・シノドス事務局の総会第二会期に向けた取り組み書簡・全文

(2024.1.19 カトリック・あい)

   “シノドスの道”を担当するバチカンのグレック・シノドス事務局長とオロリッシュ・シノドス総会総括責任者は昨年12月12日までに、全世界の司教たちにあてて、2024年10月に予定する世界代表司教会議(シノドス)第16回総会第二会期に向けた取り組みに関する書簡を送った。

 その概要は、すでにVatican News で伝えられ、「カトリック・あい」でその翻訳を掲載済みだが、1月19日に付けのカトリック中央協議会ホームページで、その全訳が掲載されたので以下に転載する。

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 世界代表司教会議(シノドス) 第16回通常総会 2024年10月に向けて

            シノドス事務局

2021年10月9日に教皇によって開始された旅、「ともに歩む教会のため――交わり、参加、そして宣教」を継続していくために、今後、シノドス総会第2会期(2024年10月)までの数カ月間に取るべき手順について、シノドス事務局通常評議会によって作成され、承認された指示を以下にまとめました。

シノドス2021-2024の全過程は、旅を続けるためのひらめきの源泉となります。聞き取りと意見聴取のフェーズにおいて、さまざまなレベルのシノドスの集いに参加した人々、とりわけ第1会期の参加者は、複数であり、かつ違いを交わりの豊かさとして生きることのできる教会を、具体的に体験してきました。

この体験は、平和と一致が可能であると信じることが困難な世界に向けられた、預言者的なことばです。わたしたちは、復活した方から招かれ、派遣されて、現代世界に福音を告げ知らせます。シノドス的教会として成長することは、この招きと使命に応える具体的な方法なのです。

総会に参加した人々の証言は貴重です。彼らの証言は、わたしたちが受け取ったたまもののかけがえのない一部であり、どんな文章でも凝縮することのできない豊かな体験を伝えています。主によって招かれ、派遣された弟子として互いを認め合う兄弟姉妹のシノドス的な出会いは恵みであり、喜びの源です。こうした体験から、このたまものを分かち合い、より多くの人々をこのダイナミズムに巻き込みたいという願いが生まれます。

参加者の証言に加え、第1会期の成果は、会期終了後に承認され、シノドス2021-2024のウェブサイト(www.synod.va)で多言語で入手可能な「まとめ」報告書に集成されています。この文書は、二つの会期間に、神の民の旅の参照点となります。

とりわけ、シノドスの歩みは、わたしたちがこれまで連続して取り組んできた三つのレベル、すなわち、各地方教会レベル、地方教会の集合体(全国、地域、大陸)レベル、全教会レベルを絡み合わせながら、以下に示す路線に沿って継続されます。これらの作業路線を承認しながら、教皇が思い起こしたとおり、「このシノドスとはシノダリティについてのものであり、他のあれこれのテーマについてではありません。……重要なのは、考察する方法、つまりシノドス的方法です」。

このような方向で、これまでの歩みは進められてきました。また、このような方向で、第1会期の作業を発展させるよう求められています。第1会期中、総会は、大きな関連性をもつ事柄をシノドス的方法で取り上げ、収れんする事柄を指摘し、取り組むべき課題を示し、提案をまとめました。これらは非常に重要な問題であり、そのいくつかは全教会レベルで、ローマ教皇庁の諸省と協力しながら検討される必要があります。

こうした中には、たとえば、『カトリック新教会法典』と『東方教会法典』の更新を見据えた予備的研究(「まとめ」1章、r)、叙階された奉仕者の養成に関する『基本綱要(Ratio fundamentalis)』(11章、j)、司教省文書『ムトゥエ・レラチオネス』(10章、g)、あるいは助祭職、より具体的には女性の助祭職への参入に関する神学的・司牧的研究の進展(9章、n)などが含まれます。

これらのテーマの一覧表は、シノドス総会の成果として教皇に提出されます。シノドス事務局によって調整された、全大陸から選出された専門家グループは、教皇庁の関係各省とともに、教皇によって指示されたテーマについて、シノドス的な方法で作業するよう要請されていきます。この作業の進捗に関する報告は、2024年10月の第2会期で発表される予定です。

 

1.考察を深めるために指針となる問い

地方教会とその集合体は、まず、シノドスのテーマの根幹をなす「まとめ」報告書の諸要素を深めることによって貢献するよう求められています。これらの貢献は、次の質問によって導かれます。

どのようにすればわたしたちは、宣教においてシノドス的教会になりうるか」

 この新たな考察の目的は、復活した主とその福音を現代世界にのべ伝えるという一つの使命の中で、洗礼を受けた一人ひとりと各教会の独自の貢献を発展するために、わたしたちがそれぞれの状況や文脈の中でたどることのできる道筋と、採用することのできる手段を明らかにすることです。

