・豪州の前司教が多数の未成年性的虐待容疑で逮捕・起訴(Crux)

Bishop Christopher Saunders of Broome tries to play a digeridoo during a World Youth Day 2008 media event in Sydney, Australia, on April 17, 2008. Saunders, a retired Catholic bishop, has been charged, Thursday, Feb. 22, 2024, with child sex abuse offenses in a remote part of Australia’s northwest. (Credit: Rob Griffith/AP.)

(2024.2.23 Crux  Managing Editor Charles Collins)

 起訴の罪状は、性的虐待2件、わいせつ行為・暴行14件、児童に対するわいせつ行為3件。これらの行為は、2008年から2014年にかけてなされた、とされている。
 サンダース容疑者は現在、保釈中で、自宅に留まるよう命じられており、公判は6月に始まる予定だが、本人は無罪を主張している

  今回のサンダース容疑者の逮捕・起訴について、オーストラリア司教協議会のティモシー・コステロー会長は22日に声明を出し、「教会にとって非常に深刻であり、特に被害を訴えている人たちにとっては非常に憂慮すべきもの。容疑のすべてが徹底的に調査されることは正しく、適切であり、必要なことだ。 教会は司法当局に全面的に協力し、公正な捜査を妨げるような動きを避けるために必要なあらゆる措置を講じる」と言明した。

 サンダース容疑者は、かつて教区での権利擁護活動で知られ、彼の名を冠したビールもあったほどの”有名人”。 若者をキャンプや釣り旅行に連れて行ったことでも知られていた。性的不法行為に関する疑惑は2020年に初めて表面化し、警察が捜査したが、起訴には至らなかったものの、司教職を退き、”名誉司教”となっていた。

  だが、2022年になって、バチカンがサンダースの児童虐待疑惑について捜査を開始し、200ページにわたる報告書が流出するに至って、西オーストラリア州警察が捜査を再開した。

  昨年 9月、オーストラリアのテレビ局7Newsがサンダースを虐待で告発した2人にインタビューしているが、その1人の男性は、10代の未成年の時、司教館の庭の手入れをしたあと、シャワーを使おうとしたところ、サンダースが入って来て 「石鹸とシャンプーで私の体を洗い始め、陰部や前部など体中をこすり始めた語った。とても素晴らしい人だと思っていたので、とても恐ろしかった」と語っている。

 そして、サンダースは、彼に現金やプレゼントを渡すようになり、スポーツの試合を見るためにメルボルンまで飛行機で連れて行かれ、ホテルの同じ部屋に泊まらされたこともあった、と述べた。

  もう一人の男性は「司教は若者たちを酔わせてショートパンツやシャツを脱ぐよう要求した」とし、「私は彼がキスしたりハグしたり…そして陰部に触れたりしているのを見て、本当にショックを受けた」と語り、サンダースの言葉は「かなり不快だった」と付け加えた。

 被害者とされる1人は7Newsに対し、サンダースは「刑務所に入れられるか、そうでなければカトリック教会から追放されるべきだ」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年2月23日

・2024年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって日本カトリック司教協議会会長

(2024.2.16  カトリック中央協議会)  

日本のカトリック信者の皆様

2024年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 教会は、自分たちが「神との親密な交わりと全人類一致のしるし、道具」(第二バチカン公会議『教会憲章』1)となるよう呼ばれた召命を受け、その実現のために挑戦し続ける道をともに歩んでいます。

 もちろん教会を形作る私たちひとり一人は完全な存在ではなく、「神との親密な交わりと全人類の一致」を明確にあかしするしるしとはなり得ていません。とりわけ、教会が旅を続ける現代社会は、命に対する暴力が荒れ狂う世界であって、その現実の中で、賜物である命を最優先に守り抜き、人間の尊厳を尊重し、さらに全体として一致することは容易なことではありません。

 しかしながら教会は、その厳しい道を挑戦しながら歩むことをやめることはできません。なぜならば、教会にとって「イエスを宣べ伝えるとは、命を宣べ伝えることにほかならない」からです(ヨハネ・パウロ2世「命の福音」80)。

 その教会にあって、率先して人間の尊厳を守り、共同体の一致を促進するべき聖職者や霊的な指導者が、命に対する暴力を働き、人間の尊厳をないがしろにする行為を働いた事例が、近年相次いで報告されています。

 そういった言動を通じて、共同体の一致を破壊するばかりか、性虐待という人間の尊厳を辱め蹂躙する行為によって、多くの方を深く傷つけた聖職者や霊的な指導者が存在することは事実です。

 長い時間を経て、ようやくその心の傷や苦しみを吐露された方々もおられます。なかには、あたかも被害を受けられた方に責任があるかのような言動で、さらなる被害の拡大を生じた事例もしばしば見受けられます。

 このように長期にわたる深い苦しみを生み出した聖職者や霊的指導者の行為を、心から謝罪いたします。また被害を受けられた方に責任があるかのような言動を通じて、人間の尊厳をおとしめた行為を、心から謝罪します。責任は加害者にあるのは当然です。

 2018年に教皇フランシスコは、「神の民に宛てた手紙」を公表され、その中で、性虐待問題について次のように呼びかけました。そこに記されている次の言葉を、日本の教会も共有いたします。

 「苦痛と無力感を伴う根深い傷を、ほかでもなく被害者に、しかしそればかりか家族と共同体全体に負わせる犯罪です。起きてしまったことに鑑みれば、謝罪と、与えた被害を償う努力が、十分になることなど決してありません。今後について考えれば、このような事態が二度と繰り返されないようにするだけでなく、その隠蔽や存続の余地を与えない文化を作り出す努力をするほかありません」

 教皇フランシスコは、この問題に教会全体が真摯に取り組み、その罪を認め、ゆるしを請い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽くすよう求め、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるようにと指示されました。日本の教会では、四旬節・第二金曜日を、この祈りと償いの日と定めました。2024年にあっては、来る3月1日(金)がこの日にあたります。

 日本の司教団は、2002年以来、ガイドラインの制定や、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」の設置など、対応にあたってきました。2021年2月の司教総会で、「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を決議し、教会に求められている命を守るための行動に積極的に取り組む体制を整えてきました。

 また「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を通じて啓発活動を深めると共に、ガイドライン運用促進部門を別途設置し、それぞれの教区や修道会が、自らの聖職者や霊的な指導者の言動に責任をもって対応する態勢を整えつつあります。

 改めて、無関心や隠蔽も含め、教会の罪を心から謝罪いたします。神の癒やしの手によって被害を受けられた方々が包まれますように、心から祈ります。また聖職者のためにも、お祈りくださいますようお願いいたします。

 どうぞ、四旬節第二金曜日に、またはその近くの主日に、教皇様の意向に合わせ、司教団とともに、祈りをささげてくださいますようにお願いいたします。

2024年2月14日 日本カトリック司教協議会 会長 菊地 功

2024年2月17日

・カナダで性的虐待集団訴訟の被告名簿に載った枢機卿が虐待を否定、大司教職は一時中断

(2024.1.30 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen )

