【シノドス総会】参加者全員による19日夕の「移民・難民のための祈り」が18日の会見の基調に

Press briefing of 19 OctoberPress briefing of 19 October 

(2023.10.19 Vatican News   L’Osservatore Romano)

 シノドス総会参加者は19日夕、聖ペトロ広場で移民・難民のための祈りの集いを開いたが、それに先立って同日午後行われたルッフィーニ広報長官による定例記者会見も、同席したツェルニー総合人間開発省長官たちからの苦難と犠牲を強いられている人々を教会としてどう受け止め、対応するかについての説明が中心となった。

 会見ではまず、ルッフィーニ長官から18日午後から19日朝にかけての35の作業部会での討議について説明があり、「聖霊における対話」に時間が割かれ、さらに準備要綱のセクションB3に焦点を当て、「参加、責任、権限」という一般テーマのさまざまな側面について議論が続けられた、という。

 (準備要綱B3の主題は、B3/3 が宣教の使命を負ったシノダル(共働的)な教会を強固にするために、どのような仕組みが必要か?」。 B3/4 が「現地教会のグループ化を含む synodality(共働性) and collegiality (合議性)の特徴は形成することができるか?」。B3/5が「すべてのシノダルな教会の中で司教による合議制を示すことができるように、世界代表司教会議(シノドス)をどのように強化することができるか」となっている)

 

*ツェルニー総合人間開発省長官「地球上で最も弱い立場にある人々と共に歩む」

 記者会見に同席した総合的人間開発省の長官、ミヒャエル・ツェルニー枢機卿は、19日夕の移民・難民のための祈りの集いについて「今回のシノドス総会で、教会として共に歩む方法を学んでいるが、これは地球上で最も弱い立場にある人々、すなわち、戦乱や虐待などから避難を余儀なくされている人々と、教会が共に歩むことを象徴するものとなることになるでしょう」と述べた。

 そして、聖ペトロ広場での祈りの中心に置かれるティモシー・シュマルツ制作のブロンズ像は「あらゆる年齢、あらゆる場所で、何らかの形で故郷からの避難を余儀なくされたすべての人々を象徴」しており、そこに表現された「移民・難民の人々の不安、無力さ、疎外感、そして、こうした現実を拒絶する私たちの社会の恐ろしい沈黙」と、「シノドス総会の会場内で私たち参加者が経験する調和と善意、そして…本当に深い交流」の「劇的なコントラスト」を指摘した。

 

*米ブランズビルのフローレス司教「メキシコ 国境の教区で、増加する中南米からの入国者を受け入れる」

 

また、会長代議員で総会準備委員会のメンバーでもあるダニエル・アーネスト・フローレス司教は、メキシコとの国境にあるテキサス州ブラウンズビルの教区長だが、「世界中の各教区の代表が、それぞれの現地の教会の賜物や経験を携えて、この総会に集まっている」としたうえで、自身の教区について「このところ、中南米から私の教区を通って米国に来る人の数が増えていますが、教区の信徒たちは彼らを迎える態勢をしっかり整えている。入国してくる母親や子どもたちの世話をするために時間を割くボランティア、レストランのオーナー、医師、看護師たちが活発に活動しています。カトリック教会だけでなく、キリスト教の諸宗派、イスラム教徒、ユダヤ人など他のコミュニティのメンバーも重要な貢献をしています」と説明。

 そして、「私たちの教区には、豊富な”物質的資源”があるわけではありませんが、住民の心はとても広く、貧困とは何かをある程度知っているので、非常に前向きに対応してくれています。 私たちが守るべき原則は、入国してくる人たちを家族として尊重し、最大限の敬意を持って扱うよう努める、ということです」と語った。

 

 

*マロン派修道会のアルワン前総長「世界最高の難民比率のバノンの国民は巨額の財政負担にあえいでいる」

 レバノンのマロン派宣教会の前総長、ハリル・アルワン神父は、東方カトリック教会協議会の事務局長で、ベイルートのレバノン大学の教授でもあり、東方諸教会を代表し、中東の総会参加者の調整役も務めているが、「シノドス総会には、これまで4回参加してきましたが、今回の総会は、討議の方法や内容が、従来とは違っている。 現実がすべて表現され、 それに参加することは、私たちにとって、教会の幸せな未来への希望を与える大きな恵みです」と述べた。

