・中国政府の残虐行為とチベットの人々の抵抗を振り返る特別展ー亡命政府が置かれたインドのダラムサラで

1987年10月1日、ラサで行われたデモの際に、僧侶ジャンパ・テンジンが写っている象徴的な写真。ジョン・アッカーリー撮影。(1987年10月1日、ラサで行われたデモの際に、僧侶ジャンパ・テンジンが写っている象徴的な写真=ジョン・アッカーリー撮影)。

 

 ダラムサラのチベット博物館で始まった特別展は、チベット人が中国政府による暴力に立ち向かい、抵抗運動を歴史に刻んだ3年間を垣間見ることができる。

    ダラムサラは、チベット亡命政府が置かれ、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の住居があるインド北部の都市。

 そのチベット博物館で開かれた特別展の開会式は、シキョン・ペンパ・ツェリン(チベット亡命政府の首長)、元政治犯、海外からの目撃者、そして動乱を経験したチベット人たちが出席する厳粛な雰囲気の中で行われた。

 バターランプが灯され、リボンが切られ、出席者たちは1987年から1989年までの時代を彷彿とさせる空間へと足を踏み入れた。式典は、写真、文書、証言を通して蜂起の物語が展開される前に、静寂のひとときを演出した。

 展示ホールを巡ると、1987年のラサの雰囲気が伝わってくる。当時、デプン寺とセラ寺の僧侶たちがチベットの旗を掲げ、北京が押し付けた政治体制への集団的な拒否を表明するスローガンを叫びながら街頭に繰り出した。

 抗議活動はチベット全土に広がり、後に亡命した中国当局者の証言によれば、40ヶ所以上で150回を超えるデモが行われた。この騒乱の規模は、国家との対立という瀬戸際に社会が達していたことを示しており、中国治安部隊の対応はますます暴力的なものとなっていった。

 目撃者であるブレイク・カー博士とジョン・アッカーリーは、若い旅行者としてラサに入り、弾圧の真っ只中に身を置くことになった。彼らの回想は、この展覧会で最も鮮烈な要素の一つとなっている。

 アッカーリーは、カメラバッグにチベット国旗のステッカーが貼ってあったため、警察に逮捕された。カーは、何十年にもわたって記憶に残る光景を語った。肘が折れるまで腕を縛られた囚人、処刑前に最後の言葉を残さないために舌を切られる者、そして1987年9月にダライ・ラマが五点和平案を発表した後、街中を走り回りプロパガンダを流す拡声器付きのトラックなどである。

カー氏とアッカーリー氏が展覧会を訪れた際の写真。出典:チベット中央政権。(左の写真:カー氏とアッカーリー氏も展覧会を訪れた=出典:チベット中央政権。

 そして1987年10月1日、中華人民共和国の建国記念日に、蜂起は激化した。ジョカン寺院近くのバルコル川には煙が立ち込めた。セラ派の僧侶たちは寺院の周りを回り、「チベットを解放せよ、中国はチベットから出て行け」と叫び、多くの僧侶が連行された。

 カー氏は、警察のトラックが到着し、警官がアザラシの赤ちゃんを棍棒で殴るような残虐さでチベット人を殴打する様子を覚えている。治安部隊は屋上や路上から発砲した。父親は心臓を撃たれた10歳の息子を抱えていたが、出血を止めようとしたにもかかわらず、子供は数秒後に息を引き取った。25歳の若者もすぐに倒れた。

 2人のアメリカ人は、暴力の規模を示す他の場面も目撃した。彼らはカメラを通して、チベットの旗を掲げる僧侶、高所から発砲する警察、そして近隣地域を襲撃する襲撃の様子を記録した。

 彼らの証言には、強制堕胎や不妊手術を受けたチベット人女性の苦しみも記されている。友人リンチェンの物語は、当時のチベット人家族に課せられた政策の一例として、展覧会で紹介されている。

 蜂起は街頭デモにとどまらず、刑務所にも及んだ。獄中でも政治活動が続けられたため、刑期は当初の予定をはるかに超えて延長されることが多かった。

 国際的な圧力により、最終的には一部の囚人が釈放されたものの、多くの囚人が行方不明になったり、命を落としたりした。

 この展覧会では、カーとアッカーリーがチベットを離れた後、ダラムサラへ向かった旅も紹介されている。彼らは生存者たちと面会し、弾圧を記録した展示を見学し、ダライ・ラマに目撃証言を伝えた。彼らの写真と証言は、蜂起の歴史記録の一部となった。

シキョン・ペンパ・ツェリンが展覧会の開会式を行った。(右の写真:シキョン・ペンパ・ツェリンが展覧会の開会式を行った)

 チベット亡命政府の首長、シキョン・ペンパ・ツェリンは、就任式での発言で、一連の出来事をより広い歴史的流れの中に位置づけた。彼は1950年代の中国軍による東チベット侵攻、1951年に強制的に署名された17項目協定、そしてその後の数十年間の荒廃に言及した。

 また、チベットの指導者によって書かれた中国共産党の政策に対する最も詳細な内部批判の一つである、第10世パンチェン・ラマの7万字嘆願書にも触れた。

 さらに、インドでの亡命初期、ダラムサラでの共同体の設立、そして1967年に始まったダライ・ラマの海外訪問についても語った。1987年と1988年にチベットを訪れた外国人は抗議活動に遭遇し、その体験を世界に伝え、国際的な注目を再び集めることに貢献した。

 プログラムは、チベットのために立ち上がった人々への賛辞で締めくくられた。この展覧会は、若いチベット人や来場者に、蜂起当時の雰囲気、参加者の勇気、そして彼らが耐え忍んだ暴力について理解する機会を提供する。

 博物館の展示室には、当時の断片が展示されており、来場者はそれらを巡りながら、チベット人がどのように闘争を歴史に刻んだのかを理解することができる。

2026年9月23日

・「中国の海外発信メディアは洗練された体裁を取りながら、党が認めた”物語”を伝えるシステム下で運営されている」国際人権組織が報告書

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    Safeguard Defenders(スペインのマドリードを拠点に活動する非政府組織(NGO)の人権団体)がこのほど発表した報告書「違いを見よ」(写真右)は、CGTN(China Global Television Network=中国国営メディア・グループ「中央広播電視総台(CMG)」傘下の国際ニュース放送・配信ネットワーク)が国際的かつプロフェッショナルな放送局を装いながら、実際には中国共産党が承認した”物語”を伝えるために作られたシステム下で運営されている実態を明らかにしている。

報告書の表紙。

 CCTV-9(中国中央電視台の中国語ドキュメンタリーチャンネル)からCGTNへの変貌は、「ビッグパンツ」と呼ばれる超高層ビルに拠点を構え、訪問者や従業員に感銘を与える近代的なイメージを作り出した。しかし、そのイメージの裏側では、ニュースルームは議論の場というよりは、統制された部屋のような様相を呈していた。

 元スタッフは「これまで働いた中で最も印象的な外観の場所だったが、中は眠気を誘うような場所だった」と回想し、別のスタッフは「中国のあのニュースルームは図書館のようだった」と付け加えた。

    Safeguard Defendersの報告書は、アンカーや記者が厳格な台本に従い、逸脱の余地が一切ないことを説明している。校正担当者は、政治的に正しいかどうかを逐一チェックする中国人の「教師」の監督下で作業する。字幕やティッカーは事前に承認され、放送開始後は変更できない。ニュースルームは、探求心が服従に取って代わられ、プロ意識を装った裏にイデオロギー統制のシステムが隠されている場所となる。

 このシステムは、中国共産党中央宣伝部が監督する中国メディアグループ(CMG)内におけるCGTNの地位に根ざしている。沈海雄氏(写真左下)がCMGの社長に就任したことは、同組織の政治的性格を裏付けるものだ。

 報告書は、「客観性、合理性、バランス」という主張が原則ではなくスローガンとして機能していることを示している。国際情勢の報道は、あらかじめ決められた路線に沿っている。

シェン・ハシオン(報告書より)。

 ロシア・ウクライナ紛争の報道では、CGTNはロシア語を使用し、「侵略」などの用語を避け、モスクワの行動を「特殊作戦」と表現した。新疆ウイグル自治区については、開発や文化に関する肯定的な記事でプラットフォームを埋め尽くす一方で、収容所を「職業訓練センター」と表現した。

 元従業員たちは、プロパガンダが日々の業務にどのような影響を与えたかを語った。ある従業員は、「自分たちが扱うプロパガンダの量の多さに多くの人が驚いた」と回想している。

 プロパガンダは常にニュース価値を凌駕し、視聴者は常に二の次だった。デリケートな話題は避けられ、一部のスタッフは、課せられた要求と自分の仕事との折り合いがつかず、チャンネルを去った。

 信憑性があるかもしれない記事は、改変されたり、検閲されたりした。アンカーは文章を修正する選択肢もなく、オートキュー(テレビカメラの前方に映し出される原稿)を読み上げ、その手順に疑問を呈する者は叱責される危険があった。

 

 チェン・レイ(写真右)の事例は、こうした環境がもたらす結果を如実に示している。豪州人ジャーナリストのチェン・レイは、6か月間、秘密裏に拘束された後、2020年に公の場から姿を消した。CGTNは彼女の逮捕を報道せず、ウェブサイトからも彼女の情報を削除した。

 2023年に釈放され、豪州への帰国が許可された後のインタビューで、彼女は「ジャーナリストが職業上の地位によって守られている」と信じている場合に直面するリスクについて語った。「私たちがどれほど油断していたか、そして安全だと思っていたことが恐ろしい。自分に起こったことは、誰にでも起こりうる」と。彼女の経験は、従業員が何の理由もなく抹消される可能性のある政治体制の中で、この放送局がどのように運営されているかを示している。チェン・レイ。クレジット。

 検閲は外部からの指示と内部の沈黙の両方に現れる。党宣伝部から流出した文書は、抗議活動、経済データ、国際情勢の報道を規制していることを明らかにした。自己検閲は恐怖から生じる。ある元従業員は、「CGTNでは報道されないことがいくつかあるのは分かっていた」と説明し、「政府の意向に反する話を示唆することは考えられない」と付け加えた。