ローマ発 – ケベック大司教区に対して性的虐待の損害賠償を求める集団訴訟でジェラルド・ラクロワ枢機卿が被告リストに載ったことに対し、同大司教区事務局は1月26日に声明を発表し、ラクロワ枢機卿が容疑を否定する一方、問題が解明されるまで「大司教区を指導する立場」から身を引くことを発表した。

 ラクロワ枢機卿は1月25日、1987年と1988年の2回、当時17歳だった少女に「不適切な接触」をしたと主張する原告側の法廷文書により、集団訴訟の被告リストに載せられた。

 ケベック大司教区は26日の声明で、ラクロワ枢機卿が「自身に対する容疑を断固として否定」し、容疑は「根拠がない」と考えている、と述べた。その一方で、枢機卿が「大司教区の指導から一時的に退く」ことを決めた、とした。そして、数日以内にラクロワ枢機卿は大司教区に「個人的な連絡を送り」、それが「メディアに中継される」予定としている。

 ラクロワ枢機卿は、教皇の枢機卿顧問会議のメンバーで、昨年10月の世界代表司教会議の第1会期会合で、今年10月の第2会期を経てまとめられる最終文書を監督するために選ばれた7人の1人で、第2会期の会合に参加する予定。

 だが、今回、集団訴訟の被告リストに載ったことで、2022年にバチカン司教省の元長官、マルク・ウエレ枢機卿が告訴(後に無罪)されて以来、性的虐待の被告とされた2人目のカナダ人枢機卿となった。 

 今回の ケベック大司教区に対する集団訴訟には約147人の被害者が参加している。 法廷文書には大司教区関係者15人の名前が挙げられているが、ラクロワ枢機卿が性的暴行をしたとされる相手の女性の身元は特定されていない。

 ケベック大司教区は声明の中で、ラクロワ枢機卿が大司教ポスト不在中に物事を進めるために「あらゆる手段を講じる。真実を尊重し、誠実に集団訴訟に対応する」とする一方、 性的虐待の被害者への補償について”関心”を持っている」としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月31日

・カナダ・ケベックの枢機卿が現地の性的虐待集団訴訟の被告リストに

(2024.1.26  Crux Staff)

 この枢機卿は ジェラルド・ラクロワ・ケベック大司教で、25日に裁判所に提出された集団訴訟の書類の被告名簿に追加掲載された。(写真は、ケベック大司教のラクロワ枢機卿)
 この集団訴訟は、ケベック大司教区の100人以上の聖職者や信徒が行った性的虐待・暴行に対して損害賠償を求めるもので、原告代理人弁護士によると、これまでに147人が被害者として名乗り出ている。
 集団訴訟の代理人弁護士のアラン・アルセノー氏によると、加害者名簿に追加されたラクロワ枢機卿の具体的な容疑は、
35年前、2回にわたって、当時17歳の少女に不適切な行為を働いた、というもの。
 被害者とされる女性の身元は明らかにされていないが、現在、50歳代。1980年代後半、両親に付き添って聖書研究に教会に出かけた際、 当時30代前半だったラクロワ枢機卿が別室に引き込み、体をまさぐった後、その行為を外部に漏らすことは「自分を殺す」ことになるため、母親に話さないように”注意”した。両親がショックを受けるのを心配して、これまで名乗り出ることができなかったが、母親が亡くなったため、集団訴訟に参加することで、アルセノー弁護士に連絡を取った。
 集団訴訟そのものは2022年に裁判所に受理されている。ケベック大司教区事務局の聖職者や信徒によって1940年以降に性的虐待を受けた人たちが、大司教区に集団で損害賠償請求の訴えを起こしている。対象期間が長く、加害者、被害者も多数に上るため、裁判の事前準備に時間がかかっており、審理開始は来年になると見られている。
 ラクロワ枢機卿の広報担当者は25日、「ラクロワ枢機卿に対する疑惑に関しては様々なことが言われている。現在、解明に努めており、後日、正式なコメントを出したい」と語った。

 枢機卿は、教皇フランシスコによって2014年に枢機卿に任命され、2022年のカナダ訪問で主導的な役割を果たし、昨年3月、枢機卿顧問会議のメンバーに指名された。教会改革に関して教皇の最も重要な助言者の1人で、昨年10月の世界代表司教会議(シノドス)通常総会第一会期の総括文書とりまとめのメンバー7人の1人に選ばれていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月28日

(評論)傷ついた”羊”を守ろうとしない”牧者”たちは”シノドスの道”を歩めるか

「虐待に対する”沈黙”を打ち破る」ために教皇が求める「広い心」を日本の教会、司教団は持っているのか

 「司祭から繰り返し性暴力」‐東京の女性信者が神言会に損害賠償求める裁判始まるの記事を「カトリック・あい」に23日夕から掲載(朝日新聞も翌24日の朝刊に掲載)してわずか3日の26日夕現在で、閲覧件数が300件を大きく超えている。異例の閲覧件数の高さは、そのまま多くの日本の信徒、さらに司祭の間にも、大きな苦痛と不安の中であえて裁判に臨むことになった原告被害者への理解と共感が広がっていることを示しているように思われる。

 カトリック教会では、聖職者による性的虐待問題が世界的に深刻な問題となり、信者の教会離れにもつなっがっているが、1月に入ってからも、南米ボリビアで「性的虐待被害者の会」がイエズス会の司祭9人とボリビア管区を相手取って訴訟を起こしたことが明らかになるなど、いまだに終息を見せていない。

 日本でも、教会自体で責任ある対応ができずに訴訟になった、あるいはなっているケースが、確認できただけで長崎で2件、仙台で1件、そして今回の東京での1件があり、他にも問題のケースが数件あると見られる。

 このうち、仙台市の女性信徒の場合、カトリック仙台教区の司祭から性的暴行を受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症、その後の教区関係者の不適切な対応、発言もあって多大な精神的苦痛を受けたとして、同教区などに謝罪と損害賠償を求め、仙台地方裁判所に提訴していた事件が昨年12月、和解金の支払いなどで一応の決着を見た。

 だが、教区から本人への謝罪も公けにはなく、精神的なケアもなく、それどころか一部の信徒たちから「和解金目当てに裁判をやったのか」という本人の心の傷口にさらに塩をすり込むような声も出て、本人を教会に絶望させる事態に追い込んでいる、という。

 日本の司教団は、バチカンからの指示を受けて性的虐待防止などのガイドラインの作成や各教区の女性や子供の保護のための担当司祭、窓口の設置などはしている。だが、長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となり、東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任されるなど、窓口そのものの信頼を大きく損なう事態も起きている。

 また司教団は、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果を昨年9月に明らかにしたが、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった」などとするだけだった。
 具体的な教区名、申し立てやそれに対する教区の対応などの説明はなく、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるのみ。被害者に寄り添おうとする姿勢も、虐待問題に真剣に対応しようとする意志もうかがえない。

 聖職者による性的虐待が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、昨年11月にフランス・ナント教区の聖職者による性的虐待被害者のグループと会見された際、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「『被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができる」と語られている。

