(2025.6.18 Bitter Winter Marco Respinti)
(写真右・新疆 非鉄金属産業グループにおけるベリリウム製錬 。報告書より )
(写真右・新疆 非鉄金属産業グループにおけるベリリウム製錬 。報告書より )
イベントの冒頭、党統一戦線工作部の副部長で国家宗教局長の陳瑞鳳氏が演説、続いて、中国仏教協会会長の顔冉氏、中国道教協会会長の李光復氏、中国イスラム協会会長の楊発明氏、中国天主愛国協会会長のジョセフ・リー・シャン北京大司教、中国基督教会三自愛国運動委員会委員長の徐暁紅氏らが登壇した。 参加者たちは、宗教の「中国化」と「厳格な統治」を学び、テーマ別の文章作成、特別講義への出席、現場での指導への参加、グループ討論などが行われた。
「中国化」とは、中国共産党のイデオロギーに、宗教的信念と実践を”適応”させることにある。「厳格な統治」とは、統一戦線工作部が、五大公認宗教の指導者たちを信用せず、現地の宗教団体の活動に直接介入することを意味する隠語だ。
そして、「中国の伝統文化」とは、中国共産党の公式マルクス主義のフ
ィルターにかけた伝統であり、内戦や毛沢東時代の「赤い文化」、習近平国家主席の教えを含む。議論されたテーマを見ると、参加者が「中国の優れた伝統的な中国文化」に関わることで、「中国共産党の理論、指針、政策を真摯に学び、実践する 」努力が含まれていることが明白。
ある参加者はBitterWinterの取材に対して、「この研修で何か新しいことを期待してはいけない。彼らは宗教を中国化し、党に従順に従うべきだということをずっと繰り返している」と述べた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
今、中国の1200万人のカトリック信者は、新教皇レオ14世が北京との関係をどのように扱うかを注視している。
「新しい教皇、レオ14世の選出に感激し、喜んでいます」-中国の微信(WeChat)アカウントで教皇選出のライブ中継を見た中国のある司祭は、「しかし、正直言って、私は彼のことをよく知らないんです。1990年代にオハイオ州で神学を学んだ時、彼の名前を聞いたことはあるはずなんですが…」と語った。
そして、「自分にとって新教皇が米国人かどうかは関心がない。読んだり聞いたりしたところでは、彼は謙虚で、オープンで、深い精神性を持っているようです。それは普遍的な教会にとっても、中国のカトリック教徒にとっても良いことだと思います」と語ったが、80年近く国交を断絶している北京との今後の関係について、早々に結論を出さないように新教皇に希望した。
例によって、中国政府が何らかの公式発表をするまでに約1日を要した。「新教皇の指導の下、バチカンが中国と建設的な対話を続け、相互の関心事である国際問題について綿密な意思疎通を行うことを望む」と、外交部の林建報道官は5月9日に述べた。これは中国外務省の標準的で慎重な声明だが、外務省はバチカン問題を扱っていない。(「カトリック・あい」注・中国国内の宗教活動は共産党統一戦線工作部が統括しており、バチカンとの関係も実権はそこにある)。バチカン問題に関する”機密ファイル”は、習近平・国家主席が直接、監督している。
中国全土のいくつかの教区で暗号化されたメッセージ・アプリを介して連絡を取ったところ、あるカトリック信者は、個人的な経歴や教区の経験によって期待は異なるものの、新教皇レオ14世についてほとんど知らなかったことを認めた。北京に住む女性のカトリック信徒は、新教皇決定について 「とてもうれしいし、満足している」というだけで、詳しい言及を避けた。
中国共産党の圧力とバチカンの姿勢の両方をうまく操ることに長けた ”進歩的 ”な教区で30年間奉仕してきた、リ神父(仮名)にとって、重要なのはレオ14世の開放性だ。「教皇がオープンマインドであり続ける限り、ローマと北京の関係は改善されると信じている」。
また、新教皇に、より確固とした姿勢を示すよう期待する声もある。上海の著名なカトリック家系の信徒で、5世代にわたって信仰を持ち続ける知識人のシー・ウー(仮名)は、新教皇に「ヨハネ・パウロ2世のように、十字架と神への揺るぎない忠誠を守ってもらいたい」と熱く語った。
現在70代のシー・ウーは、「政治的弾圧を恐れず、自分の考えを自由に話すことができる」と感じており、「教皇が北京からの圧力に屈したり、共産党に対して譲歩や妥協をしないことを望んでいる」と述べ、司教任命に関するバチカンと中国当局の暫定合意については、「さまざまな教会筋によると、教皇は中国における司教指名の最終的な権限を保持している」との確信を強調した。
この暫定合意は、党に服従せず、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教に関わるいくつかのケースなどの解決に役立っているようにみえるが、中国の1200万人のカトリック信者の間では依然として不安が続いている。「日常生活では多少の柔軟性が認められていても、私たちは常に、共産党と当局の統制と監視下に置かれて続けている」と、中国北部の教区の修道女で海外留学経験もあるシスター・マリー(仮名)は語った。
