発揮し、想像力を働かせ、私たちの教会の場所を他の領域、特にデジタル領域に拡大する必要」も強調された。

*シノダル(共働的)な役割をもつ司教協議会をどう強化するか

 さらに、会合の参加者からは「現地教会と大陸レベルの教会の贈り物の交換において、既存のシノダル(共働的)な仕組みを特定し、強化する必要性」が主張され、委員長は「(現地教会の国・地域レベルの)司教協議会に関して『交わりを促進する役割と果たしており、その地位をより明確に定義する必要がある、との意見が出た」と説明。さらに、「教義上の権限を司教協議会に持たせるか否かについても話し合われた… 大陸レベルの司教たちの会議は、同レベルでシノダリティ(共働性)を織り込むのに適切な場所であると判断され、中間的な共同体としての司教協議会をどのように強化するかについても議論された」とし、全員が一致したのは、「教会の統一を維持することの重要性」の認識だった、と述べた。

*統一に奉仕するペトロの奉仕

 また委員長によると、会合では「グローバル化の時代における教皇の奉仕、カトリック教会だけでなく、他のキリスト教徒に対する『最高の道徳的、精神的権威としての教皇』の奉仕」についても議論された。 小グループに分かれた討議は、その主題と優先事項を特定するにあたって、「シノダル(共働的)な福音宣教の鍵としての司教協議会、教義、典礼、司牧、懲戒、管理の領域における神学的性質、能力、権威」を検討することから始めた。ポイントは、「人の移動、文化、デジタル環境の深化など、画期的な変化が起きる中で、福音宣教の取り組みをどのように再構成するか」にある、と委員長は説明。
 さらに、「シノダリティ(共働性)、合議制、首位権をどのように一致させるか、使徒憲章『Praedicate Evangelium』をもとにしての教皇庁の役割、世界代表司教会議、大陸レベル教会会議と司教会議、個別の評議会のあり方」などについても意見交換がされ、その後のテーマには「健全な地方分権を定義するための基準、教会の教会、贈り物の交換、地域と世界の連携、補完性、および法的に独立した 教会」が含まれる。

*文化の福音化も話し合われた

 またピレス事務局長は、会合では、文化の福音化についても話し合われ、「全ての人が”宣教地”を構成することを認識し、教区をより活気のあるものにする”小さな草の根共同体”の役割」が指摘された、「文化的およびデジタル的な変化に適応する必要性や、信仰の一致と現代の課題に対応する教会の能力」が強調された、と説明した。

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 ゲスト発言者には、イタリアの司祭で神学専門家グループの調整役で教皇庁立グレゴリアン大学の教会論教授であるダリオ・ヴィタリ神父、スペイン人の教会法教授で教皇庁立サラマンカ大学の学長、 Confraternity of Diocesan Priestly Workersの会員で教育と召命の専門家のホセ・サン・ホセ・プリスコ神父、ルーマニア生まれでオーストリアのリンツ・カトリック大学のクララ・アントニア・チザール神学部長兼副学長、そしてシノドス事務局の神学顧問でありブリスベ​​ンのオーストラリア・カトリック大学講師のオーモンド・ラッシュ神父の4人が招待され、以下のような発言があった。

*神学者のヴィタリ神父「 4 つの言語別神学者グループの共同作業は、”シノドスの道”の旅の成果」

 ヴィタリ神父は、自身が調整する4つの言語(英語、フランス語、スペイン語・ポルトガル語、イタリア語)の神学者グループの任務は、「総会の提案を読み直し、合意の新たな要素を特定する」ことと、「最終文書を起草しなければならない人々に、合意点と問題点を示す」合同報告書を作成すること、と説明。

 「 聖霊に耳を傾ける教会の旅で重要なのは、合意です。一致しない点を探し出して強調する必要はありません。神学者の責任は、シノドス総会で成熟する合意の種類を認識し、参加者間で共有された内容と聖霊が教会に示している内容とが一致するようにすることにあります」と述べた。

 また、4つの言語グループの作業は、「シノダリティ(共働性)の一例であり、”シノドスの道”の旅と並行して2021年に始まった神学者間の共同作業の結果」と指摘。「それ以前の世界代表司教会議(シノドス)では、神学者はシノドス事務局と個別にやり取りしていました」と述べ、変化を強調した。

*教会法学者のプリスコ神父「ラテン、東方の両方の教会法の改善、修正、新たな規範の可能性を特定するのが専門家グループの役割」

 シノドスの教会法委員会のメンバーとして、プリスコ神父も、「今回の会議における教会法学者の専門家の仕事は、神学者との共同作業」であることを強調。「以前は、神学と教会法はしばしば2つの平行線をたどっていました。補完性と協力が必要です」と述べた。続けて、今回のシノドス総会での作業は「特に神の民に捧げられた教会法典の2番目の本」に関係していることを指摘し、「教会法学者の委員会は、参加者が表明した必要性から結成されました。シノドス総会の提案に沿って課題を検討し、「ラテン、東方の両方の教会法を改善できる修正、あるいは新たな規範の可能性を特定する」ことが、教会法の専門家のグループの役割、と説明した。

*リンツ・カトリック大学のチザール神学部長「 フォーラムでは「シノドスの旋律」

 リンツ・カトリック大学のチザール神学部長は、今シノドス総会で実施されたフォーラムの神学的貢献の重要性を強調した。「フォーラムには、他者を知ること、教会におけるシノドスの文化を調整することも含まれています… 昨年のシノドス総会第1会期の作業の終わりに、ある参加者は「神学はあまり注目されなかった」と指摘しましたが、今回開かれた神学・司牧フォーラムで、神学はシノダル(共働的)な教会における役割を学び、シノダリティ(共働性)に貢献していることが明らかです」と指摘。これらのフォーラムは「シノダリティ(共働性)、つまり神の民の神学の基本的な旋律をただすのに役立ちます」とし、また、「神学の学術コミュニティは、シノダル(共働的)な教会の誕生を支援したい」と希望を述べた。

 

 

*シノドス事務局の神学顧問・ラッシュ神父「新しい文脈で福音を告げるための対応が必要」

 オーストラリアの神学者でシノドス事務局神学顧問のラッシュ神父は、「生きた啓示は単なる静的な真実ではなく、神と人類の間の継続的な対話です」と語り、この総会第2会期で「福音のメッセージを実現するための教会の生きた伝統のプロセス」に入っている、と述べた。

