*聖職者による性的暴力被害者が神言会に損害賠償求める裁判・第6回ー加害者とされた司祭(当時)、「実名を出さないで」と申し立て

(2024.12.10 カトリック・あい) 聖職者による性的暴力被害者が加害者とされる男(元司祭)が所属していた修道会、神言会日本管区(本部・名古屋市)に損害賠償求める裁判の第6回が11月27日、東京地裁第615号法廷で開かれ、被告・神言会の補助参加人となっている加害者とされる男の代理人が新たに「本訴訟において、(補助参加人)は自分の氏名が公表されないよう望んでおり、訴訟記録の閲覧を制限してもらいたい」と申し立てた。

 性犯罪の加害者とされる人物が匿名で、被害者が実名の裁判というのは、これまであまり例がなく、しかも、すでに実名が第三者にも明きからにされ、報道もされているにもかかわらず、公判の途中でこのような申し立てをするという、被告側の不誠実を上塗りするような行為の意図を、原告側も測りかねている。

 次回は2025年1月29日、午後1時30分から東京地裁第615法廷、次々回は2025年3月19日、午後3時30分から同じ法廷で予定されている。

 この裁判は、神言会に所属し、当時、長崎大司教区内の小教区司牧を委嘱されていたチリ人神父が女性信徒に対し不同意性交を強いていたとして、被害信徒が神言会日本管区の監督責任を問い損害賠償を求める訴えを起こしたことから始まった。

 被害者の主婦・田中時枝さんが裁判所に提出した訴状によれば、長崎・西町教会で助任司祭を務めていたB神父は2012年、「ゆるしの秘跡」を受けた田中さんの告解内容を聴くと「やり直さなければだめだ」と性交を迫り、以後約4年間にわたり被害者女性をマインドコントロール下に置いて、不同意強制性交を重ねていた。
マインドコントロールを脱した田中さんは、加害司祭を「不同意強制性交の罪」で刑事告訴したいと考え、まずその司祭を監督・指導する立場にある神言修道会の上長に事情を打ち明け相談した。修道会
側では加害者とされるB神父から事情を聴き、本人を派遣先の長崎から引き上げさせた後、母国に送還したものの、「被害者には謝罪など誠意のある対応を見せず、何の救済措置も取らなかった」という。

 これまでの審理では当初、神言修道会側は準備書面と代理人弁護士の弁明で、「(自会所属・B神父による性虐待という)そんな話は知らない(不知)… 知らなかった事案については監督しようがない」と主張していた。だが、その後、前回審理までに「B神父が不同意性交をした事実はない」と全面否定し、「原告が修道会の監督責任を問うことはできない」と否認に踏み込んだ。

 その一方で神言会は、母国送還から1年も経たないうちにB神父を日本に呼び戻したうえ、本人の司祭職をはく奪して修道会から事実上追放した。そして、第3回審理までの準備書面のやり取りを通じて、B神父(正確には『元神父』)は首都圏で、田中さん以外の女性信者と一緒に暮らしていることが、判明していた。そして第4回目の審理に、B神父が「補助参加人」となり、その代理の弁護士2名が、被告側に加わった。

 これまでの法廷では原告・被告ともに、この被告補助参加人を実名で呼んでおり、傍聴者にもその氏名は知られており、本件の取材に当たる報道機関の間にも、既に広く本名が知れ渡っている。今ごろになって「本名を知られたくない」と申し立てる理由について、代理人弁護士は説明していない。

11月27日の第6回審理はわずか10分足らずで終わり、その後開かれた原告側の「説明会」では、出席した田中さんの支援者たちから「B神父の申し立ては『裁判公開の原則』にも反する」「身に覚えがないなら、名誉棄損で田中さんを訴えればいい。それをせずに『氏名公表を止めさせたい』というのには、知らぬふりをしてこのまま日本に居座りたいという意図があるのではないか」などと、批判の声が相次いだ。
田中さんの代理人弁護士を務める秋田弁護士は「『神父が与えられた権能(本件の場合は〔ゆるしの秘跡〕)を悪用して女性信徒を性虐待していた』という被害者の訴えを受けながら、ろくに事情聴取もせずにその神父を放置し続けてきた神言会、ひいては日本の教会全体の在り方を問いたい。そこに踏み込んで元を絶たねばなりません」と言明。

 さらに、「修道会上長や教区裁治権者が『神父が勝手にやったこと』という話にして、責任を回避するようなことになれば、(聖職者による性的虐待で苦しむ被害者たちの)現状は何も解決されず、抜本的な教会刷新など期待できません。それでいいのでしょうか」と、問いかけた。

 また、この説明会では、B神父が母国でも「聞き捨てならない行状を残している」という情報がも複数出された。その件については裏付けが取れ次第、別途ご報告したい。

(取材執筆・山内継祐、編集・南條俊二)

2024年12月10日

・教皇、ペルーの性的虐待事件を追及したジャーナリスト3人と会見、”決着”を約束(Crux)

Pope Francis meets with journalists Pedro Salinas (left), Paola Ugaz (center right), and Elise Ann Allen (right) inside the library of the Apostolic Palace on Dec. 9, 2024. (Credit: Vatican Media.)
(2024.12.9 Crux   Elise Ann Allen)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年12月10日

・修道会から追放処分を受けたペルー人の神父、性的虐待と隠蔽で訴えられる(Crux)

 (2024.10.28  Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ発 – ペルーを拠点とする団体から最近除名された神父が性的虐待の疑惑を否定したことを受け、元団体のメンバー2人が、「神父は虐待を行っただけでなく、児童ポルノの隠蔽工作で司法妨害も行った」と語った。

 ハイメ・バートル神父は、ペルー在住の信徒ルイス・フェルナンド・フィガリ氏を含む15人のメンバーとともに、過去2か月間でペルーを拠点とするSodalitium Christianae Vitae(SCV)から除名された。

 バチカンは1年以上にわたり、Sodalitium Christianae Vitae(SCV)に対する徹底的な調査を実施してきた。SCVは過去10年にわたり、未成年者に対する性的虐待や財務上の不正行為など、さまざまな虐待疑惑が取り沙汰される中、さまざまな改革に取り組んできた。

 バートルとSCVの同僚フアン・カルロス・レンは、木曜日にSCVから共同で除名された。バチカン大使館からの声明では、SCVの事業体および組織内での「不適切かつ違法」な資金活動と、性的虐待の疑惑が1件指摘された。

 これに対し、2人はリマのバチカン大使館に公証人の証明付きの書簡を送り、性的虐待の申し立ては「完全に虚偽である」と述べ、また「虚偽かつ中傷的」な情報が含まれているとして、声明の訂正を求めた。

 しかし、この虐待行為の被害者とされる人物は、Crux誌の取材に対し、その事実を認めただけでなく、「虐待行為自体はバートル神父が霊的指導者として行ったものであり、SCVは一度もそれを認めていない」と語った。最終的に調査委員会は、その虐待行為は「ありそうもない」と判断した。

 1978年から2008年まで様々な形でSCVのメンバーであったマーティン・シューク氏は、先月10人のメンバーの1人として除名された自身の兄弟エルヴィン・ショイヒ氏とともに、Cruxの取材に対し、16歳の時にバートル神父から「霊的指導として、服を脱ぎ、椅子を使って性的行為を行うよう命じられた」と語った。

 彼はその約1年前にSCVに参加し、神聖さを高め、最終的にはグループのメンバーになる希望から、バートルの霊的指導を受けるようになっていた。1979年の霊的指導のセッションで、「バートルは私に服を脱ぐよう、2度命じた。なぜなら、最初は自分が聞いたことを疑い、そうすることをためらったからです」と彼は語った。

 シューク氏は、最終的にその命令に従い服を脱いだと言います。「なぜなら、私はバートルを精神的な指導者として信頼しており、『彼がやっていることは、私のためになることだ』と信じていたからです… しかも、彼は、下着を脱ぐように命じました。下着を着けたままでも、命令に従っているつもりだったのです」と言った。

 そして、完全に裸になった後、バートルは彼に部屋の反対側にある大きな椅子を「犯せ」と命じた、という。それを聞いて「最初は自分が何を命じられているのか信じられず、自分には馬鹿げたことのように思えた」が、バーテルが2度目に命じたとき、「従いました。背もたれに自分のあごが届くまで体を後ろに倒し、背もたれと座面の間の隙間に自分の[陰茎]を通しました。性交がどんなものなのかを真似しようと、不器用に何度か動いてみました。性交の経験などこれまでの人生で一度もありませんでしたから。ただ、不快感から動きが不自然になり、身体が硬直してしまい、バートルの命令通りにすることはできませんでした」。

