・司教の任命を中国共産党の発表から半年後にバチカンが発表-”暫定合意”の奇妙な運用(Bitter Winter)

(2025.2.5 Bitter Winter  He Yuyan)

 中国共産党は、教皇フランシスコが司教を任命する3か月前に、その司教を「選出した」と発表した。そして、司教の叙階式では、「教皇が任命したこと」には言及されなかった。

Bishop Ji Weizhong. From Weibo. 2018年のバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意(2024年にさらに4年間更新)によると、中国共産党とバチカンは、中国国内での司教の任命について合意する必要があることは明示されているが、合意の詳細は7年近く経った今も、秘匿されている。

 これまでの司教任命をめぐるいくつかのケースの任命の手順を見ると、合意の細目とは一致していない可能性が高いようである。

 つまり、①司教の「選出」は中国共産党が行い、そのニュースを公表する。②その後の数か月の間、バチカンからの”反応”がない。これは、バチカンが誰が「選出」されるのか事前に知らされていなかったことを強く示唆している。⓷共産党が公表してから数か月後、教皇がその司教を承認する。④司教叙階式が、教皇の権限とはまるで無関係であるかのように、教皇による「任命」には、まったく言及されることなく、執り行われ、中国共産党の管理下にある中国愛国天主協会の「司教協議会」から承認の手紙が読み上げられる―だ。

 そのもっとも最近の例は、季維中(Ji Weizhong)司教(写真左=Weiboより)に関するものだ。中国共産党は、昨年7月19日に李司教が山西省の呂梁教区の司教に選出された、と発表した。興味深いことに、その日付の段階で「呂梁教区」は存在していなかった。その地域を管轄していたのは汾陽教区であり、呂梁教区は、カトリック教会の教区を国の行政区分に合わせる、という中国共産党の方針の一環として、後に”新設”されたのだ。つまり、昨年7月19日の段階で、呂梁教区長である李司教なるものはいなかったことになる。The consecration of Bishop Ji Weizhong on January 20. From Weibo.

 以前の上海教区の司教任命の時と同じように、バチカンと中国共産党の間で水面下の交渉があったとみられるが、ともかく、今回の件については、共産党の発表から半年後の今年1月20日、バチカンが、「2024年10月28日」に、教皇が汾陽教区の廃止と呂梁教区の新設、季偉中神父の呂梁教区長の司教として任命した、と発表した。

 司教任命の発表時期が中国共産党とバチカンで半年ずれたのに加え、もう一つの興味深い疑問は、昨年10月28日に教皇が中国共産党の司教区改廃と司教任命を「批准」したのであれば、バチカンの新聞発表が3か月も遅れて出されたのか、ということだ。

 その答えは、季司教の叙階を「合法化」することが急務であったからであり、まさに1月20日にそれは行われた(写真右=Weiboより)。 例によって、叙階式では教皇の承認や委任は言及されず、中国司教協議会の書簡が読み上げられたが、あたかもバチカンが承認していないこの団体が、教皇ではなく司教の正当性の源であるかのようにであった。

 司教任命に関するバチカンと中国の暫定合意は、依然として、かなり”奇妙”な形で機能しているのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

2025年2月6日

・「習主席の文化思想は深遠で…大きな意義がある」-中国共産党、各宗教の聖職者に「”紅色”文化教育」を実施(Bitter Winter)

10月下旬の 7日間、聖職者たちは河南省を回り、中国共産党の英雄に敬意を表し、「習近平の文化に対する思想は深遠で、論理的に厳格で、大きな意義がある 」ことを学んだ。(写真右下は、河南省教化ツアー中の聖職者=微博より)An image of the clergy during the Henan indoctrination tour. From Weibo.

 カトリック、仏教、イスラム教など中国の5つの公認宗教は、聖職者を「愛国教育」、つまり2024年1月1日に施行された法律で導入された教化の国家プログラムに参加させるという指示を非常に真剣に受け止めている。宗教がこれをどのように実施すべきかについての特別なガイドラインが1月4日に発表された。

 聖職者の強制的な教化に好都合なのは、内戦や共産党の歴史の”赤い神社”への巡礼を企画することらしい。それらは、伝統的な宗教巡礼の時期に組織され、効果的にそれに取って代わる。また、聖職者たちは観光の機会を好み、宴会や旅行と交互に行われれば、退屈なプロパガンダの講義にも耐えやすくなると考えられている。The clergy during one of the lectures. From Weibo.

 このプログラムの一環として、10月21日から27日まで、河南省で全省・地域の聖職者を対象とした「紅色文化ツアー」が開催された。統一戦線工作部が主催したこのイベントには、全国から140人の宗教関係者が参加した。(左は、講演中の聖職者たち=微博より)。

 聖職者たちは、第20期中国共産党中央委員会第3回全体会議で承認された「改革のさらなる深化と中国の特色ある現代化の推進に関する中国共産党中央委員会決議」についての講義を受けた。同決議は「社会主義文化大国の建設」を強調しており、これは中国における宗教の中国化を完成させるためにも不可欠であると指摘している。

 7日間の教化ツアーでは、講義、現場での指導、グループ討論が行われた。主催者側は、「習近平の文化思想を理解すること」と、南北戦争中に戦略的に位置した紅軍の基地を指す「大辺山の精神」についての講演を企画した。

Specialized guides taught the clergy the “red” history of Henan.

 専門のガイドが聖職者たちに河南省の「赤い」歴史を教えた(写真右)。

 ここは、紅旗運河、焦油記念館などとともに、聖職者たちが訪れる「紅」の巡礼地のひとつであった。紅旗運河は河南省の灌漑整備を目的としたものだが、聖職者たちが知らされていなかったのは、困難な状況の中でこれを建設した人々の「ヒロイズム」が自然発生的なものではなかったということだ。

 文化大革命の最中に、多くの場合強制連行された労働者たちによって完成し、多くの死者が出た。死者81人という公式発表は、おそらく過小評価だろう。焦玉茹記念館は、毛沢東時代の共産主義者の英雄の一人を称えている。焦は蘭高の党主席で、1964年に42歳で癌のため亡くなった。彼は農業における並外れた成功で賞賛されているが、それはおそらく想像上のものだろう。

 ソーシャルメディアや公式プレス発表で伝えられているように、聖職者に叩き込まれたメッセージは、「習近平の文化に関する思想は深遠で、論理的に厳密で、大きな意義があると誰もが信じている」というものだった。 習近平の文化思想は深遠で、論理的に厳密で、大きな意義があると誰もが信じている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年11月9日

