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・偽りの「仏教外交」—国家統制に従属する中国とロシアのが連帯(BW)
中国とロシアの自国政府に忠実な仏教団体の代表たちが、ロシア東シベリアのブリヤート共和国の首都、ウランウデで8月に開かれた「国際仏教フォーラム」に参加し、プーチン大統領自身がメッセージを送った。(写真右は、ウラン・ウデのフォーラムで講演する中国仏教協会の胡雪峰副会長=「 微博」より)
ロシアと中国の国家公認の仏教団体はいずれも信頼性に問題を抱えている。 昨年、Bitter Winterが報じたように、当時のロシアの住むカルムイク人(モンゴル系民族の一部族)仏教徒の最高指導者、テロ・トゥルク・リンポチェが2022年10月、ロシアによるウクライナ侵略戦争を非難。「ウクライナ側が正しい」と述べ、当局による逮捕の危険が出たため、モンゴルに亡命し、そこで、徴兵を嫌って国境を越えて来た何万人ものロシアの仏教徒の食事の世話などをしている。
彼は、1992年以来カルムイク人の仏教指導者であり、おそらくロシア国内の仏教徒に最も尊敬されている人物だったかもしれない。 プーチン政権による彼への激しい批判はロシア国内の仏教徒を大きく動揺させている。
中国では、政府・共産党の統制下にある中国仏教協会では、2018年に、当時、会長で北京龍泉寺の住職だった雪成師が尼僧6人を性的に虐待した、との疑いをかけられ、辞任を余儀なくされて以来、動揺が収まっていない。
チベット仏教でも、指導者のパンチェン・ラマ10世が1989年1月に中国チベット自治区で亡くなった後、後継者の選定者たちが1995年5月にゲンドゥン・チューキ・ニマという6歳の男児をパンチェン・ラマの転生者としたが、チベット自治区当局はこれを認めないばかりか、拉致、行方不明にした。当局は同年11月にやはり当時6歳のギェンツェン・ノルブをパンチェン・ラマの”転生霊童”とし、北京政府が彼をパンチェン・ラマ11世とすることを認めた。30代になったギェンツェン・ノルブ師は現在、中国仏教協会の副会長を務め、中国共産党の“傀儡”と見なされている。
(写真左は、フォーラムでの小グループ対話)
中国とロシアの国家公認の仏教団体”は、いずれも国際的な仏教組織で活動しており、僧衣をまとった代表者を世界中に派遣し、自国政府の仏教など宗教政策の擁護に努めている。8月の「国際仏教フォーラム」に参加した 中国とロシアの”公的仏教団体”がこの取り組みに協力しているのは当然のことだ。中国からは中国仏教協会の胡学峰・副会長をトップに6人が 参加した。
フォーラムでは、冒頭にプーチン大統領からの歓迎のメッセージが読み上げられ、 ブリヤート共和国の大統領が歓迎の挨拶をした。そして、胡副会長など中国、ロシア両国の代表が「現代化された仏教」を称賛し、それぞれの政府への忠誠を表明した。 ロシアの参加者は、ロシアのウクライナ軍事侵略を「西側の侵略とナチズムとの戦い」とし、この戦いで多くの命が落とされているロシア人仏教徒の”愛国的取り組み”を祝福。中国の代表団は、「我が国では、信教の自由が謳歌されている」と説明した。両者は互いの主張を笑いを持って受け止めることをしなかったが、中国とロシアの”国営仏教”が国際的な仏教組織に浸透していることは笑い事ではない。 それを阻止せねばならない。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
・習近平はなぜ、新疆ウイグル自治区での演説で「”苦労”して勝ち取った安定」と言ったのか
Xi Jinping speaking in Urumqi on August 26. Screenshot.