 エロティックというよりも「性的なリビドーを抑制するもの」と表現したこのエピソードは、1分も続かなかった、とシューク氏は言う。その後、再び服を着るように言われた。バートルは「性的な優位に立とうとはしなかった」が、その間、彼は部屋の向こう側に座り、顔に手を当てながら、目線をそらしながら、居心地が悪そうにしていた、という。

シューク氏によると、その命令を出す前に、2人の会話が途切れたため、バーテルは彼に待つように言い、その間にGermán Doig修道院長(当時=現在は故人)に話した。院長も未成年者への性的虐待の容疑で告発されている。部屋に戻ってから、バートルは、会話が行き詰まった理由は、「過去のトラウマに関連する『内面の障壁』が多すぎたからで、それらの障壁を打ち破る必要がある」と告げたという。

服を着直した後、シューク氏は「内なる暴力を受けたと感じた」と語った。「当時、私はこれを悪いことや非難されるべきこととは考えませんでした。なぜなら、ソダリティウムでは、自分自身や他人に対する心理的暴力を正常なこととして受け入れるよう精神的に訓練されていたからです」と述べた。

そして、「年月が経って、世の中をより良く知るようになり、現実と向き合うようになって初めて、過去の特定の経験を『虐待』として認識するようになった。同時に、そうした経験が自分の精神に与えたダメージにも気づくようになりました」と語った。「ほかの機会にも、同じことが起こりました。誰からも強制されたわけではありませんが、『霊的指導者』の言いなりになっていたのです」。

 シューク氏によると、SCVの虐待を調査する任務を負った正義と和解のための倫理委員会は、当初は、この事件に関する彼の告発を信憑性のあるものと判断していたが、2回目の委員会では「信憑性がない」と判断した。SCVの過去2人の総長も、この事件を「信じがたいもの」と判断して、まともに対応しなかった。そして、現在のホセ・ダビッド・コロア総長は、シューク氏の主張の信憑性を疑いながらも、他の被害者が過去に受け取った金額よりも高いドル建ての補償金を提示した。

 「バートルは、私の話を専門家たちが『信憑性がない』と判断したことを喜んでいるでしょう。しかし、その喜びは脆く儚いものです。なぜなら、もし彼がまだアルツハイマー病になっていないなら、起こした出来事の記憶は墓場まで彼に付きまとうことになるからです」とシューク氏は断言する。

 この一件に加え、バートルは、2007年10月に半裸の子供とホテルにいたところを警察に発見され、また、(それを撮影したと思われる)デジタルカメラを所持していたとして逮捕された元SCVメンバーのダニエル・マルギア・ウォードによる虐待を隠蔽したとして告発されている。警察に没収されたそのカメラには、その未成年者と他の2人の露骨な写真が入っていました。

 マルギアはリマで逮捕されたものの、当時、サンティアゴ・デ・チリのSCVのコミュニティハウスに住んでいた。Cruxの取材に対し、当時マルギアと同じチリのコミュニティハウスに住んでいた元SCVメンバーのレンゾ・オルベゴソ・ベンベヌート氏は、「ムルギアはコミュニティを出ることを考えていたが、バートル神父から『ムルギアの不祥事の騒動が収まるまで待つ』ように言われたのです」と語った。

 

2024年12月10日

・聖職者による性的暴力被害者が神言会に損害賠償を求める裁判・第6回口頭弁論が11月27日午後3時から東京地裁第615法廷で

(2024.11.24 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が「外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかった」として司祭(加害当時)が所属した修道会、神言会(日本管区本部・名古屋市)に損害賠償を求めた裁判の第6回口頭弁論は11月27日午後3時から東京地裁の第615法廷で行われる。終了後、隣接の弁護士会館で支援者集会が開かれる予定。

  これまで5回にわたる口頭弁論で、 神言会側代理人弁護士は(神言会司祭だったヴァルガス・フロス・オスヴァルド・サビエルによる被害者への性的虐待行為について)あくまで、「否認」を貫こうとするばかりか、追加の準備書面に「虐待行為があったとする原告の主張は虚偽」と言明。途中から、ヴァルガスを「補助参加人」とし、その代理人弁護士2名が加わる3人体制で、原告代理人1人に対し、あくまで被告の性的虐待を認めず、「私的な事。修道会は関係しない」で押し通そうとしてきた。

 被告側当事者である神言会の代表は裁判当初から今回に至るまで出廷せず、代理人弁護士のみの出廷が続き、誠実さを欠いた対応を続けているが、第6回口頭弁論で、どのような主張をするのか注目される。

 

【解説】神言会も加害者司祭(当時)もあくまで「性的虐待」を認めず、教皇やバチカンの意向も無視するのか

 10月の前回の口頭弁論の後、原告代理人の秋田弁護士は、支援団体との会合で、被告の神言会側の代理人弁護士は「司祭としての立場で、『告解』を受けなければ知りえなかった(幼少期に受けた性的虐待によるトラウマでPTSDを患い続けているという)被害者の秘密を利用して、PTSD患者の弱点を使ってマインドコントロールをし、『救いの一環なんだ』とだまして性被害を加え続けた、という点はまさに司祭の犯罪」と強調。「今回の訴訟は、ある意味で、カトリックの教義の正当性、信仰生活の妥当性を問うものだ」と言明している。

原告被害者の田中さんは「ヴァルガスが所属していた修道会に打ち明ければ真摯に対応してくれる、加害司祭に罪を認めさせ、更生するようにしてくれる、と信じて神言会の日本管区の本部に訴えたところ、「神言会の責任で対応します」と返事しながら、いまだに何の対応もない このような司祭や修道会が大手を振って歩くの目の当たりにせざるを得ないのは、『教会の危機』『信仰の危機』だと感じています。東京大司教の菊地功さんは知っているはずです。神言会の会員で、日本管区長でしたから。現在の管区長、事務局長の司祭も、3人が全員、こういう事を知っていて、代理人弁護士と打ち合わせをして、こういう事を主張しているのか、と思うと、本当に情けない」と苦しみを打ち明けている。

バチカンの未成年者・弱者保護委員会は10月29日、世界5大陸にまたがる教会に対する広範な調査報告書を発表した。その調査・分析結果によると、国や教区によって対応にバラつきがあり、特に、教皇が2019年5月に出された、虐待や暴力を届け出るための新しい手続きを定め、司教や修道会の長上らにとるべき態度を周知させる自発教令で指示された「虐待被害の報告体制や被害者に対するケアの体制」を欠いているところもある、と批判。

  同委員会のトップ、オマリー枢機卿は記者会見で、「教会は『正義』について強い関心を持たねばならない」とし、被害者に対する『正義』がなければ『癒し』はない。ひどく不当な扱いを受け、傷つけられた人々は、『耳に心地良い言葉』を聞いたり、『文書』を見たりしたいわけではない。話を聴いてもらい、自分たちになされた悪に対して、『教会が償いをしようとしている』」と感じる権利がある」とし、まだ対応にバラつきのある世界中の教区に、そのための具体的取り組みを求めた。

 教皇フランシスコも11月13日、バチカン未成年者・弱者保護委員会主催の「欧州のカトリック教会における保護」をテーマにした会合の約25カ国100人の司教、司祭、一般信徒の代表たちへのメッセージで、「正義、癒し、和解に対する教会の関心の表れとして、苦しみを抱えた人々に慰めと援助を提供する促進策」を立案、実施するよう促されている。

このような教皇やバチカンの委員会の要請にも、加害者とされるヴァルガスも、神言会も、聴く耳を持たないのだろうか。あくまで、被害者の訴えを否定し、自分たちが教会の信頼を失う原因を作っているという自覚も、被害者への思いやりもないまま、裁判を続けるのだろうか。

 (「カトリック・あい」代表・南條俊二)

2024年11月24日

・スペインで独立調査・監視機関が、教会と政府に対し性的虐待の被害者への補償実施を要請

アンヘル・ガビロンド(写真:Prensa Defensor del Pueblo/CC BY-SA 4.0)

(2024.11.22  La Croix (with AFP)

Angel Gabilondo (Photo by Prensa Defensor del Pueblo/CC BY-SA 4.0)

スペインの独立調査・監視機関、オンブズマン代表のアンヘル・ガビロンド氏が21日、同国議会下院で、聖職者による性的虐待に関する調査結果を説明するとともに、性的虐待被害者へ補償実施に、政府とカトリック教会が協力するよう求めた。

 ガビロンド氏は、2002年から2010年までマドリード自治大学学長、2011年までの2年間は社会労働党内閣で教育相を務めたのち、オンブズマン代表になっている。

 同氏が説明した調査結果によると、スペインでは1940年以降、20万人の未成年者がカトリック聖職者による性的暴行の犠牲になっており、教会に所属する信徒による暴行を含めると、その数は40万人に上ると推定されている。

