・中国の新疆ウイグル地域の重要鉱物の採掘、精錬などで奴隷労働、欧米の多国籍企業数十社が関係(Bitter Winter)

(2025.6.18  Bitter Winter  Marco Respinti)

(写真右・新疆 非鉄金属産業グループにおけるベリリウム製錬 。報告書より )Beryllium smelting at Xinjiang Nonferrous Metals Industry Group. From the report. 

  国際人権団体Global Rights Complianceが11日、中国の新疆ウイグル 自治区(非漢族住民は東トルキスタンと呼ぶ)の重要鉱物セクターと欧米企業との重大なつながりを明らかにする詳細な報告書を発表した。

 これは、新疆ウイグル自治区の主要産業である鉱物セクターにおける欧米の一流企業と強制労働とのつながりを網羅した初めての調査報告。

 調査は18か月にわたり、エレクトロニクス、航空宇宙、エネルギー、防衛など、さまざまな世界の主要産業に不可欠な鉱物であるチタン、リチウム、ベリリウム、マグネシウムなどの必須鉱物のサプライチェーンについて、中国の政策文書、政府の出荷記録、学術出版物、調査報道などさまざまな情報源をもとになされた。

 中国の重要な鉱物産業に関するこの調査は、トマトピューレの製造など食品関係分野での強制労働の実態を明らかにした前回調査に続くもの。前回調査では、コカ・コーラ、コスタ・コーヒー、スターバックス、ウォルマートといった世界的な企業を含む、少なくとも68の多国籍企業が、強制労働のもとで製造された製品とサプライチェーンでつながっていることを明らかにしていた。

 中国は重要な鉱物について、採掘、加工、製造の各部門を支配し、世界的に重要な役割を果たしており、2024年には、44種類の重要鉱物のうち30種類の主要生産国として報告されている。そうした中で、新疆ウイグル自治区は、貿易取引を急増させており、2024年の輸出額は前年比21.8%増の599億8000万米ドル。

 今回の報告書によれば、西側諸国の経済はこの地域から調達される鉱物への依存度を高めており、特に米国と英国への輸出が顕著に増加している。そして、新疆ウイグル地域で操業している重要鉱物セクターの企業として77社確認されており、過去2年間で欧米などの企業15社がウイグル地域から直接調達している。中国がサプライチェーンを戦略的に把握しにくくしていることを考えると、関与している企業の数はもっと多いとみられる。

 報告書では、集団監視、抑留、投獄、強制労働を特徴とするウイグル市民への組織的な弾圧を指摘。ウイグル人が置かれている過酷な状況の詳述の中では、強制労働、強制移送や、コンプライアンス違反なども含まれている。また具体的に名が挙がっている企業の中には、リチウム加工会社の「新疆非鉄」があるが、同社は、強制労働慣行への関与が記録されているため、米国政府のウイグル人強制労働防止法リストに加えられている。

 報告書は、欧米政府や企業に対して、重要鉱物に対する支配力を強める中国と、ウイグル人に対する深刻な人権侵害に対処するため組織的に対応すること求め、サプライチェーンにおける強制労働の実態を開示し、それに対処する立法措置を要求。また欧米企業に対し、サプライチェーンを注意深く追跡し、強制労働との関連を明確にしたうえで、適切に対処すること、欧米各国政府に対して、新疆ウイグル地域で現在進行中の人権侵害に対し、早急かつ断固とした行動を取るよう求めるとともに、中国の重要鉱物への依存を減らすよう提唱している。

 「カトリック・あい」⇒報告書の全文はGRC-critical-minerals.pdf (globalrightscompliance.org) から読めます。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2025年6月19日

・中国 共産党・統一戦線工作部が「中国伝統文化を学び、体験する宗教指導者のためのイベント」開催、カトリック大司教など参加(Bitter Winter)

(2025.5.28 Bitter Winter   Lai Mingxia)

Chen Ruifeng, Deputy Minister of the Central United Front Work Department and Director of the State Administration of Religious Affairs, presided over the training in Hebei. From Weibo.(写真右・中央 統一戦線工作部副部長 兼 国家宗教事務管理局局長の陳瑞鳳氏=微博より)

 中国で宗教活動を統括する共産党・統一戦線工作部が主催の「中国伝統文化を学び、体験する宗教指導者のためのイベント」が5月11日から17日にかけ、河北省で開かれ、中国全国からカトリック、プロテスタント、仏教、イスラム教など”公認”宗教団体の代表100人が出席した。

  イベントの冒頭、党統一戦線工作部の副部長で国家宗教局長の陳瑞鳳氏が演説、続いて、中国仏教協会会長の顔冉氏、中国道教協会会長の李光復氏、中国イスラム協会会長の楊発明氏、中国天主愛国協会会長のジョセフ・リー・シャン北京大司教、中国基督教会三自愛国運動委員会委員長の徐暁紅氏らが登壇した。 参加者たちは、宗教の「中国化」と「厳格な統治」を学び、テーマ別の文章作成、特別講義への出席、現場での指導への参加、グループ討論などが行われた。

 「中国化」とは、中国共産党のイデオロギーに、宗教的信念と実践を”適応”させることにある。「厳格な統治」とは、統一戦線工作部が、五大公認宗教の指導者たちを信用せず、現地の宗教団体の活動に直接介入することを意味する隠語だ。

An image of the training event in Hebei. From Weibo.