 アンカーたちは、「放送が始まると、自分で質問を作成したり、字幕を調整したりすることはできなかった」と証言した。その雰囲気は、「間違った耳に入らないように、放送中も放送外でも発言に気をつけなければならない」ものだったという。

 こうした状況にもかかわらず、CGTNは世界的な存在感を拡大している。2025年までに、ストリーミングとソーシャルメディアを通じて2億人以上の視聴者に届けられている、と主張した。新しいフォーマットを立ち上げ続け、中国で禁止されているプラ​​ットフォームでコンテンツを配信した。

 報告書は、こうした取り組みが、「中国に対する国際的な認識を形成し、反対意見の可視性を下げるという、より広範な戦略にどのように貢献しているか」を説明している。CGTNのウェブサイトに「偽情報通報ホットライン」が存在することは、同チャンネルが「プロパガンダ的な性質を否定しながら、自らの主張を操作している」という皮肉な側面を加えている。

 報告書は、「CGTNの多様性と公平性を装った表向きの姿の裏には、イデオロギーがあらゆる決定を支配するシステムが隠されている」と結論付けている。

 中国の世界的な影響力が拡大するにつれ、CGTNの背後にある仕組みを理解することは、政府、メディア関係者、そして視聴者にとって不可欠となる。報告書は読者に対し、洗練された放送と、その背後にある現実との「違いを見極める」よう促し、「画面は、しばしば『真実を明らかにする』よりも『隠している』ことが多い、と警告している

2026年9月21日

・米ダラスでキリスト教各派が団結し、中国での迫害に抗議の合同祈祷会(Bitter Winter)

ダラスで開催されるイベントのポスター。
(写真左*ダラスで開催された合同祈祷会のポスター)

 9月9日夕方、米テキサス州ダラス近郊のアレンで、キリスト教各派による「中国で迫害されている教会のための断食と祈りの日」と題する合同祈祷会が開かれ、ヨハネの手紙一4章18節「愛には恐れがない」をテーマに、現在も拘束、有罪判決、あるいは監視下に置かれている中国の家庭教会の牧師、説教者、そしてその家族のために祈りが捧げられた。ZoomとYouTubeで同時ライブ配信された。

 祈祷会は、ザイオン教会、アーリーレイン・コベナント教会/アーリーレイン・ミニストリーズ、ハーベスト・チャイニーズ・クリスチャン教会、チャイナエイド、その他の教会やキリスト教団体が共同で企画し、トリニティ・チャイニーズ教会とエバーライト・インスティテュートが主催。

 トリニティ・チャイニーズ教会は事前に告知を行い、9月9日夜にアレンで開催される特別祈祷会への参加を兄弟姉妹に呼びかけた。

 筆者はZoomを通して祈祷会に参加した。会では、数時間にわたり、中国で迫害を受けている牧師やキリスト教徒の名前が何度も​​読み上げられ、彼らとその家族のために繰り返し祈りが捧げられた。 

 近年、厳しい弾圧に直面している「家庭教会」の北京シオン教会、成都早雨契約教会、山西省臨汾金灯台教会などが、その夜の祈りの主な対象となった。

 「中国で迫害されている教会のための9日間の断食と祈り」は今年1月に始まり、毎月、さまざまな都市の教会が交代で主催している。

 ダラスでの9月9日の集会は、2018年の北京シオン教会の「9-9事件」の8周年とも重なった。北京シオン教会の代理主任牧師である龍江恩師は、「主の愛で結ばれ、勇気を持って前進する」と題したメッセージを分かち合った。彼は、2018年に北京のシオン教会のメイン聖堂が閉鎖された後、兄弟姉妹が圧力の下で集まり続け、「移動しながら礼拝」を行ったことを回想した。彼はまた、「10.9シオン事件」の現状についても説明した。(写真右:テキサス州アレンにあるトリニティ中国教会)テキサス州アレンにあるトリニティ中国教会。

 この事件は、2025年10月9日に起き、中国公安当局がシオン教会の牧師や関係者を逮捕した。シオン教会が現在公表しているリストによると、高英佳、殷慧斌、王林、王聡、劉振斌、林樹成、王忠、呉秋宇の8人の牧師と関係者が今も拘留されている。

 龍師はメッセージの中で「勇気、団結、そして愛」について語り、「迫害に直面するキリスト教徒は勇気を持つべきだが、それは憎しみや暴力ではなく、むしろ圧力の下でも信仰と良心を揺るぎなく保つことです」とし、「迫害の中でも団結を保ち、キリストの教えに従って迫害を行う人々のために祈るように」と呼びかけた。

 祈祷会では、こうした事件が家族に与えた被害についても語られ、王忠長老が拘留されている間、彼の父親は亡くなり、最期を見取ることもできなかった。呉秋玉も拘留された後、夫と幼い二人の子供と長期間、離れ離れになった。

 牧師や信徒が逮捕されると、苦しみは一人だけに降りかかるわけではない。両親、配偶者、そして子供たちは、しばしば共に長い別離の苦しみに耐えなければらない。だからこそ、祈祷会では迫害された人々の家族のために繰り返し祈りが捧げられた。

 

 ハーベスト中国キリスト教会の主任牧師である張博路牧師は、海外の華人教会が中国国内で迫害されている教会のために祈るべき理由を語った。そして、「ヘブライ人への手紙」13章3節を引用して、「鎖につながれている人々のことを、自分も一緒に鎖につながれているかのように思いなさい」と呼びかけた。

 張伯魯氏は、「中国国内で迫害されているキリスト教徒と海外の教会は、同じキリストの体です」とし、「海外の中国系キリスト教徒は、自由に集まり、公然と福音を説き、公に祈ることができる社会に暮らしているが、信仰のために投獄されている人々を忘れてはなりません」と強調。

 彼はまた、「海外の教会が立派な施設や様々な活動、交流ばかりに終始し、苦しむキリスト教徒のことを顧みなくなれば、容易に”クラブ”と化してしまう」と警告。「迫害されている教会のために祈ることは、憎しみを煽ることではなく、迫害の終結、囚われている人々の解放、そして権力者や迫害に加担する人々の悔い改めを願うことなのです」と訴えた。

 祈祷会では、成都早雨契約教会の王毅牧師のためにも祈りが捧げられた。王毅牧師は2018年12月9日に逮捕され、2019年12月30日に「国家権力転覆扇動罪」と「違法営業罪」で懲役9年の判決を受けた。彼は現在も四川省で服役中で、釈放予定日は2027年12月9日とされている。

 山西省臨汾金灯台教会の楊栄麗牧師も、具体的に名前が挙がった。彼女は2025年に懲役15年の判決を受け、中国における近年の家庭教会関連事件で、最も重い刑を受けたキリスト教指導者の一人となった。

 集会では曹三強牧師への支援も訴えられた。曹牧師は7年間服役した後、2024年3月に釈放されたが、中国からの出国は依然として禁止されている。今年4月には末期の前立腺がんと診断された。参加者たちは、曹牧師がパスポートを取得して米国へ渡航し、妻や家族と再会できるよう、中国当局に嘆願書への署名を求めた。

トリニティ中国教会の聖歌隊。(写真左:トリニティ中国教会の聖歌隊)

 北京シオン教会の創設牧師である金明利牧師もビデオメッセージで集会に参加した。2025年10月に拘束された金牧師は、今年7月に突然釈放され、7月3日にロサンゼルスに到着し、家族と再会した。

 ビデオメッセージの中で、金牧師は中国国内外の教会に対し、長年にわたる祈りに感謝の意を表した。また、依然として拘束されているシオン教会の牧師や協力者8名への祈りを継続するよう呼びかけた。

 アーリーレイン契約教会の海外会員である王承宗兄弟は、「中国時間午後5時」の祈祷会についても紹介しました。その祈祷会は、投獄されたキリスト教徒とその家族の間で交わされた約束から始まる。高い壁で隔てられていても、毎日午後5時には、壁の内外の人々が同時に祈る。時を経て、この約束は長期にわたる、地域を越えたオンラインでの執り成しの祈りへと発展した。

 祈祷会では、中国当局によって逮捕、有罪判決を受けた牧師だけでなく、その配偶者、子供、両親、事件に関わった弁護士、そして迫害を実行する人々のためにも祈りが捧げられた。

 数時間にわたるオンラインでの参加で、筆者に最も強い印象を与えたのは、次々と読み上げられる名前の数々だった。どれもが中国当局に拘留されている人々の名前だった。

 中には何年も刑務所に収監されている人もいれば、裁判の結果をまだ待っている人もいる。父親や母親の帰りを待っている子供たちもいる。中国国外のキリスト教徒は、彼らの苦しみを代わりに味わうことはできないが、せめて彼らのことを覚えていて、彼らのために祈り、彼らが経験していることをより多くの人に伝えることはできる。

 祈祷会中に繰り返し引用された「ヘブライ人への手紙」13章3節にあるように、「鎖につながれている人々のことを思い起こしなさい。まるで自分も彼らと共に鎖につながれているかのように」。


*中国の実業家。反体制派として中国当局から迫害され、2022年に中国から脱出した。現在はロサンゼルスを拠点としている。海外でキリスト教に改宗し、張伯立牧師のハーベスト・チャイニーズ・クリスチャン・チャーチの会員となった。中国におけるキリスト教徒迫害に関する記事を複数の新聞や雑誌に寄稿している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載している。

2026年9月16日

・「習総書記の宗教活動に関する重要論説を深く研究し理解」を強調―中国の司教協議会と天主愛国協会の第10回合同会議

 中国天主教(カトリック)司教協議会と中国天主愛国協会の第10回合同会議が10日、中国天主教神学校で開催された。中国天主教司教協議会の沈斌主席が議長を務め、中国カトリック愛国協会の李山主席が閉会の挨拶を行った。中国カトリック司教協議会と中国カトリック愛国協会の第10代主席、副主席、事務総長が出席した。中国共産党中央統一戦線工作部第12局の関係指導者も出席し、挨拶を行った。

 李山司教は、中国共産党創立105周年記念式典における習近平総書記の演説全文を全員で徹底的に研究した。中国カトリック司教協議会副会長の郭金才司教は、2026年上半期の中国カトリック司教協議会と司教協議会の活動概要と今後の活動計画について報告した。