 ガビロンド氏は「私は(性的虐待の)被害者のために、教会と国家が共通の制度を採用することが不可欠だと考えている」と語り、「イデオロギーや宗教の違いよりも、被害者への補償を優先させる」ことが必要だと強調。フランス、ドイツ、アイルランド、アメリカ、オーストラリアなどの国々と違って、「スペインはこの問題に対してまだ意味のある行動を起こしていない」と批判した。

 スペインの左派政権は4月、被害者への補償のための公的基金の設立など、報告書の勧告を実施する計画を承認した。 だが、「教会はこの事業への財政的拠出を拒否している」とカトリック教会を非難している。

 教会のリーダーであるスペイン司教協議会(CEE)は公的基金への参加を拒んでいる理由として、「教会内で虐待された未成年者だけでなく、スペインで性的虐待を受けたすべての被害者に、基金による補償をしようとしていない」ことを挙げている。

 スペイン政府はこれに対し、カトリック教会が提案した「いかなる一方的な制度も受け入れない」と表明。いくつかの被害者支援団体も「教会が賠償計画の策定プロセスから自分たちを排除している」と批判している。

 スペインのカトリック教会は、聖職者による性的虐待について否定を続けてきたが、2022年になって、教会内の性的虐待を調査することに同意。 オンブズマンの報告書に引用された数字に異議を唱える一方で、CEEは法律事務所に監査を依頼し、約2056人の被害者を特定。今年7月に独自の補償計画を発表したが、いまだに実行に移していない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

 

2024年11月23日

・カトリック札幌教区が「教会におけるハラスメント意識調査総括編

ハラスメントのない教会共同体をめざして~教会におけるハラスメント意識調査まとめ【総括編】

(「カトリック札幌教区ニュース」47号 2024年11月より)

 前回までの教区ニュースで、札幌教区のハラスメント調査報告が終わりましたが、まとめの最後となる総括編では、その分析と社会学的見地からの考察と提案をお伝えしたいと思います。

 

(1)ハラスメントの定義

ハラスメントは「嫌がらせ」など「相手に不快を与える言動」によって起こります。自分の思いではなく、相手の主観による受け止めによって発生します。客観的な事実(常識的な業務命令、地域の習慣)があったとしても、そのアプローチの仕方によっては、ハラスメントは起こり得ることがあります。つまり、受け手による傷つきがハラスメントのスタートになることを肝に銘じておく必要があります。

 

(2)なぜハラスメントが起きるのか

ハラスメントの原因を確認してみましよう。あらゆるハラスメントは、2種類の関係性を土台として行われているように感じます。

①変えられない事実

 性別・年別・国籍などの事実にもとづく価値観や文化・習慣・歴史により、日本文化の中で固定化されたルールとして、悪気なく行われるものです。代えられない事実を根拠に、相手を指摘(無意識の攻撃)することは、避けられない痛みとなります。

②個人の倫理観

 育った環境や変化する体験、家族構成・経済・地位・学歴・性格・疾病・障がいなどによるものです。本人にとっては重要な深い体験を、他者が簡単に指摘(無意識の攻撃)することは、大きな痛みを与えます。このような無意識の攻撃は、自分が知らないこと・知り得ないこと・気づかないことに対し、自分が踏み込んだ対応により、知らないうちに人間関係を壊す行為となります。もし最初から知っていたなら、また良い関係を構築出来ていたら、そして深い交わりの中で生きていたら、信頼関係の内に避けられたのかも知れません。

 

 

(3)日本の社会と教会におけるハラスメント

 ここでは、日本の社会と教会におけるハラスメントの起こり得る文化的背景と男女別の考察を説明します。第二次世界大戦後の復興時、戦争という苦難を乗り越えた人々は社会の復興に一丸となって向き合ってきました。「仕事第一」「24時間働けますか」など、企業戦士と共に働くことが日本の成長であり、日本経済社会への貢献であるとされました。犠牲をいとわず家族を顧みず働いた方々もいたかもしれません。

 育児は女性に任せていた時代もあったかも知れませんが、そのおかけで今の日本があることは間違いありません。そして当時それを支えてきたのは家や子どもを守るお母さんたち、すなわち専業主婦の存在でした。役割が明確に分かれており、大黒柱とそれを支える家族という関係が昭和の時代を進んできた家庭・社会環境であったと言えます。その関係は教会での活発な動きに連動していきました。

 教会活動の中で最も強かったのは婦人会であったというのは、日本全国の教会の現状を見ても明らかです。それは教会活動に割く時間の割合が、女性には多かったからです。このように信仰の伝達は女性の数に比例していきました。専業主婦の存在が減ってきたという事が、新しい教会の歩みを振り返る為に欠かせない視点です。

 その時代は、現代とは違い、発展途上の日本の教会の歩みの中で、内部に向けて力を蓄え、教会は多くの課題に向き合うよりも、教会員が家族のようになり、元気になるため、信仰を深める時間に重点がおかれていました。しかし現代は多様な課題が私たちに与えられています。特に「命」 「人権」に向けた社会的な動きがあり、日本のキリスト教研究の発展に伴い、振り返るべき「典礼」 「歴史」 「聖書」 「教会制度」など、新たな課題も出てきており、教会は祈り、働き、考えるのに忙しくなりました。次から次にやって来る課題に、だんだんゆとりがなく、配慮するのに疲れが生じてきました。教会の能力的キャパオーバーというのが適切ではないでしようか。

 そんな中、「昔の教会の方が教会らしかった」という声も聞こえますが、いつの時代も教会は福音宣教を中心に据え置いてきたので、比較はできません。また現代は更に一人一人が「考える時代」です。しかしノスタルジーに溺れてしまうキリスト者は思考停止となり、今ある頭の中の器だけで対応するようになり、それを超えることにより自然に自己本性が表れ始める。すなわち限界を迎えると、思考停止し開き直ってしまうのです。「

 自分にとっての当たり前」 「自分の思うこと」 「言いたいこと」を言う。もちろん嘘は良くない事ですが、それは楽な対応です。そこに向けた「欲求が抑えられない」。それを否定されることに許せなくなり、他者を優先できす「自己本位な動き方」などが起こります。結果、違う文化環境で育った人は、口に出して反論できない傷ついた他者が生まれ、泣き寝入りの中で過ごす人が生まれます。

 今の社会は性別に関係なく、全ての人が働かなければ生きていけない時代に入り、子どもたちは教会よりも学校を優先しなければならなくなり、青年たちは自立した生活のために働かなければなりません。人々は教会の外で生きる時間が増えました。それはある意味教会人が社会の中に溶け込んでいったともいえるかもしれません。

 しかし教会に残された人は新しい風が入らず、今まで教会に来続けてきた人たちは世代交代できず主流となっています。時代とともに変わりゆく教会は、新しい風が入らない中で発展を目指さなければなりません。しかし、同じ人が活躍せざるを得ない状況は、かつての教会文化がそのまま維持継続せざるを得ない環境を残し続けています。

 

 

(4)教会からハラスメントは無くなるか

 答えは、残念ながらNO、つまり現段階のままでは無くならないでしよう。今回のハラスメント調査を見ると、信徒も修道者も司祭も今までの教会の流れのまま、気が付くと加害者(すでに加害者になっている人もいる)となり、被害者が訴えて初めて驚くことが明らかとなりました。どのように乗り越えたらよいのでしょうか。

 まず、「自分はハラスメントを行っているのでは?」という反省の土台が要求されます。これは自己否定ほどではないが、自分と向き合う作業であり、かなきつい振り返りです。そのためにも過去ではなく今を見ること、変えられない現実と向き合うこと、事実からスタートすること、自分以外の価値観に目を向けること、自分を変える事に挑戦すること、自分の価値観をシビアに振り返ること、新しい風を受け入れ理解することが求められます。

 教会は分かち合い(シノドスを含む)など素晴らしい方法を持ち合わせていますが、その場と日常は必ずしも一致しないという弱さを人は持ち合わせています。信仰と生活の遊離と同じなのです。ですから、真剣に回心に向かう姿勢が求められています。

 

 

(5)打開策はあるのか

 解決はかなり難しいですが、考えていかなければなりません。これは私たちにとって大きな課題です。前提として、適切な人間関係とコミュニケーションがあれば、多くは解決するでしょうが、いったん崩れてしまうと、転がり落ちるように関係性は壊れます。そこで打開策に向けて数点、指摘します。

①教会において権利と義務は誰もにある

 「聖職者中心主義」は便利なシステムですが、責任がすべての人にあるという自覚が必要です。しかもその責任は同等にあります。権利と義務は、教会内において誰もが持ちうるものであることに気づかなければなりません。聖職者の役割、修道者や信徒の役割はそれぞれ明確に分かれています。しかし、かけがえのない一人の人間であるという役割はすべての人にあること、これが愛の掟に基づいて見直されなければなりません。