 そして、「中国の伝統文化」とは、中国共産党の公式マルクス主義のフ

ィルターにかけた伝統であり、内戦や毛沢東時代の「赤い文化」、習近平国家主席の教えを含む。議論されたテーマを見ると、参加者が「中国の優れた伝統的な中国文化」に関わることで、「中国共産党の理論、指針、政策を真摯に学び、実践する 」努力が含まれていることが明白。

 ある参加者はBitterWinterの取材に対して、「この研修で何か新しいことを期待してはいけない。彼らは宗教を中国化し、党に従順に従うべきだということをずっと繰り返している」と述べた。

(写真左・河北省での”訓練イベント”の様子=微博より。)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年5月29日

・中国の1200万人のカトリック信者は教皇レオ14世の対応を注視(La Croix)

(2025.5.14 La Croix   Dorian Malovic)

 

 

*「新教皇のことはよく知らない…」

 

 今、中国の1200万人のカトリック信者は、新教皇レオ14世が北京との関係をどのように扱うかを注視している。

 「新しい教皇、レオ14世の選出に感激し、喜んでいます」-中国の微信(WeChat)アカウントで教皇選出のライブ中継を見た中国のある司祭は、「しかし、正直言って、私は彼のことをよく知らないんです。1990年代にオハイオ州で神学を学んだ時、彼の名前を聞いたことはあるはずなんですが…」と語った。

 そして、「自分にとって新教皇が米国人かどうかは関心がない。読んだり聞いたりしたところでは、彼は謙虚で、オープンで、深い精神性を持っているようです。それは普遍的な教会にとっても、中国のカトリック教徒にとっても良いことだと思います」と語ったが、80年近く国交を断絶している北京との今後の関係について、早々に結論を出さないように新教皇に希望した。

*中国外務省公式発表は「建設的な対話」希望だが…

 

 例によって、中国政府が何らかの公式発表をするまでに約1日を要した。「新教皇の指導の下、バチカンが中国と建設的な対話を続け、相互の関心事である国際問題について綿密な意思疎通を行うことを望む」と、外交部の林建報道官は5月9日に述べた。これは中国外務省の標準的で慎重な声明だが、外務省はバチカン問題を扱っていない。(「カトリック・あい」注・中国国内の宗教活動は共産党統一戦線工作部が統括しており、バチカンとの関係も実権はそこにある)。バチカン問題に関する”機密ファイル”は、習近平・国家主席が直接、監督している。

 中国全土のいくつかの教区で暗号化されたメッセージ・アプリを介して連絡を取ったところ、あるカトリック信者は、個人的な経歴や教区の経験によって期待は異なるものの、新教皇レオ14世についてほとんど知らなかったことを認めた。北京に住む女性のカトリック信徒は、新教皇決定について 「とてもうれしいし、満足している」というだけで、詳しい言及を避けた。

 中国共産党の圧力とバチカンの姿勢の両方をうまく操ることに長けた ”進歩的 ”な教区で30年間奉仕してきた、リ神父(仮名)にとって、重要なのはレオ14世の開放性だ。「教皇がオープンマインドであり続ける限り、ローマと北京の関係は改善されると信じている」。

*中国共産党の圧力に妥協しないよう望む声も

 

 また、新教皇に、より確固とした姿勢を示すよう期待する声もある。上海の著名なカトリック家系の信徒で、5世代にわたって信仰を持ち続ける知識人のシー・ウー(仮名)は、新教皇に「ヨハネ・パウロ2世のように、十字架と神への揺るぎない忠誠を守ってもらいたい」と熱く語った。

 現在70代のシー・ウーは、「政治的弾圧を恐れず、自分の考えを自由に話すことができる」と感じており、「教皇が北京からの圧力に屈したり、共産党に対して譲歩や妥協をしないことを望んでいる」と述べ、司教任命に関するバチカンと中国当局の暫定合意については、「さまざまな教会筋によると、教皇は中国における司教指名の最終的な権限を保持している」との確信を強調した。

 この暫定合意は、党に服従せず、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教に関わるいくつかのケースなどの解決に役立っているようにみえるが、中国の1200万人のカトリック信者の間では依然として不安が続いている。「日常生活では多少の柔軟性が認められていても、私たちは常に、共産党と当局の統制と監視下に置かれて続けている」と、中国北部の教区の修道女で海外留学経験もあるシスター・マリー(仮名)は語った。

*対中政策のキーパーソンの人事を新教皇はどうする?

 

 中国共産党の管理・統制下にある中国天主愛国協会と司教協議会は、教皇レオ14世に対して非常に慎重な祝賀メッセージを発表した。だが、少なくないカトリック信者たちは、新教皇が引き続き自分たちの不安定な状況を真剣に受け止め、政治的に微妙な環境の中で信仰深く生きる方法について明確な指針を示してくれることを望んでいる。

 チャン(仮名)によれば、自分たち中国のカトリック信者の課題は「キリストとバチカンに忠実でありながら、共産党の要求に屈することなく、善良な中国市民であり続けること」だという。それは、中国のカトリック信者が何十年にもわたり続けてきた”バランス感覚”の所作である。

 教皇レオ14世のもとで、バチカンと中国の関係がどのように進んでていくかを判断するのは、まだ時期尚早だ。チャンは、「レオ14世は中国の専門家ではない。レオ14世はバチカンの司教省長官だったが、実際に中国での司教任命を担当したのは国務長官のパロリン枢機卿だった。つまり、バチカンの対中国政策のキーパーソンだったのだ」と指摘する。

 パロリン枢機卿が国務長官に留任するか否かが、バチカンと中国の関係の次のステップを決めるかもしれない。2023年に故教皇フランシスコによって枢機卿に任命されたイエズス会士のステファン・チョウ枢機卿が、ローマと北京の仲介役として今後重要な役割を果たす可能性がある、と多くの香港の関係者は考えている。「対中政策について、レオ14世がどのような方向に進みたいのか、これからの動きを見なければならない。新教皇は教会法の専門家だが、教会法は、いかなる国家主権も司教任命に干渉すべきではない、と明確に規定しているということもある」とチャンは述べた。

 もしレオ14世が、中国における司教任命などについて教会法を厳格に適用するつもりなら、中国との緊張関係は、すぐそこまで来ているのかもしれない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2025年5月15日

・教皇空位期間中に、中国共産党・政府がバチカンの同意えず司教二人を任命(Bitter Winter)

 教皇の空位期間中、カトリック教会では新しい司教を指名することはできない。しかし、中国共産党・政府が、上海と新郷の二つの教区で二人の新司教を”任命”した。

Appointed by the CCP as the new Auxiliary Bishop of Shanghai: Father Wu Jianlin. From Weibo.

