・「ペルーの司教が複数の女性と不倫」との告発、バチカンが調査(CRUX)

(2024.7.22 Crux  Contributor   Eduardo Campos Lima)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年7月23日

・「パリ外国宣教会の釈明文に疑義」ー帯広での性的虐待被害者の代理人弁護士が勝谷・札幌司教に書簡

(2024.7.22 カトリック・あい)

 日本在住の仏人男性が札幌教区の帯広教会で、パリ外国宣教会の司祭から繰り返し性的虐待をされたとされる問題で、訴えを聴いた札幌教区長の勝谷司教が、同修道会に対して「速やかな情報公開」を求め、同修道会本部から司教と教区関係者あてに「性的虐待の訴えをバチカン教理省と仏司法当局に報告、捜査中。被害者に寄り添い、札幌司教と日本の教会のお詫びする」との釈明文が送られてきていた。

 だが、パリ外国宣教会は被害者に「寄り添っている」事実はないなど、この釈明文には疑義がある、との見解が、被害を訴えているB氏の仏リヨン在住の代理人弁護士から勝谷司教あてに送られた文書で明らかになった。なお、札幌教区は、パリ外国宣教会からの文書は日本語訳にして公開しているが、この文書は22日現在も公開していない。

 代理人弁護士から勝谷司教あてに送られた文書は以下の通り。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

札幌司教区ベルナルド勝谷太治司教様

 私は、フィリップ・リッタースハウス神父から性暴力を受けたB氏のフランス人弁護士です。

 B氏は、2024年4月8日付のパリ外国宣教会(MEP)からの通知文書へ応答したいと望んでいます。この文書は彼の状況に言及していますが、事実に反する情報が記されています。彼はあなたに対し、以下のプレスリリースを、MEP文書と同様に公表することを求めています。

―――――
パリ外国宣教会(MEP)の司祭による犯罪性のある性暴力の被害者であるB氏の訴えに関して、MEPは2024年4月8日付けで、札幌司教と教区関係者あてに文書を送りました。MEPはこの文書で「B氏に寄り添ってきた」と述べていますが、B氏本人は異議を唱えています。B氏はフランスでは障害者と同様に社会的弱者と見られています。

 加害者のフランス人司祭は当時日本に在留しており、事件は日本で起きたにもかかわらず、MEPは彼を離日させたことに責任があります。被害者であるB氏は妻と子どもとともに日本に住んでいましたが、MEPは彼に対してもフランスへの帰国を求めました。MEPは日本の当局にこの状況を報告しませんでした。

 フランスに一時帰国したB氏はMEPから事情を聴かれましたが、その前後にMEPからは何の支援もありませんでした。MEPからB氏に対する支援はなく、これは司祭活動に関する倫理規範に反するものであり、B氏はフランスでトラウマ状態のなか、医療的、法的、社会的に必要な手立てをたった一人で取らねばなりませんでした。MEPは旅費(航空運賃)の全額ではなく一部しか負担しませんでした。

MEPがB氏に紹介した「The Commission for Recognition and Reparation(認定・賠償委員会)」は、B氏の件に対応できる機関ではありませんでした。

現在、当該司祭はMEPの監視を受けておらず、この件で取られた措置は被害者に一切伝えられていません。MEPは外部監査の実施を公表していますが、それは、MEPの複数の指導者や司祭が性暴力に関与したことや、そうした性暴力を糾弾しなかった過ちを訴えられているからです。

B氏は、MEPが札幌教区とその信者に事態の深刻さを伝えず、被害者を日本で支援しようとしなかったことを遺憾に思っています。MEPは監査開始から1年半後に札幌教区に対し、信者から証言が得られるどうか尋ねていますが、この監査は終わりに近づいています。性暴力の証言は日本の司法当局にまず報告されなければならず、次いで補完的・副次的にGCPS(監査を委託された企業)にも報告されるべきです。その順序が逆であってはならないのです。
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Nadia DEBBACHE

120 rue de seze 69006 LYON Tel: 04.78.62.39.02 Fax: 04.78.24.88.54 Debbache.avocat@club-internet.f

 

パリ外国宣教会から札幌教区ベルナルド勝谷司教様と信徒の皆様へ

フランス人の成人男性 T 氏が、同じフランス人である本会の司祭 P 神父を2022年7
月に不同意性交をしたと告発しました。その時までP 神父は札幌教区で奉仕していました。
この重大な告発に対して、パリ外国宣教会(以降 MEP と省略)は、両者から事情を聴き
ました。P 神父は断固としてこの告発内容を否定しています。
両者ともフランス人であったため、2022年8月2日、MEP はフランスの司法当局に
この件を報告しました。フランス警察の捜査はいまだ行われており、完了しておりません。
MEP は、この件をバチカンの教理と信仰省にも報告しました。また、フランスの教会刑
事裁判所に委託された教会法に基づく調査を開始しました。
MEP は、T 氏の訴えに衝撃を受け、この件で傷ついた氏に寄り添ってまいりました。私
たちは、この件で札幌教区の勝谷司教様とご信者の皆様が傷つかれたことに困惑し、申し訳
なく思い、司教様と日本のカトリック教会にお詫び申し上げます。
フランス警察と教会裁判所で調査は現在進行中なので、結果が出るまでは何も動くこと
ができません。調査の秘密は尊重されなければなりません。裁判所の裁量に委ねられなけれ
ばなりません。
この調査が続いている間、P 神父は MEP によって待機処分を受けています。
数人の MEP の長上たちと、さらに数人の司祭は、それぞれたいへん多くの時間を T 氏
の話を聞くことに費やしました。また、フランスの教会の性的被害者支援の団体の専門の弁
護士と心理学者を彼に紹介しました。
MEP はまた、T 氏がフランスに来て話をするための旅費、滞在費に必要と思われる額(T
氏の求める額には達しませんでしたが)を負担しました。
MEP は、必要な措置を講じるため、MEP の性暴力問題について外部監査を実施すること
を決定したことをお知らせします。 MEP は、英国の独立系企業 GCPS Consulting にこの
監査の実施を委任しました。 (https://gcps.consulting)。 この監査は 2024 年 12 月に終
了の予定です。
MEP の会員によって行われた可能性のある性的暴力を懸念して情報を提供したい方は、
GCPS 監査チームに次のアドレスから連絡できます: mep_review@gcps.consulting
この問題に関しては、GCPS への連絡をお願いしたいのですが、当然ながら、法に触れ
る懸念のある問題であれば、該当する管轄部署に問い合わせることを妨げるものではあり
ません。
パリ外国宣教会、パリ、2024 年 4 月 8 日
media-communication@missionsetrangeres.com

 

2024 年 3 月 19 日 札幌教区の皆様 カトリック札幌教区 司教 勝 谷 太 治 「リ ッ タースハウス ・フィ リ ップ神父に係る報告」

一昨年 、 フィ リ ップ神父が所属するパ リ外国宣教会の指示に よ り急遽帰国 した こ とに
ついて皆様にご報告いた します。
フィ リ ップ神父はフランス人男性 T 氏より 、不同意性交で告発 され、現在フランスで調
査中 です 。 まだ裁判等は開始 され てお らず 、今後 ど う な るかは不明 です 。今回の件に
ついて札幌司教区は フ ィ リ ッ プ神父の帰国後その情報を入手 し 、パ リ外国宣教会に対
して報告を求めてまい りま したが、何 ら具体的な回答や情報開示はな く 、札幌司教区 と
して明確な事実確認ができないまま今日に至っております。
T 氏 とは数回の面会の他、 メールで何度も対話 してまいりま した。T 氏は本件につい
ての公表を希望 されてお りますが 、札幌司教区 と しては事実確認が一切できない状況
での公表については控えてまい りま した。 しか し T 氏の心痛苦 しみを思 う時、経過につ
いてあ りのままを教区信徒の皆様へお伝えすべき と判断致 しま した。
T 氏はフ ィ リ ップ神父が着任 した小教区を訪問 し、ご自身の現状を訴えられてお りま
す 。信徒の皆様におかれ ま しては 、前述の経過を ご理解いただ き 、対応にお困 りの際
には札幌司教区本部事務局へご連絡 くだ さいますよ うお願いいた します。
なお、札幌司教区 としては今後も T 氏に寄り添いながら、東京教会管区 とも連携 し、
パリ外国宣教会に対 して速やかな情報公開を求めていきたい と考えてお ります。

