・一審無罪だが原告が控訴中の性的虐待容疑のインドの司教の辞表、教皇が受理(Crux)

(2023.6.3  Crux   Contributor  Nirmala Carvalho)

ムンバイ発 – 教皇フランシスコは1日付けで、インド北部のジャランダル教区長、フランコ・ムラッカル司教の教区長辞任の届け出を受理した。ムラッカル司教は、2014年から2年間に修道女に対して13回にわたって性的暴行を働いたとして被害者から訴えられ、逮捕され、2022年にケララ州の地方裁判所で無罪判決となったものの、原告側が不服として高等裁判所に控訴中だ。

 教区長としての職務を解いたことについて、駐印バチカン大使館は声明で、解任は懲戒処分ではなく、教区の”治癒”を進めることを目的としていることを示唆し、「ムラッカル師は引き続き司教の座にとどまり、活動に教会法上の制限は課されない」と説明している。

 ムラッカル司教は2013年からジャランダル教区長を務めているが、現在59歳で、司教定年とされている75歳よりもはるかに若い。本人は、友人や関係者に送ったビデオメッセージで、「教皇は、私が上司との話し合いと祈りをもって書いた辞表を受理された。喜びと感謝の気持ちを込めてこのことをお知らせする」とし、「この機会に、私は直接的、間接的に経験したすべての苦しみと、それが十字架につけられた主の足元に引き起こした困難を捧げます。 神のご加護がありますように」と述べている。

 ムラッカル司教はインド南部ケララ州出身。裁判で原告となった修道女は、2014年から2016年の間に司教が教会を訪問中に13回も性的暴行を働いた、と訴え、彼は、強姦罪で逮捕されたインド初のカトリック司教となった。

 同州の他の5人の修道女も原告を支持したが、これに対して司教は「原告の修道女は自分が不倫を働いた相手の男性の妻から訴えられた報復として、うその性的暴行被害を訴えたのだ」と反論。ケララ州地方裁判所で 2019年11月から2022年1月にかけて39人が証人として出廷して審理が行われた結果、「原告の証言には『誇張と粉飾』が含まれていた」として、無罪判決を出した。

 この判決に対して、ソーシャルメディア上で抗議が起こり、抗議した人の中には「裁判官が事実上、原告を裁判にかける結果になった」とする女性の権利擁護の運動家も含まれており、 検察側は判決を不服として、原告と原告を支援する人々と共にケララ州高等裁判所に控訴している。

 駐印バチカン大使館は声明で、バチカンは、インドの司法当局の判断に従う、としたうえで、教皇のムラッカル司教の教区長としての辞表受理は、「裁判によるものではなく、『司牧的措置』。ジャランダル教区の”健康”のため。ムラッカル司教をめぐって大きな論争が起き、分裂状況を生み出していることから、新しい教区長が必要となった」と説明している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2023年6月4日

・ブラジルのカトリック教会でも聖職者108人による未成年者性的虐待発覚-氷山の一角?(Crux)

(2023.6.2 Crux  Contributor  Eduardo Campos Lima) 

 サンパウロ 発– ブラジルのカトリック教会でも聖職者による未成年者性的虐待が広範囲にわたっていることが明らかになった。同国のジャーナリスト2人が今週初めに出版した『Pedofilia na Igreja』(「教会における小児性愛」)によると、2000年からこれまでに108人の聖職者が、148人の子供と十代の若者に性的虐待をし、うち60人が有罪判決を受け、懲役刑を言い渡され、さらに数十人が公判中。それでも、これらは「氷山の一角」にすぎない、としている。

 共著者のファビオ・グスマン、ジャンパオロ・モルガド・ブラガ両氏はこの本をまとめるにあたって、同国の裁判所や警察署、公的資料保管所に保管されている数千件の司法関係の文書、未成年に対する性的虐待に関する国際データバンク、ニュース記事などを収集・分析、さらに、数十人の被害者と親族、司祭、検察官、警察職員にも聴取した。

