【シノドス総会】「武器取引で第三次世界大戦に加担する人々に回心の呼びかけを」20日の定例記者会見で討議の模様

Synod Briefing in Holy See Press OfficeSynod Briefing in Holy See Press Office 

*グルーシャス大司教「様々な国から来ていても、信仰、成長への意欲という共通点がある」

 リトアニアのビリニュス大司教であり、欧州司教協議会連合とリトアニア司教協議会の会長、ギンタラス・グルーシャス大司教は、2月にプラハで開催された”シノドスの道”の大陸レベル会合を振り返り、会合には45カ国の聖職者が集まって、さまざまな視点からそれぞれが抱える問題などについて語り合い、互いの見解を知ることができ、「対話と霊的共有の極めて前向きな機会」となった、と述べた。

 シノダリティ(共働性)については、「教会であるための方法、共に生きるための方法、交わりを経験するための方法」としての育成を強調。「シノドス総会での経験そのものが、これらすべてを具体的に実現している」とし、 「長い会議で疲労を感じているが、大きなエネルギーを保っています。それは、私たちは様々な異なる国々から集まってきたにもかかわらず、共通点がたくさんあることを認識しているからです。まず第一に信仰。そして、メンタリティを変える意欲から始まる回心、つまり教会として成長しようとする意志です」と語った。

*シスター・ファドゥール「戦乱、コロナ、地震など人災、天災が続くシリアで、新任司祭が”巻き返し”に努めている」

 続いて、シリア・カトリックの修道会Deir Mar Musaのシスター・フーダ・ファドゥルが、東方教会と中東の”シノドスの道”の歩みに参加してきた経験について述べた。戦乱、新型コロナの世界的感染、地震などの人災、天災が続いたシリアの彼女の教区では3年間にわたって司教不在の状態が続いていたが、新任の司祭が、若者たちを教会活動に参加させ、着任したばかりの司教を様々な教会関係の集まりに招くなどして、「巻き返し」に努めている。

 シノドス総会については、祈りの中で捧げられる一致と分かち合いが緊張感を育み、非常に豊かな交流の時を体験。「各テーマについての作業部会での話し合いは、出発点、道筋、達成すべき目標があり、『共に歩む』スタイルで続けられています」と評価した。

 

*菊地大司教「日本人やアジア人は沈黙を大切にし、声を上げるのを難しく感じることもある、小グループの分かち合いは重要」

(以下の感想は、大司教ご本人からの情報提供による)

 菊地功大司教は、日本人だけではなくアジアの人間は「沈黙」を大切にしているので、声を上げることを難しく感じることもある。今回のシノドス総会で、小さなグループでの分かち合い、霊的会話で皆が話す機会を得たことは重要、と指摘し、総会に先立つアジアの大陸レベル会合でも、小さなグループでの霊的会話を行い、参加者全員が自分の思いを分かち合うことができた。アジアではこの方法は素晴らしく働いたし、今このシノドスの会場でもうまく機能している、と語った。

(以下の,菊地大司教の部分は「バチカン放送日本語課」による)

 同時に、菊地大司教は、カトリック教会の普遍性を強調しつつ、一方で、一つのサイズがすべての人にフィットしないように、アジアには非常に多様な言語、文化、現実があり、すべての人に働きかけるかけるために、一つの方法を押し付けるということはできない、とも述べた。各地方の文化、現実を尊重すべきアジアにおいて、シノドス性とは画一性を意味せず、それぞれの文化をリスペクトすることが要求される、と語った。

 さらに、菊地大司教は、国際カリタス総裁の立場から、カトリック教会のシノドス性において、カリタスは重要な存在である、と指摘。カリタスは世界に広がり、各組織は独立性を持つが、それぞれがカトリック的アイデンティティーを持ち、様々なパートナーと積極的に協力するだけでなく、エキュメニカルかつ諸宗教対話的な性質を持っていることを示した。

 また、同大司教は、国際カリタスの責任者や地方で活動する人々の様々な国籍にも見られるように、カリタスはすべての人が参加する本来シノドス的な組織であること、その活動は、現地で一人ひとりの困難に寄り添い、人々の尊厳の向上を目指し、未来の希望を生むものであることなどを説明。カリタスはカトリック教会が共に歩む上で強力な道具であり続けるだろう、と話した。