 そして、神学には、「教会が神のメッセージをすべての人に伝えるのを助ける」という使命があり、同時に「それぞれの人の信仰の感覚にも耳を傾ける」という使命がある、と指摘。今日の教会は、神学の助けを借りて、「私たちにとって光であり続けている第2バチカン公会議に助けを借りて、しるし、たとえ話、そしてイエスが21世紀とどのようにつながっているかを解釈しなければなりません」と語った。

 さらに、「時代のしるしを読み取ることは、今日の人間の生活に関する神のビジョンを新たに理解するための基本。教会が新しい文脈の中で説得力を持って福音を告げ知らせるためには、新たな対応が必要です」と強調した。

 

 

 

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 この後、記者たちから、教義上の権限を司教協議会に分散させる可能性、教会法の改正の検討と承認、神学者の役割など、いくつかの質問があった。

*教義上の権限は一定の制限内で現地の司教に委ねられている

 「教義上の権限」に関連して、ヴィタリ神父は「教義上の権限の中央から現地への移譲に関して最も制限的であると考えられている文書、すなわち1998年のヨハネ・パウロ2世教皇の教義に関する自発教令『Apostolos suos (彼の使徒たち)』は第21項で『司教は、彼らの保護に委ねられた信徒にとって、信仰の真の教師であり博士である』と述べ、司教たちそれぞれの管轄地域におけるカテキズムの発行を監督するなど特定の権限に限定したうえ、必ず『使徒座の承認』を得た上で行うことが定めています。この点に関しては、教皇フランシスコ教皇の使徒憲章『Praedicate Evangelium(福音の宣教)』にも重要な規定があります」と説明。

 さらに、「教義を創ることはできないが、司教は教義に関するすべての問題に対処でき、常に教皇との一致を保ちながら行動することができます」と付け加えた。

 

 

*司祭、修道者、信徒の協力関係強化の仕組みなど、総会で合意した箇所については教会法の改正に進む可能性

 教会法の改正の可能性などについては、プリスコ神父が、「教会法の観点から、新しい動きがあるかも知れません」と述べ、具体的に、司牧評議会や経済問題評議会、あるいは司祭、修道者、信徒の間で積極的な協力関係が見込まれる仕組みなど、「総会が合意に達したいくつかの点は、今総会の最終文書に盛り込まれて教皇に提言され、来年の夏までに、(教会法の関係個所が)刷新される可能性がある」とする一方、それ以外の課題については、「さらなる協議が必要になるので、より慎重に行われるだろう」と説明した。

*「今総会は、討議要綱が提示した課題のうちの一部は合意が得られないが、議論は今後も続けるべきだ」

 ジェンダーや女性の聖職に関する問題など、特に神学的な観点から、この総会閉幕時に明確な答えが得られそうにない課題もあるが、「私たちが常に注目しなければならないのは、合意を見つける力です」とラッシュ神父は、記者たちに説明。「この総会で特定の課題で合意がえられなくても、必ずしも『議論が永遠に終わる』わけではない。『議論を継続する必要がある』ことを意味します」と述べた。

 ヴィタリ神父もこの意見に同調し、「今回のシノドス総会の使命は、合意を通じて表明される地平線を示すこと」とし、「このシノドス総会の権威と信頼性は、将来的に合意につながる可能性のある神学者の研究の自由と区別されねばなりません」と強調した。

*「誰もが理解できる総会の最終文書にする必要であること」は総会参加者全員が理解

 最後に情報委員会のルッフィーニ委員長は、今総会の最終文書について、「今シノドス総会の参加者の間で明確に理解され、存在しているのは、『言語への配慮』です… 最終報告書は、教皇に提出するだけでなく、神の民全員が理解できるように起草することが求められている、と皆、分かっています」と述べた。

 また、チザール神学部長は自身の経験から、「このシノドス総会と東西両ヨーロッパの伝統と経験の間の『贈り物の交換』に神学が果たしている重要性を指摘。「信仰の感覚を常に念頭に置くことが基本です… 教義を実践に移し、教会が神の民に対して果たすことのできる人間の尊厳の維持と擁護の役割を重視することを目指しています」と語った。

 この点についてラッシュ神父は、第2バチカン公会議の「神の啓示に関する教義憲章」を引用する形で「啓示は、神と人類の継続的な対話です」とべ、「教会は、その生きた伝統を継続するのを助けることができます」と説いた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

2024年10月17日

・シノドス総会第2会期・10月15日の記者会見:障害者、女性の役割、気候変動危機が討議の焦点に

(2024.10.15 Vatican News   Lorena Leonardi and Roberto Paglialonga )

   開催中の世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期の最新動向に関する15日の記者会見では、シノドス情報員会から、今週初めの会合で、障害者の参加、女性の役割、ブラジルの気候変動による緊急事態の深刻さなど、さまざまな課題が焦点となったことが説明された。

 15日朝、バチカンのパウロ6世ホールで開かれた全体会議は、8月に亡くなったホームレスのブラジル人詩人ホセ・カルロス・デ・ソウザを偲ぶことから始まった。彼の葬儀は同日、バチカンの聖モニカ礼拝堂で、支援援助省長官のコンラッド・クラジェフスキ枢機卿とブラジルのレオナルド・シュタイナー枢機卿によって執り行われた。

 情報委員会のパオロ・ルッフィーニ委員長は、デ・ソウザは過去に支援援助省から援助を受けていたこと、そして彼が観光客に金銭を乞うのではなく、詩を書くためのノートを乞うたことで知られていたことを振り返った。

 また、総会の進行状況については、14日午後から15日にかけての小グループで討議に347人が参加している、と説明した。

 情報委員会のシーラ・ピレス事務局長は14日午前中に行われた、ベネディクト会のシスター、マリア・イグナツィア・アンジェリーニと総会報告統括者のオロリッシュ枢機卿の指導による祈りと瞑想を取り上げ、シスター・アンジェリーニの瞑想に先立つ講話では、「教会のルーツ」に焦点が当てられ、「教会は具体的な文脈の中で具体化しなければならない」とし、福音の”ダイナミズム”について考察した、と説明。「人間同士の交流の場が福音を生き、宣べ伝える機会を提供しました」と述べた。

 オロリッシュ枢機卿は、この日から始まる討議要綱の第3部「場所」について説明し、人の移動も考慮に入れた静的ではなく動的な現代世界の中で、特に都市や巨大都市といった場所での福音宣教のあり方を重視すること、共に歩み、教会の一致を形成する絆について考察し、抽象的な普遍主義によらず、現実の文脈について考えること、を参加者たちに要請。「教会は、場所と文化に根差していなければ理解できない」とし、場所と文化の相互関連性を考慮するよう求めた。

 