したがって、これは、教会組織をより効率的なものにするための技術的、あるいは手続き的な改善計画に限定するような要請ではなく、むしろ、わたしたちが呼ばれている宣教への専心の具体的な形、すなわち、シノドス的教会にふさわしい、一致と多様性の間のダイナミズムを表現するものについて考察するようにとの呼びかけです。

この点で、使徒的勧告『福音の喜び』27項を読み直すことは役立つでしょう。「わたしは、すべてを造り替えるような『宣教という選択肢』にあこがれています。それは自己防衛ではなく、習慣も、様式も、時間も、言語も、そして教会のあらゆる組織的構造も、現代の福音化にふさわしい手段となるものです。

司牧的な回心が要請する構造改革は、次の意味においてしか理解されないでしょう。つまり、教会の全構造をいっそう宣教へと向かうものとすること、すべての領域で通常の司牧活動をより広くいっそう開かれたものとすること、司牧に携わる者がつねに『出向いていく』態勢であるよう励ますことです。

そして、こうした配慮によって、イエスが友として招いた人が皆、積極的にこたえるよう支えることです。オセアニアの司教たちに向けてヨハネ・パウロ二世が述べたとおりです。『教会の刷新はすべて宣教を目的とすべきです。教会的な内向性というものに陥らないために』」。

指針となる問いの中で特定された綿密な作業が志向する地平は、キリストがわたしたちに託された宣教のダイナミズムによって動かされる改革です。ここにおいて、わたしたちは司牧上の回心によって支えられます。この回心は、主の約束に従ってわたしたちを決して一人にしない霊が、わたしたちを招き、成し遂げさせるものです。

 

1.1 深めるための二つのレベル

この指針となる問いは、つねに「まとめ」報告書全体を参照点として、二つのレベルで取り組む必要があります。

a)地方教会レベルで。神の民全員の、宣教における差別化された共同責任をどのように強化することができるでしょうか。宣教に関して、どのような関わり方、組織、識別のプロセス、意思決定が、共同責任を認識し、形作り、促進することを可能するでしょうか。この共同責任をよりよく表現するために、どの奉仕職や参加型組織を新たにし、導入することができるでしょうか。「まとめ」報告書の中、8〜12章、16章、18章を、より具体的に参照とすることができます。

b)諸教会間の関係、異なるレベルの地方教会の集合体間の関係、ローマの司教との関係というレベルで。「教会全体の次元とその地域的ルーツとの間の動的バランス」(「まとめ」報告書5章、g)を見極めるため、どのようにすればこれらの関係性を創造的に明示することができるでしょうか。ここではとくに、「まとめ」報告書の13章、19章、20章を参照とすることができます。

 

1.2 作業整理のためのいくつかの提案

指針となる問いと、上記の二つのレベルから始めて、各地方教会はさらなる意見聴取を実施することが求められ、利用可能な時間内で何が可能か、どのようなアプローチをとるのが最善かを決断します。最初のステップは、「まとめ」報告書の関連する章を振り返りながら、指針となる問いに取り組む視点を選ぶことです。現実的には、すべての内容を検討することは不可能でしょう。

したがって、各地方教会は、自らの状況、特徴や体験に照らして貢献できる部分に焦点を当て、シノダリティの、目に見える具体的なしるしとなる、優れた実践を分かち合うよう招かれています。決定されたことに基づいて、各教区・東方教会教区は、このさらなる意見聴取の成果を、それが属する司教協議会または東方教会の位階機構に、各協議会・機構が間もなく提示する時期と方法で送ることになります。

明確にしておきますが、この作業は、シノドスの歩みをゼロから始めることでも、第1段階で行われた聞き取りと意見聴取のプロセスを繰り返すことでもありません。この段階では、すでに設置されている教区レベルの参加型の団体やシノドス・チームに加え、神の民の中でさまざまな体験、技能、カリスマ、奉仕職を表現し、その視点が「どのように」ということに焦点を当てる上で、とりわけ助けになる人やグループを参加させることが重要になります。

つまり、叙階された奉仕者(とくに小教区の司祭)、その他の司牧リーダー(たとえばカテキスタや、草の根共同体や小共同体のリーダー、とくに地域によっては司牧拠点のリーダー)、男女奉献生活者、信徒団体・教会運動体・新しい共同体のリーダー、教会関連の団体や組織(学校、大学、病院、一時収容施設、文化センターなど)の責任者、神学者や教会法学者などを参加させるのです。

