(評論)中国の一方的な決定から3か月遅れで教皇が上海司教任命―誰が勝ち、誰が負けたのか(BW)

Bishop Shen Bin. From Weibo.

 第三に、パロリン長官は「中国のカトリック教徒は、たとえ『秘密主義(地下教会の信徒)』と定義されている者であっても信頼に値するし、彼らの良心と信仰は尊重されるべきだ」と語った。

 「良心」という言葉が使われたのは決して偶然ではない。 2018年のバチカンと中国が暫定合意を結んだ時、「秘密のカトリック教会(地下教会)はなくなり、(中国共産党が管理・指導する)中国天主愛国協会に合併された(ことを意味する)」と大騒ぎされた。これが事実ではなく、愛国協会への参加を拒否するカトリックの”良心的兵役拒否者”が多数いる、と訴える人々は、親中派の自称「バチカン専門家」らから攻撃を受け、そうした事実を伝えるBitter Winterなどのマスコミも非難された。

  パロリン国務長官は「秘密教会」が健在であることを認めている。 彼は、この「秘密教会」の会員、つまり愛国教会への参加を拒否するカトリックの”良心的兵役拒否者”は「尊重されるべきである」という、2019年のバチカンのガイドライン(もう効力を失っていると主張する者もいる)の主張を繰り返し述べている。

 私たちは、「尊重」されていないことを知っている。カトリックの”良心的兵役拒否者”が受ける唯一の”敬意”は、嫌がらせを受け、刑務所に入れられることだ。そして、上海やその他の地域での司教人事で、バチカンそのものも、あまり”敬意”ある扱いを受けなかった。中国共産党は、このような繰り返しの暫定合意破りさえも、バチカンが受け入れたことを、自分たちにとっての”勝利”と見なすかもしれない。

 だが、パロリン長官のインタビューでの発言の中に隠されているのは、「秘密教会」が依然として中国に存在している、という重大な告白、それに、バチカンは彼らを”反逆者”とは見なしておらず、何らかの形で協力する、というやや漠然とした約束である。もしも、バチカンが、真剣に”良心的兵役拒否者”を守ろうとし、彼らを「尊重」することを本気で主張するなら、バチカンは中国共産党から「尊重」されることはない。

 国務長官は2018年のバチカンと中国の暫定合意に基づいて”時限爆弾”を仕掛けたばかりであり、いつか、その爆発で暫定合意が吹き飛ぶ可能性がある。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

2023年7月18日

・教皇、中国側が暫定合意無視で任命した上海教区長を3カ月遅れで追認ー「対話と実り多い司牧活動のため」と国務長官

上海の余山(シェシャン)の聖母巡礼聖堂の前で祈るカトリック信者たち上海の余山(シェシャン)の聖母巡礼聖堂の前で祈るカトリック信者たち 

 バチカンは15日、教皇フランシスコが同日付で中国・上海教区の司教長にヨセフ沈斌(シェンビン)司教を任命した、と発表した。

 上海教区長のポストは、過去9年間空席となっていたが、中国の政府・共産党の管理下にあるカトリック教会上海教区が4月4日、教区長に、国政助言機関の人民政治協商会議(政協)常務委員の沈司教が就任した、と一方的に発表。司教人事には双方の合意が必要とするバチカンと中国政府の暫定合意に反するものとして、バチカン関係者などから批判が出ていた。

 それを教皇が3か月遅れで”追認”したことについて、バチカンのパロリン国務長官は同日、Vatican Mediaのインタビューで、沈斌・司教を教皇が上海教区長に任命したのは「優れた評価を得ている司牧者」であるため、と説明。合わせて、バチカンの中国との対話の進展と、バチカンの常設連絡事務所を北京に開設することへの期待を示した。

 国務長官のVatican Mediaの問いに対する答えは以下の通り。

問:バチカンは、教皇フランシスコが上海教区の司教にヨセフ沈斌(シェンビン)司教を任命したことを発表した。この任命が、同司教が海門教区から(中国側の判断で)に上海教区に異動させられたのに遅れてなされたのはなぜか。また教皇フランシスコのこの行為は何を意味するのか。

答:このことを説明するためには、以前に起きたことと、その状況を振り返るのがよいでしょう。ご存知のように、教皇庁と中国間の司教任命をめぐる暫定合意は、2022年10月22日、さらに2年延長されています。延長が合意されて一か月経つか経たないうちに、中国・余江教区のヨハネ彭衛照(ポン・ウェイチョウ)司教が江西教区の補佐司教として着座した、との知らせを事後に受けた際には、バチカンは、驚きと遺憾を表明せねばならなかった。江西教区の設置はバチカンが承認しておらず、それに加えて、この人事について中国側からバチカンに何の相談も連絡もなかったからです。

 上海教区の司教人事についても、海門教区の沈斌司教を上海教区長に異動させるという中国当局の処置の連絡は受けましたが、バチカンの合意を得ることはなかった。ただ、(前回の江西教区の補佐司教の一方的人事に対しては、即、遺憾の意を表明したのに対して)今回、時間をおいて対応しようという判断は、上海教区がバチカンの認めた教区であり、長期にわたって教区長が空席のままになっていたという司牧上の問題がある中で、優れた評価を得ている司牧者(であるかどうかの判断も含めて)、バチカンとして沈斌司教を版入教区長に任命する機会を、注意深く見極める必要があったから、と言えます。

 

 

問:上海教区、江西教区いずれの司教人事も、バチカンの同意を得ずに行われた。このような中国側の行為は、ここ数年間にバチカン側と中国側に生まれた対話と協力の精神を理解していないように思われるが。

答:教皇フランシスコは、上海教区で起きた教会法上の不規則な状態を正常にすることを望まれました。それは、同教区にとって最善であり、司教の実り多い司牧活動を考えてのことでした。教皇の意向は、基本的に司牧的なものであり、沈斌司教が福音宣教と教会の交わりを推進するためにより落ち着いて働けるように、というものです。

 同時に、同教区において長い間懸案となっている諸問題、たとえば、2人の補佐司教、未だ遠ざけられているタデウス・馬達欽(マ・ダキン)司教と、辞職したヨセフ邢文之(シン・ウェンジ)司教の件などについて、正しく賢明な解決がなされ、バチカンと中国当局との合意のもとに、同司教がそれを助けることができるように、と私たちは期待しています。

問:バチカンと中国の当局との対話の将来をどのように見ているか。

 歩みの途中に置かれた障害は、信頼を蝕み、前向きなエネルギーを取り上げてしまいます。それにもかかわらず、対話を進めるべき理由は、私にとって、より大きく思われます。実際、バチカン側と中国側の対話のパイプはまだ開かれており、それはある意味、定められたものとも言えます。問題があるのは避けがたいことですが、対話が真理と相互の尊重うちに育つなら、教会と中国社会のために多くの実りをもたらすかも知れません。

 それを円滑に、豊かなものにするために、中国にバチカンの常設の連絡事務所を開設することは非常に役立つことに思われます。さらに言えば、このような事務所の存在は、行政当局との対話を促進するだけでなく、中国の教会内部の完全な和解と、教会の望まれる正常化への歩みにも、貢献できるでしょう。

2023年7月16日

・中国のウイグル人たちからの強制臓器摘出を阻止へ、米下院の法案通過で国際的な動き広がる(Bitter Winter)

Protest against Uyghur organ harvesting in Sydney, Australia. From Twitter.

 中国でのウイグル人イスラム教徒や法輪功信徒などに対する営利目的の強制臓器摘出(いわゆる「臓器狩り」)の阻止を狙いとする「2023年強制臓器摘出停止法案」が、米議会下院で圧倒的多数で可決され、上院で審議に回された。最近、ケニアの首都ナイロビで開かれた世界医師会の会合でも、これと関連する中国におけるウイグル人の扱いが、主要テーマとして取り上げられている。

(写真右は、オーストラリア・シドニー市街でウイグル人にたいする強制臓器摘出に抗議する人々)

 この法案が成立、施行されれば、中国政府・共産党の幹部などが強制臓器摘出(いわゆる「臓器狩り」)に関与した場合、その責任を追及し、最高25万ドル(約3300万円)の民事罰、最高100万ドル(約1億3000万円)の刑事罰および20年の懲役刑などが課されることになるいう。

 これまで臓器狩りと人身売買の阻止を訴えて来たウイグル人権団体Campaign for Uyghursのルシャン・アバス氏は、この法案が米議会下院で可決されたことを歓迎。Bitter Winterの取材に対して、「ウイグル人イスラム教徒やその他の『良心の囚人』から臓器狩りは、中国共産党が犯した恐ろしい犯罪の一つです… 陰惨すぎて信じられない人もいるかも知れませんが、これが現実であり、私たちは指導的な人々に自らの行動の責任を追及しなければなりません」と訴え、米議会上院での速やかな法案成立と実施を求めた。

 彼女はまた、「イスラム教徒に対して、中国は厚かましい『ハラール(イスラムの教えに従った)臓器』の宣伝をしていますが、それは、この想像を絶する犯罪の恐怖を増幅させるだけです」と述べ、「この法案の成立は、ウイグル族コミュニティに対する中国共産党の忌まわしい残虐行為との戦いにおける重要な転換点になります」と期待を表明している。

 中国における臓器狩りの問題が浮上したのは、1970年代。処刑された囚人から臓器を摘出、営利目的で流通されているという指摘があり、 国際的な非難を受ける中で、中国政府は2013年にこの”慣行”を廃止すると言明、2015年に廃止が完了した、と公表していた。

 だが、英国医療評議会の倫理委員会によると、実際には、国際的な非難を受けないように数値を操作しただけで、臓器狩りは続けられており、 中国は、年間約9万件という臓器移植が、「数日から数週間の待ち」のテンポで進められ、10億ドル規模の世界最大の”臓器移植プログラム”が進んでいる。

 亡命ウイグル人のエンベル・トフティ博士は、首都ウルムチで青年外科医だった1990年代に、腎臓が摘出されたと一目でわかるU字型の傷跡が残る3人の少年を6か月間にわたって診察し、 1995年には、生きている死刑囚から臓器を摘出するよう命じられたうえ、そのことを一切口外しないように言い渡された、という経験を明らかにしている。。

Dr. Enver Tohti. From Twitter.