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 続いて、記者会見にゲスト出席した総会参加者からの発言に移り、使徒カルメル修道女会総長のシスター・ニルマラ・アレックス・マリア・ナザレ、2人の枢機卿任命予定者、ブラジル・マナウス教区のシュタイナー大司教、イタリア・トリノ教区のロベルト・レポレ大司教の3人が要旨以下のように語った。

 

 

 

*シスター・ニルマラ使徒カルメル修道女会総長「将来を見据えて、”シノドスの道”の旅を続ける」

 

 シスター・ニルマラは、今回のシノドス総会への参加を「ユニークな経験」とし、世界中の教会の代表者と関わる機会を得たことを強調した。そして、次期枢機卿ティモシー・ラドクリフとシスター・マリア・イグナツィア・アンジェリーニが行った総会での瞑想指導を「感動的」と語った。

 将来を見据えて、総会を終えて帰国した後に現地の教会とつながる必要性を強調したが、「”シノドスの道”の旅を始めた以上、後戻りはできません。前に進むしかない」と述べ、この旅に希望を感じているとした。

 

 

*シュタイナー大司教「場所と文化に根ざした教会の重要性、司祭不足の中で、すでに多くの女性が『事実上の助祭』の役割」

 

 シュタイナー枢機卿は、このシノドス総会で生まれつつある新しい道、それがシノダリティ(共働性)の意味を如実に示していると指摘。ブラジルではこの道の歩みがすでに進んでおり、多くの女性と終身助祭がアマゾンの教会共同体を積極的に率いている、と説明した。

 そして、「私たちがこの総会で討議していることは、現地の教会におけるシノダリティ(共働性)の意味をさらに理解するのに役立ちます」と述べ、異文化と異宗教の中で福音宣教をせねばならない教会にとって(シノダリティが)鍵となることを強調した。

 また、枢機卿は自身の管轄する教区について、「9万平方キロメートルに及ぶ広大なマナウス大司教区では、司祭がいない中で100年以上にわたって、女性が重要な役割を果たしてきました」とし、多くの女性が教会共同体を率いたり、聖職に就いたり、慈善活動や刑務所での聖職に深く関わってたりしていることを、具体例として挙げ、「女性は教会の重要な要素。女性がいなければ、我々の教会は今のように放っていないでしょう」と述べた。

 総会の内外で大きな議論になっている女性助祭の問題について、枢機卿は、「遠隔地の教会共同体では、すでに多くの女性が『事実上の助祭』として機能している」ことを認め、「彼女たちの働きに感銘を受けている。女性助祭の復活は歴史的前例に沿う可能性がある」と述べたうえで、「なぜ叙階された女性助祭を復活させないのでしょう。女性助祭は、男性助祭の役割を補完できる… 問題は性別ではなく、召命なのです」と強調した。

 

 

 

*「ブラジルの環境危機… 環境はシノダリティ(共働性)と密接に関係」

 

 総会参加者たちは、ブラジルの環境危機が緊急事態となっていること、特にアマゾン地域の危機についても議論している。アマゾン地域では、1か月に及ぶ干ばつで河川が干上がって船が航行不能になり、多くの地区が孤立している。

 シュタイナー枢機卿は、アマゾン川以遠の地域でも水不足が深刻化している状況を説明。この地域の繊細な生態系に対する「略奪漁業」と「水銀汚染」の影響を指摘した。そして、2019年のアマゾン地域シノドスの後に教皇フランシスコが出された使徒的勧告 Querida Amazonia (愛するアマゾン)」が、環境がシノダリティ(共働性)と密接に関係するものであることを理解するための枠組みを提供している、と強調。「私たちが体験しているシノダリティ(共働性)は、教会としての使命の一部であり、この総会が終わった後も、この旅を続けねばならない」と訴えた。

 

 

 

 

*司祭の独身制… 1000もの教会共同体に司祭わずか172人の現状をどうするのか?

 

 関連して、記者から、2019年にアマゾン地域シノドスで最も議論されたトピックの1つである「司祭の独身制」に関する質問が出されたが、これに対してシュタイナー枢機卿は、「1000の教会共同体に対して司祭は172人しかいない教区で働くことの難しさ、そして教会共同体と聖職の関係を深める必要を説明した。

 トリノ大司教のロベルト・レポレ枢機卿は「今総会では、東方教会の司教たちも出席しており、奉仕の形態が豊富に示されている」と語る一方、シスター・ニルマラは、「私の国ではいくつかの問題に関してもっと時間が必要かもしれません」と述べた。

 

 レポレ枢機卿はまた、自身の教区にとって”シノドスの道”の重要性についても語り、「総会参加者の精神的な深さと、参加者間の友情の高まりは、強い印象を残している」と述べ、この総会が「教会の普遍性を反映し、福音を広めながら多様な文化の声を取り入れていること」を強調した。

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 情報委員会のルフィーニ委員長は、は記者の質問に答える形で、障害者の参加についても触れ、この問題は一部の関係者の間で取り上げられており、誰もが関心を持っている問題であることを認めたうえで、「少なくとも私の作業グループでは、この問題は議論されている。今後数日で全体会議で取り上げられるかどうか、はっきりするでしょう。この問題は誰もが関心を持っている問題であり、もっと多くのことができるはずです。私たちが幼い人々、疎外された人々について話すとき、障害者についても話している」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年10月16日

・「教会はその場所と文化に根差さねばならない」ーシノドス総会総括報告者のオロリッシュ枢機卿

Presentation of the General rapporteur during the morning session of the General AssemblyPresentation of the General rapporteur during the morning session of the General Assembly  (Vatican Media)

(2024,10,15  Vatican News  Christopher Wells

 開催中の世界代表司教会議(シノドス)総会の総報告者、ジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿が15日、参加者が事前に配布された討議要綱の最後の箇所、第3部「場所」の討議開始にあたって発言した。

 枢機卿はまず、これまでの総会を特徴づけてきた「同じ決意とエネルギーで」課題に取り組む必要性を強調。第3部の「場所」と言うテーマは、「教会は場所と文化に根ざしていなければ理解できない」という基本的な考えに基づいている、と指摘した。

 そして、討議要綱の第3部の各章を注意深く説明しながら、「『場所』という概念は、特にグローバリズムと世界のデジタル化の中で、以前よりも前よりも空間的および地理的な意味合いがはるかに少なくなっています」としたうえで、このような動きが、「教会の使命にとって何を意味するのか、そして教会の組織形態をどのように再考すべきか」検討するよう求めた。

