(2024.10.10 Vatican News Roberto Paglialonga and Lorena Leonardi)
世界代表司教会議(シノドス)の情報委員会が司会する10日午後の記者会見で、総会第2会期の9日午後から10日午前にかけての討議の模様などについて説明があった。会見には、バチカンのキリスト教一致推進省のクルト・コッホ長官、神学対話のための国際合同委員会の共同議長である正教会のヨブ大主教(トルコ・ピシディア教区長)、聖公会のマーティン・ワーナー司教(英チチェスター教区長)、プロテスタントのメノナイト世界会議(MWC)のアン=キャシー・グラバー牧師の4人がゲストとして参加し、シノダリティ(共働性)と密接に関係するエキュメニズム(キリスト教一致運動)を中心に意見を述べた。
会見ではまず、シノドス情報委員長のルッシーニ・バチカン広報省長官が前日からの討議の概要について説明。10日午前の会合には342名が参加し、意見の交換は小グループに分かれて行われ、討議要綱の2つ目の課題に関するる最終報告が出された。
また長官は、ここで、「創造性と『あふれ出る』ことへの奨励」を含むいくつかの『方法論的ガイドライン』が提示された」とし、「『あふれ出る』という言葉はスペイン語の『desborde』であり、教皇も使徒的勧告『Querida Amazonia(愛するアマゾン)』と2019年のアマゾン地域代表司教会議で使われています」と説明。「常に動き、前進したい、という願いを込めた『あふれ出る』ことが多くなること」を教皇は望んでおられる、と付け加えた。
さらに10日午後は、討議要綱の3番目の課題である「Pathways」の共有と識別の作業が継続されたが、これに先立ち、ドミニコ会司祭で新枢機卿に指名されたティモシー・ラドクリフ神父が先導する祈りと瞑想の時間があり、続いてシノドス総会総括報告者のジャン=クロード・オロリッ主枢機卿が課題について説明した。
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【ゲスト参加者の発言】
討議の模様などについての情報委員会からの説明の後、4人のゲストから発言があった。
*コッホ・キリスト教一致推進省長官「聖性はキリスト教一致への最も確実な道」
まずバチカン・キリスト教一致推進省のコッホ長官が、「エキュメニズム(キリスト教一致運動)」と”シノドスの道”の歩みの関係について、「シノダル(共働的)な旅は、エキュメニカルです。そして、エキュメニカルな旅はシノダル(共働的)以外の何物でもあり得ません」と述べた。
そして、エキュメニカルな側面を「現在開いている世界代表司教会議(シノドス)の最も重要な側面の一つ」としたうえで、「他の教会の貢献を必要としないほど豊かな教会というものはなく、何も提供できないほど貧しい教会もない、という確信を持って、互いに学び合う賜物の交換」がエキュメニズムとシノダリティ(共働性)の両方にとって極めて重要だ、と強調した。
また長官は、今回の会合では前回よりもキリスト教他派の兄弟姉妹の代表の存在が重要であることを強調し、 Taizé community(テゼ共同体=キリスト教の教派を超えた男子の修道会。仏ソーヌ・ロワール県のテゼ村に修道院がある)と協力して11日に開くエキュメニズム集会には教派を越えたキリスト教信者たちが参加する、と述べた。また集会の冒頭の祈りは、第二バチカン公会議の教義憲章とエキュメニズムに関する教令の2つの文書から引用される、と説明。そして、「会場としてバチカンのProtomartiri Romani 広場が選ばれたのは偶然ではありません。キリスト教の伝統では、ペテロの殉教はそこで起きており、聖性は統一への最も確実な道であることを思い起こさせてくれます」と語った。
*正教会のヨブ大主教「対話は妥協ではない、基盤を築くものだ」
カトリック教会と正教会の神学対話のための国際合同委員会の共同議長である正教会のヨブ大主教は、首位権、シノドス性、聖職、協議性などの問題に関して「正教会とカトリック教会の対話は20年間にわたって進歩を続けており、互い近づけ、和解させるだけでなく、それぞれの教会の内部活動に実を結んでいます」と発言。
また、バチカンのキリスト教統一促進省の最近の文書を取り上げ、「この文書で最も感銘を受けたのは、教会間で単に『妥協』を見つけることではなく、キリスト教一致の共通の活動の基盤を築くことだ、ということを明示したこと」と評価した。
*聖公会のワーナー司教「シノドスは、現在の課題に創造的、勇敢に向き合うため、互いに心を開く安全な空間」
聖公会の英チチェスター教区長で English-Welsh Anglican-Roman Catholic Committeeの共同議長であるワーナー司教は、今回のシノドスと聖公会のシノドスを区別する関係体験の価値に焦点を当てた。
司教は、聖公会のマイケル・ラムゼイ・カンタベリー大主教が1966年に教皇パウロ6世から司教の指輪を受け取ったことで、「私たちはお互いを見て、違いを認識するだけでなく、それぞれの経験によって成長するために賜物を交換することの重要性も認識できた」と強調したうえで、「カトリックのシノドスは、聖公会のシノドスと異なり、祈りと沈黙を特徴とし、重要なことに立法の機能を持たないことであり、それによって、聖霊との対話の中で、今世紀の課題に創造的かつ勇敢に向き合うために、互いに心を開くことができる保護された空間が確保されています」と述べた。