 2人は「ブラジルは世界最大のカトリック国家であり、ここに教会は巨大な規模だが、 ポルトガルやフランスなどの教会が未成年者虐待を精査する第三者委員会を設立しているが、ブラジルではまだそうしたことが行われていない」と述べ、「最近数年間にブラジルの教会は未成年性的虐待に対して前向きな姿勢を強めてきたが、教会として責任を負い、虐待撲滅への姿勢を明確にするためには、まだやるべきことが多くある」と強調している。

 さらにグスマン氏は「性的虐待に関する民事訴訟で教区がとっている対応は、そのことを浮き彫りにしている… ほとんどの教区の法廷での戦略は、「犯罪行為は司祭職とは無関係」「虐待は教会の外で起こった」などを繰り返し主張し、加害者の司祭と被害者を引き離すことにあった。教会、加害者司祭の責任を回避するやり方だ」と批判。

 さらに、約1億2300万人の信徒を擁するブラジルのカトリック教会が、「20年以上にわたる聖職者による性的虐待に対して、被害者への賠償金の支払いを余儀なくされたのはわずか約20万ドルにとどまっている… 約7000万人のカトリック教徒がいる米国の教会が、被害者への損害賠償金など訴訟を解決するために40億ドルを超える金額を支払った、とされているのと、対照的です」とし、「ブラジルの教会が未成年性的虐待との闘いに本気で取り組んでいたら、被害者が訴訟を起こす前に、和解が成立していただろう」と指摘した。

 また著者たちは、ブラジルにおける聖職者による未成年性的虐待の深刻さを、被害を受けた当時、わずか3歳だった少女の例を上げる。「ブラジル南部、サンタ・カタリーナ州にいた彼女は、ウクライナ・カトリック教会の神父と学校の教師から虐待を受けたのです。司祭たちの犯罪を調べると、彼らがいかに巧みで、犯罪を実行するのにどのようにしたらいいかを、正確に知っていることが分かる。そして、彼らは、その結果が『自分たちに何の影響も及ぼさない』と考えているようだ」と言う。

 そして、犯罪実行の一種の”ガイドブック”を書いていたタルシシオ・タデウ・スプリシゴという元司祭の例を挙げた。「 警察に押収された彼の手帳には、シングルマザーに育てられ、音楽教室に惹かれる可能性のある7歳から10歳の貧しい少年たちが”理想的なターゲット”として特記されていた。そして、少年たちを誘惑するための”秘訣”として、『いつも自信を持ち、真面目で、立派で、父親のようであり、決して質問をしないが、常に理解してくれている、と相手が信頼するようにする」ことが書かれ、自身の犯罪行為の説明もされていた」という。

 この神父は、過去15年間に3つの州で性的虐待をし、5歳、8歳、13歳の少年を虐待した罪で有罪判決を受けた。「司祭としての資格はく奪後も、音楽教師として虐待を続けていたことが明らかになっており、このことは、性的虐待に対して司祭の上司や司教が、適切な行動を起こさなかったことを示しているケースもあること」を示している。

 フランシスコ会のパウロ・バック神父を、被害者が虐待の罪で告発することを決めた2012年に、神父の地元、サンタカタリーナ州のフォルキリヒンハ市では既にそのことがよく知られていた。告発されたのを受けて、他の都市からも非難の嵐が殺到。 数十年前に行われた性的虐待までも明らかになった。警察が押収した彼のパソコンを調べたところ、フランシスコ会の上長との間でやりとりされた電子メールが見つかり、彼の行動がすでに修道会の上長と司教の両方に知られていたことが明らかになった。「司教館での会議で、私たちはそこで起こったことすべてを秘密にすることで合意した…」と上長は電子メールメッセージで述べた、とされている。

 バックは逮捕され、懲役26年の判決を受けたが、拘置所にいたのはわずか1年5カ月で、その後自宅軟禁に移された。 グスマン、ブラガ両氏が彼の足取りをたどったところ、2018年現在もサンパウロ州ブラガンサ・パウリスタのフランシスコ会の修道院で司祭として生活していることを見つけた。

 「私たちは、各教区が自らを精査し、責任を問うことができることを望んでいる。 それが教会の信頼回復への唯一の方法だ」とグスマン氏は語り、「地域社会が子供たちを守ることができるよう、虐待した司祭のリストを教区がオンラインで公開すべきだ」と主張した。