中国共産党の”専門用語”を解釈すると、新疆ウイグル自治区の首都ウルムチでの習主席の声明から浮かび上がってくるのは、「大量虐殺は継続すべきだ」ということだ。
先月、新疆ウイグル自治区を訪問した際、習近平は演説の中で、この地域の現状を「苦労して勝ち取った安定」と表現したが、プライドと泣き言の匂いがするこの表現の中身については明確にしなかった。
彼が演説で言及した「苦労」とは何だろうか? 彼が”ウイグル問題”を解決するために選んだ手段は「強制収容所」だった。 中国当局は、「2017年以降、この地域での暴力行為の発生はゼロになった」と誇らしげに、繰り返し主張してきた。その通りだとすれば、それは300万人のウイグル人(そのほとんどが兵役年齢の男性)を投獄することで達成されたことになる。
習金平は、300万人を強制収容することの経済的、技術的、精神的コストを事前に検討し、それを許容できるものとみなしていたようだ。「 技術コスト」についての州の判断は正しかったかも知れない。
新疆ウイグル自治区で長年にわたって整備されてきた軍と警察の力量からして、10万人の武装人員によって300万人の非武装の人々を収容所に送り込むことは不可能ではない。「 法と良心」を脇に置いて、起こり得る危険を冒すだけで十分だ。多くの収容所が設立され、整備されている間、ウイグル族から激しい抵抗もなかった。
この地域の天然資源やビジネスの戦略的立地を考慮すれば、強制収容所の建設と運営にかかる経済的なコスコは問題にならない。ウイグル人実業家を強制収容して、その財産を没収し、収容所に入れた人々から食費や罰金を徴収すれば、”黒字”ニさえなっているかも知れない。
もっとも、他にもコストがかかるものがある。強制収容所の非人道的な運営は、将来の世代の安全に不安を持つ、この地域に住む漢民族への反発を招く可能性がある。今回の新疆ウイグル自治区訪問の際、習主席が漢民族の住民から反発や批判を受けることはなかったが、同自治区のヤルカンド県の共産党書記が、強制収容していた7000人を、中央の許可を得ずに釈放して「重大な規律違反」として有罪の判決を受ける、という事態が発生している。この自治区に住む漢民族は、中国の現体制の受益者ではあるが、この自治区の住民として自らの権利を主張することもない
では、習主席は、どのような「苦労」を経験した,と言うのだろうか。考えられるのは、強制収容所問題で、海外、国際社会から多くの批判を受けてきたことだろう。過去5年の間に、北米と欧州の22の政府と議会は、中国のウイグル政策を「大量虐殺であり、人道に対する罪である」と定義した。
これに中国は反発し、西側諸国と政治的、経済的な制裁のぶつけ合いと招いた。この問題が国連で取り上げられないように、経済力、外交力を駆使して、途上国を味方に付けようとした。 世界中で900以上の非政府組織(そのほとんどが偽物)を創設し、動員することで、国連が昨年作成した「新疆報告書」を公表しないよう圧力をかけた。
ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官が2022年5月に中国を訪問した。だが、もともと新疆ウイグル自治区を視察する予定だったのが”友好訪問”に変更したうえ、習主席との会談では「教師面して偉そうに他国を説教するべきでなく、人権問題を政治化してはならない」と“クギ”を刺され、帰国前の記者会見では、「反テロリズム」や「脱過激化」など中国政府が使う表現をそのまま使う一方で、「ウイグル人大量虐殺」問題には一切触れず、「中国のプロパガンダに加担した、として国際人権団体から批判された。
もっとも、彼女は、国連人権高等弁務官を昨年辞任する直前に、ウイグル報告書を発表し、「大量虐殺」という言葉こそ使わなかったが、本文中に、読者から「実際に大量虐殺があった」と判断されるような表現がされたいた。
イスラム諸国を通じてウイグル人虐殺を隠蔽しようとする中国の取り組みは、時として予期せぬ結果をもたらす。中国によって事前に準備された「新疆ウイグル自治区訪問」に参加した一人でアルバニア人のイスラム研究者オルシ・ヤジチ氏は「中国の友人たちよ、あなた方がやっていることは『職業訓練』ではなく、『拷問』だ」と、世界中にYouTubeで所見を述べた。
最後に、おそらくアジアにおける中国の最も近い”パートナー”、パキスタンの政治家イムラン・カーン氏は「ウイグル問題については、われわれは西側ではなく、中国のバージョンを信じている。われわれは、中国の助けが必要だからだ」と述べた。この言葉は、中国が、ウイグル人虐殺問題についてイスラム諸国を黙らせるために、経済的な強迫を加えていることを暗に認めたものであり、中国政府・共産党にとって、欧米からの批判よりも大きなダメージだ。
言い換えれば、中国は貧困国や独裁国家を引き連れることで”数的優位”を築き、それによって、国連におけるウイグル問題の議論を阻止するのに成功したものの、このようなやり方自体が、「中国がウイグル問題に関して自信を無く