 傷ついた被害者に耳を貸そうとせず、それどころか代理人弁護士を立てて、加害者と見なされる司祭を守ろうとする人々に、教皇のこの言葉は届いているのだろうか。このような態度を続ける限り、司教も司祭も、そして信徒が互いに耳を傾け、共に歩もうと教皇が願って始められた”シノドスの道”を歩むことが、果たしてできるのだろうか。

 教皇の言われる「受け手」としての日本の教会、そして何より司教団は、昨年12月の仙台での和解とその後の教会の対応、今回の東京での裁判開始を機に、改めて、この教皇の言葉をかみしめる必要がある。

(カトリック・あい 南條俊二)

2024年1月26日

・バチカン裁判所の控訴審で、イタリア人神父を未成年性的行為で懲役2年6か月の逆転有罪に

(2024.1.24   Vatican News)

 バチカン裁判所は控訴審で24日、イタリア・コモ出身のガブリエレ・マルティネッリ神父(31)に、バチカンの聖ピオ神学校の学生だった2008年8月9日から2009年3月19日までに犯した未成年者に対する性的行為の罪で懲役2年6か月、罰金1000ユーロの判決を下した。

  マルティネッリ神父は、「L.G.」という名の元神学生から出された告訴状をもとに起訴され、一審では、本人が16歳未満だった2008年8月2日までに犯した事実については処罰の対象とされず、告訴した元神学生に対する強姦と猥褻行為の罪について7か月の懲役刑が宣告されていた。

  この判決を、バチカンの検察官、ロベルト・ザノッティ氏とマルティネッリ神父の代理人弁護士ローラ・スグロ氏の双方が不服として控訴し、ほぼ1年にわたる二審での審理の末、2021年10月6日に、証拠不十分で、すべて無罪の判決を受けていた。

 聖ピオ神学校の元学長エンリコ・ラディチェ神父は性的行為の幇助と教唆の罪で告発されていたが、証拠不十分で無罪となった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年1月26日

・改「司祭から繰り返し性暴力」‐女性信者が神言会に損害賠償求める裁判始まる・第二回は3月11日、東京地裁の第606号法廷で。傍聴自由。

(2024.1.23=2.24改 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が、外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかったとして、司祭が所属していたカトリック修道会、神言会(日本管区の本部・名古屋市)を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の審理が1月23日、東京地方裁判所で始まった。

 第二回の審理は3月5日を予定していたが、一回目の法廷の部屋の傍聴席が満杯となったため、広い部屋を用意する都合から、3月11日(月)午前10時から、606号法廷で開かれることになった。傍聴は自由。審理終了後には今回も、被害者と傍聴者との面談が予定されている。本件に関心をお持ちの方の傍聴、真相解明への参加を、原告、原告弁護人は期待している。

 1月23日の審理には原告の田中時枝さん(東京教区信徒)と代理人の秋田一惠弁護士が出廷、被告の神言会とその代理人弁護士は文書提出のみで欠席のまま、今後の審理の進め方などについて裁判所側から意見を聞いた。

 裁判の前に、原告田中さんと代理人の秋田弁護士が、原告の支持者たち20数人と会見し、原告が訴訟に至った経緯などについて改めて説明。田中さんは、「救いを求めた教会の司祭に、真実を打ち明け、神の赦しを得るはずの『告解』という機会を利用され、肉体だけでなく、精神的に深い傷を負わされた。今も夜中に目が覚め、恐ろしさがよみがえり、絶望感に襲われることがしばしば。修道会もまともに対応してくれない。こんなことが繰り返され、同じように不幸な人を作ってはならない、との思いで、あえて実名も出し、訴訟に踏み切った」と語った。

 代理人弁護士などの説明によると、田中さんは、子供時代に性的虐待を受け、トラウマに苦しみ続け、今から約十年前、50代になってようやく気持ちの整理がつき、当時在籍した長崎の教会で告解をした。ところが告解を聴いたチリ人で神言会士のバルカス・フロス・オズワルド・ザビエル神父から、教会の外の建物に連れて行かれ、性的暴行を受けたが、「逃げると殺される」という恐怖感から抵抗できず、4年半も繰り返され、回を重ねるごとに酷さが増した。

 神言会の日本管区長などに被害を伝えたところ、2019年に、その司祭に対して、「性犯罪を行い、貞潔の誓願を破ったと告発されていること」「将来スキャンダルを引き起こす可能性があること」などを理由に聖職を停止し、共同生活から離れる3年の「院外生活」を決め、母国への帰国を認めた。だが、その後、バルカス神父は日本に戻り、還俗して他の女性と結婚し、東京都内にいるという情報もあるが、神言会は「所在不明」と言い続けているという。

 代理人の秋田一惠弁護士は「神父は告解を利用して彼女の重大な秘密を知り、それに乗じて性加害を繰り返した。修道会は性被害の事実と加害者を組織的に隠蔽(いんぺい)している」と語っている。
 
 神言会は、1875年に聖アーノルド・ヤンセン神父によって創られたカトリックの宣教修道会で、日本では1907年に宣教活動を開始。現在、名古屋市に中学、高校、大学を、長崎には中高を経営。新潟、仙台、東京、名古屋、福岡、長崎、鹿児島の各教区で約30の小教区を担当し、東京教区、新潟教区の教区長に、それぞれ同出身の大司教、司教が就いている.

(解説)教皇が言われる「虐待に対する”沈黙”を打ち破る」ために教会、司教団が求められることは

 カトリック教会では、聖職者による性的虐待問題が世界的に深刻な問題となり、信者の教会離れにもつなっがっているが、1月に入ってからも、南米ボリビアで「性的虐待被害者の会」がイエズス会の司祭9人とボリビア管区を相手取って訴訟を起こしたことが明らかになるなど、いまだに終息を見せていない。

 日本でも、教会自体で責任ある対応ができずに訴訟になった、あるいはなっているケースが、確認できただけで長崎で2件、仙台で1件、そして今回の東京での1件があり、他にも問題のケースが数件あると見られる。

 このうち、仙台市の女性信徒の場合、カトリック仙台教区の司祭から性的暴行を受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症、その後の教区関係者の不適切な対応、発言もあって多大な精神的苦痛を受けたとして、同教区などに謝罪と損害賠償を求め、仙台地方裁判所に提訴していた事件が昨年12月、和解金の支払いなどで一応の決着を見た。

 だが、教区から本人への謝罪も公けにはなく、精神的なケアもなく、それどころか一部の信徒たちから「和解金目当てに裁判をやったのか」という本人の心の傷にさらに塩をこすりつけるような声も出、本人を教会に絶望させる事態に追い込んでいる、という。

 日本の司教団は、バチカンからの指示を受けて性的虐待防止などのガイドラインの作成や各教区の女性や子供の保護のための担当司祭、窓口の設置などはしている。だが、長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となり、東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任されるなど、窓口そのものの信頼を大きく損なう事態も起きている。

 また司教団は、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果を昨年9月に明らかにしたが、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった」などとするだけだった。
 具体的な教区名、申し立てやそれに対する教区の対応などの説明はなく、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるのみ。被害者に寄り添おうとする姿勢も、虐待問題に真剣に対応しようとする意志もうかがえない。