*シスター・バロン「アフリカでの”シノダリティ(共働性)”の教会の経験、底辺から参加の意欲を持つ『若い教会』に耳を傾けるべき」

 Congregation of the Sisters of Our Lady of the Apostlesの総長で、女子修道会総長による国際連合の会長でもあるシスター・メアリー・テレサ・バロンは、東アフリカの地方の教会で修道女としての活動を始め、そこでシノダリティ(共働性)の教会の最初の経験を過ごした経験を持つ。母国のアイルランドの半分ほどの面積に35の村があり、2人の司祭と1人のカテキストを擁する「若い」教会だたったが、「今回の総会で35の作業部会に分かれて話し合いをする経験は、私がアフリカで経験したことに似ています。毎週日曜日、地域のコミュニティに出かけ、信徒たちと、泥小屋の外で輪になって座り、全員で意思決定をし、教育を受けていない人々も含めて、心の底から信仰を共有しました。 どの声も、同じ重みを持っていました」と語った。

 そうした経験からシスターは、「底辺から強い参加の意欲を持つ『若い』教会の声にもっと耳を傾ける必要があります。そして、誰もが教会で、それぞれの役割を持っているのです」と強調した。

 

 

*”シノダリティ”は修道生活でも重要

 シスター・ファドゥールは、”シノダリティ”に関連して、自身の体験として、自分のコミュニティの困難な状態にあるシリア人キリスト教徒を見捨てず、共に祈るよう助け、連帯感がもてるようにしたことを語った。

 シスター・バロンは、”シノドスの道”の歩みへの修道会総長の関与の重要性の一方、修道者としての奉献生活で、シノダリティ的生き方を理解するための育成の重要性を指摘。また、オンラインを活用した育成の波及効果についても言及し、「共有の拡大とコミュニティの構築に役立ちます」と述べた。

*「女性助祭の問題は、すでにシノドス総会での識別のテーブルに載っている」

 また、女性助祭について記者から聞かれ、「この問題は、すでにシノドスでの識別のテーブルに載っています」とする一方で、「さまざまな意見があるのがカトリック教会の素晴らしさですが、(是非が)議論されている問題に、この場で(是非についての自分の考えを)申し上げるのは適切とは思いません」と語った。

 これに関連して、シスター・ファドゥールは「男性も女性も、誰もが教会で役割を引き受け、主の賜物を生かすことを、学ばねばならない、と思います」と述べ、グルーシャス大司教は「教会のさまざまな聖職に関する議論は、シノドス総会での非常に幅広い意見交換の一つ。文化的背景により意見の違いもあり、現段階でイエスかノーの決断を下すのは時期尚早です」と付け加えた。

 また、”シノドスの道”の歩みに関連して、グルーシャス大司教は「各国の司教協議会の会長たちは、教会法で既にシノダル(共働的)とされているいくつかの仕組み検討しています」と述べ、菊地大司教は「新型コロナの大感染の期間中、人々が”シノドスの道”を共に歩む機会が多くなかったので、オンラインでの歩みが選択された」とし、「もし一般信徒と本当に関わりたければ、彼らの活動、彼らの家族を考えることが必要ねばなりません」と語った。

 アジアの大陸レベル会合の文書で提案された、教会におけるもてなしと包括性についての記者の質問には、菊地大司教は、「靴を脱いで中に入る」という東洋の習慣が、作業部会で示された、と述べた。

 会見の最後に、グルーシャス大司教は、今総会における参加者の一致を強調する一方、 特定のテーマについては「現段階では意見がまとまっていないし、2024年以前に最終決定がされるとは、思われない。しかし、私たちが成長し、シノダリティで歩めば、最終決定に至るでしょう。教条的な結論を追求してはいないし、このシノドス総会がどうなるべきがについて先入観は持っていません。誰もが決定できることを望んでいますが、重要なのは『決定』よりも『プロセス』なのです」と指摘。シスター・ファドゥールも「互いに耳を傾け、分かち合い、識別することが教会全体にとってのキーワードです」と述べた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2023年10月21日