2024年7月22日

・ポルトガルの性的虐待被害者たちが、司教団に「被害の”上塗り”を止める」よう訴え(CRUX)

(2024.7.15 Crux   Contributor Eduardo Campos Lima)

 サンパウロ発 – ポルトガルの聖職者による性的虐待の被害者で構成する団体が14日、ポルトガルの司教協議会(CEP)に対し、現在の被害者の報告の取り扱いと補償についての教会のやり方について苦情を申し立て、司教たちに「被害をさらに重ねるような行為」をやめるよう要求した。

 数十人の被害者で構成する団体「Associação Coração Silenciado」(沈黙の心の会=ACS)は10日にコインブラでCEPとの会合を持ったが、創設者の1人であるアントニオ・グロッソ氏はCruxのインタビューに、ACSがCEPに対し、教会に性的虐待をもたらしている危機の管理について懸念を表明した、と次のように語った。

 「私たちは彼らと話をしました。彼らが態度を変えてくれることを願っています。新聞の見出しに、以上の言葉は必要ありません―『彼らには積極的に行動してほしい』」

 教会での性的虐待の報告に関して、「ポルトガルの司教団は、何年も、何もしていない」と批判されてきたが、2021年になって、スキャンダルに関する真剣な調査を要求するカトリック信徒たちが組織した運動の強い圧力を受け、1950年から現在までの教会での虐待事件を調査する独立委員会の設置を決めた。

 委員会は、精神医学や司法制度など、さまざまな分野の専門家によって構成され、さまざまな地域や年齢の被害者から500件を超える訴えをもとにまとめた最終報告書で、「1950年からこれまでにポルトガルの教会関係で少なくとも4815人にのぼる性的虐待の被害者がいた」と結論付けた。

 「おそらく司教団は、これほど多くの被害者が声を上げ、自分たちの受けた虐待について語るとは想像していなかったのでしょう。テレビ局、特にSICやRTPなどのポルトガルの大手ネットワークが被害者にインタビューし、大衆に彼らの事件を伝えることも予想していなかったに違いない」と、司教団のこの問題に対する無神経ぶりを強く非難している。

 他の関係者も、「ポルトガルの司教団は教会の虐待問題に対処するための具体的な措置を講じる意思がなく、委員会の報告書は(虐待問題の解決に)何の影響も及ぼさない、という印象を与えた」と語っていた。

 その後、CEPは、昨年末に、被害報告を受け被害者に寄り添って支援するとともに虐待再発の防止に努める組織として「Grupo Vita」を設立し、今年5月に、「98人の被害者から相談があり、うち18人は心理的な治療を受け、32人は金銭的補償を求めている」と発表。また、その一か月前の4月には、「補償を希望するすべての被害者は、12月までに正式な要求を、どのような虐待を受けたかの説明と共に文書でGrupo Vitaに届け出る必要がある」と公表している。

 このような一方で、マスコミは虐待事件を報道し続け、グロッソ氏ら被害者たちは、他の教会による虐待の被害を受けた人々を集め、自分たちの目的のために戦うための会として、昨夏にACSを設立、活動しており、これまでに新たに数十人の被害者から相談を受けているという。

 ACSは、CEPの役員との面談を要請して実現し、14日の面談で、CEP会長のホセ・オルネラス司教から、2022年から2023年の間に独立調査委員会に提出された報告を識別するために使用されていたコードが破棄され、それは、「個人情報の漏洩を防ぐためだった」と説明を受けた。

 グロッソ氏は、「要するに、独立調査委員会に自分の被害を報告し、補償を希望していた被害者は、受けた虐待などを、Grupo Vitaに、改めて説明しなければならない、ということです」と指摘。「2022年から2023年の間に独立調査委員会に訴えた被害者たちは、具体的な対応をしてくれるものと思っていたのですが、何も得られるものはなかった、と思い知らされたのです」と述べ、「誰もが何年も前に受けた虐待を繰り返し思い出したくありません。それは辛いこと。再び被害者になれ、と言っているようなものです」と司教団の誠実さに欠けた態度を批判した。

 またCEPは、「それぞれの性的虐待の被害について吟味してから、個別に金銭的補償を決定する」ことを計画しているが、ACSはこれに強く反対、グロッソ氏は、「彼らは、被害者一人一人の苦しみの度合いをどうやって測るつもりなのでしょうか? 秤でですか。巻尺でですか。 まったく馬鹿にしている」と怒りをあらわにしている。

 ACSは、被害者個別に異なる補償額を決めるのは、被害者たちを”分断”する行為であり、教会が持つべき「友愛と平等」に反すると批判。「CEPは補償額を各被害者同一にすべきだ」と主張している。

 またCEPに対して、「テレビなどを通じて、すべての被害者が補償金を請求できるように、請求先の電子メールと電話番号を全国に広報する」ように要請。CEPは、ACSの一連の要求について検討を約束した、という。

 「司教たちが(言葉だけの)謝罪では十分ではないことを理解することが重要です。彼らは具体的に行動せねばならないが、被害者は”物乞い”ではありません。金を払えば済む、と言っているわけではない。私たち被害者に真剣に顔を向けるべきなのです」とグロッソ氏は強調している。

2024年7月19日

・フランスの故人の“聖人”神父が「数人の女性を性的虐待した」と本人が設立した福祉団体が報告書

(Photo by Studio Harcourt / CC BY 3.0)

(2024.7.18   La Croix  Matthieu Lasserre)

 フランスで社会的弱者への救済活動に尽力し、多くの人から敬愛されている故アベ・ピエール神父が、実は1970年代末から2005年にかけて7人の女性に性的虐待やセクハラを繰り返していた―同神父が創設した社会福祉団体「 Emmaus International」が17日発表した調査報告書で明らかにしたもので、他にも被害者がいるとみられ、”聖人”の裏の顔が明らかにされたことでフランスのカトリック教会や社会は衝撃を受けている。 Emmaus は、さらに被害者の証言を集めるため、被害者ホットライン(☎+33.1.89.96.01.53 (voicemail with callback) Eメール at emmaus@groupe-egae.fr.)を開設した。

 ”事件”の発端は、2023年6月に、フランスのある女性が、 Emmaus のリーダーに連絡を取り、未成年だった1970年代後半に、アンリ・グルエス(通称ピエール神父)から(性的虐待を含む)”深刻な行為”を受けたと告白したのが始めり。その3か月後、Emmausの代表者たちはその女性と面会して事情を聴いたうえで、フランスの性差別および性的暴力との戦いで主導的な役割を果たしているカロリーヌ・ドゥ・ハース氏が率いるエガエ社に調査を依頼、同社は2か月の作業と12回の関係者とのインタビューなどをもとに調査報告書をまとめ、Emmaus Internationalが7月17日に発表した。

 調査報告書では、 8ページにわたって、2007年に亡くなったピエール神父の被害者とされる7人からの証言の抜粋がまとめられている。匿名希望の彼女たちの証言で明らかにされた神父の問題行為は、1970年代後半から2005年までの約30年間にわたり、7人のうち6人の女性が性的暴行と判断される神父の行為、もう一人は、神父の性差別的な発言や不快な勧いについて語っている。

