・中国で改正国家機密保護法が施行ー「何が機密か」が機密、人権や”違法”宗教への弾圧強まるか(BW)

(2024.3.6  Bitter Winter  Hu Zimo) 
 中国全国人民代表大会常務委員会で決定された改正国家機密保護法(中華人民共和国保守国家秘密法)が5月1日に施行される。
 改正法では、中国共産党が国家機密と判断したすべてのものに、処罰の範囲を拡大、漏洩者は、逮捕、投獄され、刑期は数年、場合によっては死刑に処される。だが、何が「国家機密」なのか、その定義自体が「国家機密」であり、中国の国民はもとより、中国で事業を行っている外国企業にとって極めて深刻な問題だ。
 1988年に制定された国家機密保護法は 2010 年に改正され、さらに今回改正された。目的は、国家機密と国家安全保障の保護を強化し、漏洩、スパイ行為、妨害行為を防止すること、とされている。国家機密を「さまざまな分野における国家の安全と利益に関係する事項」と定義しているが、 問題は、大まかなカテゴリーしか示しておらず、何が国家機密なのかが非常に不明確であることだ。 今回の改正では、国家機密の定義を拡大し、実際に情報などが公になった場合、国家の安全と利益に影響を与える可能性がある事項も含めるようにしている。 改正法第 13 条で、「国家の安全と利益に関わる次の事項は、漏洩した場合、政治、経済、国防、外交その他の分野における国の安全と利益を損なうおそれがあり、国家機密とする」とし、 (1)  国政に関する重要な決定における機密事項。 (2) 国防建設及び軍隊活動における機密事項。 (3) 外交・外交活動における機密事項及び対外的に守秘義務を負う機密事項。 (4) 国家経済社会発展における機密事項。 (5) 科学技術上の機密事項。 (6) 国家安全保障活動の維持および刑事事件における捜査の機密事項。 (7) その他、国家秘密保持管理部門が定める機密事項-を挙げ、「 前項の規定に従う政党の機密事項は国家機密に該当する」としている。

 つまり、中国共産党が「国家機密」と判断したものは、たとえ公にされたものであっても、「国家機密」ということだ。 「国政」「社会的発展」「刑事捜査」の”機密”への対処には、人権問題や「違法な」宗教に対する弾圧が含まれる場合があります。 そして、第 13 条の 7 には、中国共産党 がケースバイケースで機密とみなす可能性のある「その他の事項」がある。

 改正法では、国家安全保障委員会、国家機密局、およびその他の関連部門に対し、法の施行の監督および検査、違反を調べ処罰する権限を与え、違反に対する罰則を強化し、処罰の内容は、警告や罰金から懲役、死刑に至るまで多岐にわたる。

 改正法の施行は、中国における表現、情報、コミュニケーションの自由、特にジャーナリスト、学者、活動家、弁護士をさらに委縮させる可能性があり、彼らは仕事においてさらなる制限やリスクに直面する可能性がある。 また、中国と他の国や地域との間の協力や交流、特にビジネス、科学、技術の分野に影響を与える可能性があり、「国家機密」と定義されるリスクのある問題に取り組む外国の団体や個人にとってさらなる障壁や不確実性を生み出す可能性がある。

 あるいは、中国共産党にとって「有害」な情報がソーシャルメディアで共有されたり、「Bitter Winter」を含めて海外で報道されたりするのを防ぐ努力の方が、より重要視されるかもしれない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年3月6日

・黒竜江省で集団礼拝中のプロテスタント200人以上を公安当局が逮捕・拘束

(2024.2.5 Bitter Winter   Shen Xiang)

 「信仰による義認」は、「神は悔い改めイエスを信じる者だけを立証する」というプロテスタントの教義でマルティン・ルターによって始められたもの。 中国では、政府・共産党の管理下にあるプロテスタント教会の集団「三自教会」によって異議が唱えられ、「愛による義認」と言い換えられたケースもあったが、現在では、保守的なプロテスタント教会の緩やかなネットワークの呼称となっている。

 鎮小団村では大規模な「信仰による義認」礼拝が毎月開かれており、黒竜江省周辺の県や市、さらには遠く 700キロも離れた遼寧省の鉄嶺市からも信者が参加している。

 地元の信者たちは、襲撃の2日前に近くに不審な車が停まっているのを目撃していたが、27日昼過ぎ、特別公安と地元警察の警察官約150人が集会場を襲撃、 約200人の信者を捕らえた、という。3台の大型バスで連行されたが、それだけでは収容できず、普通車車で連れ去られた人もいた。 村民はBitter Winterの取材に、「犯罪者を逮捕するときでさえ、これほど多くの警察官を見たことがありません!」と語っている。

 逮捕容疑は明らかにされず、拘束された人たちの消息も不明だ。中国では、信仰よりも中国共産党への忠誠を優先させる「宗教の中国化」を掲げ、これに従わないキリスト教の教会やイスラム教のモスクを破壊したり宗教活動を制限するなど、取り締まりを強化している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年2月8日

・中国で新しい司教叙階の一方、逮捕され所在不明の司教が少なくとも3人

(2024.2.4 カトリック・あい)

 中国ではバチカンとの暫定合意に従う形で、新年に入って3つの教区で立て続けに3人の司教が新任、あるいは上位の教区への転任がなされたが、その”画期的”な出来事の一方で、新年早々、中国政府・共産党の指示に服さない教皇任命の司教が逮捕・拘禁され、しかもいまだにその所在が不明のまま、という事態が起きている。

 Asia Newsは1月2日付けで、中国東部・浙江省の温州教区長、邵祝敏・司教が、中国当局により逮捕、拘禁されたことを伝えていたが、2月2日付けのLaCroix Internationalによると、2日現在も教区の信徒たちは彼の所在をつかめていない、という。

 邵司教は2011年にバチカンから司教に任命され、2016年に温州教区長となったが、2017年以降、何度か拘禁され、教会の祝日前後に定期的に嫌がらせを受けていた。中国政府・共産党の目には、温州は「激動の」教区であると、あるオブザーバーは述べた。はバチカンの承認を得ているが、政府・党の管理下にある「中国天主教愛国協会」への加盟を拒否している。

 温州教区には約15万人のカトリック教徒がいると言われるが、中国政府・共産党は同教区を”簡易教区”に格下げしたうえ、中国天主教愛国協会の会員である馬仙石・神父を邵司教に代わる教区監督に任命し、教区長の職務を遂行させた。これに邵司教が抗議したのが、今回の逮捕・拘禁となったと見られている。
 

 中国では、現在、邵司教を含め、少なくとも3つの教区で、バチカンが承認している司教3人が行方不明になったまま、という。このうちの1人、河北省の保定教区長だった蘇志民・司教は1996年に逮捕されて以降、消息がつかめず、存命なら91歳になるが、「すでに亡くなっている」ことを懸念する関係者もいる。