・中国の司教たちがシノドス総会に参加の一方、英国貴族院の有力カトリック議員が中国における教会の迫害に注目

As Synod features Chinese members, British Lord draws attention to religious persecution

(2024.10.22 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

 英国貴族院の有力カトリック議員、デイビッド・アルトン卿がこのほど、「中国で迫害されている10人のカトリック司教」と題する声明を発表、「中国共産党の統制に従う中国天主愛国協会に反対する中国本土の司教10人を標的に虐待している」と非難した。

 バチカンは、2日から始まった世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期に中国本土から司教2人が参加させ、さらに総会開催中に、中国国内での司教任命に関する暫定合意の三度目の期間延長を発表しているが、中国国内でカトリック教徒や他の宗教信者が迫害されていることには事実上、目をつぶっている。

 アルトン卿によると、迫害を受けているのは、ビンセンシオ・グオ・シジン司教、アウグスチヌス・クイ・タイ司教、ユリアヌス・ジア・ジーグオ司教、タデウス・マー・ダキン司教、ペトロ・シャオ・ジュミン司教、メルキオール・シー・ホンジェン司教、ヤコブ・スー・ジミン司教、ヨゼフ・シン・ウェンジ司教、ヨゼフ・ゼン・ゼキウン司教、ヨゼフ・チャン・ウェイジュ司教の10人。

 彼らのうち7人は正当な手続きなしに拘留され、うち何人かは数年または数十年にわたって継続的に刑務所に入れられ、別の司教たちは2018年のバチカンと中国の司祭任命に関する暫定合意以来、最大6回も繰り返し拘留されている。

 卿は、彼らを「バチカンが『忘れてほしい』と思っている10人の都合の悪い司教」と呼び、「なぜ彼らはそのような措置をうけているのか。それは、彼らに何を信じ、考え、何を言うべきかを指示する中国共産党の”権利”を受け入れないからだ」と語り、米国の保守系有力シンクタンク、ハドソン研究所の信仰の自由センターのニーナ・シェア所長の記事を引用して、中国共産党が10人の司教を「正当な手続きなしに無期限に拘留、失踪、治安警察による無期限の捜査、教区からの追放、脅迫、監視、尋問、いわゆる再教育など司教の職務に対するその他の妨害」にさらしていると批判した。

 

 シェア氏は記事で、2015年に中国共産党による宗教の中国化政策が本格化して以来、「中国のカトリック教会は、毛沢東時代以来最大の弾圧を受けている」とし、「中国とバチカンの暫定合意は、『地下教会』と呼ばれることの多い、中国天主愛国協会への”良心的兵役拒否者”への配慮をせず、宗教的迫害にも対処していない。バチカンは、内容が秘匿されているこの暫定合意を『司教任命の権力分担の取り決めにのみ焦点を当てている』としているが、中国政府・共産党はこれを利用して国内の司教たちに中国天主愛国協会への加入を迫っている」と指摘。

 「中国政府・共産党は暫定合意に明らかに違反して、一方的にいくつかの司教任命を発表。だが教皇フランシスコは、中国のカトリック教会の”統一”を図るために、事後にこれらの任命を承認した」と述べ、「だが、10人の司教に対する中国政府・共産党による迫害は、カトリック教会の統一に対する本当の脅威だ」とシェア氏は強調している。

 アルトン卿はまた、10月17日付け米ウォールストリートジャーナル紙に掲載された、シノドスにおける中国代表に関するジョージ・ワイゲル氏(ヨハネ・パウロ2世教皇の伝記作家)の記事のコピーをフォロワーに送ったが、この記事でワイゲル氏は、宗教共同体を「中国化」させ、「習近平思想」に従わせようとする「しばしば残忍な取り組み」がある、と指摘。「バチカンと中国との交流は、完全な失敗だった」と批判している。

 ワイゲル氏の記事は、今回のシノドス総会に参加している福建省下浦(福寧)教区長のビンセント詹思露(ヤン・シル)司教について、「中国政府は2000年に彼を司教に任命した。教皇の承認なしに司教の叙階を受け入れたため破門された。その後、2018年になってバチカンと和解したが、その1年後には『宗教の”中国化”を断固として実行する』ことと『社会主義社会に順応する道を歩み続ける』ことを公に誓っている」と非難。

 さらに、中国本土からのもう一人の総会参加者の司教は、中国天主愛国協会の副会長である、と指摘。このようなことは、「中国政府・共産党の支配を受け入れている教会と、聖職者や信徒が投獄されたり殉教したりしてもローマに忠誠を誓い続けている、苦境に立たされた地下教会の間の溝をさらに深めるものだ」と警告している。

 そして、教皇が、このような暫定合意の再延長に同意したのは、バチカンの外交官らが「暫定合意を結び、延長し、2人の司教のような人物をシノドス総会に迎え入れることは、現在、台湾と外交関係のあるバチカンが、(中国と)との完全な外交関係を結ぶ一歩だ」と説得したためだ」とし、「この”外交幻想”の追求は、中国で迫害されているすべてのカトリック信者に声を上げないようにすることに通じる…教皇は『対話に満足している』と述べており、その結果は『良かった』としているが、実際には、それは恥ずべきことだ」とワイゲル氏は述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年10月23日

・バチカン、中国と司教任命に関する暫定合意をさらに4年延長

教皇フランシスコと中国の司教たち (写真アーカイブ)教皇フランシスコと中国の司教たち (写真アーカイブ) 
(2024.10.22  VATICAN NEWS)

    バチカンが、中国国内での司教任命に関する同国との暫定合意を、さらに4年、延長することで同国と合意した。バチカン広報局が22日発表した。発表文は以下の通り。

 「教皇庁と中華人民共和国は、司教任命をめぐる暫定合意の効果的な適用に向けた共通認識に照らし、適切な協議と検討の結果、本日付けで、同合意の有効期間をさらに4年延長することで合意した。教皇庁側は、中国におけるカトリック教会と同国の全国民の利益を考慮し、両国関係の発展のために、中国側との敬意ある建設的対話を継続する意向である」

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 中国国内での司教任命については2018年9月22日に暫定合意された。その後、2020年10月22日、一回目の2年延長、2022年10月22日に二回目の2年延長がなされ、その起源となる10月22日に3回目の延長が、これまでの二倍、4年延長することになった。

 これまでの繰り返しの暫定合意の延長は、それまで教皇の認可を得ずに、中国政府・共産党の判断で一方的に司教叙階が行われてきた数十年間の状態に終止符を打った。2018年の暫定合意から6年間に、十数人の司教の任命と叙階が行われ、中国側がこれまで司教として認めていなかった何人かの聖職者が公式に認められるようになった。

