2018年に中国政府は「信教の自由の保護に関する中国の政策と慣行」というタイトルの白書を発表しました。しかし、このタイトルは誤解を招くもので、その内容は、宗教団体に中国共産党の指導を受け入れ、中国の特徴を備えた社会主義の道をたどるよう、命じるものだった。
白書には次のように書かれている。「中国共産党と社会主義システムの指導に従うよう宗教団体を導く。中国の特徴を備えた社会主義の道を支持し、それに従う。中国の文脈で宗教を発展させる。社会主義の核心的価値観を受け入れる。中国の素晴らしい伝統を引き継ぐ。宗教的な教えと規則を中国の文化と統合する。地方政府の法律および規制を遵守し、法律に従って地方政府の行政を受け入れる」
この指示は、中国のすべての宗教団体に適用される。白書はさらに、「2017年に開催された中国共産党第19回全国代表大会での習近平主席の報告によると、中国は宗教問題に関する党の基本政策を完全に実施し、中国の宗教は中国籍でなければならないという原則を支持し、宗教が社会主義社会に適応できるように、宗教に積極的な指導を行う」
中国共産党が決めた「第14次五カ年計画」(2021〜 2025年)も、次のように述べています。「我々は、宗教活動に関する党の基本的な指導原則を実施し、中国の宗教の中国化の方向性を遵守し、宗教と社会主義社会の相互適応を積極的に指導する」。要するに、中国での過去数年間の動きから、チベット仏教を含む中国における諸宗教の中国化が進んでいる、結論付けられるのだ。
一か月前の2021年12月3日から4日、北京で「宗教問題に関連する作業に関する全国会議」が開かれた。李克強・首相が主宰し、上級幹部たちが出席した。会議で、習主席が、宗教の中国化の推進を強調し、オンラインによる宗教活動の規制・管理を強化し、「中国における宗教の健全な継承に影響を与える顕著な問題」に効果的に対処するよう指示した。
新型コロナウイルスの大感染が始まって以来、ほとんどの活動は世界中でオンラインで行われるようになっており、そうした流れの中で、このような指示がだされたものだ。これを受けて2021年12月20日に「インターネット宗教情報サービスの管理のための措置」が出され、新たな規制の下で、すべての外国の組織および個人は、中国で宗教コンテンツをオンラインで広めることを禁止されることになった。
チベット自治区においても、効果的に実施されるだろう。この規制措置の第17条には、「オンラインで宗教活動を行うことを組織してはならず、仏を崇拝する、香を焚く、叙階、奉仕、ミサ、洗礼などの宗教儀式を次のような手段ーテキスト、画像、音声、またはビデオをライブまたは録音で放送してはならない」とし、違反者には、地方政府、公安、国家治安機関などによって、罰則が科せられる、としている。
またこの規制措置は2022年3月1日から発効するとされており、過去にビデオで放送または記録された宗教活動に従事するチベット人に対しても取り締まりが行われる可能性があると、と懸念する声も関係者の間に出ている。
(筆者のTsering Dolma は、インドにある中央チベット政府の研究機関 Tibet Policy Institute,のリサーチフェロー。デリー大学で仏教の研究でPh.D.を取得している)
(2021.8.20 カトリック・あい)
駐ギリシャ・バチカン大使、韓大輝大司教 (Photo: AFP)
駐ギリシャ・バチカン大使の韓大輝 (Hon Tai-fai)大司教がこのほど米カリフォルニア州にあるイエズス会経営のサンタ・クララ大学で開かれた米中カトリック協会の国際会議で講演し、中国共産党が1949年に政権を取って以来これまで70年余の中国のカトリック教会の歴史は、三つに分けることができる、と語った。
韓大司教は、1950年10月に香港で生まれ、1982年に香港で司祭叙階、ロンドン大学で哲学を学び、教皇庁立サレジオ大学で神学博士号を取得。サレジオ会中国管区(中国本土、香港、マカオ、台湾を担当)に所属して香港神学校で神学を教え、教皇庁神学アカデミー会員、国際神学委員会委員を経て、2010年にベネディクト16世教皇が大司教に任命、2010年からバチカン福音宣教省次官を務めた後、教皇フランシスコによってギリシャ大使に任命された。