 「他の国ではそれがすでに現実となっているが、ブラジルでは遠い話のように思われる。教会だけでなく、ブラジルの機関や組織も慣行を見直す必要がある。 例えば、マスコミは通常、虐待に関する記事をエピソード的に取り上げ、しばらくすると事件を追わなくなるため、教会も一般社会も忘れてしまうのだ」と不満を述べた。

 また、「ブラジルの司法制度では、被害者を保護するために、事件を秘密にしている。そのことが、加害者も”保護”されるという結果になり、被害者が被害を名乗り出ることを難しくしている」とも指摘し、「コミュニティも変わらなければならない。被害者が司祭を告発したところ、教会の信徒たちが、加害者の司祭の側に立つケースもあった。小さな都市や貧しい地域社会ほど、司祭の影響力は非常に大きい可能性があるが、 教区が信者に虐待の状況を適切に知らせれば、性的虐待の再発を防げるようになるだろう」とも語っている。

 著者たちは、「ブラジルでは、ほとんどの性的虐待被害者が、地域社会や教会から放っておかれている。 当然のことながら、被害者やこのような実態を見た信徒たちの多くは、カトリック教会から離れてしまっている」とも述べ、「多くの虐待被害者がこの報告書を読んで、加害者を勇気をもって告発した信徒がいることを知り、ある種の慰めを感じるだろう。 これが教会の変革の始まりになることを期待したい。フラジル社会が教会と司法制度を動員して圧力をかければ、状況は変わる可能性がある」と期待を述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年6月2日

・イタリア最大のカトリック信徒団体幹部が未成年性的虐待で逮捕(Crux)

Mirko Campoli. (Credit: Youtube screen capture.)

Abuse scandal in Italy raises issues of lay supervision, disclosure

(2023.5.26  Crux Staff)

 ローマ発 –教皇のおひざ元の イタリアで、新たな性的虐待スキャンダルが発生した。同国最大のカトリック信徒団体の著名な幹部が少なくとも未成年者4人に性的虐待を働いた罪で司法当局に逮捕されたものだ。

 この事件で、 容疑者が聖職者ではなく一般信徒だった場合の責任の所在、説明責任に新たな課題も浮上している。

 逮捕されたのは、「Azione Cattolica (カトリック・アクション)の青少年部門の元責任者、ミルコ・カンポリ(46)。犯行当時10歳から14歳だった少なくとも4人の未成年者に性的虐待をした容疑で5月23日に逮捕された。現在、足首に電子監視ブレスレットを装着することを条件に自宅軟禁の状態に置かれている。

  Azione Cattolica は、1867 年に設立された、伝統あるイタリアで最大のカトリック信徒団体。会員数は 1950 年代後半には 300 万人を超えていたが、 現在は 信徒の”教会離れ”を背景にして、27万人程度になっている。

 カンポリは、2002 年から 2008 年までAzione Cattolica の青少年部門の責任者を務めた後、ローマ郊外のチボリ教区の大規模な高校の副理事長になるとともに、同教区のAzione Cattolicaのコーディネーターも務めた。最近では、ローマにある性的虐待の被害者を持つ家族のための施設で働いていた。また、若者向けの宗教教育に関する出版物を多数執筆し、新型コロナウイルス感染拡大で学校が閉鎖された若者たち向けに信仰教育のビデオを制作。イタリア司教協議会の運営するテレビ放送で教会が運営する青少年キャンプの宣伝にも一役買っていた。

 カンポリ容疑者について、ある検察官は「憎むことのできない人物、第二の父親とも言われる、誰もが知っていて好かれる人物」である反面、「被害者に高価な贈り物をして、訴えを封じるだけでなく、思春期独特の悩みに耳を傾け、なだめ、怒りや不安を無くすことのできる人物」としている。

 イタリアのメディアによると、カンポリを訴えた被害者は4人で、2016年から、学校や協会主催の旅行中に繰り返し性的虐待を受けたという。カンポリに対する性的虐待疑惑は2020年に表面化し、学校副理事長の職を説かれ、教区司教によって宗教教師としての免許も取り消されている。だが、関係者によると、その後、ローマにもどったカンポリは新たな職を得、そこでも性的虐待を繰り返してきた、という。

