・イタリアの司教たちが性的虐待被害者と家族と面談、「対応不十分」と被害者団体(Crux)

 (写真は、イタリアの性的虐待被害者団体Rete L’ABUSO の創立者、フランチェスコ・ザナルディ氏と、「紫のベンチ」設置第一号(サボナ市で、Credit: Rete L’ABUSO)
founder Francesco Zanardi poses in front of a purple bench installed in Savona, Italy, on Feb. 24, 2024, commemorating victims of clerical sexual abuse

(2024.3.1 ) Crux     Senior Correspondent  Elise Ann Allen 

 CEI会長のマッテオ・ズッピ枢機卿は同日の声明で、「被害者や被害者の家族が経験した痛み、苦しみを深く理解するために、彼らとの真の交わりを築くために、そして、教会に何が求められているのかを知るために、虐待を受けた人々の声を聴くことが、欠かすことができません」と述べた。

 そして、「私たちに何が欠けているのか? 改善するには何ができるのか?などの問いへの答えを引き出すことで、私たちは、聖虐待の予防と被害者保護に向けて、日々前進することが可能になる」と強調した。

 この日の被害者たちとの面談には、ズッピ会長はじめ、CEI事務局長のカリアリのジュゼッペ・バトゥーリ大司教、未成年者保護担当部長のロレンツォ・ギッツォーニ大司教が出席し、虐待被害者とその家族のグループの話を聞いた。

 約3時間にわたって行われた面談について、ズッピ会長の声明は、「分かち合いと対話の中で、この問題への対応について、改善し、強化しなければならない重要な要素を引き出すことができた」と指摘。

 CEIのスポークスマン、ヴィンチェンツォ・コラード氏は、「昨年5月に続いて行われた今回の面談で、司教たちと被害者たちが体験を共有するとともに、こうした出来事が繰り返されないよう、 子どもたちと弱い立場にある大人を守るために、教会の組織や組織が一層、努力していくことへの希望を共有する重要な機会となりました」とし、「被害者の声に耳を傾け、被害者を教会に改めて進んで迎え入れることは、教会にとって重要な行動方針です」と述べた。

 これまで、イタリアの教会は、この問題に教会全体で取り組み、被害者に補償するために十分な努力をしていない、として被害者や援護団体から広く非難されてきた。CEIは2022年11月、聖職者による性的虐待への対応について初の報告書を発表し、2020年から2021年の間に特定された虐待案件は、訴えが89件、加害者として68人が挙げられた。89件のうち半数強が、最近なされた、あるいは現在なされているもの、という。ただ、虐待の形態、虐待者と被害者の両方の年齢と性別に関するいくつかの一般的な説明以外の、虐待に関与した司祭個人に関する詳細、訴訟の内容―民事訴訟あるいは教会訴訟か、 裁判が始まっているのか、結審しているなら、結果がどうなったのかなど、詳細は明らかにされていない。

 この報告が発表される以前に性的虐待被害者支援団体のネットワーク#ItalyChurchTooは、CEIに対して、他の欧米諸国の教会が実施しているように、詳細な内容の分析結果を公にするよう、要求していた。米国、アイルランド、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガルなどの司教協議会は、独立第三者機関と契約して、数十年前に遡る虐待に関する全国規模の調査を行い、膨大な数の性的虐待の加害者と被害者双方に関する具体的な調査分析をした報告書を出しているが、今回の報告書の内容はそれに程遠い。イタリア以外の国々の教区では、虐待の疑いで告発された司祭の名前の公表が始まっているが、イタリアのどの教区もそのような措置をとっていない。

  イタリアの主要被害者団体Rete L’Abuso(虐待ネットワーク)を設立・運営するフランチェスコ・ザナルディ氏は自身も聖職者による性的虐待の被害者だが、今回の報告書について、「わずか2年間で虐待者が68人という数字は、問題があることを示しているが、対象期間が短すぎ、多くのデータが除外されている。はっきり言って、この報告書は、恥ずかしいほど不十分だ」と批判した。。 

 イタリアの港湾都市サボナで2月24日、未成年者や弱い立場の成人に対する性的虐待に注意を促す「紫のベンチ」の第一号の設置記念式典が行われたが、出席した ザナルディ氏はあいさつで、サボナ市における虐待被害者の連帯や危険にさらされている人々を守る取り組みを称賛しつつ、「さらになすべきことは多くあります」と語った。「紫のベンチ」設置運動は、Rete L’Abuso、聖職者の虐待正義を終わらせるプロジェクト、イタリアの教会 Too Italian 調整プロジェクトが共同主催しているもので、 今後、数週間以内に、シチリア島のエンナやローマなどイタリア全土の都市でもベンチ設置が予定されている。

 式典後にRete L’Abusoとして発表した声明は、「このこのベンチは、大人たち、市民社会が、未成年者や弱者に対する虐待に目を閉じず、見て見ぬふりをせず、具体的に関与する呼びかけとして機能する必要がある。イタリアは他国に比べ、虐待がもたらす危機に対処において、はるかに遅れている。その原因の一つは、私たちそうしないからだ… 虐待の予防と広報を通じて、まず、子供たち、孫たち、愛する人たち、として自分自身を守らなければならないのです」とネットワークは述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年3月2日