 証言した7人のうち1人は、「16歳から17歳にかけて、自分より50歳近く年上のピエール神父が、両親の招きで自宅を定期的に訪れた際、胸を何度も触られ、さらに1982年、成人となった自分がイタリア旅行から戻り、あいさつした際に、いきなり強引に(彼女の)口に舌を入れました」と述べ、さらに「1980年代後半に自宅に来た際には、神父から『一緒にベッドに入る』よう要求された」と語った。この件では、神父は存命中の2003年に、父親の前で謝罪した、という。

 ほかの女性の証言では、ピエール神父は「オフィス」「階段の下」「ホテルの部屋」など、人目に付きにくい場所と瞬間を利用して被害者に近づき、話をしている間に、”行為”に及ぶことが多く、ある女性は、「話をしている間に、私の左胸を愛撫し始めました… 1977年から1980年の間のことです。さらに 12年後に会った際には「あいさつをしようと手を伸ばした時、神父は私を窓の方に引っ張ろうとしました。私は『神父様、やめて』と繰り返し拒否し、彼は立ち去りました」と述べた。

 他の3人の女性は、1995年から2005年の間に、同意もしないのに胸を触られ、時には、それらの行為の後に、また会おうと誘われることもあり、「手紙を寄こしたり、電話をかけてきました。『あなたに会いたい』という内容です… 1、2か月後には、言ってこなくなりました」と1人の女性は説明した。

 また、この報告書は、ピエール神父は、自分の行動の違法性を自覚し、女性たちが断固として拒否したときに止めるべきタイミングを知っていた、とも書いているが、それでも、女性たちはこの神父の行動にショックを受けた。「私は自分を守ることに慣れています。でも相手は、神(の代理人)です。神があなたにそんなことをしたら、どうするでしょう?」とある女性は語っている。

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 ピエール神父は、第二次大戦中、ユダヤ人を保護し、レジスタンス組織に参加した元カプチン会の修道士だった。最も貧しく最も疎外された人々を助けることに生涯を捧げ、教会を超えて、多くのフランス人の間で幅広い名声を得た。1954年には厳冬の中でラジオ放送で「友よ、助けて!」と叫び、国民の支持を得て、多くのホームレスを凍死から救った。 その後、メディアの関心の対象から遠ざかっていたが、30年後、「新たな貧困層」、つまり不法移民の擁護者となり、「フランスのお気に入りの人物」に16回選ばれ、そのオーラは数十年にわたってフランス社会に付きまとった。

 Emmaus から調査を受託したエガエ社のドゥ・ハース氏は、そうした神父の名声が、彼が犯したとされる暴行事件についての沈黙を長引かせた理由について、「女性たちは、自分たちの証言が社会に与える影響を認識していました。そして、被告人がその献身によって評価され、崇拝さえされている場合、その同一人物が犯した行為を信じてもらうことの難しさを、われわれも認識している」と説明した。

 ただし、この報告書は、ピエール神父のいくつかの暗い部分が明らかにしたが、調査を被害者の証言を集めることに限定し、神父の(心身の)健康状態、教会での地位、当時の社会的地位に関する文脈などに踏み込んだ調査はなく、 「調査の狙いは、事件の性質を特定し、その範囲を推定することだった」とデ・ハース氏は述べた。

 また、主な関係者が亡くなっているため、女性たちの証言の“反証”をとることが困難であり、一部の証言は表面的なものにとどまり、事件の性質を完全には捉えていない。一方で、集められた証言は、ピエール神父が65歳の頃のものであり、今後のさらなる調査で、それ以前の問題行為が浮上する可能性が高い。

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 ピエール神父は、人生の終わりに、貞操の誓いを破ったことを認めた。2005年出版の本人のインタビュー集で、「私は性欲を経験し、その非常にまれな満足感を味わいました」と述べ、いくつかの伝記には、彼がメディアの有名人になったことで「一部の女性から崇拝されいた」ことが記されている。20年にわたって彼の知人だったピエール・ルネル氏はLa Croixに、「それはほとんど耐え難いものでした。女性たちは彼のカソックやベレー帽にキスをしました… しかし、20年間、彼が女性に対して不適切なジェスチャーをするのを見たことはありません。一度も!それでも、私は長期間、時には4、5年間、毎日彼を追いかけました!」と語った。

 1957年、痛みを伴うヘルニアを患い、思い病気で働きすぎだったピエール神父は、スイスの病院に入り、公式には「回復のため」にEmmausの指導者から外された、とされているが、歴史家アクセル・ブロディエ・ドリノ氏が2009年に書いた伝記によると、彼が解任された理由は、彼の「貞操違反」や「軽率な行動」、その他の「失態」が世間に知れ渡れば「スキャンダルになってしまう」という恐れからだった」と言い、仏国立科学研究センター(CNRS)の研究員アクセル・ブロディエ・ドリノ氏は、「彼は、女性に対して抑えきれない衝動を持っていました。相手の同意の問題が今のようにまったく理解されていなかったとしても、少数の人々はそのことを知っていました」と説明した。

 ある話は、神父の、以上で述べたことよりも”深刻な行為”をした可能性を示している。エガエ社が行ったインタビューで、ある人物が「1950年代か1960年代に”事件”を目撃した」ことを認めている。ピエール神父は女性とボートに乗っていて、「彼女に飛びかかった」というのだ。「それは彼の性格の一部でした。私たちは被害を最小限に抑えようとしました」と言う。

 Emmausのメンバーの間では、ピエール神父の”行動”は知られていた。「それは1回だけの”事件”ではありませんでした… エガエ社が面接したある人物が、そう言っています…』私たちは『彼が落ち着いた、(もう問題行動を)繰り返さない思っていました」、また「当時のEmmausの職員たちは、女性の場合、ピエール神父と2人きりで会わないように、指示されていた、と説明している」と報告書は述べている。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.
2024年7月19日

・性暴力の被害者が神言会に損害賠償求める裁判で、被告側は性的虐待をしたとされる司祭を「補助参加人」に

(2024.7.17 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が「外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかった」として司祭(加害当時)が所属していた修道会、神言会(日本管区の本部・名古屋市)に損害賠償を求めた裁判の第4回口頭弁論が17日、東京地方裁判所第615法廷で、原告・田中時枝さん(東京教区信徒)の支援者たち約50人が傍聴席を埋める中で行われた。

 神言会側代理人弁護士は(神言会司祭だったヴァルガス・F.O.サビエルによる被害者への性的虐待行為を)これまで「否認」していたが、さらに前回5月の口頭弁論で、「不知(知らない)ではない」と言明、さらに今回、準備書面に、「虐待行為があったとする原告の主張は虚偽」という内容のバルガス本人の言葉まで加えられた、という。

 被告側は、当事者である神言会の代表は裁判当初から今回に至るまで出廷せず、代理人弁護士のみの出廷が続いているが、今回は、新たにバルガスを「補助参加人」としたうえ、その代理人弁護士2名が加わった。

 このような被告神言会側の対応に、原告代理人の秋田一惠弁護士は裁判後の支援者の集会で、「私たちが訴えているのは、神言会が『適切な対応を取らなかった』ことであるにもかかわらず、それに反論せずに、『否認』し続け、さらに、ヴァルガスがまだ何の答弁もしていない前に、ヴァルガスに成り代わって『当人は性的虐待をしていない』と被告神言会が主張したり、ヴァルガスが原告を中傷していた内容まで法的主張として準備書面上で述べるのは、原告の心を二重、三重に傷つける行為以外の何ものでもない」と、修道会としての誠意を欠いた姿勢を強く批判。