している」ことを露呈させているのだ。習近平は新疆ウイグル自治区訪問の際の演説で”苦労”という言葉を使うことで、そうした問題を暗に認めた、と言えるだろう。国連の大多数の加盟国は、この問題の真実を公に認める立場にないが、それが何なのかは知っている。
中国共産党がこのまままウイグル人虐殺問題を隠ぺいし続けることで、どれほどの経済的コストを払うことになるかは、まだ分からない。この問題を隠ぺいするために、ベラルーシ出身の国連官僚、国連の「一方的強制措置と人権に関する人権理事会」討議報告の報告者、アレナ・ドゥーハンに渡したのが20万ドルだったことから考えれば、この問題に中国が世界中でどれだけの金を費やしたかが想像できるだろう。
(写真右は、アレナ・ドゥーハン)
真実と戦うのは容易ではないが、 嘘によって得た{誤った尊敬}を維持するのも、非常に難しい。中国当局者らは嘘をでっち上げ、他人にそれを信じさせることにうんざりしており、このことは経済的コストよりも深刻である。これは、習近平の講演での「苦労して勝ち取った安定」についての言及で明らかになった泣き言だ。そうした解釈を入れて「苦労して勝ち取った安定」と語った彼の真意は次のようになる。
「われわれは、大量虐殺によってこの安定を維持し、栄光を汚し、イメージを汚し、時には誇りさえ、汚してしまった。 このように、すでに大きな代償を払ってきている。 後戻りはできない。われわれは結果に固執し、大量虐殺を続けることを躊躇すべきではない」。
この”読み”の正確さは、習近平のウルムチでの演説にあった次のような指示によって確認されている-「 脅威を主要な発生源から排除するためのメカニズムを改善する… 」「”テロ”と分離主義に対する戦いを続ける… 」「イスラム教の中国化を続ける…」「 ウイグル人に 中国の文化・思想を受け入れさせる…」「ウイグル人を中国の地方に移住させ、ウイグル地域への中国人移民の再定住を加速する…」
これらの指示はすべて、虐殺禁止国際条約の別の条項に違反している。 実際、それらは「世界が何と言おうと、大量虐殺を継続せよ」という命令なのだ。 習近平が講演で語った「苦労して勝ち取った安定」は、本質的にはウイグル族虐殺継続の決定を正当化するものである。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
In August, a New Crackdown on House Churches in Guangdong(BW)
In August, Elder Zhu Longfei of Shunde’s Shengjia Church was detained, Guangzhou’s Huajing Church was banned, and Meizhou’s New Hope Church was raided and sealed.
by Qi Junzao

The authorities in China continue to try, based on indications coming from Xi Jinping himself at the 2021 National Conference on Work Related to Religious Affairs, to compel house churches to joi
n the government-controlled Three-Self Church—or else. A campaign against independent house churches has been conducted this month of August in Guangdong province.
Zhu Longfei, an elder of the Shengjia Church, located in the Shunde District of the prefecture-level city of Foshan, Guangdong, was detained on August 8. This is part of the calvary of Shengjia Church, which seems to have no end. The Shunde church was repeatedly “invited” to join the Three-Self Church and refused.
Devotees soon learned that their refusal came with a p
rice. Their pastor Deng Yanxiang and Wang Weicai, a businessman who had left his professional activity to become a full-time church co-worker in 2016, were increasingly harassed by the police.