 カトリック関係の欧米メディアなどは、今回の邵司教の逮捕・拘禁、所在不明は、司教任命について中国政府と結んだ暫定合意の更新期が今年秋に迫る中で、バチカン側がどのように対応するか注目している。1月になってからのバチカンの中国天主教愛国協会の会員である3人の相次ぐ新司教承認など、バチカン側の”好意的”な姿勢が目立つが、このような中国政府・共産党の”地下教会”司教たちの処遇をいつまで黙認するのだろうか。

 

2024年2月5日

・教皇、中国で司教任命-この一週間で3人目だが、中国側の”先行任命”とも

(2024.2.1 カトリック・あい)
 バチカンの公式サイトThe Holy Seeによると教皇フランシスコが中国の福建省北部教区の司教として呉一順・司教を任命された。Vatican Newsが1月31伝えたところでは、同司教の叙階式(「カトリックあい」注:中国側は「奉献式」としている)は南平市建陽区のカトリック教会で行われた。呉司教は昨年12月16日に教皇フランシスコが司教に任命しており、これはバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意にもとづいてなされ、31日の正式叙階と同時にバチカン報道局から発表され、中国政府・共産党公認のカトリック・サイト「中国天主教」も同日付けでこのことを報じた。(写真は「中国天主教」より)
 教皇による中国の司教任命はこの一週間で3人目。なぜこのように司教任命を急ぐのか、その意図を測りかねる声もカトリック関係者の間に出ている。また今回の呉司教の任命について、「中国天主教」は、「呉師は2022年1月18日に福建省北部教区の司教に任命された」としており、これが事実であれば、中国側が任命した後、2年近く遅れて教皇が追認したことになり、任命が中国主導で行われ、暫定合意の手続きを踏んでいない、と見ることもできるだろう。
 「中国天主教」によると、この「奉献式」には、中国愛国天主協会会長、中国カトリック司教協議会副主席の李山・司教(北京教区長)はじめ中国カトリック愛国協会監督委員会会長で福建省カトリック愛国協会理事長の張思瑞・司教(民東教区長)、中国カトリック司教会議副秘書長で福建省カトリック宗教委員会主任の蔡炳瑞・司教(厦門教区長)が出席。

 中国カトリック愛国協会副秘書長で浙江省カトリック教育委員会主任の金陽柯・司教(寧波教区長)が司会を務め、 中国カトリック司教協議会の楊宇・事務総長が任命書を読み上げた。 式には、全国のすべての教区から約80人の司祭、修道女と信徒の代表者が出席した。

 呉一順・司教は1964年12月7日に福建省寧徳で生まれ、洗礼名はペトロ。 1985年9月から1992年7

月まで上海の余山修道院で神学を学び、1992年8月に司祭に叙階。1999年12月に福建省北部教区の司祭となり、2001年9月から同省カトリック教会の「2つのセッション」の副部長を務めた(その間、2010年11月から2018年4月まで福建省教育委員会の秘書長も務めた)。

 

 

2024年2月1日

・教皇、中国との”緊張緩和”政策を推進‐新司教任命、新教区開設‐人権問題高まりの中で(Crux)

(2024.1.30 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen) ローマ発 – この一週間、中国のカトリック教会にとって、毛沢東の共産主義革命以来初めての新司教の任命や本土での新設など、いくつかの重要な進展があった。だが、教皇の対中国の新たな動きは、中国における宗教的少数派に対する扱いなど人権問題に関する世界的な議論が再び高まっている時期に発表された、という問題もある。

 1月29日、バチカンは「”主の羊の群れ”の司牧を促進し、霊的善により効果的に取り組む」ことを目的として、中国・山東省の宜都県(Yiduxian)使徒座知牧区を廃止し、濰坊(Weifang)教区を設立することを発表した。

With new bishop, diocese, Pope extends policy of detente with China

 バチカンの声明によると、この決定は2023年4月20日に行われ、同時にSun Wenjun司教(53)が教区長に任命された。司教叙階式は1月29日、宜都県使徒座知牧区の旧本部である青州市の王基督大聖堂で、中国政府・共産党公認の中国天主教愛国協会(CCPA)の名誉会長、 Fang Xingyao司教の司式で行われた。
 宜都県使徒座知牧区は、 1931年6月に教皇ピウス11世によって設立され、フランスのフランシスコ会宣教師に委託された中国政府・共産党が1988年に教皇の同意なしに任命し5人の司教のうちの1人、孫志斌師が2008年に亡くなって以来、司教ポストが空位となっていた。
  宜都県使徒座知牧区の廃止の代わりに濰坊教区を設立したことを新設と見なせば、1949年の共産主義革命以来、中国におけるバチカンによる初めての正式な新しい教区の創設となる。
  AsiaNews によると、濰坊教区の新しい布教地域は既存の都市区画に基づいて中国当局によって決定され、ローマ教皇庁によって承認された。また、中国のカトリック教会は1949年に中国共産党が政権を握った時点で、マカオ、香港、包頭(モンゴル自治区)など20の大司教区と96の教区、29の使徒座知牧区、ハルビンと湖北の2つの教会行政区から構成されていた。現在は、  中国当局によると、マカオと香港を除いて104の教区がある。大司教区や使徒座知牧区は存在しない。
 濰坊教区の新設は、国家が認可した中国における教会の組織・制度にも準拠しており、この教区新設発表の4日前に、バチカンはWang Yuesheng司教の叙階を発表し、2023年12月16日に教皇フランシスコによって河南省鄭州司教に任命された。中国における新司教叙階は、2年ぶり。またバチカンと中国政府の司教任命に関する暫定合意が2022年に2回目の延長がされて以来、初めてとなり、同合意に沿ったものとされている。
 暫定合意は2018年に結ばれたが、合意の詳細はいまだに明らかにされておらず、中国における”地下教会”への弾圧など信教の自由を含む人権無視を容認するものとして、欧米の関係者から批判されてきた。
  また暫定合意後も 中国政府・共産党は、バチカンと中国が共同で司教を任命、承認するという合意を無視し、バチカンの同意を得ずに一方的に司教の異動人事を行っている。2022年11月の彭卫照(Pen Weizhao)司教の江西教区への異動や、2023年4月の沈斌(Shen Bin)司教の上海教区への異動などだ。合意に従って行われた最も最近の司教任命は2年以上前で、崔清啓( Cui Qingqi)師が2021年9月に武漢司教に任命された時だった。
 注目すべきは、2023年4月20日の濰坊教区の設立は、2023年4月4日の中国による沈斌司教の上海教区への一方的な異動と、その後の2023年7月の教皇による異動承認との間の中間期間に行われたことだ。

