・チベット自治区でも宗教活動規制が強化ー”オンライン規制”も中国全土に(BW)

 宗教の自由をさらに制限するために新しい規制が導入され、仏像は破壊され、僧侶と尼僧は僧院から追い出されている。

ハマリン・ヒード寺院から強制退去させられた修道女たち。 mingdemedia.orgから。

 Bitter Winterがすでに報道しているが、歴史的にはチベットの一部だったが現在は中国四川省に取り込まれているカムで先月、高さ約30メートルの仏像とその周りの45台のマニ車が破壊された。

 ダラムサラを拠点とする Tibet Watchが情報筋の話として伝えるところによると、仏像名との取り壊しは2021年12月12日に始まった。中国国内では、過去数年間に、当局の手で、約30メートルのBoddhisattvaの像を含む、浙江省のいくつかの仏像が破壊された。 2019年には、吉林省の長春市にある普門寺の高さ32メートルの青銅製の4面観音像が「高すぎる」として破壊された。

 情報筋はBitter Winterの取材に、「彼ら(中国共産党の官僚)は、誰もが仏教を信じ、党を信じないことを恐れています。この春、当局は、寺院の9つの風鈴塔がチベット様式を具現化しているとして、取り壊すように命じました」と語った。信徒によると、中国政府はチベットの特徴を持つものをすべて禁止している。

Nuns forcibly evicted from Kharmar Monastery in Tibet.

 2021年8月、チベット仏教が実践され説教されている甘粛省・臨夏回族自治州のKharmar寺での”事件”がソーシャルメディアなどで伝えられた。そのビデオでは、僧侶や尼僧が民間人の服装をした数人の男によって強制的に寺から追い出され動画がはっきりと映っている。この不幸な事件は、Radio Free Asia (Tibetan) と New Tang Dynasty Televisionで中国内外に広く伝えられた。

    Nuns forcibly evicted from Kharmar Monastery. From mingdemedia.org.

 当局が強硬策に出たのは、新型コロナ感染に苦しむ人々のために同寺が30万元を寄付したが、中国共産党・政府の管理統制下にある「中国仏教協会」や地方政府にそれが回されるのを拒否したためだ、という。

 中国の習近平主席は2013年11月に就任以来、チベット自治区、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区で、宗教活動の規制に踏み切った。だが、現場で厳しい規制が実際に行われていることは、これらの地域での厳しい情報統制、報道規制のために、外部にはほとんど伝えられていない。

 2018年に中国政府は「信教の自由の保護に関する中国の政策と慣行」というタイトルの白書を発表しました。しかし、このタイトルは誤解を招くもので、その内容は、宗教団体に中国共産党の指導を受け入れ、中国の特徴を備えた社会主義の道をたどるよう、命じるものだった。

 白書には次のように書かれている。「中国共産党と社会主義システムの指導に従うよう宗教団体を導く。中国の特徴を備えた社会主義の道を支持し、それに従う。中国の文脈で宗教を発展させる。社会主義の核心的価値観を受け入れる。中国の素晴らしい伝統を引き継ぐ。宗教的な教えと規則を中国の文化と統合する。地方政府の法律および規制を遵守し、法律に従って地方政府の行政を受け入れる」

 この指示は、中国のすべての宗教団体に適用される。白書はさらに、「2017年に開催された中国共産党第19回全国代表大会での習近平主席の報告によると、中国は宗教問題に関する党の基本政策を完全に実施し、中国の宗教は中国籍でなければならないという原則を支持し、宗教が社会主義社会に適応できるように、宗教に積極的な指導を行う」

 中国共産党が決めた「第14次五カ年計画」(2021〜 2025年)も、次のように述べています。「我々は、宗教活動に関する党の基本的な指導原則を実施し、中国の宗教の中国化の方向性を遵守し、宗教と社会主義社会の相互適応を積極的に指導する」。要するに、中国での過去数年間の動きから、チベット仏教を含む中国における諸宗教の中国化が進んでいる、結論付けられるのだ。

  一か月前の2021年12月3日から4日、北京で「宗教問題に関連する作業に関する全国会議」が開かれた。李克強・首相が主宰し、上級幹部たちが出席した。会議で、習主席が、宗教の中国化の推進を強調し、オンラインによる宗教活動の規制・管理を強化し、「中国における宗教の健全な継承に影響を与える顕著な問題」に効果的に対処するよう指示した。

 新型コロナウイルスの大感染が始まって以来、ほとんどの活動は世界中でオンラインで行われるようになっており、そうした流れの中で、このような指示がだされたものだ。これを受けて2021年12月20日に「インターネット宗教情報サービスの管理のための措置」が出され、新たな規制の下で、すべての外国の組織および個人は、中国で宗教コンテンツをオンラインで広めることを禁止されることになった。

 チベット自治区においても、効果的に実施されるだろう。この規制措置の第17条には、「オンラインで宗教活動を行うことを組織してはならず、仏を崇拝する、香を焚く、叙階、奉仕、ミサ、洗礼などの宗教儀式を次のような手段ーテキスト、画像、音声、またはビデオをライブまたは録音で放送してはならない」とし、違反者には、地方政府、公安、国家治安機関などによって、罰則が科せられる、としている。

 またこの規制措置は2022年3月1日から発効するとされており、過去にビデオで放送または記録された宗教活動に従事するチベット人に対しても取り締まりが行われる可能性があると、と懸念する声も関係者の間に出ている。

(筆者のTsering Dolma は、インドにある中央チベット政府の研究機関 Tibet Policy Institute,のリサーチフェロー。デリー大学で仏教の研究でPh.D.を取得している)

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

 

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2022年1月12日