②「普通」とは何かを考える

 「普通のこと」が通用していないことに気づく必要があります。「普通」ということは「あなたの普通」であり、「みんなの普通」 「教会の普通」とは違います。普通を語る場合、「間違ったあり方」であり、「自分は間違っているのかもしれない」という視点が前提になけれは、気づくことすらないし、ハラスメントは一生なくなりません。

③何よりも他者を尊重する

 他者に対する尊敬と、相手が望む関わり方を考える、という歩みが無ければ、ハラスメントはなくなりません。また、その関わり方も時代とともに変わっていることを受け入れねばなりません。TPO(時・場所・状況)が変わると、その都度、変化するものであり、常にリセットせねばなりません。

④表現方法を見直す

 たとえ相手が間違っていたとしても、それに対する関わり方、修正の仕方はあります。教会は民主主義ではないので、少数が間違っているとは限らないことも重要です。その認識がずれるとハラスメントが起きます。コミュニケーション方法の感性を磨くことは大切です。自分の意見を通すことに専念するのは、論外です。

 

(6)最後に

 
 ハラスメントはあらゆる確度から起こり得ます。だから大切なことは、感情(特に怒り)や人との心理的距離感をどうコントロールできるかです。キリスト教的な対応は、シノドスでも大切にされている対話、特に聞くことと誤解を生まないように尋ね合う事です。

 そして、互いに信頼を裏切らない関係づくりこそが、乗り越えるための課題です。具体的には伝えずらいが、日常のささやかな対話の積み重ねを通して、自分を知ってもらい、相手を知っていく作業です。信徒と修道者と司祭という立場や役割は変えることができませんが、人と人との間では、たとえ立場があったとしても、主従関係ではなく兄弟姉妹の関係がそれらを乗り越えていけるはすです。

 本来、社会では作りづらいが、教会では最も適した環境のはずです。だからこそ教会から初めてハラスメントの無い社会を示していかねばなりません。逆に兄弟姉妹の関係を壊す態度が、ハラスメントを増長させるのです。

 イエス・キリストは誰も涙する人を作りたくない。そう信じることで、自分発信ではなく常に他者を通して作る関係性によって神の国の実現を目指したのではないでしょうか。

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 「ハラスメントのない教会共同体をめざして~教会におけるハラスメント意識調査~(2023年実施)」について、3回のシリーズでお伝えしました。お伝えできたのはまだ一部にすぎません。今後、札幌司教区ハラスメント対応デスクが行う啓発訪問などを通して報告を継続し、ハラスメントのない教会共同体をめざして、皆様と共に分かち合い歩んで行きたいと思います。

 

(カトリック札幌司教区ハラスメント対応デスク 担当司祭 松村繁彦)

(編集「カトリック・あい」… 聖職者による性的虐待を受けた信徒など被害者への日本のカトリック教会では、形はともかく、ほとんどまともな取り組みがなされていない。そうした中で、札幌教区は、信者に対する意識調査やそれにもとずく対応の検討など具体的な努力が見られる。教区内で小教区の主任司祭が信徒に性的虐待を働いていたという被害者からの訴えに、その主任司祭が修道会会員だという理由からまともな対応ができていない事案も起きており、まだまだ教区長や担当司祭に努力の余地があるようだ。だが、それでも、日本の他教区が見習うべき点も少なくない。そのような判断から、「カトリック・あい」では、これまで「札幌教区ニュース」に3回にわたって掲載された特集「ハラスメントのない教会共同体をめざして~教会におけるハラスメント意識調査まとめ」を転載した。)

2024年11月22日

(評論)教会における性的虐待危機の1年ー”有毒で伝染性の無関心”が蔓延していないか(LaCroix)

(2024.11.21  La Croix   Massimo Faggioli)

 

 時代の兆し。教会における性的虐待がもたらす危機は衰えることなく続き、驚くべきニュースが「新しい日常」となっている。保護対策の進展は見られるものの、 zero-tolerance policy(不適切な行為をいっさい容認しない対策)の実施や、虐待の深刻かつ継続的な影響の理解など、まだ多くの課題が達成できずに残されいる。

 教会における性的虐待危機の世界的かつ「包括的」な歴史において、最近で最も重要な報道のひとつが、先日、11月12日、カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビーによる突然の辞任発表だ。調査報告書で、1970年代と1980年代にジョン・スマイスが少年や青年に対して行った性的虐待への本人の対応の問題が公にされたためだ。カンタベリー大主教、全イングランド教会の最高指導者、英国貴族院議員、そして世界的な聖公会連盟の精神的指導者であるウェルビーの後任者探しは間もなく開始される。

 性的虐待問題に関するニュースが絶え間なく流れ、もはや教会活動において”日常化”していることから、私たちはこの件にほとんど注意を払わない。ここ12か月足らずの間にニュースとなった、カテゴリー別に分類したほんの一例、としか受け取られなくなっているのだ。

 

1. 最近明らかにされたカトリック以外の教会の性的虐待

 今年1月、ドイツ福音ルーテル教会(EKD)は、1946年以降の事例(報告書によると、1万件未満の非常に少ない件数)をまとめた独自の報告書を公表した。3月には、米国司法省が、南部バプテスト連盟の指導者たちが虐待の危機への対応を誤ったことについて刑事責任を問うかどうかを18か月にわたって調査し、最終的に、米国最大のプロテスタント宗派の指導者たちを告発しないことを決定した。

 6月25日、ロシア正教会の会議は、議題の78番目に、若い協力者に対する性的虐待疑惑と、2022年6月までモスクワ総主教の最も近いアドバイザーの一人であったブダペストおよびハンガリーの大主教、ヒラリオン・アルフェーエフによる財務汚職について議論した。アルフェエフは、ロシア正教会の教区の状況を調査する委員会の結論が出るまで、職務から一時的に外された。

 11月18日、米国長老教会(PCA)の最高裁判所は、ナッシュビルのイアン・シアーズ牧師を性的不品行の疑惑に関する懲戒処分とし、解任した。

 

2. 世界中のローマ・カトリック教会で今春以降も

 2月22日、オーストラリアで、ブルーム教区のクリストファー・サンダース司教が逮捕され、保釈された。彼は2008年から2014年の間に、主に先住民の若い男性に対して性的犯罪を犯した容疑で告発されていた。

 2024年3月、ベルギーのロジャー・ヴァンゲルー司教が甥の2人を含む未成年者に対する性的虐待を理由にバチカンから司祭職を解かれた、と報じられた。彼は数年の間隔を置いて、異なる時期にその事実を認めていた。

 4月30日、英ダーラム大学カトリック研究センターは「The Cross of the Moment」(イングランドとウェールズに関する)という報告書を公表した。

 6月14日、ワシントン・ポスト紙の報道を受け、米国カトリック司教協議会の全体会議において、高位聖職者たちは、カトリック教会が運営する「土着のカトリック教徒」のための寄宿学校における未成年者への虐待について謝罪した。

 10月、ロサンゼルス大司教区は、1,000件を超える数十年にわたる幼少期の性的虐待の訴えを和解させるため、8億8,000万ドルの暫定合意に達した。専門家によると、この和解金は大司教区による単一の支払額としては最高額であり、ロサンゼルスにおける性的虐待訴訟の累計支払額は15億ドルを超える。

 10月21日、教会における性的虐待の被害者に対する公式な謝罪と賠償が、マドリードのアルムデナ大聖堂のポーチコで行われた。この取り組みはマドリードのカトリック教会が推進したもので、イエズス会が主催した「第1回国際ヨルダン会議」の閉会式で、同教会の大司教ホセ・コボ枢機卿が発表した。この会議では、教会における権力の乱用に焦点が当てられた。

 

3. バチカンの聖職者による性的虐待への対応は

 1月30日、世界の聖職者による性的虐待問題を扱うはずのバチカン教理省は、「傷つきやすい成人」の定義に「18歳未満の未成年者以外にも、常習的に理性を不完全にしか使えない人々も含む、教理省の管轄範囲を超えるより広範な事例」を含めるよう強く主張した。したがって、これらの事例以外の他の事例は、管轄の省庁が対応する。教理省が管轄権を持つのは「未成年者に対する性的虐待(および精神障害者に対する虐待)のみ」であることを再確認するものだった。

 ローマのバチカンからすぐ近くの場所で、2月21日、BishopAccountability.orgの共同ディレクターであるアン・バレット・ドイルは、少なくとも20人から虐待の告発を受けている元イエズス会士で芸術家のマルコ・ルプニク神父の事件の隠蔽を非難する記者会見を行った。

 6月26日、教皇庁立未成年者保護委員会のショーン・オマリー枢機卿は、バチカン当局によるマルコ・ルプニク神父の作品の普及に関して、「司牧的思慮」を求める声明を発表した。この声明は、バチカン広報省のパオロ・ルッフィーニ長官が米国での記者会見で、バチカンメディアによるルプニク神父の画像の使用継続を擁護した数日後の発表となった。