(左の写真はエンベル・トフティ博士。 ツイッターより)

 また、Bitter Winterのインタビューに応じたウイグル難民のアイヌル氏は、1980年代のある夏、友人の娘が少女たちとともに村を出て中国の内陸部で働くことになったが、「6か月後に戻ってきました。そのうち3人の体には大きな傷跡があった。事情を聴くと、『 工場で働くには健康診断が必要だ、と言われて、診断を受けたが、気を失い、目が覚めたとき、自分たちに何が起こったのか全く分からなかった』と明かしてくれました」。だが、その後、2人が病気になり、死亡した時、医師が遺体を調べて、腎臓が摘出されていたこと分かった、という。

 また、 2016 年に、新疆ウイグル自治区のすべてのウイグル人に「無料健康診断」が義務付けられ、生体認証のための虹彩スキャン、血液型検査、指紋採取、DNA 検査の提出が強制されるようになったが、 ウイグルの人権活動家は「中国内外の臓器需要に対応するために”健康診断”で集められたデータが利用されること」を懸念している。

 また2019年6月には、世界の中国における臓器狩りへの非難を背景に、国際的な人権活動家たちの「中国における良心の囚人からの臓器狩りに対する独立法廷」が60ページにのぼる判決要旨を発表し、目撃証言や被害者の体験、医療専門家による調査などによって、中国では”必要”に応じて、臓器が入手可能であり、新疆ウイグル自治区のカシュガル空港には、摘出した臓器を移植者に速やかに運べるような特別な「緊急人体臓器搬送通路」が用意されていることなどが明らかにされ、世界に改めて衝撃が広がった。

 ウイグル人に対する特別な危険行為は、韓国のテレビ放送「TV CHOSUN」の人気調査報道番組「Chosun’s Investigative Report 7」でも取り上げられている。同番組のプロデューサーは、韓国人の天津への”臓器観光”を取材中に、サウジアラビアの人々が、取材先の病院で国民が同じ病院で「halal organs(イスラム教で認められる臓器)」の移植を、国の費用負担で受けるために待機しているのを知った、という。(右の写真は「TV CHOSUN」の調査報道番組の一場面)腎臓の専門病院として名の高い北京同善堂中医医院が制作したビデオでは、敷地内のモスクやハラール・ レストランなど、アラブ患者向けの特別な施設についての説明もされている。

Chosun’s investigative report. Screenshot.

 中国における臓器狩りに関する独立法廷は判決で、「中国では良心の囚人からの強制臓器収奪がかなりの期間にわたって行われ、非常に多くの犠牲者が出ている」と結論づけた。

 法廷で証言したエンベル・トフティ博士は、2017年10月に台北で臓器狩りについて講演した後、台湾人から連絡を受け、「自分の弟から『腎臓の移植を受けるために天津に行った』と言われた」ことを知らされた。その台湾人は、「弟は、法輪功学習者の死の原因が自分にあるのではないか、と心配していたが、外科医から『現在は、すべての臓器が新疆から来ている』と説明を受け、安心した」としている。

 その新疆ウイグル自治区の 収容所から生還したウイグル人の一人は、「収容所に入れられるとすぐ、徹底的な健康診断を受けさせられ、内容の分からない注射を打たれた。健康な収容者が定期的に失踪し、二度と戻ってこなかった」と語っており、 拘留中に死亡し、遺体を弔いたいとする親族などの希望が退けられている、との報告もあり、疑惑はさらに深まっている。

 「極度の警戒」の対象とすることは、国連の委託を受けた独立専門家チームによって表明された。同チームは、民族的、言語的、または宗教的な少数派の収容者たちが、血液検査や、超音波やX線検査などの内臓検査を強制的に

受けさせられ、そうではない収容者と分けられている可能性がある、という「信頼できる証拠」を見つけた、と述べている。そして、調査の結果、そうした検査を受けた収容者たちは、移植をする”割り当て”のための”生体臓器データベース”に登録される、としている。

Ethan Gutmann. Credits.

  そのうえで、専門家チームは、「中国における強制臓器収奪は、さまざまな場所で、逮捕理由の説明や逮捕状の提示もされないまま逮捕・拘留される特定の民族的、言語的、宗教的な少数派がターゲットにされているようだ」と指摘、 「私たちは、囚人や被拘禁者が民族、宗教、思想信条によって差別的に扱われている、という報道を受け、深く憂慮している」としている。

 北京政府の否定にもかかわらず、イーサン・ガットマン氏の2006年以来の調査は、最近では新疆ウイグル自治区アクスの”再教育キャンプ”の隣に大規模な火葬場を発見したこと(2021年12月のウイグル法廷報告書)を含め、大掛かりな強制臓器収奪が行われているとする証言に信憑性を与えるいくつかの「決定的な証拠」を提供している。

 左の写真は、イーサン・ガットマン氏)。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

2023年6月20日

・中国の中央社会主義研究所が全土の聖書学校教師を北京に集め、マルクス主義原則、習近平思想を学ばせる

A group photo of those who completed the course at the Central Institute of Socialism. From Weibo.

A group photo of those who completed the course at the Central Institute of Socialism. From Weibo.

 

 中国全土のキリスト教神学校の教師を集めて北京の社会主義中央研究所で行われていた「キリスト教神学校主要教師養成課程」が2日、修了した。

 この課程の狙いは、マルクス主義の中核となる原則、中国共産党の第20回全国代表大会、そして『社会主義の新時代』に関する習近平主席の考えについて学ぶ」こと。

 中央社会主義研究所は、中国共産党の党員になっていない人々にマルクス主義を教育する目的で、毛沢東主席によって 1956 年に設立され、中国共産党の指導の下で運営される主要な教育機関。所長は、中国共産党全国人民代表大会常務委員会副委員長の郝明金(ハオ・ミンジン)氏。これまでに短期コースやセミナーを通じて 10万 人以上を”教育”してきた。

 「キリスト教神学校主要教師養成課程」の修了式で、中国キリスト教評議会副局長兼神学教育部長のリン・マンホン牧師は「この課程は、教師が必要な『高度な社会主義文化』を習得するのに役立った」とし、三自教会(注:中国政府・共産党の管理下にあるプロテスタント教会の全国組織)と提携するキリスト教神学校が、経験豊富な教授を指導者とする「イデオロギー的および政治的な教育と研究のグループ」の設置についても報告した。

 また同牧師は、「『キリスト教の中国化』は、聖書学校の教師と学生が『政治的認識』を高め、中国共産党の文書、特に第20回党大会の文書を熱心に研究する必要があることを意味している」と語った。。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載しています。
2023年6月14日

・中国当局が「聖職者・情報照会システム」導入ー新たな宗教活動規制?(Bitter Winter)

   今年の初め、Bitter Winter は「仏教および道教の僧侶に関する情報照会システム」(佛教道教职人员信息查询系统)が北京で開始された、と報じた。 それは、”偽り、詐欺的”な道教や仏教の僧侶の”正体を暴く”ためのツールとされていたが、実際には、中国共産党に従属せず、政府管理の「中国仏教協会」や「中国道教協会」にも属さない仏教、道教の聖職者を特定し、活動が違法であるとして、迫害するのが狙いだった。

 だが、このほど、このプロジェクトは仏教と道教に限定されないことが判明した。中国共産党・政府は5月23日から、カトリックの「中国天主愛国協会」、イスラムの「中国イスラム協会」、プロテスタントの「三自教会」に対する「イスラム教、カトリック教、キリスト教(プロテスタント)の聖職者に関する情報照会システム」(斯兰教、天主教、基督教教职人员信息查询)の運用を正式に開始した。これにより、 仏教、道教の僧侶だけでなく、中国共産党の管理・統制下にない司祭、牧師、イマームを特定、規制できるようになる。

 中国では宗教は 5 つの「公認宗教組織」を通じて管理されており、その指導者や幹部は事実上、中国共産党によって選ばれ、信者たちに党の命令とイデオロギーを伝えることとされている。5つの組織とは、「中国仏教協会」「中国道教協会」のほかに、「中国天主愛国協会」、「中国イスラム協会」、プロテスタントの「三自教会」。合法的とされるためには、これらに所属する必要がある。だが、各宗教の多くの中国人信者はこれらの組織ではなく、プロテスタントは”家庭教会”、カトリックは2018年のバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意を拒否する”良心的兵役拒否者”の”地下教会”、独立系のモスクなどに属している。

 理論的には、認可された 5 つの宗教組織に所属せずに活動するすべての教会共同体は「違法」だが、1982 年に当時の指導者、鄧小平が限定的な”寛容”を認めていた。 だが、習近平政権下で、その”寛容”は消え去り、すべてのこうした教会共同体に 5 つの宗教への参加を強制するようになっている。 参加を頑強に拒む共同体、信者は「邪教」に分類され、法輪功や全能神教会などのように、「異端」のレッテルを貼られ、活動が禁止され、犯罪組織とみなされ、厳しく迫害される可能性がある。

 信者は、携帯電話の認証コードを取得した後、司祭、牧師、またはイマームが「合法」であるかどうかを確認できる。当然ながら、これによりシステムの運用者である当局は、誰がデータベースにアクセスしているかを識別できることになる。

 使用手順は次のようなものだ。

 ステップ 1: 問い合わせ者は個人の携帯電話番号を入力し、SMS 認証コードを取得した後にシステムにログインする。

Step 1. From Weibo.

 ステップ 2: ユーザーはシステムにログインした後、名前、ID カード番号、住居 (都道府県レベルの市または中央政府直轄市の区域に合わせて正確な内容 ) 司祭、牧師、またはイマームであると”主張”する人物を、定型のフォームに記入する。

 ステップ 3: その人が「合法的な」聖職者である場合、つまり、中国天主愛国協会、中国イスラム協会、または三自教会に所属している場合、システムはその人物の関連情報を表示。

 ステップ 4: 司祭、牧師、またはイマームであると主張する人物がデータベースに見つからない場合、システムはその旨をユーザーに通知する。当然ながら、当局は、利用者の一連の操作を把握しており、「違法な」聖職者とそれを報告した人物の両方を簡単に特定する可能性だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2023年6月10日

・教皇、バチカン社会科学アカデミーの新会員に「大学憲章から『思想の自由』を外し『共産党の指導に従う』と誓った中国・復旦大学」の教授を任命

(2023.6.5  カトリック・あい)

 バチカンが5日発表したところによると、教皇フランシスコは同日付で、社会科学アカデミーの会員として、新たに中国・復旦大学の白東東教授(中国哲学・政治哲学)と米国・エール大学環境大学院のジャスティン・ファレル教授(社会学)の二人を任命された。

 中国国籍の初の会員とされる白教授は、1970 年 6 月 4 日に中国・北京で生まれた。 2004 年に米国のボストン大学から哲学博士号を取得、米国オハイオ州にあるイエズス会経営のザビエル大学で教授を務めた。 現在は、復旦大学、ニューヨーク大学法学部、同大学上海校の教授を務めている。 中国哲学と政治哲学に関する多数の著書があるという。

 復旦大学は上海市に本部を置く中国を代表する総合大学で中国国家重点大学の一つだが、2019年に大学憲章から「思想の自由」への言及を削除し、「共産党の指導に従うことを誓う」「教職員に習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想を身につけさせ、教師と学生の心を武装させる」と付け加え、教員と学生に「社会主義の核心的価値観」の遵守を義務づけた。

 中国専門家からは、このような復旦大学の憲章の改定に、「若者が、共産党政権反対に傾く土壌を排除しようという思惑がある」との見方があり、中国政府・共産党が国内にとどまらず、海外にまで人権圧迫の動きを強めている中での、今回の復旦大学教授の任命の意図を測りかねるとする声も欧米関係者から出ている。