 故教皇フランシスコの遺産で最も問題なのは、バチカンと中国との関係だ。2018年に教皇フランシスコの下で、バチカンは中国と、中国国内での司教任命について暫定合意し、以来、期限が来るたびに更新してきた。その詳細はいまだに双方とも明らかにしていないが、ポイントは、司教は、双方の同意のもとに任命される、ということだ。

 だが、任命の実権を握る中国共産党統一戦線工作部は、これまで、上海教区などで一方的に新司教を任命し、バチカンはそれを一定期間を置いて追認する、というルール違反を繰り返してきた。

 そして、4月28日、中国共産党の管理下にある中国天主愛国協会(CCPA)は、上海教区の司祭たちを集め、司教総代理の呉建林神父(写真左=微博より)を新たな補佐司教に選出した。さらに翌29日、新郷教区の司祭たちが、李建林神父(写真右)を司教に選出した、という。いずれの”選挙”でも、候補者はただ一人だった。

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意では、双方は同意のもとに中国国内で新たな司教を任命できる。だが、今回の新司教選出は、4月21日の教皇フランシスコの死去に伴い、5月8日の新教皇選出まで、教皇座が空席となった期間に行われた。

 カトリック教会では、司教を任命できるのは教皇だけであり、教皇座が空位の期間中は当然、新しい司教が任命されることはない。今回の選出、任命は、教皇の同意を得ることができない期間に行われ、暫定合意に違反した行為とえる。

Father Li Jianlin, appointed by the CCP as Bishop of Xinxiang. From Weibo.

 また、新郷教区には、中国共産党の管理に入ることを拒否する”地下教会”の、教皇から任命を受けた67歳のジョセフ張偉鋳(チャン・ウェイチュウ)司教がすでにいる。にもかかわらず、新たに司教を任命したことになる。

 今回、事実上、中国共産党が一方的に任命した二人は、いずれも中国共産党に忠実な人物として知られている。呉神父は2018年、中国の最高政治諮問機関である中国人民政治協商会議第13期全国委員会の委員に選出されたている。

 

 中国側は、今回のようなやり方を繰り返すことで、しかも教皇空位期間にそれを行うことで、中国共産党主導の司教任命を既成事実化することを狙っている、と思われる。そうした中国共産党・政府の”ルール違反”に、新教皇レオ14世はどのように対応するのだろうか?

 故教皇フランシスコに倣い、中国との良好な関係を維持するために不本意ながら二人の新司教を追認するのか、あるいは、この機会に暫定合意の見直しを求めるのか。新教皇の決意を試す”踏み絵”になりそうだ。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年5月10日

・中国における外国人の宗教活動に5月1日より新たな制限₋国家宗教事務局が新包括規定(Bitter Winter)

(写真右・北京の春宮(チュン・グン)にある国家宗教事務局の建物)

 4月1日、国家宗教事務局は、中国における外国人の宗教活動に関する新たな包括的規定を定めた第23号令を公布した

Prince Chun’s Mansion in Beijing, hosting offices of the State Administration for Religious Affairs. Credits.

 第23号令に盛り込まれた内容のほとんどは、すでに施行されている規定を、さまざまな規則に分散して記載したものだ。中国の宗教管理に関する一般的な原則は、5つの公認宗教が中国共産党統一戦線工作部の管理下で管理する宗教活動のみを合法とする、というもの。

 政府が管理する宗教は、定義上「自治」であり、外国の団体と定期的な関係を持つべきではない。中国における外国人の宗教活動は、中国共産党が管理する宗教官僚、統一戦線工作部、または党が公式代表団を招待し、広報や宣伝を目的としている場合を除き、敵対的とされ、一般的に奨励されず、厳しく規制されている。

 おそらく、中国国外やその他のアジア諸国からのキリスト教徒の訪問、あるいは政府官僚が関与しない中国国内と国外の仏教寺院や道教寺院間の交流が原因で、この新しい規制は、既存のすべての基準をまとめ、その施行を容易にすることを目的としている。

 新しい規定といっても、それほど目新しいものではないが、もし何かあるとすれば、外国人の宗教活動への招聘依頼(5つの公認宗教からの依頼のみ受理)には、多くの書類を添付し、当局の承認を事前に十分に得なければならないという、より詳細で厳格な規定が盛り込まれていることだ。

 また、中国寺院で外国人によって時折行われる宗教的な活動や黙想会は、観光収入の源となっているものの、事前に承認を得て、関連する公認宗教の代表者による監督下に置かれねばならない。

 海外からの書籍や宗教関連の物品の持ち込みは厳しく制限されている。外国人が中国で説教を行う場合、たとえ規定に従って正式に招待されたとしても、事前に「主な内容」を中国当局に提出し、承認を得なければならない。

 この規定では、5つの公認宗教の枠外にある宗教形態についても言及。明白に外国の宗教家は、宗教間対話のイベントを除いては、通常、公認宗教の官僚に招待されることはない。ヒンドゥー教やユダヤ教などの世界宗教は、5つの公認宗教ではなく、中国での存在感は小さい。また、5つの公認宗教以外の多くの新宗教運動も存在するが、その信者が中国で宗教活動を行うためには、中国に対して友好的であることを公に表明している場合を除いて、この規制により中国への入国が極めて困難になっている。認められる場合も、多くの書類手続きが必要だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年4月9日

・「中国共産党の基本原則に従い、社会主義の中核的価値観を擁護せよ」北京で全国宗教団体連合会議

(2025.3.28 Bitter Winter 

| 中国で政府・共産党管理下の宗教団体による重要な会議が開かれ、習近平・政権の最新文書を説教や学習会で強調することが呼びかけられた。

 中国の全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)の合同会議が3月4日から11日まで北京で開催された。不安定な国際情勢を背景に、習近平・主席は、両会で中国の経済と軍事力の強化に重点を置いた。発表された法案のなかには、民族の団結強化、分離主義との闘い、および全地域における標準中国語の使用を定めるものもあった。

Bishop Shen Bin. Screenshot.