 チボリのフランチェスコ・メンディット検察官は5月23日の記者会見で、「教会当局が司法当局への報告を十分にしなかった。それがされていれば、この男の犯行をもっと早く止めることができた」と教会の隠ぺい体質を批判した。

 これに対して、チボリ教区は声明を出し、「教区の家族相談センターが、カンポリに性的虐待の疑いがあることを知った時点で、速やかに司法当局に通知している。被害者の両親から告発を受け、それが信頼できると判断した時点で、宗教教師としての免許も取り消した」と反論。イタリア司教協議会のマッテオ・ズッピ枢機卿も25日の記者会見で「チボリ教区の司教は責任を果たしている。隠ぺいの批判を受け入れられない」と述べた。また、イタリア司教協議会は今秋、11月13日から16日まで、未成年者の保護をテーマにした臨時総会をアッシジで開催する予定にしている。

 こうした教会当局に、現地メディアはチボリ教区の評議会が自己のフェイスブックに、カンポリの「ここ数年の働きに心から感謝する」旨のメモを載せ、また同教区のソーシャルメディアチャンネルへのカンポリの投稿は、逮捕時点まで閲覧可能だった、と指摘。

 メンディット検察官は、「教会当局者の対応は、”マフィア”に似ている。親(である教会当局者)は自分の子ども(である信徒たち)が受けたかもしれない暴力が事実であるこを受け入れたくないので、それを隠蔽しようとし、まして未成年者のことを信じようとしない」と重ねて批判し、さらに「多くの場合、被害者やその親たちは教会当局者としか話しませんが、教会当局は内部で状況を管理しようとする傾向があります」と語っている。

 また、ある関係者は、「カンポリ事件」の問題のひとつは、「責任の境界線」が曖昧であることだ、と指摘する。Azione Cattolica、チボリ教区、カンポリが副理事長を務めていた学校、地元の検察と警察、あるいはカンポリの監督や告発に主な責任を負うべき機関が明確になっていないのだという。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年5月27日

・バチカンの未成年保護委員会、性的虐待対処の新戦略を発表

Members of the Pontifical Commission for the Protection of MinorsMembers of the Pontifical Commission for the Protection of Minors  (Vatican Media)

*「教皇が求められた事柄を全力で達成する」とオマリー枢機卿

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年5月9日

☩「 性的虐待への不適切な対応が、神の愛に対する証しを台無しにしている」教皇、未成年保護委員会総会参加者に

Pope Francis addressing the Vatican Commission for the Protection of Minors Pope Francis addressing the Vatican Commission for the Protection of Minors   (Vatican Media)

(2023.5.5 Vatican News   Lisa Zengarini)

    教皇フランシスコは5日開かれたバチカンの未成年者保護委員会総会で、出席した委員たちに対して、委員会の活動が困難で「あまり良い方向への変化が見られない」との印象を与えていることにひるむことなく、粘り強く、前に進むよう求められた。

 そして、「教会の置ける性的虐待を防ぐために、聖職者、修道者の行動に関する規範と基準を改善する努力を続けねばなりません」と語られた。

 委員会はフランシスコが教皇に就任された翌年の2014年に設置されたが、総会は昨年6月に出された使徒憲章「Praedicate Evangelium」で教理省に位置付けられて以来、二度目となる。

 総会の議題は、世界各国の司教協議会がまとめる未成年保護に関する報告書の年次監査を行うとされている委員会の職務の見直し、 5 年間の活動計画の見直しのほか、委員会の作業方法、役割、責任をいかに明確にするかについての率直な意見の交換などが予定されている。

 

*危機に直面して、教会は沈黙したり、活動を止めたりしない

その一方で教皇は、「教会が沈黙したり、活動を止めたりしているわけではありません」とされ、虐待の告発を受け止め、被害者のケアの体制を進めることを世界の教会に求める自発教令「Vos Estis Lux Mundi」を最近、再確認したことを指摘。

「 被害を訴えた人達に対して、司教や修道会の上長に、自身が犯した虐待や隠蔽の責任を負わせること、この自発協定の定めは、恒久的に実施される」ことを確認されたうえで、「今日、『教会における性的虐待の現実に影響を受けていない』と正直に言い切れる人は誰もいない」と強い言葉で念を押された。