On May 24, 2023, the Shengjia Mutual Learning and Mutual Aid Center, i.e., the Bible study training class of the Shengjia C
hurch, was raided by dozens of agents of the national security, the Shunde District Police, and the Ethnic and Religious Affairs Bureau. The church teaching and study materials were confiscated, and the church was sealed. Pastor Deng Yanxiang, Wang Weicai, and church workers Zhu Jianglong and Sister Zhu Qiaoling were detained. On May 25, all four were charged by the Shunde District Police with “illegal business operations,” now a popular trumped-up charge against house church leaders.
On June 28, they were formally arrested by the Shunde District Procuratorate. Yet, the Shengjia Church continued to operate, led by Elder Zhu Longfei and other co-workers. As mentioned earlier, on August 8, Zhu Longfei was also detained by the Shunde District Police, accused himself of “illegal business operations,” and taken to the Nanhai District Detention Center in Foshan City, Guangdong, where the other leaders of the Shengjia Church had also been jailed.
On August 19, the Civil Affairs Bureau of Tianhe District, one of the eleven districts of Guangdong’s capital, Guangzhou City, issued a notice to ban Guangzhou Huajing Christian Church.
On August 20, 2023, as reported by local devotees through social media, the local police raided New Hope Church in the prefecture-level city of Meizhou, Guangdong, a city famously connected with the Hakka ethnic group. Two preachers were detained, and the church was sealed.
There is no peace for house churches, unless they give up and agree to join the Three-Self Church.
(評論)中国の一方的な決定から3か月遅れで教皇が上海司教任命―誰が勝ち、誰が負けたのか(BW)
バチカンが、中国政府が両者の司教任命に関する暫定合意に反し、バチカンの同意を得ずに行っていた司教人事を受け入れた。だが、この行為は、中国に“clandestine church(秘密教会=中国共産党の管理・監督下に入ることを拒否するカトリックの地下教会)”が依然として存在することをバチカンが確認したことにもなった。(右の写真は沈司教= Weiboより)
今年4月4日、それまで海門教区長だった沈斌司教が、中国共産党によって上海教区長に選任された。 バチカンはそのことを、その日の朝、「メディアから知った」と公式に言明した。 2018年に発効し、2020年と2022年に更新されたバチカンと中国の暫定合意の内容は、いまだに公開されていないが、中国国内のカトリック教会の教区の管理と司教の任命に関するものであることが知られている。