 会議終了から2日後の13日、北京で全国宗教団体連合会議が開かれ、カトリックの沈斌・上海司教(写真右)が議長を務めた。

 沈司教は2023年4月、バチカンに通知することなく、(中国政府・共産党によって)上海司教に任命された。これは、2018年になされ、今も更新されているバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意に明らかに違反する者だったが、バチカンは、その3か月後の同年7月、いわゆる「正規外の任命」を認めた。

 沈司教は昨年10月のバチカンでの世界代表司教会議(シノドス)第18回総会にも招かれ、「中国のカトリック教徒は完全な信教の自由を享受している」とする演説をした。彼は中国カトリック司教会議の議長も務めているが、この組織は中国共産党の公認だが、バチカンは認めていない。

 全国宗教団体連合会会議では、国内の宗教を管理・統括する中国共産党の統一戦線工作部の副部長で国家宗教事務局の局長でもある陳瑞峰(写真左下)を始め、その管理下にある宗教団体の指導者たち、演覚(中国仏教協会)、李光富(中国道教協会)、楊馳明(中国イスラム協会)、李山(中国愛国カトリック協会:北京大司教)、徐暁紅(三自愛国教会)なども演説した。

Chen Ruifeng, Deputy Minister of the United Front Work Department and Director of the National Administration of Religious Affairs. From Weibo.

 中国共産党は、五つの公認宗教団体の布教・学習活動を調整するために、全国宗教団体合同会議を開いている。「厳格な統治」と呼ばれる政策の下、統一戦線工作部による統制がますます強まっており、会議は、参加宗教団体に対して、「両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)のテキストと精神」と習主席の演説をもとに、布教や学習を行うよう命じた。

 しかし、同会議が強調したかったのは、「すべての聖職者および宗教団体が、党の中央委員会の決定と取り決めに沿って、思想と言動を一致させること」だった—説教や研究グループは、「宗教活動に関する党の基本原則に従い、社会主義の中核的価値観を擁護し、中国文化を統合し、国内の宗教の中国化を促進し、宗教事務の厳格な管理を強化すべき」とし、政府・共産党が管理する宗教団体は、中国共産党の”教義”を説くべきであり、その中には「両会のテキストと精神」も含まれると告げられ、体制の代弁者としての役割を果たすよう求められた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2025年3月29日

・司教の任命を中国共産党の発表から半年後にバチカンが発表-”暫定合意”の奇妙な運用(Bitter Winter)

(2025.2.5 Bitter Winter  He Yuyan)

 中国共産党は、教皇フランシスコが司教を任命する3か月前に、その司教を「選出した」と発表した。そして、司教の叙階式では、「教皇が任命したこと」には言及されなかった。

Bishop Ji Weizhong. From Weibo. 2018年のバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意(2024年にさらに4年間更新)によると、中国共産党とバチカンは、中国国内での司教の任命について合意する必要があることは明示されているが、合意の詳細は7年近く経った今も、秘匿されている。

 これまでの司教任命をめぐるいくつかのケースの任命の手順を見ると、合意の細目とは一致していない可能性が高いようである。

 つまり、①司教の「選出」は中国共産党が行い、そのニュースを公表する。②その後の数か月の間、バチカンからの”反応”がない。これは、バチカンが誰が「選出」されるのか事前に知らされていなかったことを強く示唆している。⓷共産党が公表してから数か月後、教皇がその司教を承認する。④司教叙階式が、教皇の権限とはまるで無関係であるかのように、教皇による「任命」には、まったく言及されることなく、執り行われ、中国共産党の管理下にある中国愛国天主協会の「司教協議会」から承認の手紙が読み上げられる―だ。

 そのもっとも最近の例は、季維中(Ji Weizhong)司教(写真左=Weiboより)に関するものだ。中国共産党は、昨年7月19日に李司教が山西省の呂梁教区の司教に選出された、と発表した。興味深いことに、その日付の段階で「呂梁教区」は存在していなかった。その地域を管轄していたのは汾陽教区であり、呂梁教区は、カトリック教会の教区を国の行政区分に合わせる、という中国共産党の方針の一環として、後に”新設”されたのだ。つまり、昨年7月19日の段階で、呂梁教区長である李司教なるものはいなかったことになる。The consecration of Bishop Ji Weizhong on January 20. From Weibo.

 以前の上海教区の司教任命の時と同じように、バチカンと中国共産党の間で水面下の交渉があったとみられるが、ともかく、今回の件については、共産党の発表から半年後の今年1月20日、バチカンが、「2024年10月28日」に、教皇が汾陽教区の廃止と呂梁教区の新設、季偉中神父の呂梁教区長の司教として任命した、と発表した。

 司教任命の発表時期が中国共産党とバチカンで半年ずれたのに加え、もう一つの興味深い疑問は、昨年10月28日に教皇が中国共産党の司教区改廃と司教任命を「批准」したのであれば、バチカンの新聞発表が3か月も遅れて出されたのか、ということだ。

 その答えは、季司教の叙階を「合法化」することが急務であったからであり、まさに1月20日にそれは行われた(写真右=Weiboより)。 例によって、叙階式では教皇の承認や委任は言及されず、中国司教協議会の書簡が読み上げられたが、あたかもバチカンが承認していないこの団体が、教皇ではなく司教の正当性の源であるかのようにであった。

 司教任命に関するバチカンと中国の暫定合意は、依然として、かなり”奇妙”な形で機能しているのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2025年2月6日

・「習主席の文化思想は深遠で…大きな意義がある」-中国共産党、各宗教の聖職者に「”紅色”文化教育」を実施(Bitter Winter)

10月下旬の 7日間、聖職者たちは河南省を回り、中国共産党の英雄に敬意を表し、「習近平の文化に対する思想は深遠で、論理的に厳格で、大きな意義がある 」ことを学んだ。(写真右下は、河南省教化ツアー中の聖職者=微博より)An image of the clergy during the Henan indoctrination tour. From Weibo.