 また、新しい協力関係の目に見えるしるしとして、バチカンで開かれている世界代表司教会議(シノドス)総会に中国本土から司教が参加している。昨年ポルトガルで開かれた「世界青年の日(ワールドユースデー)リスボン大会」のような、欧米で行われるカトリック教会のイベントや、教皇フランシスコのここ数年のアジア諸国訪問の際の諸行事にも、中国の信者たちの参加が見られるようになっている。

 

*ただし、中国のカトリック教会でも、政府・共産党への忠誠を拒み、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教、司祭、信徒に対する、政府・共産党の対応は逆に厳しさを増しており、カトリック教会に限らず、中国国内のあらゆる宗教団体を習近平主席の思想に従わせる〝中国化”は年々厳しさを増している(「カトリック・あい」)

 

(編集「カトリック・あい」)

2024年10月22日

・シノドス総会に参加の中国本土の司教たち、”協力”の重要性、”文化”の尊重を強調

Bishop Joseph Yang Yongqiang of Hangzhou shakes hands with Pope FrancisBishop Joseph Yang Yongqiang of Hangzhou shakes hands with Pope Francis (Credit: Vatican Media.)

 

2024年10月20日

・「拷問に耐え切れず、”自己批判書”を書かされた」ー”違法な資金集め”で有罪にさせられた中国のキリスト教徒が声明(Bitter Winter)

  朱春林(Zhu Chunlin)氏の証言は、中国の刑務所における「厳格な管理と処罰」と「学習の強化」が何を意味するのか、つまり拷問について説明している。

 朱春林は深圳出身のキリスト教徒。「違法な資金集め」の罪で有罪判決を受けた。彼は刑務所で自分に起こったことを勇敢に非難したが、これは中国の刑務所で日常的に拷問が行われていたことのさらなる証拠である。彼はいくつかの人権団体に長文の声明を送り、9月11日に「Weiquanwang」が中国語で発表した。

 それによると、朱氏は「清遠刑務所の第15区で服役した経験…第15区は主に衣料品を生産しています。私は最初のサブワードにいました」。2017年5月に深圳の宝安拘置所から広東の清遠刑務所に移送された。1カ月の刑務所訓練の後、彼は第15地区の第1地区に異動させられ、いわゆる教育と労働改革を受けた。

レッグアイアンは、中国でまだ使用されています。クレジット。

 そこで、朱は「受刑者の間で一般に『標的射撃』として知られる厳格な管理と罰」を受けることになった。これは、チームリーダー、品質検査官、郵便局員など、いわゆるマスター囚人や刑務所警察によって、彼らが自ら設定した不文律に従って実施されている。

 毎日午後、仕事が終わる前に、彼らは警察の当直デスクに集まり、サインアップします。作業が終わると、警察は拡声器で対象者のリストを発表し、その後、特別な人物が政策の実行を担当する。

 「グループでの食事のために列に並ぶ時、標的にされた受刑者は後ろの列に並んで待つように求められます」とZhuは報告しています。彼は、他の皆が自分の食事を手に入れた後にしか、食事をとることができません。彼が受け取る食品の質と量については、誰もそれを保証することはできません。昼休み中、対象となる受刑者は寝たり休んだりすることを許されず、昼休みが終わるまで寮の外の廊下に整列しなければならない。夕方の集会後の自由時間には、対象となる受刑者は指定された場所に整列し、通常はファンクションルームまたはエクササイズエリアで一定時間立っている必要があります。時々、彼らは建物の外の遊び場に連れて行かれます(私はかつて冬に外の遊び場に連れて行かれ、凍えながらそこに立っていました)。」

 さらに、「これらの実践は日常化されており、多くの場合、一時停止することなく実行されます」。

 朱がこれらの罰が違法であると異議を唱えると、2人の警察官が「私に手錠と脚の鉄製の拘束具をかけた」と彼は報告している。手錠は一般的な手錠でしたが、脚の拘束具は非常に特別でした。それらは、2つの施錠された鉄のリングと中央の3つの鉄の塊で作られた重い鉄の枷でした。円筒形の鉄製の物体で、重さは合計で約15キログラムありました。彼らは私の足に2つの鉄の輪をはめ込み、足首に巻き付けました。その後しばらくの間、私は重い鉄の足かせを引きずるのが難しく、歩くことしかできませんでした。私は毎日、彼らが手配した囚人たちに付き添って過ごしました。工房に行くにしても、寮に戻るにしても、一歩一歩引きずることしかできませんでした」。

 「時々、自分を引きずることができなくなるので、真ん中の3つの鉄の塊を手で持ち上げて足が動かなければなりませんでした。でも、こんなふうに歩くのもすごく大変で、かがんで両手で抱え込まなければなりませんでした。また、階段の上り下りはさらに大変でした。途中で何度か立ち止まらなければなりませんでした。滑ったり、転んだり、転がったりしてはいけません、そうしないと足が折れてしまいます。あの拷問によって引き起こされた肉体的な苦痛と精神的な傷は、本当に言葉では言い表せないほどでした。

広東省の清遠刑務所で、朱は投獄され、拷問を受けました。Xから。広東省の清遠刑務所で、朱は投獄され、拷問を受けた(X)

 「夜になると、私は一晩中手錠をかけられ、手錠をかけられました。寒くて動きにくかった。それがどれほど不快だったか想像できるでしょう。私はこれまで、この種の拷問を身に着けている人を見ただけで、他の刑務所の人々もそれを身に着けていました。まさか今回、自分が体験する番になるとは思っていませんでした」。この種の拷問を受けている間も、『厳格な管理』と虐待は、何の軽減もなく強制された、という。

 「私の人生で最も暗い瞬間した。ただ静かに耐え、主に慈悲を祈ることしかできませんでした。その後、私はそれに耐えられなくなり、我慢するのが難しくなりました。春節が近づいてきたので、彼らの命令に従い、自己批判を書かなければなりませんでした。夕食時に刑務所全体で公の場で読み上げました…私は彼らの罰則措置に従わなかったことが間違っていたことを認めざるを得ず、将来は彼らに従うと約束しました」。

 最後に、朱は、虐待と拷問を通じて彼を支えたのは彼のキリスト教信仰だった、と言っている。彼は、彼自身の方法で、神が彼の中国人を見て、これらすべてに終止符を打つという彼の自信を表明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年9月23日

・中国、「愛国教育法」施行で、カトリック司祭、信徒も”革命遺跡”の巡礼を強制される

The Catholic pilgrims at the Enyangtai Independent Battalion Activity Site and Deeds Exhibition Hall, September 3, 2024. From Weibo.

