・”第二の文化大革命”?-無名の専門学校教師の投稿に富裕層などが怯える(BITTER WINTER)

(2021.9.10 Bitter Winter Massimo Introvigne)

 習近平が2番目の文化大革命を準備していると主張するブログ記事をCCPの主要メディアが転載した。今回の標的は富裕層だ。

 中国では、毛沢東主席を称え、「文化大革命の”古き良き時代”を懐かしく回想」する左派のブロガーでいっぱいだ。ただし、誇張すると罰せられ、投稿できなくなっていたが、8月29日からは、これまでとはまったく違う現象が起きている。

 Li Guangmanという男がWeChatのブログページに「誰もが大きな変化が起こっていると感じることができる」というタイトルの投稿を公開したのが始まりだー載せているのは、著名な中国の億万長者の娯楽有名人の脱税やその他の犯罪、有名人を支援するグループに対して中国サイバースペース管理局(CAC)が8月27日に公布した規制措置、中国で最も有名な億万長者、馬雲とアリババ・グループに対する規制当局による取り締まり、大企業や超富裕層に対して開始された調査、不動産王の利益を制限する賃貸に関する新しい規則の施行、習近平主席の「先富論」の説話…など。

 Liは、これらすべての動きを知るように求め、 「これらの出来事が私たちに伝えているのは、中国で大きな変化が起こっていること、そして経済、金融、文化、政治の分野で大きな変革が進んでいることだ」とし、「資本主義の派閥」から人々への復帰、「資本中心」から「人民中心」への移行を求めている。「それは人民が、が再び最前線に立ち、すべてにおいて中心となる政治的変革だ。人民中心の変革を妨げる人々は取り残されるだろう。この深遠な変革はまた、中国共産党の本来の意図への回帰、人民を中心としたアプローチへの回帰、そして社会主義の本質への回帰を示している」と述べている(China DigitalTimesより)。

 さらに続けて、「この変革はすべてのほこりを洗い流す。資本市場はもはやギャンブル詐欺の楽園ではなく、文化市場はもはや弱虫の星の天国ではなく、ニュースや世論は西洋文化を崇拝する立場には立たない。それは革命精神への回帰だ」とし、習近平・主席がこの革命を始めるのに成功してなかったら、「かつてのソビエト連邦のように、国が崩壊し、富が略奪され、人民が災難に陥り、破壊がもたらされただろう」と主張している。

 これは、典型的な”左翼”のたくさんあるブログ投稿の一つだが、Li氏は、他の投稿者のように懲戒処分を受けず、それどころか、中国共産党の機関紙、人民日報、国営の新華社通信、国営テレビCCTVはじめ、China Youth Daily、China News Service、その他の日刊紙に、投稿が掲載されたのだ。さらに、その内容は、中国全土の何百もの地方紙などのメディアに転載された。要するに、中国共産党が彼の投稿を”公認”したわけで、党がこの投稿を扇動に使ったのではないか、と疑いの声も出た。

 せは、Li Guangmanとな何者か。本人のブログによると、1957年に生まれ、華中電気労働者専門学校の元教員で、Huazhong Electric PowerNewsの編集者を務めた後、ブロガーとして活動を始めた、という。

 Li のブログ投稿が、中国共産党公認のあらゆるメディアの掲載されたことで、国内の資本家や外国人投資家を怖がらせている。、金持ちと有名人を”被告”にした新しい文化大革命が進められようとしている、と受け止められているからだ。

 この投稿には批判も出ている。著名な経済学者の張維迎・北京大学教授は、このような二度目の”文化大革命”は、一度目の「文化大革命」と同じように中国経済を破壊することになる、と警告。この発言は他の経済学者に回覧されたが、彼は一種の”反体制派”と見なされており、中国共産党も軽視している。

 だが、中国共産党の対外宣伝を担う環球時報の胡錫進・編集長による批判は無視できないだろう。「かつて胡主席は、文化大革命に続く鄧小平氏が主導した『改革開放』以前の時代に中国の時計の針を戻そうとした」いう表現でLiを非難し、彼の文章は「誤解を招く」と批判した。

 これまで胡錫進・編集長は、習近平主席周辺の意向を忠実に伝えてきた。Liの記事に対する彼の見方が、共産党指導部と共有されていれば、Liの記事は上記のような党の公式メディアには乗らず、Webサイトから削除されていただろうが、実際はそのようなことはされていない。

 中国共産党が相矛盾する複数のメッセージを出して、内外の反応を見るということは、今回が初めてではない。 確かなことは、 China Media Project が書いているように、「無名の電気専門学校の教師が書いた内容が数か月のうちに、中国の歴史と現代の専門家がLiの投稿記事の重要性を評価する可能性が高い」ということだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

 

 

 

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2021年9月14日