 教皇は2013年に着座して以来、中国当局との架け橋を築くために多大な努力を払っており、昨年2023年は関係強化を目的としたいくつかの重要な行動をとった。

 中国側が一方的に行った 沈斌司教の上海教区長への異動を最終的には承認し、教皇は昨年9月にモンゴルを訪問した際、「気高い中国人民」に特別なエールを送り、同月下旬には香港のStephen Chow司教に赤い帽子を与えた。 教皇と同じイエズス会士であるは「香港教区の自分の仕事はバチカンと中国の”架け橋”となること」と繰り返し述べ、中国当局らからは「友好的人物」とみなされている。

  Chow司教は昨年4月に北京を訪問し、返礼として、11月に北京の李山・司教を香港に招いた。 中国政府・共産党承認の司教2人が、10月に開かれたシノダリティ(共働性)に関する世界代表司教会議(シノドス)第1会期に一定期間、出席し、今年10月の第2会期にも参加すると見られている。

 そうした中で、先週の新司教叙階式は、バチカン当局の長年の願望であった「中国との完全な和解」に向けたさらなる一歩を示している。 教皇が昨年、沈斌司教の上海への異動を受け入れた後、バチカンのピエトロ・パロリン国務長官はVatican Newsとのインタビューで、「北京に常駐の教皇代理が間もなく指名されるだろう」と述べていた。

  だが、教皇の対中国の新たな動きは、中国における宗教的少数派に対する扱いが再び世界的な議論の種となっている時期に発表された、という問題もある。

 1月23日、国連人権理事会はジュネーブで会合を開き、ウイグル人、チベット人、香港の民主派反体制派に対する扱いを巡り米国を含む西側民主主義国から批判されている中国の現状について話し合い、英国代表は、中国に対し、「ウイグル人とチベット人の迫害と恣意的拘束を停止し、監視、拷問、強制労働、性暴力を恐れることなく宗教や信仰、文化表現の真の自由を認める」よう要求した。

 同理事会はまた、中国政府が香港に課した国家安全維持法を廃止するよう勧告し、”外国勢力との共謀”の罪で逮捕、起訴され、2020年から投獄されたままの香港のメディア王、カトリックの民主活動家のジミー・ライ氏の釈放を求めた。

  米国も同様に、中国は「恣意的に拘束されたすべての人物を釈放」し、「チベットと新疆の寄宿学校を含む強制同化政策」を中止すべきだ、と主張した。

  これらの勧告は、193の加盟国が5年ごとに互いの人権記録を審査する国連人権理事会による定期審査の一環として行われた。 2018年の中国による前回の見直し以来、香港では大規模な民主化運動が起きたが、鎮圧され、国家安全維持法で徹底的な取り締まりが行われており、新疆ウイグル自治区の状況についても国際的な監視の目が一段と強まっている。

 だが、 中国側は、陳徐・国連大使が1月23日、人権委の報告は「誤解や誤った情報」に基づいていると述べるなど、これを否定、無視する立場を続けている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2024年1月31日

・1月1日施行の改訂愛国教育法で宗教団体にも「習近平」思想教育の徹底指示(BW)

(2024.1.12 Bitter Winter  by Hu Zimo)
The January 4 meeting where the Guidelines were approved. From Weibo.
The January 4 meeting where the Guidelines were approved. From Weibo.

 中国共産党中央宣伝部の発案による改訂愛国教育法(爱国主义教育法)が1月1日から施行された。

 2023年10月24日に第14期全国人民代表大会常務委員会によって承認されていたもので、共産党の国内プロバガンダ活動を再編強化するのが狙い。同法の「教育」とは、単に学校教育だけを指すものではなく、教育関係者だけでなく、宗教者も対象にしている。

 改訂法の施行に当たって、 1 月 4 日に中国天主愛国協会など政府・共産党が公認する5宗教の団体代表による全国宗教団体合同会議が中国イスラム協会で開かれ、同法の遵守を約束した。

 改訂法は、キリスト教、イスラム教、仏教など政府・共産党が公認した5つの宗教に対する指針で、「新時代の中国の特徴を持った社会主義の習近平思想を学習し、思考し、実践する」「国家は宗教よりも偉大であり、法律は宗教の規則よりも偉大であることを、信者たちは理解すべきである」などとし、改訂法をどのようにして遵守すべきかについて具体的に示している。

 指針の全文英語訳は以下の通り。

***

The “Patriotic Education Law of the People’s Republic of China” is our country’s first law on the theme of patriotism. The formulation and implementation of the Patriotic Education Law, and the promotion and protection of patriotic education in the new era through the rule of law, are of great and far-reaching significance for inheriting and carrying forward the national spirit, gathering the people’s strength, promoting the construction of a strong country and national rejuvenation.

To conscientiously study, publicize, and implement the Patriotic Education Law, inherit and carry forward the spirit of patriotism in our country’s religious circles, and enhance the national awareness, civic awareness, rule of law awareness, and patriotic sentiments of religious clergy and religious believers, we issue the following directives:

Adhere to the principles of patriotism, love for the party and love for socialism. Strengthen patriotic education and deeply understand that without the Chinese Communist Party, there would be no New China, there would be no socialism with Chinese characteristics, it would be impossible to realize the great rejuvenation of the Chinese nation, and there would be no good possibility of a healthy life for the various religions in our country today, and no happy life for the vast number of religious believers.

Our country’s religious circles must learn, think, and practice Xi Jinping Thought on Socialism with Chinese Characteristics for a New Era, especially General Secretary Xi Jinping’s important expositions on religious work, firmly support the “two establishments” and resolutely achieve the “two safeguards” to safeguard national unity and peace. We should focus on national unity, understand the idea of building a socialist modern country in a comprehensive way, and realize the great rejuvenation of the Chinese nation as a distinct theme, strengthen ideological guidance, cultural cultivation, educational guidance, and practical cultivation, build a solid sense of the Chinese nation’s community, and continuously enhance our respect for the great motherland, the identity of the Chinese nation, Chinese culture, the Chinese Communist Party, and socialism with Chinese characteristics.

Adhere to and carry forward the fine tradition of patriotism. Our country’s religious circles have a long and profound tradition of patriotism. Buddhism advocates “dignifying the land, benefiting and loving people,” Taoism insists on “helping the world and benefiting people, protecting the country and loving the people,” Islam advocates “patriotism is part of faith,” Catholicism emphasizes that “patriotism is a commandment of God,” and [Protestant] Christianity requires that “a good Christian should be a good citizen.”

These are the enduring spiritual riches of our country’s religious circles. We must deeply explore the patriotic values contained in Chinese religious thought, actively publicize the glorious history of the unity and struggle of our country’s religious circles under the leadership of the Chinese Communist Party, and tell vivid stories of patriotism, love of religion, and dedication to society with heart and soul, so that patriotism can become the firm belief, spiritual strength, and conscious action of religious clergy and religious believers.