*虐待被害者、家族、友人たちの人生の修復を助けよ

 さらに委員たちに対して、教皇は、性的虐待によって破壊された「多くの被害者の家族や友人などの人生」を修復するのを助けるよう求められ、次のような最近の体験を語られた。

 「私は虐待被害者のグループと面談し、率直な意見を聞きました。彼らは、約 50 年前に通っていた学校を運営する宗教施設の指導者との面会を希望していました。全員が高齢で、『余生を平和に過ごしたい』と願われた方がいましたが、 彼らにとっての『平和』とは、自分を傷つけた教会との関係を修復することを意味するのです」。

*教会のための償いの瞬間

 また、委員たちに、行動において、優しくあり、互いに重荷を負い、不平をもらすことなく、「教会のための償いのこの瞬間が、救いの歴史のさらなる瞬間に取って代わられること」を念頭に置くように勧められ、「今こそ、前の世代と苦しみ続けている人々に与えられたダメージを修復する時です」と訴えられた。

 そして、教皇としての過去 10 年間に、さまざまな教会が性的虐待に対処するための専門知識を提供してくれたことを思い起こされ、「未成年者や脆弱な人々を保護することの重要性は、すべての人に共通のルール…  すべての人の尊厳を文化や経済的、社会的状況とは関係なく守るための、正しい行動と健全な生活様式が普遍的なルールにならねばならない」と強調。

 さらに「教会のすべての司牧者は、信者に奉仕する方法においてこのルールを守らねばならず、すべての信者は、教会共同体を率いる人々から敬意と尊厳を持って扱われなければなりません」と説かれた。

*問題対処への専門知識を教皇庁と共有するように

 講話の最後に教皇は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの虐待被害者への教習プログラムと支援の拡大を通して、教会内の不平等に対処する委員会の計画を承認するとともに、福音宣教のための世界各国の教区との最近の協力協定を評価され、教皇庁と、この複雑な問題に対処する専門知識を共有するよう求められた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年5月5日

・性的虐待対策の著名専門家が、バチカンの未成年保護委員会の委員を辞任ー「機能に懸念、これ以上続けられない」と

(2023.4.18  Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen

 さらに2021年、委員会のボブ・オリバー事務局長が突然交代し、彼の名前のない委員会メンバーの再任がバチカンのニュース速報で発表されるまでそれが知らされなかったことで、多くの関係者が後味の悪い経験をしている。

 そして、昨年、バチカンの機構改革の一環として、教皇が、この委員会を教理省の一部門に位置付けたことで、その有効性にさらなる疑問が投げかけられた― 委員会の独立性が保たれるだろうか、伝統的に変化に抵抗するバチカンの官僚機構にうまく対応しながら、効果的な業務が続けられるだろうか、と。

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 3月にゾルナー神父が委員を辞任した際、委員会は、彼のこれまでの奉仕に感謝を述べ、今後は、グレゴリアン大学の人類学研究所の所長職とともに未成年支援の新たな任務に就くために辞任したことを示唆した。

 だが、ゾルナー神父はその直後に声明を出し、委員会には説明責任や透明性に欠点があり、「これ以上、委員を続けられなくなった」と述べ、委員長のオマリー枢機卿と委員の関係悪化を止める努力が実らなかったことをほのめかした。また新委員の選出、その役割と責任についての明確さが欠けており、重要な決定過程に関する透明性、委員の意思疎通、委員会と教理省の協力関係についての管理ルールなどが欠けている、と指摘した。

 声明で、ゾルナー神父は「未成年者や脆弱な人々を保護することは、カトリック教会の使命の中心でなければならない」と述べ、そうした見地から、「ここ数年、私は、委員会が目的を果たすために果たすべき機能について懸念を深めて来た。だが、辞任を決めたのは、誰に対する個人攻撃でもない。もしも誰かが気分を害されたのなら、非常に申し訳なく、今ここで許しを求めたい」と述べた.

(以下、英語原文のまま)

Zollner said he has received lots of encouragement since his resignation from the commission was announced, and that some have also cautioned him against making any further public statement.

