・偽りの「仏教外交」—国家統制に従属する中国とロシアのが連帯(BW)

 中国とロシアの自国政府に忠実な仏教団体の代表たちが、ロシア東シベリアのブリヤート共和国の首都、ウランウデで8月に開かれた「国際仏教フォーラム」に参加し、プーチン大統領自身がメッセージを送った。(写真右は、ウラン・ウデのフォーラムで講演する中国仏教協会の胡雪峰副会長=「 微博」より)

 ロシアと中国の国家公認の仏教団体はいずれも信頼性に問題を抱えている。 昨年、Bitter Winterが報じたように、当時のロシアの住むカルムイク人(モンゴル系民族の一部族)仏教徒の最高指導者、テロ・トゥルク・リンポチェが2022年10月、ロシアによるウクライナ侵略戦争を非難。「ウクライナ側が正しい」と述べ、当局による逮捕の危険が出たため、モンゴルに亡命し、そこで、徴兵を嫌って国境を越えて来た何万人ものロシアの仏教徒の食事の世話などをしている。

 彼は、1992年以来カルムイク人の仏教指導者であり、おそらくロシア国内の仏教徒に最も尊敬されている人物だったかもしれない。 プーチン政権による彼への激しい批判はロシア国内の仏教徒を大きく動揺させている。

 中国では、政府・共産党の統制下にある中国仏教協会では、2018年に、当時、会長で北京龍泉寺の住職だった雪成師が尼僧6人を性的に虐待した、との疑いをかけられ、辞任を余儀なくされて以来、動揺が収まっていない。

 チベット仏教でも、指導者のパンチェン・ラマ10世が1989年1月に中国チベット自治区で亡くなった後、後継者の選定者たちが1995年5月にゲンドゥン・チューキ・ニマという6歳の男児をパンチェン・ラマの転生者としたが、チベット自治区当局はこれを認めないばかりか、拉致、行方不明にした。当局は同年11月にやはり当時6歳のギェンツェン・ノルブをパンチェン・ラマの”転生霊童”とし、北京政府が彼をパンチェン・ラマ11世とすることを認めた。30代になったギェンツェン・ノルブ師は現在、中国仏教協会の副会長を務め、中国共産党の“傀儡”と見なされている。

Group work during the Forum.

(写真左は、フォーラムでの小グループ対話)

 中国とロシアの国家公認の仏教団体”は、いずれも国際的な仏教組織で活動しており、僧衣をまとった代表者を世界中に派遣し、自国政府の仏教など宗教政策の擁護に努めている。8月の「国際仏教フォーラム」に参加した 中国とロシアの”公的仏教団体”がこの取り組みに協力しているのは当然のことだ。中国からは中国仏教協会の胡学峰・副会長をトップに6人が 参加した。

 フォーラムでは、冒頭にプーチン大統領からの歓迎のメッセージが読み上げられ、 ブリヤート共和国の大統領が歓迎の挨拶をした。そして、胡副会長など中国、ロシア両国の代表が「現代化された仏教」を称賛し、それぞれの政府への忠誠を表明した。 ロシアの参加者は、ロシアのウクライナ軍事侵略を「西側の侵略とナチズムとの戦い」とし、この戦いで多くの命が落とされているロシア人仏教徒の”愛国的取り組み”を祝福。中国の代表団は、「我が国では、信教の自由が謳歌されている」と説明した。両者は互いの主張を笑いを持って受け止めることをしなかったが、中国とロシアの”国営仏教”が国際的な仏教組織に浸透していることは笑い事ではない。 それを阻止せねばならない。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

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2023年9月13日