Persist in filling up our country’s religion with excellent traditional Chinese culture. Strengthen cultural self-confidence, inherit and develop China’s excellent traditional culture, carry forward socialist core values, strengthen religious ideological construction, deeply explore the content of the teachings and canons that are conducive to social harmony, the progress of the times, and healthy civilization, and make adjustments to the teachings and canons so that they are in line with the development and progress of contemporary Chinese requirements and in line with the official interpretation of China’s excellent traditional culture, and promote the deepening and solidification of the Sinicization of religion in our country.

Strengthen the study and use of the country’s common spoken and written language by religious circles in the process of interpreting and preaching scriptures, organize religious clergy and religious believers to recite Chinese classics, and carry out learning and experience activities for China’s excellent traditional culture. Celebrate the Spring Festival, Lantern Festival, Qingming Festival, Dragon Boat Festival, Mid-Autumn Festival, and other important festivals together. Through colorful folk cultural activities, we can experience traditional culture and enhance our feelings for our country.

Continue to carry out patriotic education and practice patriotic activities. Make full use of commemorations of major national historical events, national public memorial ceremonies, patriotic education bases, etc. to carry out extensive patriotic education and inspire patriotism among religious clergy and religious believers.

Continue to carry out education on the history of the Party, the history of the New China, the history of reform and opening up, the history of socialist development, the history of the development of the Chinese nation, and education on the theme of loving the Party, patriotism, and socialism, and further promote the “Four Advances” activities at religious venues. Integrate patriotism throughout the entire process of education and teaching in religious schools and into various subjects and teaching materials.

Adhere to comprehensive and strict governance of religions, strengthen the self-construction of religious groups, and establish a good image of patriotism and love of religion in the religious community. Carry out publicity and education on the socialist rule of law, and guide religious clergy and religious believers to firmly establish the awareness that the state is greater than religion, the state law is greater than religious rules, and the people are citizens first.

Relying on magazines, websites, public accounts, etc. sponsored by religious circles, we will produce, broadcast, and publish excellent works on patriotic themes, set up special columns, strengthen publicity and reporting, sing the main theme of patriotism, and strive to comprehensively promote the construction of a strong country and the great cause of national rejuvenation. We will contribute wisdom and strength.

China Buddhist Association

China Daoist Association

China Islamic Association

Chinese Patriotic Catholic Association

Catholic Bishops Conference of China

Three-Self Patriotic Movement

China Christian Association

National Association of Chinese Young Men Christian Associations

National Association of Young Women’s Christian Association of China

January 4, 2024

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年1月13日

・今も収監中の香港の民主派メディア王ジミー・ライ氏-豪州の弁護士が不当な扱いを告発する活動

Jimmy Lai heading to court on December 2, 2020. Credits.
Jimmy Lai heading to court on December 2, 2020. Credits.

 そうした中で、

 控訴院の前身は英国の司法制度の下で運営され、 現在も英国から継承された共通法の管轄区域とされており、中国に移管後でも、その管轄区域から非常勤判事を採用できる。実際、イングランド、ウェールズ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダから派遣された裁判官が座っている。だが、中国共産党・政府による香港の直接支配、一国二制度の事実上の消滅、そして、2020年の香港国家治安維持法に施行で、そうした裁判官の地位、役割は曖昧なものになりつつある。

 現在、オーストラリア人4人が控訴院の裁判官を務めているが、 そのうちの1人、新任のパトリック・キーン裁判官はこのほど、香港行政区の李家超・行政長官に宣誓を誓ったが、李長官は2020年に「香港での法の支配の破壊」など「悪意のある活動」に関与したとして米国から制裁を受けている。 具体的には、現在オーストラリアに”亡命”している香港の元議会議員の許智峯氏など民主活動家8人に100万香港ドルの”懸賞金”をかけ、「恐怖の中で生きるべき路上のネズミ」と呼び、「人生を…地の果てまで」追われることになるだろう、と脅迫していた。

The campaign for Jimmy Lai reached London too. From X.

 このような人物に、他の3人のオーストラリア人裁判官も忠誠を誓うことが赦されるのだろうか。その答えは言うまでもない。そして、それが、ジミー・ライのような無実の犠牲者に対する、自称”自由世界”の姿勢を示しているのだ。

これら 4 人のオーストラリアの裁判官、オーストラリア勲章の全同胞団(傑出した功績や卓越した功績を示したオーストラリア人に対する国家的表彰)がそのような人物に忠誠を誓うことは許容されるのでしょうか? もちろん、答えはすでに質問の中に含まれており、ジミー・ライのような無実の被害者に対する自称自由世界の態度の多くを説明しています。

 

The campaign for Jimmy Lai reached London too. From X.

(Marco Respinti はイタリア人ジャーナリストで国際ジャーナリスト協会 (IFJ)の会員)

2023年12月2日

・中国の人権活動家孫林氏が公安に撲殺?死因の公開求める親族や抗議の友人らも脅迫受ける(BW)

Sun Lin. From X. 中国の南京で17日、中国共産党・政府に批判的な人権ジャーナリスト、孫林氏の自宅に公安警察が押し入り、本人を殺害した。 これに抗議し、死亡報告書の公開を求めた親族や友人たちも公安警察から脅しを受けている。

 関係者によると、17日の正午ごろ、党国家安全保安部・南京宣武支部の担当職員が正午頃、孫林氏の自宅に侵入した。 近所の人たちは口論や家具が壊れる音を聞いた。そして 2時間後、救急車がやって来て、孫林氏を江蘇中西洋医学病院に搬送したが、同日夕、死亡したことが明らかになった。。

 孫林氏の親戚の話では、彼は1955年生まれで、健康状態は良好。最近、人間ドックを受け、問題なしの結果が得られていた。 彼らは孫林氏が自然死したとは信じていない。公安警察によって殺された、と受け止めている。

 孫林氏は、南京の有名な反体制活動家だった。元々、中国共産党・政府管理のメディアに記者として勤務していたが、退社して、自主制作の雑誌やビデオ チャンネル、海外で発行される反体制派メディアの世界に移った。「人権と民主主義のたゆまぬ擁護者だった」と彼を知る人は語っている。

 最初に当局に逮捕されたのは2008年で、懲役4年の判決を受けた。 2012年に釈放されたものの、翌2013年、父親の張林が著名な反体制派だという理由で学校に通うことを妨げられていた10歳の少女、張安尼を支援する活動の模様を撮影した、として再び逮捕、拘留された。

 しばらくして釈放された孫林氏は、「中国共産党は、民主主義を決して受け入れない」との見解を表明したとして2016年に再び逮捕され、4年の懲役刑を言い渡された。 2020年に釈放された彼は、目立たないよう努めたが、2020年まで4年間の拘留中に殴打され、薬物を投与されたことを公表していた。