“For me this is not an alternative because it would mean confusing teamwork with complicity, discretion with coverup, and loyalty with servility,” he said, and reiterated the concerns he voiced in his original statement on the importance of transparency, compliance, and accountability.

These points “are essential in the fight against abuse,” he said, saying transparency is “the basis of a synodal church that allows the participation of many,” while compliance is “the basis of justice whereby the rules apply to all and in the same way and not in an arbitrary way,” and responsibility is “the basis of a mutual and fraternal respect.”

“When there is a lack of transparency, compliance, and responsibility, it opens the door to abuse and coverup. The Pontifical Commission has set out to combat these terrible realities. If it wants to do it in a credible way, it cannot help but focus on these same principles,” he said.

Zollner said there were no abuses inside of the commission, but in terms of the commission accomplishing its goal, he said “it doesn’t help” if transparency, compliance, and responsibility are not lived.

To this end, he said there is a problem with “how rules, norms are inserted in the distinction of the various roles inside the commission,” and that given this lack of clarity, the lines were blurred and there was an overlap among various members and experts, causing confusion.

“If one doesn’t know what they are responsible for, if one doesn’t have their limits clear, their precise tasks – what they are responsible for and what they must do – and who they report to, and on what criteria, it leaves confusion, and this creates difficulty,” Zollner said.

 

This leads to problems with compliance in terms of how rules are followed as well as transparency, as there is a lack of clarity about who members report to and who they should expect answers from, complicating the commission’s work as members also seek to work through cultural and linguistic barriers, he said.

While stressing that he was not “placing doubt on the quality of members,” Zollner said the “reasons and criteria” for how new members are appointed must be clear.

He also raised concern about a lack of clarity regarding the commission’s relationship with the DDF.

Around four or five years ago, he said O’Malley had asked him to talk to the cardinal prefect of a different Vatican dicastery to see if they were willing to accept the commission. Though he did not disclose which dicastery this was, Zollner said the cardinal was willing to take the commission, but in the end nothing came of it, and the commission was placed within the DDF.

Zollner said he had written several emails to his superiors citing his concerns prior to submitting his resignation, and that in these emails, he made “quite critical” remarks about the DDF and the fact that the commission was placed in the body responsible for handling the judicial aspect of the cases.

“It’s like putting it in any civil tribunal,” where there is no space for the “defense of the victim and to work in the protection for minors,” he said, and lamented that nearly a year after the commission was placed within the DDF, “we don’t know how this belonging to the dicastery works or can work, or in what way we can seek to work together.”

“There could be collaboration, could be requests for reciprocal information, but for the moment I am not aware of any protocol for collaboration. It needs to be clarified if this collaboration is merely symbolic…or if it has an effective value,” he said.

He denied that the case of Jesuit Father Marko Ivan Rupnik, a fellow Jesuit and famed Catholic artist accused of abusing multiple adult women, influenced his decision to step down, saying he had already begun to question his role in the commission when the Rupnik scandals broke last year.

In response to criticisms that he received a letter from one of Rupnik’s victims that he did not respond to, Zollner apologized, saying he didn’t respond because the letter was addressed to 17 people, including the prefect of the DDF, Cardinal Luis Ladaria, other members of the dicastery, and church officials in Slovenia.

Giving a summary of his attempts to engage his superiors about his concerns, Zollner said he sent emails to institutional accounts in May, August, September, and October of 2022, voicing his concerns, but never got a response.

Zollner said he finally requested a meeting with Pope Francis and met the pope on Jan. 12 of this year to explain his concerns and to offer his resignation from the commission.

“The Holy Father listened to my concerns, he showed understanding, and he accepted my request to resign,” he said, saying that in March got a letter of confirmation signed by Vatican Secretary of State Cardinal Pietro Parolin.

After this, Zollner said he was contacted by O’Malley on March 27, two days before his resignation was formally announced, proposing that they release a joint statement. Zollner said he agreed, as long as his concerns were included as a reason for his decision to step down.

The next day, Zollner said he received a draft statement thanking him for his work, with a second page containing his concerns, but it was written with “roses and flowers,” downplaying the problems he cited.

Zollner said he wanted to modify the draft and was told they had another week or so to finalize the statement. However, the next day, March 29, the commission published only the first part of the statement, which did not say anything about his concerns.