 聖職者による性的虐待が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、昨年11月にフランス・ナント教区の聖職者による性的虐待被害者のグループと会見された際、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「『被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができる」と語られている。

 「受け手」としての日本の教会、そして何より司教団は、今回の東京での裁判開始を機会に、改めて、この教皇の言葉をかみしめる必要がある。
(カトリック・あい 南條俊二)

2024年1月23日

・ボリビアで性的虐待被害者の会がイエズス会士9人とボリビア管区を相手取る訴訟(Crux)

(2024.1.20 Crux Contributor  Eduardo Campos Lima)

 サンパウロ(ブラジル)発-イエズス会ボリビア管区の司祭による40年以上にわたる80件以上の性的虐待事件の暴露を受けて設立されたボリビアの「虐待被害者の会」が、イエズス会ボリビア管区を相手取って訴訟を起こしている。

 「イエズス会は長年にわたり事件を隠蔽しようとしてきた。 彼らは何が起こっているのかについての情報を持っていましたが、それを司法当局に届けることをしなかった。 私たちは彼らが組織的に犯罪を犯したと考えている。彼らは責任を負わなければなりません」と、「虐待被害者の会」の会長で自身も性的虐待の被害者であるワイルダー・フローレス氏は語った。

 「虐待被害者の会」は昨年10月にボリビアの裁判所にイエズス会の司祭9人と同会の元ボリビア管区長を相手取って訴訟を起こした。訴えを受理した裁判所が現在、調査中だが、 イエズス会ボリビア管区の広報担当者はCruxの取材に、「会は被害者との連帯に尽力しており、刑事捜査と民事捜査の両方に全面的に協力している」と述べた。

 「虐待被害者の会」はボリビアでの聖職者による性的虐待被害者25人によって結成され、現在、100人以上の被害者が新たに加わっている、という。その中にはまだ正式に会のメンバーになっていない人もいるが、虐待に関する情報を会に提供しており、会ではさらに多くの被害者たちと連絡を取り合っている。

 会の 創設メンバーの多くは、ボリビアの3番目の都市、コチャバンバにあるイエズス会の寄宿学校Colegio Juan XXIIIの元生徒たちだ。

 彼らが在籍していた当時の校長は「ピカ神父」として知られるスペイン生まれのイエズス会士、アルフォンソ・ペドラハス神父(故人)。2023 年 4 月にスペインの新聞El Pais が報道した同神父の日記には、1960 年代から 2000 年代にかけて、自分が犯した数多くの性的虐待事件が書かれており、 少なくとも当時未成年だった85人が性的虐待を受けたことが明らかになった。

  フローレス会長も、ピカ神父の性的虐待の被害者の一人だった。虐待は1993年に行われたが、神父はすでに校長をやめていた。

  会長によると、この寄宿学校の生徒の大半は地元の貧しい家の出身で、鉱山労働者の子供も含まれており、学校に入ることは、貧困を脱却する機会と見なされていた。 

 会長は、虐待を受けた時の様子を「ペドラハス神父が学校を訪ねてきた当時、私は13歳でした。神父は非常に重要な人物として私たちに紹介され、そこで1週間を過ごしました… ある晩、彼が私のところにやって来ました。 そして性的虐待を受けたのです。私は 何時間も泣きました。 まるで悪夢のようでした」と振り返った。

 翌日の夜、フローレス氏は、神父がまた生徒たちの宿舎にやって来て、同僚の生徒一人を部屋から連れ出したところを目撃した、という。

  フローレス氏は今、「長年にわたって性的虐待を繰り返した後も、なぜ、このような異常な小児性愛者が十代の若者たちの育成を担当することができたのか」と強い疑問を感じているとCruxに語った。「私が虐待を受けた当時の校長は、ペドラハス神父の後任でしたが、二人ともスペイン生まれで、友人同士だった。校長はペドラハスに性的虐待の性癖があることを知っていたはずですが、それでも彼を学校に訪問させたのです」と批判した。

 ペドラハス神父は、日記の中で、さまざまな機会に、イエズス会の上長や他の会士に自分の罪を告白したと書いているが、告白を聴いた誰も、司法当局に彼を訴えることはしなかった。 「神父は日記で、85人の被害者について言及していますが、私たちは、この寄宿学校だけで150人以上が被害を受けていると考えています」とフローレス氏は断言した。

 また、フローレス氏が被害に遭った当時の寄宿学校の校長は、スペイン東部カタルーニャ出身のフランセスク・ペリス神父で、ボリビアに赴任する前に欧州で虐待で訴えられていた。被害者の一部から公に非難され、職を追われている。だが、 「ぺリス校長の後任となったカルロス・ビジャミル神父も虐待を犯しました。20年以上にわたって、この寄宿学校の校長を務めた5人が生徒たちを性的に虐待していたのです」と氏は語った。

 「虐待被害者の会」は、これまでにイエズス会士の小児性愛者が関与した他の事件の報告も受けており、告発の対象となる司祭の数は9人に増えた。このようにイエズス会士の加害者が多数に上ることから、訴訟をボリビアのイエズス会に対して起こすことになった、という。加害者とされる司祭9人のうち生存しているのはぺリス神父など2人だが、適切な対応を怠った罪でイエズス会の元ボリビア管区長らも訴訟の対象としている。

 これに対して、イエズス会ボリビア管区の広報担当、セルジオ・モンテス神父は、2018年以来、イエズス会は潜在的な虐待事件を調査し、対処するために、いくつかの体制を作っおり、イエズス会士が関与した一部の事件が正規の手続きで適切に捜査され、検察に送致され、開示されることが保証された、とCruxに説明した。

  モンテス神父によれば、ペドラジャスの事件は公けになる直前に、当局から予備的な捜査を受け、管区に対する隠蔽の告発は検察によって捜査されている。

 「イエズス会は、告発された事件に関して持っているすべての文書を検察に提出している。公正な捜査と司法手続きを経て、有罪とされれば、イエズス会士は法で定められ決定に従わなければならない」とする一方、「ボリビアの法律では、犯罪は組織ではなく人々のみに責任がある、とされている。裁判所の 命令は各個人に対するものでり、(隠ぺいで、イエズス会管区が)刑事責任を負うことはない」が、「イエズス会ボリビア管区は、何よりもまず被害者たちに連帯を表明し、法的・心理的支援を提供してきた。一部のイエズス会士が犯した酷い犯罪について謝罪し、会としても虐待防止のために規律強化などの努力をしている」と説明した。

 だが、フローレス氏は、「イエズス会が被害者に現在のような対話の道を開いたのは、ペドラハスによる虐待が発覚した後になってからだ。イエズス会は、すでに死亡した会員が犯した犯罪の責任だけを認め、会が関与したそれ以外の存命の神父たちの事件を隠蔽しようとしている」と批判。

 さらに、 「私たちは『個人的な野心を持っている』と非難されてきた。だが、私たちが望んでいるのは、これ以上、若者たちが性的虐待を受けないようにすることだけなのです」と訴えている。

 また、同氏は、「虐待被害者の会」は、イエズス会以外の修道会の会員による虐待の報告も受けているが、それらに対応する体制ができていないため、イエズス会のみを対象とせざるを得ない。それだけでも長い戦いになると思います。十分な準備が必要です」とも語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2024年1月21日