 中国天主教司教協議会副会長の楊永強司教は、天主教共同体が「中華人民共和国国家統一進歩促進法」を研究、広報、実施するための実施計画について報告した。沈斌司教は、未成年者の保護に関するいくつかの法的規定を伝えた。

 会議では、政治意識を高め、習近平総書記の宗教活動に関する重要な論説を深く研究し理解し、天主教共同体による「中華人民共和国国家統一発展促進法」の研究と実施を着実に推進する必要性を強調した。また、社会主義の核心的価値観と優れた中国の伝統文化を説教や教説に取り入れ、聖職者と信徒が国家、歴史、民族、文化、宗教について正しい見解を確立するよう指導し、「五つの認識」を継続的に強化していくことを強調した。

 さらに、中国における天主教の中国化をさらに推進するため、「中国天主教の中国化深化五カ年計画概要(2023~2027年)」に示された目標と課題に沿って取り組む必要性も強調した。同文書は、「法を学び、戒律を守り、自制を重​​んじ、好印象を築く」。教育キャンペーンの成果を確固たるものにし、内部規則や制度を改善し、聖職者の行動規範の構築を継続的に強化し、自己教育、自己管理、自制に対する内発的な動機を高めることを求めた。

 最後に、人材育成の重要性を強調し、宗教機関を人材育成の主要拠点として活用し、天主教の「二重人材育成」プログラムを模索し、政治的に信頼でき、質が高く、構造的に健全で、有能な聖職者チームの構築に努めることを求めた。

 中国共産党中央統一戦線工作部第12局の指導者たちは、「一会一集団」の活動を全面的に評価し、思想・政治指導の強化、教会の標準化された管理水準の向上、中国における天主教の中国化の方向性の堅持、教会の包括的かつ厳格な統治の堅持など、天主教の現状の活動に対する明確な要求を提示した。

 出席者全員が、各教区に戻った後、会議の精神を積極的に伝え、実践に移し、愛国心と宗教への愛、社会への奉仕という具体的な行動へと転換していくと表明した。

 また、中国におけるカトリックの中国化をさらに推進し、宗教の包括的かつ厳格な統治を強化する上で模範的な役割を果たし、天主教が社会主義社会に適応できるよう積極的に指導し、我が国における天主教の健全な継承を守り、国家の団結、宗教の調和、社会の調和、そして国家の長期的な安定に貢献していくと述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

2026年9月14日

・中国の農村地域で宗教的シンボルの一方的破壊を拒否する動きが強まっている(Bitter Winter)

(2026.9.8 Bitter Winter  曽立

(写真は、後陽村で警察と対峙する村人=ソーシャル・メディアの動画から)侯陽村で村人たちが警察と対峙する様子。スクリーンショット。

 中国・福建省の後陽村で9月4日に発生した衝突は、宗教的シンボルに対する弾圧運動に直面している農村地域における、高まる決意を明らかにした。

 当局は、村人たちが共同体のアイデンティティの一部とみなしている観音像を撤去するため、解体チームを率いて現場に到着した。

 しかし、この作戦はすぐに組織的な抵抗に遭い、事態は長期にわたる膠着状態に発展した。衝突中に女性村人が負傷し病院に搬送されたことで、既に緊迫していた状況はさらに緊迫した。

 ソーシャルメディアで拡散されている動画には、村人たちが解体作業員を取り囲み、作業の中止を叫んでいる様子が映っている。

 ある場面では、数人が反抗の意思表示として、作業員に向かって液体肥料を投げつけた。この行為は、彼らの強い不満を示すためのものであり、現場の当局者には手に負えない状況を生み出した。解体作業員は撤退し、当局は(少なくとも一時的に)作業を中断した。

 後陽村の事件は孤立した事例ではない。複数の省からの報告によると、村人たちは、相談なしに像や小さな寺院、その他の宗教的な建造物を撤去する決定に反発を強めている。これらの地域社会は、そうした建造物を「自分たちの歴史の一部」とみなしており、外部勢力が地元の感情を無視して行動していると判断した場合、迅速に立ち上がる。

 後陽事件の結末は依然として不透明だが、9月4日に示された抵抗は、農村住民が解体チームに直接立ち向かい、その結果に耐える覚悟があることを示している。

負傷した女性は病院へ搬送される前に介助を受けている。スクリーンショット。

 当局は今後の対応について詳細な声明を発表しておらず、村人たちは新たな試みの可能性に警戒を続けている。負傷した女性の容態は地域社会の同情を集めており、彼女が入院していることは、政府の作戦に反対することに伴う危険性を改めて認識させるものとなっている。

(病院へ搬送される前に手当てを受ける女性)

 解体工事の中止により村は一時の猶予を得たが、住民たちは当局が再び工事を再開した場合に、どう対応するかについて、引き続き話し合っている。

 観音像の将来は依然として不透明であり、状況は予測不可能な方向に展開する可能性がある。しかし、9月4日に示された抵抗運動は既に村の雰囲気を形作り、近隣のコミュニティでの議論にも影響を与えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載している。

2026年9月14日

・中国の”地下教会”支援の弁護士が、当局の弾圧で台湾に脱出(Crux)

(2026.9.3  Crux  カニス・ レオン=AP)

    北京の著名な地下教会を弁護していた中国人弁護士が、所属事務所や同僚に対する中国当局の圧力の高まりを受け、台湾に脱出し、移住のための支援を求めている。この弁護士は、VDoor法律事務所のパートナーであるルース・ワン氏で、2025年10月から北京のシオン教会の牧師らを代理する弁護団の一員だった。

 ワン氏は3日、AP通信とのオンラインでの独占インタビューに応じ、「中国当局から直接的な圧力を受けている。法律事務所を解散するか、閉鎖されるかのどちらかだ」と通告された、という。

 昨年10月、中国のシオン教会の創設者であるエズラ・ジン牧師を含む18人の信者が逮捕された。これは、中国における数十年来最大規模の教会弾圧の一つだった。ジン牧師は、ドナルド・トランプ米大統領が5月の会談で習近平中国国家主席に彼の件を提起した後、2か月前に釈放された。

 ワン氏は「もし私がVDoor法律事務所のパートナーとして解散に同意せず、同意書に署名しなかったら、どうなるのでしょうか?間違いなく、私のキャリアや人生の他の側面に深刻な影響を与えるでしょう」と語った。彼女の苦境は、ジン牧師の釈放後も、中国が教会とその関係者に対する圧力を続けていることを浮き彫りにしている。

 2007年にジン牧師によって北京に開設されたシオン教会は、中国当局に登録されていない、いわゆる”地下教会”または”家庭教会”の中でも最大規模の一つだ。彼らは、信者が登録された教会でのみ礼拝を行うことを義務付ける中国政府の規制に反抗している。

 米国留学中の中国シオン教会の牧師、ショーン・ロング師は昨年AP通信に対し、同教会の信者数は5000人を超え、中国国内約40都市のアパート、レストラン、さらにはカラオケバーなど100か所以上の礼拝所がある、と語った。

 中国当局の締め付けが強まる中、当局が反体制派とみなした人々を支援する弁護士たちもまた、圧力に直面している。

 VDoor法律事務所は一連の困難に直面している。同社の創業者でありワン氏の指導者でもある張凱氏の弁護士資格は剥奪され、出国も禁止された。他の弁護士も6か月間の業務停止処分を受けた。

 ワン氏によると、司法当局は、同事務所の弁護士に対し、シオン教会に関連する訴訟の弁護を中止し、事務所を辞任するよう求め、同事務所の弁護士で他の事務所に移籍しようとした者も制限を受けた、という。

 ワン氏は先月、家族と日本で夏休みを過ごしたが、中国当局から滞在先に電話があり、直接会いに来るよう求められた。彼女は「今、北京にいないので、行けない」と伝え、その後、帰国しないことを決めた。

 米国に拠点を置く非営利人権団体ChinaAidの創設者であるボブ・フー氏は、「ワン氏の事件は、迫害されているキリスト教徒やその他の良心の囚人を弁護しようとする弁護士が直面する途方もないプレッシャー受けていることをを示している」と述べた。

 「ワン弁護士は弁護士としての最も基本的な責任を果たそうとしたが、依頼人の中には北京シオン教会の関係者で拘束されている人物が含まれているため、彼女自身が次の標的になるのではないかと恐れるようになった。」

 フー氏は、台湾政府に対し、王氏の家族を保護し、中国本土への強制送還が行われないよう保証するよう強く求めるとともに、米国をはじめとする民主主義国家に対し、台湾が解決策を見出すための支援を行うよう呼びかけた。

 中国公安局はコメントを出さず、この件について問い合わせを受けた北京市司法局(法律免許を管轄する機関)は「当方には、国際メディアへの対応権限がない」と述べた。

 また、台湾における事実上の米国大使館である米国在台湾協会も、コメントの要請にすぐには応じなかった。

 ワン氏は、王さんは家族とともに台湾の空港に到着すると、現地当局に助けを求め、他国と連絡を取る間、滞在許可を求めた。台湾当局は、一時的な滞在を許可したが、中国政府と台湾の与党である民主進歩党の緊張関係のため、政治亡命申請を受け入れることはできない、と告げた。

 中国が自国領土の一部とみなす台湾には、正式な難民政策はない。北京と台湾の関係が緊迫するにつれ、台湾は中国がもたらす安全保障上のリスクに対して警戒を強めている。北京による香港への支配強化を理由に、香港からの移住を希望する一部の人々への永住権付与を拒否したり、台湾で結婚・移住した中国出身者に対する監視を強化したりしている。

 台湾の行政院大陸委員会は電子メールでの回答で、「台湾には政治亡命を扱う法律はないものの、そのようなケースに対応するための仕組みがあり、それに応じて対処する」と答えた。

 ワン氏は、「家族が移住する方法として、米国やカナダへの留学などの選択肢を検討している。それが不可能な場合は、海外で亡命申請を行うことを考える」という。

 そして、「私たちの家族は現在、不確かな未来に直面している。将来何が起こるのか、あるいは私たちを受け入れてくれる場所があるのか​​どうかも分かりません」と述べ、「ルツが新しい土地に移り住んだ後、将来への不安に直面していた時、神が裕福な親戚であるボアズを遣わして彼女を助けた」という旧約聖書の箇所を取り上げ、「神様はきっと私にも、そのような人を与えてくださると信じています」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2026年9月4日