 さらに、第3部は、場所と文化、特に東方カトリック教会を含むさまざまな現地の教会の間で確立された関係を扱っていること、これらの関係は「相互の贈り物の交換」という特徴を持っていること、を指摘。現地の教会と普遍教会の間、および各地方教会内に存在する関係にも言及した。

 枢機卿は、討議要綱第3部の最後の章、「ローマ司教、つまり教皇の一致の奉仕」に関連して、教皇フランシスコが総会参加者にparrhesia*、つまり率直さの精神で討議に臨むよう求め、教皇と教皇庁の奉仕を「今日、より効果的に」する方法について助言を得ることを狙いとしている、と説明。「私たちには、自分たちの福音宣教の活動の場で神の民の生活と必要としていることから始めて、本当に考えていることを、教皇に伝える権利があります」と述べた。

 *注:ギリシア語。古典修辞学で、包み隠さず話すこと、あるいは、そう話す許しを得ること。 言論の自由だけでなく、危険を冒してでも公益のために真理を話す義務をも意味する。

 さらに、この第3部のトピックは技術的であったり、内部関係者にしか興味がないもののように思われたりするかもしれないが、16日に予定する総会参加者以外の人も参加できる神学・牧会フォーラムが、「この印象を払拭するのに役立つかもしれません」と語った。

 そして最後に、枢機卿は、第3部に示されている討議課題は、これまでの箇所と同様に、総会参加者の「生きた経験」に関わるものであり、「これが、私たちがこれから取り組むべき仕事に向き合うための最も正しい見方であるように思われます」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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【参考】討議要綱の本編・第3部「場所」の全文(「カトリック・あい」試訳)は以下の通り。

 教会の宣教的なシノダル(共働的)な活動、それを構成する重要な関係、そしてその発展を可能にする道筋は、「場所」―つまり、特定の文脈と文化の中に置かれた教会の具体性と特殊性―を無視すべきではありません。

 第3部では、ピラミッド型モデル (つまり、教区、教区長、主教区または教区、教会管区、司教協議会、あるいは東方教会の階層構造、普遍教会) に従って、「連続するレベル、または程度で順序付ける動きのない場所の見方」を克服するよう求めています。このような見方は、私たちの持つべきものではありませんでした。教会間の関係のネットワークと賜物の交換は、「線」ではなく、常に関係の「網」として織り合わされてきました。それらは、ローマ教皇が永続的で目に見える原理と基盤である統一の絆で結ばれています。

 この意味で、教会の普遍性は抽象的な普遍主義と一致したことは一度もありません。さらに、空間の概念が急速に変化する状況において、教会の活動を「純粋に空間的な仕切り」の中に限定することは、教会を「致命的な不動の状態」に閉じ込め、憂慮すべき「司牧的冗長性」を生み出し、人間集団の最も活発な部分、特に若者に手を差し伸べることをできなくするでしょう。

 ですから、「場所」は、相互依存の観点から理解されねばなりません。相互依存は、教会とそれらが形成するグループ間の関係において具体化され、意味の統一性を与えられます。ローマ司教と彼と交わりを持つ司教団に課せられた一致の奉仕は、この視点を考慮し、その実行に必要な適切な制度的形態を見つけねばなりません。

 

共通の旅の領域

80. 「コリントにある神の教会・・・へ」(「コリントの信徒への手紙」1・1章2節)。福音の宣言は、人々の心に信仰を呼び覚ますことによって、ある「場所」に教会を設けるようにします。教会は、場所と文化に根ざし、場所と文化の間に確立された関係がなければ理解できません。

 「場所」の重要性を強調することは、特殊主義や相対主義に屈することを意味せず、空間と時間の中で「救い主である三位一体の神の顕現に従う」という共通の経験が形づくられる具体性を高めることを意味します。

 「場所」は、この経験の形態の多様性を生み出し、特定の文化的および歴史的文脈に根ざしている状態を維持します。典礼、神学、霊的、規律的な伝統の多様性は、この多様性が教会をどれほど豊かにし、素晴らしくするかを示しています。それぞれの地域的な具体性を持つ教会の交わりは、唯一無二の教会における信者の交わりを明示し、抽象的で均質的な普遍主義になってしまうのを回避します。

81. 文化の多元性とそれらの間の出会いと対話の実り多さは、教会の活動の条件であり、教会の普遍性の表現です。教会の普遍性に対する脅威ではありません。救いのメッセージは、一つであり、同じです。「体は一つ、霊が一つです。それは、あなたがたが、一つの希望にあずかるように、と招かれたのと同じです。主は一人、信仰は一つ、洗礼は一つです。すべてのものの父なる神は唯一であって、すべてのものの上にあり、すべてのものを貫き、すべてのものの内におられます」(「エフェソの信徒への手紙」4章4-6節)。

 このメッセージは多様な形で、さまざまな民族、文化、伝統、言語で表現されています。この多様な形式を真剣に受け止めることで、覇権主義的な傾向を避け、救いのメッセージを「教会活動とその典礼、司牧。あるいは道徳的表現」を単一の理解に矮小化するリスクを軽減することができます。シノダル(共働的)な教会内の関係の網は、教会間の賜物の交換によって目に見える形になり、ローマ司教を長とする司教団の一致によって保証され、決して画一化されることのない統一の力強い守護者となるのです。

82. 今日、具体的な文脈に根ざした教会というビジョンは、現代の社会・文化的条件に直面しています。この条件は、特定の地域に根ざす、という私たちの経験を根本的に変化させました。「場所」はもはや純粋に地理的、空間的な観点から理解できません。むしろ、過去よりも、動的で流動的な関係の網と文化に私たちが属していることを示しています。

 この現実は、異なる場所の概念に基づいて構築された教会の組織形態に疑問を投げかけています。また、人々の生活に唯一の真実を具体化するために、異なる文脈に適切で、互いに矛盾しない差別化された基準を採用する必要があります。

83. 都市化は、この変化の第一の要因です。今日、人類史上初めて、地球上の人々の大半が農村部ではなく、都市部に住んでいます。

 「場所」への帰属意識は、地域を構成する境界が異なる方法で形成される都市環境では異なる形をとります。大都市では、小教区ばかりか、教区の境界を越えるのに地下鉄で数駅しかかかりません。多くの人が一日に何度もこの旅をします。多くの人は日常的に異なる教会の所在地間を移動しながら活動しています。

84. 第二の要因は、グローバル化した世界的な人間の移動の増加です。難民や移民は活気のあるコミュニティを形成することが多く、信仰の実践を拡大し、定住する場所をより多様なものにします。同時に、彼らはデジタル・メディアのおかげで、出身国とのつながりや関係を維持しています。そして、しばしば、複数の地域、文化、言語のグループに同時に所属します。出身コミュニティのメンバーが減り、時にはその存続に苦労する一方で、彼らの関係と文化の構造は世界的に拡大しています。