この間、韓大司教は2011年3月に、中国天主教愛国協会による司祭叙階について、「分裂… 共同体全体に大きな苦痛をもたらす… 共同体は傷を負い、血を流している。なぜなら、教皇の権限を欠いた、正当な司教の任命はありえないからです」と述べた。さらに「党の意向に反対するものは、隔離され、政治的な再教育を強制されている」とし、中国の司祭、司教たちは気骨を見せ、教会一致への愛と過去数十年の信仰への英雄的な証しに対する政府の圧力に抵抗せねばならない、と訴え、当時、投獄されていた2人の司教の解放を求めたことがあった。
以下は、カトリック系有力メディアUCANewsがCatholic News Service提供として報じた韓大司教の米中カトリック協会の国際会議における講演の要旨。
中国のカトリック教徒と共産党指導者の間で、共産党が政権を握った1949年から現在に至る「ドラマ」には3つの段階がある。
現在の第3段階は、2013年からの「縮小、混乱」の段階。信徒たちは非常に混乱し、「孤立している」と感じている。
ひるがえって、第1段階は共産政権発足の1949年から1980年まで続いた「抵抗と分裂」の段階。カトリック教会は、中国政府・共産党が認める教会と、政府・党の規制・管理を拒む”地下教会”に分裂させられ、多くの教会指導者が、この段階の早い時期に逮捕された。「それが共産党政権の狙いだった。信徒たちを分裂させることで、統治をしやすくしたのです」。政府・党はバチカンの「帝国主義」を嘲笑し続け、”地上教会”には「飴」を”地下教会”には「鞭」を使い分けた。
この段階で、バチカンは、「中国との外交関係を正常化しよう」と努める一方で、「カトリック教徒が聖座に忠実であり続けることを奨励し、聖座から離れた教会はカトリック教会になることはできない」との方針を堅持した。
1980年から2013年までの第2段階は、「和解によって成長する教会のため」の段階。バチカンと中国は互いに和解的な態度を取り始めた。中国政府が宗教団体に対する政策を維持しつつ、改革開放を奨励する一方、バチカンは、中国政府との対話を始め、”地下教会”と政府認可の”地上教会”の和解を促進しようと試みた。
2013年3月にバチカンと中国政府・共産党の歴史的な出来事が相次いだ。フランシスコが3月13日に教皇に選出され、翌14日に習近平が国家主席に選出されたのだ。両指導者は祝辞を交換し、第3段階が始まった。
習国家主席は「”強い中国”の夢」を語り、習政権の下で”地下教会”にさらなる”棒”を振るい、”親中国化”の”地上教会”にはさらなるニンジンを与えた。
一方のバチカンは、これまでに確立した中国政府との協議の体制を放棄することで“失明”し、「バチカンに見捨てられた、と(”地下教会”の司祭、信徒たちを)失望させた」。「(中国の”地下教会”の信徒たちに)光を投げかける代わりに、教会の教えと、多くの信徒たちの殉教の光を消してしまった」。
以後、現在の新型コロナウイルスの世界的大感染に至る期間のドラマは、「教会と国家、信仰と政治、良心と権力の間の緊迫したせめぎ合い」として展開されている。
「2018年9月の中国における司教任命に関するバチカン・中国暫定合意(詳細はいまだに公表されていない)と、これを受けた同年12月にバチカンが破門していた司教2人をそれぞれの教区長として認めた後に、新型コロナウイルスの世界的大感染が起こった」。この直前、教皇が司牧指針を発表して、司教、司祭が中国政府に登録するかどうかの判断は、それぞれの良心に従ってなされるべき」との方針を示した。そして、コロナ大感染。バチカンと中国の協議は中断している。
この緊張したドラマで演劇で、どのような人物に注目しようとするか?風にそよぐ葦のような人物か?それとも、どのような状況でも頼りになる人物か?私は、後者を好む。彼らの何人かは血を流した殉教者であり、他の人々は自らの命をもって証した人々だ」。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)