   中国・広東省のカトリックの聖職者と信徒指導者は、残忍な国共内戦の共産党の恩陽台独立大隊の功績を称えるために動員された。The Catholic pilgrims at the Enyangtai Independent Battalion Activity Site and Deeds Exhibition Hall, September 3, 2024. From Weibo.

 中国で「愛国教育」に関する法律が2024年1月1日に施行され、中国共産党(CCP)による今世紀最大ともいえる国内プロパガンダキャンペーンが開始された。カトリック、仏教など党公認の5宗教も「愛国教育」の取り組みに参加するよう求められている。

 カトリック教徒にとって巡礼は重要だが、「愛国教育法」の施行で、聖母マリアの聖地への巡礼は、革命の遺跡や博物館への強制的なツアーに取って代わられている。

 具体的には、中華人民共和国建国75周年を祝って、政府・党公認の中国天主愛国協会の広東省陽江市支部が9月3日、教区司祭と信徒指導者が「革命教育」の地を訪ねる巡礼を企画、実施した。

 陽江市中国天主愛国協会の李長明会長に引率された司祭と信徒指導者たちは、恩陽台独立大隊の物語を称え、毗竹村と平蘭村の地を巡礼したが、この場所は2021年に整備され、記念館が作らられ、急速に共産主義者の巡礼の中心地になりつつある。

 実在した恩陽台独立大隊は、内戦中に国民党が支配していた地域で、相手側要人暗殺を含むテロ活動やスパイ活動を行った共産主義活動家の冷酷な集団だった。その主な任務は、強制的な徴兵と、国民党治世化の高い課税に対する反発を利用して農民を扇動すること。内戦が進むにつれて、恩陽台独立大隊は最終的に中国人民解放軍の部隊となり、共産党員が校長を務めていた毗竹村の小学校に本部を置いた。学校は廃墟になっていたが、修復され、記念館となった。

 ”巡礼団”を引率した李会長は、これらの巡礼の目的は「愛国教育」の一部であり、「カトリックの司祭と信者が赤い血統を継続し、赤い遺伝子を受け継ぎ、前進することを学ぶ」ことだと説明した。

 カトリックが、暴力的な共産主義の扇動者(かなりの数のカトリック司祭などを殺害した)の「赤い遺伝子」や「赤い血統」とどう関係があるのか​​は不明だ。あるいは、非常に明白なのかもしれない。2018年のバチカンと中国の合意後、バチカンの承認も得て活動している中国天主愛国協会は、カトリックの司祭や信徒指導者を「赤い血統」の忠実な共産主義者に変えるという主な事業を続けている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年9月21日

(評論)中国政府・党の「天津司教」追認ーバチカンは、教皇の中国政策の勝利としているが…(Crux)

(2024. 8.28  Crux Staff)

 ローマ発 – 中国政府・共産党が、これまで認めていなかった95歳のShi Hongzhen司教を天津教区の教区長・司教と公認したことに、バチカンは28日声明で「バチカンと中国政府との間で長年にわたって築かれた対話の肯定的な成果」、教皇フランシスコの”対中政策の勝利”と位置付けた。

 もっとも、Shi司教の北京公認の”着座式”は、中国メディアによると、天津の大聖堂ではなく、地元のホテルで、中国政府・共産党公認の中国天主愛国協会のトップである北京司教が司式して行われ、教会ではなく本質的に”市民的”な性質が強調されている。

 約5万6000人のカトリック教徒を擁するこの天津北部教区は、2005年以来、バチカンと中国政府・共産党の両方に認められる司教を欠いていた。Shi Hongzhen師は、教皇ヨハネ・パウロ二世から1982年に天津の補佐司教に任命され、中国政府・共産党に服従することを拒否する”地下教会”の当時の天津司教によって着座式がなされ、さらに2019年にその天津司教の後任に就いていた。

 バチカンと中国政府は2018年秋の司教任命に関する暫定合意をし、すぐにも天津司教が中国側から追認されると見られていたが、追認は暫定合意から6年後となったわけだ。

 中国メディアによると、”着座式”でShi司教は「中国憲法を支持し、中国の統一と社会の調和を守り、国と教会の両方を愛し、中国におけるカトリックの中国化の方向性を常に支持する」ことを誓うよう求められたという。「中国化」とは、中国以外に”本拠”をもつ社会や集団の中国文化への同化を意味する中国政府・共産党の用語であり、香港の元教区長、ジョセフ・ゼン枢機卿を含む教会関係者の間では、「中国政府・共産党が教会を支配するための煙幕」との批判が起きている。

 カトリック系メディアAsia News、95歳のShi司教を補佐する補佐司教の任命が同時に発表されなかったことで、「天津教区の将来は不確実であるように思われる」と指摘している。

 一方、教皇フランシスコは、今月初めのイエズス会中国管区の報道担当者との会見で、中国を訪問したいという願望を改めて示し、中国の教会と文化を賞賛。中国のカトリック教徒を「忠実な人々、彼らは忠実な人々。多くのことを経験し、忠実であり続けた人々。忍耐の達人であり、待つことの達人であり、『希望のウイルス』を持っている」と讃えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年8月29日

・バチカン、教皇任命の天津司教を中国が追認したことを「長年の対話の成果」と歓迎

(2024.8.27  Vatican News)

 バチカン報道局は27日、中国政府が同日付けでShi Hongzhen司教を天津司教として公式認定したことを歓迎する声明を発表した。
 声明は、今回の中国政府の決定を「バチカンと中国政府の間で長年にわたって確立されてきた対話の前向きな結果」と評価した。また、天津教区には約5万6000人の信者がおり、21の教区に分散しており、62人の司祭と「かなりの数の」修道女が奉仕している、としている。
 Shi Hongzhen司教は1929年1月7日に生まれ、1954年7月4日に司祭に叙階された。1982年に当時の教皇ヨハネ・パウロ二世によって司教に任命され、中国政府・党への服従を拒否する”地下教会”の天津教区長の Li Side司教によって同年6月15日に、もう一人の司祭とともに天津教区補佐司教に秘密裏に叙階された。そして、Li Side司教の後を継いで、2019年6月8日に天津司教となったが、中国側はこれまで認定していなかった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年8月28日

・中国政府・共産党が「厳格な宗教統治」をカトリックにも徹底へ(Bitter Winter)

(2024.7.30 Bitter Winter  ZHANG CHUNHUA)

 中国愛国天主協会の広東省恵州支部が7月10日に黄家堂カトリック教会で開いた「カトリック教会の包括的かつ厳格な統治を促進する会議」は、中国共産党の統一戦線工作部が始めた「厳格な宗教統治」がカトリック教会にも適用されることを示している。(写真左は会議の様子、右は会議が開かれた恵州の黄家堂カトリック教会=微博より)

An image of the Huizhou meeting of July 10. From Weibo.