 (2023年10月のシノドス総会の)第1会期で指摘されたように、この点で象徴的なのは、一部の東方カトリック教会の状況です。現在の移住率が高くなれば、東方カトリック教会の信者のうち移住者の数が、教会法上の領土に住む人々の数よりも多くなる可能性があります(第1会期総括文書=SR 6項c参照)。

 いずれにせよ、「場所」を純粋に地理的な観点から定義することは、ますます時代遅れになっています。研究グループ 1 は、これが東方カトリック教会とラテン教会の関係にもたらす課題について考えるよう求められています。

85. 最後に申し上げたいのは、特に若者の間でのデジタル文化の広がりを見過ごせない、ということです。デジタル文化は、空間と時間の経験と概念に根本的な影響を与え、コミュニケーション、人間関係、信仰など、あらゆる種類の人間の活動を再形成します。第1会期の総括文書で「デジタル文化は、宣教の明確な領域というよりも、現代社会における教会の証言の重要な側面である」と述べられているのは偶然ではありません (SR 17項b)。研究グループ 3 は、この課題の研究に専念しています。

86.社会と文化のこれらの大きな変化は、宣教のために教会自身の現地的な側面の意味について改めて考えるよう、教会に促しています。現地教会は、常に物理的な文脈と具体的な文化の中で起こることを忘れず、「場所」を純粋に空間的に解釈することから、脱却する必要があります。「場所」、特に教会の「場所」は、単なる空間ではなく、人間関係が発展することのできる環境とネットワークであり、人々に根ざし、どこで活動が展開されても遂行できる使命の基盤を提供します。

 シノダル(共働的)な回心には、共に旅する道を歩むよう呼びかけられた現実の教会のシノダル(共働的)な改革が伴わねばなりません。しかし、これは司牧活動を選ばれた所属先に委ねることを意味しません。目的は、「すべての人と出会うこと」にあります。

87. この改革は、教会の交わり(communio Ecclesiarum)に表現された、神の聖なる民としての教会の理解に基づいて行われなければなりません。経験が示しているのは、現地教会でシノダル(共働的)な歩みを始めることは、教会全体の一致を損なうものではなく、むしろ「神の民の多様性と普遍性を表現するもの」なのです(LG 22参照)。ローマ司教(教皇)の一致の奉仕の遂行を危険にさらすものではなく、むしろ強化するものです。

 私たちは、教会についてその制度から考え始めるのではありません。最高レベルのものも含め、宣教活動の論理の中でこれらを再考する必要があります。

88.  「ローマ教皇の奉仕職が全教会の統一の目に見える根源であり、基礎であり、世界の各司教が現地教会の統一の目に見える根源であり基礎である(「教会憲章」=LG23項参照)ことを踏まえ、第二バチカン公会議は、「キリストの神秘体である教会は、教会の集合体でもあり、その中に、またそこから唯一のカトリック教会が存在する」(同)と言うことができました。この集合体は、

(a) 神の民の一部であり、それぞれが司教に委ねられている個々の教会

(b) 教会の集合体。ここでは、交わりの実例は、何よりも位階制の団体によって表される

(c) 教会全体(Ecclesia tota)―教会は、教会の交わりとして、司教制(cum Petro)と位階制(sub Petro)の絆でローマ司教の周りに集まった司教団。

 教会制度の改革は、教会のこの秩序立った表明に従わねばなりません。

(第3部の初めから88項まで、南條俊二試訳=第二バチカン公会議の諸文書については、カトリック中央協議会による改定公式訳を使用

89. 現地教会は、まさにその特質により、全教会の司牧的でシノダル(共働的)な生活を最も即座に体験できる場です。司教協議会から出された報告は、教区を底部にある小さなキリスト者共同体の集まりであり、宣教における交わりと参加という文脈として語っています。

このことについて、サクロファーノに世界中から集まった教区司祭たちは「教区の信徒は、喜び、悲しみ、希望、そして奮闘の時も、み名によって祈り、礼拝し、奉仕し、証人となるために集まったイエスの宣教する弟子であり、弟子」となった、と語りました。神は、彼らの教会の現実の中で働いています。

同時に、私たちは、教区のもつ大きな柔軟性を活用するためにもっとなすべきこがある、と認識しています。それは、教区という、多くの共同体の集合体も、新たな宣教活動では「一つの共同体」として理解されねばならない、ということです。

 

90. 同じように、今日の現地教会は、古くからの信徒と新しい信徒が混在する集団や共同体で構成されています。そして特に、聖職者の組織や使徒的生活を送る修道会は、現地教会の生活と活発な宣教活動に大いに貢献しています。

同じことが一般信徒の集団、小教区の活動、新らたに出来た共同体にも当てはまります。今日、教会の所属は、正式に決められた地理的な場所に固執せず、集団の繋がりに関係する形で増加しています。宣教の方向性に照らしあわせて、それぞれの文脈の中で「主が何を求めておられるのか」について、教会的な識別の中で、所属の多様性を促進せねばなりません。多様性を活発にし、一致の絆を大切にすることは、教区司教や(東方教会の)管区司教の具体的な能力と関係します。研究グループ 6はこれらの観点を反映させることについて、一任されています。

 

91. この「討議要綱」の草案に先行する審議でも、これまでの“シノドスの道”の歩みと同じようなことがありました。(注*世界の司教協議会などから)受け取った報告の多くに共通しているのが、小教区、管区、教区、東方教会の菅区といった様々なレベルの“評議会”を、司牧活動の計画、組織、遂行、評価の重要な手段として、強化する必要性を指摘していることです。

このような仕組みは、教会法ですでに想定されています。適切な対応によって、“評議会”の多様性は、うまく適応することでシノダル(共働的)なアプローチを強固にするのに、より一層、適していることが証明される可能性があります。

これらの“評議会”は、教会の識別とシノダル(共働的)な意思決定の対象となり、権威をもつ人々にとって、説明責任の行使と評価の場となる可能性があり、したがって、評議会は次にどのように義務を果たすのかについて説明する必要がある、ということを忘れてはなりません。ですから、「説明責任(を果たすこと)」は、シノダル(共働的)な提案と方向性を速やかに実施できるようするために、最も有望な分野の一つであり、効果的かつ速やかな影響を与える変化に繋がります。

 