それによれば、司教は中国共産党によって選ばれるが、バチカンによって正式に任命される必要があるが、 上海教区長の場合、沈斌はバチカンによって任命されなかった。 それでも、彼は上海教区長に就任していた。それから3カ月以上たった 7月15日になって、バチカンは、教皇フランシスコが沈斌を海門教区長から異動させて上海教区長に任命した、と発表した。 バチカンは、「教区のより大きな利益」のために「教会法上の不規則性を正した」と述べた。中国共産党の独り勝ちになったようだ。
だが、この出来事は、重大な結果をもたらした。 バチカンが公開した英語版よりもイタリア語版の方が詳細なインタビューの中で、国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿はいくつかの重要な発言をしている。
第一に、暫定合意の本文は秘密のままだが、中国共産党がそれに違反したことを、パロリンは認めた。枢機卿は「意見の相違や誤解」を避けるために、「異動を含む中国における司教の任命はすべて、合意どおりに全会一致で行われることが不可欠である」と語っている。 バチカンは「驚きと遺憾の意」を込めて、合意が尊重されていなかったことを指摘せねばならなかったのだ。
第二に、パロリン長官は、まだ解決されていない問題の一つが「中国司教とローマ司教との定期的なコミュニケーションに関すること」とし、これは効果的な交流に不可欠であり、これらすべては、中国当局が常に変更を欲していないカトリック教会の構造と教義に属する問題であることを承知している」と述べた。それによってパロリンは、教皇によって正式に任命された司教が教皇とのコミュニケーションを維持していないことを認めたのだ。
教皇が7月15日に任命する3カ月以上前に、沈斌司教は、上海教区長就任の式典で、(共産党の管理・監督下にある)中国天主愛国協会の”信条”である「独立と自治の原則の堅持」を誓った。 この表現は、中国では、従来から「バチカンからの独立」を意味してきた。 これこそ、2018年の暫定合意が修正すべき原則そのものだ。
第三に、パロリン長官は「中国のカトリック教徒は、たとえ『秘密主義(地下教会の信徒)』と定義されている者であっても信頼に値するし、彼らの良心と信仰は尊重されるべきだ」と語った。
「良心」という言葉が使われたのは決して偶然ではない。 2018年のバチカンと中国が暫定合意を結んだ時、「秘密のカトリック教会(地下教会)はなくなり、(中国共産党が管理・指導する)中国天主愛国協会に合併された(ことを意味する)」と大騒ぎされた。これが事実ではなく、愛国協会への参加を拒否するカトリックの”良心的兵役拒否者”が多数いる、と訴える人々は、親中派の自称「バチカン専門家」らから攻撃を受け、そうした事実を伝えるBitter Winterなどのマスコミも非難された。
パロリン国務長官は「秘密教会」が健在であることを認めている。 彼は、この「秘密教会」の会員、つまり愛国教会への参加を拒否するカトリックの”良心的兵役拒否者”は「尊重されるべきである」という、2019年のバチカンのガイドライン(もう効力を失っていると主張する者もいる)の主張を繰り返し述べている。
私たちは、「尊重」されていないことを知っている。カトリックの”良心的兵役拒否者”が受ける唯一の”敬意”は、嫌がらせを受け、刑務所に入れられることだ。そして、上海やその他の地域での司教人事で、バチカンそのものも、あまり”敬意”ある扱いを受けなかった。中国共産党は、このような繰り返しの暫定合意破りさえも、バチカンが受け入れたことを、自分たちにとっての”勝利”と見なすかもしれない。
だが、パロリン長官のインタビューでの発言の中に隠されているのは、「秘密教会」が依然として中国に存在している、という重大な告白、それに、バチカンは彼らを”反逆者”とは見なしておらず、何らかの形で協力する、というやや漠然とした約束である。もしも、バチカンが、真剣に”良心的兵役拒否者”を守ろうとし、彼らを「尊重」することを本気で主張するなら、バチカンは中国共産党から「尊重」されることはない。
国務長官は2018年のバチカンと中国の暫定合意に基づいて”時限爆弾”を仕掛けたばかりであり、いつか、その爆発で暫定合意が吹き飛ぶ可能性がある。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
・教皇、中国側が暫定合意無視で任命した上海教区長を3カ月遅れで追認ー「対話と実り多い司牧活動のため」と国務長官