*MWCのグラバー牧師「キリスト教の一致は明日への約束ではない、今ここにある」
メノナイト世界会議(MWC)のメンバーでキリスト教一致担当のグラバー牧師は、今回のシノドス総会第2会議に初めて参加したが、「会合に招待されて驚きました」と語った。彼女が、16世紀の宗教改革から生まれたが、洗礼と積極的な非暴力を特徴とするMWCという「あまり知られていない教会」に属しているからだ。
そして、「カトリック教会は、私たちの声を必要としていません。私たちの声はとても小さい。でも、それ自体がシノダリティ(共働性)について多くを語っています。すべての声が大切であり、すべての声が重要であることを示しています」と語り、「キリスト教の一致は明日への約束でなく、今ここにあり、私たちはすでにそれを見ることができる。私たちは近いだけでなく、同じキリストの体に属し、聖パウロが言ったように、お互いのメンバーなのです」と強調。
「このシノドス総会で、私たちは兄弟姉妹の代表としての投票権を持っていませんが、私たちの声と存在は他の皆と同じように歓迎されました。洗礼の平等な尊厳は目に見えます。上から支配する強力な教会はありません。私たちは皆、共に歩み、探求する人々です」と語った。
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4人のゲストの発言を受けて、記者たちとの間で質疑応答が行われ、エキュメニズムへの取り組みや、教皇の首位権とシノダリティ(共働性)の関係などが質問の中心となった。
*コッホ長官「エキュメニズムは危機に瀕していない、様々な課題に直面している」
コッホ長官は、エキュメニズムについて「我々の取り組みは、エキュメニズムが危機に瀕しているのではなく、『様々な課題に直面していること』を示すもの」とし、「ロシア正教会の長であるキリル・モスクワ総主教の言葉がギリシャ正教会との断絶につながったという悲しい状況が今、存在していますが、我々はこれらを進行中のエキュメニズムの旅と区別せねばなりません」と語った。
そして、「15の正教会が関与する混合委員会が活動を続けています。より良い未来を創り出す、という希望、そして総会を共に準備するという希望を抱きながら対話が続いているのです」と強調した。
*グラバー牧師「一致に欠けているのは和解の象徴的な小さなジェスチャー」
ヨブ大主教は「キリルが表明した政治的立場にもかかわらず、キリスト教会は活動的であり続けています。なぜなら、神学対話が引き続き確固たる基盤を築いているからです」と言明。
「これは運動です。私たちのエキュメニズムの旅に休みはありません」とコッホ長官は述べ、「キリスト教一致は、共に歩み、共に祈り、共に協力することで実現します。イエスはキリスト教徒の一致を命じられるのではなく、そうなることを祈っておられます。聖霊の賜物として実現するように祈る以外に、私たちにできることはないでしょうか?」と問いかけた。
これに対して、グラバー牧師は「期待されているのは、まだ欠けている和解の象徴的な小さなジェスチャーです」と答えた。
*コッホ長官「教皇の首位権とシノダリティ(共働性)は対立でなく、議論して共通点を見つける機会」
またペトロ=教皇の首位権とシノダリティの関係について、コッホ長官は「シノダリティと首位権は対立するものではない、と断言できます。一方がなければ他方は存在せず、その逆もまた同じです」と述べ、さらに、「首位権は対立ではなく、議論して共通点を見つける機会なのです」と指摘した。
エキュメニズムに関連して、ヨブ大主教は、「カトリック教会と正教会の間で復活祭の日付の統一について、いつか合意できるだろうが、今のところは単なる希望に過ぎない」と述べた。
コッホ長官は、「女性聖職者」に関する質問に答え、「教皇が10の検討チームを設けたことに、この問題への敏感さが示されている… 担当の教理省は、しばらくこの件に取り組んできたが、先に教皇が設置した2つの研究委員会が全員一致の結論に達しておらず、さらなる検討が必要だということを示している」とし、「これらの課題への情熱と検討への忍耐を組み合わせることが重要なのです」と語った。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
Ecumenism is not in crisis
The Q&A session touched particularly on the themes of relations within ecumenical dialogue and between the primacy of the Bishop of Rome and synodality.
Cardinal Koch explained that “what we are doing demonstrates that ecumenism is not in crisis, but faces various challenges.” He acknowledged, in response to questions by journalists, that “a sad situation exists, caused in part by the words of Patriarch Kirill of Moscow, head of the Russian Orthodox Church, which led to a rupture with Constantinople, but we must distinguish these positions from the ongoing journey.”