 そして2023 年 11 月 17 日、中国共産党はついに彼を「完全に排除」するに至った。 中国全土の反体制派は孫林氏の「暗殺」に抗議を続けているが、 ソーシャルメディアに投稿されたコメントは即刻、削除されるが、投稿者を公安が訪れ、「孫林に関するこれ以上の要求やコメントをすれば刑務所に送る」と通告されている、という。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

2023年11月27日

・中国共産党管理の中国天主教愛国会の会長が香港のカトリック教会訪問-香港の人権活動家弾圧など続く中でバチカンは中国と関係強化?(Crux)

(2023.11.15 Crux Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 中国共産党管理下にある中国天主教愛国会の会長で中国カトリック北京教区長の李 山 (Li Shan)大司教は、香港教区長の周 尚仁( Chow Sau-yan)枢機卿の招待を受け、13日から香港を訪問している。

 李大司教の香港訪問は、4月初めの周枢機卿による北京訪問に続いて行われた。香港教区は事前に、李大司教の訪問に関する短い声明を出し、「周枢機卿の招待を受けて李大司教が香港を訪問し、周枢機卿と会談する。相互訪問を通して、香港、北京の2つの教区間の交流を促進する」としていた。

 李大司教は、中国天主教愛国会(CPCA)の会長を務めており、同会は、バチカンと中国政府の司教任命に関する2018年の暫定合意にもかかわらず、教皇の承認なしに司教を新規任命したり、担当教区を移動させたりしてきた。そうした中の、李大司教の香港訪問は、中国本土と香港などのカトリック教会の関係を強化するために周枢機卿とバチカン当局者が講じた一連の措置の最新のものとなる。

 周氏は香港司教に任命されて以来、ローマ教区が「橋を架ける」教会となることを望み、ローマと本土の国営教会との間の友好的な交流を促進してきた。 この目的のため、同氏は教会関係者と会談し、教区のプロジェクトを訪問するため4月17日から21日までの5日間北京を訪問し、香港の司教が北京を訪問するのは1985年以来初めてであり、重要な節目を迎えた。

 香港がまだイギリスの植民地だった頃。 香港は何十年もの間、中国本土の端にあるカトリックの拠点であり、公式には無神論を掲げる中国共産党の統治下で、カトリック教徒や他の宗教の信者は時として迫害に直面してきた。

 2018年、バチカンと中国共産党政府は、政府公認の公式教会とローマに忠実ないわゆる「地下」教会の統合を目的とした司教任命に関する暫定協定に署名した。協定は中国当局によって繰り返し破られているが、教皇フランシスコは8月31日から9月4日までのモンゴル訪問中に、公の場で中国当局を称賛し、相手を安心させるメッセージを送った。 7月には、中国側がバチカンの了承を得ずに行っていた他教区から上海教区への司教の異動人事を、バチカンが追認、パロリン国務長官はバチカン・ニュースとのインタビューで、「バチカンの連絡事務所を北京に開設し、中国との相互の連絡と協力を強化する」ことを示唆している。

 10月にバチカンで開かれたシノダリティに関する世界代表司教会議(シノドス)第16回総会には、中国本土から2人の司教が、約1か月にわたる会期の前半部分の協議に参加したが、バチカン発表によると、「2人の担当教区の司牧上の必要」から中途退席している。

 一方、周枢機卿は、今月初めに行われた枢機卿昇格の感謝ミサ後の記者との会見で「李大司教の香港訪問は、相互理解を深め、人間関係の強化につながる」と期待を表明。「教皇から私に与えられた使命は、中国の教会とのコミュニケーションを改善すること。 これは、現在は双方の間に敵意がある、という意味ではなく、もっと耳を傾ける必要があるということです」としつつ、「現状では、双方の思い込みの結果、一定の誤解が生じる可能性がある」ことを認めた。

 そして、先月のシノドス総会で「互いに耳を傾けること」が強調されたことを取り上げ、「私たちは『説教する教会』であるだけでなく、『耳を傾ける教会』でもある。 中国とバチカンの間で、より良いコミュニケーションを図るために、頻繁に互いに耳を傾けることが期待されています」と述べ、今回の李大司教の訪問の目的は香港教区についてより深い理解を得ることであり、訪問の大部分は教育機関と神学生の生活に焦点を当てるだろう」と述べていた。

 また、4月に北京を訪問した時の体験について、 「私たちが中国の教会や北京教区と人間的につながっていることが重要。北京滞在中に強い人間関係を感じた」としたうえで、「すべてはまず人間性から始まり、人間同士のつながりから始まります。今回、李善大司教が香港に来ることは、人間的なつながりを確認することでもある。そのつながりによって、私たちは一緒に歩むことができるのです」と強調。

 長期的にみても、どのように構造を強化するか、どのように政策を立てるか、さらには内部政策についても話し合うことができるが、「何よりも両教会が神の愛のより良い証人となるのに役立つ」ことに期待を表明し、「これは抽象的な概念ではなく、問題の解決策です」と主張している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2023年11月16日

・カトリック北京大司教が周枢機卿の招待で、香港を初訪問

 中国カトリック北京教区長の李 山 (Li Shan)大司教(写真左)は、香港教区長の周 尚仁( Chow Sau-yan)枢機卿(写真右)の招待を受け、13日から香港を訪問している。

  香港教区のウェブサイトによると、13日に始まった訪問の目的は「両教区間の交流と交流を促進する」こと。13日は李 山 大司教 ら北京教区の代表団の香港入りを受け、香港教区本部の礼拝堂での夕の祈りを共に捧げたあと、枢機卿の執務室で贈り物の交換が行われた。北京大司教は枢機卿にイエズス会宣教師マテオ・リッチのステンドグラスの像を、枢機卿は大司教に白の木製パネルに聖ペテロとパウロを描いた像を贈った。

 翌14日は、教区本部の礼拝堂でのミサ聖祭の後、北京教区の代表団は市内の無原罪の御宿り大聖堂と教区センターを訪問した。

 今回の李 山 大司教の香港訪問に先立ち、周枢機卿が同大司教の招きで、4月17日から21日にかけて北京教区を訪問している。訪問中、枢機卿は、歓迎式の挨拶で、香港教区代表団は、16世紀から17世紀にかけて中国で宣教師を務め、中国のカトリック教徒に非常に愛され、教皇フランシスコによって「出会いの文化の人」と評されたマッテオ・リッチ神父を讃え、「中国と西側諸国との間の友情の架け橋となり、中国世界におけるキリスト教のメッセージの文化浸透に今も有効なモデルを実践している」と強調。

 北京訪問中、周枢機卿と李山大司教は北京のマテオ・リッチゆかりの至聖救世主大聖堂でミサを捧げ、枢機卿は説教で、教皇フランシスコがどのようにして教会における”シノドスの道”を歩もうとされているか、教会の全信者が互いに耳を傾け合うように、さらには私たちを導く聖霊の声に耳を傾けるように勧めていることを説明。「聖霊は分裂の神ではなく、統一の神」であることを強調し、「香港教区、北京教区、そして中国本土のカトリック共同体がより緊密な協力と交流を行えるように」と期待を表明していた。