 カトリック、仏教、イスラム教など中国の5つの公認宗教は、聖職者を「愛国教育」、つまり2024年1月1日に施行された法律で導入された教化の国家プログラムに参加させるという指示を非常に真剣に受け止めている。宗教がこれをどのように実施すべきかについての特別なガイドラインが1月4日に発表された。

 聖職者の強制的な教化に好都合なのは、内戦や共産党の歴史の”赤い神社”への巡礼を企画することらしい。それらは、伝統的な宗教巡礼の時期に組織され、効果的にそれに取って代わる。また、聖職者たちは観光の機会を好み、宴会や旅行と交互に行われれば、退屈なプロパガンダの講義にも耐えやすくなると考えられている。The clergy during one of the lectures. From Weibo.

 このプログラムの一環として、10月21日から27日まで、河南省で全省・地域の聖職者を対象とした「紅色文化ツアー」が開催された。統一戦線工作部が主催したこのイベントには、全国から140人の宗教関係者が参加した。(左は、講演中の聖職者たち=微博より)。

 聖職者たちは、第20期中国共産党中央委員会第3回全体会議で承認された「改革のさらなる深化と中国の特色ある現代化の推進に関する中国共産党中央委員会決議」についての講義を受けた。同決議は「社会主義文化大国の建設」を強調しており、これは中国における宗教の中国化を完成させるためにも不可欠であると指摘している。

 7日間の教化ツアーでは、講義、現場での指導、グループ討論が行われた。主催者側は、「習近平の文化思想を理解すること」と、南北戦争中に戦略的に位置した紅軍の基地を指す「大辺山の精神」についての講演を企画した。

Specialized guides taught the clergy the “red” history of Henan.

 専門のガイドが聖職者たちに河南省の「赤い」歴史を教えた(写真右)。

 ここは、紅旗運河、焦油記念館などとともに、聖職者たちが訪れる「紅」の巡礼地のひとつであった。紅旗運河は河南省の灌漑整備を目的としたものだが、聖職者たちが知らされていなかったのは、困難な状況の中でこれを建設した人々の「ヒロイズム」が自然発生的なものではなかったということだ。

 文化大革命の最中に、多くの場合強制連行された労働者たちによって完成し、多くの死者が出た。死者81人という公式発表は、おそらく過小評価だろう。焦玉茹記念館は、毛沢東時代の共産主義者の英雄の一人を称えている。焦は蘭高の党主席で、1964年に42歳で癌のため亡くなった。彼は農業における並外れた成功で賞賛されているが、それはおそらく想像上のものだろう。

 ソーシャルメディアや公式プレス発表で伝えられているように、聖職者に叩き込まれたメッセージは、「習近平の文化に関する思想は深遠で、論理的に厳密で、大きな意義があると誰もが信じている」というものだった。 習近平の文化思想は深遠で、論理的に厳密で、大きな意義があると誰もが信じている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年11月9日

・中国の司教たちがシノドス総会に参加の一方、英国貴族院の有力カトリック議員が中国における教会の迫害に注目

As Synod features Chinese members, British Lord draws attention to religious persecution

(2024.10.22 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

 英国貴族院の有力カトリック議員、デイビッド・アルトン卿がこのほど、「中国で迫害されている10人のカトリック司教」と題する声明を発表、「中国共産党の統制に従う中国天主愛国協会に反対する中国本土の司教10人を標的に虐待している」と非難した。

 バチカンは、2日から始まった世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期に中国本土から司教2人が参加させ、さらに総会開催中に、中国国内での司教任命に関する暫定合意の三度目の期間延長を発表しているが、中国国内でカトリック教徒や他の宗教信者が迫害されていることには事実上、目をつぶっている。

 アルトン卿によると、迫害を受けているのは、ビンセンシオ・グオ・シジン司教、アウグスチヌス・クイ・タイ司教、ユリアヌス・ジア・ジーグオ司教、タデウス・マー・ダキン司教、ペトロ・シャオ・ジュミン司教、メルキオール・シー・ホンジェン司教、ヤコブ・スー・ジミン司教、ヨゼフ・シン・ウェンジ司教、ヨゼフ・ゼン・ゼキウン司教、ヨゼフ・チャン・ウェイジュ司教の10人。

 彼らのうち7人は正当な手続きなしに拘留され、うち何人かは数年または数十年にわたって継続的に刑務所に入れられ、別の司教たちは2018年のバチカンと中国の司祭任命に関する暫定合意以来、最大6回も繰り返し拘留されている。

 卿は、彼らを「バチカンが『忘れてほしい』と思っている10人の都合の悪い司教」と呼び、「なぜ彼らはそのような措置をうけているのか。それは、彼らに何を信じ、考え、何を言うべきかを指示する中国共産党の”権利”を受け入れないからだ」と語り、米国の保守系有力シンクタンク、ハドソン研究所の信仰の自由センターのニーナ・シェア所長の記事を引用して、中国共産党が10人の司教を「正当な手続きなしに無期限に拘留、失踪、治安警察による無期限の捜査、教区からの追放、脅迫、監視、尋問、いわゆる再教育など司教の職務に対するその他の妨害」にさらしていると批判した。