 「厳格な宗教統治」は、カトリックや仏教など政府・共産党が公認した5つの宗教に対して、集会やその場での説教などに習近平思想と「社会主義的価値観」を中心に置くよう求めるもの。これは、これらの宗教の活動に対する統制が十分効果的になされてこなかったとの政府・党の判断の裏返しでもあが、具体的には、国内の諸宗教の監督機関である中国共産党・統一戦線工作部の直接監督下に置くということを厳格化するということだ。

Huangjiatang Catholic Church in Huizhou, where the meeting was held. From Weibo.

 統一戦線工作部は、6月26日の「宗教の中国化に関する全国指導者セミナー」の直後、同月27日から28日ま

で陝西省西安で開いた「中国キリスト教の厳格な宗教統

治の実施交流会」を通じて、プロテスタントの間で「厳格な宗教統治」を推進し始めた。統一戦線がチベット仏教徒と回族イスラム教徒にこの政策を拡大している、とも伝えられている。

 7月10日の会議のメインスピーカーは、恵州市・共産党委員会・統一戦線工作部の陶茂勇・副部長(同市・民族宗教局長を兼務)で、中国愛国天主協会に所属する市内のすべての司祭と修道女が、一般の労働者とともに召集された。

 陶氏は「厳格な宗教統治」の概念を説明し、カトリック教徒は「政治指導、団体システム構築、聖職者管理、活動会場管理、募集、インターネット宗教情報サービス」の6つの分野でこれを適用せねばならない、と述べた。「これらすべての分野で、聖職者と一般の指導者は「社会主義の核心価値」が教会のメッセージの中心にあることを確認し、統一戦線の監督下に置かれねばならない」。

 これは恵州市の地方集会だったが、恵州市は人口600万人の大都市で、かお伝統的にカトリック教徒が多いことから、カトリックに対する「統治」厳格化にとって重要な意味を持つ。この集会は中国政府・党をあげて「厳格な宗教統治」推進の取り組みが続いていることを示しており、Bitter Winterは統一戦線工作部が全国各地でこうした集会を企画しているという報告を受け続けている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年8月1日

・教皇、中国との暫定合意を踏まえ、杭州大司教に楊永强・周村司教を任命

The new bishop of Hangzhou , Giuseppe Yang Yongqiang (photo Agenzia Fides)The new bishop of Hangzhou , Giuseppe Yang Yongqiang (photo Agenzia Fides) 

 また、自身の信仰について、「私はカトリックの伝統を持つ家庭で育ち、家族の長老たちの信仰、特に祖母の信仰が私に大きな影響を与えました。祖母は私たちに毎晩祈りを唱え、寝る前にイエスや聖母マリア、聖ヨセフなどの聖人の像や絵の前で頭を下げるように言ったのを覚えています。祖母自身も夜遅くまで祈り続けました」と語った。

 さらに、司祭の道を選んだことについては、「母は湖荘の聖母山に巡礼に行きました。帰ってきたとき、済南西部の教会で若い神学生が座って本を読んでいるのを見た、と私たちに話してくれました。落ち着いていて規律正しい様子でした。話すとき、彼女の目は輝いていました。彼女の言葉は私の心に残り、司祭になるという種を私の中に植え付けました」と述べた。

 さらに、自身の旅のインスピレーションとなった『キリストにならう』の一節、「不必要な会話は控えなさい。できるだけ、人々の騒ぎから離れなさい」を引用し、「純粋な意図で参加したとしても、世俗的な事柄に対処することは大きな障害となります。なぜなら、すぐに虚栄心に染まり、奴隷になってしまうからです。私は何度も、沈黙を守り、人々の中に出なければよかったと思いました」と振り返った。

 また、司祭叙階に関して次のように語った。

 「父は、私を教区長の李崇倫神父に紹介し、『今日、私はこの息子を教会に引き渡します。彼が叙階されるまでは安らかに眠ることはできません』と言いました。その言葉が予言的なものになるとは思ってもいませんでした。アロイシウス・ジン・ルクシアン司教から司祭に叙階された翌日、『父が亡くなった』という電話を受けました。私は泣き崩れました。彼の言葉は、終祷でも引用されているルカによる福音書のシメオンの言葉に似ていました。『今、主よ、あなたのお言葉どおり、この僕を安らかに去らせてください…』。ですから、この祈りを唱えるたびに、父のために祈っているような気持ちになります」

 杭州教区には3万人のカトリック信者が住んでいるが、これまで3年間、司教の座は空席だった。2000年6月25日、マテオ・カオ・シャンデ神父は、教皇の同意を得ずに杭州司教に任じられたが、2008年6月8日、バチカンから司教として認められたものの、病いを得て、2021年7月9日に92歳で亡くなっていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年6月25日

・「少数民族や教会の一部への弾圧など中国国内の現実を明確に把握したうえで、対中改善を進めて」米国大使がバチカンに注文(Crux)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 Cruxのインタビューでのドネリー大使の一問一答の英語原文は次の通り。

Crux: Why are you stepping down now?

Donnelly: We have a term coming up and finishing, so either way the election goes, I was going to be finished up right after, at the very latest in November. Whether it’s President Biden or someone else, I want to give them the opportunity to put another ambassador in place for another term. This is just a few months short of that, and there’s a lot going on back home and I miss my family as well, so I thought it’s pretty much the right time.

What would you say you have learned about the Vatican in your time as a diplomatic actor here?

I think I already knew this, but just how critical the Vatican, the Holy See, the Holy Father is, to all the big issues of the world. From the moment I set foot here – the first day, there was a Mass for peace in Ukraine in St. Peter’s Basilica – until today, Russia’s unjust invasion of Ukraine has been front and center. The pope has worked on this, everybody in the Vatican has. We as an embassy have coordinated with the Vatican to try to help Ukraine.

When the pope speaks, the whole world listens, and we want to make sure when the Holy Father speaks, he has all of the information available in order to fully understand the issue. So, my job has been to make sure the Vatican understands what we know as the United States, what we’ve seen, the unjustified attack, and they can put that into their equation when they speak.

Additionally, I’ve worked with Cardinal (Matteo) Zuppi extensively on trying to bring Ukrainian children home. We’ve brought over 100 home right now, and that number continues to increase on a constant basis. We’ve worked together as well on trying to seek a path forward for peace in Ukraine. So, when big issues like that are being discussed the Vatican is right in the middle of them.