92. (注:世界の司教協議会からの)多くの報告は、その方向に進むために、組織とその運営方法に関する枠組みを再構築する必要がある、と指摘しています。

重要なことはこれです―再構築は、選ばれたメンバーの構成が、透明性と説明責任の文化をしっかりと促進さようと奉仕している共同体の構成に反映されるのを確実するために、どのようにして彼らが任命されたかを注視するように要求することになる。それゆえ、メンバーの大多数は、「権威をもつ者(教区司祭や司教)」によって選ばれるのではなく、共同体あるいは現地教会の現実を実質的に表現できるような、別の方法で指名される必要があります。

 

93. 同様に、これらの組織の中に女性、若者、貧困や社会的に疎外された環境の中で生きる人々たちが、もっと積極的に受け入れられるように、メンバー構成に配慮せねばなりません。

さらに、(注:202310月のシノドス総会の)第1会期で強調されているように、共同体の生活と奉仕の組織に関わるだけでなく、日常の実生活や社会という文脈の中で、社会で認められている使徒的宣教の使命感(第1会期総括文書= SR 18d参照)を持って、信仰の証人として全力を挙げている男女がこれらの組織のメンバーとなるが基本です。

このように、これらの組織が実践する司牧的な優れた識別は、現実と多様性を持つ全体像を分析する能力と多様な視点を、よりオープンなものにし、より有益なものになるでしょう。

最後に、(世界の司教協議会の)報告の多くが、現行の教会法では設立が任意となっている司教協議会の設置義務化の必要性を指摘しています。

 

94. 世界のいくつかの司教協議会では、すでに改革の体験を共有し、優れた実践を確認しています。小規模で基盤をなすキリスト教共同体から、小教区、教区長、教区の司牧評議会に至る司牧評議会のネットワークの構築も、その中に含まれます。協議と傾聴のモデルとして、あらゆるレベルの教会の集会を開き、他の教会や教区、現地の他宗教の共同体が共に歩む社会貢献に協議の輪を広げることが、提案されています。そうすることで、キリスト者共同体は、彼らとともに旅をすることができるのです。

(以上、89 項から94項まで、田中典子試訳)

教会の一致を形作る絆

95 .  第一部で概説した「賜物の交換」という共同体の地平は、教会間の関係を鼓舞させます。それは、教会の一致を形づくる絆を強調することと、各地域の教会がその歴史と伝統をもって生きている状況に関連した特殊性を理解することを結びつけるものです。

  シノダル(共働的)な様式を取り入れることで、「すべての教会がすべての問題に対して必然的に同じペースで進まなければならない」という考えを克服させてくれます。逆に、ペースの違いは、正当な多様性の表現であり、賜物の交換と相互を充実する機会として評価することができます。これを実現するためには、この地平が具体的な構造と実践に具体化される必要があります。

  「宣教の使命におけるシノダルな教会となるには?」という問いに答えるには、そのような構造と実践を特定し、促進することが必要です。

96.  東方教会の階層構造と司教協議会は、教会間の繋がりを作り、経験を共有し、管理と司牧計画を分権化するための基本的な手段です。「第二バチカン公会議は、古代の総主教制教会のように、司教協議会は 『合議的精神の具体的な実現に向けて、多くの実りある形で貢献する 』立場にあると述べています(第二バチカン公会議「教会に関する教義憲章」=LG 23項)。

  しかし、この願いは完全には実現されていません。なぜなら、司教協議会を、真の教義上の権威を含む特定の帰属の主体と見なすような法的地位がまだ十分に確立されていないからです」(教皇フランシスコの使徒的勧告「福音の喜び(“Evangelii Gaudium”)」= EG 32項)。いかにして宣教の使命におけるシノダル(共働的)教会となるか、を模索するために、この問題に取り組む必要があります。

97 .   この”シノドスの道”の歩みの中で、これまでに集められたすべてのものから、次のような提案が出てきました。

(a)「司教協議会」を教義上の権威を授けられた教会の主体として認め、多面的な教会の枠組みの中で社会文化的多様性を前提とし、異なる社会文化的背景に適した典礼的、規律的、神学的、霊的表現の理解を支持すること。

(b)司教協議会及び東方教会の階層構造の機能並びに、教区司教座と教皇庁との間の関係についての実際の経験を評価し、実施されるべき具体的な改革を特定すること。研究グループ 7に属するアド・リミナ訪問*は、この評価のための適切な機会となり得る。(*ラテン語で「使徒たちの墓所の訪問」。世界の教区司教が5年に1度、聖ペトロと聖パウロの墓を巡礼し、教皇に謁見し、担当する教区の状況について教皇に報告書を提出し、教皇庁各省庁との情報交換などを行う)。

(c)すべての教区または東方教区 ”Eparchy”)が、教会管区と司教協議会または東方教会の階層構造に割り当てられるようにすること(第二バチカン公会議「教会における司教の司牧任務に関する教令」=CD 40項 参照)。

98. すべての地域にわたる大陸レベルの集まりをしたことは、今の”シノドスの道”の歩みにおける革新であり、「キリスト信者の生活の全領域にわたって、より深い適応」(第二バチカン公会議「教会の宣教活動に関する教令」= AG22項)を進めていくために、「各々の広範な社会的・文化的地域」(同)の特殊性を尊重する、という第二バチカン公会議の指針をより首尾一貫して実行する方法でした。

 この経験、及びいくつかの地域の教会が歩んできた道のりは、私たちがどのようにして、例えば教会協議会や司教協議会を通じて、シノダルと合議的ダイナミズムにより適切な制度的表現を与えることができるか、という問題を提起しています。これらの機関には、大陸または地域の協議と意思決定の調整された任務を委ねることができます。

 また、文書の起草や意思決定及び実施の過程に、多様な教会関係者を含めるために、識別方法を開発することもできます。さらに、識別には、多様な状況に適応した形で、市民機関、他宗教の代表者、非カトリック組織、及び社会全体との傾聴と対話の場も含めるべきであると提案されています。

99.  現地のシノダル(共働的)対話が終わりを迎えることなく継続されるべきであるという願いと、特定の地域における信仰の効果的な「インカルチュレーション(文化内開花)」(訳者注:教会の教えが非キリスト教文化からの影響に対しての適応と展開)の必要性は、教会の歴史の大部分において周期的な召集が義務とされてきた、それが管区会議であれ本会議であれ、特定の評議会の制度に対する新たな認識へと、私たちを動かします。