・香港の裁判所、抗議活動支援基金を巡る有罪判決を不服とする陳枢機卿と民主派4人の控訴を棄却

(2026.9.3 Crux   カニス・レオン=AP)

  香港の裁判所が3日、反政府デモで逮捕された人々を支援することを目的とした基金を登録しなかった罪で有罪判決を受けた94歳の陳日君・枢機卿ら5人による控訴を棄却した。

 引退司教であり、香港における民主主義の熱心な擁護者である陳枢機卿は、2021年10月に活動を停止するまで、逮捕された抗議活動参加者の医療費や弁護士費用を負担する「612人道支援基金」の理事を務めていた。他の被告である歌手のデニス・ホー、学者のホイ・ポー・キョン、そして元民主派議員のマーガレット・ンとシド・ホーも、いずれも理事を務めていた。

 5人は2022年、結社条例違反で有罪判決を受け、それぞれ4000香港ドル(512米ドル)の罰金を科された。同条例は、地元の団体が設立後1か月以内に登録するか、免除申請を行うことを義務付けている。彼らの有罪判決は、このような事例としては初めてのものだった。

 オブザーバーらは、この事件は市の結社の自由にとって重要な意味を持ち、2019年の大規模な反政府デモ以降の市の劇的な政治変動の中で、注目されてきた、としている。

 香港の裁判所の4人の裁判官による判決は「この基金は設立後1か月以内に登録または免除の申請を行わなかった」とし、「2019年の抗議活動を支援するための寄付を募り、集め、使う手段としてこの基金を利用することを意図していた」と述べた。

 また、「この基金は、控訴人らが信託に基づいて保有している単なる金銭の総額以上のものであり、控訴人を含むいかなる個人も、登録制度によって結社の自由の権利の行使に課される制限によって、容認できないほど厳しい負担を強いられることを示唆する証拠は何もない」としている。

 控訴棄却の判決の後、元民主派議員のマーガレット・ン氏は記者団に対し、被告側は最高裁判所に上訴することを言明。「最高裁判所は『団体』の定義を明確にする必要があり、他者と活動を行う際に警察への登録や免除申請が必要になるのかどうかについても判断する必要がある」と主張し、「最古際の判断は、香港の市民社会に大きな影響を与える」と述べた。

 陳枢機卿は杖を手に法廷に姿を現した。彼と他の4人は、北京が施行した国家安全維持法に基づき、外国勢力と共謀した疑いで2022年に逮捕され、カトリック界に大きな衝撃を与えた。ただ、枢機卿は同法に基づいて起訴はされることはなかった。

 2022年に有罪判決を受けた後、枢機卿は「自身の事件は、香港における信教の自由とは関係ない」と語っていた。

 2019年の抗議活動は、犯罪容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする法案(後に撤回)をきっかけに始まり、数か月にわたる暴力的な騒乱へと発展した。そして、2020年の施行以来、香港の民主化運動は国家安全維持法による当局の弾圧で麻痺状態に陥り、多くの活動家が投獄されている。

 国家安全維持法とその執行は、1997年に中国に返還された旧英国植民地である香港の自由に対する国際社会の信頼をも損なっているが、北京と香港当局は「この法律は香港の安定のために必要だ」との主張を続けている。

2026年9月4日

・英国のカトリック指導者、ウェストミンスター大司教が国際的な信教の自由を求める運動に参加

(2026.8.18 Crux Now Staff)

 イングランドおよびウェールズにおけるカトリック教会の最高位聖職者、リチャード・モス・ウェストミンスター大司教が18日、世界中で展開されている宗教差別反対の大規模なキャンペーン、宗教の自由を擁護する世界人権宣言第18条に定められた約束を各国が履行するよう求める「苦難に喘ぐ教会への援助(ACN)」の請願を支持する声明を発表した。 

 声明で大司教は「第18条はあまりにも頻繁に無視されている。男性も女性も投獄され、家を追われたり、あるいは平和的な信念を抱いただけで殺されたりしている」と指摘。

「一部の国では、女性や少女が誘拐され、信仰を捨てて誘拐犯と結婚することを強いられ、子どもたちは信仰について学ぶ権利を奪われている。老若男女を問わず、多くの人々が宗教的憎悪の犠牲になっている。彼らは街頭や学校、職場で虐待や差別を受けている」と強調した。

 ACNの請願書には、リバプールのアルトン英国議会上院議員、保守党議員のエドワード・リー卿といった国会議員のほか、イラクのアルビル大主教バシャール・ワルダやロンドンのコプト正教会大主教アンゲロスなど、多くの宗教指導者が署名している。

 モス大司教は、「私たちはキリストにある兄弟姉妹のために立ち上がり、信仰のために苦しむすべての人々を支援し、信教の自由を普遍的な人権として認識する必要がある」と言明した。

 *ACNの信教の自由を求める請願書を閲覧し、署名するには、https://acnuk.org/article-18-petition-religious-freedom-human-right-not-privilegeをクリック。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2026年8月20日

・バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意は「悪魔との取引、地下教会への裏切り」—信教の自由の運動進める英国の有力上院議員が批判

(2026.8.18 Crux  European correspondent  Fionn Shiner)

 アルトン卿は、カトリック系慈善団体「苦難に喘ぐ教会への援助(ACN)」が各国に対し、宗教の自由を擁護する世界人権宣言(UDHR)第18条の義務を履行するよう求める請願書の主要署名者の一人だ。

 アルトン卿は「相手が中国共産党政権の場合、暫定合意は悪魔と取引をしているようなものだ。ウイグル系イスラム教徒に対する大量虐殺を行い、チベット仏教徒、法輪功学習者、そして中国のキリスト教徒を迫害している政権なのだ」とし、「バチカンは、中国共産党を怒らせることを恐れて、宗教の自由に対する重大な侵害について沈黙を守ってきた」と批判。

 さらに、「バチカンは、教皇に忠誠を誓い、共産党政権から迫害されてきた地下カトリック教会を裏切り、共産主義国家の単なる延長に過ぎない『公認教会』を受け入れ、信仰を共産主義イデオロギーに置き換えた」と述べた。

 ACNが進めるこの請願書の署名運動について、英国カトリック教会の指導者の一人、ウェストミンスター教区長のリチャード・モス大主教は18日、これ支持する声明を発表。「私たちはキリストにある兄弟姉妹のために立ち上がり、信仰のために苦しむすべての人々を支援し、信教の自由を普遍的な人権として認識する必要がある」と言明した。モス氏は述べた。

 Crux Nowはまた、ACN(英国)の広報・渉外責任者であるジョン・ポンティフェックス氏にも話を聞いた。ポンティフェックス氏は、 「宗教的差別を受けているすべての人々のために声を上げることは、キリスト教徒迫害との闘いにおいて極めて重要な要素だ。迫害されているキリスト教徒を擁護するというなら、宗教の自由全般を擁護しなければならない。そうでなければ、ある集団のニーズが他の集団のニーズよりも重要だと考えていることになる。それは、特別扱いを求める行為に他ならない。信教の自由は、決して少数の者だけの権利であってはならない。それは全ての人々の権利であり、そうでなければ何の意味もない」と語った。 

 アルトン会長とポンティフェックス氏のCrux Nowとの一問一答は次の通り。

問:宗教の自由は「炭鉱のカナリア」のような人権であるとよく言われる。つまり、この権利の侵害は他の権利の侵害を示唆するということだ。この点について詳しく説明していただきたい。

アルトン卿:信教の自由という原則が侵害されるとき、それはしばしば他の人権も危険にさらされている兆候となる。その意味で、それは炭鉱のカナリアのようなものだ。有毒で致死的な化学物質が作業環境に漏れ出し始めていることを鉱夫たちに警告した鳥だ。警告を無視すれば、壊滅的な結果を招くことになる。

ジョン・ポンティフェックス:歴史は、思想、良心、宗教の自由が、国が自由から抑圧へと転落していく際に、しばしば、いや、ほぼ常に、最初に犠牲となることを繰り返し示してきた。信教の自由は、国家または非国家主体による攻撃の格好の標的となりやすく、そのため抑圧勢力は人々を抑圧しようとする際に、まず信教の自由を標的にすることが多い。私が訪れた多くの国々では、迫害が蔓延しているが、そうした国々で地域社会の指導者も住民も、この現象を指摘していた。

問:今日、宗教の自由に対する最も深刻な侵害はどこで起きているのでしょうか?

アルトン卿:信教の自由は世界の多くの地域で侵害されている。中国、北朝鮮、エリトリア、イラン、パキスタン、ナイジェリア、ニカラグアは、そのリストの上位に挙げられるだろう。

ジョン・ポンティフェックス:私たちACNの「世界の宗教の自由に関する報告書」最新版と『迫害され忘れ去られた人々? 』の連続版で明らかにしているように、北朝鮮は宗教または信条の自由に関して人々が最も苦しんでいる国のリストのトップに挙げられている。この国では、聖書を所有すること、宗教宣教師と接触すること、宗教儀式に参加することなどが、拷問や強制労働につながる可能性がある。

 他の国々も状況はさほど変わらない。アフガニスタンでタリバンが政権に復帰して以来、宗教的少数派は暴力と組織的な抑圧に苦しんでおり、礼拝所への攻撃も頻繁に発生している。あらゆる証拠が、攻撃と抑圧が悪化していることを示している。 

 最も懸念される点の一つは、宗教の自由に対する深刻な侵害が最も多く見られるのが、世界の主要国の一部であり、しかもその状況はあらゆる報告によると悪化の一途を辿っているということだ。ここで私が念頭に置いているのは中国のことだ。中国では、国や地方の法律によって、若者や子供たちがほとんどの形態の公的および地域社会における宗教生活から排除されている。

 そしてインドでは、宗教的な動機に基づく規制や法律上の規制が急増し、近年著しく悪化している。

問:ACNの請願書は、国連および各国政府に対し、第18条を保護するためのさらなる行動を求めている。彼らにどのような具体的な行動を望むか?