It’s been said that the Vatican is a good listening post. Has that been your experience?

One hundred percent. It’s exceptional. We are working on seeking peace in Israel and Gaza as well. The Vatican has the Holy Family Church right in Gaza that the Holy Father calls every night, every single night at seven o’clock, he calls the church to find out if everybody is okay, what’s the food situation, how is the water holding out, how are the 500 plus that are living there and all of them have information.

We worked together at one point with the Vatican to help bring a kidnapped sister home from Africa, and the incredible compliment of abilities helped to get that done, because on the United States side we obviously have extraordinarily good intelligence information, the ability to have an embassy throughout the region in different countries, and in effect the Vatican almost has an embassy in every town because they have a church in every town, so when you combine the abilities of the two groups to be able to use it for good, we were able to bring an American sister home.

In terms of collaboration on issues such as Ukraine and Gaza, there are some shared priorities, but there are also differences in strategy and approach. How have you navigated that?

We’re two distinct governments. We don’t line up exactly with any country in the world, so the way I navigate it is I represent the United States, and I’m working with another government, the Holy See, and we agree on so many things. There are some things we don’t agree on exactly, but we have an open and clear discussion on them, and overall, we have an extraordinarily good relationship.

What would you say are the biggest points of convergence between the United States and the Holy See?

The pope’s worldview, I obviously can’t speak for Pope Francis, is to protect human dignity, that every person’s humanity is precious. We feel the same way in the United States. A family who lived in Bucha had the right to live in peace and to raise their family there, and the Russians didn’t have the right to come in and slaughter people on the streets, in an exact copy, almost, of Hitler in 1939. So, the basic human dignity of every person is something that both the Holy See and the United States agree on.

We collaborate every single day on protecting the human dignity of people, we collaborate every day on ensuring that people can be fed, that people can get clean water, that their right to an education is protected. You see Pope Francis and he talks about smelling like the sheep, standing up for every single person that no one is left behind. Well, that’s what we do as a country, that’s what we do throughout the world.

When you look at Israel and Gaza, the world looks to the United States to try to help solve the problem. They look at us as the only place that can come up with a solution that might work. When you look at Ukraine, the whole world looks to the United States to help make sure Ukraine can survive, so we are truly the indispensable nation in this world.

There have been issues with some of your predecessors in terms of the Holy See’s stance on China. Has that also been an issue in your tenure?

Oh sure. We don’t agree on China. Our experience with China has been that without China, Russia’s attack against Ukraine would be over, that China supplies them with technology, with information, with assistance that keeps their war machine rolling. China has been incredibly oppressive against the Uyghurs, and parts of the Church, and the Holy See I think understands these, we’ve talked about this information with them. The Holy See is hoping that China can start to improve, and we do as well, and are reaching out to try to help the 12 million Catholics there, but what we hope is that they do it with a very clear eye of what’s going on in China.

So you would say that they are aware of the red flags, but are hoping for the best?

I can’t speak for them, but we believe that what we see in China is what China really is.

The pope has also been somewhat critical of the United States on the climate agenda. It was the only country he called out by name in his most recent document on the environment. What reverberations has that had?

Well, we know the facts. We know how hard our country has worked to meet all of the climate goals and we continue to pursue that, to work every day for a cleaner planet, for a safer planet, and that’s the information we provide the Holy See. We hope they can see just how well we’re doing.

On a more personal level, what’s going to be your next act after this?

I’m planning on going home. The way the State Department works is you’re not allowed to sign up for a next act until you’re done with the present one, so my efforts right now are to work nonstop to run across the finish line, to work hard every day, and that’s what we’ve been doing.

Just this past weekend, I was in the room with President Biden and Pope Francis at the G7 talking about the most critical issues in the world, talking about Ukraine, and talking about Israel and Gaza, and President Biden’s nonstop efforts, traveling the world, to seek peace. I know that Pope Francis hopes for the same thing.

I’ve grown to love Italy, to love Rome. It’s been an extraordinary opportunity to work with all of the people who work so hard in the Vatican, across the board. People don’t know that it’s not only dedicated priests and others, but it’s laypeople, it’s the sisters, religious sisters, who work across the world every day to feed children, to educate children, in the most difficult, dangerous, unsafe places in the world, so the world of the Holy See is a lot bigger than just Rome. They are making a difference every day across the world.

If you could give a piece advice to your predecessor, regardless of wherever they fall on the political spectrum, what would it be?

The first thing I’ll say is the person directly leading the embassy after me, her name is Laura Hochla, and she’s probably more talented than I am, so she probably doesn’t need much advice from me, she’ll do an extraordinary job.

Anybody else who comes after me, I’d just say be yourself. That you’ll be dealing with a group at the Vatican who are incredibly bright, incredibly hardworking, and our focused on trying to make it so that every person’s life is better, and to never ever forget that when people ask, what country do you represent, you represent the United States.

2024年6月24日

・「(中国政府が心を)開けば、教皇は中国を訪問するだろう」-パロリン国務長官が語る

Cardinal Pietro Parolin at Rome's Pontifical Urban University (foto © Teresa Tseng Kuang Yi)Cardinal Pietro Parolin at Rome’s Pontifical Urban University (foto © Teresa Tseng Kuang Yi) 

    ローマの教皇庁立ウルバノ大学で、教皇使節として初めて訪中したセルソ・コスタンティーニ枢機卿(1876-1958)とバチカン中国関係に関するフォーラムが開かれ、バチカンピエトロ・パロリン国務長官が講演、中国との継続的な対話と同国の国民に対する教皇の感謝について語った。

 このフォーラムは、ブルーノ・ファビオ・ピギン大司教の著作「セルソ・コスタンティーニ枢機卿と中国 – 東西間の『橋』の建設者 -」(Marcianum Press刊)の出版を記念して開かれたもの。ピギン大司教は、中国への最初の教皇使節であるコスタンティーニ枢機卿の列福と列聖の原因を提唱するイタリアの歴史家で、司教使節。

 国務長官は講演で、「教皇は中国に対して、人々、歴史、文化に対して常に大きな感謝と尊敬を示してきた」としたうえで、「現時点では時期尚早に思われるが、中国側に寛容さがあれば、教皇もすぐに中国を訪問されるだろう」と述べ、「偉大で高貴な」このアジアの国をいつか訪問したい、という教皇の決して隠されることのない願望を繰り返した。