  周枢機卿は、イエズス会の雑誌のインタビューで北京訪問を回想し、香港教区は「教皇ヨハネ・パウロ二世から『架け橋教会』となる使命を受け取っています」と強調し、「最大の課題は、異なる教会を結びつけること。対立する人々がが、お互いを、「聞いてもらい、理解してもらいたい」と望む人間、として認識できるようにすること」と述べ、 北京訪問の「最も注目すべき」成果の一つとして、「両教区の司教間の個人的な接触と、さまざまな分野での協力の再燃が見られる。私たちが合意した協力は双方が強く望んでいたもの。共に働く希望と決意が与えられた」と語っていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年11月15日

・国連人権委の特別報告者3人が、中国共産党によるウイグル人子弟の”強制中国化”教育を批判する声明(Bitter Winter)

Deported soon? Uyghur children in Turpan, Xinjiang. Credits. 
Deported soon? Uyghur children in Turpan, XinjiangCredits

(2023.10.4  Bitter Winter   Massimo Introvigne)

 国連人権委員会の特別報告者、フェルナン・ド・ヴァレンヌ(少数民族問題)、アレクサンドラ・ザンタキ(文化的権利問題)、ファリダ・シャヒード氏(教育問題)が4日、連名で、「新疆ウイグル自治区で中国政府・共産党が行っているウイグル族やチュルク系イスラム教徒の子供たちを親から強制的に引き離し、寄宿学校に入れて中国人に文化、言語面で強制同化する政策」を非難する共同声明を出した。

 声明は、中国政府・共産党のこの行為の目的は、「ウイグル人たちの民族的および宗教的アイデンティティを破壊することにある… 子供たちは『人工的な孤児』にされている」と強く非難。

 さらに、「中国政府・共産党が運営する新疆ウイグル自治区の寄宿学校は、ウイグル人などの子どもたちの母国語であるウイグル語による教育をせず、ほとんどが”公用語(北京語)”でなされている。子どもたちは、家族や地域社会から強制的に引き離され、北京語と漢民族の文化に『強制同化』されようとしている」と強い懸念を表明した。

 また、国連は「親が亡命、または逮捕・拘禁されている幼い子供たちを含む、主にウイグル族の子供たちを家族から大規模に連れ去っている」という情報を入手しており、「これらの子供たちは中国当局によって『孤児』として扱われ、全日制の寄宿学校、幼稚園、または孤児院に預けられ、使用される言語はほぼ中国語(普通話)に限られている。彼らは 厳しく管理された寄宿施設に入れられ、両親、大家族、地域社会とのつながりを断たれ、民族の文化的、宗教的、言語的アイデンティティを弱めることになるだろう」と声明は述べている。

 声明に署名した特別報告者たちは、「教師が特定の言語の授業以外でウイグル語を使用した場合も、制裁の対象となる可能性がある」とし、最近、新疆ウイグル自治区で、ウイグル族やその他のイスラム教徒の子供たちのための「寄宿学校の数が急激に増加」していると指摘。 ウイグル語やその他の少数言語による教育が提供される地元の学校の閉鎖も大規模になされており、基本的人権侵害の極めて深刻な懸念を引き起こしている」と強く警告している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2023年10月8日

・「中国愛国天主協会」が「宗教活動の場の管理強化のための措置」を学ぶ会

(2023.9.4  中国天主教=Catholic Church in China=ニュース)

 中国のカトリック「一会一班」は4日、1日から施行された国家宗教行政令第19号「宗教活動の場の管理のための措置」を学び、話し合うための特別研究会を開いた。

 会を主宰した中国愛国天主協会の会長、李山・北京大司教は、この措置に対応した対策策定の必要性、策定の進め方、管理組織、監督と管理について詳細に説明。 今回の措置は、「宗教活動の場と信徒たちの合法的な権利と利益を保護し、宗教活動の場の管理の制度化と標準化を改善し、中国における宗教の『中国化』の方向性遵守に非常に重要な『宗教問題に関する諸規則』の徹底的な実施のための重要な措置だ」と指摘した。

 李山大司教は、今回の措置を受けて、「カトリック活動の場の民主的管理を実施し、人事管理システムの確立および改善、宗教活動、社会活動、および人々の国内での対外交流を規制することが求められる」と強調。 宗教活動の場は、「適切な規模、厳格な経済、安全、秩序の原則を遵守しなければならならず、 内部管理を強化し、管理体制を確立・改善し、現地関係部署の指導・監督・点検を受ける必要がある」と述べ、「 私たちは、全国のカトリック教会が、それを誠実に学び、広く公表し、措置の核となる本質と精神的本質を深く理解し、全国のカトリックの活動の場の制度化と標準化された管理をさらに強化し、中国のカトリックの健全な継承を促進するように導かねばならない」と参加者を促した。

 この後、研究会に参加した「一会一班」の各地の常駐リーダーと部局長が「施策」について突っ込んだ議論を行い、「宗教活動場の管理を包括的かつ綿密に規制し、宗教活動場の内部管理メカニズムを明確にし、人事管理、宗教活動管理、建設管理、安全管理の関連内容を追加し、監督メカニズムを改善すること」ことを、全員で確認した。 この措置はまた「厳格な教育管理、贅沢からの倹約と棄権、および緑の環境保護の概念」を具体的に示しており、 この措置の実施に伴って、宗教活動の場の管理のための規則と法律が施行された。これは非常に実際的な重要性と指導的意義があり、「 徹底的に研究し、学んだことを応用し、措置の実施を促進し、カトリックの活動の場の管理の制度化と標準化をさらに改善すること」でも一致した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二=原文のまま)

2023年9月14日

・偽りの「仏教外交」—国家統制に従属する中国とロシアのが連帯(BW)

 中国とロシアの自国政府に忠実な仏教団体の代表たちが、ロシア東シベリアのブリヤート共和国の首都、ウランウデで8月に開かれた「国際仏教フォーラム」に参加し、プーチン大統領自身がメッセージを送った。(写真右は、ウラン・ウデのフォーラムで講演する中国仏教協会の胡雪峰副会長=「 微博」より)

 ロシアと中国の国家公認の仏教団体はいずれも信頼性に問題を抱えている。 昨年、Bitter Winterが報じたように、当時のロシアの住むカルムイク人(モンゴル系民族の一部族)仏教徒の最高指導者、テロ・トゥルク・リンポチェが2022年10月、ロシアによるウクライナ侵略戦争を非難。「ウクライナ側が正しい」と述べ、当局による逮捕の危険が出たため、モンゴルに亡命し、そこで、徴兵を嫌って国境を越えて来た何万人ものロシアの仏教徒の食事の世話などをしている。

