・中国共産党管理の中国天主教愛国会の会長が香港のカトリック教会訪問-香港の人権活動家弾圧など続く中でバチカンは中国と関係強化?(Crux)

(2023.11.15 Crux Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 中国共産党管理下にある中国天主教愛国会の会長で中国カトリック北京教区長の李 山 (Li Shan)大司教は、香港教区長の周 尚仁( Chow Sau-yan)枢機卿の招待を受け、13日から香港を訪問している。

 李大司教の香港訪問は、4月初めの周枢機卿による北京訪問に続いて行われた。香港教区は事前に、李大司教の訪問に関する短い声明を出し、「周枢機卿の招待を受けて李大司教が香港を訪問し、周枢機卿と会談する。相互訪問を通して、香港、北京の2つの教区間の交流を促進する」としていた。

 李大司教は、中国天主教愛国会(CPCA)の会長を務めており、同会は、バチカンと中国政府の司教任命に関する2018年の暫定合意にもかかわらず、教皇の承認なしに司教を新規任命したり、担当教区を移動させたりしてきた。そうした中の、李大司教の香港訪問は、中国本土と香港などのカトリック教会の関係を強化するために周枢機卿とバチカン当局者が講じた一連の措置の最新のものとなる。

 周氏は香港司教に任命されて以来、ローマ教区が「橋を架ける」教会となることを望み、ローマと本土の国営教会との間の友好的な交流を促進してきた。 この目的のため、同氏は教会関係者と会談し、教区のプロジェクトを訪問するため4月17日から21日までの5日間北京を訪問し、香港の司教が北京を訪問するのは1985年以来初めてであり、重要な節目を迎えた。

 香港がまだイギリスの植民地だった頃。 香港は何十年もの間、中国本土の端にあるカトリックの拠点であり、公式には無神論を掲げる中国共産党の統治下で、カトリック教徒や他の宗教の信者は時として迫害に直面してきた。

 2018年、バチカンと中国共産党政府は、政府公認の公式教会とローマに忠実ないわゆる「地下」教会の統合を目的とした司教任命に関する暫定協定に署名した。協定は中国当局によって繰り返し破られているが、教皇フランシスコは8月31日から9月4日までのモンゴル訪問中に、公の場で中国当局を称賛し、相手を安心させるメッセージを送った。 7月には、中国側がバチカンの了承を得ずに行っていた他教区から上海教区への司教の異動人事を、バチカンが追認、パロリン国務長官はバチカン・ニュースとのインタビューで、「バチカンの連絡事務所を北京に開設し、中国との相互の連絡と協力を強化する」ことを示唆している。

 10月にバチカンで開かれたシノダリティに関する世界代表司教会議(シノドス)第16回総会には、中国本土から2人の司教が、約1か月にわたる会期の前半部分の協議に参加したが、バチカン発表によると、「2人の担当教区の司牧上の必要」から中途退席している。

 一方、周枢機卿は、今月初めに行われた枢機卿昇格の感謝ミサ後の記者との会見で「李大司教の香港訪問は、相互理解を深め、人間関係の強化につながる」と期待を表明。「教皇から私に与えられた使命は、中国の教会とのコミュニケーションを改善すること。 これは、現在は双方の間に敵意がある、という意味ではなく、もっと耳を傾ける必要があるということです」としつつ、「現状では、双方の思い込みの結果、一定の誤解が生じる可能性がある」ことを認めた。

 そして、先月のシノドス総会で「互いに耳を傾けること」が強調されたことを取り上げ、「私たちは『説教する教会』であるだけでなく、『耳を傾ける教会』でもある。 中国とバチカンの間で、より良いコミュニケーションを図るために、頻繁に互いに耳を傾けることが期待されています」と述べ、今回の李大司教の訪問の目的は香港教区についてより深い理解を得ることであり、訪問の大部分は教育機関と神学生の生活に焦点を当てるだろう」と述べていた。

 また、4月に北京を訪問した時の体験について、 「私たちが中国の教会や北京教区と人間的につながっていることが重要。北京滞在中に強い人間関係を感じた」としたうえで、「すべてはまず人間性から始まり、人間同士のつながりから始まります。今回、李善大司教が香港に来ることは、人間的なつながりを確認することでもある。そのつながりによって、私たちは一緒に歩むことができるのです」と強調。

 長期的にみても、どのように構造を強化するか、どのように政策を立てるか、さらには内部政策についても話し合うことができるが、「何よりも両教会が神の愛のより良い証人となるのに役立つ」ことに期待を表明し、「これは抽象的な概念ではなく、問題の解決策です」と主張している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年11月16日