 さらに、「信者から告解を聴き、キリストに代わって赦しを与える、という司祭としての重要な権能を悪用して、性的虐待行為を繰り返したことについて、ヴァルガスが所属していた神言会は、責任がない、というのはそもそも、理解できない」と言明。

 「『使用責任(民法715条)は争わない』としながら、『彼は性的虐待行為をしていない』と(使用責任を持つ当事者のような)主張を続けたうえに、ヴァルガスを『補助参加人』として代理人弁護士を二人加える一方で、本人の現在の居所などについては準備書面の閲覧制限を申し立ているのも、筋が通らない」と非難している。

 次回は、10月17日午後3時から東京地裁第615法廷で行われる予定。

2024年7月17日

・「性的虐待の訴えをバチカン教理省と仏司法当局に報告、捜査中。被害者に寄り添い、札幌司教と日本の教会のお詫び」とパリ外国宣教会

(2024.6.28 カトリック・あい) 
 「司祭から性的虐待を長期にわたって繰り返され、所属していた神言会も訴えに適切な対応をしなかった」として被害女性が神言会に損害賠償を求めた裁判の第二回口頭弁論が3月11日に東京地方裁判所で行われた際、傍聴人の一人でその後の原告被害者の会見に出席した日本在住の仏人男性が「私も札幌教区の帯広教会で、パリ外国宣教会の司祭からレイプされた。同修道会や司教に訴えても、まともな対応をしてくれない」と告白した。 

 彼はすでに札幌教区とパリ外国宣教会の本部に訴えており、これを受けて札幌教区長の勝谷司教が、同修道会に対して、この問題に関する「速やかな情報公開」を行うよう要請していたが、このほど、同本部から、勝谷司教と札幌教区関係者あてに次のような説明文が送られてきた。以下は札幌教区の和訳文と英語原文。すでに札幌教区の司祭、信徒に対して勝谷司教から通知済みだ。

パリ外国宣教会から札幌教区ベルナルド勝谷司教様と信徒の皆様へ

 フランス人の成人男性T氏が、同じフランス人である本会の司祭P神父を2022年7月に不同意性交をしたと告発しました。その時までP神父は札幌教区で奉仕していました。

 この重大な告発に対して、パリ外国宣教会(以降MEPと省略)は、両者から事情を聴きました。P神父は断固としてこの告発内容を否定しています。

 両者ともフランス人であったため、2022年8月2日、MEPはフランスの司法当局にこの件を報告しました。フランス警察の捜査はいまだ行われており、完了しておりません。

 MEPは、この件をバチカンの教理省にも報告しました。また、フランスの教会刑事裁判所に委託された教会法に基づく調査を開始しました。

 MEPは、T氏の訴えに衝撃を受け、この件で傷ついた氏に寄り添ってまいりました。私たちは、この件で札幌教区の勝谷司教様とご信者の皆様が傷つかれたことに困惑し、申し訳なく思い、司教様と日本のカトリック教会にお詫び申し上げます。

 フランス警察と教会裁判所で調査は現在進行中なので、結果が出るまでは何も動くことができません。調査の秘密は尊重されなければなりません。裁判所の裁量に委ねられなければなりません。

 この調査が続いている間、P神父はMEPによって待機処分を受けています。

 数人のMEPの長上たちと、さらに数人の司祭は、それぞれたいへん多くの時間をT 氏の話を聞くことに費やしました。また、フランスの教会の性的被害者支援の団体の専門の弁護士と心理学者を彼に紹介しました。

 MEPはまた、T氏がフランスに来て話をするための旅費、滞在費に必要と思われる額(T氏の求める額には達しませんでしたが)を負担しました。

 MEPは、必要な措置を講じるため、MEPの性暴力問題について外部監査を実施することを決定したことをお知らせします。 MEP は、英国の独立系企業 GCPS Consulting にこの監査の実施を委任しました。 (https://gcps.consulting)。 この監査は 2024 年 12 月に終了の予定です。

 MEPの会員によって行われた可能性のある性的暴力を懸念して情報を提供したい方は、GCPS 監査チームに次のアドレスから連絡できます: mep_review@gcps.consulting

 この問題に関しては、GCPS への連絡をお願いしたいのですが、当然ながら、法に触れる懸念のある問題であれば、該当する管轄部署に問い合わせることを妨げるものではありません。

 パリ外国宣教会、パリ、2024 年 4 月 8 日

(英語原文)

 Statement from the Missions Etrangeres de Paris Society (MEP) to Mgr Bernard Katsuya, Bishop of Sapporo and to the faithful of the diocese

An adult French man, Mr T., has accused a priest from the Missions Etrangeres de Paris, also French, Father P., of having had non-consensual sexual relations with him at the end of July 2022. Until then, Father P. had been serving in the diocese of Sapparo.

Faced with this serious accusation, the MEP listened to the two men. Father P. categorically denies the accusation of a non-consensual relationship. On August 2, 2022, the MEP reported the facts to
the French judicial authorities, as the two men were French.

 

A French police investigation is underway and has not yet been completed. The MEP also notified the Dicastery for the Doctrine of the Faith in
Rome and opened a canonical investigation, which has been entrusted to the Church’s Canonical Criminal Court in France.

The Missions Etrangeres de Paris Society is shocked and sorry about this situation and its thoughts are with Mr T. who is hurt by this affair. The MEP is also confused and sorry for the diocese of Sapporo,
its bishop Mgr Katsuya and the people of the diocese who have been hurt by this situation. The MEP would like to apologize to Bishop Katsuya and the Catholics of Japan.

Pending the results of ongoing investigations, caution and reserve are called for. The secrecy of the investigation must be respected. The MEP are at the disposal of the French police and of the canonical
courts. For the duration of the investigation, Father P. has been set aside by the MEP, which has taken conservatory measures in his regard.

The MEP management, as well as several individual MEP priests, have devoted a great deal of time to listening to Mr T. and referred him to professional lawyers and psychologists from the French
Church Commission for Minors and Vulnerable Persons. The MEP also reimbursed Mr T.’s travel expenses to come to France to tell the story.

The MEP Society informs that they have decided to conduct an external audit on the issue of sexual violence within the MEP in order to take the necessary measures. The MEP mandated the independent UK firm, GCPS Consulting, to carry out this audit (https://gcps.consulting). This audit will be finished next December 2024.

Anyone wishing to provide information on any genuine concerns of sexual violence that may have been committed by any MEP member can contact the GCPS audit team using the following details: mep_review@gcps.consulting.

GCPS is the main and preferred communication channel on this topic but, of course, it should not prevent referring to the Justice Department of the country for matters falling within its competence.