 

 シェア氏は記事で、2015年に中国共産党による宗教の中国化政策が本格化して以来、「中国のカトリック教会は、毛沢東時代以来最大の弾圧を受けている」とし、「中国とバチカンの暫定合意は、『地下教会』と呼ばれることの多い、中国天主愛国協会への”良心的兵役拒否者”への配慮をせず、宗教的迫害にも対処していない。バチカンは、内容が秘匿されているこの暫定合意を『司教任命の権力分担の取り決めにのみ焦点を当てている』としているが、中国政府・共産党はこれを利用して国内の司教たちに中国天主愛国協会への加入を迫っている」と指摘。

 「中国政府・共産党は暫定合意に明らかに違反して、一方的にいくつかの司教任命を発表。だが教皇フランシスコは、中国のカトリック教会の”統一”を図るために、事後にこれらの任命を承認した」と述べ、「だが、10人の司教に対する中国政府・共産党による迫害は、カトリック教会の統一に対する本当の脅威だ」とシェア氏は強調している。

 アルトン卿はまた、10月17日付け米ウォールストリートジャーナル紙に掲載された、シノドスにおける中国代表に関するジョージ・ワイゲル氏(ヨハネ・パウロ2世教皇の伝記作家)の記事のコピーをフォロワーに送ったが、この記事でワイゲル氏は、宗教共同体を「中国化」させ、「習近平思想」に従わせようとする「しばしば残忍な取り組み」がある、と指摘。「バチカンと中国との交流は、完全な失敗だった」と批判している。

 ワイゲル氏の記事は、今回のシノドス総会に参加している福建省下浦(福寧)教区長のビンセント詹思露(ヤン・シル)司教について、「中国政府は2000年に彼を司教に任命した。教皇の承認なしに司教の叙階を受け入れたため破門された。その後、2018年になってバチカンと和解したが、その1年後には『宗教の”中国化”を断固として実行する』ことと『社会主義社会に順応する道を歩み続ける』ことを公に誓っている」と非難。

 さらに、中国本土からのもう一人の総会参加者の司教は、中国天主愛国協会の副会長である、と指摘。このようなことは、「中国政府・共産党の支配を受け入れている教会と、聖職者や信徒が投獄されたり殉教したりしてもローマに忠誠を誓い続けている、苦境に立たされた地下教会の間の溝をさらに深めるものだ」と警告している。

 そして、教皇が、このような暫定合意の再延長に同意したのは、バチカンの外交官らが「暫定合意を結び、延長し、2人の司教のような人物をシノドス総会に迎え入れることは、現在、台湾と外交関係のあるバチカンが、(中国と)との完全な外交関係を結ぶ一歩だ」と説得したためだ」とし、「この”外交幻想”の追求は、中国で迫害されているすべてのカトリック信者に声を上げないようにすることに通じる…教皇は『対話に満足している』と述べており、その結果は『良かった』としているが、実際には、それは恥ずべきことだ」とワイゲル氏は述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年10月23日

・バチカン、中国と司教任命に関する暫定合意をさらに4年延長

教皇フランシスコと中国の司教たち (写真アーカイブ)教皇フランシスコと中国の司教たち (写真アーカイブ) 
(2024.10.22  VATICAN NEWS)

    バチカンが、中国国内での司教任命に関する同国との暫定合意を、さらに4年、延長することで同国と合意した。バチカン広報局が22日発表した。発表文は以下の通り。

 「教皇庁と中華人民共和国は、司教任命をめぐる暫定合意の効果的な適用に向けた共通認識に照らし、適切な協議と検討の結果、本日付けで、同合意の有効期間をさらに4年延長することで合意した。教皇庁側は、中国におけるカトリック教会と同国の全国民の利益を考慮し、両国関係の発展のために、中国側との敬意ある建設的対話を継続する意向である」

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 中国国内での司教任命については2018年9月22日に暫定合意された。その後、2020年10月22日、一回目の2年延長、2022年10月22日に二回目の2年延長がなされ、その起源となる10月22日に3回目の延長が、これまでの二倍、4年延長することになった。

 これまでの繰り返しの暫定合意の延長は、それまで教皇の認可を得ずに、中国政府・共産党の判断で一方的に司教叙階が行われてきた数十年間の状態に終止符を打った。2018年の暫定合意から6年間に、十数人の司教の任命と叙階が行われ、中国側がこれまで司教として認めていなかった何人かの聖職者が公式に認められるようになった。

 また、新しい協力関係の目に見えるしるしとして、バチカンで開かれている世界代表司教会議(シノドス)総会に中国本土から司教が参加している。昨年ポルトガルで開かれた「世界青年の日(ワールドユースデー)リスボン大会」のような、欧米で行われるカトリック教会のイベントや、教皇フランシスコのここ数年のアジア諸国訪問の際の諸行事にも、中国の信者たちの参加が見られるようになっている。

 

*ただし、中国のカトリック教会でも、政府・共産党への忠誠を拒み、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教、司祭、信徒に対する、政府・共産党の対応は逆に厳しさを増しており、カトリック教会に限らず、中国国内のあらゆる宗教団体を習近平主席の思想に従わせる〝中国化”は年々厳しさを増している(「カトリック・あい」)

 

(編集「カトリック・あい」)

2024年10月22日

・シノドス総会に参加の中国本土の司教たち、”協力”の重要性、”文化”の尊重を強調

Bishop Joseph Yang Yongqiang of Hangzhou shakes hands with Pope FrancisBishop Joseph Yang Yongqiang of Hangzhou shakes hands with Pope Francis (Credit: Vatican Media.)