 そのうえで、レバノンにおけるシリア難民の状況について説明。「 国際社会がレバノンに彼らを留まらせ、欧州に行くことを妨げており、レバノンには現在、シリア難民が200万人以上、出生届も多く出されている。人口500万人のレバノンは世界で最も難民の割合が高い国になっています」と語った。

 そして、「このような状況を緩和するために、ある程度の人道援助が提供されていますが、最も求められているのは、難民が人としての尊厳を持って迎えられるようにすることです」と訴え、「 レバノン人は人間性ゆえに罰を受けています。難民はレバノンの国家経済に負担をかけている。国際政府機関では対処できないほどの巨額に上っており、結果として、レバノン国民はますます貧しくなっており、大きな怒りを引き起こしている。難民問題を”人道問題”とすることはレバノンに難民を留めておくための口実だ、と受け止めており、シリア人の難民の人たちの間に、欧州行きを求める多くの声が上がっている」と強調。

私たちは人類の悲劇に直面しており、世界の大国がこの悲劇を終わらせるために働き、シリア人がいつか自分たちの国と文化に戻れるよう、祈ります」と述べた。

 

*南アフリカ司教協議会副会長のムパコ司教「アフリカで最大の移民・難民受け入れ国、司牧ケアが課題」

 

 プレトリア大司教で南アフリカ司教協議会の副会長であるダブラ・アンソニー・ムパコ大司教は、南アフリカにおける移民・難民状況について概説した。

 ムバコ大司教は「自分の出身地を振り返って、多くのアフリカ諸国が既にこの”シノドスの道”を歩むための肥沃な土壌を持っていることに気づきました」としたうえで、「南アフリカは、アフリカで最も多い290万人以上の難民を受け入れており、彼らに司牧ケアを提供するという課題に直面しています」と指摘。さらに、「南アフリカに流入する難民の最大の原因は貧困。彼らの大半は『経済移民』です」と説明した。

 また大司教は、「難民・移民にとって最も人気のある目的地の一つであるプレトリアには、教会が『移民と難民のための司牧的ケアのための確立された奉仕』の態勢が整えられ、食料の提供や、 衣服、医、必要な書類作成などの支援を行っている」とし、「地元の教会は、彼らの言語で典礼を提供したり、移民・難民担当の宣教司祭を任命したりするなど、状況に応じた司牧的ケアを提供しながら、彼らが地域社会に溶け込めるよう努めています」と語った。

 

 

*カトリック教会におけるシノダリティ(共働性)とヒエラルヒー(ピラミッド型階層構造)

 

 記者団からは、「シノダリティに基づいた教会改革が、教区における司教の権威と特権を損なう可能性があるか」という質問が出たが、これに対して、フローレス司教は「その問題は新しいものではない。 教会による権威や奉仕は、回心に基づいていなければならない。いかなる組織にとっても前向きな目標を達成するために不可欠だからです」と述べる一方、この刷新がどのように行われるかについて多くの意見があることを認めた上で、「キリストにおいて互いに奉仕することに注力する人々に洗礼を施し、叙階することへの強い願望について、懸念している」と指摘した。

 ムパコ大司教は、「教会におけるシノダリティとヒエラルヒーという2つの構造が共存せねばならない、ということは万人に受け入れられているが、私たちが考えるべきは、教会のヒエラルヒーの運営方法にシノダリティが浸透する形で、この二つがどのように機能することができるか、ということです」と述べた。

 ツェルニー枢機卿は、「教会の階層構造は、聞くことから始まるプロセスを恐れるものではありません。 それが教会の階層的性質を損なうなどということはあり得ないのです」と強調した。

*難民とLGBTQ+

 