 2024年7月、コロンブス騎士団はワシントンD.C.とコネチカット州ニューヘイブンにある礼拝所に展示されているルプニクによるモザイク画の展示について、「慎重かつ徹底的な見直しプロセスを完了した」と発表した。

 

 

4. 著名聖職者による不祥事も続々と明らかに

 2024年3月、慈善宿舎における虐待に関する学際的調査委員会(2023年に設置)の全委員が、教皇使節団との関係悪化により辞任した。

 7月17日に発表された報告書では、2007年に死去したカリスマ性のある司祭で、フランスで人気を博したアベ・ピエールを非難するカトリック女性が増えた。1949年にパリで設立された、貧困とホームレス問題に取り組むためのフランシスコ会修道士による国際連帯運動「エマオ国際」は、他の事件を記録するための調査活動を開始した。9月には、アベ・ピエールに対する新たな証言が17件寄せられた。

 その2日後の7月19日、聖職者評議会は、今後3年間にわたってフランスにある聖マルティヌス共同体内の改革を監督し、同共同体の亡き創設者であるジャン・フランソワ・ゲラン神父に対する精神的虐待の申し立てを調査する2人の使徒的補佐の任命を発表した。

 7月22日、AP通信の報道は、マルシアル・マシエル神父が創設した「キリストの軍団」の不祥事について、バチカンが1950年代からどれほど知っていたかについて、新たな光を投げかけた。

 9月25日、聖職者の性的虐待行為に関するマルタのチャールズ・シクルナ大司教とジョルディ・ベルトメウ司教による様々な調査を受け、ペルーの「Sodalicio de Vida Cristiana」のメンバー数名が教皇により追放されたことが、現地の教皇大使により発表された。

 10月、ソダリシィ内の虐待と金銭的腐敗に関する継続中の調査の一環として、バチカンは、教会と国家間の協定を悪用して税制上の優遇措置を得たことなど、性的虐待と金銭的腐敗の容疑で4人のメンバーを追放した。今年、物議を醸したこの運動から、創設者のルイス・フェルナンド・フィガリを含む合計15人のメンバーが追放された。

 11月11日、英国の新聞ガーディアンは、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の旅の途中で性的暴行を受けた女性たちの記事を掲載した。

 11月に、バチカンが、教皇庁公認の団体である「ファミリー・オブ・メアリー」の共同創設者であるオーストリア人のゲプハルト・パウル・マリア・ジル神父を、「明白な性的不品行を伴わない精神的・心理的虐待の罪」で有罪としたことが明らかになった。

 

 

5. 教会と国家、宗教と政治の関係における虐待危機の影響に関する展開

 

 7月、ニュージーランドでは、児童養護施設(世俗および宗教系、カトリックおよび聖公会)における虐待に関する王立調査委員会が6年間の調査を経て報告書を公表した。

 11月12日、ニュージーランドのクリストファー・ルソン首相は、議会において、養護施設(国営および教会運営の両施設)で何十万人もの子供や弱者が虐待、拷問、放置などの被害に遭っていたことについて、「公式かつ無条件」の謝罪を行った。

 9月の教皇フランシスコベルギー訪問は、スキャンダルの余波と、教会および公共機関における長年にわたる虐待に対する教皇の準備不足の対応により、一部に影を落とした。

 9月初旬、アイルランド政府が、カトリック修道会が運営するアイルランドの学校における性的虐待について調査する委員会を設置したことが発表された。予備調査で、過去の虐待に関する2400件近い申し立てが発見されたためだ。

 11月17日、オーストラリアのジュリア・ギラード前首相は、ビクトリア州で起きた少年への性的虐待事件について、最高裁が「カトリック教会には法的責任はない」との判決を下したことを受け、司法長官に対し、児童虐待の生存者に正義をどのように実現するかについて早急に検討するよう求めた。

 11月18日、英国の自由民主党の党首は、同党ウェールズ支部の党首が英国国教会に勤務していた際の性的虐待事件への対応について、自身の立場を再考すべきだと述べた。

*性的虐待問題へ”危険な免疫”と”有毒で伝染性の無関心”が…

 

 この長くて多様なリストは、不完全であるがゆえに衝撃的であり、2024年も、ここ数年の状況と特に変わらない。私たちは、ほぼ毎日のように虐待危機に関するニュースを少量ずつ目にしているため、ある種の”危険な免疫”と、”有毒で伝染性のある新たな形の無関心”を身に付けてしまった。

 教会が拡大するネットワークと意識の中で防止と保護に取り組んでいるという点では、良いニュースもある。しかし、虐待の根深い問題や広がりを理解し、把握するには、まだ多くのことがなされねばならない。

 また、制度としての教会にも、まだ多くのことがなされる必要がある。

 ローマで11月18日に開催された記者会見「Ending Clergy Abuse(聖職者による虐待の終結)」では、被害者で構成される国際的なグループが参加したが、2022年に教皇の聖職者虐待委員会と意見が合わず辞任し、現在はローマの教皇庁立グレゴリアン大学の保護施設を統括するハンス・ゾルナー神父(イエズス会)は「虐待で有罪判決を受けた聖職者は必ず聖職から追放される」ようにzero-tolerance policy(不適切な行為をいっさい容認しない対策)を世界中のカトリック教会で実施するよう、教皇フランシスコに強く求めた。

 教皇フランシスコが主宰した2019年の性的虐待に関するサミットが、その後の世界の教会にどのような影響をもたらしたのかは、まだ明らかになっていない。この新たな「当たり前な」状況に対処するためには、カトリックの学術・研究分野への新たな投資も必要である。このトピックは、あと数週間後に始まる2025年の聖年が期待するムードにはそぐわないかも知れないが。

Massimo Faggioli @MassimoFaggioli

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2024年11月22日

・バチカン未成年者・弱者保護委員会主催の欧州会合で25か国の司教、司祭、信徒約100人が性的虐待対応ネットワークで協力を確認

(2024.11.14 Vatican News   Kielce Gussie)

Mass being celebrated during the three day safeguarding conference
Mass being celebrated during the three day safeguarding conference

 バチカン未成年者・弱者保護委員会主催で13日から15日までローマで開かれた「欧州における被害者保護」の会合は、欧州の約25カ国から集まった司教、司祭、一般信徒など約100人の代表が教会における性的虐待に関する被害者保護と予防の経験を話し合い、さまざまな立場の人々が性的虐待への対応でネットワークを築き、協力することが極めて重要であることを確認した。

 性的虐待、その防止策、そして被害者の支援は、特定の国に限られた問題ではない。フランス、イギリス、スペイン、アイルランドなどヨーロッパのいくつかの国では、カトリック教会における性的虐待の事例に関する報告書が相次いで発表されており、この問題がどれほど欧州中の教会に蔓延しているかを示している。

 会合参加者の一人、イングランドおよびウェールズのカトリック教会の保護責任者、ポール・メイソン司教は、「私たちは孤立した形で務めを果たすことはできない。同じ立場にある様々な人の成功例や失敗例から学び、優れた実践を共有することが、私たち全員にとってより良いことだと考えている」と語った。

 会合での報告で、メイソン司教は、イングランドとウェールズでは、司教協議会が独立機関と協力し、教会組織における保護対策の監査、見直し、監視を実施しており、またカトリック教会の保護基準機関は、独立機関と教会関係者からなる委員会で構成され、全教区および宗教団体にわたって子供や弱者を守るための共通基準を定めている、と説明した。

 またアイルランド司教協議会の会長であるイーモン・マーティン大司教は、アイルランドの教会では被害者の癒しのプロセスにおいて2種類の支援を提供している、と説明。1つは心理的支援、もう1つは精神的な支援で、「虐待の最も悲しいことの1つは加害者が、教会に非常に近い人々であったこと」と述べ、教会への信頼を失くした被害者と共に歩むために必要な具体的方策について語った。

 マルタ大司教区のこの問題の責任者であるマーク・ペリカーノ氏は、同大司教区では保護委員会が防止と研修に重点的に取り組んでおり、「私たちは、防止活動と研修をより多く行うことで、虐待の被害者が減ることを強く期待しています」と説明。被害者支援にあたっては、加害者責任、説明責任、透明性、誠実性の4つの価値観を掲げている、と述べた。

 会合で参加者が語ったさまざまな経験から得た教訓に共通しているのは、「被害者の声を大切にすることに焦点を当てること」だった。また、メイソン司教は、「被害者の視点から保護の問題を見なくなると、まるで全体から心が失われてしまう」と、保護を”企業化”することに警鐘を鳴らした。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年11月15日

☩「虐待被害者保護の効果的で持続可能なプログラムへ人々と実践 のネットワークを」教皇、バチカン未成年者・弱者保護委員会の会合参加者に要請

File photo: Pope Francis writing a letterFile photo: Pope Francis writing a letter