アルトン卿:1948年の世界人権宣言第18条は、信じる権利、信じない権利、または信仰を変える権利を保障している。世界人権宣言の署名国による明白な違反は指摘されるべきであり、違反事例は定期的に国連人権理事会に提出されるべきだ。こうした事例は、英国と違反国との二国間会談でも取り上げられるねばならない。我々はあまりにも頻繁に沈黙し、見て見ぬふりをしている。

ジョン・ポンティフェックス:世界中の国々が、第18条に明記されている宗教または信条の自由の完全な表現に対する新たな取り組みを示すべき時が来ている。これは、宗教の自由の侵害に関与する非国家主体を根絶するという新たな決意、宗教生活や宗教的実践に対する制限を終わらせる法改正、そして宗教の自由へのコミットメントがすべての国家機関、教育機関、企業、メディア、文化に根付くよう改めて行動を起こすことを意味する。

問:ACNの請願の意義について説明していただきたい。この取り組みにどのような期待をお持ちか?

ジョン・ポンティフェックス:これは、苦難に喘ぐ教会への援助が世界規模の提唱キャンペーンを開始する初めての試みだ。ACNのスタッフ、プロジェクトパートナー、そしてイラクからナイジェリア、ドイツ、メキシコ、そしてここイギリスに至るまでの支援者たちが、この活動を支えている。私たちは、キリスト教徒だけでなく、あらゆる信仰を持つ人々、そして無宗教の人々の権利を守るための、力強い普遍的な呼びかけを発信したいと考えている。

 この嘆願書は大きな反響を呼び、あっという間に1万4000件以上の署名が集まった。カトリック教会からイングランド国教会、コプト正教会、そしてウクライナ・ギリシャ正教会まで、様々な宗派の教会指導者の方々からご支援をいただいている。私たちはキリスト教徒から多くの支援を受けただけでなく、他の宗教からも支援を受けており、パキスタンで最も迫害されている宗教グループの一つであるアフマディーヤ・ムスリム共同体も、この取り組みを強く支持してくれている。

 私が願うのは、この嘆願書を通して、皆で協力することで、信仰や信条のために迫害されている人々の声が、国連という最高レベルの場で届くようにすること。私たちは、世界中の政府が、宗教の自由が単なる言葉ではなく、特権階級のごく一部の人々だけでなく、すべての人にとって現実のものとなるよう、できる限りのことをしてくれることを望んでいる。

問:ACNは、迫害を受けているキリスト教徒や、信仰を理由に差別を受けている他宗教の信者を支援している。これら二つの問題にはどのような相互作用があるのか?両者はどれほど密接に関連しているのか?

ジョン・ポンティフェックス:迫害されているキリスト教徒を擁護するなら、宗教の自由全般を擁護せねばならない。そうでなければ、ある集団のニーズが他の集団のニーズよりも重要だと決めつけていることになる。そうすることは、特別扱いを求める行為に他ならない。信教の自由は、決して少数の者だけの権利であってはならない。それは全ての人々の権利であるべきであり、そうでなければ何の意味もない。 

問:アルトン卿、あなたは過去に、宗教の自由の侵害で激しい批判を浴びている中国政府とのバチカンの暫定合意を批判してきた。なぜそれが悪い考えだとお考えですか?

アルトン卿:全体主義的な共産主義独裁政権との秘密協定は、良い結果をもたらすことはまずない。中国共産党政権の場合、それは悪魔との取引に等しい。ウイグル系イスラム教徒に対する大量虐殺を行い、チベット仏教徒、法輪功学習者、そして中国のキリスト教徒を迫害している政権なのだから。

 バチカンは中国共産党の怒りを買うことを恐れ、宗教の自由に対する重大な侵害について沈黙を守り続けている。1965年の「人間の尊厳」で表明された原則は無視され、英雄的なヨゼフ・ゼン枢機卿や、香港の刑務所で死に瀕しているカトリック教徒の良心の囚人、ジミー・ライへの扱いは、まさに言語道断だ。。 

 バチカンとヒトラーの第三帝国との間で結ばれた政教協約と、聖ヨハネ・パウロ二世がソ連の共産主義独裁政権に対して示した予言的で賢明かつ勇敢な対応を比較すれば、中国において我々がどちらの道を進むべきだったかが分かるだろう。それどころか、バチカンは忠実で迫害されてきた地下カトリック教会を裏切り、共産主義国家の単なる延長に過ぎない「公式」教会を受け入れ、信仰を共産主義イデオロギーに置き換えてしまった。 

問:この分野における英国政府の取り組みに満足しているか?

アルトン卿:英国は、デイビッド・スミス下院議員を信教の自由に関する特使に任命した。これは良いスタートだが、大臣や大使が、信教の自由を促進するために、ほとんど何もしていないことがあまりにも多い。トゥルーロの元司教が外務省のために作成した特別報告書に盛り込まれた勧告の多くは、部分的にしか実施されていないか、あるいは全く実施されていない。これは恥ずべきことだ。

問:フランシスコ教皇は、欧米諸国で信者に対して行われている「巧妙な迫害」について語った。これはどれほど深刻な問題なのだろうか?

アルトン卿:確かに不寛容が急増している。特にカトリック教徒が罪のない命の破壊に反対の声を上げたり行動を起こしたりすると、その傾向が顕著になる。職を失ったり、昇進の機会を失ったりした人もいる。排斥や差別を恐れて沈黙を強いられている人もいる。それは不快なことだが、北朝鮮、中国、ナイジェリア、ニカラグア、エリトリアといった国々でキリスト教徒が直面しているような露骨な迫害と同等の迫害だ、と考えるのは間違いだ。全く次元が異なる。 

ジョン・ポンティフェックス:これは深刻な問題だ。フランシスコ教皇が指摘したように、「歓迎されない」宗教的見解を持つ人々が、職を失ったり、罰金を科されたり、社会的に排除されたりする危険にさらされる文化が存在するからだ。被害者は、問題が自分の信仰にあると、明確に告げられることは決してないことが多い。キリスト教系をはじめとする様々な業種の企業人、慈善団体、大学、学校が、宗教的な観点から性倫理に関する見解を示したことを理由に、閉鎖されたり、認定を取り消されそうになったりする事例が相次いでいる。 

問:カトリック教徒は、宗教的差別を受けている人々を支援するために何ができるだろうか?

ジョン・ポンティフェックス:パキスタンで身を隠していた若い男性を訪ねた時のことを覚えている。暴徒が彼を殺そうとしていて、彼は命の危険を感じていた。彼が私に一番望んでいることは、私に祈ってもらうことだ、と言った。信仰のために苦しむ人々のために祈ることは、何よりも重要だ。信仰のために迫害されている多くの人々は、世間に知られることなく、ひっそりと苦しんでいる。祈りは必ず変化をもたらすだろう。 

 二つ目は、こうした話を共有することだ。友人、家族、学校や教区など、あらゆる場所で私たちのネットワークに伝えよう。宗教の自由はしばしば見捨てられた権利であることを認識し、迫害されている人々のために声を上げる必要がある。この問題の深刻さに対する理解が広く浸透しない限り、何も変わらないだろう。私たちは行動を起こす必要があります。提言を行い、実際的な支援を提供する必要がある。どんなに小さなことでも、私たちができることは、何もしないよりずっと良い。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2026年8月20日

・中国の内モンゴル自治区でチフェン教区の司教が、バチカンとの暫定合意に基づいて叙階

file photo of a liturgical celebration in Chinafile photo of a liturgical celebration in China 

(2026.7.22  Vatican News)

 内モンゴル自治区のチフェン教区で7月22日、ヨゼフ・チャン・ヤンフェン司教が叙階された。バチカン・中国の司教任命に関する暫定合意に基づき、教皇レオ14世による任命を受けての司教叙階だ。

 ヤンフェン新司教は、1984年に中国・遼寧省北鎮で生まれ、瀋陽大司教区の神学校を経て、韓国の大田カトリック大学で学び、聖書神学の学位を取得。2010年11月18日、チフェン教区の司祭に叙階された。

 2010年から2013年にかけて、教区事務局で勤務する傍ら、複数の教区で奉仕した後、チフェン大聖堂の主任司祭に任命され、さらにリンドン教区の主任司祭も務めた。2021年10月15日からは、チフェン教区の教区管理者として務めている。

(2026.7.23 カトリック・あい)
 なお、カトリック教会では、司教の叙階は、教皇の同意のもとに行われるとされているが、中国では、教皇の同意なしに叙階することが、過去に複数回発生し、2011年7月に中国の政府・共産党の管理・統制下にある中国天主愛国協会が教皇の承認なしに司教を多数(一度に40人以上)叙階すると発表し、強行したケースなどがあった。こうしたことは、教会法に違反する非合法な行為とされ、バチカンは強く批判、その有効性を否定してきた。
 2018年にはバチカンと中国政府の間で「司教任命に関する暫定合意」が締結。この合意により、中国側の候補であっても最終的な任命権はローマ教皇にあることが確認され、対話による関係改善が図られた。だが、その後も、中国側が事前の教皇の同意なく一方的に司教を任命・叙階した事例(2022年の江西省など)が確認されており、バチカン側が合意違反として非難するなど、順調とは言えないものの、中国との関係を壊したくないバチカンの意向もあり、2024年10月に暫定合意がさらに4年間延長されている。
2026年7月23日

・「民族団結進歩促進法」施行初日に、武漢のベテラン反体制活動家がチベット・ラサで逮捕、行方不明に(Bitter Winter)

2026.7.23 Bitter Winter  ロプサン・グルン)

  (左は、張毅氏がチベットに到着した際の写真=出典:X・Weiquanwang経由)。民族統一法:武漢のベテラン反体制派がラサで逮捕される

 長年当局の監視下に置かれてきた武漢の活動家、張毅氏が7月1日にラサで連行されたというニュースは、チベットの人権活動家や1980年代後半から彼の動向を追ってきた人々の間で深い懸念をもって、受け止められている。

 張氏は、中国において、市民の権利擁護、不正義の犠牲者の追悼、そして圧力にさらされている人々への支援を粘り強く続けてきたことで、中国の人権擁護を求める人々にとって心の支えとなって来た。