2023年6月5日

・中国、マカオにも香港型「国家安全維持法」を導入へ(Bitter Winter)

 中国政府・共産党による民主化運動の徹底制圧がなされた香港に比べれば”無風”状態にも見えたマカオについて、党指導部は、「外国の侵入」の危険にさらされており、香港と同じ厳しい取り締まり法制の導入が必要、と判断した。マカオに適用される 改正国家安全維持法は5月18日に、マカオ立法議会で、あえて異議を唱えた議員は1人を除く、”全会一致”で可決された。

 中国共産党は新聞発表で、マカオの現行国家安全維持法は、「柔軟」であり、「不特定の国家安全保障、リスク、脅威の観点からの新たな好ましくない課題に対処するには不十分であるとみなされた」とし、中国メディアは、新たに厳格な法律が必要な理由として、スパイ活動、「外国の干渉」、「台湾の独立に有利な勢力」によるマカオへの侵入の試み、を挙げた。

 スパイ活動と国家機密の保護に対するマカオの新たな規制が準備されており、改正国家安全維持法に次いで導入される可能性がある。

 極めて重要な賭博業界を含むマカオのビジネスリーダーたちは、新法が観光業や外国企業の活動に悪影響を与えるのではないかと懸念している。 中国では従業員が「スパイ容疑」で告発されるのが極めて容易なことを経験しているからだ。また、カトリックなどキリスト教会は、現在香港で起きているように、「中国化」され、”習近平と共産党の栄光”を説くよう要請されるのを恐れている。

 中国共産党が突然、「マカオが香港と同じくらい危険となる可能性があり、あらゆる形態の潜在的な反対派の取り締まりが必要だ」と判断したかどうかは、今のところ不明だ。しかし、マカオへの改正法導入は、党が「自由と反対意見の可能な空間」を全国でこれ以上徹底するか模索していることのさらなる証拠であり、そのような「空間」は今、容赦なく一つ一つ排除されている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2023年6月2日

・モスクの「中国化」に抗議する回族イスラム教徒に、公安当局が”最後通告”(Bitter Winter)

(The protesters clashing with the police in Najiaying. All images from Weibo and Twitter. )

 中国・雲南省の納家営モスク(イスラム寺院)の「中国化」を強制する当局に対して、現地の回族イスラム教徒たちが大規模な抗議デモを続けている。公安当局は大規模な部隊を出動させ、6月6日までに抗議活動を終結させるよう最後通告するなど緊張した状況が続いている。

 中国では、習近平主席の宗教”中国化”方針のもと、中央、地方の当局あげて、思想・教義はもとより、聖堂の建築などについても”中国化”が全国規模で進められている。その一環として、イスラム教のモスクについても中国風に改造することが求められ、これまでの中国のほとんどの地域で、モスクの特徴であるナレットやドームが消している。

 そうした中で、穏健で裕福な回族が住んでいる雲南省の納家営モスクと沙店モスクは、数少ない伝統的なモスク建築のままの建物として知られていた。だが、5月27日になって、当局はいきなり、ブルドーザーや工事資材をもった作業員を400人以上の公安部隊をともにモスクの周囲に送り込んできた。

Anti-riot police deployed outside the mosque on May 27.

(左は、モスクの外に配置された公安部隊)

だが、抗議の回族イスラム教徒は何千人にも膨れ上がり、28日には公安部隊はいったん撤退したが、その後、一説には部隊の規模は5000人に増強され、地域のインターネットは遮断された。すでに逮捕者は数十人に上っているが、公安当局は、6日までに抗議活動を止めない場合、参加者は全員を逮捕、長期の懲役刑を課する、と最後通告を行っている。The police “ultimatum.”

(右の写真は、公安当局による最後通告の全文)

 また公安関係者は市内の各家庭を回り、沙店の全戸を訪問し、「モスクは”修正”され、これまでより美しくなる」と住民に説明すると同時に、抗議活動に参加しないよう警告している。

The Grand Mosque of Shadian, as it is now (left) and as it will look like after the “Sinicization” (right).

 

 民族的には「漢民族」とされている回族は、中国の少数民族の一つだが、同国最大のイスラム教徒の民族集団でもある。中国全土に広く分散し、人口は約1000万人といわれる。

 伝統的に中国共産党に忠実な「善良な」イスラム教徒として紹介されてきた。だが、宗教の「中国化」のプロセスは、この典型的な「中国人イスラム教徒」の共同体社会さえも直撃し、不快感と抵抗を生み出している。 中国の宗教のいかなる”部分”も、習近平の監視と弾圧を強化する政策から免れないわけではない、ということを示している。

 (左の写真は現在のモスク=左≒と「中国化」を終えた後の同じモスクの姿=右)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

2023年6月2日

・「 中国化神学」に関するカトリックフォーラム開催ー「習主席の新時代の中国の社会主義思想を指導イデオロギーとして堅持」と北京司教

(2023.5.10  中国天主教(Catholic church in China))

  第200回「カトリック中国化神学フォーラム」が5月9、10の両日、浙江省寧波で開催された。 フォーラムは、浙江省の「二つの教会」が共催し、寧波愛国カトリック協会と寧波カトリック教区によるカトリック「一つの社会と一つのグループ」が主催。 中国カトリック「一つの社会と一つのグループ」の責任者、中国カトリック神学研究委員会のメンバー、各地の「二つのセッション」の責任者、科学研究機関、大学、神学・哲学アカデミーなどの代表が集まり、「教会の中国化に対する聖書の解釈と研究の重要性」を中心に意見を交換した。

 開会式には、中国共産党・中央統一戦線工作部の関連部門責任者、浙江省・共産党委員会統一戦線工作部副部長、浙江省民水委員会主任が出席し、講演した。 冒頭のあいさつは、中国愛国天主協会の会長、李山・北京司教が行い、司会は、中国カトリック司教会議の会長、申斌(シェンビン)上海司教が行った。

 共産党中央委員会統一戦線工作部の関連部門の責任者は演説の中で、「わが国におけるカトリックの中国化を促進し、神学的思想の構築を深めるための要件」を提示。 要件の第一は「独立と自己管理の原則を遵守し、わが国のカトリックの中国化のための確固たるイデオロギー的および政治的基盤を築くこと」。 第二に「優れた中国伝統文化に根を下ろし、カトリック神学思想の構築を強化すること」。 第三は「自己を更新し、中国におけるカトリックの中国化の内生的な原動力を刺激し続けること」。 第四に「時代とともに前進し続け、わが国のカトリックの中国化を促進し続けること」とした。

 李山司教はあいさつで、習近平の「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を研究・実施し、中国共産党第20回全国代表大会の精神を研究・実施するテーマ教育を全国が開始する中、全国の司祭、教区民、専門家、学者が美しい沿岸都市、寧波に集まり、「対話と交換、論文討論、説教などのさまざまな形で中国のカトリック教会が中国化の方向性を固守する理論的研究と実践的な道を絶えず深めた」と述べた。

 そして、「それはまた、人々に前進するように促す動員展開でもある」と述べ、「カトリック教会は中国化の方向性を堅持しており、常に習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導イデオロギーとしてしっかりと受け止めなければならない」と強調。「 カトリック教会は、中国化の方向性を堅持し、独立と自己管理と民主的な教会の原則を堅持している。中国の国家状況に適合する神学的思考システムを構築するという原則を堅持している。 カトリック教会は、中国化の方向性を堅持し、常に主導権を握り、積極的な行動をとるという原則を遵守しなければならない」と言明した。

 浙江省・共産党統戦部副部長は、全国からの専門家、学者、司祭、カトリック教徒を歓迎し、浙江省の宗教活動の基本的な状況を説明。「浙江省が中央統一戦線工作会議と全国宗教工作会議の精神を誠実に実施し、浙江省の認識を得て宗教労働実践例を積極的に作成し、宗教の中国化の『浙江省の窓』を包括的に展示した」と述べた。

 開会式の後、対話、討論、説教の3つのセッションが行われた。

  中国社会科学院学部会員で中国宗教学会名誉会長の卓新平氏、中国仏教協会副会長のイーザン師匠氏、中国道教協会副会長の張高成氏、中国イスラム協会副会長のイマーム・ムー・ケファ氏、中国カトリック司教会議副会長の楊暁亭司教、中国キリスト教評議会副会長のシャン・ウェイシャン牧師、中国宗教誌の劉神光社長は、「カトリックの中国化に関する対話」のセッションで、宗教古典の解釈と研究に関する対話と交流を行った。 中国化の方向性を堅持する上での新時代におけるカトリック教会の重点について共同で議論した。

 「カトリックの中国化に関する討論」のセッションでは、科学研究機関、大学、神学および哲学研究所、教区の専門家、学者、司祭30人近くが論文を交換し、聖書の研究とカトリックの中国化に関連するその問題について意見を交換した。

 また10日に開かれた「カトリックの中国化に関する説教」のセッションでは、参加司祭たちが「倹約を賞賛し、贅沢を控える」というテーマに焦点を当て、教義における「神の貧しさ」と「節制の美徳」に関する教えについて話し合い、国の宗教団体の「贅沢の節制に関する共同イニシアチブ」を積極的に実施し、「司祭と信徒がイエスを模範とし、簡素な生活を送り、教会の健全な継承を共同で促進すること」を提唱。 そして司祭たちは、彼らの深遠な宗教的業績と魅力的なスピーチに対して温かい拍手喝采を浴びた。

 閉会式は、中国カトリック司教会議副議長の楊永強・司教が主宰し、寧波市党委員会常務委員会委員で寧波市党委員会統一戦線工作部長のビアン・ジアン氏が閉会の挨拶を行い、中国カトリック司教会議議長の沈斌司教が閉会の挨拶をした。 閉会式の後、参加した司祭、専門家、学者は、浙江省民主教育実践基地、寧波教区司教事務所、寧波江北聖心教会に赴き、教会の中国化を実践した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

2023年5月23日

・モンゴル滞在の著名な中国人反体制作家、”海外警察”が逮捕、中国に連行(BW)

Borjigin and the book for which he was sentenced to jail. Courtesy of the Southern Mongolian Human Rights Information Center.