“I didn’t refuse to do a joint statement, but we needed to define how. Then, seeing that the first news publishing this statement said I was too busy, that this was the main reason for leaving the commission, I couldn’t let it stay like this, because that’s not what it was,” he said.

 

Zollner reiterated that he supports the commission, and that his intention was never to impact or impede the commission’s work.

“How could I? I have been on it for nine years and we have gone through a lot together,” he said, but insisted that responsibility, transparency, and compliance “are signposts that the church has given itself. We need to strive more and more to really live up to that, and if there is one body in the church that needs to be exemplary in this, I think it needs to be the commission.”

He praised Pope Francis’s commitment to the issue of safeguarding and said the pope is “an absolute example of how the church should be” when it comes to listening and welcoming victim-survivors.

“Beyond the rules, beyond the institutions, beyond the guidelines, the Church must deal with people and must listen and not run away and defend itself as a first reaction,” he said, saying many people, himself included, “don’t understand why it is so difficult to sit at the table and listen, without answering, but being with people and their wounds.”

“When they tell me, you are the first person that has listened to me, it causes me great pain,” he said, saying it is everyone’s task to listen to victims, including laypeople, not just bishops and clergy.

“Many victims inside the church no longer expect anything, they’ve closed off to the church…but there are others, less visible, less public, who want to meet, just once, a human face in the church. For me this is the greatest pain, they often don’t find it,” he said.

Follow Elise Ann Allen on Twitter: @eliseannallen

 

 

2023年4月19日

・米国のマカリック前枢機卿、ウィスコンシン州で別の性的虐待で起訴(Crux)

(2023.4.18  Crux  National Correspondent   John Lavenburg)

 マカリックは、バチカンの調査で、神学校生を含む未成年者や成人に対する性的虐待の罪を犯したと判断され、2019年に教皇フランシスコによって枢機卿の地位をはく奪されている。米国では、2021 年 7 月に、マチューセッツ州デダム地方裁判所で 14 歳以上の人物に対する 3 件のわいせつ行為と暴行の罪で起訴され、米国出身の枢機卿経験者として初めて未成年者に対する性犯罪での起訴となった。被告のマカリックは、無罪を主張し、判決はまだ出ていない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年4月19日

・「聖職者などによる性的虐待の規制厳格化の自発教令形式による教皇使徒的書簡」の全訳改

(2023.4.10 カトリック・あい=4.13付けで一部修正)

 

 教皇フランシスコが3月25日付けで、聖職者などによる性的虐待に対する規制厳格化のための自発教令形式による使徒的書簡『あなたがたは世の光である』Vos estis lux mundi改訂版を出された。対応の遅い日本の司教団はこの重要な使徒的書簡の日本語訳についても、いつ出すのかさえ判然としない。そこで有志の手により、日本語による全訳をいただいたので、以下に掲載する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 教皇フランシスコの自発教令形式による使徒的書簡『あなたがたは世の光である』Vos estis lux mundi 改訂版 2023年3月25日

「あなたがたは世の光である。山の上にある町は隠れることができない」(マタイ福音書5章14節)

 私たちの主イエス・キリストは、すべての信者が、徳や高潔さ、聖性の光り輝く模範となるよう呼びかけています。実際、私たちは皆、その生活において、特に隣人との関わりにおいて、キリストへの信仰を具体的に証明するよう求められているのです。

 性的虐待の犯罪は、私たちの主に背く行為であり、その犠牲者に身体的、心理的、霊的損害を与えるとともに、信者の共同体を傷つけるものです。いかなる形態であれ、このような出来事が二度と起こらないようにするためには、継続的、かつ心からの深い改心が必要とされ、それは全ての人を教会へ参与させる具体的かつ効果的な実践によって証明されるものなのです。そうすることで、一人一人の聖性と道徳的な努力とが一つとなって、福音のメッセージの信頼性と教会の使命の有効性をより高めることとなるのです。

 これは心に注がれる聖霊の恵みによってのみ実現されます。なぜなら、「私から離れては、あなたがたは何もできない」(ヨハネ福音書15章5節)と言うイエスの言葉を私たちは、常に胸に刻んでおかなければならないからです。