 その人物が、寄りにもよって「民族団結進歩促進法」施行の当日に、チベットの現地で逮捕・拘禁、行方不明になったことは、彼が新たな段階の政治的強制執行における”見せしめ”に利用されるのではないかという懸念を引き起こしている。

 また、逮捕の状況と事件の不透明な処理は、7月1日が新たな「民族団結進歩促進法」の施行初日であったことから、地方当局が中央に「”熱意”を示す機会」と捉えた可能性を示している。

 張氏は、チベットと新疆ウイグル両自治区への訪問許可をようやく得て、弟とともにラサに向かった。当初、許可は却下されていたが、度重なる要請の末、当局がしぶしぶ認めたていた。

 兄弟は、ラサに到着後、セラ寺院を訪れ、チベット人から祈祷用の敷物を借りようとした。言葉での意思疎通ができなかったため、ダライ・ラマの写真を見せところ、そのことが公安当局に伝わり、逮捕・拘禁された。

 兄は取り調べの後、釈放されたが、張氏は拘留され、拘留17日目の7月18日、家族は彼が「扇動」の疑いで刑事拘留された、との電話を受けた。

 当局から正式な通知はまだ受けておらず、拘留場所も不明。家族は、逮捕のタイミングが新法の施行初日と重なったことで、彼が厳罰の格好の標的になったのではないか、と懸念している。

  ・・・・・・・・・・・・

 張氏の人生は、幼少期から政治的弾圧によって形作られてきた。1968年に武漢で生まれた彼は、「天安門事件」で知られることになる1989年の民主化要求運動当時、武漢大学法学部の学生で、武漢市の学生リーダーの一人として活動した。軍による武力鎮圧の後、「交通を妨害するために群衆を集めた」として当局に逮捕され、懲役2年の判決を受けて、紅山刑務所で服役。拷問を受け、片耳の聴力を永久に失った。釈放後も彼は異議を唱え続け、6月4日の天安門事件を記念する活動により、当局から治安を乱す重要注意人物とみなされるようになった。

 当局の弾圧にさらされながらも、張氏は長年にわたり、市民活動に積極的に参加し続けた。2018年には、獄中でノーベル平和賞を受賞した中国の民主活動家で作家の劉暁波氏の「象徴的な墓」(遺骨が海に散骨され、実在する墓がないため、世界中の支援者たちは海岸に花や「空席の椅子(ノーベル平和賞授賞式を象徴)」 を置いた写真をオンラインで共有している)、追悼行事の企画にも協力したことで、拘禁処分を受けた。同年後半には、「治安維持」に関する要求への対応を拒否したため、複数の管轄区域の警察官に暴力的に拘束され、暴行を受けた。

張儀さん。出典: Weiquanwang 経由の X。(右は張氏=出典: Weiquanwang経由のX)

 新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行中、張氏は、感染で苦しむ家族を支援することを目的とした「武漢相互援助グループ」を結成し、ボランティア活動を行った。

 彼は外国メディアのインタビューに応じ、新型コロナ大規模感染が初めて確認された武漢で、流行初期の実態を発信した市民記者、方斌氏が拘束され、秘密裁判により実刑判決を受けていたことが分かった際には、救出を呼びかけ、父をコロナで亡くし、政府に情報公開を求めて拘束された張海氏の家族を支援した。これらの活動で、彼は度重なる警告、尋問、脅迫を受けた。

 彼の息子、張洪源氏は、広東省梅州市の大浦発電所の技師だった。反体制派の視覚芸術家である艾未未氏のドキュメンタリーの翻訳者としての活動で当局から警戒されるようになり、新型コロナウイルス感染症に対する当局の市民生活への極端な規制に抗議する白書運動に参加したが、身の危険を感じて、2023年4月に単身中国を離れ、オランダに亡命した。

2026年7月23日

(評論)”民族の団結と進歩”を謳う新法は、少数民族弾圧を強化・制度化する手段に過ぎない(Bitter Winter)

  「民族団結進歩促進法」は、習近平政権が「中華民族共同体意識」の強化と標準中国語教育を推進するために制定した法律です。2026年3月12日に可決され、同年7月1日に施行されました。同法は、国外の組織・個人による民族の団結を損なう言動も処罰対象(域外適用)とする規定を含んでおり、国際社会から懸念の声が上がっています。

ラサで祈りを捧げるチベット人女性。クレジット。
(ラサで祈りを捧げるチベット人女性。クレジット)

  中国の新しい法律、「民族団結進歩促進法」が、7月1日に施行された。

  Bitter Winterが繰り返し非難しているように、そして、中国共産党・統一戦線工作部が発行した施行ガイドラインに記載されているように、この法律は、「中国国家の安全」のため、中国に住む多様な民族の文化的アイデンティティを押しつぶし、香港、マカオ両特別行政区に住む人々を威圧し、人権を犠牲にさせ、中華民国(台湾)の人々を脅して服従させることが狙いの過酷な法律だ。

 新法によって直接的な影響を受けるのは、チベット高原に住むチベット人、新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)に住むウイグル人、そして内モンゴルのモンゴル人だ。

 当然のことながら、この法律が施行されるわずか数日前、長年苦しんできたこれらのコミュニティの代表者たちが、オランダのアムステルダムの街頭に出て抗議の声を上げた。

 中国の人種政治に関する第一人者であるジェームズ・レイボルド豪ラ・トローブ大学名誉教授は、中東のテレビ局アルジャジーラの取材に応じ、「中国の少数民族にとって、この法律は、文化的・政治的自治の余地をさらに狭めるもの。チベット人、ウイグル人、モンゴル人、その他の非漢民族に対し、『お前たちの言語、歴史、アイデンティティは、中国共産党が好む『単一の中国国家』という物語に合致する場合にのみ保護される』と告げているのだ」と解説した。

 

言語による強制統制を強化するために設計された法律。AI生成。統制を強化するために設計された法律だ

 

 民族団結進歩促進法第15条は、これらの少数民族コミュニティに、”共通言語”として中国語を押し付けようとしている。

 「学校その他の教育機関は、教育および指導の基本言語および文字として国家共通言語および文字を使用するものとする… 国は、就学前の子供たちが中国語を学び、義務教育を修了した青少年が国家共通言語および文字の基礎を習得することを奨励する」。

 これらの法的規定に違反することは犯罪と見なされ、第6条の「国家の統一を損なう行為、または国家の分裂を生み出す行為は禁止される」が適用される。

 さらに第58条で、「本法の関連規定に違反し、国家の統一と進歩を損なう組織または個人は、県級以上の人民政府の関連部門によって、それぞれの責任に従って速やかに停止され、是正を命じられ、法律に従って処罰される。当該行為が公安行政違反に該当する場合は、公安機関は法律に従って公安行政罰を科し、当該行為が犯罪に該当する場合は、法律に従って刑事責任を追及する」と規定している。

 このようなことは、学校教育に限定されない。民族団結進歩促進法第10条は、「我々は、民族、宗教、人権を口実とした中華人民共和国に対するあらゆる誹謗中傷、中傷、封じ込め、抑圧、浸透、破壊行為に断固として反対する」と言明。

 そして、この法律の意図を露骨に表明したのが宗教について述べた第46条だ。

 「宗教団体、宗教学校、宗教施設は、宣伝と教育を行い、中華民族の共同体意識を強化し、中国における宗教の中国化の方向性を堅持し、宗教が社会主義社会に適応するよう指導し、宗教関係者と信者が愛国心の伝統を継承するよう指導し、民族の調和、宗教の調和、社会の調和を促進する」。

*「国外で中国共産党の行為を批判する”非中国人”も標的となる」と欧米の議会が懸念表明

 この新たな法律は、中国系移民にとって大きな悩みの種となっている「国境を越えた弾圧の継続するように公然と設計されている。理論的には、中国系移民だけでなく、外国にいて中国共産党を批判する非中国人も標的となる可能性がある。第63条には、「中華人民共和国の領土外において、国家の統一と進歩を損なう行為、または中華人民共和国に対する民族分離主義を扇動する行為を行った組織および個人は、法律に従って法的責任を問われる」とされているからだ。

 このことに対しては、欧米の議会などから既に懸念の声が出ている。

 米国下院中国特別委員会のジョン・ムーレナー委員長は6月30日、「中国共産党のディストピア的で欺瞞的な名前の『民族団結進歩促進法』は7月1日に施行される。この法律は、中国共産党の残虐性と偏執症の”醜いエスカレーション”であり、中国はこれを利用して国境の外に住む批判者への嫌がらせと脅迫を続けるつもりだ」と強く批判。

 同特別委員会は7月1日に声明を出し、「我々は、中国共産党に『イデオロギー的服従』を要求するこの法律の文言に深く懸念している。この法律は、「中国政府によって『民族団結の進歩促進を損なっている』とみなされた人々は、国外にいても、中国で法的責任を問われる可能性がある、と規定している」と指摘。「北京(中国政府・共産党)の抑圧を批判する人々を訴追する、ほぼ無制限の権限を、北京に与えるものであり、国境を越えた抑圧を正当化するための法的枠組みの構築をさらに推し進めるものだ」と強く非難した。

 ベルギーのブリュッセルにある欧州議会も同様の反応を示している。

 欧州議会は、この法律の施行が明確になった4月30日の決議で、「同化政策を助長し、文化的、宗教的、言語的自由を制限するものであり、国際法上の中国の義務に反するものとして非難する」と言明。さらに、「EU域内に居住する個人に対する国境を越えた弾圧」を正当化するものと非難し、EU加盟国に対し、「中国との犯罪人引渡条約を停止するよう強く求める」と要請。EU理事会に対し、この新法の責任者に対して「EUのグローバル制裁制度」を適用するよう求めた。

 欧州議会は、中国共産党が様々な名目で実施している宗教や民族集団に対する組織的な弾圧のもう一つの重要な側面、チベット仏教の弾圧にも言及,声明で「(チベット仏教指導者の)ダライ・ラマの後継者は宗教上の問題であり、チベット仏教の伝統のみに従って決定されるべきだ」と言明した。中国共産党がチベット仏教弾圧の一環として、チベット仏教指導者の後継者選定という最重要課題にについて、党の都合のいい後継者が選ばれるよう操作しようとしているのは、関係者の間で周知の事実であることを踏まえたものだ。