 *写真はボルギジン氏と彼が中国で有罪とされた著作「中国文化革命」(南モンゴル人権情報センター提供)

 

(2023.5.15 Bitter Winter  Editor  Massimo Introvigne)

 2023年5月3日、中国警察の車両2台が民家に到着し、反体制派作家を逮捕した- 中国ではこうしたことは日常茶飯事だ。だが、今回の事件は中国国境内で起きたものではない。
ラムジャブ・ボルジギン氏は独立主権国家であるモンゴルの首都ウランバートルで逮捕され、すぐに中国に連行されたのだ。

 モンゴル国内で南モンゴル人の反体制派が中国警察から誘拐される5件目の事件となる。 そのうちの1人は、ウランバートルのUNHCR事務所ビル前で逮捕されている。

 ボルジギン氏は、中国政府・共産党が「内モンゴル」と呼び、モンゴル人としてのアイデンティティを抑圧して「中国化」しようとしている南モンゴルでよく知られた作家。
2019年、ボルジギン氏は、血なまぐさい時代の南モンゴル生存者の口頭証言を含む文化大革命に関する本を出版したとして、中国の裁判所で懲役2年の判決を受けた。刑期を終えた彼は、自宅軟禁の一種である無期限の「居住監視」下に置かれたが、ボルジギン氏は今年年 3 月 6 日、モンゴルに入国し、そこで南モンゴルにおける中国共産党によるモンゴル人アイデンティティの抑圧の歴史を 3 巻からなる本の出版を発表していた。

 モンゴルで逮捕され、中国に連行される1週間前、ボルジギン氏はニューヨークに本拠を置く南モンゴル人権情報センター(SMHRIC)に電話を入れ、「中国警察が娘を連れてウランバートルに来た。私を逮捕し、中国に連れ戻す、と脅している」と助けを求めた。 SMHRICは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に通報したが、明らかにモンゴル当局の共謀、あるいは少なくとも暗黙の了解のもとで3日に起きたボルジギン氏の逮捕、中国への連行を防ぐことはできなかった。

 中国警察はボルジギン氏の”問題”の著作の原稿の回収に”成功”していない。原稿はモンゴル人の友人たちの手で安全に保管されており、彼らThe newly recognized 10th Jebtsundamba Khutughtu presenting offerings to the Dalai Lama. Courtesy of the office of H.H. the Dalai Lama.は出版を続けるつもりだが、モンゴル政府が北京への”従順”な姿勢を強めている今、それすら確実ではない。

 3月3日、ダライ・ラマ師は、モンゴル・チベット仏教の指導者であり、ダライ・ラマ自身とパンチェン・ラマ師に次ぐ第3位の権威であるジェブツダンバ・フトゥグトゥ師が「米国生まれのモンゴル人の少年として生まれ変わった」と発表した。

 しかし、モンゴル政府は中国から、「ジェブツダンバ・フトゥグトゥ師を認めるべきではなく、モンゴルへの渡航も許可すべきではない」と警告を受けている。

 ダライ・ラマ師が認定したジェブツンダンバ・フトゥグトゥ10世はモンゴル仏教聖職者によって正式に即位されるべきだが、これはモンゴル政府の許可がある場合にのみ可能となる。 今のところ、モンゴルが中国の独裁者に抵抗する意思を示す兆候はない。

  *ダライ・ラマに供物を捧げるジェブツンダンバ・クトゥグトゥ10世( ダライ・ラマ法王事務所提供)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け、 中国の現状や宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2023年5月16日

・中国の新スパイ対策法施行ー共産党が好まない情報を発信する全員が”スパイ”の可能性(Bitter Winter)

    4月26日に中国政府・共産党が発表した新スパイ対策法によって、中国共産党が好まない情報を海外に発信するすべての人物(「Bitter Winter」記者も含む)が「スパイ」と見なされる可能性がある。

 この記事を書くことでさえも、おそらく新法違反ということになるだろう。施行日は 7 月 1 日だが、最高裁判所がすでに導入していたルールを法律に統合したものだ。

 新法は、「国家の安全保障に対する総合的なアプローチ」を導入するもの、と説明している。 これは常套句のようだが、「国家の安全保障」と「国家機密」が定義されていないという事実が、その裏に隠されている。つまり、中国共産党が定義する、しないと関係なく、「国家の安全保障」を「暴露」によって危険にさらすものが「国家機密」であり、新法の狙いは、外国人による「暴露」とみなされる情報-”スパイ活動”の範囲を拡大することにある。

  私たちは確かに、一般に知られていない事実を明らかにすることに最善を尽くしているが、その事実が公けになることで、信教の自由と人権の分野における中国の好ましくないイメージがさらに悪化することは避けらない。

 私たちは、インターネットを通して、中国における未知の事実を公けにしているが、外国の政府や諜報機関に伝えることはしていない。そのことに異論を唱える人もいるかも知れない。だが、新法では、規制の対象となる情報は「外国の政府や諜報機関が欲するような機密情報」である必要はない。新法の第 4条3項では「スパイ組織およびその代表者以外の外国の機関、組織、および個人」による要請または扇動に基づいて国外で暴露された国家安全保障に有害な情報」も対象としている。 したがって、外国の政府や諜報機関でなくても、例えば、カナダのバンクーバーに住む、中国の人権について話したいと考えている従兄のために情報を送るのも規制の対象となるわけだ。

 新法はまた、他の法律と連携して、外国人を含む中国国内にいる者を出国禁止にする条件を拡大しており、外国人が「機密情報を国外に漏らす可能性が高い」とみなされた場合、出国前に逮捕される可能性がある。

 中国政府・共産党はすでに、自国の巨大な電子データベースへのアクセスを”安全保障上の見地”から制限したり、データを削除したりしている。 裁判の判決や学術論文に基づくデータベースを検閲し、内外企業の商業取引を含む経済活動のための情報へのアクセスにも規制をかけている。最近も、米国の調査会社MinzGroupに勤務する中国人従業員が雇用主に機密データを提供した疑いで逮捕された。 他の米国企業の中国国内の事務所も同様の容疑で家宅捜索を受けている。

 中国において、誰が”スパイ”なのか?  中国共産党が隠したい情報を世界に向けて公けにする者は誰もがそうなる。「Bitter Winter」の中国人記者は、完全にそれに当てはまるのだろう。

 以下は、Bitter Winterが入手した「中華人民共和国・スパイ対策法」の全文の仮訳

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中華人民共和国・スパイ対策法

第一章 総則

第1条 この法律は、スパイ対策の強化、スパイ行為の防止、停止、処罰、国家の安全の維持、国民の利益の保護を目的として、憲法に基づいて制定された法律である。

第2条:対スパイ活動は、党中央委員会の中央集権統一指導を堅持し、国家安全保障の全体概念を堅持し、公開作業と秘密活動、特殊工作を大衆路線と組み合わせ、積極的防衛、合法的処罰、症状と根本原因の両方を堅持し、国家安全保障のための堅固な人民防衛線を構築する。

第3条 スパイ対策は、法律に従い、人権を尊重・保護し、個人及び組織の適法な権利及び利益を保護して行う。

第4条 この法律において「スパイ活動」とは、次に掲げる行為をいう。

(1)スパイ組織およびその代理人、他者を扇動もしくは資金提供すること、または国内外の機関、組織、またはそれらと共謀して行う中華人民共和国の国家安全保障を危険にさらす活動。

(2) 諜報機関に参加し、又は諜報機関及びその代理人から任務を受領し、又は諜報機関及びその代理人に亡命する行為

(3)国家機密、諜報機関、その他の国家安全保障と利益に関連する文書、データ、資料、またはアイテムを盗み、スパイ、購入、または違法に提供する活動、またはスパイ組織とその代理人以外の外国の機関、組織、または個人によって国家の役人を離反させるように扇動、誘惑、強制、または購入すること。

(4)諜報組織およびその代理人が、それらを実行するために他者を実行または扇動し、または資金を提供する、またはそれらと共謀して、国家機関、秘密関連ユニット、または重要な情報インフラストラクチャに対するネットワーク攻撃、侵入、干渉、制御、妨害、またはその他のそのような活動を実行する。

(5)敵に標的を攻撃するように指示する。

(6) その他スパイ活動を行うこと。

この法律は、中華人民共和国の領域内のスパイ組織およびその代理人、または中華人民共和国の市民、組織、またはその他の条件を利用して第三国に対するスパイ活動に従事し、中華人民共和国の国家安全保障を危険にさらすスパイ組織およびその代理人に適用される。

第5条:国家は、スパイ対策活動のための調整メカニズムを確立し、スパイ対策活動の主要な事項の全体的な計画と調整を行い、スパイ対策活動の主要な問題を調査および解決する。

第6条:国家治安機関は、スパイ対策活動の権限を有する機関である。

公安、秘密警備、その他の関連部門と関連する軍事部門は、その義務と分業に従って、法律に従って緊密に協力し、調整を強化し、関連する仕事をうまく行うものとする。

第7条 中華人民共和国公民は、国家の安全、名誉及び利益を保護する義務を負い、国家の安全、名誉及び利益を危険にさらす行為をしてはならない。

すべての国家機関と軍隊、政党と人民組織、企業と機関、およびその他の社会組織は、スパイ活動を防止および停止し、国家の安全を保護する義務を負う。

国家治安機関は、スパイ対策活動において人々の支援に頼り、スパイ行為を防止および阻止するために人々を動員および組織化する必要があるす。

第8条:すべての市民および組織は、スパイ対策活動を合法的に支援および支援し、学んだ国家機密およびスパイ対策活動の秘密を保護するものとする。

第9条:国家は、スパイ対策活動を支援または支援する個人および組織を保護するものとする。

スパイ活動を報告したり、スパイ対策活動に多大な貢献をした個人や組織は、関連する州の規定に従って表彰され、報われねばならない。

第10条:外国の機関、組織、または個人によって実行される、または外国の機関、組織、または個人によって実行される、または外国の機関、組織、または個人と共謀して実行される中華人民共和国の国家安全保障を危険にさらすスパイ行為は、法律で調査されねばらなない。

第11条 国家治安機関及びその職員は、その業務において法律に従って厳格に処理し、その権限を超過し、又は濫用してはならず、また、個人及び組織の合法的な権利及び利益を侵害してはならない。

国家治安機関およびそのスタッフがスパイ対策任務の遂行において合法的に入手した個人および組織に関する情報は、スパイ対策活動にのみ使用できます。 国家機密、労働秘密、営業秘密、個人のプライバシー、または個人情報である場合は、機密を保持するものとする。

 

第二 章: セキュリティに関する注意事項

第12条:国家機関、人民組織、企業、公的機関、およびその他の社会組織は、その部隊のスパイ対策のセキュリティと防止の取り組みに主要な責任を負い、スパイ対策のセキュリティ対策を実施し、国家の安全の維持についてそのユニットの要員を教育し、スパイ行為を防止および停止するためにそのユニットの人員を動員および組織する。

地方人民政府は、各級および関連する産業規制部門は、その職務および分業に従って、その行政区域または産業におけるスパイ対策のセキュリティおよび防止の取り組みを管理することとする。

国家治安機関は、法律に従って、スパイ対策のセキュリティと防止の取り組みを調整、指導、監督、および検査する必要がある。

第13条:人民政府および関係部門の各レベルは、スパイ対策のセキュリティ対策と国家安全保障リテラシーに対する国民の意識を高めるために、教育、訓練、法律の普及広報の内容におけるスパイ対策のセキュリティと防止の知識を含む、スパイ対策のセキュリティ対策に関する広報と教育を組織し、実施せねばならない。