中国共産党の管理・統制下にある中国天主愛国協会と司教協議会は、教皇レオ14世に対して非常に慎重な祝賀メッセージを発表した。だが、少なくないカトリック信者たちは、新教皇が引き続き自分たちの不安定な状況を真剣に受け止め、政治的に微妙な環境の中で信仰深く生きる方法について明確な指針を示してくれることを望んでいる。
チャン(仮名)によれば、自分たち中国のカトリック信者の課題は「キリストとバチカンに忠実でありながら、共産党の要求に屈することなく、善良な中国市民であり続けること」だという。それは、中国のカトリック信者が何十年にもわたり続けてきた”バランス感覚”の所作である。
教皇レオ14世のもとで、バチカンと中国の関係がどのように進んでていくかを判断するのは、まだ時期尚早だ。チャンは、「レオ14世は中国の専門家ではない。レオ14世はバチカンの司教省長官だったが、実際に中国での司教任命を担当したのは国務長官のパロリン枢機卿だった。つまり、バチカンの対中国政策のキーパーソンだったのだ」と指摘する。
パロリン枢機卿が国務長官に留任するか否かが、バチカンと中国の関係の次のステップを決めるかもしれない。2023年に故教皇フランシスコによって枢機卿に任命されたイエズス会士のステファン・チョウ枢機卿が、ローマと北京の仲介役として今後重要な役割を果たす可能性がある、と多くの香港の関係者は考えている。「対中政策について、レオ14世がどのような方向に進みたいのか、これからの動きを見なければならない。新教皇は教会法の専門家だが、教会法は、いかなる国家主権も司教任命に干渉すべきではない、と明確に規定しているということもある」とチャンは述べた。
もしレオ14世が、中国における司教任命などについて教会法を厳格に適用するつもりなら、中国との緊張関係は、すぐそこまで来ているのかもしれない。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(写真右・北京の春宮(チュン・グン)にある国家宗教事務局の建物)
4月1日、国家宗教事務局は、中国における外国人の宗教活動に関する新たな包括的規定を定めた第23号令を公布した。
第23号令に盛り込まれた内容のほとんどは、すでに施行されている規定を、さまざまな規則に分散して記載したものだ。中国の宗教管理に関する一般的な原則は、5つの公認宗教が中国共産党統一戦線工作部の管理下で管理する宗教活動のみを合法とする、というもの。
政府が管理する宗教は、定義上「自治」であり、外国の団体と定期的な関係を持つべきではない。中国における外国人の宗教活動は、中国共産党が管理する宗教官僚、統一戦線工作部、または党が公式代表団を招待し、広報や宣伝を目的としている場合を除き、敵対的とされ、一般的に奨励されず、厳しく規制されている。
おそらく、中国国外やその他のアジア諸国からのキリスト教徒の訪問、あるいは政府官僚が関与しない中国国内と国外の仏教寺院や道教寺院間の交流が原因で、この新しい規制は、既存のすべての基準をまとめ、その施行を容易にすることを目的としている。
新しい規定といっても、それほど目新しいものではないが、もし何かあるとすれば、外国人の宗教活動への招聘依頼(5つの公認宗教からの依頼のみ受理)には、多くの書類を添付し、当局の承認を事前に十分に得なければならないという、より詳細で厳格な規定が盛り込まれていることだ。
また、中国寺院で外国人によって時折行われる宗教的な活動や黙想会は、観光収入の源となっているものの、事前に承認を得て、関連する公認宗教の代表者による監督下に置かれねばならない。
海外からの書籍や宗教関連の物品の持ち込みは厳しく制限されている。外国人が中国で説教を行う場合、たとえ規定に従って正式に招待されたとしても、事前に「主な内容」を中国当局に提出し、承認を得なければならない。
この規定では、5つの公認宗教の枠外にある宗教形態についても言及。明白に外国の宗教家は、宗教間対話のイベントを除いては、通常、公認宗教の官僚に招待されることはない。ヒンドゥー教やユダヤ教などの世界宗教は、5つの公認宗教ではなく、中国での存在感は小さい。また、5つの公認宗教以外の多くの新宗教運動も存在するが、その信者が中国で宗教活動を行うためには、中国に対して友好的であることを公に表明している場合を除いて、この規制により中国への入国が極めて困難になっている。認められる場合も、多くの書類手続きが必要だ。
| 中国で政府・共産党管理下の宗教団体による重要な会議が開かれ、習近平・政権の最新文書を説教や学習会で強調することが呼びかけられた。
中国の全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)の合同会議が3月4日から11日まで北京で開催された。不安定な国際情勢を背景に、習近平・主席は、両会で中国の経済と軍事力の強化に重点を置いた。発表された法案のなかには、民族の団結強化、分離主義との闘い、および全地域における標準中国語の使用を定めるものもあった。
会議終了から2日後の13日、北京で全国宗教団体連合会議が開かれ、カトリックの沈斌・上海司教(写真右)が議長を務めた。
沈司教は2023年4月、バチカンに通知することなく、(中国政府・共産党によって)上海司教に任命された。これは、2018年になされ、今も更新されているバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意に明らかに違反する者だったが、バチカンは、その3か月後の同年7月、いわゆる「正規外の任命」を認めた。