MEP Society, Paris, April 8, 2024
media-communication@missionsetrangeres.co

2024年6月28日

・米サンディエゴ大司教区が破産申請ー性的虐待被害者への損害賠償支払いに耐えられず…(Crux)

(2024.6.17 Crux  National Correspondent John Lavenburg)

ニューヨーク 発– 米カトリック教会のサンディエゴ大司教区の教区長、ロバート・マケロイ枢機卿は17日までに、教区の全聖職者と信徒に対し、 破産申請を行うことを通知した。同教区は、司祭、修道者、信徒が未成年者に性的虐待をした疑いで約 450 件の訴訟に直面している。

 米カリフォルニア州で破産を申請した 教区は今回で6つ。直近ではフレズノ教区が先月、破産を申請し、ほかにサンフランシスコ大司教区、サクラメント教区、オークランド教区なども申請している。

 マケロイ枢機卿は13日付けの通知で「過去 1 年間、教区は虐待の被害者の代理人弁護士と実質的で有益な交渉を行ってきました。そして、私は教区の指導者たちと協力して、今が正式に破産手続きに入り、破産手続きの一環として交渉を続けるべき時である、という結論に至りました」と説明。

 さらに破産について、「教区が、性的虐待の被害者に正当な補償を行うとともに、教会の本来の使命である教育、信徒司牧、貧困者や社会的弱者への支援を継続するための最善の道、と判断した」と述べた。

 今後の具体的方策としては、「被害者のさまざまな主張の間で公平性を実現するための枠組みを提供し、今後新たに被害を訴え出る性的虐待被害者に補償を行うための基金も設立する」とし、このような対応は、最終的な破産と和解を通じて「過去の性的虐待の訴えに対する法的責任に明確な結論をもたらす」と語った。

 教区には今後も困難が待ち受けているが、枢機卿は「ただ教会だけが、責任を負うべきと考えている。これから一年、この困難な道を進むにあたり、私たち全員が心に留めておくべきは、児童や十代の若者を直接虐待した人々の道徳的な過ち、そして彼らを配置転換したり警戒を怠った人々の同様に大きな道徳的な過ちが、私たちの間で、多くの男女の心と魂を押しつぶす心理的、精神的な傷につながっている… 未成年者を守るために過去20年間に私たちは大きく進歩したが、それは、私とカトリック教会共同体が引き続き負っている大きな道徳的責任を軽減するものではありません」と自戒の念をこめた。

 

 

*「被害者への正当な補償支払いを避ける試み」と被害者側弁護人は批判

 

2024年6月18日

・米司教団、先住民の子弟たちの心身に深い傷を負わせてきたことを謝罪(LaCroix)

(アメリカ国旗を掲げた制服を着た先住民の子弟たち、アラスカ州ホーリークロスで=写真提供:Asahel Curtis/Wikimedia Commons)

アメリカ国旗を掲げた制服を着たネイティブの子供たち、アラスカ州ホーリークロス。(写真提供:Asahel Cur

 

(2024.6.17 La Croix=with AFP) 

    全米カトリック司教協議会(USCCB)は14日、ケンタッキー州ルイスビルで開いていた春季総会の閉幕の際に公表した文書で、1950年代から1960年代を中心に米国のカトリック寄宿学校で先住民の子弟たちの心身に深い傷を負わせたことを公式に謝罪した。

 米国やカナダのカトリック教会では19世紀末ごろから、”民族同化”の一環として、先住民の子弟たちを強制的に家族から引き離して寄宿学校の収容し、司祭や修道女などによる虐待が繰り返され、それが長い間、隠蔽され続けてきた。

 それがまず、表ざたにされたのはカナダで、2021年春、先住民の子弟のカトリック寄宿学校の跡地で1000体以上の墓標のない墓が相次いで発見され、大きな問題となった。そして、2022年夏にカナダを訪問された教皇フランシスコが、先住民の人々に会い、「犯した罪への赦し」を求められている。

 それから2年遅れた今年5月、米有力日刊紙、ワシントン・ポストの調査で、1890年代以降、全米22のカトリック寄宿学校に配属されていた少なくとも122人の司祭が、先住民の学校生たちに性的虐待したとして告発されていることが明らかになった。記録された性的虐待のほとんどは1950年代と1960年代に発生し、1000人以上の子供たちが被害に遭っている。

  これに対して、USCCBは14日の文書で、このような先住民の子弟たちの心身に深い傷を負わせたカトリック教会の責任を認め、子弟たちを家族から引き離し、寄宿学校に収容して強制的な同化を図ろうとしたことを謝罪。「司牧を委ねられた子弟たちを敬意と感謝の心をもって育て、強めていく努力を怠ったことをお詫びします。”沈黙の文化”を打ち破ることに努めます」と述べた。

 米国では、米連邦議会が1978年に先住民児童福祉法を成立させるまで、先住民子弟を寄宿学校に強制収容し強制的に同化させようとする政策が続けられてきた。USCCBは文書で、「寄宿学校で、先住民の子弟たちは、伝統的な言語、服装、習慣を放棄することを余儀なくされてきました」とし、「教会が、先住民族の子どもたちの負った傷を認め、彼らの経験に謙虚に耳を傾けるときにのみ、癒しと和解は可能になります」と言明。カトリック教会の聖職者、信徒すべてのに対して、これらの問題における教会の役割に関する調査への協力を呼びかけた。

 米連邦政府当局の 2022 年のレポートは、全米に先住民子弟の寄宿学校が445校あり、うち84校がカトリック教会または団体によって管理されていたとしている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2024年6月18日

(評論)共に歩む教会に必要なのは互いの信頼、そのための努力が見えない+読者の声

 まず、この公示文書を読んでの印象は、誰に対して、何の目的で、何のことを言おうとしているのか分かる「東京教区の皆さま」がどれほどいるのか、ということである。

 そもそも「東京教区の皆さま」とは誰のことを指しているのか。司祭か、聖職者か、それとも一般信徒か、それら全員を指しているのか。さらに、文書の出だしの「東京教区司祭」神父、という表現も理解できる人は少ないだろう。「修道会司祭」でないことはおおよその察しが付く人もいるかも知れないが。もっと分からないのは、「当教区信徒との関係において、司祭として不適切な言動」だ。何をして「不適切」とするのか、定義されずに使われているためだ。

 そして、「事実関係の聴き取り」「第三者委員会の調査結果」の結果、としているが、教区の誰が、あるいはどの担当部署が聴き取りをしたのかはっきりしないし、「第三者委員会」に至っては、どのような機能を果たす目的で、どのような構成でなされる組織なのか、そもそも、そのような委員会の存在さえ、一般信徒はもちろん、司祭の中でさえ知らされていない人がいるようだ。

 それらの結果に基づき、「謹慎」させ、「必要な研修」を受けさせる、というが、それはどのような規定に基づき、どのような「謹慎」をいつまでさせるのか、「必要な研修」とはどこで、誰が、あるいはどのような機関が行うのか、も説明はない。それより何より、教区の指導者が問題司祭に対してなすべきは、「回心」させることではないか。謹慎させたり、研修を受けさせても、当人が心から回心しなければ意味はない。

 要するに、「東京教区の皆さま」に、「東京教区司祭」神父が関係者に多大な精神的苦痛を与えたことを、管理責任者として謝罪し、二度とこのようなことを繰り返さないように全力を尽くす、という決意が全く見えない。はっきり言えば他人事、分かってもらえなくてもいい、これまでの教区人事などで、この問題を知っている人に「対応をどうしたのか」という疑問を残さないために、この公示文書で決着を図ろう、という考えなのだろうか。「再発防止等の努力に…」と言うが、この措置の対象となる案件があいまいのままでは、何を再発防止するのか分からないし、説得力を欠く。そして何より、この公示文書には、「心」が感じられない。

 教皇フランシスコが提唱しておられる司教、司祭、聖職者、一般信徒が共に歩む「シノダル(共働的)な教会」のために、まず必要なのは、互いの信頼、思いやり、そのために、可能な限りの説明責任を果たすことではないか。

 「カトリック・あい」は、この公示文書にある「東京教区司祭」神父も、彼の「司祭として不適切な言動」も把握している。これまでの教区人事などを見ればおおよその察しがつく人もいるかも知れない。仮に、それらを具体的に明らかにすることが、関係者をさらに傷つけることになる、と判断して、このような理解しがたい表現にしたのであれば、そのような説明がされてしかるべきだし、「司祭として不適切な言動」に対する措置の具体的な規定、関連して、調査機関や「第三者委員会」の目的、機能、委員の構成などは、今回の案件とかかわりなく、明らかにする必要がある。