ニュース、ラジオ、テレビ、文化、インターネット情報サービスなどのユニットは、社会のために標的を絞ったスパイ対策の宣伝と教育を実施する。

国家治安機関は、スパイ対策の安全対策の状況に基づいて、スパイ対策の広報および教育活動を実施し、予防のための意識と能力を高める際に、関連するユニットを指導するものとする。

第14条 いかなる個人又は団体も、国家機密である文書、データ、資料又は物品を不正に入手し、又は所持してはならない。

第15条 いかなる個人又は団体も、諜報活動のための特別な支援のために、特別な諜報用具を違法に製造、販売、所持又は使用してはならない。 特別スパイ装置は、関連する国の規定に従って、国務院の下で国家安全保障の管轄部門によって確認されるべきである。

第16条:スパイ行為を発見した市民または組織は、速やかに国家治安機関に報告しなければならない。 公安機関その他の国家機関又は組織に通報があつたときは、当該国家機関又は機関は、直ちにこれを国家治安機関に移送し、取り扱う。

国家治安機関は、通報を受け付ける公衆の電話番号、郵便受け、オンラインプラットフォーム等に開示し、通報された情報を法律に従って速やかに処理し、通報者の秘密を保持する。

第17条:国家は、主要なスパイ対策セキュリティおよび防止ユニットの管理システムを確立するものとする。

主要なスパイ対策セキュリティおよび防止ユニットは、スパイ対策のセキュリティおよび防止作業システムを確立し、スパイ対策のセキュリティおよび防止の取り組みの要件を実行し、内部の機能部門および人員がスパイ対策のセキュリティおよび防止の任務を引き受けることを明確にするものとする。

第18条:主要なスパイ対策セキュリティおよび防止ユニットは、スタッフのスパイ対策セキュリティ予防措置の教育と管理を強化し、ポストを離れる人員が機密解除される期間中、スパイ対策セキュリティおよび防止義務の履行の監視と検査を実施するものとする。

第19条:主要なスパイ対策セキュリティおよび防止ユニットは、隔離強化、閉鎖管理、警戒の設定などの物理的なスパイ対策防止手段を採用して、秘密、場所、キャリアなどを含む事項の日常的なセキュリティ防止管理を強化するものとする。

第20条:主要なスパイ対策セキュリティおよび防止ユニットは、スパイ対策技術防止の要件と基準に従って、対応する技術的措置およびその他の必要な措置を講じて、主要な部門、ネットワーク施設、および情報システムのスパイ対策技術的防御を強化するものとする。

第21条 重要な国家機関、国防産業部隊その他の重要な秘密関連部隊の境界警備管理下にある地域及び重要な軍事施設において、新築、再建又は拡張工事が建設される場合、国家治安機関は、国家安全保障問題に係る建設事業許可を講ずるものとする。

県級以上の地方人民政府は、国家経済社会開発計画、領土空間計画、その他の関連計画の作成に当たっては、国家安全保障要因及び指定保安区域を十分に考慮し、国家保安機関の意見を求める。

治安管理区域の画定は、開発と安全のために調整され、科学、合理性、真の必要性の原則を遵守し、開発と改革、天然資源、住宅と都市と農村の建設、秘密、科学技術、国防のための産業、および関連する軍事部門などの部門と連携して国家治安機関によって共同で画定され、中央政府の直轄の省、自治区、および市町村の人民政府に報告され、承認と動的調整が行われる。

国家安全保障問題を含む建設プロジェクト許可の具体的な実施措置は、国務院の国家安全保障担当管轄部門が関連部門と協力して策定する。

第22条:国家治安機関は、スパイ対策活動に必要な場合、関連部門と協力して、スパイ対策技術防止基準を起草し、スパイ対策技術防止措置を実施する際に関連ユニットを指導し、厳格な承認手続きの後、隠れた危険のあるユニットに対してスパイ対策技術防止検査および試験を実施することができる。

第三章 調査及び処分

第23条:国家治安機関は、スパイ対策活動において、この法律および関連法に規定されている機能と権限を合法的に行使する。

第24条:国家治安機関の職員が合法的にスパイ対策業務を遂行する場合、規定に従って作業IDを提示し、中国市民または外国人の身分証明書を確認し、関連する個人および組織に関連する状況について問い合わせ、身元が不明またはスパイ行為の疑いのある人に付随するアイテムを表示することができる。

第25条 国家治安機関職員が適法にスパイ対策業務を遂行する場合、地区都市レベル以上の国家治安機関の責任者の承認を得て、当該個人及び組織の電子機器、施設並びに関連する手順及びツールを、その職務分証明の提示により検査することができる。 査察中に国家の安全を脅かす状況が発見された場合、国家治安機関は、直ちにこれを是正するための措置をとるよう命じる。 是正が拒否された場合、または是正後も国家安全保障を危険にさらす潜在的な危険がある場合、それは封印または押収される可能性がある。

2国家治安機関は、前項の規定により封印し、又は押収した電子機器、設備並びに関連する手続及び道具について、国家の安全を脅かす事態が解消された後は、速やかに、封印又は押収を解除せねばならない。

第26条 国家治安機関職員は、当該国の規定に従い、地区都市レベル以上の国家治安機関の責任者の承認を得て、適法にスパイ対策業務を遂行する場合には、関連する文書、データ、資料及び物品を参照し、取得することができ、関係する個人及び団体は協力せねばならない。 アクセスと取得は、スパイ対策タスクを実行するために必要な範囲と制限を超えてはならない。

第27条 捜査を受けるためにこの法律に違反した者を召喚する必要がある場合、国家治安機関の事件処理部門の責任者の承認を得て、召喚状を使用する。 国家治安機関の職員は、この法律に違反した現場に発見された者については、その職務上の身分証明書を提示し、口頭で召喚することができるが、その旨は、尋問の記録に記載しなければならない。 召喚の理由及び根拠は、召喚される者に伝えなければならない。 召喚状を受諾することを拒否し、または正当な理由なしに召喚状を回避した者は、強制されることがある。

国家治安機関は、召喚された人物が所在する市または郡内の指定された場所または住居で調査を行うものとする。

国家治安機関は、召喚された人物を速やかに調査し、確認しなければならない。 照会と確認の時間は8時間を超えてはなりません。 状況が複雑で、行政拘禁が適用される可能性がある場合、または犯罪が疑われる場合、尋問と検証の時間は24時間を超えてはなりません。 国家治安機関は、召喚された者に必要な食料及び休息時間を提供する。 連続召喚は固く禁じられる。

通報が不可能な場合又は捜査に支障を及ぼすおそれがある場合を除き、国家治安機関は、召喚される者の家族に対し、速やかにその理由を通知しなければならない。 上記の事情が解消された後は、直ちに召喚された者の家族に通知せねばならない。

第28条:スパイ行為を調査する国家治安機関は、地区都市レベル以上の国家治安機関の責任者の承認を得て、スパイ行為の疑いのある人物、物品、および場所の検査を合法的に実施することができる。

女性の健康診断は女性職員が実施する。

第29条:スパイ行為を調査する国家治安機関は、地区都市レベル以上の国家治安機関の責任者の承認を得て、スパイ容疑者の関連する財産情報を照会することができる。

第30条:スパイ行為を調査する国家治安機関は、地区都市レベル以上の国家治安機関の責任者の承認を得て、スパイ行為に使用された疑いのある場所、施設、または財産を合法的に封鎖、押収、または凍結することができます。 調査中のスパイ活動とは無関係の会場、施設、または財産は、封印、押収、または凍結してはならない。

第31条:スパイ対策活動において、アクセス、収集、召喚、検査、照会、封印、押収、凍結などの手段を講じる国家治安機関の職員は、2人以上の者によって行われ、関連する規定に従って作業識別および関連する法的文書を提示し、関係者は関連記録などの関連する文書に署名して捺印せねばならない。

査察、封印、押収などの重要な証拠収集作業を行う国家治安機関の職員は、プロセス全体の音声およびビデオ記録を作成し、将来の参照のために保持するものとする。

第32条:国家治安機関がスパイ行為について調査し、知り、関連する証拠を収集する場合、関連する個人および組織は、それを誠実に提供し、拒否してはならない。

第33条国務院の国家安全局は、中国を出国した後に国家安全保障に害を及ぼしたり、国益に大きな損失を被ったりする可能性のある中国国民は、一定期間内に中国を離れることを許可されないと決定し、入国管理局に通知することができる。

州レベル以上の国家治安機関は、スパイ容疑者の出国を許可しないように入国管理局に通知する場合がある。

第34条:国務院の国家安全担当部署は、入国後に中華人民共和国の国家安全保障を危険にさらす活動を行う可能性のある海外要員を許可しないように入国管理当局に通知することができる。

第35条:入国管理機関は、関連する国の規定に従って、国家治安機関によって中国に出入国を許可されていない人に通知しなければならない。 出入国拒否の状況がなくなった場合、国家治安機関は速やかに出入国しない決定を取り消し、入国管理機関に通知するものとする。

第36条:スパイ行為を伴うオンライン情報コンテンツまたはネットワーク攻撃などのリスクを発見した国家治安機関は、「中華人民共和国サイバーセキュリティ法」に規定された職務分担に従って、関係部門に速やかに通知し、電気通信事業者およびインターネットサービスプロバイダーに、抜け穴の修復、ネットワーク保護の強化、送信の停止、プログラムおよびコンテンツの削除、関連サービスの停止、関連するアプリケーションの削除、および関連するWebサイトの閉鎖などの措置を迅速に講じるよう合法的に処理または命令するものとする。 関連する記録を保管する。 状況が緊急であり、直ちに対策を講じないと国家安全保障に深刻な害を及ぼす場合、国家治安機関は関連ユニットに抜け穴の修復、関連する送信の停止、関連するサービスの一時停止、および関連部門への通知を命じる必要がある。

関連する措置が講じられた後に上記の情報の内容またはリスクが除去された場合、国家治安機関および関連部門は、関連する送信およびサービスを回復するための決定を迅速に行うものとする。

第37条:スパイ対策活動に必要な場合、国家治安機関は、関連する州の規定に従い、厳格な承認手続きの後、技術的調査措置および身元保護措置を採用することができる。

第38条 この法律の違反が犯罪を犯した疑いがあり、当該事項が国家機密であるか諜報であるかの評価を行う必要があり、有害な結果を評価する必要がある場合、国家秘密警備部門または省、自治区、または直轄市の秘密警備部門は、手順に従って一定期間内に評価を実施し、評価を組織するものとする。

第39条:国家治安機関は、調査の結果、スパイ行為が犯罪であると疑われることを発見した場合、「中華人民共和国刑事訴訟法」に従って調査のために訴訟を起こすものとする。

 

第四章 保障措置及び監督

第40条:合法的に職務を遂行する国家治安機関の職員は、法律によって保護される。

第41条 国家治安機関が法律に従ってスパイ行為を捜査する場合、郵便及び速達その他の物流業務部門、電気通信事業者及びインターネットサービス事業者は、必要な支援及び援助を提供せねばならない。