(2024.11.13  Vatican News   Kielce Gussie)

 教皇フランシスコは13日、バチカン未成年者・弱者保護委員会主催の「欧州のカトリック教会における保護」をテーマにした会合に集まった約25カ国100人の司教、司祭、一般信徒からなる代表たちにメッセージを送られた。

 会合は13日から15日まで開かれ、2021年にポーランドのワルシャワで始まった保護に関する欧州ネットワークの活動をさらに進めることを目的としている。

 教皇はメッセージの冒頭で、戦争や紛争の中で会合に参加した国々の代表について、「あらゆる国境を越えた平和のための団結と連帯の雄弁な証人 」と讃えられた。

 そして、会合参加者全員に対して、虐待被害者保護の効果的で持続可能なプログラムを提供するため、情報を共有し、互いに支え合うことを目的とした 「人々と優れた実践 のネットワークの構築」へ期待を表明された。

 また、「正義、癒し、和解に対する教会の関心の表れとして、苦しみを抱えた人々に慰めと援助を提供」する促進策を生み出すよう促された。

 会合は、未成年者・弱者保護委員会のオマリー委員長(米ボストン大司教、枢機卿)のビデオあいさつで始まり、委員長はその中で、「文化、言語、民族、宗教の知恵を与えてくれる欧州の多様性」を指摘し、「こうした多様性が、カトリック教会で虐待を受けた子どもたち、そしていまは成人している人々の被害修復の助けになること」への期待を表明。 「被害者が声を上げるようにすること、虐待疑惑を調査する際に『適正な手続き』に従うと同時に、思いやりをもって対応すること」の重要性を強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年11月15日

・英国国教会の最高指導者、カンタベリー大主教が、性的虐待への対応を批判され、辞任

(2024.11.12 La Croix Héloïse de Neuville)

 英国国教会の最高指導者、ジャスティン・ウェルビー、カンタベリー大主教が12日、未成年者への性的虐待をめぐる事件への対応を批判する報告書の発表を受けて、引責辞任することを明らかにした。

 1956年1月生まれの大主教は、 石油業界で11年間のキャリアを積んだ後、ダラムのセント・ジョンズ・カレッジで聖職に就くための訓練を受け、 多くの教区教会で奉仕した後、2007年にリバプール教区長、2011年にダラム司教となり、2013年より英国国教会の第105代カンタベリー大主教を務めていた。英国国教会と世界の聖公会の両方を率い、進歩的な考え方で知られ、最近では、画期的な福音宣教計画に着手していた。

 大主教の辞任表明は、1970年代から2010年にかけてジョン・スマイスがサマーキャンプで少なくとも115人の少年や青年に対して犯した性的虐待に関して、英国国教会の高位聖職者が隠蔽工作を行っていた、とする独立機関の調査報告書、マキン・レポートが発表されて1週間後になされた。10月の世界代表司教会議(シノドス)総会に参加した英国国教会の代表者3人が11月9日にまとめたウェルビー大主教に辞任を求める嘆願書には、すでに5000人を超える署名が集まっている。

 英国国教会の弁護士であり、献身的な信徒とされていたスマイスは、報告書で 「間違いなく英国国教会に関連する最も多くの連続虐待を犯した人物」と糾弾。ウェルビー大主教がスマイスに関する虐待疑惑を知らなかったことは「ありえない」としている(ウェルビー大主教は強く否定しているが)が、2013年の大主教の事件への対応が注目されていた。

 報告書は、この年に、大主教はこの元弁護士に対する告発を公式に知らされた、とし、「大主教は警察に事実を報告することができたし、すべきだった」と明確に結論づけている。この事件が公になったのは、子どもたちへの虐待を特報したテレビ放送、チャンネル 4の調査報道がされた2017年のことだったが、ウェルビー大主教の不作為によって、スマイスは裁きを免れたまま、2018年に亡くなっている。

 ウェルビー大主教は「2013年から2024年までの長い間、被害者たちに”再トラウマ”を与えていることについて、私が個人的、組織的責任を取らなければならないことは極めて明白だ」と辞任の理由を説明した。大主教は事件を隠蔽したことについては否定したが、大主教としての職務を続け、英国国教会の性的虐待に対する信頼できる闘いを率いるために必要な権限を、もはや持っていないことを認めた。 そして、「今回の私の決断によって、英国国教会がいかに真剣に変革の必要性を理解し、より安全な教会を作ることに深くコミットしているかが明確にされることを願っている。退任にあたり、私は、すべての虐待の被害者、生存者と悲しみを分かち合いたい」と述べた。

 様々な国家機関に対するより広範な調査をもとにした4年前の報告書によると、1940年代から2018年の間に英国国教会の関係者390人が性犯罪で有罪判決を受けている。今回の不祥事は、さらに英国国教会に大きな泥を塗った形だ。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2024年11月13日

・フランスの司教団、成人の性的虐待被害者のための新制度の議論に決着がつかず、決定を来春まで延期(La Croix)

(2024.11.11  La Croix (with AFP)

 フランス司教協議会(CEF)は10日、ルルドで開いていた総会で「教会の性的虐待の成人被害者のための新制度」の決定を来年3月まで延期することに決めた、と発表した。

 CEF会長のド・ムラン=ボーフォール大司教は、総会の閉幕あいさつで、「今総会で、原則的に新制度は了承されたが、実施方法などでまだ検討作業が必要。来年3月の総会までの5か月間で、不明確な点を明確にすることができるだろう」と説明。CEFは今年3月の総会で、被害者に対する「傾聴と指導」システムの原則に合意し、今総会で決定、公表されると期待されていたが、大司教は、「被害者の方々がこの遅れに落胆し、傷ついていることは理解している。私たちは前進していく、という決意を固めている」と釈明した。

 総会での新制度の決定が先延ばしになった理由について、大司教は具体的に説明しなかったが、複数の関係者によると、新制度を実行する組織を、中央に一つ置くか、教会管区ごとに置くかで結論が出ていないのだ、という。

 ド・ムラン=ボーフォール大司教は、「私たちは、新制度によって、性的虐待被害者の認知と確固とした永続的な賠償の道を開きたい… 虐待に関与した司祭たちには責任を取らせるようにする」と明言。処罰などについては、「可能であれば、最初の道は教会法ではなく、民事裁判によるべきだ」と述べた。

 また、加害者が死亡している場合や、時効が成立している場合には、「私たちは、この国の法体系とは別の法体系を創設することはできない」とも述べ、「修復的正義」という道が残されているが、そのような選択をすれば、「批判を免れないことは承知している」し、「この任務を委ねられた人々の能力と、確固とした、議論の余地のない決定を下す能力を、確信する必要がある」と語った。

 関連して、大司教は、信者のみならずフランスの全国民に衝撃を与えた故アベ・ピエール神父の不祥事(フランスで路上生活者など社会的弱者への救済活動に尽力し、”聖人”とも讃えられていた同神父が、1970年代末から2005年にかけて7人の女性に対し性的暴行やセクハラなどを繰り返していたと、神父が創設した福祉団体「Emmaus International」が7月に調査報告書で明らかにしたこと)について触れ、「どれほど動揺し、不安定な状態に陥ったことか… 教会の記録は、1955年の米国訪問後に、彼が女性に対して暴力的な行動を取っていたことが知られていたことを明確に示しており、”措置”が取られていたことも明らか。だが、結局、すべてが忘れ去られてしまった」と深く反省した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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2024年11月12日

・「対応の遅れと透明性の欠如が、被害者を『再トラウマ化』、『賠償』は金銭だけでは済まない」バチカン未成年者・弱者保護員会が会見

(2024.10.30 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

ローマ発 -教皇フランシスコの虐待防止監視機関、未成年者・弱者保護委員会(PCPM)のショーン・オマリー委員長はじめ委員たち29日、初の年次報告書発表にあたって会見し、「教会当局に苦情を申し立てた被害者たちが結果が出るまで長い間待たされていること」「被害に関する情報提供が不十分なのこと」が、被害者にとっての大きな懸念材料であり、被害者の中には、このような現状を 「再トラウマ化 」と批判する声もある、と指摘した。

 記者会見に出席した、バチカンの未成年者・弱者保護委員会の委員で、チリの性的虐待被害者、フアン・カルロス・クルス氏は「(被害に関する教会の)透明性の問題は、個人的に経験し、自分にとって、非常に身近で大切なことです 」と語り、「多くの被害者にとって、教会から情報を提供されないことは、一種の『再トラウマ』。自分が虐待された事件がどう扱われたのか、どんな暗い穴の中に入ったのか、どこで情報を得られるのか、見当もつきません… 自分(が受けた性的虐待)の話を一億回しても、どこにも伝わらない、と感じることで、被害者たちは『再トラウマ』になってしますのです」と訴えた。