 難民の中のLGBTの人々の存在についての記者の質問では、ムパコ大司教が「どのように対応についての教会の立場は明白です。教皇はそれを非常に印象的で素晴らしい方法で体現されていると思います」としたうえで、「しかし、私たちが扱っているのは伝統的なキリスト教人類学であり、その人類学がこの問題にどのように関係しているのかを、調べようとしている段階です。 そして私の印象では、この問題はすぐには解決されないでしょう。私たちはキリスト教人類学を守りながら、私たちはLGBTQ+の人々が教会でくつろげる方法を模索しています」と説明した。

 一方、フローレス司教は、「自身の教区において、困難な状況にある家族を受け入れることが、『教会の慈善の使命』だ、と考えています。私たちは、すべてのボランティアに『苦しんいる人の中に、キリストの顔を探す』よう奨励している」とし、「私たちは、彼らにカトリック教徒かどうかは尋ねないし、キリスト教徒かどうかも尋ねません… 私たちは彼らに、政治信条を尋ねないし、性的指向についても尋ねません。ただ、苦しむキリストに仕えたいだけなのです」と強調した。

*ラテンアメリカ文化とシノドス

 またフローレス司教は、ラテンアメリカ文化におけるシノドスについての見方について質問を受け、「容易なことではありませんが、異なる文化を一つに結びつけることは、シノダリティの表現です。私自身は、ラテンアメリカ文化と英米文化を分け隔てしないバイリンガルの家庭で育ちましたが、それは、ある世界を別の世界に翻訳しようとする問題です。若い人たちはこれをうまくやる方法を知っていますし、特に国境地域に住んでいる人たちにとって、それは財産にもなります」と語った。

 だが、そのことを、「教会レベルで単純化することはできない。 地域のさまざまな教会の間で、対話に向けて前進するよう努力する必要があります」と述べ、 同様に、二つの世界に生きてきたツェルニー枢機卿も、自分にとって「人生は”翻訳”であり、両方の文化の中で生まれていても、いなくても、『synoding』は、”翻訳”する方法を学ぶことでもあるのかもしれません」と語った。

*「シノドス総会は外部からの圧力や”陰謀”の影響を受けていない」

 この後、ルッフィーニ長官から、作業部会の発言と総会の取りまとめ文書への賛否投票など総会の運営方法について説明があり、ツェルニー枢機卿からは「叙階された奉仕職に関する秩序と職権の関係」についての発言があり、「私は、秩序と職権の識別は克服されていると考えています。つまり、秩序を理解することはすべての職権には必要でなく、これまで聖職者、高位聖職者、場合によっては枢機卿が行使してきた職権に秩序は必要でないということです」とし、「教会の本質に危険はありません。すでに責任があり、おそらく枢機卿以外、司教以外、司祭以外の者に、その責任が委ねられることがますます増えていくからです」と付け加えた。

 また、記者からの追加の質問に対して、フローレス司教とムパコ大司教は、「現在のシノドス総会は、外部からの圧力や”陰謀”の影響を受けていない」と口をそろえ、フローレス司教は「”陰謀”があるとは思わない。 私はただ、使徒ペトロのケアの下で、正直で、誠実で、忠実で、慈しみにあふれた参加者の言葉に耳を傾けているのです。 それは信仰に対する脅威にはなりません」と言明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

Cardinal Czerny then spoke about the relationship between order and office with regard to ordained ministries, saying, “I think that the identification between orders and offices is something that is being overcome. In other words, we’re understanding orders not to be necessary for every office, which until now has been headed by a cleric and in fact a hierarch and in some cases even a cardinal”.

He added the assurance, “There’s no danger to the nature of the Church because there are responsibilities which are already being, and which perhaps increasingly will be entrusted to non-Cardinals, non-bishops, non-priests.

Responding to further questions from the media, Bishop Flores and Archbishop Mpako assured reporters that the synodal reflection was not influenced by external pressures or “conspiracies”: “I do not see a conspiracy”, said Bishop Flores. “I have simply heard honest, sincere, faithful, charitable conversations under, shall I say … ‘sub tutela Petri’, under the care of Peter. That is not a threat to the Faith”.

Finally, Cardinal Czerny, the Prefect of the Dicastery for the Service of Integral Human Development took the floor to give some details about tonight’s celebration in St. Peter’s Square for migrants.

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2023年10月20日