バチカンは15日、教皇フランシスコが同日付で中国・上海教区の司教長にヨセフ沈斌(シェンビン)司教を任命した、と発表した。
上海教区長のポストは、過去9年間空席となっていたが、中国の政府・共産党の管理下にあるカトリック教会上海教区が4月4日、教区長に、国政助言機関の人民政治協商会議(政協)常務委員の沈斌司教が就任した、と一方的に発表。司教人事には双方の合意が必要とするバチカンと中国政府の暫定合意に反するものとして、バチカン関係者などから批判が出ていた。
それを教皇が3か月遅れで”追認”したことについて、バチカンのパロリン国務長官は同日、Vatican Mediaのインタビューで、沈斌・司教を教皇が上海教区長に任命したのは「優れた評価を得ている司牧者」であるため、と説明。合わせて、バチカンの中国との対話の進展と、バチカンの常設連絡事務所を北京に開設することへの期待を示した。
国務長官のVatican Mediaの問いに対する答えは以下の通り。
問:バチカンは、教皇フランシスコが上海教区の司教にヨセフ沈斌(シェンビン)司教を任命したことを発表した。この任命が、同司教が海門教区から(中国側の判断で)に上海教区に異動させられたのに遅れてなされたのはなぜか。また教皇フランシスコのこの行為は何を意味するのか。
答:このことを説明するためには、以前に起きたことと、その状況を振り返るのがよいでしょう。ご存知のように、教皇庁と中国間の司教任命をめぐる暫定合意は、2022年10月22日、さらに2年延長されています。延長が合意されて一か月経つか経たないうちに、中国・余江教区のヨハネ彭衛照(ポン・ウェイチョウ)司教が江西教区の補佐司教として着座した、との知らせを事後に受けた際には、バチカンは、驚きと遺憾を表明せねばならなかった。江西教区の設置はバチカンが承認しておらず、それに加えて、この人事について中国側からバチカンに何の相談も連絡もなかったからです。
上海教区の司教人事についても、海門教区の沈斌司教を上海教区長に異動させるという中国当局の処置の連絡は受けましたが、バチカンの合意を得ることはなかった。ただ、(前回の江西教区の補佐司教の一方的人事に対しては、即、遺憾の意を表明したのに対して)今回、時間をおいて対応しようという判断は、上海教区がバチカンの認めた教区であり、長期にわたって教区長が空席のままになっていたという司牧上の問題がある中で、優れた評価を得ている司牧者(であるかどうかの判断も含めて)、バチカンとして沈斌司教を版入教区長に任命する機会を、注意深く見極める必要があったから、と言えます。
問:上海教区、江西教区いずれの司教人事も、バチカンの同意を得ずに行われた。このような中国側の行為は、ここ数年間にバチカン側と中国側に生まれた対話と協力の精神を理解していないように思われるが。
答:教皇フランシスコは、上海教区で起きた教会法上の不規則な状態を正常にすることを望まれました。それは、同教区にとって最善であり、司教の実り多い司牧活動を考えてのことでした。教皇の意向は、基本的に司牧的なものであり、沈斌司教が福音宣教と教会の交わりを推進するためにより落ち着いて働けるように、というものです。
同時に、同教区において長い間懸案となっている諸問題、たとえば、2人の補佐司教、未だ遠ざけられているタデウス・馬達欽(マ・ダキン)司教と、辞職したヨセフ邢文之(シン・ウェンジ)司教の件などについて、正しく賢明な解決がなされ、バチカンと中国当局との合意のもとに、同司教がそれを助けることができるように、と私たちは期待しています。
問:バチカンと中国の当局との対話の将来をどのように見ているか。
歩みの途中に置かれた障害は、信頼を蝕み、前向きなエネルギーを取り上げてしまいます。それにもかかわらず、対話を進めるべき理由は、私にとって、より大きく思われます。実際、バチカン側と中国側の対話のパイプはまだ開かれており、それはある意味、定められたものとも言えます。問題があるのは避けがたいことですが、対話が真理と相互の尊重うちに育つなら、教会と中国社会のために多くの実りをもたらすかも知れません。
それを円滑に、豊かなものにするために、中国にバチカンの常設の連絡事務所を開設することは非常に役立つことに思われます。さらに言えば、このような事務所の存在は、行政当局との対話を促進するだけでなく、中国の教会内部の完全な和解と、教会の望まれる正常化への歩みにも、貢献できるでしょう。
・中国のウイグル人たちからの強制臓器摘出を阻止へ、米下院の法案通過で国際的な動き広がる(Bitter Winter)