 長官は、講演に先立つ取材記者たちとの短い会話の中で、現在、二度の更新を続けている、中国での司教任命に関するバチカンと中国政府の暫定合意に関連して、「中国とは、これまでも対話を続けてきた。暫定合意は、今年末に更新されるが、(教皇訪中の)最善の手順を模索している」と説明した。

 前日19日の水曜恒例の一般謁見で教皇は、「セルソ・コスタンティーニ枢機卿の友の会」の会員たちにあいさつした際、合わせて「親愛なる中国人」に挨拶を送り、「私たちは常に、素晴らしい文化を持つ、とても勇敢で高貴な人々のために祈っています」と語っておられた。

 これを受ける形で、 パロリン長官は「教皇は中国の国民と国家に対して本当に大きな感謝の気持ちを持っており、その気持ちを表現する機会を逃されません。それは教皇が(中国で宣教したマテオ・リッチ神父の出身母体である)イエズス会士であり、過去の遺産をすべて持っているからでしょう。確かに、これらはすべて、お互いを一層、理解し、一層、近づくのに役立つステップです。この道が前向きな結論につながることを願っています」とコメントした。

 そして、教皇の訪中の可能性についての記者の質問には、「教皇は中国に行く用意があり、実際に中国に行きたいとが思っておられます」と述べつつ、「今のところ、教皇のこの願いが実現するための条件が整っているようには思えません」と慎重な答えを返した。

 この後の講演でも、長官は「私たちは中国を愛し、尊敬しています。中国の人々、文化、伝統、そして現在、中国が行っている努力を… 本当に中国は、私たちの心の近くにあり、教皇とその協力者たちの心の近くにあります」と強調。

 コスタンティーニ枢機卿については、教皇使節だった彼が1946年にピオ12世のもとを訪れ、32人の新しい枢機卿の中に中国人司教の名前を含めるよう要請した際の逸話を披露し、枢機卿が「中国に福音の光を広める」ため、そして何よりも文化に溶け込んだ教会を推進するために尽力し、働き、犠牲を払ったことを称賛。「1924年に上海で開かれた中国カトリック教会会議を主宰したのはコスタンティーニ枢機卿であり、この会議が第2バチカン公会議の予言的なインスピレーションとなり、1963年時点で23人の司教で構成されるまで成長した中国教会の基礎を築いたのです」と述べた。

 そして、バチカンと中国の関係における「コスタンティーニ方式」は、今日では「教皇フランシスコも従っておられる方向だ」と述べ、ベネディクト16世教皇の2007年の「中国カトリック教徒への手紙」に始まり、2018年に北京で調印された司教任命に関する「暫定」合意で具体化された、とし、「『暫定』という表現は、それが出発点であることを示しています」と説明。

 「暫定合意が二度更新されて今日に至るまでにしるされた前向きな進展は、より多くの、より大きな進展が続く、という希望を与えてくれます。実際、この暫定合意の結果、『孔子の国』の全ての司教は、『ペトロの教会』と完全な交わりを持つようになりました… 偉大な人々への愛を証明してきた教皇との完全な交わりにおいて、中国のカトリック教徒が司牧者たちの指導の下により大きな調和を育むために始めた対話のプロセスが継続されるという希望があります」と繰り返した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

2024年6月22日

・香港政府、海外に逃れた民主活動家6人のパスポート取り消しを発表(LaCroix)


2019年6月4日、香港で中国愛国民主運動を支援するために香港連合会が組織した大規模なろうそく集会のファイル写真。(写真提供:etan liam / CC BY-ND 2.0)

(2024.6.13  LaCroix   Dorian Malovic (Asia regional correspondent in Tokyo)

愛国主義を支援するために香港連合会が組織した大規模なろうそく集会のファイル写真

  香港政府は13日、中国政府・共産党による弾圧から逃れるために英国に”逃亡”した民主化活動家6人のパスポートを取り消した、と発表した。

 中国政府の直接命令の下、香港政府は香港亡命者を容赦なく追跡し続けている。昨年は、海外に避難していた13人の民主化活動家を逮捕すると発表し、10万ドルの懸賞金をかけたが、パスポートを取り消されるのはそのうちの6人。香港当局は、活動家らが弾圧を逃れるために英国に「逃亡」したと主張し、彼らに「無法犯罪者」のレッテルを貼った。

 今回の香港政府の措置について、英国の人権活動家で、ロンドンに本拠を置くNGO「香港ウォッチ」の創設者、ベネディクト・ロジャーズ氏は、「現在、香港政府を動かしているのは、『無法な犯罪者たち』であり、中国政府が破棄した中英共同宣言で約束された自由、人権、法の支配、自治を希望する勇敢な香港人を脅かし、中傷している」と批判した。

 2019年に香港で起きた大規模な抗議行動の後、弾圧から逃れてきた政治亡命者たちは、何千マイルも離れた場所でも、中国が支援する香港政府からの圧力と脅迫に直面し続けているのだ。

 東京で3年間、難民生活を送っているジャーナリストで民主活動家のアラン・リウさんは「香港当局は国家安全維持法を発動し、私たちを威嚇し、脅迫し続けている」と話す。2019年の抗議活動で重要な役割を果たしたため、銀行口座を凍結されている。

 中国政府が任命した香港政府のトップは今回の措置について、6人の活動家が「国家の安全を脅かす活動に、公然と関与し続けている」とし、「それゆえ、われわれは彼らを激しく叩くための手段を講じた」と述べた。当局が標的にした6人は、国家安全維持法違反の「外国勢力との共謀、分離独立扇動、国家転覆」の罪で起訴されており、終身刑に処せられるとされている。

 この発表は、2019年春の大規模で、時には暴力的な民主化抗議行動の5周年にあたって行われた。

 標的にされた6人の活動家は、民主化運動の有力者で元立法会議員のネイサン・ロー氏、ベテラン労働組合員のムン・シウタット氏、反体制派のサイモン・チェン氏、フィン・ラウ氏、フォク・カーチー氏、チェ・ミンダ氏。

 今回の香港政府の措置について、フィン・ラウ氏はソーシャルメディアへの投稿で、「1997年に植民地が中国に返還される前に生まれた香港人に発行された英国国民海外パスポートのみを所持し、香港政庁が発行したパスポートは持っていない… 存在しないものを取り消すのは馬鹿げている」と述べ、 ネイサン・ロー氏は「2021年に英国への亡命を認められている。パスポートの取り消しは無意味だ。亡命者全員が、今直ちに香港に戻るつもりはない」と語っている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.
2024年6月14日

・「中国の教会をめぐる状況は悪化、私たちは『見捨てられている』と感じている」(La Croix)