第42条:緊急任務を遂行するために必要な場合、国家治安機関の職員は、作業身分証明書の提示により、公共交通機関や優先通過などの優先的なアクセスを享受する。

第43条 国家治安機関職員は、適法に職務を遂行する場合には、規定に従い、職務上の身分証明書を提示することにより、関連する施設又は部隊に立ち入ることができる。 国の関連規定に従い、承認を得て、就労身分証明書を提示すると、入国が制限されている関連地域、場所、および単位に立ち入ることができる。

第44条 国家治安機関は、スパイ活動に要する場合には、関連する国の規定に従い、国家機関、人民組織、企業、公共機関その他の社会組織並びに個人の輸送手段、通信手段、敷地、建物等の使用又は適法な徴用を優先し、必要な場合には、関連する職場、施設及び設備を設置し、任務終了後速やかに元の状態を返還又は回復し、並びに規定に従って対応する料金を支払わなければならない。 損失が発生した場合、補償されるものとする。

第45条 国家治安機関は、スパイ活動に要する場合には、関連する国の規定に従い、税関、入国管理局その他の検査機関に対し、関係者の円滑化及び関連資機材等の免除を要請することができる。 関係検察機関は、法律の定めるところにより、援助を行う。

第46条 国家治安機関又はその近親者が任務を遂行した結果、またはスパイ対策業務の遂行を援助する者の身の安全が脅かされるときは、国家治安機関は、関係部門と連携して、法律に従って必要な措置をとって、彼らを保護及び救出する。

個人がスパイ対策活動を支援または支援した結果、個人または近親者の安全に対する危険に直面した場合、国家治安機関からの保護を要求することができます。 国家治安機関は、関係部門と連携して、法律に従って保護措置をとる。

個人および組織がスパイ対策活動を支援または支援した結果として財産の損失を引き起こした場合、関連する州の規定に従って補償が与えられるものとします。

第47条 国家は、スパイ対策活動に貢献し、かつ、配置する必要がある要員を適切に配置すること。

公安、民事、財務、保健、教育、人事・社会保障、退役軍人問題、医療安全保障、入国管理などの関連部門、ならびに国有企業および公的機関は、国家治安機関が再定住努力を完了するのを支援するものとする。

第48条 対応する忌引給付及び優遇措置は、関連する州の規定に従って、スパイ対策活動の実施又はスパイ対策活動の支援若しくは支援の結果として身体障害者、犠牲、又は殺害された者に対して与えられる。

第49条 国家は、防諜活動における科学技術の役割を担い、防諜活動分野における科学技術の役割を果たすことを奨励する。

第50条 国家治安機関は、対スパイ活動専門部隊の人事チームの設立と職業訓練を強化し、対スパイ活動能力を高める。

国家治安機関職員に対して、政治的、理論的及び運用上の訓練を計画的に実施する。 トレーニングは、理論と実践の統合、ニーズに応じた教育、実践的な結果の強調、および専門的能力の向上を遵守する必要がある。

第51条 国家治安機関は、内部監視およびセキュリティレビューシステムを厳格に実施し、スタッフの法律および規律の遵守を監視し、法律に従って必要な措置を講じて、定期的または不規則にセキュリティレビューを実施するものとする。

第52条 すべての個人及び組織は、国家治安機関又は監察機関、人民検察院、その他の国家治安機関の関連部門及びその職員に対し、その権限の超過、権限の濫用その他の違法行為について通報し、又は告発する権利を有する。 国家治安機関または監督機関、人民検察院、および報告または告発を受け入れるその他の関連部門は、事実を迅速に明らかにし、法律に従って処理し、処分の結果を情報提供者または告発者に速やかに通知するものとするす。

国家治安機関の活動を支援または支援する個人および組織、または個人または組織を合法的に報告または非難する個人および組織は、抑圧または報復してはならない。

 

第五章 法的責任

第53条スパイ行為が行われ、犯罪を構成する場合、刑事責任は法律に従って追求される。

第54条:個人が犯罪を構成しないスパイ行為を行う場合、国家治安機関は警告を与えるか、最大15日間の行政拘留を行い、単独または同時に最大50,000元の罰金を科し、違法な利益が50,000元以上の場合、違法な利益の1倍から5倍の罰金を科し、関連部門は法律に従って制裁を与えることができる。

他人がスパイ行為、情報、資金、資材、労働サービス、技術、場所その他の支援若しくは援助を提供し、又は犯罪を構成しないものを匿い若しくは隠蔽したことが判明したときは、前項の規定に準じて罰する。

部隊が前2項の行為を行った場合、国家治安機関は警告を行い、単独または同時に50万元の以下の罰金を科し、違法な利益が50万元を超える場合は、違法な利益の1倍以上5倍以下の罰金を個別または同時に与え、直接責任のある管理者およびその他の直接責任のある人事に第1項の規定に従って罰する。

関連する部隊および要員による違反の状況および結果に基づいて、国家治安機関は、関連する管轄部門が関連業務に従事することの停止、関連サービスの提供を合法的に命じること、または生産および事業の停止、関連するライセンスの取り消し、または登録の取り消しを命じることを勧告することができる。 関連する管轄部門は、行政処分の状況を速やかに国家治安機関に報告せねばならない。

第55条スパイ行為が行われ、自発的な降伏または功績がある場合、その刑罰は、軽減、軽減、または免除することができる。 大きな功績のある貢献をした人は報われるものとする。

スパイ組織や敵対組織に加わるよう海外に強要され、誘惑され、中華人民共和国の国家の安全を脅かす活動に従事し、海外に駐留する中華人民共和国の機関に速やかに状況を説明し、入国後直接または部隊を通じて、悔い改めを示す場合、彼らは追求されない可能性がある。

第56条国家機関、人民組織、企業、公的機関、その他の社会団体がこの法律に基づくスパイ対策の警備及び防止の義務を履行しない場合、国家治安機関は是正を命ずることができる。 必要に応じて修正が行われない場合、国家治安機関は、関連する責任者にインタビューすることができ、必要に応じて、インタビューの単位より上のレベルの管轄部門に通知することができる。 有害な結果または悪影響が発生した場合、国家治安機関は警告を発したり、批判を回覧したりする場合がある。 状況が深刻な場合、責任あるリーダーと直接の責任者は、法律に従って関連部門によって制裁を受けることとする。

第57条:新築、再建又は増築工事により本法第21条の規定に違反したときは、国家治安機関は、是正を命じ、警告せねばならない。 是正が拒否された場合、または状況が深刻な場合は、建設または使用に許可の停止、一時停止、または取り消しを命じるか、関連する管轄部門が法律に従って処理することを推奨する。

第58条:この法律の第41条に違反した場合、国家治安機関は、是正を命じ、警告し、または批判を回覧しなければならない。 是正が拒否された場合、または状況が深刻な場合、関連する管轄部門は、関連する法令に従って罰を与える。

第59条データ収集への協力を拒否してこの法律に違反した場合、国家治安機関は「中華人民共和国データセキュリティ法」の関連規定に従って罰則を与えるものとする。

第60条 犯罪を構成する次の各号のいずれかの行為によりこの法律の規定に違反したときは、法律の定めるところにより刑事責任を追及する。 犯罪が構成されていない場合、国家治安機関は警告を与えるか、最大10日間の行政拘禁を行い、最大30,000元の罰金を科すことができる。

(1)スパイ対策活動に関連する国家機密の漏洩。

(2)国家治安機関が関連する状況を調査する場合、または他者がスパイ犯罪を犯したことを知っている場合に関連する証拠を収集する場合、関連する証拠の提供を拒否する。

(3)国家治安機関の合法的な任務の遂行を故意に妨害すること。

(4)国家治安機関が法律に従って封印、押収、または凍結した財産を隠蔽、譲渡、販売、または損傷すること。

(5) スパイ行為に係る資産を隠匿、譲渡、取得若しくは売却すること、その他当該事件に係る財産を隠匿し、若しくは隠匿する行為

(6)国家治安機関の活動を合法的に支援または支援する個人および組織に対して報復を実行する。

第61条 国家機密である文書、データ、資料又は物品の違法な取得又は所持並びに特殊スパイ用具の違法な製造、販売、所持又は使用が犯罪に該当しない場合には、国家保安機関は、10日以内の警告又は行政拘禁をせねばならない。

第62条国家治安機関は、この法律に従って資産を適切に封印し、押収し、または凍結し、次に掲げる状況に応じてそれらを個別に処理せねばならない。

(1)犯罪が疑われる場合、「中華人民共和国刑事訴訟法」およびその他の関連法の規定に従って処理されるものとする。

(2) 犯罪が構成されず、かつ、違反の事実があるときは、法律に従って没収されるべきものは没収され、法律に従って破壊されるべきものは没収される。

(3)違反の事実がない場合、または事件と無関係である場合は、封印、押収、凍結を解除し、関連する財産を速やかに返還するものとする。 損失が発生した場合、法律に従って補償するものとする。

第六十三条事件に係る資産が次に掲げる事由のいずれかに該当するときは、法律の定めるところにより、これを回収し、若しくは没収し、又は隠れた危険を排除するための措置を講ずる。

(1)違法に取得された財産、その成果と収益、およびスパイ行為の委託に使用された動産。

(2) 国家機密である文書、データ、資料又は物品を不正に取得し、または所持するもの

(3)特殊スパイ機器を違法に製造、販売、所持、または使用する行為。

第六十四条 加害者及びその近親者その他の関係者が、当該加害者のスパイ行為の結果、スパイ組織及びその代理人からすべての利益を受けるときは、国家治安機関は、法律の定めるところにより、回復及び没収等の措置を講ずるものとする。

第65条:法律に従って国家治安機関が徴収したすべての罰金および没収された財産は、国庫に引き渡される。

第66条 外国人がこの法律に違反した場合、国務院の国家安全担当部署は、中国からの出国期限を決定し、中国に入国できない期間を決定することができる。 所定の期限内に出国しなかった人は、強制送還される可能性がある。

国務院の国家安全局がこの法律に違反した海外要員を追放することを決定した場合、追放日から10年間は中国への入国を許可されず、国務院の国家安全局の処罰決定が最終的なものとなる。

第67条国家治安機関は、行政処分の決定を行う前に、行政処分の内容、事実、理由、根拠、および当事者が陳述、防御、審問の要求などを行う合法的な権利を当事者に通知し、「中華人民共和国行政処罰法」の関連規定に従ってそれらを実施せねばならない。

第68条当事者は、行政処分の決定、行政強制措置の決定、または行政許可の決定に不満がある場合、書面による決定を受け取ってから60日以内に、法律に従って再審査を申請することができます。 再審査決定に不服がある者は、再審決定を受け取ってから15日以内に人民法院に訴訟を起こすことができる。

第69条国家治安機関職員が、その権限を濫用し、職務を怠り、若しくは私的利益のために不正行為を行い、又は違法な拘禁、拷問による自白の強要、暴力的な証拠収集、又は規定に違反して国家機密、営業秘密、個人のプライバシー若しくは個人情報を漏らす等の行為をしたときは、法律の定めるところにより制裁を科し、犯罪を構成する場合には、法律の定めるところにより刑事責任を追及する。

 

第六章 附則

第70条この法律の関連規定は、スパイ行為以外の国家の安全を危険にさらす行為を防止、停止、および処罰する義務を遂行するために、法律、行政規則、および関連する州の規定に従って、国家治安機関に適用される。

この法律の関連規定は、公安機関がその職務を合法的に遂行する過程で国家の安全を危険にさらす行為の発見と処罰に適用される。

第2023条 この法律は、2023年7月1日から施行する。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

2023年5月13日

・「香港は異なる立場をつなぐ『架け橋の教会』」周・香港司教が北京訪問の意義を語る

Bishop Stephen Chow of Hong KongBishop Stephen Chow of Hong Kong 

 

*The full text of Bishop Stephen Chow Sau-yan can be found in Italian, English, and Chinese on the website of La Civiltà Cattolica.