・教皇、醜聞にまみれたインドの司教の辞表を受理、だが聖職者としての活動に制限はない?(CRUX)

(2024.1.15 Crux  Contributor  Nirmala Carvalho)

   ムンバイ発 -バチカン広報は13日、インド南部マイソールで性的不法行為、汚職など複数の罪で告発されているカンニカダス・アンソニー・ウィリアム司教(58)の辞表を教皇フランシスコが受理された、と発表した。

 インド・カトリック司教協議会のフェリックス・アンソニー・マチャド事務局長(大司教)も同日声明を発表、「教区の悲惨な状況を考慮し、司牧的理由から、ウイリアムの辞任を受け入れた」と述べている。

 マイソール教区は、インド第三の大都市、バンガロールの郊外に位置し、 約80の小教区に約11万3000人の信徒がいる。ウイリアムはここで6年間司教を務めていた。バチカンが司教辞任を発表した13日には、ミサの最中だったが、信徒たちに、自分は教区から離れる形での「医療休暇」を(バチカンに)求めている、と語っていたという。

 マイソール教区の37人の司祭のグループは2019年に、バチカンに、少なくとも4人の愛人を持ち、子供まで倦ませており、汚職がらみの政治家や官僚、警察関係者とも強いつながりをもち、組織犯罪と結びついていた、として、バチカンにウィリアムの司教辞任を求める書簡を送付。他の告発と相まって、バチカンの指示を受けたインドの高位聖職者3人による2021年2月からの調査につながった。

 さらにこの後、司祭22人を含む113人で構成する「Save Mysore Diocese Action Committee(マイソールを救う行動委員会)」が、バチカン福音宣教省のアントニオ・タグレ副長官に、ウィリアムの辞任を求める書簡を送った。

 またマイソール教区のグナナ・プラカシュ神父も2022年7月に、インド駐在のバチカン大使に書簡を送り、2019年にバチカンに送ったウィリアム告発の書簡に署名した37人のうちの4人が不審死を遂げていることにウイリアムが関わっていること、性的暴行、非生殖器性交、横領の罪を犯していることを訴えている。

 こうした中で、2022年8月に、インドの最上位高位聖職者のオズワルド・グラシアス枢機卿(ムンバイ大司教)がウィリアムと(彼がもうけたとされる子供についての)親子鑑定についての会話の記録が明らかになり、枢機卿は「記録は編集・加工されたもの。私はウイリアムに検査を受けるよう勧めたが、その結果に影響を与えるようなことを彼に提案したことは絶対にない」と、この醜聞の隠ぺいに関わっていない旨の釈明を余儀なくされた。

 これらの告発、訴えに対して、ウィリアム本人は当初から全面否定を続けており、教区には一定の支持者がいる。   1月9日、マイソールのコミュニティリーダーのグループが、ウィリアム告発に加わった何人かの司祭が彼を殺害する陰謀を企んでいる、とし、彼らの司祭職はく奪などを要求するとともに、ウィリアムの消息を明確にするよう求めた。

 グループの代表は、「我々はウィリアムにここ(マイソール)にいて欲しい。彼はマイソールの教会指導者だ」と主張。さらに、2021年にバチカンの指示で実施された調査で機密漏洩の疑いがある、調査チームのメンバーの1人がウィリアムに罪を着せるために情報を漏洩した、とも述べている。

 13日のバチカンの発表も、インド司教協議会の声明も、ウィリアムの今後の扱いについて明確にしていないが、司教協議会のマチャド事務局長は、ウィリアムの肩書は「前マイヨール司教」であり、聖職者としての活動には何も制限がない、つまりミサを司式することも、他の秘跡を行うこともできる、と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月16日

・コートジボワールの司教が「妻子連れの司祭」や「性的虐待司祭」の告発を信徒たちに要請(CRUX)

(2024.1.8 Crux  Africa Correspondent  Ngala Killian Chimtom)

 

Ivory Coast bishop urges laity to report priests with wives and children

 緊急書簡を出したのは、コートジボワール共和国のトンキピ州の州都マンを中心としたカトリック・マン教区のガスパール・ベビ・グネバ司教。全教区民あての書簡を送るとともに、地元のカトリック・ラジオ局で書簡を朗読した。

 べビ・グネバ司教は書簡で 「司祭が独身に忠実ではないこと、妻や子供をもっていること、性的虐待や経済犯罪を犯したことを知っている信徒は、司教に告発する勇気を持たなければなりません。さもなければ、司祭は神の前に共犯の罪を犯すことになります」とし、 「教皇は、このような聖職者に対して、寛容の姿勢はお取りになりません」と訴えた。

 そして、妻や子供を持つすべての司祭に対し、彼らの幸せに専念するために聖職を離れるよう求め、 「できるだけ早く私に会いに来て、辞意を表明しなければならない」と強調。そうした司祭たちが「司祭の禁欲が任意であるかのような印象」を与えていることに遺憾を表明した。

  カトリックの司祭が誓約に反して妻子をもつことの問題は、長年にわたって強いタブー視されてきたが、アフリカの教会当局が対応を試みたのは今回が初めてではない。2009年当時、バチカンの福音宣教省長官だったロバート・サラ・ギニア大司教が実施した調査で、中央アフリカ共和国の高位聖職者が教区施設で妻子と暮らしていたことが発覚して辞任に追い込まれた。

  最近では2020年3月に、コンゴ民主共和国の司教協議会が、各司教あての文書で、妻子を持つ司祭に対し、聖職の自主的な離脱を求めるよう要請した。文書では、 「親の子供に対する権利と義務、子供たちの親に対する権利と義務、そして、家庭における父親としての役割と、社会における奉仕や司祭の生活を両立することが困難であることを考慮し、私たちは子どもを持つすべての司祭に対し、(子どもに)完全に献身し、そのために教皇に対しt、司祭としての義務の免除を求めるよう求めることが必要」としている。

 前年の 2019年、バチカンの聖職者省が、妻子を持つ司祭に関する非公式の内部ガイドラインの存在を認めた。これは、もともとカトリック司祭の子弟で、 世界中の司祭の子や孫の利益保護を目的とする団体「Coping International」の創設者でもあるアイルランド人の信徒、ビンセント・ドイル氏が公けにしたもの。

 この問題に詳しい 批評家は「教会は妻子を持つ司祭たちの現実に十分に対処できておらず、問題を隠蔽する傾向が強い」と批判。 ドイル氏は最近のインタビューで、「バチカンはこの問題への対処でもたつき、私たちを”目に見えない存在”、”目に見えない子供”扱いしてきた」と語っている。

  総人口3000万人のうち約2割をカトリック教徒が占めるコートジボワール共和国が、妻子を持つ司祭に関して特別な課題に直面しているという兆候はない。 だが、この国の司教たちは一般に、性道徳の問題に関して伝統的な立場をとっていることで知られており、同国の司教協議会は最近、同性カップルの祝福を条件付きで認めるバチカンの宣言「 Fiducia Supplicans」を受けて声明を発表。