沈司教は昨年10月のバチカンでの世界代表司教会議(シノドス)第18回総会にも招かれ、「中国のカトリック教徒は完全な信教の自由を享受している」とする演説をした。彼は中国カトリック司教会議の議長も務めているが、この組織は中国共産党の公認だが、バチカンは認めていない。
全国宗教団体連合会会議では、国内の宗教を管理・統括する中国共産党の統一戦線工作部の副部長で国家宗教事務局の局長でもある陳瑞峰(写真左下)を始め、その管理下にある宗教団体の指導者たち、演覚(中国仏教協会)、李光富(中国道教協会)、楊馳明(中国イスラム協会)、李山(中国愛国カトリック協会:北京大司教)、徐暁紅(三自愛国教会)なども演説した。
中国共産党は、五つの公認宗教団体の布教・学習活動を調整するために、全国宗教団体合同会議を開いている。「厳格な統治」と呼ばれる政策の下、統一戦線工作部による統制がますます強まっており、会議は、参加宗教団体に対して、「両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)のテキストと精神」と習主席の演説をもとに、布教や学習を行うよう命じた。
しかし、同会議が強調したかったのは、「すべての聖職者および宗教団体が、党の中央委員会の決定と取り決めに沿って、思想と言動を一致させること」だった—説教や研究グループは、「宗教活動に関する党の基本原則に従い、社会主義の中核的価値観を擁護し、中国文化を統合し、国内の宗教の中国化を促進し、宗教事務の厳格な管理を強化すべき」とし、政府・共産党が管理する宗教団体は、中国共産党の”教義”を説くべきであり、その中には「両会のテキストと精神」も含まれると告げられ、体制の代弁者としての役割を果たすよう求められた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(2024.10.22 Crux Managing Editor Charles Collins)
英国貴族院の有力カトリック議員、デイビッド・アルトン卿がこのほど、「中国で迫害されている10人のカトリック司教」と題する声明を発表、「中国共産党の統制に従う中国天主愛国協会に反対する中国本土の司教10人を標的に虐待している」と非難した。
バチカンは、2日から始まった世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期に中国本土から司教2人が参加させ、さらに総会開催中に、中国国内での司教任命に関する暫定合意の三度目の期間延長を発表しているが、中国国内でカトリック教徒や他の宗教信者が迫害されていることには事実上、目をつぶっている。
アルトン卿によると、迫害を受けているのは、ビンセンシオ・グオ・シジン司教、アウグスチヌス・クイ・タイ司教、ユリアヌス・ジア・ジーグオ司教、タデウス・マー・ダキン司教、ペトロ・シャオ・ジュミン司教、メルキオール・シー・ホンジェン司教、ヤコブ・スー・ジミン司教、ヨゼフ・シン・ウェンジ司教、ヨゼフ・ゼン・ゼキウン司教、ヨゼフ・チャン・ウェイジュ司教の10人。
彼らのうち7人は正当な手続きなしに拘留され、うち何人かは数年または数十年にわたって継続的に刑務所に入れられ、別の司教たちは2018年のバチカンと中国の司祭任命に関する暫定合意以来、最大6回も繰り返し拘留されている。
卿は、彼らを「バチカンが『忘れてほしい』と思っている10人の都合の悪い司教」と呼び、「なぜ彼らはそのような措置をうけているのか。それは、彼らに何を信じ、考え、何を言うべきかを指示する中国共産党の”権利”を受け入れないからだ」と語り、米国の保守系有力シンクタンク、ハドソン研究所の信仰の自由センターのニーナ・シェア所長の記事を引用して、中国共産党が10人の司教を「正当な手続きなしに無期限に拘留、失踪、治安警察による無期限の捜査、教区からの追放、脅迫、監視、尋問、いわゆる再教育など司教の職務に対するその他の妨害」にさらしていると批判した。
シェア氏は記事で、2015年に中国共産党による宗教の中国化政策が本格化して以来、「中国のカトリック教会は、毛沢東時代以来最大の弾圧を受けている」とし、「中国とバチカンの暫定合意は、『地下教会』と呼ばれることの多い、中国天主愛国協会への”良心的兵役拒否者”への配慮をせず、宗教的迫害にも対処していない。バチカンは、内容が秘匿されているこの暫定合意を『司教任命の権力分担の取り決めにのみ焦点を当てている』としているが、中国政府・共産党はこれを利用して国内の司教たちに中国天主愛国協会への加入を迫っている」と指摘。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
*ただし、中国のカトリック教会でも、政府・共産党への忠誠を拒み、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教、司祭、信徒に対する、政府・共産党の対応は逆に厳しさを増しており、カトリック教会に限らず、中国国内のあらゆる宗教団体を習近平主席の思想に従わせる〝中国化”は年々厳しさを増している(「カトリック・あい」)
(編集「カトリック・あい」)
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)