 シノダルの道を歩んできた経験に基づいて、司教会議と、関係する教区や東方教区(”Eparchy” の司牧評議会から委任された、あるいはその地域の教会の多様性を反映する他の方法で指定された信者(司祭、助祭、奉献生活を送る男女、男女信徒)から構成される教会会議を一緒にする形態を考えることができます。これを支援するために、特定の評議会の結論の承認手続きは、それらの時宜を得た公表に有利になるように改革されるべきです。

 

(以上、95項から99項まで、ガブリエル・タン試訳=第二バチカン公会議の諸文書については、カトリック中央協議会による改定公式訳を使用)

 

 

ローマ司教による一致への奉仕

 

100. 「どのようにして派遣するシノダル(共働的)な教会になるのか?」という問いに答えて、シノダリティ(共働性)、団体性、首位性を統一するダイナミズムを再考する必要もあります。そうすることで具体的な表現でもある諸制度間の関係を刺激できるからです。

101 .  目下の”シノドスの道“の歩みは「教会という共同体の中にも、独自の伝統を保つ諸部分教会が合法的に存在し、しかもペトロの座の首位権は変わることなく存続する。このペトロの座は愛の全集団を主宰し、合法的な多様性を保護し、また同時に部分的なものが統一を傷つけることなく、むしろそれに役立つように配慮する」(「教会憲章」=LG13項)という第二バチカン公会議の言葉の真実を示しました。

 この働きゆえに、全教会の一致の目に見える根源(「教会憲章」23項参照)としてのローマ司教は、シノダリティを保証する者です。彼は司教たちを招集し主宰し、シノドス(世界代表司教会議)の結果を確認することで、全教会をシノダル(共働的)な行動へと招いています。彼は、教会がシノダルなやり方と形態をさらに展開するよう配慮する必要があります。

102.  ペトロの奉仕職が行使される諸形式を熟考することは、教皇フランシスコ教皇に促され、多くの司教協議会によって求められているように、「健全な脱中央集権を進める」(使徒的勧告『福音の喜び』16項)観点からもなされるべきです。

    使徒憲章『Praedicate Evangelium(福音の宣教)』(2022年3月19日)によると、このことは、常に、教会に他ならない特別な交わりの神秘の実りと表現である共同責任の精神でなされるものであり、司教たちの“教師としての司教固有の職務”の行使において、彼らが熟知しており、教え・規律・交わりにおける教会の一致に影響しない事柄を解決する権威は、司教たちの権限に委ねること(『Praedicate Evangelium』2章2項)を意味します。

103.  先に進むために、私たちは最近の自発教令『Competentias quasdam decernere』(2022年2月15日)の記述、すなわち普遍教会における規律の一致を守るための教会法典の規定に関して権限のある領域と、そして地方教会における執行権と交わりの教会的ダイナミズムを元にした教会の諸慣行は、司教たちに委ねる、という線で進むことができます(同序文)。

104.  さらに、教会法的な規則を起草することは、シノダル(共働的)な様式を実践する場ともなります。規則を生み出すことは、権威によって付与された力の行使であるとみなされるだけでなく、真の教会的識別であるとみなされるべきです。それが、法制化に携わる全権を用いるだけだとしても、そうすることで、権威は、聖霊において正しく必要なことを聴いたことの実りである規則をシノダルな方法で公布することができるし、そうする必要があります。

105.  すでに述べた使徒憲章『Praedicate Evangelium』は、シノダル(共働的)で派遣的な方法で、ローマ司教と司教団に対するバチカン聖庁の奉仕を表明しました。透明性と説明責任を堅持するために、その働きの定期的な評価がなされるべきであり、また独立した団体(枢機卿会議、あるいはシノドスで選ばれた司教会議など)にその評価は委ねられるべきです。

   第8研究グループには、シノダルな派遣の観点から教皇庁の代表者たちの役割を調査検討することと、その職務をどう評価するかについて探求することが委ねられています。

106.  世界代表司教会議(シノドス)の第16回総会第1会期の参加者たちは、その成果を評価する必要を指示しています(第1会期の総括文書20項j)。この評価は、シノドスを「一過性のイベント」から「教会の空間的時間的に広がるプロセス」へと変えた使徒憲章『Episcopalis Communio』がもたらした展開を無視することはできません。

    全教会の次元でシノダリティ(協働性)と団体性を実践する場のなかで、シノドスは確かに傑出しています。パウロ6世によって、公会議の様式で、教会全体のために教皇を支える司教たちの会議として設けられ、いくつかの段階を経て、、シノダリティ(共働性)、団体性、首位性のダイナミックな関係が実現され、養われる場となっています。

  すべての聖なる神の民、個々の部分を委ねられている司教たち、そして一致の根源としてのローマ司教が、それぞれの働きに従ってシノダルな過程に十全に参加するのです。この参加は、ローマ司教の周りに集められたシノダルな集会によって表現されています。それは、その構成において、「『一致の秘跡』、すなわち司教たちのもとに一つに集められ秩序づけられた聖なる民」(「典礼憲章」26項)としての教会の多様性と普遍性を示しています。

107.  2021年から2024年にかけての”シノドスの道“の歩みの最も重要な実りの中に、教会一致(エキュメニズム)のはずみとそれを印す約束があります。ペトロの奉仕職の行使の問題も教会一致の観点から考えることで、その奉仕職に“新しい状況”(聖ヨハネ・パウロ2世の回勅『キリスト者の一致』95項)が開けてくるかもしれません。

  キリスト教一致推進省が最近発行した文書『ローマ司教:教会一致の対話における首位性とシノダリティ、そして回勅「キリスト者の一致」への応答』は、将来の研究のための見識を提供しています。この主題は第10研究グループの業務の一部分であり、教会の実践におけるエキュメニカルな旅の成果を受け止めることになります。

108.  シノドス総会第1会期に他の諸教会と教会的共同体の兄弟的な使節が参加したことで豊かになった私たちは、東方においても西方においても、エキュメニカルなパートナーによって、どのようにシノダリティ(協働性)が実践されているのか、その理解と評価を深めるよう促されています。

  エキュメニカルな対話は、シノダリティと教会一致の理解を深めるための基本です。とりわけ、この対話によって、共有すべき、また急を要する関心をどのように協議し、また識別するかを含めて、真にエキュメニカルでシノダルな実践をイメージするよう促されています。

  この可能性の根底には、私たちは一つの洗礼において一致しており、そこから神の民のアイデンティティと、交わり・参加・派遣のダイナミズムが流れ出ている、という事実があるのです。

 

(以上、100項から108項まで、「西方の司祭」試訳=第二バチカン公会議の諸文書については、カトリック中央協議会による改定公式訳を使用)

 

 