(2023.6.19 Bitter winter Ruth Ingram)

中国でのウイグル人イスラム教徒や法輪功信徒などに対する営利目的の強制臓器摘出(いわゆる「臓器狩り」)の阻止を狙いとする「2023年強制臓器摘出停止法案」が、米議会下院で圧倒的多数で可決され、上院で審議に回された。最近、ケニアの首都ナイロビで開かれた世界医師会の会合でも、これと関連する中国におけるウイグル人の扱いが、主要テーマとして取り上げられている。
(写真右は、オーストラリア・シドニー市街でウイグル人にたいする強制臓器摘出に抗議する人々)
この法案が成立、施行されれば、中国政府・共産党の幹部などが強制臓器摘出(いわゆる「臓器狩り」)に関与した場合、その責任を追及し、最高25万ドル(約3300万円)の民事罰、最高100万ドル(約1億3000万円)の刑事罰および20年の懲役刑などが課されることになるいう。
これまで臓器狩りと人身売買の阻止を訴えて来たウイグル人権団体Campaign for Uyghursのルシャン・アバス氏は、この法案が米議会下院で可決されたことを歓迎。Bitter Winterの取材に対して、「ウイグル人イスラム教徒やその他の『良心の囚人』から臓器狩りは、中国共産党が犯した恐ろしい犯罪の一つです… 陰惨すぎて信じられない人もいるかも知れませんが、これが現実であり、私たちは指導的な人々に自らの行動の責任を追及しなければなりません」と訴え、米議会上院での速やかな法案成立と実施を求めた。
彼女はまた、「イスラム教徒に対して、中国は厚かましい『ハラール(イスラムの教えに従った)臓器』の宣伝をしていますが、それは、この想像を絶する犯罪の恐怖を増幅させるだけです」と述べ、「この法案の成立は、ウイグル族コミュニティに対する中国共産党の忌まわしい残虐行為との戦いにおける重要な転換点になります」と期待を表明している。
中国における臓器狩りの問題が浮上したのは、1970年代。処刑された囚人から臓器を摘出、営利目的で流通されているという指摘があり、 国際的な非難を受ける中で、中国政府は2013年にこの”慣行”を廃止すると言明、2015年に廃止が完了した、と公表していた。
だが、英国医療評議会の倫理委員会によると、実際には、国際的な非難を受けないように数値を操作しただけで、臓器狩りは続けられており、 中国は、年間約9万件という臓器移植が、「数日から数週間の待ち」のテンポで進められ、10億ドル規模の世界最大の”臓器移植プログラム”が進んでいる。
亡命ウイグル人のエンベル・トフティ博士は、首都ウルムチで青年外科医だった1990年代に、腎臓が摘出されたと一目でわかるU字型の傷跡が残る3人の少年を6か月間にわたって診察し、 1995年には、生きている死刑囚から臓器を摘出するよう命じられたうえ、そのことを一切口外しないように言い渡された、という経験を明らかにしている。。
(左の写真はエンベル・トフティ博士。 ツイッターより)
また、Bitter Winterのインタビューに応じたウイグル難民のアイヌル氏は、1980年代のある夏、友人の娘が少女たちとともに村を出て中国の内陸部で働くことになったが、「6か月後に戻ってきました。そのうち3人の体には大きな傷跡があった。事情を聴くと、『 工場で働くには健康診断が必要だ、と言われて、診断を受けたが、気を失い、目が覚めたとき、自分たちに何が起こったのか全く分からなかった』と明かしてくれました」。だが、その後、2人が病気になり、死亡した時、医師が遺体を調べて、腎臓が摘出されていたこと分かった、という。
また、 2016 年に、新疆ウイグル自治区のすべてのウイグル人に「無料健康診断」が義務付けられ、生体認証のための虹彩スキャン、血液型検査、指紋採取、DNA 検査の提出が強制されるようになったが、 ウイグルの人権活動家は「中国内外の臓器需要に対応するために”健康診断”で集められたデータが利用されること」を懸念している。
また2019年6月には、世界の中国における臓器狩りへの非難を背景に、国際的な人権活動家たちの「中国における良心の囚人からの臓器狩りに対する独立法廷」が60ページにのぼる判決要旨を発表し、目撃証言や被害者の体験、医療専門家による調査などによって、中国では”必要”に応じて、臓器が入手可能であり、新疆ウイグル自治区のカシュガル空港には、摘出した臓器を移植者に速やかに運べるような特別な「緊急人体臓器搬送通路」が用意されていることなどが明らかにされ、世界に改めて衝撃が広がった。