  「同性カップルの祝福が、地元の教会内で混乱やスキャンダルを引き起こすリスクを隠すことはできない」と批判。「家族の価値観、そして神が最初から望まれた男女の結婚の秘跡に対する私たちの愛着を再確認」し、司祭たちに「同性カップルや“不規則な状況”にあるカップルに祝福を与えるのを控えるよう」求めている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月8日

(評論)性的虐待に絡む仙台の裁判で和解-日本の教会は、司教団は苦しむ声に”耳を傾けて”いるか

 カトリック教会では、聖職者による性的虐待問題が世界的に深刻な問題となり、信者の教会離れにもつなっがっている。日本の教会でも、西欧などの教会に比べれば件数は少ないが、”沈黙”の風土の変化を背景に被害者が声を上げるケースが増える傾向にある。

 長崎教区では、女性信者が司祭から性的虐待を受けたとされる事件があり警察当局が捜査に入ったものの、事の性質から立件が難しく不起訴となったが、それを受けた教区長(当時)の高見三明・前大司教の不適切発言などから(PTSDが悪化したとして、被害女性が教区を相手に損害賠償訴訟を長崎地方裁判所に起こし、20222月、教区に対し110万円の損害賠償命令が出されている。

 司祭の性的虐待に関係する訴えで、裁判所が被告の教区に損害賠償を命じたり、和解を勧告したのは、今回の仙台が二件目とみられるが、男子修道会・神言会の司祭の性的虐待に関して同会に損害賠償を求める被害女性の訴えを受けた裁判が、東京地方裁判所で新年1月に始まる予定であり、他にも声を上げようとする被害者が複数いることが、取材の過程で把握されている

 日本の司教団では、バチカンからの指示を受けて性的虐待防止などのガイドラインの作成や各教区の女性や子供の保護のための担当司祭、窓口の設置などはしているものの、長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となった。東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任されるなどの事態も起きている。

 また司教団は、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果を今年9月に明らかにしたが、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった」などとするだけで、具体的な教区名、申し立てやそれに対する教区の対応などの説明はなく、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるのみ。被害者に寄り添おうとする姿勢も、虐待問題に真剣に対応しようとする意志もうかがえない。

 今回、一応の決着を見た仙台での裁判の過程でも、それが象徴的に表れた。

 原告被害者の女性は約40年前、24歳だった時に、気仙沼市に赴任してきた司祭に、夫の家庭内暴力などの悩みの相談に行ったが、その際に性的虐待に遭った。その後、「自分が教会を汚した」と罪の意識にさいなまれ、子育てに懸命になったものの、アルコール依存症やギャンブル依存症に陥り、離婚も経験するなど悲惨な人生を続けたが、約30年経って、主治医の精神科医から「あなたは悪くない」と言われたことで、性的虐待は自ら望んだものではなく、被害に遭ったことを認識。

 加害司祭や教会から虐待行為を認め、謝罪を受けることで、精神的に立ち直りたい、との一心で教会に被害を申告したが、第三者調査委員会による調査報告は「申告行為は存在した可能性が高い」としたものの、教区や加害司祭は何の対応もせず、謝罪と損害賠償を求める提訴に踏み切らざるを得なかった。裁判所の勧告による和解協議でも、性的虐待の行為があったことを認めない教区の姿勢は変わらず、今回の決着まで3年3か月を要した。

 その間の裁判所での聴取でも、原告側証人の精神病理学者が「教区側の対応は原告のPTSD症と密接に関係している」などと証言したのに対し、被告仙台教区の代理人が「原告は、夫や義父母からのパワハラを受けていた…性的虐待をしたとする神父やその後の教区の対応だけとは言えない」としたり、元司教は原告、被告双方の代理人弁護士の尋問に「よく覚えていません」「分かりません」とあいまいな答えに終始。あげくに、教区事務局長として対応に当たっていたはずの司祭が傍聴席で居眠りをし、裁判長から「眠るなら法廷の外に出なさい」と異例ともいえる叱責を受けるなど、原告女性をさらに精神的に傷つけるような対応をしていた。

 法律によると「強制性交」の刑事の時効は15年、民事の時効は5年ないし20年とされている。幼少期あるいは青年期に被害を受けた場合、家族や知人に打ち明けることは難しく、まして公的機関に相談したり、訴えることは通常は極めて困難であり、司法当局に訴えるのに時間を要し、時効になる可能性が高い。事の性質から第三者の証言を得るのは難しく、物証も確保しておくことが至難であることから、刑事上の処罰を求めることは、長崎のケースを見ても、ほとんど不可能だ。

 まして、”聖職者主義”がいまだに支配的な日本の多くの教会で、訴えを起こすことは司祭、さらには司教と対峙する、教会の信者たちからも批判的な目で見られ、教会から離れることも覚悟せねばなららない。被告の教会側は、教区の予算で弁護士を雇えるが、原告側はそうした手続きに不慣れなうえ、費用も自分で負担せねばならない。つまり、被害者は、正当な裁きを求め、心の救いを得ようとしても、圧倒的に不利な立場に置かれている、ということだ。

 以上のことから引き出さる結論は、教会として、司教団として、被害者が司法に頼らざるところまで追い込まれないように、訴えを受けた事案に対して、公正、客観的な調査を行い、加害者とされる司祭などに真実を語らせ、それに基づいて加害者とされる司祭や、その人事・管理責任を持つ関係者に対する厳正な措置をとるようにすること。

 また、この過程で、被害を申告した人を精神的に傷つけないよう十分に配慮し、調査結果を公表し、さらに最も大事なことは、申告者に対して、十分な精神的ケアがされるようにし、司祭、信者によって温かく教会に受け入れられるようにすることだ。そのためには、現行のガイドラインの徹底的な見直し、具体的な体制の整備、そして何よりも、被害を受けたとされる人に寄り添い、その声に真摯に耳を傾け、心を癒やすことに努める姿勢を、教会関係者に徹底することだ。

 聖職者による性的虐待問題が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、11月28日にフランス・ナント教区の聖職者による性的虐待被害者のグループと面会された際、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができる」と語られている。「受け手」としての日本の教会、そして何より司教団は、この言葉をかみしめる必要があるだろう。

(「カトリック・あい」南條俊二)

2023年12月28日

・司祭の性的暴行裁判で仙台地裁が和解勧告-教区が被害女性に謝罪、解決金330万円支払う…で決着したが

(2023.12.27  カトリック・あい)

 仙台市の女性が、カトリック仙台教区の司祭から性的暴行を受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症、その後の教区関係者の不適切な対応、発言もあって多大な精神的苦痛を受けたとして、同教区などに謝罪と計5100万円の損害賠償を求めていた訴訟について、仙台地方裁判所は20日、被告の仙台教区などに対して、原告への謝罪、バチカンに出した報告書の内容の一部の取り消しと原告への謝罪、解決金330万円の支払いなどの最終和解条項による和解を勧告し、原告、被告双方が受け入れた。原告が2016年に仙台教区に被害を申告してから9年、20209月に仙台地裁に訴訟を起こしてから33か月かかって、ようやく当面の決着を見たことになる。