Catholics attend the Christmas Eve mass in the Xishiku Catholic Church in Beijing, China, 24 December 2023 (WU HAO/EPA/MaxPPP)
Catholics attend the Christmas Eve mass in the Xishiku Catholic Church in Beijing, China, 24 December 2023 (WU HAO/EPA/MaxPPP)

(2024.5.22 La Croix  Dorian Malovic )

   中国では、1200万人の中国人カトリック教徒が依然として共産党の主要な標的となっている。

 バチカンと中国政府の司教任命をめぐる暫定合意から6年が経ち、習近平国家主席のもとで状況が「悪化」する中、カトリック教徒は公式・地下を問わず、「見捨てられた」と感じている。

 「私たちは引き続き高齢者の世話をし、最大限の慎重さで毎日、共に祈ります。当局が私たちを注意深く監視しているため、これまで以上に細心の注意を払う必要があります」。

 長年の知己である西側ジャーナリストに暗号化されたメッセージアプリで送られたこの一言は、中国の高度なサイバー監視サービスによる探知を避けるために選んだ偽名である「シスター・クレア」にとって、多大な損害をもたらす可能性がある。

*天主愛国協会は中国共産党中央の指令に従うよう強制

 中国北部、山西省の鉱山のある村の老人ホームを装った秘密の修道院で、シスター・クレアは他の3人の修道女と共に20年以上も修道生活を送っている― 「神は、私を見守ってくれています」。

 彼女によると、2018年10月に署名され、現在も有効とされているバチカンと中国政府の中国国内の司教任命をめぐる暫定合意によって「 (中国政府・共産党の管理下にある)中国天主愛国協会の幹部たちは、『自分たちの正当性が強化された』と受け止め、中国共産党中央の指令に従うことを私たちに強要するようになり、事態はさらに悪化している」。政府・党の管理下にある”公式教会”と管理を拒み、好況に忠誠を誓う”地下教会”を合わせて1200万人の中国のカトリック教徒をめぐる状況は、習近平国家主席が2012年に権力の座に就いて以来、「著しく悪化」しているという。

*習近平の登場で政府・共産党の姿勢に劇的な変化が起きた

シスター・クレアのいる場所から千キロ以上離れた香港教区の信徒、60歳のカトリック活動家アニーも、「近年の劇的な変化」を感じている一人だ。 30年間、カテキズムを教えてきた熱心な信徒である彼女は、「”竹のカーテン”の向こうで起きていることを何も知らなかった1970年代後半の状況に、今、ほとんど戻ってしまったのです。 中国の司祭、修道女、信徒の中に、電話や電子メール、さらには暗号化されたメッセージでコミュニケーションをとる人はほとんどいません。危険すぎるのです」と語る。

本土の教会の状況について得られる情報はとても乏しく、訪問することは危険だ。 「もはや私には、本土の教区を訪問する勇気はありません」と香港出身のカトリックジャーナリスト、チャンは告白した。「 本土の教区に出向けば、私自身ばかりか、出会う司祭や信徒たちを危険にさらすことになるでしょう。 監視は強化され、教会の前には監視カメラが設置されている。

 

*「共産党とは対話ではなく、対決するしかない」

 

 「長年の知人と会っても、彼らは何も話さないし、2018年の合意については、なおさら話しません」とアニーは語った。「1990年代から2000年代には、毛沢東主義によって引き裂かれた中国の教会が再び団結するのを期待していましたが、2012年に習近平が権力の座に就いて以来… 習近平は教会を”中国化”し、共産主義イデオロギーに服従させようとしている」とし、教皇フランシスコは、中国側に一定の譲歩をすることで対話を続けようとしているが、「それは幻想に見えます… 中国での数十年の自分の経験を踏まえれが、共産党とは”対話”するのではなく、”対決”するのです」と結論づけた。

「教会、信者をめぐる状況は、それぞれの省や県の当局との関係や、司教がバチカンの承認を受けているかいないか、などで異なるとしても、全体的な雰囲気は暗いと断言できます」と中国の四川省出身で現在は米国に住むカトリック教徒のマリーは語る。

*「教皇は、中国の現状を理解していない」との嘆き

 

マリーは、2世紀前にパリ外国宣教会の宣教師たちが四川省で布教を始めた時に受洗して以来、10世代にわたるカトリック教徒の家庭に生まれた。今も中国にいる親類、家族と連絡を取り合っているが、多くのカトリック教徒の家族と同じように、”公式教会”に所属するか、”地下教会”に所属するかで分裂している、という。

バチカンは数十年にわたって、分裂を解消したい、と考えてきたが、「中国共産党はこれまでも、常にすべての中国人の生活を管理したい、と考えてきた。しかし、習近平が政権を握って、それが劇的に激しさを帯びてきました」とマリーは説明した。”公式教会”の 多くの司教や司祭が「素晴らしい仕事」をしていることを認めつつ、彼女の家族の多くを含む”地下教会”の信者を擁護する立場だ。

そして、2018年になされた中国国内の司教の任命に関する暫定合意は「大惨事」だ、と言う。 「すべてを破壊する党の支配下に中国の教会を放置すべきではない。現教皇は、中国政府・共産党との妥協が可能だと想像する『左翼のアルゼンチン人イエズス会士』です。 彼は中国を理解していません」。

*「すべてがバラ色ではないが、黒というわけでもない」との見方も

 このような見方の一方で、福建省で数日間滞在したシンガポール国立大学のアジアにおける宗教の専門家、ミシェル・シャンボン氏は、2018年の協定の影響について、慎重な見方をしている。

 「すべてがバラ色ではないが、すべてが黒というわけでもありません… 私は、暫定合意に従って福建省の邵武教区長に今年一月、任命されたWu Yeshun司教に会って、話をしましたが、信心深い人で、信徒たちに寄り添い、霊的な意識を尊重していました」と述べ、さらに、「私が訪問した福建省の地域では、”公式教会”と”地下教会”の状況は改善しつつあります。合併することなく平和的に共存している。最近、隣接する教区では統合が達成されました」と説明。

  そして、福建省の「”公式教会”と”地下教会”の司祭は一緒に祈っています。 これは注目に値する進歩であり、2018年の合意が間違いなくそれに貢献したと言えます」とし、福建省の省都、福州の教区が依然として大きく分裂していることを認めつつ、「地下祭司と公式司祭が一緒に祈っている。これは注目に値する進歩です」と述べ、「交流を育てるのには時間がかかります。バチカンは一歩ずつ進んでいる。中国カトリック教徒の自由を目指す長い行進はまだ終わっていません」と指摘している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年5月23日