 東京教区や札幌教区などの複数の修道会司祭で「不適切な言動」で一般信徒を傷つけたを被害者が訴えている案件も複数把握しているが、どれも加害者とされている司祭や「不適切な言動}当時所属していた修道会は、無視、否定、あるいは隠蔽を図ろうとする動きもある、と聞いている。そうした中で、このような、危機意識の欠けた、理解困難、誠意の欠けた説明不十分な文書一本ですまそうとするなら、被害者とされている信徒はもとより、「共に歩む教会」を目指して日々、努力を重ねている聖職者、一般信徒の、教会、修道会のリーダーへの信頼が遠のいてしまうことを、深く懸念する。

(「カトリック・あい」南條俊二/2024.5.12記

【読者から】

*「信徒に司祭として不適切な言動」をした神父を謹慎、研修措置ーカトリック東京教区長が+評論」の評論は、正鵠を得たものです。「カトリック・あい」の「教皇のことば」 5月5日付『☩「あらゆる償いは、自分の罪を認めることから始まる」-(性的虐待という)取り返しのつかない行為への対応を話し合う国際会議で』の教皇の言葉に共感を覚えます。

 加害者の司祭が被害者に面と向かって謝罪し、被害者本人から許しを得たのかさえ疑問です。第三者委員会はもとより、懲罰委員会の存在すら明らかになっていないのは組織として決定的な欠陥です。一片の東京教区公示文書の「当教区は、事実関係の聴き取り,および第三者委員会の調査の結果に基づき、同神父には謹慎させ、必要な研修を受けさせます。」が十分に尽くされるかどうか、信徒の疑いの念はぬぐい切れないでしょう。

(首都圏に住むT.T)

*5月12日付けの記事を読んで、前回の「アドリミナ報告」同様愕然としています。ここまで日本のカトリック指導者が堕ちてしまったのかという嘆きです。東京大司教区の「公示文書」を読んでも、文書の目的が一切わかりません。他教区の信者や一般市民には、何のことかさっぱり分からないでしょう。こういう形でしか対応できないところに教区の病巣がありそうです。評論で指摘されているように「分かってもらえなくてもいい」「決着を図る」ための形式的文書に見えます。被害者の権利を充分に守りながら、真相を解明して再発防止を図るという真剣さが欠けているようです。これでは類似のことが再発するでしょう。

 評論の中で「第三者委員会」について触れられていますが、私の所属する教区の現状を紹介します。4年前(2020年4月)に「性虐待防止宣言」と「性虐待防止及び被害者支援に関する規程」の二つが教区文書として公表されました。後者の文書には「第三者委員会」設置の規定があります。しかし、弁護士・ケアの専門家などの委員が誰なのか、委員会が活動しているのか一切不明です。委員の任期が2年になっていますが、再任されたかどうかも分かりません。「規程さえ作れば、それで良し」という発想です。性暴行を含むハラスメントの問題に真剣に取り組む姿勢はないということです。

 今回の東京大司教区の公示文書の内容を見て、日本のカトリック教会の衰退を象徴していると感じています。社会から遊離して、信者が教会から遠のきつつある現状を刷新する必要があります。

(西の信者より)

2024年5月13日

・「信徒に司祭として不適切な言動」をした神父を謹慎、研修措置ーカトリック東京教区長

(2024,5,12 カトリック・あい)

 カトリック東京大司教区は11日付けで、菊地大司教名の公示文書を教区の聖職者、信徒あてに発出した。全文以下の通り。

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東京教区の皆さま 公示文書

 「東京教区司祭」神父に関し、当教区信徒との関係において、司祭として不適切な言動があるとの申し出を受けました。当教区は、事実関係の聴き取り,および第三者委員会の調査の結果に基づき、同神父には謹慎させ、必要な研修を受けさせます。なお、当教区としては、再発の防止等に努めてまいります。

                                  カトリック東京大司教区 大司教 菊地功

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2024年5月12日

・性暴力の被害者が加害司祭の所属修道会に損害賠償求める裁判で、被告・神言会側が「彼はやっていない」と否認

(2024.5.8 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が「外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかった」として司祭が所属していたカトリック修道会、神言会(日本管区の本部・名古屋市)に損害賠償を求めた裁判の第3回口頭弁論が8日、東京地方裁判所で行われ、これまでの準備書面で原告の訴状に対してほとんど「不知(知らない)」と繰り返してきた被告の神言会が「(所属していた司祭が性的虐待を原告女性に行ったとする訴えを)否認する」と新たな書面で言明したことが明らかになった。次回は、7月17日午後3時から東京地裁第615法廷で行われる予定。

 原告代理弁護人は、この新たな準備書面の内容について、「私たちが訴えているのは、神言会が『適切な対応を取らなかった』ことであるにもかかわらず、それに反論せずに、このような表現で応えたのは、神言会そのものが加害者に成り代わったもの」と受け止めている。

 原告を支持している多くの傍聴者からは、原告の訴状の内容などから、外国人司祭が原告信者の告解を利用して性的暴行を繰り返したのは明らかと思われるにもかかわらず、「司祭が属していた修道会が、これまで”知らぬ存ぜぬ”を通してきた態度を一変させて、性的暴行そのものの否定に回ったのは、理解できないし、原告被害者をいっそう傷つける行為以外の何物でもない」と批判の声が上がっている。

 前回に続いて、司祭、修道女、一般信徒など関東、関西、北海道などから集まった約50人が傍聴席を埋める中で行われた8日の法廷では、裁判長と2人の陪席裁判官のもと、原告の田中時枝さん(東京教区信徒)、代理人の秋田一惠弁護士、被告側は当事者である神言会日本管区の代表がこれまでどおり欠席、代理人弁護士のみが出廷し、被告側から新たに出された準備書面の内容などをめぐってやり取りがあった。

 その中で、原告側は、被告側が新たな準備書面で「(訴状にある、外国人司祭=バルガス・F.O.サビエル=による被害者への性的虐待行為を)神言会として否認する」としたことについて、なぜ、これまでの『不知」を改めたのか、とに質したのに対し、被告側は「本来なら『不知』だが、(神言会の代理人弁護士として)否認する」と返答。さらに「それでは、あなたは、バルガスの代理人か」との問いに、「(バルガスの)代理人ではない。神言会の代理人だが、(バルガスは原告に対する性的虐待は)やっていない」と繰り返した。

 また、バルガスに対して「訴訟に加わるように」求めた被告訴訟告知書について、裁判長から「(バルガス)本人ではない人物が受け取ったようだ」との説明があり、「その人物は(バルガスの)妻か」との原告側の問いには、「それは不明確。(受領書の)コピーをお渡しするので、そちらで確認してほしい」との回答があった。これにより、神言会が明確にするのを避けてきたバルガスの居所が分かれば、本人を直接訴えることも可能になるため、今後の展開が注目される。

 第三回の口頭弁論終了後、原告の田中時枝さんと原告代理人の秋田一惠弁護士が会見を開き、田中さんが「本物の信仰をもったたくさんの方が支援してくださり、今回も多くの方が傍聴に来てくださって勇気をいただきました」と感謝。秋田弁護士も「大きな苦痛を覚悟のうえで、田中さんが実名で、顔をさらして訴え、それに、多くの方が共感され、励ましてくださっている。今や東京地裁でこの案件を知らない関係者はいないくらいに注目を浴びています。裁判はこれからも続きますが、これだけで、私たちは『勝った』と言ってもいい」と語り、感謝と、さらなる支援を訴えた。

(南條俊二記)

2024年5月8日

・教会での性的虐待含むハラスメント、4割が「ある」と回答ーカトリック札幌教区が信者意識調査結果発表

(2024.4.17 カトリック・あい)