 仙台地裁が勧告した和解条項では、被告のカトリック仙台教区に対して、「教区の第三者調査委員会から『被害申告行為は存在した可能性が高い』と判断されたことを重く受け止め、謝罪」するとともに、「教会施設内において、聖職者と信者との間でおいて不適切な性的言動、性的ハラスメント、および性的暴行・虐待がなされるなどの内容につき、その防止に努め、信者からの申告があった場合には、今回の件を教訓として、速やかに調査を行い、事実に基づき適切な措置をとることを約束する」(以上、原文のまま)と規定。

 また、被告の仙台教区などに対して、「被告が第三者調査委員会の結論を原告に伝える際の言動が、性的被害を訴えている原告の心情に対する配慮が不足していたことを認め、謝罪する」こと。さらに、「被告は、医師の診断書もないのに(「カトリックあい」注=駐日バチカン)大使館を通しての(同注=バチカンの)福音宣教省への報告書に『×××』『△△△』と記載したこと」を取り上げ、この記載を取り消し、謝罪し、その旨を福音宣教省へも報告し、その報告文書の写しを原告に交付すること」としている。

 そのうえで仙台教区は「魂の救済を図るべき宗教団体であること」に鑑み、元信者である原告が「神父による性的加害行為を申告していること」を考慮して、原告に対し、本件解決金として330万円の支払い義務があることと認める、としている。

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 原告の女性は1977年当時、気仙沼カトリック教会の司祭から性的暴行を受けたが、若年だったことや当時の教会や社会の状況から、誰にも相談もできずに苦しみ続け、2016年に仙台教区の相談窓口に被害を申告。仙台教区が設置した第三者調査委員会は「(性的被害が)存在した可能性が高い」と結論付ける報告書をまとめたものの、教区や加害者とされる司祭は被害者に対し謝罪はおろか、ほとんど対応していなかった。

 このため女性は20209月、仙台地方裁判所に、加害者司祭を「被害者原告に対する性的虐待の直接的な加害者」、司教(当時)を「加害者を指導・監督すべき仙台教区裁治権者としての注意義務違反、原告被害者への不適切な発言および対応による(注*PTSD発症など)二次被害の加害者」、カトリック仙台教区を「信徒への安全配慮義務違反、本件事案の調査義務違反、被害事実の隠蔽、加害者への適切な処分ならびに被害者への適切な対応についての不作為があった」として、三者を相手取り、損賠賠償を求める民事訴訟を起こした。

 裁判中に、仙台地裁側から原告、被告双方に対し、和解のための話し合いに入るよう提案があり、双方が同意して、和解に向けた手続きが始まりったものの、初回の聴取では、原告は和解条件として「司教が公的な場での真摯な謝罪」「聖職者による性的虐待の再発防止に、外部機関の点検を受けつつ、教区全体で具体的に取り組む」「原告に対する教区の信徒たちの誤解を解くため、原告が虐待事件の真実を語る場を設ける」などを求めた。

 だが、教区側は和解条件の”素案”として、「この訴訟は、原告が被告から性的侵害行為を受けたとして提起され、被告らはその事実を全面的に否認している」とし、一方で、「だが、教区が設置した第三者調査委員会が、原告の主張する性的侵害行為は『存在した可能性が高い』と判断しているので、『事案の性格に鑑みて』和解する」「第三者調査委員会の報告書が出されたのに対して、速やかに対応すべき点で欠けるところがあったことを謝罪する」「被告の仙台教区は、原告が教区の元信者であって、その信者が『性的侵害行為』の申告を行ったことを考慮して『解決金』を支払う」ことを提示して、冒頭からかみ合わなかった。

 このため第1次和解協議は不調に終わって再び法廷での審理が始まり、今年9月に行われた審理では、原告側証人の精神病理学者が「教区側の対応は原告のPTSD症と密接に関係している」などと証言したのに対し、被告仙台教区の代理人弁護士は「原告は、夫や義父母からのパワハラを受けていた…性的虐待をしたとする神父やその後の教区の対応だけとは言えない」と、原告被害者の神経を逆なでするような反論を行った。被告側証人として出廷した元司教は、原告、被告双方の代理人弁護士の尋問に「よく覚えていません」「分かりません」とあいまいな答えに終始する一方、自身が総額60万円を原告に渡送金したことだけは「自分が私的に出費したもの」「返金されなくても構わないと思った」と原告に不利になりそうな事柄だけは明言するという、不可解な対応だったが、その後、裁判長の勧告による和解協議に戻っていた。

 そのような経過を経ての今回の和解について、現地の日刊紙、河北新報によると、仙台市内で20日に記者会見した原告女性の代理人弁護士は「司教区側は、全面的には加害を認めなかった」と指摘しつつ、「性的暴行などの防止が約束され、被害者救済の面で意義がある」と評価。司教区側の代理人弁護士は同紙の取材に、「『被害があった可能性が高い』と判断した第三者委の調査結果を受け止め、謝罪する」と述べている。

 

2023年12月27日

・死後13年経過したスイスの司教が、性的虐待で訴えられ、後任司教が「被害者の苦しみを放置しないのは教会の責任」と言明

(2023.12.15 カトリック・あい)

 有力国際カトリック・ニュース・メディアのLa Croix が14日報じたところによると、2010年に亡くなったスイス・ローザンヌの故ベルナール・ジェヌー司教が女性に対する性的虐待で訴えられていることが明らかになった。

 同司教の後任教区長を務めるシャルル・モレロー司教が11日、記者会見を開いて、この告発に信憑性があることを認めたもの。同司教は今月初めに、虐待を受けた女性から、19歳の時にジェヌー司教から繰り返し性的虐待を受けた、と告げられた。虐待は、ジュヌーがスイスのビュルに本部のあるCollège du Sudで哲学教授を務めていた時代(1976年から1994年)に起きたとされる。

 スイスのカトリック教会内での性的虐待はここ数週間で相次いで表面化しており、 スイスの司教団の委託でチューリッヒ大学が実施する教会関連の虐待に関する試験的なプロジェクトが去る9月に明らかにされて以来、多くの人々が被害者として名乗り出ている。モレロー司教は、「ジェヌー司教はもはや、この訴えに意見を表明することができないが、被害者の苦しみを放置しないのは教会の責任です」とし、この訴えに真摯に対応することを約束した。

 記者会見でモレロー司教は「私自身がCollège du Sudの学生だった時、ジェヌーが情熱的で温かく、学生を大切にする教師であり、時には女子生徒たちに寄り添う姿を見てきました」として遺憾の意を表明。また、被害者として訴えた女性は匿名を希望し、訴えが遅れたのは「これまで長い間、ジェヌーの”魔法”にかけられ、何が起こったのかを明らかにすることができなかった」という。ジェヌーは彼女の家族の親しい友人であり、彼女の教師でもあったが、「 10代の若さで、彼の”支配”に従うような関係になり、性的虐待を繰り返し受けるようになった」と説明している。

 モレロー司教は「彼女が私に会いに来たとき、彼女は非常に弱っていましたが、私に訴えたことで、重荷から解放されたようです」と語った。だが、新聞報道が、教会共同体内部で強い反発を引き起こした。