 彼は、1992年以来カルムイク人の仏教指導者であり、おそらくロシア国内の仏教徒に最も尊敬されている人物だったかもしれない。 プーチン政権による彼への激しい批判はロシア国内の仏教徒を大きく動揺させている。

 中国では、政府・共産党の統制下にある中国仏教協会では、2018年に、当時、会長で北京龍泉寺の住職だった雪成師が尼僧6人を性的に虐待した、との疑いをかけられ、辞任を余儀なくされて以来、動揺が収まっていない。

 チベット仏教でも、指導者のパンチェン・ラマ10世が1989年1月に中国チベット自治区で亡くなった後、後継者の選定者たちが1995年5月にゲンドゥン・チューキ・ニマという6歳の男児をパンチェン・ラマの転生者としたが、チベット自治区当局はこれを認めないばかりか、拉致、行方不明にした。当局は同年11月にやはり当時6歳のギェンツェン・ノルブをパンチェン・ラマの”転生霊童”とし、北京政府が彼をパンチェン・ラマ11世とすることを認めた。30代になったギェンツェン・ノルブ師は現在、中国仏教協会の副会長を務め、中国共産党の“傀儡”と見なされている。

Group work during the Forum.

(写真左は、フォーラムでの小グループ対話)

 中国とロシアの国家公認の仏教団体”は、いずれも国際的な仏教組織で活動しており、僧衣をまとった代表者を世界中に派遣し、自国政府の仏教など宗教政策の擁護に努めている。8月の「国際仏教フォーラム」に参加した 中国とロシアの”公的仏教団体”がこの取り組みに協力しているのは当然のことだ。中国からは中国仏教協会の胡学峰・副会長をトップに6人が 参加した。

 フォーラムでは、冒頭にプーチン大統領からの歓迎のメッセージが読み上げられ、 ブリヤート共和国の大統領が歓迎の挨拶をした。そして、胡副会長など中国、ロシア両国の代表が「現代化された仏教」を称賛し、それぞれの政府への忠誠を表明した。 ロシアの参加者は、ロシアのウクライナ軍事侵略を「西側の侵略とナチズムとの戦い」とし、この戦いで多くの命が落とされているロシア人仏教徒の”愛国的取り組み”を祝福。中国の代表団は、「我が国では、信教の自由が謳歌されている」と説明した。両者は互いの主張を笑いを持って受け止めることをしなかったが、中国とロシアの”国営仏教”が国際的な仏教組織に浸透していることは笑い事ではない。 それを阻止せねばならない。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

2023年9月13日

・習近平はなぜ、新疆ウイグル自治区での演説で「”苦労”して勝ち取った安定」と言ったのか

Xi Jinping speaking in Urumqi on August 26. Screenshot.

     中国共産党の”専門用語”を解釈すると、新疆ウイグル自治区の首都ウルムチでの習主席の声明から浮かび上がってくるのは、「大量虐殺は継続すべきだ」ということだ。

Xi Jinping speaking in Urumqi on August 26. Screenshot.

 先月、新疆ウイグル自治区を訪問した際、習近平は演説の中で、この地域の現状を「苦労して勝ち取った安定」と表現したが、プライドと泣き言の匂いがするこの表現の中身については明確にしなかった。

 彼が演説で言及した「苦労」とは何だろうか?  彼が”ウイグル問題”を解決するために選んだ手段は「強制収容所」だった。 中国当局は、「2017年以降、この地域での暴力行為の発生はゼロになった」と誇らしげに、繰り返し主張してきた。その通りだとすれば、それは300万人のウイグル人(そのほとんどが兵役年齢の男性)を投獄することで達成されたことになる。

 習金平は、300万人を強制収容することの経済的、技術的、精神的コストを事前に検討し、それを許容できるものとみなしていたようだ。「 技術コスト」についての州の判断は正しかったかも知れない。

 新疆ウイグル自治区で長年にわたって整備されてきた軍と警察の力量からして、10万人の武装人員によって300万人の非武装の人々を収容所に送り込むことは不可能ではない。「 法と良心」を脇に置いて、起こり得る危険を冒すだけで十分だ。多くの収容所が設立され、整備されている間、ウイグル族から激しい抵抗もなかった。

 この地域の天然資源やビジネスの戦略的立地を考慮すれば、強制収容所の建設と運営にかかる経済的なコスコは問題にならない。ウイグル人実業家を強制収容して、その財産を没収し、収容所に入れた人々から食費や罰金を徴収すれば、”黒字”ニさえなっているかも知れない。

  もっとも、他にもコストがかかるものがある。強制収容所の非人道的な運営は、将来の世代の安全に不安を持つ、この地域に住む漢民族への反発を招く可能性がある。今回の新疆ウイグル自治区訪問の際、習主席が漢民族の住民から反発や批判を受けることはなかったが、同自治区のヤルカンド県の共産党書記が、強制収容していた7000人を、中央の許可を得ずに釈放して「重大な規律違反」として有罪の判決を受ける、という事態が発生している。この自治区に住む漢民族は、中国の現体制の受益者ではあるが、この自治区の住民として自らの権利を主張することもない

The audience in Urumqi on August 26 listening attentively and taking notes. Screenshots.

 では、習主席は、どのような「苦労」を経験した,と言うのだろうか。考えられるのは、強制収容所問題で、海外、国際社会から多くの批判を受けてきたことだろう。過去5年の間に、北米と欧州の22の政府と議会は、中国のウイグル政策を「大量虐殺であり、人道に対する罪である」と定義した。

(写真左は、2023年8月26日、習主席の講演に参加して、メモを取る人々)

 これに中国は反発し、西側諸国と政治的、経済的な制裁のぶつけ合いと招いた。この問題が国連で取り上げられないように、経済力、外交力を駆使して、途上国を味方に付けようとした。 世界中で900以上の非政府組織(そのほとんどが偽物)を創設し、動員することで、国連が昨年作成した「新疆報告書」を公表しないよう圧力をかけた。

 ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官が2022年5月に中国を訪問した。だが、もともと新疆ウイグル自治区を視察する予定だったのが”友好訪問”に変更したうえ、習主席との会談では「教師面して偉そうに他国を説教するべきでなく、人権問題を政治化してはならない」と“クギ”を刺され、帰国前の記者会見では、「反テロリズム」や「脱過激化」など中国政府が使う表現をそのまま使う一方で、「ウイグル人大量虐殺」問題には一切触れず、「中国のプロパガンダに加担した、として国際人権団体から批判された

 もっとも、彼女は、国連人権高等弁務官を昨年辞任する直前に、ウイグル報告書を発表し、「大量虐殺」という言葉こそ使わなかったが、本文中に、読者から「実際に大量虐殺があった」と判断されるような表現がされたいた。

