・「ドイツの教会の”シノドスの道”はカトリック教会の一致を脅かしている」教皇、4人の女性神学者の訴えに返答

(2023.11.23 Crux Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

デンバー発 – ドイツのカトリック教会が進める”シノドスの道”に批判的な同国の4人の女性神学者から提出された訴えに対して、教皇フランシスコが答えた書簡の内容が23日までに明らかになった。それによると、教皇は、「ドイツの教会の取り組みは、世界の教会との団結を壊す危険がある」と指摘し、具体的にいくつかの問題を挙げている。

 教皇の書簡が11月10日付け4人に対し送られたもので、この日は、ドイツの教会で、司教たちと一般信徒代表による新たな統治組織の創設のための会議がエッセンで開かれた日に当たっている。共同統治について、バチカンは以前から否定する立場をとっており、教皇も書簡で、このようなドイツの教会の対応は「sacramental structure」に調和できず、「こうした普遍的な教会の共通の道からいっそう逸脱する恐れのある具体的な動きについて、あなた方の懸念を共有します」と述べている。

 教皇の訴えを提出していたのは、米オハイオ州のスチューベンヴィル大学のカタリーナ・ウェスターホルストマン教授、バチカン国際神学委員会委員でもあるオーストリアのウィーン大学のマリアンヌ・シュロッサー教授、ドイツのドレスデン工科大学のハンナ・ファルコヴィッツ名誉教授、ジャーナリストのドロテア・シュミット氏の4人。

 ドイツの教会の”シノドスの道”は、聖職者による性的虐待問題で信徒の教会離れが深刻化する中で、教会の管理運営のありかたを抜本的に見直す目的で、教皇フランシスコが世界的な取り組みとして”シノドスの道”を始めるのに先んじて開始されていた。そして、全教会的な話し合いの中で、 新たな教会の共同統治体の他、 司祭の独身制を廃止や、女性の司祭叙階、同性カップルに祝福を与えること、司教の選出において一般信徒が一定の役割を果たすことなどが提案されている。

 このような動きは、ドイツの教会の中でも、反対意見が出て、論争を巻き起こしており、バチカン当局も、ドイツの教会当局者に行き過ぎた判断をしないよう警告してきている。 そして、ドイツの教会指導者との協議が1年以上にわたって続けられた後、バチカン当局は今年1月、ドイツの教会による、司教と一般信徒で構成する教会の統治組織「シノダル評議会」の創設構想に対して、”拒否権”を発動した。具体的には、ピエトロ・パロリン国務長官、マルク・ウエレット前司教省長官、ルイス・ラダリア前教理省長官の3枢機卿連名で、1月にドイツの司教団に書簡を送り、「シノドス評議会」が司教協議会の役割を取り上げ、教会の使徒継承に基づく司教の権威と指導に疑問を投げかけるものだ、と強く批判した。

 こうした中で、4人の女性神学者は、「カトリック神学、人類学、そして教会の実践の本質的な基礎」を「完全に再定義」しようとする、ドイツの教会の進み方は受け入れられない、と判断、11月に入って8日に、ローマ在住の友人を介して、教皇に訴えの書簡を提出していた。

 4人が公表した教皇から彼女らあての書簡の中で、教皇は「あなた方が言及した(ドイツの教会が進めている)シノダル委員会の設立」に対する懸念を、自分も共有していると述べ、さらに、シノダル委員会は、「カトリック教会のsacramental structureと調和できない形での諮問・意思決定機関である評議会を準備することを目的としており、このような評議会の設立は、1月16日に私が承認した書簡でバチカンによって禁止されました」と言明した。

 教皇はさらに、「さまざまな新たな評議会や委員会で『救い』を求めたり、ある種の閉鎖的なやり方で、同様のテーマを議論したり」しないように注意し、昨年夏のドイツの教会あての書簡で「祈り、悔悛と崇敬」に注意を向ける必要を強調した、と述べ、教会にとって大事なのは、「教会の外に出て、特に教会の入り口、路上、刑務所、病院、広場、街で見捨てられている人々に会いに行くこと」とし、 「私は確信しています。そここそが、主が私たちに道を示してくださる場所なのです」と強調した。

 そして、 「主があなたを祝福し、聖母マリアがあなたを守ってくださいますように。 私のために、そして団結という共通の関心事のために祈り続けてください」と所管を締めくくっている。

 ウェスターホルストマン教授は、シュトゥーベンビル大学の新聞発表で、教皇の迅速な対応と「特に教会のsacramental structureに関する明快な意見」に感謝し、 「教皇の言葉の明快さは、ドイツの教会だけでなく、教会全体が普遍的な教会の交わりの中で聖霊に耳を傾け続けるのに役立つと確信しています。 これはドイツの司教たちの大多数に、聖ペトロの後継者との一致を続ける誓いを思い出させることにもなるでしょう」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年11月24日