*民族団結進歩促進法は、”法的文書”ではない、中国共産党の少数民族への優位を確立する”政治的教義”だ

 欧米の法律専門家は、この法律は「抑圧的な内容だけでなく、その構造にも注意すべきだ」と指摘している。根本的な価値観を欠き、政治的なスローガン、マルクス主義的なレトリック、習近平・国家主席の説教をもとに作り上げられている、ということだ。

 「民族団結発展促進法」は前文で、「中国の特色ある社会主義が新たな時代に入るにあたり、中国共産党はマルクス主義の民族理論を中国の民族問題の具体的な現実と中国の優れた伝統文化と結びつけることに注力してきた」とし、第2条で、「民族の団結と進歩の事業は、中国共産党の全体的な指導に固執し、中国の特色ある社会主義という偉大な旗印を高く掲げ、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論を堅持し、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を全面的に実施する」と述べている

 法的文書というよりは、中国共産党が国内の少数民族の間で優位性を確立するための”政治的教義”に近い。少数民族の言語と文化を保護するという道徳的義務を無視している。

*チベットも、新疆ウイグルも、内モンゴルも…既に行われている弾圧が、強化。制度化される

 法律の条文に、鄧小平(1904年~1997年)の名前が出てくるのも場違いだ。鄧小平の改革主義を擁護するつもりはないが、彼が中国の最高指導者だった時代に、1984年の「地方民族自治法」が制定されたことは認めざるを得ない。この法律は「少数民族の自身の言語による教育」を明確に規定し、「多数派民族-漢民族-による排他的ナショナリズム」を戒めていた。

 しかし、習近平国家主席が推進する強硬な”新共産主義”は、その目的に合致する者なら誰でも受け入れるのだ。

 1950年に中国人民解放軍の圧倒的な武力による侵略を受け、強制的に中国に併合されたチベット人たちは、この法律に危機感を抱いている。

 インドのダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府である中央チベット政権(CTA)は「この法律は、民族統一の名の下に、チベット人やその他の少数民族の独自の言語、文化、宗教、アイデンティティを弱体化させることで、彼らの同化を加速する包括的な法的枠組みを提供するものだ」と強い不安を表明している。

 CTA首相(シキョン)のであるペンパ・ツェリン氏は、「この法律は、中国語による教育を義務付け、混血コミュニティや異人種間結婚による人口操作を奨励し、国家による監視を拡大し、中国の管轄権を国境を越えて拡大し、批判者や国外に避難を余儀なくされているチベット人たちを標的にすることで、長年の同化政策を『法的義務』に変えようとしている」と訴え、世界の国々や国際機関、人権団体に、この法律に反対するよう求めた。

 だが、この法律は長年行われてきた”慣行”を正式な制度とするに過ぎない、と見ることもできる。

 中国共産党は既にチベット人の文化的同化を確実にするための措置を講じてきた。チベット人家庭は既に、長年にわたった、子供を国営の寄宿学校に通わせることを義務付けられており、そこでは中国語が主要な教育言語とされ、子供たちは、漢民族文化の枠組みの中で教育を受けている。

 それが新法の下でさらに一歩進め、制度化されて、チベットの宗教的慣習、言語、文化的伝統のあらゆる形態の保存が「有害」とみなされ、「分離主義」と解釈され、法的処罰の対象となった。

 新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)は、中国国内で少数民族が人口の大半を占めるもう一つの地域だ。

 そこに住むウイグル族は推定1100万人だが、うち100万から300万人が、いわゆる”再教育キャンプ”(実際には拘置所)に収容されるなど、弾圧が何年も続いています。昨年、ある海外在住のウイグル族は、「私たちの故郷では、中国政府はウイグル語が次世代に受け継がれるのを阻止するためにあらゆる手段を講じている… ウイグル語を教育言語として使用することを禁止し、ウイグル語の本を集めた図書館を閉鎖し、編集者や出版者を容赦なく迫害している」と述べていた。

 

 モンゴル南部では、北京政府は少なくとも2020年以来、モンゴル語に代わる新たな教育政策の実施を試みてきた。抗議活動が起こると、政府は大規模な拘束、再教育プログラム、そして抗議者への強制的な公開「自白」で対応する。モンゴル人が自らの言語と文化を守るためにインターネットに目を向けた際には、モンゴル語の​​インターネット利用に対する”デジタル弾圧”が行われた。

 そして、香港、マカオ、中華民国(台湾)に住む人々にとって、この新法が発する不吉な警告は、「国家の主権、安全保障、発展の利益を意識的に維持し」、「中国文化を共に継承していく」必要があるということだ。

 またしても中国共産党による悪法が施行された。


 

マルコ・レスピンティ

マルコ・レスピンティは、イタリアのプロのジャーナリストであり、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)の会員、作家、翻訳家、講師です。イタリア国内外の印刷媒体およびオンライン媒体の複数の雑誌やジャーナルに寄稿し、現在も続けている。エドマンド・バーク、チャールズ・ディケンズ、T・S・エリオット、ラッセル・カーク、J・R・R・トールキン、レジーヌ・ペルヌー、ギュスターヴ・ティボンなどの作品を翻訳または編集している。ラッセル・カーク文化再生センター(ミシガン州メコスタに拠点を置く、非党派・非営利の米国教育機関)の上級研究員であり、 欧州再生センター(オランダのハーグに拠点を置く、非営利・非党派の汎ヨーロッパ教育機関)の創設メンバーであり、諮問委員会のメンバーでもあります。欧州信仰の自由連盟の諮問委員会のメンバーであり、2022年12月には世界平和連盟から平和大使の称号などを授与された。2018年2月から2022年12月まで、国際家族ニュースの編集長を務めた。また、学術誌『CESNURジャーナル』 および 『Bitter Winter信教の自由と人権に関する雑誌』の編集責任者も務めている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年7月21日

・次はマカオだーオウ・カム・サン氏の事件が示す中国政府・党による弾圧激化

(2026.7.15  Bitter Winter 

 ある反体制派の人物の裁判は、この静かな都市が国家安全法をいかに執行し、それが広範なAu Kam San.影響を及ぼしているかを浮き彫りにしている。これは中国の新法の下でマカオの裁判所で審理された最初の事件だ。

 長年にわたり、中国政治の観察者たちは、国家安全法が公共の生活を再構築した場所として、香港に注目してきた。マカオへの注目度は低かったが、それはおそらく、マカオの市民社会が小規模だったか、あるいは政治的議論が目立たなかったためだろう。しかし、オウ・カム・サン氏の事件は、同じ法的枠組みがマカオでも断固として機能しており、その執行がかつてこの地域の民主化への願望を体現していた人物にまで及んでいることを示している。

 マカオ特別行政区第一審裁判所は7月9日、オウ・カム・サン氏の事件の予備審理が7月2日に終了した、と発表した。裁判官らは検察側の起訴内容を認めたため、手続きは今後公判段階に移行する。本件は、マカオの国家安全法が初めて適用された事例である点で重要だ。

 オウ・カム・サン氏はマカオでよく知られた名前だ。1957年生まれで、マカオで育ち、東亜大学で社会科学を学んだ後、広州で教育学の修士号を取得し、地元の小中学校で教鞭を執るためにマカオに戻った彼の公的な活動は1980年代後半、後に「マカオ民主発展連盟」となる団体に参加したことから始まった。六四事件後の弾圧期においても、マカオの多くの民主化活動家が脅迫や職業上の圧力、街頭での暴力に直面する中、彼は活動を続けた。やがて立法会に当選し、返還後も5期連続で議員を務め、同市で最も知名度の高い民主派の代表者の一人となった。

 その道のりは摩擦なくして進んだわけではない。2018年、通信傍受法案に関する公聴会で、彼は警察の監視権限に疑問を呈し、「電話会話の監視には司法の許可が必要だ」と主張した。公安警察のトップは彼を「無謀な憶測」や「誹謗中傷」で非難し、当局は刑事告発に踏み切った。この出来事は、異議を唱える余地がいかに狭まっているかを示す分水嶺となった。

 2021年、彼が北京による香港の選挙制度の抜本的改革を批判すると、数名の立法会議員が説明と撤回を要求した。彼は最終的に再出馬しないことを表明し、20年にわたる直接選挙の歴史に幕を閉じた。

 『Bitter Winter』が報じたように、転機となったのは2025年7月、マカオの司法警察が国家安全法第13条に基づき彼を逮捕した時だった。同条項は、「国家安全に有害とみなされる外国組織との接触」を犯罪」としている。当局は、2022年以降、彼が海外の団体と連絡を取り合い、大量の「虚偽かつ扇動的な」情報を提供し、ネット上での反中感情の顕在化に加担したと主張した。また、中国およびマカオに対する敵対的行為を助長し、同地域の選挙制度を損なったとも非難した。彼の自宅は家宅捜索を受け、書籍が押収され、妻は取り調べのために連行され、後に証人として登録された。

 起訴内容は深刻だ。彼は「国家権力の転覆」および関連罪で告発されており、最高で25年の刑に処される可能性がある。本件は7月2日に予備審理を終え、現在は公判待ちの状態にある。欧州連合(EU)は昨年8月2日、声明を発表し、今回の逮捕およびマカオにおける政治的多様性と表現の自由の侵食について懸念を表明した。国際的な人権団体もこうした懸念に同調し、2023年に採択された国家安全法が「処罰対象となる行為の範囲を拡大し、政治的発言、学術交流、市民社会活動にも適用可能な広範な犯罪類型を創設した」と非難している。

 マカオが世界のニュースの見出しに登場することはめったにないが、その法的環境は、論理的にも適用範囲においても香港のそれと類似している。

 アウ・カム・サン氏の事件は、国家安全法がいかにして同地域の政治情勢を再構築する手段として機能しているか、またその執行が、公共奉仕と民主的参加を基盤にキャリアを築いてきた個人を標的としているかを示している。さらに、許容される言論の境界がいかに狭められ、当局がいかなる外国組織との接触も潜在的な脅威として扱っているかも浮き彫りにしている。

 アウ・カム・サン氏は現在、マカオの拘置施設に収容されている。彼の裁判は、この地域にとって正念場となるだろう。かつてその政治生活を特徴づけていた、たとえ限定的であっても、多元主義からその制度がいかに遠ざかってしまったかを明らかにするからだ。この事件は、弾圧が必ずしも最も注目を集める場所で起こるわけではないことを思い起こさせる。

 時には、カジノや観光で知られるこの都市で、静かに進行することもある。そこでは、元立法会議員が、マカオにおける異議申し立ての未来を決定づけるかもしれない判決を今、待っているのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

Ng

Au Kam San. Credits.