  イスラム諸国を通じてウイグル人虐殺を隠蔽しようとする中国の取り組みは、時として予期せぬ結果をもたらす。中国によって事前に準備された「新疆ウイグル自治区訪問」に参加した一人でアルバニア人のイスラム研究者オルシ・ヤジチ氏は「中国の友人たちよ、あなた方がやっていることは『職業訓練』ではなく、『拷問』だ」と、世界中にYouTubeで所見を述べた。

  最後に、おそらくアジアにおける中国の最も近い”パートナー”、パキスタンの政治家イムラン・カーン氏は「ウイグル問題については、われわれは西側ではなく、中国のバージョンを信じている。われわれは、中国の助けが必要だからだ」と述べた。この言葉は、中国が、ウイグル人虐殺問題についてイスラム諸国を黙らせるために、経済的な強迫を加えていることを暗に認めたものであり、中国政府・共産党にとって、欧米からの批判よりも大きなダメージだ。

  言い換えれば、中国は貧困国や独裁国家を引き連れることで”数的優位”を築き、それによって、国連におけるウイグル問題の議論を阻止するのに成功したものの、このようなやり方自体が、「中国がウイグル問題に関して自信を無く

している」ことを露呈させているのだ。習近平は新疆ウイグル自治区訪問の際の演説で”苦労”という言葉を使うことで、そうした問題を暗に認めた、と言えるだろう。国連の大多数の加盟国は、この問題の真実を公に認める立場にないが、それが何なのかは知っている。

Alena Douhan. From Twitter.

 中国共産党がこのまままウイグル人虐殺問題を隠ぺいし続けることで、どれほどの経済的コストを払うことになるかは、まだ分からない。この問題を隠ぺいするために、ベラルーシ出身の国連官僚、国連の「一方的強制措置と人権に関する人権理事会」討議報告の報告者、アレナ・ドゥーハンに渡したのが20万ドルだったことから考えれば、この問題に中国が世界中でどれだけの金を費やしたかが想像できるだろう。 

(写真右は、アレナ・ドゥーハン)

 真実と戦うのは容易ではないが、 嘘によって得た{誤った尊敬}を維持するのも、非常に難しい。中国当局者らは嘘をでっち上げ、他人にそれを信じさせることにうんざりしており、このことは経済的コストよりも深刻である。これは、習近平の講演での「苦労して勝ち取った安定」についての言及で明らかになった泣き言だ。そうした解釈を入れて「苦労して勝ち取った安定」と語った彼の真意は次のようになる。

 「われわれは、大量虐殺によってこの安定を維持し、栄光を汚し、イメージを汚し、時には誇りさえ、汚してしまった。 このように、すでに大きな代償を払ってきている。 後戻りはできない。われわれは結果に固執し、大量虐殺を続けることを躊躇すべきではない」。

 この”読み”の正確さは、習近平のウルムチでの演説にあった次のような指示によって確認されている-「 脅威を主要な発生源から排除するためのメカニズムを改善する… 」「”テロ”と分離主義に対する戦いを続ける… 」「イスラム教の中国化を続ける…」「 ウイグル人に 中国の文化・思想を受け入れさせる…」「ウイグル人を中国の地方に移住させ、ウイグル地域への中国人移民の再定住を加速する…」

 これらの指示はすべて、虐殺禁止国際条約の別の条項に違反している。 実際、それらは「世界が何と言おうと、大量虐殺を継続せよ」という命令なのだ。 習近平が講演で語った「苦労して勝ち取った安定」は、本質的にはウイグル族虐殺継続の決定を正当化するものである。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2023年9月12日

In August, a New Crackdown on House Churches in Guangdong(BW)

In August, Elder Zhu Longfei of Shunde’s Shengjia Church was detained, Guangzhou’s Huajing Church was banned, and Meizhou’s New Hope Church was raided and sealed.

by Qi Junzao

Lawyers consult with relatives trying to visit inmates of the crowded Nanhai District Detention Center in Foshan City, Guangdong, where the leaders of Shunde’s Shengjia Church are currently detained. From Weibo.
Lawyers consult with relatives trying to visit inmates of the crowded Nanhai District Detention Center in Foshan City, Guangdong, where the leaders of Shunde’s Shengjia Church are currently detained. From Weibo.

The authorities in China continue to try, based on indications coming from Xi Jinping himself at the 2021 National Conference on Work Related to Religious Affairs, to compel house churches to joi

Orders of arrest of the four leaders of Shengjia Church, June 28, 2023. From Twitter.n the government-controlled Three-Self Church—or else. A campaign against independent house churches has been conducted this month of August in Guangdong province.

Zhu Longfei, an elder of the Shengjia Church, located in the Shunde District of the prefecture-level city of Foshan, Guangdong, was detained on August 8. This is part of the calvary of Shengjia Church, which seems to have no end. The Shunde church was repeatedly “invited” to join the Three-Self Church and refused.

Devotees soon learned that their refusal came with a p

rice. Their pastor Deng Yanxiang and Wang Weicai, a businessman who had left his professional activity to become a full-time church co-worker in 2016, were increasingly harassed by the police.

 

On May 24, 2023, the Shengjia Mutual Learning and Mutual Aid Center, i.e., the Bible study training class of the Shengjia C

hurch, was raided by dozens of agents of the national security, the Shunde District Police, and the Ethnic and Religious Affairs Bureau. The church teaching and study materials were confiscated, and the church was sealed. Pastor Deng Yanxiang, Wang Weicai, and church workers Zhu Jianglong and Sister Zhu Qiaoling were detained. On May 25, all four were charged by the Shunde District Police with “illegal business operations,” now a popular trumped-up charge against house church leaders.

Orders of arrest of the four leaders of Shengjia Church, June 28, 2023. From Twitter.

On June 28, they were formally arrested by the Shunde District Procuratorate. Yet, the Shengjia Church continued to operate, led by Elder Zhu Longfei and other co-workers. As mentioned earlier, on August 8, Zhu Longfei was also detained by the Shunde District Police, accused himself of “illegal business operations,” and taken to the Nanhai District Detention Center in Foshan City, Guangdong, where the other leaders of the Shengjia Church had also been jailed.

On August 19, the Civil Affairs Bureau of Tianhe District, one of the eleven districts of Guangdong’s capital, Guangzhou City, issued a notice to ban Guangzhou Huajing Christian Church.

Notice that Guangzhou Huajing Christian Church has been banned on the website of the Government of Tianhe District, Guangzhou City.

On August 20, 2023, as reported by local devotees through social media, the local police raided New Hope Church in the prefecture-level city of Meizhou, Guangdong, a city famously connected with the Hakka ethnic group. Two preachers were detained, and the church was sealed.

There is no peace for house churches, unless they give up and agree to join the Three-Self Church.

2023年8月29日