司教協議会と東方教会の位階機構は、このプロセスのこの部分の参照点であり、その方法と時期を定め、教区・東方教会教区と調整しながらそこからの意見を集めることが求められています。彼らはまた、自分たちのレベルでも、大陸レベルでも、適切で実行可能と思われることに従って、同じ指針となる問いから始めて、詳細な研究を継続することが求められています。

地方教会レベルにおいても、また地方教会の集合体レベルにおいても、真の意味でシノドス的な識別を行うためにはまた、神学的・教会法的な専門知識だけでなく、人文科学・社会科学の貢献も必要で、そこには、これらの分野の専門家や学術機関が含まれます。

各教区・東方教会教区からの意見を集めた後、司教協議会・東方教会の位階機構、さらに、どの司教協議会にも属さない教区は、最大8ページのまとめを作成し、2024年5月15日までにシノドス事務局に送付する任務を負っています。こうして集められた資料に基づいて、第2会期の『討議要綱』が作成されます。

2.シノドスのダイナミズムを活かしながら

過去2年間、神の民全体を巻き込んできたシノドスのダイナミズムを維持し、活性化させることは、上に概説した詳細な調査と意見聴取の作業と同様に重要です。第1会期は、優先事項として、「シノドスの歩みに参加する人々の数を増やし、これまでに現れた参加への障害を克服すること」(「まとめ」報告書、1章、m)を指摘し、また、デジタル環境を含め、注意を払うべきさまざまな態様やグループを指摘しました。

この目的のために、各地方教会もまた、「まとめ」報告書全体に目を通し、自分たちの状況にもっとも合致する要望を集めることが求められています。これを基に、第1フェーズですでに成功裏に採用された方法、とりわけ「霊における会話」を用いて、神の民全体を巻き込むためのもっとも適切な取り組み(養成活動、詳細な神学研究、シノドス形式による祭儀、草の根の意見聴取、マイノリティや貧困・社会的周縁の状況で生活するグループからの聞き取り、論争の的となっている課題に取り組む場など)を推進することができるようになります。

修道会、奉献生活会、信徒団体、教会運動体、新しい共同体もまた、同様のことを行うことが求められ、所在する教区や東方教会教区の作業に貢献することとなります。その目的は、シノドスの歩みの第1フェーズが始まり、大きな実を結んだ、すべての人、とりわけ教会生活の周縁にとどまる人々に耳を傾け、対話するダイナミズムを維持することです。

そのように実行しようと望む各地方教会は、それが属する司教協議会または東方教会の位階機構に、宣教に向かうシノドスのダイナミズムを成長させるために重要であると思われる優れた実践を分かち合いつつ、実施された活動や体験についての簡潔な証言(2ページ以内)を送付することができます。司教協議会と東方教会の位階機構は、2024年5月15日までにこれらをシノドス事務局に送付する責任があります。

これらの報告は、第2会期中に総会が直接識別する対象にはなりませんが、しかし、総会メンバーが読むことができるようになります。その目的は、総会の作業を位置づける枠組みを構成するための助けとすることです。また、体験や優れた実践を共有することで、同じ課題に取り組むよう求められている諸教会間の出会いと協力のダイナミズムが活性化されることもあるでしょう。

 

3.責任者とその任務

総会の二つの会期の間の旅の主体は、それぞれの地方教会です。このフェーズにおいて、各教区・東方教会教区の司教は、刺激を与えるという代えがたい役割を担っています。つまり、自らの教区・東方教会教区でさらにこの意見聴取を行い、同伴し、その結果を検証するのは、司教の任務です。

このプロセスを実施し、活性化させるために、各領域からのシノドス総会メンバーの協力と、これまでのフェーズで異なるレベルに設置されたシノドス・チームの協力を求めることが示唆されています。

司教協議会と東方教会の位階機構は、自らのレベルでの詳細な作業に直接関わり、各地方教会の調整役を果たすことが求められています。

とりわけ、

1)指針となる問いで指摘された、深める作業に関して、司教協議会と東方教会の位階機構に以下のことを求めます。

  • このプロセスに同伴し、意見聴取の方法と時期について地方教会に指示を与えること、
  • 司教協議会と東方教会の位階機構が適切と考える方法に従って、地方教会の集合体レベルでもまた、指針となる問いの詳細な研究を実施すること、
  • 受け取ったり、作成した各報告のまとめを準備し、5月15日までにシノドス事務局に送付すること。

2)シノドスのダイナミズムを維持するための取り組みに関しては、司教協議会と東方教会の位階機構に以下のことを要請します。

  • 諸地方教会のグループ化を含め、宣教におけるシノドス的教会としての成長を可能にする取り組みを推進し続けること、
  • 教区・東方教会教区が作成した証言と優れた実践を収集し、それらを要約せずに、5月15日までにシノドス事務局に送付すること。

バチカン、2023年12月11日

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2024年1月19日