 なお、教会での性的虐待に関して、スイスのカトリック教会には、被害者の話を聞く委員会(CASCE)と、傾聴・調停・仲裁・賠償委員会(CECAR)が置かれており、被害者と思われる人々から証言を得る権限をローザンヌ教区から与えられている。

 なお、このニュースの詳細は: https://international.la-croix.com/news/ethics/swiss-bishop-accused-of-sex-abuse-13-years-after-his-death/18860へ。

 

 

2023年12月15日

・「性的虐待は神が与えられた人間性への裏切り、虐待への”沈黙”を打ち破る必要」ー教皇、仏西部ナントの被害者代表たちに

Meeting of the delegation from the Diocese of Nantes, FranceMeeting of the delegation from the Diocese of Nantes, France 

(2023.11.29  Crux Staff)

  教皇フランシスコが28日、聖マルタ館で、フランスのナント教区の聖職者の性的虐待被害者のグループと面会された。教皇は肺の炎症を引き起こす長引く細菌感染症に悩まされ、ここ数日間スケジュールを大幅に削減していたにもかかわらず、この面会の約束は守られた。

 教皇と性的虐待被害者たちの会見は、フランシスコが教皇在任期間中住んでいるカサ・サンタ・マルタのゲストハウスで行われた。 被害者たちには、聖ガブリエルのモンフォール兄弟修道会とナント教区の「認識と賠償委員会(CRR)」の司祭が同行した。面会は、被害者らが教皇庁未成年者保護委員会(PCPM)本部の当局者らと行った一連の会合に続いて行われた。 公式バチカンニュースウェブサイトは、PCPMとの会合を「地元の教会と会衆とともに追求する証言、記憶、予防の道に焦点を当て、聞き、学び、対話する瞬間」と呼んだ。

 教皇が面会の機会に書かれ、参加者に渡されたメッセージの中で、教皇は、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」ことを認められ、暴力や虐待による子どもの権利の破壊は、神から与えられた人間性への裏切りです」と強く批判された。

 バチカン放送によると、教皇はさらに、「私はPCPMに対し、私に代わってあなたがたの言葉に耳を傾け、『教会と地域社会から虐待を根絶する』という私たちの共通の決意をいっそう固め、鼓舞するために、あなたがたの証言を集めるように要請しました。虐待に対する”沈黙”を破るために、それぞれが自分の役割を果たし、共に努力してください」と要望。さらに、「被害者や生存者の声に耳を傾ける、という積極的かつ敬意を持った寛容さが受け手にあれば、この沈黙は打ち破ることができます」と被害者たちを励まされた。

  脆弱な状況にある成人の被害者が性的に虐待された事件に対する教皇の対応は、しばらくの間、精査されてきた。 元イエズス会のマルコ・ルプニク神父が、約30年にわたって20人近くの成人被害者(そのほとんどは信心深い女性)を性的に虐待したとして告発された事件の処理に関しては、ますます憂慮すべき詳細が明らかになり、この1年で監視が強化されている。 ルプニクが最初に訴追を免れたのは、山ほどの証拠があり、被告人が弁護する十分な機会があったにもかかわらず、教皇が裁判を可能にする公訴時効を解除しなかったためだった。

 その後、ルプニクはイエズス会を去り、故郷スロベニアで彼を良い地位の司祭として受け入れてくれる司教を見つけた。 ルプニクが引き続き公務を続けるというニュースに対するメディアの圧力とスロベニアの人々による強い抗議を受けて、教皇は10月下旬になって、ルプニクに対する捜査再開に同意された。 この”逆転”措置を説明する際、バチカンはルプニクの事件の処理における「重大な問題」を挙げ、それはPCPM によって教皇の注意を喚起したことによる、としていた。

2023年11月29日

☩教皇「女性に対する暴力という毒草の撲滅を」-25日の国連・女性に対する暴力をなくす国際デーに

Demonstration in Madrid on the International Day for the Elimination of Violence Against WomenDemonstration in Madrid on the International Day for the Elimination of Violence Against Women  (ANSA)

    11月25日は国連が定めた「女性と少女に対する暴力をなくすための国際デー」だが、教皇フランシスコは同日、X(旧ツイッター)への投稿で、「女性に対する暴力は、私たちの社会を悩ませる有毒な雑草。その根っこから引き抜かれなければなりません」と訴え、根絶のために、すべての人の尊厳を中心に置く教育的な措置をとるよう、世界の人々に呼び掛けられた。

 教皇は 「毒草は、偏見と不正義の土壌で育ちます。 こうした問題には、その人をその尊厳とともに中心に据える教育的措置で対抗しなければならない」と述べられた。

 女性と少女たちへの 暴力を防ぐ世界的な行動を呼びかける この国際デーは、国連総会の決議により、1981 年から毎年開かれている。16 日間の世界的な活動の始まりを示すこの記念日は、意識を高め、権利擁護を促進し、課題や課題について議論する機会を設けるための世界的な行動を呼びかけている。

  女性と少女に対する暴力は、依然として世界で最も蔓延し、蔓延している人権侵害の 1 つだ。 それは家族内で行われることも多く、11分ごとに女性がパートナーや家族によって殺害されているといわれる。 国連の最新データによると、世界中で7億人を超える女性(ほぼ3人に1人)が、生涯に少なくとも一度は身体的、あるいは性的な関係にあるなパートナーからの暴力、パートナー以外の性的暴力、またはその両方を受けている。

  この現象は職場やSNSによる仮想空間などさまざまな環境で激化しており、新型コロナの世界的大感染、世界各地で頻発する紛争、気候変動によってさらに悪化している。 女性と少女は、性暴力が戦争の武器として利用され、武力紛争の中で難民キャンプで特に弱い立場に置かれている。

「性暴力との戦いは、家庭や教会内の問題への認識から始まる」バチカン「いのち・信徒・家庭省」長官も声明

  バチカンの「いのち・信徒・家庭省」のケビン・ファレル長官は25日発表して声明で、性暴力と闘い、予防し、被害者に支援を提供するカトリック教会の取り組みの必要を改めて強調。 「教会には、暴力や搾取の被害者である女性に寄り添い続ける使命がある。具体的には、暴力の被害者に安全な住居を提供することから、精神的、精神的な支援に至るまで、さまざまな方法を取らればなりません。被害者自身がトラウマを克服し、虐待を報告できるよう支援する必要があります」 と、世界の教会関係者に要請した。

 またファレル長官は、重要な対応の一つは、女性を尊厳を大切にする教育にある、として、「それは家庭やキリスト教共同体内の問題を認識することから始まります。感情、愛情、他者への敬意、そして何よりも自分自身の人生について人々を教育することは、女性に対する暴力を防ぐために非常に必要であり、福音に強く深く根ざしている」と強調。世界中のすべての教会に対し、「家族、若者、婚約中のカップル、地域社会に女性に対する暴力を防止することを目的とした教育経路を提供する」行動を起こすよう促し、「これは司牧の責任であり、『平和の手段』となるという教会の使命です」と結論づけた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年11月26日