 カトリック札幌教区のハラスメント対応デスクは2017年から小教区を訪問し啓発活動を行っているが、新たな体制づくりと今後の啓発活動のため2023年7月1日から11月30日にかけて教区の全信者を対象とした「ハラスメントのない教会共同体をめざして~教会におけるハラスメント意識調査~」を実施、札幌教区ニュース4月号で、調査結果の「前篇」を公表した。

 「前編」では、全調査項目の集計結果と寄せられた具体的なハラスメント事案を紹介し、8月に公表する「後編」では、被害者の声を中心にまとめ、今、何が問題なのかを考えるとしている。

 聖職者による性的虐待など教会でのハラスメント行為は、教会への信頼を失墜させるものとして深刻な問題になり続けているが、日本の教会の取り組みは、隠ぺいを容認する従来からの体質もあって緩慢。日本のカトリック教会における性的虐待を含めたハラスメント意識調査の実施は15ある教区の中で、「カトリック・あい」が確認できたのは札幌教区のみだ。

 今回の札幌教区の調査は、全小教区の聖職者、修道者、信徒、求道者を対象に、無記名調査票とWEBによる自由回答の形で実施し、回答があった584件をもとに分析を行った。回答率は12.3%。

 回答者の内訳は、年齢は70歳代が最も多く31.3%、60歳代が23.8%、80歳以上が21.9%と続き、50歳代は11.1%、40歳代は4.3%、30歳代は2.1%と若くなるほど少なくなり、20歳代はわずか1.2%。受洗後の年数は20年以上が最も多く79.1%、次いで5年以上10年未満が11.3%、1年以上5年未満が9.2%など。

 性別は女性が60.6%を占め、男性が26.2%、無回答12.2%、答えたくないが1.0%となっている。

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*「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を知っている信者は3割

 質問は15問から成っているが、このうち、日本の教会の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」(今年は3月1日)について、知っているかどうか聞いたところ、「知らない」が37.7%、「聞いたことはあるが内容は知らない」も30.5%。「知っている」は30.7%にとどまっている。さらに、この日の行事に参加したか、との問いには、「ない」が61.5%、「教会ではやっていない」が24.1%で、「参加したことがある」はわずかに11.6%だった。

 

*「ハラスメントはある」が4割、うち「自分がされた」が7割弱

 札幌教区のハラスメント防止宣言を「知っている」のは22.6%、ハラスメントデスクを「知っている」も20.9%にとどまる一方、「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思うか」との問いには、40.6%が「あると思う」と答え、ハラスメントを「自分がされた」が66.7%に達している。受けたハラスメントの内容(複数回答)は「人前での感情的な叱責」が最も多く41.8%、「挨拶や話しかけを無視する行為」37.3%がこれに次ぎ、「人格否定や差別的な言葉による叱責」「悪質な悪口や陰口」「宗教的な経験年数や知識量での叱責や避難」「奉仕の強要」「私生活・プライバシーへの過度の介入」がいずれも20%を超えている。

 

 

*行為や言葉によるセクハラ、児童性的虐待も

 さらに、「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思う」と回答し以上のような、事前に用意された選択肢以外に「その他」として、回答者が書き込んだ具体的経験で、「セクシュアル・ハラスメント」として、司祭・聖職者から「セクハラすれすれの行為を受けた」「ハグされる感じで抱かれて嫌な気持ちになった」「子宮摘出手術を受けた信徒に、聖職者が『じゃあ、もう女じゃないんだ』と言った」、信徒からは「教会で手伝いをしている時に、尻をつかまれた」「『元気をもらいたいから』と手を握られた」「酔った勢いで個人的に連絡された」などの指摘があった。

 また「児童に対する性的虐待」として、「少年期から青年期にかけて、聖職者から児童性的虐待を受けた」「体を触る、服の中に手を入れるなど性的行為をされた」や、「児童虐待」として、「侍者教育は児童虐待だった」「暴力を振るわれた」との回答があった。

*ハラスメントは「信徒同士」87%、「司祭・修道者から」24%

 ハラスメントがどのような関係で行われたか、との問いには、「信徒同士」86.9%に次いで、「司祭・修道者から求道者・信徒へ」が24.0%と多い。その後どうしたか、との問い(複数回答)に対しては、「どこにも相談できなかった」と「信徒に相談した」がいずれも39.2%と最も多く、「司祭に相談した」は14.6%にとどまり、さらに「ハラスメントデスクに相談した」はわずか1.3%しかない。また「どこにも相談できなかった」理由(複数回答)を聞いたところ、「自分が我慢すればよいと思った」が51.6%、「何をしても解決しないと思った」が41.9%を占めている。

*ハラスメント防止に必要なのは信徒、教会役員、聖職者の「意識改革」

 そして、「教会でのいじめ、いやがらせ、ハラスメントを防止するために必要な措置」(複数回答)として回答者が挙げたのは、意識改革と研修で、「信徒の意識改革」63.3%がトップ、「教会役員の意識改革」34.2%、「聖職者の意識改革」31.2%がこれに次いでいる。また、「信徒の研修」32.4%、「教会役員の研修」16.8%、「聖職者の研修」16.3%となっている。

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(評論)

 日本のカトリック教会における性的虐待を含めたハラスメント意識調査の実施は、15ある教区の中で、「カトリック・あい」が確認できたのは、今回の札幌教区のみだ。他の教区は、教区内の実態把握どころが、教皇フランシスコの全世界の教会に対する要請を受けて、2016年に日本カトリック司教協議会で実施を決めた「性虐待被害者のための祈りと償いの日」(今年は3月1日だった)すら、司教協議会会長の菊地・東京大司教のメッセージが出されたほかは、東京、長崎などほとんどの教区が何の取り組みも、小教区への積極的な取り組みの呼びかけもしない、というのが現状だ。

 東京教区の筆者が所属している教会でも、3月1日、あるいは直近の主日に、祈りなどの行事は全くなく、3月1日が性虐待被害者のための祈りと償いの日」だということを知る信徒は皆無だった。

 2021年2月には、司教協議会が「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を発表し、各教区での「あらゆるレベルでの取り組み」を求めているが、中心となるべき東京、長崎、大阪高松の各大司教区はじめ、ほとんどの教区が具体的な行動を伴った取り組みはおろか、信徒はガイドラインの内容さえ知ることなく現在に至っている。

 札幌教区では、2017年から小教区を訪問しての啓発活動、そして今回の意識調査など、他のほとんどの教区では見られない具体的な行動を積み重ねてきているが、それでも、先に報道したように、帯広教会を担当していたパリ外国宣教会の仏人司祭が、在日20数年の仏人男性信徒に繰り返し性的虐待を繰り返していたことが明らかになり、勝谷司教がパリ外国宣教会に情報公開求める旨、公に約束する事態となっている。今回の意識調査を見ても分かる通り、それほどに、取り組みは容易でない、ということだ。

 すでに長崎、仙台教区では、教区司祭による性的虐待に教区が適切な対応をせず、裁判に持ち込まれ、教区が被害者に損害賠償をするに至っている。東京地方裁判所でも、神言会の司祭に繰り返し性的暴行を受けた被害者が同会に損害賠償を求める訴えを起こし、公判が続いている。ほかにも、「カトリック・あい」で把握している司祭による性的虐待疑惑は東京教区など数件ある。

 札幌教区の意識調査の結果公表を機会に、日本の司教団に、司祭による性的虐待を含む教会におけるハラスメントへの、誠実かつ具体的な行動を伴う真剣な対応を、改めて強く求めたい。

(「カトリック・あい」南條俊二)

2024年4月17日

・教皇、性的虐待などスキャンダルにまみれの使徒的活動団体に関わるペルーの大司教の辞表受理(Crux)

(2024.4.2 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen)