2026年7月17日

・「チベット人が自由のために命を捧げた、我々は、中国による植民地主義的抑圧に対し共に立ち向かっている」亡命ウイグル人がBitter Winterに寄稿

(2026.7.14  Bitter Winter   

  (写真右:ウイグル人とチベット人が、オランダ・アムステルダムのダム広場でロブガ・ランゼンを追悼)

 ニューヨークの国連本部は、しばしば正義と人権の世界的な象徴として称賛される。Uyghurs and Tibetans commemorate Lobga Rangzen in Amsterdam’s Dam Square.しかし、7月2日にその門前で起きた悲劇―52歳のチベット人活動家ロブガ・ランゼン(ロブサン・パルデン)が、中国の抑圧的な政策に対する痛切な抗議として自らに火を放った事件―は、世界の政治的沈黙に対して投げかけられた、最も苦く、燃え盛る疑問符として立ちはだかっている。

 彼は武力による暴力ではなく、「自らの命を捧げる」という究極の犠牲を選んだ。それは、国際社会の死んだ良心を呼び覚ますためだった。

 炎に包まれたあの恐ろしい瞬間でさえ、彼は、チベットの国旗と「中国よ、チベットから出て行け!」と書かれた横断幕をしっかりと握りしめていた。

 炎が彼の体を焼き尽くす中、その瞳には依然として、故郷への絶対的な愛と、自由への揺るぎない決意が燃え続けていた。炎の中で伝えられたそのメッセージ、私たち全員に残された最も重い遺言は、ウイグル人コミュニティにも深く響いている。

 ロブガ・ランゼンは、自国民と祖国への献身と忠誠の並外れた模範を示した――その愛の深さは、世界の多くの人々には決して真に理解できないかもしれない。彼は自らの犠牲を、中国が7月1日から施行した忌まわしい「民族団結法」と結びつけた。

 この法律は、強制的な同化と文化的ジェノサイドのための不吉な道具に他ならない。この法律は、「中国の占領下にある被抑圧民族の魂を消し去り、単一で均質な中国のアイデンティティを築くこと」だけを目的としているわけではない。「北京の専制政治に抵抗する海外の民主勢力を解体すること」も意図されているのだ。

 この法律が施行された直後に自らの命を捧げることで、ロブガ・ランゼンは世界に向けて鋭いメッセージを送った。「空虚な言葉だけでは不十分だ。具体的な行動を起こせ!」と。

 7月7日、オランダのチベット系団体が主催する「英雄ロブガ・ランゼンを称える世界連帯抗議集会」が、アムステルダムの由緒あるダム広場で開催された。オランダのチベット人コミュニティからの特別招待を受け、私はこの厳粛な追悼集会に出席し、ウイグル人を代表して演説を行うという光栄に浴した。チベットの兄弟姉妹たちの前に立ち、私はこの真実を強調した。ウイグル人とチベット人は、単なる地理的な隣人ではなく、共通の運命と苦難によって結ばれた兄弟なのだ。

 我々は、中国政府が7月1日に制定した「民族団結法」の背後にある血塗られた現実を痛感している。中国が「団結」と呼ぶものは、実のところ、「強制的な同化」であり、「民族のアイデンティティを根絶やしにするもの」だ。

 まさにこの中国政府の破壊的な政策こそが、チベッUyghurs expressing their solidarity with Tibet at the Amsterdam rally.トの英雄ロブガ・ランゼンを究極の犠牲へと駆り立てたのだ。彼の身体から立ち上った炎は、中国政府に対する最も力強い拒絶の表明であり、人間の尊厳を守るべき世界が共犯的な沈黙を破るきっかけとなった。

 ロブガ・ランゼンの魂は、私たちウイグル人にも語りかけている。「今日という日はチベットの日だ! チベット民族は今日、偉大な殉教者を失ったが、その魂は民族と共に永遠に生き続ける。チベットの地で、そして国連の前で炎が燃え盛る中、その煙は東トルキスタンのウルムチの街頭で虐殺された我らの殉教者たちの魂を映し出しているのだ。」

(写真左*ウイグル人も、がアムステルダムの集会でチベットへの連帯を表明している)

 この連帯は、ウイグル人とチベット人が、同じ植民地主義的な抑圧の機構に対して肩を並べて立ち向かっていることを証明している。チベットに降りかかる日は、我々の日であり、我々に降りかかる日は、チベットの日だ。アムステルダムのダム広場で固く手を結び、抵抗するという共通の意志を胸に、我々は北京の独裁者たちにとって究極の悪夢となる。

 我々は決して屈しない!決して沈黙しない!チベットと東トルキスタンが完全に自由になるまで、我々の共同の闘いを続ける!

 炎の中で伝えられた、我らの兄弟ロブガ・ランゼンのメッセージが、我々の心に永遠に燃え続けますように!

ブドゥレヒム・ゲニ=オランダ在住のウイグル人活動家。アムステルダムのダム広場で行った単独抗議活動で有名になった。また、観光客に対してウイグル人虐殺の現実について啓発活動も行っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年7月15日

・「チベット民族のアイデンティティの中国による組織的な破壊に抗議」ー国連本部前で亡命チベット人が焼身自殺

(2026.7.13  Bitter Winter    )

(写真右:ランゼン・ロブガの焼身自殺。出典:チベット亡命政府)

 7月3日、ニューヨークの国連本部前で起きた焼身自殺は、チベット人の抗議活動の長いRangzen Lobga’s self-immolation. Source: Central Tibetan Administration.歴史において、重大かつ象徴的な出来事となった。

 自らに火を放ったのは、亡命中のチベット人ランゼン・ロブガ氏。彼はこの行為を意図的に選び、「チベットの民族的大義のための非暴力的な犠牲」として位置づけた。

 死の直前に公表された彼の遺書では、この抗議行動が、2026年7月1日に施行された中国の新たな「民族団結・発展促進法」の施行と時期を合わせるよう計画されたものであることが明言されていた。翌日、彼は焼身自殺を実行し、その動機は「個人的な苦しみ」ではなく、「チベット民族のアイデンティティの組織的な破壊」への抗議を表現したものだ、と説明している。

 多くの欧米人は、ランゼン・ロブガ氏の行為を「自殺」と見なし、抗議そのものには共感を示しつつも、自らに火を放つという活動家の決断を「過激だ」と非難し、「自らの命を絶つことは決して正当化されない」と主張する者もいる。

 だが、チベット人たちはこの出来事を異なる視点で捉え、その背景を重視している。ランゼン・ロブガ氏は遺書の中で、次のように宣言した。

 「中国の共産主義政府は、チベットとその人々を破壊することを目的とした様々な政策を実施するための措置を継続して行っている」。

 そして、チベット国内(中国政府は「チベット自治区」としている)に住むチベット人たちの不屈の精神を称え、「彼らが私たちの口語や文字、そして宗教や文化の振興や復興に取り組んでいるその公共心にあふれた誠実さは、実に称賛に値する。彼らに感謝の意を表したい」 と述べ、国外に亡命中のチベット人に対しても「民族の大義のために一層尽力し、ダライ・ラマ法王が与えてくださった民主的な体制を尊重するように。あなた方は皆、チベットの人々の代弁者だ。海外のチベット人は慢心してはならない」と強調した。

 彼の遺言は、すべてのチベット人の住む地域での団結を強調し、分断の圧力をはねのけ、集団行動を呼びかけた。「我々はチベット人として皆一つなのだ。チベット民族の大義のために尽力せねばならない。チベット民族の独立が喪失させられたことが、すべての苦しみの根本原因だ… 我々が欠いているもの、それが何であれ、すべては独立がないがゆえなのだ… チベットの独立に勝利あれ! チベットに勝利あれ! チベットの独立に勝利あれ!」。

 チベット亡命議会―故郷を追われたチベット人の最も権威ある声―は、この事件に対し迅速かつ厳粛に対応した。7月7日に公表された公式声明で、今回の焼身自殺を「並外れた勇気の行為」とし、「故ランゼン・ロブガ氏がチベットとチベットの正義のために尊い命を捧げたという事実は、チベットの歴史に永遠に消えることのない偉大な勇気の偉業だ」と断言した。

 そして、この犠牲を2009年以降のチベット人による焼身自殺の広範な流れの中に位置づけ、「チベット国内および亡命先で、計150人をはるかに超えるチベット人が、絶え間ない一連の抗議行動として焼身自殺を行ってきた」と指摘し、これを「世界史上、この種の非暴力抗議運動としては最も長く、かつ最大規模のものだ」と述べた。

(写真左:ランゼン・ロブガ氏。出典:チベット中央政府)Rangzen Lobga. Source: Central Tibetan Administration.

 亡命議会の声明は、2つの緊急の訴えに焦点を当てていた。第一に、世界の各国政府、議会、国連機関に対し、中国の新たな「民族団結・発展促進法」の法的審査を行うよう求め、「『民族抹殺』という犯罪の発生を防ぐために断固たる行動が必要だ」と訴え。「文化的・民族的破壊に等しい行為」とする政策責任者を調査し、責任を追及するよう強く求めた。

 第二に、亡命議会は、中国政府に対し、すべての焼身自殺事件を政治的・文化的・宗教的文脈の中で調査し、チベットにおける「暴力的な弾圧」と表現されるものを終わらせるよう、長年にわたる要求を改めて表明した。声明は、「中国・チベット間の紛争を解決するための有意義な対話」を求める呼びかけを改めて行うことで締めくくられた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載している。

2026年7月14日