 29日に発表された報告書は、被害者保護に関する世界の教区、教会の取り組みにはバラつきがあり、特にバチカンにおいて虐待事件処理のための透明性の向上と合理化されたプロセスが必要だ、と指摘している。会見で、米ボストン名誉大司教でPCPM会長のオマリー枢機卿は、「被害者が事件に関する情報を得ることが困難であることを、非常に心配している」と語った。

 これは特に、聖職者による性的虐待事件を扱うバチカンの教理省(DDF)に苦情を寄せた被害者たちが指摘していることだ。DDFには苦情が滞留し、被害者は事件の状況について何も知らされないまま、何年も待たされることが多い。委員長は、DDFの対応は、文化や言語などの問題から、事件の発端となった現地の教会に情報を求めるのが一般的だが、報告書作成の過程で、「これがうまくいっていないことが分かった 」と述べた。

 オマリー委員長によると、さまざまな解決策が提案されており、そのひとつに 「被害者とのコミュニケーションを増やす 」ことが挙げられる、という。委員会は、事件の処理にかかる時間の長さについても「非常に懸念している」とし、世界中の司教協議会から「より良い手続き」を求められている、と述べた。事件の処理が滞っていることの解決策としては、判断が明確なケースに対処する「地域裁判所」の設立が考えられるが、「これはすでにいくつかの国で採用されており、素晴らしいパイロット・プロジェクトになりうる」と期待を示した。

 そして、「私の見る限り、それは必要な方法だ。DDFに持ち込まれる虐待事件の数は非常に多く、対応に窮することもある」とする一方、「民事裁判所の対応の問題もある。多くの事件がまず民事裁判所で裁かれるが、非常に時間がかかる」と指摘し、このように被害者が訴えも、判断を示される前に、「何年も待たされる人もいる… 正義の遅れは正義の否定 だ」と批判した。

 また、オマリー委員長は、バチカンの関係部局の取り組みを合理化する必要性についても語り、「様々な部局が虐待事件に関して異なる責任を担わされているが、処理に関する専門知識が不足しているため、対応に窮し、振り回されている 」と指摘した。

  会見に出席したボゴタの補佐司教でPCPMの幹事であるルイス・マヌエル・アリ・エレーラ司教は、「被害者の絶えることのない不満は、彼らの事案に関するコミュニケーション不足にある」とし、「こうした苦情は、バチカンだけでなく、世界各地の教区についても寄せられている」とし、これについてPCPMがDDFの規律部門と連絡を取り、被害者が事件に関する情報を得ることができるように助ける「調査官」を任命する方針が出されていることも明らかにした。

 エレーラ氏はCruxの取材に対して、教皇が2016年に出された勅令『Come una madre amorevole』司教が虐待事件の処理を怠った場合の手続き)や、2019年に発表された『Vos estis lux mundi』(教会内での虐待疑惑の報告義務)などの規範の実施状況もPCPMはフォローしており、「私たちが会う現地の教会は、『Vos Estis…』に対する理解と実行が一定のレベルに達している」との判断を示した。

 さらに、PCPMが特に世界南部の教会に具体的な支援を提供するメモラーレ・イニシアチブを通じ、「良い実践を地方教会に提供するために多大な労力を費やしている」のはそのためだ、と説明。「透明性と情報がなければならない。私たちPCPMは、日々の業務においても、次回の報告書においても、この分野を注意深く追っていく」 と言明した。

 またエレーラ司教は、「虐待予防と被害者保護に関する教会とバチカンの内部文化を変える戦いは困難だが、ゆっくりと前進している」とし、「PCPMのメンバーになって10年、自分が愛し、自分の人生を捧げてきた組織の抵抗を目の当たりにすることは、私にとって十字架だった。しかし、間違いなく、この数年間で多くの重要な変化も起きている」と語った。

   性的虐待の被害者であるクルス氏も、「15年前に私の闘いが始まった時、そして他の人たちがもっと何年も何十年も闘い続けてきた時、私が優れた方々と性的虐待問題に取り組み、この記者会見席に座るとは、思ってもみなかった」とし、「被害者遺族から専門家、ジャーナリスト、教皇フランシスコに至るまで、保護活動の進展を後押ししてきたすべての人々に感謝し、より大きな安全と透明性に到達するための 重要な第一歩 であるこの報告書に、 多大な希望を抱いている」と述べた。

 また、クルス氏はPCPMがDDFに組み入れられたことで、「当初は委員会の独立性が失われることを懸念したが、今では、その見方は大きく変わり、教理省内部ではこの問題が考えていたよりも真剣に受け止められていると感じている」とし、オマリー委員長も「委員会が、バチカンの部局に組み込まれることで恒久的な地位を得られたことは、非常に有益なこと」と語った。

 委員長は、バチカンのさまざまな部局との関わりを、「まだ始まったばかりの ”スローダンス ”」と表現し、「これが進むことで、被害者の声が、もっと明確に、対応に反映されるようになると信じている」と述べ、「被害者への『賠償』は金銭だけでなく、教会の謝罪や加害者の処罰も含まれる… 今後の報告書では賠償の問題についても検討する」と言明した。

 また、修道女や神学生など、成人に対する虐待の事例が増加していることから、「弱い立場にある成人」の定義をより明確にするための研究グループも設けられたことを明らかにした。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年10月31日

・「正義が無ければ、被害者の傷は癒されない」バチカン未成年者・弱者保護委員会のオマリー委員長が報告書発表会見で

(2024.10.29 Vatican News   Christopher Wells)

   バチカンの未成年者・弱者保護委員会の委員長、オマリー枢機卿が29日、記者会見を開いて、委員会として初の年次報告書を発表し、正義と癒しを結びつけるという教会の関心と、「このような犯罪が私たちの世界でいかに一般的になされてしまっているか 」について人々を教育する必要性を強調した。

 報告書は、性的虐待を主とする虐待という犯罪について人々を教育する教会の役割を強調している。オマリー委員長は「教会の関心事は、被害者に正義を提供することでなければならない」と述べ、虐待犯罪が時効に達したケースの場合、教会には 「司法の運営に関わるより大きな責任 」がある、と主張した。

 また、性的虐待の防止や被害者の保護やケアなどで「まだなすべきことがある」とし、「我々は、まだ長い道のりを歩まなければならない」と言明しつつ、この報告書が、その原点となることを強く希望した。

 Vatican Newsのオマリー委員長との一問一答は以下の通り。

 問:まず、バチカン未成年・弱者保護委員会にとって初の年次報告書の概要を教えてほしい。大部分が委員会の10年間の活動についての説明で占められているようだが、今後の委員会の資産の一部となるのか?

オマリー枢機卿 :初の報告書発表は、我々にとって非常に重要な瞬間だと思う。委員会のメンバー更新は、委員会発足以来、今年で3回目だ。委員会活動の初めは困難なものだった。なぜなら、私たちは約20人のボランティアで構成されたグループで、スタッフも非常に少人数で、仕事は全世界を対象としていたからだ。確かに教皇は、私たちに絶大な信頼を寄せてくださった。世界中から集まった多くの専門家、多くの被害者、被害者の親たち。彼らの中には自分のこれまでの人生や歴史や経験についてかなり公にする者もいるし、控えめな人もいる。だが、彼らは委員会の活動に多大な貢献をしてくれている。

 当初、委員会に過大な期待を抱いた人たちは、私たちが”万能薬”となり、教会における被害防止・被害者保護の問題をすべて解決してくれる、と考えていた。そのような非現実的な期待を抱いた人たちから、「自分たちの夢のすべてを、すぐに叶えることができなかった」と、沢山の非難を浴びた。一方で「その問題は、もう対処済みだ。委員会は必要ないし、あなたたちはトラブルメーカーでしかない」という批判も…。だから、多くの困難があった。

 しかし、委員会の委員は、非常にしっかりとした人たちだった。バチカンの各種の委員会の中で珍しいことだ。教会のメンバーでない人もいるし、他の宗教のメンバーもいる。しかし、皆に共通しているのは、虐待防止の活動に対する情熱と、被害者の声に耳を傾け、何とか教会の中で被害者の声を代弁したい、という願望だ。

 

 

問: 報告書について具体的な質問をひとつしたい。これから数日、数週間、多くの質問があり、多くの展開があるだろう。教会は虐待防止・被害者保護を重視しているようだ。もちろん、二度とそのようなことが起こらないようにするのが最優先だ。実際に起きた場合は、それに対処し、問題に対処する。報告書は、「正義」と「賠償」の問題にも言及している。具体的に何を述べ、教会はそれらの分野で何をしているのか、少し話してもらえるだろうか?