ウイグル人に対する特別な危険行為は、韓国のテレビ放送「TV CHOSUN」の人気調査報道番組「Chosun’s Investigative Report 7」でも取り上げられている。同番組のプロデューサーは、韓国人の天津への”臓器観光”を取材中に、サウジアラビアの人々が、取材先の病院で国民が同じ病院で「halal organs(イスラム教で認められる臓器)」の移植を、国の費用負担で受けるために待機しているのを知った、という。(右の写真は「TV CHOSUN」の調査報道番組の一場面)腎臓の専門病院として名の高い北京同善堂中医医院が制作したビデオでは、敷地内のモスクやハラール・ レストランなど、アラブ患者向けの特別な施設についての説明もされている。
中国における臓器狩りに関する独立法廷は判決で、「中国では良心の囚人からの強制臓器収奪がかなりの期間にわたって行われ、非常に多くの犠牲者が出ている」と結論づけた。
法廷で証言したエンベル・トフティ博士は、2017年10月に台北で臓器狩りについて講演した後、台湾人から連絡を受け、「自分の弟から『腎臓の移植を受けるために天津に行った』と言われた」ことを知らされた。その台湾人は、「弟は、法輪功学習者の死の原因が自分にあるのではないか、と心配していたが、外科医から『現在は、すべての臓器が新疆から来ている』と説明を受け、安心した」としている。
その新疆ウイグル自治区の 収容所から生還したウイグル人の一人は、「収容所に入れられるとすぐ、徹底的な健康診断を受けさせられ、内容の分からない注射を打たれた。健康な収容者が定期的に失踪し、二度と戻ってこなかった」と語っており、 拘留中に死亡し、遺体を弔いたいとする親族などの希望が退けられている、との報告もあり、疑惑はさらに深まっている。
「極度の警戒」の対象とすることは、国連の委託を受けた独立専門家チームによって表明された。同チームは、民族的、言語的、または宗教的な少数派の収容者たちが、血液検査や、超音波やX線検査などの内臓検査を強制的に
受けさせられ、そうではない収容者と分けられている可能性がある、という「信頼できる証拠」を見つけた、と述べている。そして、調査の結果、そうした検査を受けた収容者たちは、移植をする”割り当て”のための”生体臓器データベース”に登録される、としている。
そのうえで、専門家チームは、「中国における強制臓器収奪は、さまざまな場所で、逮捕理由の説明や逮捕状の提示もされないまま逮捕・拘留される特定の民族的、言語的、宗教的な少数派がターゲットにされているようだ」と指摘、 「私たちは、囚人や被拘禁者が民族、宗教、思想信条によって差別的に扱われている、という報道を受け、深く憂慮している」としている。
北京政府の否定にもかかわらず、イーサン・ガットマン氏の2006年以来の調査は、最近では新疆ウイグル自治区アクスの”再教育キャンプ”の隣に大規模な火葬場を発見したこと(2021年12月のウイグル法廷報告書)を含め、大掛かりな強制臓器収奪が行われているとする証言に信憑性を与えるいくつかの「決定的な証拠」を提供している。
( 左の写真は、イーサン・ガットマン氏)。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
・中国の中央社会主義研究所が全土の聖書学校教師を北京に集め、マルクス主義原則、習近平思想を学ばせる
中国全土のキリスト教神学校の教師を集めて北京の社会主義中央研究所で行われていた「キリスト教神学校主要教師養成課程」が2日、修了した。
この課程の狙いは、マルクス主義の中核となる原則、中国共産党の第20回全国代表大会、そして『社会主義の新時代』に関する習近平主席の考えについて学ぶ」こと。
中央社会主義研究所は、中国共産党の党員になっていない人々にマルクス主義を教育する目的で、毛沢東主席によって 1956 年に設立され、中国共産党の指導の下で運営される主要な教育機関。所長は、中国共産党全国人民代表大会常務委員会副委員長の郝明金(ハオ・ミンジン)氏。これまでに短期コースやセミナーを通じて 10万 人以上を”教育”してきた。
「キリスト教神学校主要教師養成課程」の修了式で、中国キリスト教評議会副局長兼神学教育部長のリン・マンホン牧師は「この課程は、教師が必要な『高度な社会主義文化』を習得するのに役立った」とし、三自教会(注:中国政府・共産党の管理下にあるプロテスタント教会の全国組織)と提携するキリスト教神学校が、経験豊富な教授を指導者とする「イデオロギー的および政治的な教育と研究のグループ」の設置についても報告した。
また同牧師は、「『キリスト教の中国化』は、聖書学校の教師と学生が『政治的認識』を高め、中国共産党の文書、特に第20回党大会の文書を熱心に研究する必要があることを意味している」と語った。。