2024年10月15日

・シノドス総会第2会期・10月14日記者会見:「意志決定過程」に焦点、透明性、説明責任、評価の必要性が確認された

(2024.10.14 Vatican News   Christopher Wells)

   世界代表司教会議(シノドス)総会の第2会期会合は11日の討議でシノダリティ(共働性)に関する関する意思決定過程に焦点を当て、透明性、説明責任、評価の必要性を確認した。

 これまで数日間の会合での討議は、事前に提示された討議要綱 の 本編第2部「道筋」(・シノダリティ(共働性)をどのように養成するか ・使命を果たすための教会の識別 ・意思決定過程)に集中し、特に教会指導者が意思決定を行い、それを実行する方法に焦点が当てられてきた。

 14日の記者会見では、シノドス情報委員会のシーラ・ピレス事務局長が、シノドス総会の討議について、「キリスト教の伝統と、地元の慣習や法律との調和を見出す際に、時々生じる問題」に言及し、さまざまな状況での教会の経験に耳を傾けることの重要性を強調された、と説明した。そして、洞察と提案は、すでに多様な現実を経験している人々からもたらされた、という。

 また事務局長は、子供たちがカトリック学校に通う重要性、教育と福音宣教における学校の役割など、過去数日間のより顕著なテーマのいくつかに触れた。

 討議の中でもう 1 つの重要な課題となったのは、虐待、特に修道女に対する虐待の問題であり、さまざまな発言者が、この問題に対処するための措置と手順の策定を進め、実行する必要性を強調した、という。そして再び、「教会における女性の役割」全般が重要な議論のテーマとなり、「神学校の養成において女性がより大きな役割を果たす必要性」もその一つだった。

 情報委員会パオロ・ルッフィーニ委員長は、「女性、そして一般の信徒を教会内の意思決定過程に参加させる必要性」について議論されたことを強調。教会の文脈でそれが何を意味するのか、どのように達成できるのかなど、説明責任に関する問題にも触れられた、という。

 過去数日間に行われた数多くの発言で強調されたのは、さまざまなルールですでにシノダリティ(共働性)を実践している教会から学び、すでになされているシノダリティをさらに強める必要性、親密さ、活動的な関係、そして教会全体で人々を意思決定に参加させることを通じ、あらゆる種類の『聖職者主義」に抵抗する必要性などだった、としている。

・・・・・・・・・・・・ また、この日の記者会見には、中南米修道者連盟(CLAR)会長のシスター、グロリア・リリアナ・フランコ・エチェヴェリ、ルワンダ・チャンググ教区のエドゥアール・シナヨベ司教、ラトビア・リガ教区のズビグネフス・サンケビクス大司教の3人がゲスト参加して意見を述べた。

 

 

 

*中南米修道者連盟(CLAR)会長のシスター・リリアナ「『透明性』は教会に存在せねばならない『文化』」

 

 シスター、リリアナは、今回のシノドス総会における考察は「イエスの行動」を「私たちの前に提示する」ものであり、「シノダリティ(共働性)に浸透すべき福音主義の価値観と様式」と指摘。また、献身的な証言に基づく有意義な育成の必要性、他者と共に「イエスの様式を採用できるようにする」方法で取り組みを強調した。

 また、「識別」について、「聖霊が教会に何を求めているかを判断する可能性を提供します。個人的かつ共同体的な識別は、旅と使命に関する確信を求めて、多様性の中で共に見つめるのに役立ちます」と述べ、このために「教会全体にわたる参加型の仕組み」の重要性を指摘。

 シスター、リリアナはまた、14日の朝の討議について、「主に『透明性の文化』の概念を中心に展開されましたが、透明性は『ツール』ではなく、教会に存在せねばならない『文化』であり、教会の様式と存在そのものに浸透しなければならない文化なのです」と強調した。

 

 

 

*ルワンダのエドゥアール・シナヨベ司教「大量虐殺から30年、和解のプロセスは今も続く。シノダリティは有用」

 ルワンダのツナヨベ司教は、まず、今回のシノドス総会は、「使徒たちが賜物を受け取った聖霊降臨の上の部屋で生活し、経験したことに匹敵する」とその意義を評価した。

 そして、30年前にルワンダを襲った大量虐殺の後の状況について、「約30年経った今も、統一を目指す和解のプロセスが続いています」とし、教会は司牧者たちが人々を癒すために働き、被害者と加害者の両方に寄り添っている」と述べた。

 今回のシノドス総会のテーマとなっているシノダリティ(共働性)は、「一致と和解を強化する機会として、私たちが生かそうとしているものであり、ルワンダの人々が前に進むために、兄弟愛と精神的な生活スタイルに基礎を置く必要があることを理解するのに役立つ、生きた教えとなるもの」と指摘。

 シノドス総会で得た経験は、交わりの精神で生きるのを助けることで一致を生み出すことを目的とする、さまざまなアプローチを深める」ために有益、と語った。「参加」と「傾聴」の重要性、および宣教師による福音宣教の必要性を強調した。

 

*ラトビアのサンケビクス大司教「シノドス総会を、全ての信者を教会に巻き込む機会に」

 ラトビアのサンケビクス大司教は、今回のシノドス総会が「『洗礼を受けたすべての人を教会に巻き込みたい』という私の心からの強い願いに応えるものとなり、彼らを『神の王国を世界中に広げる』ための福音宣教者にする機会になって欲しい」と述べた。

 そして、司教に就任当初、記者たちに、カトリック、プロテスタント、そして善意を持つすべての男女を巻き込み、精神的な再生を促す、という「戦略的目標」について語ったことを振り返り、このシノドス総会は「洗礼を受けたすべての人々のカリスマを解放する」ことを目指さねばならないという強い信念を表明。この目標は「教会内の共同責任と分散化の概念に関連しているが、世俗的または民主的な方法ではなく、教会と精神的な交わりの表現」としてのもの、と指摘した。

 また大司教は、第二バチカン公会議の「現代世界憲章」に言及し、神の存在と計画の真の識別に焦点を当てた討議要綱の第58項を挙げ、「このシノドス総会の最終目標は、教会を『前進』させ、さらに宣教的なものにする、という使命にあります」と強調。シノドス総会の参加者たちは、「世界中のさまざまな教会の取り組みを知り、良い成果が出ている地域社会を特定し、そこから学ぶ必要があります」と語った。

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 14日の午後には作業グループが報告書を作成し、15日の朝には討議要綱・本編第3部の「場所」(・共通の旅の領域・唯一無二のカトリック教会における現地の教会・教会の一致を形作る絆・ローマ司教の一致への奉仕)について協議を始める。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年10月15日