 

オマリー枢機卿: 確かに、私たちの委員会の責任は、保護的な部分に重点があるが、教会は「正義」について強い関心を持たねばならない。そしてそれは、故ベネディクト16世教皇によって、性的虐待など虐待の事案への対処が教理省に割り当てられた以上、教理省の責任であり、また世界の各教区も、これらの事案の法的側面を整理し、政府当局と協力する責任がある。だから、司法の要素は非常に重要だ。性的虐待のような事案は、時には時効を遥かに遡ることもある。その場合、国が捜査や訴追を行わないなら、教会が司法面の対応に関与する義務がある。だからこそ、教理省の規律部門は真実を突き止め、公正な方法でそれに対処するための重要な役割を担ってきたのだ。

 しかし、「正義」がなければ「癒し」はない。ひどく不当な扱いを受け、傷つけられた人々は、「耳に心地良い言葉」を聞いたり、「文書」を見たりしたいわけではない。話を聴いてもらい、自分たちになした悪に対して、「教会が償いをしようとしている」と感じる権利があるのだ。

 

 

問:あなたは、教会内の一部の人々があなたがたの活動に熱心でない、ということに言及した。私たちは、委員会が最良の慣行について、あるいは被害者のために何ができるかについて提案することがある。そして、おそらく教会の人々は、あなたがたの言うことに耳を貸さないのだろう。あなたには説明責任を果たさせる直接的な権限がないことは承知しているが、教会の指導者たちがあなたがたの提案を受け入れるようにするために、教会は何ができるのか?

オマリー枢機卿 :我々は人々を教育しようとしている。被害予防と被害者保護の体制の必要性について非常に幅広い教育を行うことだ。多くの人々は、このような犯罪が、私たちの世界や社会でいかに一般的になってしまっているのかを知らない。教会が私たちの家庭を整えるために良い仕事をすることができ、それがより大きな共同体社会への奉仕になることを、私は望んでいる。

 そして私たちは、米国でさまざまな形でそれを目の当たりにしてきた。他の多くの教会や組織が私たちのところにやって来て、「あなたがたはこのような方針を打ち出し、このような経験をしてきた。それを、私たちと分かち合ってくれますか」と言った。

 だが、まず、虐待が広く存在することを人々に認識させ、私たちがどのようにこれに対応し、二度とこのようなことが起こらないように尽力しない限り、虐待はなくならないと思う。私のユダヤ人の友人がホロコーストについて語るようなものだ。何が起こったかを覚えていなければ、また同じことが起こる危険性がある。だから、このことを人々の心に留めておくことがとても重要なのだ。これは遠い過去の話ではない。現在、そして将来にわたって子どもたちや若者を守るための約束なのだ。

:ひと言で言うと、報告書は被害者や、教会の虐待への対応にまだ懸念を抱いているカトリック信者に何を語りかけているのか?

オマリー枢機卿 :私は、この報告書の幅の広さが、彼らの慰めになることを望んでいる。報告書の暴露本のようなものを期待している人もいるだろう。この報告書はそのようなものではない。全世界で「保護文化」が定着するのを促進するために、今、何が行われているかを測るためのものだ。

 今回、調査対象となった国の中には、虐待防止・被害者保護について非常に資金不足の国もある。私の教会共同体はパプアニューギニアで活動拠点を持っている。そこに行ったことがあるが、人々の生活はとても質素だ。500もの言語がある。貧困が多く、文盲も多い。そしてそこでは、教会が、虐待防止や被害者保護について、そして世界中で話している。

 世界の司教たちが定例のバチカン訪問をする際に、私たちは彼らに、「虐待防止・被害者保護のガイドラインはどのように機能しているか」「やるべきことをやっていない地域はどこか」「その結果はどうなのか」などについて聴くことにしている。このような会話が世界中で行われている。私の委員会の焦点は、特に南半球にある。この地域では、虐待予防・被害者保護の司牧の関与が遅れていた。しかし、私たちは多くの進歩を遂げ、司教や現地の人々は、より多くのことを学び、学習・訓練に参加し、説明責任、透明性、聖職者の行動規範、神学生や修練生、教師、教会の指導者に対する審査の重要性を教えたいと願っている。

 このようなことが今、世界中で行われている。数年前までは、そうではなかっただろう。このことに人々が慰めを見出してくれることを願っている。私たちにはまだ長い道のりがあるが、歩みは今、始まったのだ。

*ショーン・パトリック・オマリー枢機卿は、米国オハイオ州レイクウッドで生まれ、カプチン会士。2003年から2024年8月までボストン大司教を務め、2014年に教皇庁未成年者・弱者保護委員会委員長に就任した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年10月30日

・バチカンの未成年者・弱者保護委員会、全世界の教会対象の初の調査結果発表ー性的虐待に厳格な対応求める

(2024.10.29  Vatican News   Salvatore Cernuzio)

 

 その調査・分析結果によると、「教会組織や教会当局の中には、虐待被害の予防や被害者保護に対する明確な責任体制をとるところがある一方、虐待に対処する責任を引き受け始めたばかりのところもある」と、国や教区などによって対応に未だにバラつきがあることを指摘。そして、教皇が2019年5月に出された「虐待や暴力を届け出るための新しい手続きを定め、司教や修道会の長上らにとるべき態度を周知させる」自発教令「Vos estis lux mundi」で指示していた「虐待被害の報告体制や被害者に対するケアの体制」を欠いているところもある、と批判している。

 

 

 

*中南米、アフリカ、アジアの多くの地域で被害予防・被害者保護のための資源が不足

 

 作業グループが収集した大陸レベルのデータでも、虐待への対応にバラつきがあり、米大陸、欧州、そしてオセアニアの一部は、被害の予防、被害者保護などに使うことのできる「(人的・物的)資源」が「相当にある」が、中南米、アフリカ、アジアの多くの地域では、そのような資源が「不足している 」ことが明らかになった。

 委員会は報告書で、「司教協議会間の連帯」を強め、「保護における普遍的な基準のために資源」を動員し、「虐待被害者に関する報告と彼らを(精神的、身体的に)支援するセンター」を設け、「真の保護文化を発展させることが不可欠だ」と言明している。

 

 

 

*バチカン関係部局は世界の現地教会との被害防止ネットワークの要の役割を果たせ

 報告書の第3部は、バチカンの教理省など関係部局に焦点を当て、バチカンは 「ネットワークの中のネットワーク 」として、「虐待予防と被害者保護の最良の慣行を世界の現地の教会と共有するハブとしての役割を果たすことができる」と強調。バチカンの担当部局は、バチカンの手続きと虐待事件に関する判例において、透明性を高めるために、共有された展望に立って、信頼できる情報を収集しようとしている、としている。

 またバチカン教理省で虐待案件を扱う規律部門がその活動に関する限られた統計情報を公に共有していることを指摘したうえで、外部関係者の情報へのアクセスを増やすよう求めている。その他の対応として、「様々な教区の保護責任の伝達」、「教皇庁全体で共有された基準の促進」、「教区の業務に、被害が原因の心的障害を考慮した被害者中心の対応を取り入れる 」ことを挙げている。

*国際カリタス、地域カリタス、国レベル・カリタスでも被害防止・被害者保護の対応にバラつき

 報告書では、カトリックの慈善事業団体、カリタスに関する事例研究調査の結果も紹介されている。対象とされたのは、 世界レベルの国際カリタス、地域レベルのカリタス・オセアニア、国レベルのカリタス・チリ、教区レベルのカリタス・ナイロビだ。報告書は、カリタスの使命の 「非常な複雑 」さと、被害の防止およち被害者保護の体制の最近の進歩を認める一方で、「それぞれのカリタスで被害防止・被害者保護の実践に大きなばらつきがある 」ことも指摘し、懸念事項として挙げている。

*虐待問題に対応する資源が不足する教会を支援するMemorare運動に司教協議会、修道会などから援助金

 また報告書は、虐待問題に対応する人的・物的資源が足りない現地教会を支援するため、過去10年にわたって、世界の司教協議会や修道会から資金を集めてきたMemorare運動にも言及。

 運動の目的は、虐待の報告・被害者支援センター、現地での研修事業、”グローバル・サウス”における虐待防止・被害者保護の専門家のネットワークを発展させることにあり、2023年にはイタリア司教協議会から50万ユーロ(総額150万ユーロの支援を約束)、修道会から3万5千ユーロ、バチカンの財団から10万ドル(3年間に総額30万ドル)の年次寄付を受けた。

 さらに、スペイン司教協議会は、未成年者・弱者保護委員会が選定したプロジェクトを支援し、年間30万ドル(3年間で総額90万ドル)を拠出することを約束している、としている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2024年10月30日

・「善が何もしないときに、悪が勝つ」-マドリードで、性的虐待の被害者たちが”自分たち”の教会に警告(Crux)

Moment of prayer at La Almudena in Madrid, Spain. (Credit: Religión Digital.)

This article appeared in Spanish on Oct. 21 in Religión Digital.

2024年10月25日