  ローマ発 – 性的虐待などスキャンダルまみれのペルーの使徒的活動団体Sodalitium Christinae Vitae(SCV)信徒団体に対する捜査が続く中、バチカンは2日、この団体に所属する大司教の辞表を教皇フランシスコが受理した、と発表した。

 4月2日のVatican News速報によると、ピウラ大司教区のホセ・アントニオ・エグレン・アンセルミ大司教(67歳)で、SCVの会員。辞表受理は、1970年代にペルーの信徒ルイス・フェルナンド・フィガリによって設立されたSCVに対するバチカンの調査が行われている最中に行われた。

 疑惑は数年前からあったものの、2015年にペルー人ジャーナリストのペドロ・サリナス氏とパオラ・ウガス氏が、SCVの幹部らによる長年にわたる性的、身体的、心理的虐待疑惑を詳述した著書『半僧侶、半兵士』を出版したことで、SCVに関わるスキャンダルが一挙に表に出た。

 フィガリ自身も、未成年者への性的虐待を含む、コミュニティ内での身体的、心理的、性的虐待で告発された。 2017年に彼はバチカンから制裁を受け、グループのメンバーとのさらなる接触を禁止され、2度の控訴で敗訴した後、現在、亡命生活を送っている。

 自身が任命した外部指導者によるものも含め、いくつかの改革の試みが失敗に終わった後、教皇フランシスコは、SCVに関する正式な調査の開始を決め、マルタ大司教区長のチャールズ・シクルーナ大司教とスペイン人のジョルディ・ベルトメウ神父を責任者に任命して、監督するよう指示。二人は昨年7月下旬から8月上旬にかけてペルーを訪れ、SCVによる虐待の被害者やエグレン大司教を含む事件関係者らと面会した。

 エグレン大司教はSCVの問題が表面化して以来、重要な関心の源であり、ピウラ大司教区での汚職疑惑の中心人物であり、ウガス、サリナス両氏の著作に対する法的キャンペーンの扇動者でもあった。2018年、大司教は、「SCV関係者の虐待と隠蔽活動に加担しただけでなく、土地売買にも加担した」と自身を名指しした調査報道を、名誉毀損で刑事告訴した。

 教皇は2018年9月にバチカンでエグレン大司教と面談した。1年後、ウガス、サリナス両氏に対する名誉棄損訴訟で勝訴した直後、エグレン大司教は、ペルー国民、メディア、教会関係者の強い反発の中で、両ジャーナリストに対する告訴を撤回。ウガズ氏がSCV関連組織によるピウラ地域での土地売買に関するさらなる報告を出した際、大司教は2022年3月にバチカンで教皇と再度会談した。

 ピウラ県では何年にもわたって、農民グループと、サン・ファン・バウティスタ市民協会、エンプレサ・アグリコラ・サンタ・レジーナSAC、インベルジェネス・サンなど、SCVが運営、あるいはSCVと関係がある少数の企業との間で法廷闘争が繰り広げられてきた。

 中南米の多くの地域では、農民や貧しい階級の人々が、自分たちが住んでいる土地に対する正式な所有権を持たずに、安価な土地に根を張り、何十年、場合によっては何百年も荒らされることなくそこに住み続けるのが一般的だ。多くの場合、土地を買い占めよとする企業は地権者と契約し、脅迫、時には犯罪組織による暴力に訴えによって事実上、住民を町から追い出している。ピウラ県では、これらのコミュニティの 1 つがカタカオス町の農民グループで、犯罪グループからの脅迫と、彼らが占有している土地を手に入れようとする SCV関連 企業による訴訟の両方と戦っている。そして、この地域およびSCV内で保持してきた権力から、エグレン大司教は多くの告発の中心人物であり、農民を土地から追放するためのさまざまな計画の立案者とみなされ、非難されている。

 シクルーナ大司教などバチカンの調査団は、昨年夏の調査の一環として、リマ滞在中に、ピウラ県のカタカオス農村社会のサン・ファン・バウティスタの小作農グループと面会し、状況とSCVに対する申し立てについて話し合った。調査団には、ペルー国家人権調整官(CNDDHH)のジェニー・ダドール事務局長も参加。エグレン大司教とも面談した。

 エグレン大司教のピウラ大司教区長辞任は、バチカンがSCVに対し、さまざまな形態の虐待で告発された8人の著名メンバーに対して措置を講じるよう求める一連の書簡を送ったことを受けてのことであり、SCVにとって重大な打撃となる可能性が強い。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年4月3日

・米国カトリック教会でサクラメント教区が破産申請-相次ぐ性的虐待損害請求訴訟で

(2024.4.2 Crux National Correspondent  John Lavenburg)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年4月3日

・教皇、ベルギーの元司教が自分の甥たちへの性的虐待を認めて14年たって司祭職をはく奪

(2024.3.22 La Croix   Christophe Henning)

 教皇フランシスコが22日までに、ベルギー・ブルージュ教区のロジェ・ヴァンヘルウェ元司教(87)の司祭職をはく奪した。ヴァンヘルウェ元司教は2010年に、司教叙階以前から10年以上にわたって未成年の甥たちに繰り返し性的虐待を行ったことを認め、司教を辞任させらたものの、同国の刑法で犯行が時効となっていることから、司法当局から刑事訴追されることがなく、バチカンも司祭職はそのままに、修道院への蟄居を申し渡すにとどまっていた。(写真はブルージュの大聖堂)

 教会内外からの強い批判から、ベルギー司教団から過去数年にわたって、元司教の司祭職はく奪をバチカンに求め続け、さらに、アントワープ教区のヨハン・ボ

The cathedral of Brugge (Jean-Pol GRANDMONT CC BY 4.0 DEED)

ニー司教が昨年9月、地元テレビ局が制作した性的虐待被害者に関するドキュメンタリー「GodVergeten(神に忘れられた)」の中で「彼は今も司祭であり司教である。その地位は変わっていない」と批判したことから、司祭職はく奪を求める声が高まり、今回の教皇による司祭職はく奪につながった。

 ヴァンヘルウェ元司教は、1984年末にヨハネ・パウロ2世教皇に司教に任命され、約25年にわたってルージュ教区長を務めていた。だが、性的虐待が明るみに出、メディアの圧力を受けて2010年4月23日に未成年に対する性的虐待の罪を認め、司教職辞任を、当時のベネディクト16世教皇に辞表を提出。

 その際、「私がまだ司祭になったばかりの頃、そして司教となってしばらくの間、近親者の若者に性的虐待をした。被害者は今もその影響を受けている。過去数十年にわたり、自分の非を繰り返し認め、被害者と家族に許しを求めたが、それでは十分でなかった」と公に告白して辞表を、さらに、その後、1973年から1986年まで13年間にわたって自分の甥を性的虐待したこと、さらにもう一人の甥にも同様の行為を2年間続けていたことを認めていた。

 教皇は辞表を受理し、教区長も更迭となったが、その後、さらに多くの被害者が名乗りを上げ、ベルギーの教会が前例のない虐待危機に巻き込まれたが、その際、ヴァンヘルウェ元司教は一転、自身の行為の深刻さを軽視する姿勢を見せ、甥に対して犯した性暴力をあえて「小さな関係」とまで表現。教会内外の批判の声を掻き立てた。こうした事態を背景に、 ベルギーの司教団は昨年10月、この問題について再びバチカンに圧力をかけた。

 駐ベルギーのバチカン大使館は21日発表の声明で、「ここ数カ月の間に、ブルージュ前司教の事件に関する新たな重大な要素がバチカン教理省に報告された」と、司祭職はく奪の理由を説明したが、教皇フランシスコは9月にベルギー訪問を予定されていることが、この問題への対処を急がせる要因となった可能性もある。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年3月26日