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年5月13日

・「中国における『信教の自由』は一段と悪化している」-米・信教の自由委員会2023報告・中国編

(2023.5.4  カトリック・あい)

 米議会の超党派で作る「国際信教の自由委員会」の2023年報告の、中国に関する主な内容は以下の通り。

【中国における「信教の自由の現状」】

 

*「中国化」の強制、”地下教会”への迫害、インターネットで”宗教コンテンツ‷禁止

 中国政府・共産党は引き続き、「宗教の中国化」政策を強力に進め、諸宗教団体に共産党 (CCP) による支配とイデオロギーを進んで受け入れるよう要求した。 中国共産党 の統一戦線工作部 (UFWD)、政府の国家宗教事務局 (SARA)、および国家管理する宗教組織を強制的な中国化政策の実施に不可欠なものとなっている。

 中国は仏教、カトリック、イスラム教、プロテスタント、道教を(政府・共産党による管理・統制を受け入れる条件で)公認しているが、ウイグル人やその他のイスラム教徒、チベット仏教徒、”地下”カトリック教徒、家庭教会のプロテスタントなど、政府・党の管理・統制に従わない組織は「外国とのつながりがある」と決めつけられ、迫害にさらされている。

 また、「インターネット宗教情報サービス管理規則」が 今年3 月に施行され、インターネット上の宗教コンテンツが禁止され、宗教団体の狭い活動範囲がさらに狭められている。中国政府と、新疆ウイグル自治区での人権侵害への加担で告発されたハイクビジョン杭州海康威视数字技术=浙江省杭州市に本社を置く、防犯カメラ及び録画機のメーカーで、中国電子技科集団の子会社が所有する企業)は、米国・商務省の問題企業リストに掲載されているが、元米国当局者と元米議会議員を雇い、米議会でロビー活動を行い、信教の自由とそれに関連する中国の人権を侵す片棒を担がせている。

*新疆ウイグル自治区の少数民族イスラム教徒、チベット仏教徒を”再教育センター”や刑務所に

 

 中国当局はイスラム教の抑圧的な「中国化」と、新疆ウイグル自治区での強制的な同化政策を継続し、ウイグル人や他のテュルク系イスラム教徒の明確な民族宗教的アイデンティティを根絶しようと試みている。

 5 月には、新疆ウイグル自治区の 2 つの郡から流出した公安の内部資料に基づく報告書で、ウイグル人を拘留する強制収容所の存在と残虐性が確認された。この報告書は、中国共産党の指導者である習近平を含む党高官と政府高官がその責任を負っている、と述べた。

 新たな報告は、当局のウイグル人の扱いが「収容所に拘留」から「刑務所に送致」に変えられた、と指摘。 強制労働、政治的洗脳、大量監視、ウイグル人の家庭に当局の職員を常駐させる”ホームステイ・プログラム”、異教徒間の強制結婚も続いている。

 チベット仏教に対する中国政府・党による統制と弾圧が激化している。 当局は、チベット人による宗教施設の利用を制限し、宗教的集会を禁止し、宗教的意味のある施設やシンボルを破壊し、”再教育センターでの学習”を含め、チベット人の僧侶や尼僧を政治的に“教化”する対象としている。

 伝えられるところによれば、中国政府・党当局はリンチェン・ツルトリムとシェラブ・ギャツォを含む健康状態の悪いチベット人僧侶を刑務所で拷問し、別のチベット人をダライ・ラマを称える宗教活動またはダライ・ラマの肖像画を所持していたとして逮捕・拘留した。 中国政府・党は「ダライ・ラマの後継者を任命する最終的な権限を持っている」と主張し、ダライ・ラマの転生に干渉する意図を繰り返し表明している。

 2022 年には、チベットにおける中国政府・党の政策に抗議して、少なくとも 3 人のチベット人が焼身自殺を図った。 さらに、当局はチベットで「大量の DNA 収集を実施した」と報告されており、チベットでの監視と管理を強化する可能性が高い。

*カトリック、プロテスタント、そして、法輪功や全能神教会も…

 

 カトリック教会に関しては、司教の任命に関するバチカンと中国の暫定合意が昨年 10 月に更新されたにもかかわらず、中国政府・党が教皇の同意なしに司教を任命し、バチカンが抗議している。 中国全土で、当局は、政府・党が管理・統制する「中国天主愛国協会」への参加を拒否した司教や司祭を拘束したり、強制的に所在不明にした。

 プロテスタント教会でも、中国政府・党の統制に入ることを拒む「家庭教会」の信徒への迫害が激化した。政府・党の管理・統制下にある「三自愛国運動」への参加を拒む信徒への脅迫、拘束、身体的虐待、さらに有罪判決を下すなど、「家庭教会」の全国的な締め付けがされている。特定の教会の牧師、長老などが標的にされている。都市部だけでなく、 雲南省のリス族やヌ族、新疆ウイグル自治区のキルギス人など、少数民族の信徒たちに対する厳しい迫害も報告されている。

 中国政府は、中国刑法第 300 条に基づく「反カルト」条項を頻繁に使用して、法輪功と全能神教会 (CAG) の信徒に対する迫害を続けた。 法輪功の情報筋によると、法輪功の信徒は、2022 年だけで7331 件の脅迫・逮捕、633 件の懲役刑判決、迫害で 172人の死亡が記録されている。 CAG メンバーの拘留、投獄、拷問も起きており、何人かが虐待で死亡したと報告されている。

 

【米国政府に対する勧告】

■ 国際宗教自由法 (IRFA) の規定に基づき、中国を「信教の自由に対する組織的、継続的、かつ悪質な違反に関与している」と判断、中国を「特に懸念される国」または CPCに再指定すること。

■ 米国の中国に対する外交政策の重要な戦略的目標として「信教の自由」を高く掲げ、またすべての二国間対話および関与において信教の自由に関する懸念を提起すること。

■ 特に中国共産党 の統一戦線工作部 (UFWD)、政府の国家宗教事務局 (SARA)および公安、国家安全保障機構において、信教の自由の重大な侵害に責任を負う官僚および団体を対象とする制裁を引き続きじっしすること。

■ 国連人権理事会 (UNHRC) を含む国際フォーラムで志を同じくする国と協力し、新疆ウイグル自治区で起きているジェノサイドと人道に対する罪の加害者を特定するとともに、中国全土におけるその他の深刻な人権侵害を調査する国連調査委員会を創設するなどして、信教の自由の重大な侵害について、中国政府に説明責任を負わせるようにすること。

【米国議会に対して】

■ 米国における中国共産党の悪意ある影響、特に信教の自由と関連する人権を損なう中国共産党のロビー活動に対抗する立法を支持すること。

 

 

【背景説明】

 中国は”無神論国家”だが、 総人口約 14 億人のうち 18% がチベット仏教徒を含む仏教徒、 5 %がキリスト教徒、2%がイスラム教徒。 その他の伝統宗教には、道教、法輪功、および民俗宗教がある。

 中国共産党は長い間、信教の自由を抑圧してきており、近年、宗教に対してますます敵対的になり、イスラム教、チベット仏教、キリスト教を「中国化」し、「外国の影響」とされるものを排除する政策を実施している。 これらの政策は、宗教団体が CCP を支持することを要求しており、これには、CCP のイデオロギーと政策に適合するよう、その宗教の教えを改めることも含まれる。 中国共産党に忠誠を誓う登録宗教団体と誓うことを拒む未登録宗教団体の両方が、脅迫、拘留、逮捕、投獄、およびその他の虐待に直面している。

 国連人権理事会(UNHRC )が昨年8月に出した「現代の形態の奴隷制度に関する特別報告」は、新疆ウイグル自治区におけるウイグル人およびその他の少数民族の強制労働は「人道に対する罪としての奴隷化に相当する可能性がある」と結論付けている。同じ月に、当時のミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人やその他の主にイスラム教徒のグループの恣意的かつ差別的な拘留を含む人権侵害が「国際犯罪、特に人道に対する犯罪を構成する可能性がある」と言明。

 昨年10 月、UNHRC は、新疆ウイグル自治区のウイグル人や他のイスラム教徒に対する中国の人権侵害について討論を行うよう西側加盟国などが提案した動議を却下した。 動議に反対票を投じた国には、カタール、インドネシア、アラブ首長国連邦、パキスタンなど、イスラム教徒が多数を占める国が含まれていた。

 欧州議会は昨年6月、「大量追放、政治的教化、家族の離別、信教の自由の制限、文化的破壊、および監視の広範な使用」を含む、中国によるウイグル人への弾圧を非難する決議を採択した。 決議はさらに「出生防止措置とウイグル人の子供たちの家族からの引き離しは、人道に対する罪であり、虐殺の深刻なリスクをもたらしている」と述べている。

 さらに 12 月の決議で、「ウイグル人に対する中国の人権侵害は人道に対する罪であり、ジェノサイドの深刻なリスクをもたらしている」ことを再度表明。 欧州連合 (EU) 加盟国に対し、「普遍的管轄権の原則に基づいて、人道に対する罪に責任があると見なされた中国の役人を起訴することを検討する」よう促し、「人道に反する中国の役人およびその犯罪に責任のある団体を対象とした追加の EU 制裁」を要求した。

 

【香港における信教の自由など】

 香港当局は昨年5月、カトリック香港教区の名誉司教である 90 歳の陳日君枢機卿を、中国香港特別行政区国家安全維持法(NSL)に規定する「外国勢力との共謀」の容疑で逮捕した。 保釈されたにもかかわらず、不安定な状況に置かれたままだった。

 民主主義活動家で信教の自由の擁護者でもある高名なカトリック教徒のジミー・ライ氏は、昨年8 月に NSL 違反で起訴されたが、無罪を主張、裁判所は 昨年12 月に予定していた公判を延期。ライ氏は現在、彼の政治活動に関連する別件で有罪判決を受け服役中だ。陳枢機卿とライ氏がNSL違反で有罪判決を受けた場合、無期懲役の最高刑に直面する可能性がある。