 

2024年10月20日

・「拷問に耐え切れず、”自己批判書”を書かされた」ー”違法な資金集め”で有罪にさせられた中国のキリスト教徒が声明(Bitter Winter)

  朱春林(Zhu Chunlin)氏の証言は、中国の刑務所における「厳格な管理と処罰」と「学習の強化」が何を意味するのか、つまり拷問について説明している。

 朱春林は深圳出身のキリスト教徒。「違法な資金集め」の罪で有罪判決を受けた。彼は刑務所で自分に起こったことを勇敢に非難したが、これは中国の刑務所で日常的に拷問が行われていたことのさらなる証拠である。彼はいくつかの人権団体に長文の声明を送り、9月11日に「Weiquanwang」が中国語で発表した。

 それによると、朱氏は「清遠刑務所の第15区で服役した経験…第15区は主に衣料品を生産しています。私は最初のサブワードにいました」。2017年5月に深圳の宝安拘置所から広東の清遠刑務所に移送された。1カ月の刑務所訓練の後、彼は第15地区の第1地区に異動させられ、いわゆる教育と労働改革を受けた。

レッグアイアンは、中国でまだ使用されています。クレジット。

 そこで、朱は「受刑者の間で一般に『標的射撃』として知られる厳格な管理と罰」を受けることになった。これは、チームリーダー、品質検査官、郵便局員など、いわゆるマスター囚人や刑務所警察によって、彼らが自ら設定した不文律に従って実施されている。

 毎日午後、仕事が終わる前に、彼らは警察の当直デスクに集まり、サインアップします。作業が終わると、警察は拡声器で対象者のリストを発表し、その後、特別な人物が政策の実行を担当する。

 「グループでの食事のために列に並ぶ時、標的にされた受刑者は後ろの列に並んで待つように求められます」とZhuは報告しています。彼は、他の皆が自分の食事を手に入れた後にしか、食事をとることができません。彼が受け取る食品の質と量については、誰もそれを保証することはできません。昼休み中、対象となる受刑者は寝たり休んだりすることを許されず、昼休みが終わるまで寮の外の廊下に整列しなければならない。夕方の集会後の自由時間には、対象となる受刑者は指定された場所に整列し、通常はファンクションルームまたはエクササイズエリアで一定時間立っている必要があります。時々、彼らは建物の外の遊び場に連れて行かれます(私はかつて冬に外の遊び場に連れて行かれ、凍えながらそこに立っていました)。」

 さらに、「これらの実践は日常化されており、多くの場合、一時停止することなく実行されます」。

 朱がこれらの罰が違法であると異議を唱えると、2人の警察官が「私に手錠と脚の鉄製の拘束具をかけた」と彼は報告している。手錠は一般的な手錠でしたが、脚の拘束具は非常に特別でした。それらは、2つの施錠された鉄のリングと中央の3つの鉄の塊で作られた重い鉄の枷でした。円筒形の鉄製の物体で、重さは合計で約15キログラムありました。彼らは私の足に2つの鉄の輪をはめ込み、足首に巻き付けました。その後しばらくの間、私は重い鉄の足かせを引きずるのが難しく、歩くことしかできませんでした。私は毎日、彼らが手配した囚人たちに付き添って過ごしました。工房に行くにしても、寮に戻るにしても、一歩一歩引きずることしかできませんでした」。

 「時々、自分を引きずることができなくなるので、真ん中の3つの鉄の塊を手で持ち上げて足が動かなければなりませんでした。でも、こんなふうに歩くのもすごく大変で、かがんで両手で抱え込まなければなりませんでした。また、階段の上り下りはさらに大変でした。途中で何度か立ち止まらなければなりませんでした。滑ったり、転んだり、転がったりしてはいけません、そうしないと足が折れてしまいます。あの拷問によって引き起こされた肉体的な苦痛と精神的な傷は、本当に言葉では言い表せないほどでした。

広東省の清遠刑務所で、朱は投獄され、拷問を受けました。Xから。広東省の清遠刑務所で、朱は投獄され、拷問を受けた(X)

 「夜になると、私は一晩中手錠をかけられ、手錠をかけられました。寒くて動きにくかった。それがどれほど不快だったか想像できるでしょう。私はこれまで、この種の拷問を身に着けている人を見ただけで、他の刑務所の人々もそれを身に着けていました。まさか今回、自分が体験する番になるとは思っていませんでした」。この種の拷問を受けている間も、『厳格な管理』と虐待は、何の軽減もなく強制された、という。

 「私の人生で最も暗い瞬間した。ただ静かに耐え、主に慈悲を祈ることしかできませんでした。その後、私はそれに耐えられなくなり、我慢するのが難しくなりました。春節が近づいてきたので、彼らの命令に従い、自己批判を書かなければなりませんでした。夕食時に刑務所全体で公の場で読み上げました…私は彼らの罰則措置に従わなかったことが間違っていたことを認めざるを得ず、将来は彼らに従うと約束しました」。

 最後に、朱は、虐待と拷問を通じて彼を支えたのは彼のキリスト教信仰だった、と言っている。彼は、彼自身の方法で、神が彼の中国人を見て、これらすべてに終止符を打つという彼の自信を表明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年9月23日

・中国、「愛国教育法」施行で、カトリック司祭、信徒も”革命遺跡”の巡礼を強制される

The Catholic pilgrims at the Enyangtai Independent Battalion Activity Site and Deeds Exhibition Hall, September 3, 2024. From Weibo.

   中国・広東省のカトリックの聖職者と信徒指導者は、残忍な国共内戦の共産党の恩陽台独立大隊の功績を称えるために動員された。The Catholic pilgrims at the Enyangtai Independent Battalion Activity Site and Deeds Exhibition Hall, September 3, 2024. From Weibo.