Indeed, he emphasized, “There is a mixed commission involving 15 Orthodox Churches that continues to work, meaning that dialogue is ongoing with the hope of creating a better future, including the hope of preparing a plenary assembly together.”
The importance of small gestures
This assurance was also highlighted by the Metropolitan of Pisidia: “The Church of Christ remains active, despite the political positions expressed by Kirill, because theological dialogue continues to lay solid foundations,” he stated.
“This is a movement; there is no pause in our journey,” Koch added. “The ecumenical movement is realized by walking together, praying together, collaborating together. Jesus Himself does not command Christian unity but prays for it: what better can we do than pray for it to be realized as a gift of the Holy Spirit?”
Perhaps “what is expected,” Rev. Graber interjected, are “small symbolic gestures of reconciliation that are still lacking.”
Regarding the relationship between Petrine primacy and synodality, Cardinal Koch clarified that “we can affirm that synodality and primacy are not in opposition. On the contrary: one does not exist without the other and vice versa.”
He added that “primacy is not an opposition, but an opportunity to discuss and find common ground.”
The question of sacramental hospitality
Addressing the issue of sacramental hospitality, it was recalled that the Pope has set up a dedicated working group, and that “there is still no common vision of the Church and sacraments in the dialogue between Western Churches.”
Job expressed hope that “we can one day agree on a single date for Easter between Christians and Orthodox, but for now, this remains just a wish.”
Answering questions on the so-called women’s ministries, the Prefect of the Dicastery for Promoting Christian Unity emphasized “the sensitivity of the topic, for which the Pope has established 10 working groups.”
He noted that “also the Dicastery for the Doctrine of the Faith has been working on it for some time: two study commissions have not reached a unanimous conclusion, indicating that further study is needed. It is important, therefore, to combine the passion of these questions with the patience of study,” the cardinal concluded.