 米国務省は 2022 年 3 月の報告書で、中国政府が「2019 年の民主化運動で活動した宗教団体に所属する市民組織あるいは個人を標的にする」可能性がある、として懸念を表明している。

 

【国際信教の自由委員会委員たちの中国に関する追加意見】」

 1980年代に東西冷戦下での敵対関係が最高潮に達した時、米国内で評判の高い法律事務所がソ連を顧客とすることは考えられなかっただろう。だが現在、中国の共産党と政府の意図を隠ぺいするのを厭わないロビイストが、計り知れない利益を上げている。このような活動を違法として取り締まらねばならない。

 委員会報告が述べているように、中国政府は、キリスト教徒、チベット仏教徒、ウイグル族イスラム教徒、法輪功学習者など、信仰を持つ人々に対する無差別の迫害者だ。中国共産党は新疆ウイグル自治区で大量虐殺を行っており、キャンプと刑務所のネットワークを運営し、ウイグル人の子供たちを両親から組織的に引き離している。

 香港の「自治」は幻想となった。活気に満ちた開かれた社会は、驚くべき速さで変えられている。反対意見に対する冷酷な取り締まりは、90 歳の陳日君・枢機卿に照準を当てた。

 そして、 世界の隅々で、中国政府は米国の利益を覆すために積極的に活動している。米連邦検察局(FBI)のクリストファー・レイ長官は、「中国政府と中国共産党による防諜活動と経済スパイ活動は、米国の経済的幸福と民主主義的価値に対する重大な脅威だ」と述べている。

  中国政府は、人類史上最も先進的な監視国家を取り仕切っており、その監視技術を世界中の他の抑圧的な政権に積極的に輸出している。委員会がこの報告書で勧告しているように、私たちはバイデン政権と合衆国議会に対し、ロビー団体や法律事務所が中国政府とその利益を代表することを禁止するよう強く求める。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年5月4日

・中国はジャーナリストにとって世界最大の”監獄”-国境なき記者団が2023年世界報道の自由ランキング発表

(2023.5.4  カトリック・あい)

 国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団(RSF)」(本部パリ)が3日、世界180か国・地域を対象にした「報道の自由に関する2023年のランキング」を発表した。

 それによると、報道の自由の現状は、 31 か国が「非常に深刻」、42 か国が「難しい」。 55カ国が「問題あり」、52カ国が「良い」または「満足」。ジャーナリズムの環境は 10 か国中 7 か国で「悪く」、満足なのは10 か国中 3 か国しかない。

 国別では、報道の自由度が最も高いのは7年連続1位のノルウェー、アイルランドが2位でこれに次ぐなど、欧州諸国が上位を占める一方、中国が昨年の175位から4つ下げて179位と、2年連続180位で最下位の北朝鮮に次いだ。RSFは中国が「ジャーナリストにとって世界最悪の監獄」と非難。また中国は「プロバガンダ・コンテンツ」の最大の輸出国ともなっている。

 同じくアジア太平洋地域で、2021 年 2 月の軍事クーデター以降、世界で 2 番目に多くのジャーナリストを投獄しているミャンマーが173 位、女性ジャーナリストが公の場から文字どおり抹消されているアフガニスタンも152 位と、記者を取り巻く環境が悪化し続けている。インドでは、モディ首相に近いオリガルヒによるメディア乗っ取りが多元主義を危険にさらし161 位と大きく順位を下げている。

 一年以上にわたってウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアは、政府にとって不都合な報道を行う独立系メディアの報道が抑圧され、政府系メディアによるプロパガンダが大きく力を増し、昨年の155位から164位へ、大きく順位を下げた。

 タジキスタン(153 位)、トルコ(165 位)も前年よりも評価を大きく下げた。 トルコではエルドアン政権がは5 月 14 日の選挙に向けて、報道への締め付けを強めている。 イラン(177位)は、若い学生が拘留中に死亡したことに端を発した抗議行動への取り締まりを強行したことで、順位をさらに下げた。

 一方でウクライナは昨年の106位から79位へ大幅に順位を上げ、ブラジル は、報道関係者への極度の敵意によって大統領任期を迎えたボルソナロの退任とルーラ・ダ・シルバの当選の結果、順位が 18ランク 上昇して92位。 アジアでは、オーストラリア( 12 ランク上昇の27 位)やマレーシア( 40 ランク上昇73 位)など、政権の交代で報道の環境も改善された。

 なお、日本は昨年の71位から68位に順位を上げたが、評価そのものは決して高くない。米国 は昨年にょり 3 ランク下げて45位。バイデン政権の努力にもかかわらず、特に地方レベルでの法的枠組みと暴力の蔓延が報道環境を悪化させ、昨年9月、今年2月の相次ぐジャーナリスト殺害も、国のランキングにマイナスの影響を与えた。

 地域として自由度が高く評価されている欧州でも、ドイツは5ランク下がって21位となっている。この地域の最低はギリシャで107位。諜報機関や”スパイウエア”によるジャーナリスト監視がつよまっている、とされた。

 また中南米では、 コスタリカが 15ランク下がって23位。この地域で状況が「良好」に分類された唯一の国だったが、政治スコアが急激に低下した。 失踪ジャーナリストが過去 20 年間で 28 人と世界最多となっているメキシコは昨年よりさらに順位を下げて128 位。 検閲が再び強化され、報道機関が依然として国家に独占されているキューバは昨年に続いて地域で最も低い172位となっている。

 

*AIが偽情報の流布と一体化してジャーナリズムを弱体化、メディアの世界に混乱をもたらしている 

 

 またRSFでは、今回のインデックス発表とともに、フェイクニュース(情報の根拠が明らかでなく根も葉もない情報)が報道の自由に与えている深刻な影響を取り上げている。それによると、調査対象の世界180か国・地域のうち 3分の2に当たる118 か国 で、回答者の大半が「自国の政府関係者が大規模な偽情報またはプロパガンダ キャンペーンに頻繁に、あるいは組織的に関わっている」と報告。

 「真実と虚偽、本物や事実と作り話の違いがあいまいになり、情報に対する権利が脅かされ」ており、「 コンテンツ改ざんの前例のない能力が、質の高いジャーナリズムを体現する人々、ジャーナリズム自体を弱体化させる使用され、AI(人工知能)の目覚ましい発展は、 Web 2.0 (ウェブ の新しい利用法)によって弱体化されたメディアの世界に、さらなる大混乱をもたらしている」と警告。Twitter のオーナーであるイーロン・マスク氏は、情報の対価への対処を極限まで推し進めており、ジャーナリズムの基盤を揺るがせている、と批判している。

 また、フェイクニュースに関わる業界は、自在に操作するコンテンツを大規模に広め、AI はそのコンテンツを取り入れ、厳密さと信頼性の原則を軽視する”合成”を行う形で、利用者に提供している、と指摘。

 「自然言語の要求に応じて非常に高精細な画像を生成する AI プログラムである Midjourney (テキストの説明文から画像を作成する独自の人工知能プログラム。同プログラムを開発した研究所の名称でもある)の 5 番目のバージョン」を使って、警察官に拘束されたトランプの画像を捏造し、Twitterに投稿し、「ドナルド・トランプ元大統領が逮捕され、刑務所に護送された」といったメッセージとともに、Facebookなどのソーシャルメディアで拡散された昨年3月の”事件”が起きていることを実例として挙げて、警告している。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年5月4日

・米国の信教の自由委員会、中国など12か国に加えインド、ナイジェリアなど5か国を「特別懸念国」に指定を勧告

米国の信教の自由委員会、中国など12か国に加えインド、ナイジェリアなど5か国を「特別懸念国」に指定を勧告

宗教差別的政策を証人(承認)、推進している。

 ニューヨーク – 米連邦議会が設立した超党派の「国際信教の自由委員会(United States Commission on International Religious Freedom=USCIRF)」が1日、2023年版の年次報告書を発表するとともに、米政府に対し、「特に深刻な」信教の自由の侵害への関与または容認を理由に、新たに 5 つの国を「特に懸念される国 (CPC)」として指定することを勧告した。

 CPCにはこれまで中国、北朝鮮、ミャンマー、ロシア、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、キューバ、エリトリア、イラン、サウジアラビア、ニカラグアの 12 か国が指定されているが、新たに指定を勧告したのは、アフガニスタン、インド、ナイジェリア、シリア、ベトナムだ。 これら17の国の現状について、報告書は、政府機関や過激派グループによる宗教的迫害が、多くの宗教関係者やコミュニティの殺害、抑圧、強制退去につながった多くの事例を概説している。

 米国には「国際信教の自由法 (IRFA)」があり、米政府がCPCに指定した国に対して、宗教の自由の侵害を終わらせるために非経済的な措置を取ること、その措置が成果を挙げなかった場合は経済制裁に踏み切ることを定めている。

 委員会はまた、CPCよりも若干緩い「特別監視リスト」に入れている国のうちコモロを除外する一方、アルジェリアと中央アフリカ共和国をリストに残し、さらに、アゼルバイジャン、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、マレーシア、スリランカ、トルコ、ウズベキスタンを追加することを勧告している。 さらに、「特に懸念される集団」として、「アル・シャバブ」「ボコ・ハラム」「ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS」「フーシ派(イエメン北部を拠点に活動するイスラム教シーア派の一派ザイド派の武装組織)」「大サハラのイスラム国(ISGS)」「西アフリカ地域のイスラム国」「Jamaat Nasr al-Islam wal Muslimin」の7つを、従来の「タリバン」とロシアの民間軍事組織「ワグネル」に加えて指定するよう勧告した。

 USCIRF は、アフガニスタン、インド、シリア、ベトナムの 4 か国とナイジェリアを、米政府に対して「特に懸念される国 (CPC)」に指定するよう昨年も勧告しているが、国務省はこれを無視し、結果としてこれらの国々が宗教的迫害のを強める要因となった。

 今回の報告でUSCIRF は、アフガニスタンでは2021 年 8 月にタリバンが国家の支配権を掌握して以来、宗教の自由が悪化し続けていることを強調。キリスト教徒、LGBTQI+ の人々、および女性を含む宗教的少数派の自由を侵害するシャリアの厳格な執行が続けられている、と指摘している。

 またインドでは、2022 年を通じて、国、州、および地方の政府が、イスラム教徒、キリスト教徒、シーク教徒、ダリット(ヒンドゥー教社会の被差別民)、アディヴァシス(先住民) に対する宗教差別的政策を進めている。

 国の主導権をめぐる内戦、人道危機が深まるシリアでも、信教の自由の状況は依然として劣悪で。テロリスト集団ハイアット・タハリール・アル・シャムを含む非国家主体も、宗教的少数派、特にキリスト教徒とドルーズ派に対して多くの迫害を行っている。

 ベトナムでは、このような国々とほぼ同様の迫害がなされており、政府は宗教団体、特に未登録の独立した信仰共同体に対する統制と迫害を強化している。 迫害には、嫌がらせ、投獄の脅迫、罰金、および宗派を非難または脱退の強制が含まれている、としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年5月4日