 中国で「愛国教育」に関する法律が2024年1月1日に施行され、中国共産党(CCP)による今世紀最大ともいえる国内プロパガンダキャンペーンが開始された。カトリック、仏教など党公認の5宗教も「愛国教育」の取り組みに参加するよう求められている。

 カトリック教徒にとって巡礼は重要だが、「愛国教育法」の施行で、聖母マリアの聖地への巡礼は、革命の遺跡や博物館への強制的なツアーに取って代わられている。

 具体的には、中華人民共和国建国75周年を祝って、政府・党公認の中国天主愛国協会の広東省陽江市支部が9月3日、教区司祭と信徒指導者が「革命教育」の地を訪ねる巡礼を企画、実施した。

 陽江市中国天主愛国協会の李長明会長に引率された司祭と信徒指導者たちは、恩陽台独立大隊の物語を称え、毗竹村と平蘭村の地を巡礼したが、この場所は2021年に整備され、記念館が作らられ、急速に共産主義者の巡礼の中心地になりつつある。

 実在した恩陽台独立大隊は、内戦中に国民党が支配していた地域で、相手側要人暗殺を含むテロ活動やスパイ活動を行った共産主義活動家の冷酷な集団だった。その主な任務は、強制的な徴兵と、国民党治世化の高い課税に対する反発を利用して農民を扇動すること。内戦が進むにつれて、恩陽台独立大隊は最終的に中国人民解放軍の部隊となり、共産党員が校長を務めていた毗竹村の小学校に本部を置いた。学校は廃墟になっていたが、修復され、記念館となった。

 ”巡礼団”を引率した李会長は、これらの巡礼の目的は「愛国教育」の一部であり、「カトリックの司祭と信者が赤い血統を継続し、赤い遺伝子を受け継ぎ、前進することを学ぶ」ことだと説明した。

 カトリックが、暴力的な共産主義の扇動者(かなりの数のカトリック司祭などを殺害した)の「赤い遺伝子」や「赤い血統」とどう関係があるのか​​は不明だ。あるいは、非常に明白なのかもしれない。2018年のバチカンと中国の合意後、バチカンの承認も得て活動している中国天主愛国協会は、カトリックの司祭や信徒指導者を「赤い血統」の忠実な共産主義者に変えるという主な事業を続けている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年9月21日

(評論)中国政府・党の「天津司教」追認ーバチカンは、教皇の中国政策の勝利としているが…(Crux)

(2024. 8.28  Crux Staff)

 ローマ発 – 中国政府・共産党が、これまで認めていなかった95歳のShi Hongzhen司教を天津教区の教区長・司教と公認したことに、バチカンは28日声明で「バチカンと中国政府との間で長年にわたって築かれた対話の肯定的な成果」、教皇フランシスコの”対中政策の勝利”と位置付けた。

 もっとも、Shi司教の北京公認の”着座式”は、中国メディアによると、天津の大聖堂ではなく、地元のホテルで、中国政府・共産党公認の中国天主愛国協会のトップである北京司教が司式して行われ、教会ではなく本質的に”市民的”な性質が強調されている。

 約5万6000人のカトリック教徒を擁するこの天津北部教区は、2005年以来、バチカンと中国政府・共産党の両方に認められる司教を欠いていた。Shi Hongzhen師は、教皇ヨハネ・パウロ二世から1982年に天津の補佐司教に任命され、中国政府・共産党に服従することを拒否する”地下教会”の当時の天津司教によって着座式がなされ、さらに2019年にその天津司教の後任に就いていた。

 バチカンと中国政府は2018年秋の司教任命に関する暫定合意をし、すぐにも天津司教が中国側から追認されると見られていたが、追認は暫定合意から6年後となったわけだ。

 中国メディアによると、”着座式”でShi司教は「中国憲法を支持し、中国の統一と社会の調和を守り、国と教会の両方を愛し、中国におけるカトリックの中国化の方向性を常に支持する」ことを誓うよう求められたという。「中国化」とは、中国以外に”本拠”をもつ社会や集団の中国文化への同化を意味する中国政府・共産党の用語であり、香港の元教区長、ジョセフ・ゼン枢機卿を含む教会関係者の間では、「中国政府・共産党が教会を支配するための煙幕」との批判が起きている。

 カトリック系メディアAsia News、95歳のShi司教を補佐する補佐司教の任命が同時に発表されなかったことで、「天津教区の将来は不確実であるように思われる」と指摘している。

 一方、教皇フランシスコは、今月初めのイエズス会中国管区の報道担当者との会見で、中国を訪問したいという願望を改めて示し、中国の教会と文化を賞賛。中国のカトリック教徒を「忠実な人々、彼らは忠実な人々。多くのことを経験し、忠実であり続けた人々。忍耐の達人であり、待つことの達人であり、『希望のウイルス』を持っている」と讃えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月29日

・バチカン、教皇任命の天津司教を中国が追認したことを「長年の対話の成果」と歓迎

(2024.8.27  Vatican News)

 バチカン報道局は27日、中国政府が同日付けでShi Hongzhen司教を天津司教として公式認定したことを歓迎する声明を発表した。
 声明は、今回の中国政府の決定を「バチカンと中国政府の間で長年にわたって確立されてきた対話の前向きな結果」と評価した。また、天津教区には約5万6000人の信者がおり、21の教区に分散しており、62人の司祭と「かなりの数の」修道女が奉仕している、としている。
 Shi Hongzhen司教は1929年1月7日に生まれ、1954年7月4日に司祭に叙階された。1982年に当時の教皇ヨハネ・パウロ二世によって司教に任命され、中国政府・党への服従を拒否する”地下教会”の天津教区長の Li Side司教によって同年6月15日に、もう一人の司祭とともに天津教区補佐司教に秘密裏に叙階された。そして、Li Side司教の後を継いで、2019年6月8日に天津司教となったが、中国側はこれまで認定していなかった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年8月28日