 これまですでに数多くのことがなされてきましたが、希望ある未来へ向かって行くために、私たちは過去の苦い経験から学び続けなければなりません。こうした責任を負うのは、特に神の民を司牧的に導く者として神により使命を与えられた使徒たちの後継者たちであり、彼らには常に神聖なる師の足跡の間近にあってこれを辿る努力を怠らないことが求められています。

 事実、彼らはその職務ゆえに、「キリストの代理者および使者として自分に託された部分教会を 助言、勧告、模範によって、また権限と聖なる権能をもって運営する。但し 年長者は最年少者のようにまた統治する者は仕える者のように行うことを念頭に置き、真理と聖性の中に自分の群れを育てる目的においてのみ、彼らはこの権能を行使する」(第二バチカン公会議『教会憲章』27項)のです。

 使徒たちの後継者たちに関わる喫緊の課題は、教会において様々な仕方で職務を引き受けている人、福音的勧告を宣誓した人、あるいはキリストを信じる民に仕えるよう招かれた人、これらすべての人々に関わる問題です。そのため、信者の信頼を裏切るこうした犯罪を予防および阻止するために、世界規模の体制が採用されることが望ましいのです。

 この目的において、2019年5月7日に私は3年間の暫定的(ad experimentum)規則を記した自発教令形式の使徒的書簡を発布しました。そして今、事前に定めたその期間が終了しました。

 司教会議およびローマ教皇庁の各省庁の見解を考慮し、この数年間の経験を評価したうえで、規定のより良い施行を実現するため、以下の通り定めます。

 

第1章 総則

 第1条  適用範囲

1  本規定は、聖職者、奉献生活の会または使徒的生活の会の会員 および使徒座により承認、もしくは創設された国際信者団体の総長に関して、次の事柄につき報告があった際に適用するものとする。

a

*神の十戒の第六戒に反する犯罪のうち、暴力または脅迫、権威の濫用により性的行為を行うように、もしくは受けるように他者に強要した場合。

**神の十戒の第六戒に反する犯罪を、未成年者、日常的に十分な判断を行うことが出来ない者、あるいは成年の弱者に対して行った場合。

***児童および日常的に十分な判断を行うことが出来ない者のわいせつ画像の購入、所持、公開、頒布につき、形式および手段の如何に関わらずこれを行った場合

****未成年者、日常的に十分な判断を行うことが出来ない者、成年の弱者に対して、わいせつな形で自らをさらすこと あるいは現実的もしくは仮想的なわいせつ物公然陳列に参加するよう誘ったり導いたりした場合。

b  本項 が規定する犯罪について上記第1項に定める人々に対し民事的、教会法的、行政的、もしくは刑事的に行う調査に関し、第6条に定める人々が、作為的、もしくは不作為的に干渉したり、これを回避したりした場合。

2  本規定を適用するにあたって下記の用語を以下の通り定義する。

a 「未成年者」:18歳未満の全ての者。 日常的に十分な判断を行うことが出来ない者も未成年者と同等とみなす。

b 「成年の弱者」:疾患を有する者、身体的もしくは精神的に不利な条件にある者、あるいは事実上、一時的であっても、理解力、意志能力、侵害に対する抵抗力が制限されていることから個人として自由を欠く状態にある全ての者。

c 「児童ポルノ素材」:使用される手段を問わず、実際のまたは仮想上の明白な性的行為に関係している未成年者の様子を表現する全てのもの、 および性的欲求を満たす目的、もしくは営利目的を有する未成年者の性器を表現する全てのもの。

第2条  報告の受理およびデータの保護

1  それぞれの司教協議会、総大司教教会(chiese Patriarcali)や主幹大司教教会(Chiese Archivescovili Maggiori)の司教会議(Sinodi dei Vescovi)、自治権を有する主都大司教教会(Chiese Metropolitane sui iuris)の裁治権者評議会(Consigli dei Gerarchi )により必要に応じて採用されてきた指針を考慮したうえで、ラテン教会の教区(Diocesi)およびカトリック東方諸教会の教区(Eparchie)は、それぞれ個別に、あるいは共同で、報告を受理するための一般利用しやすい組織や事務所を設けねばならない。その教会組織や事務所へこれらの報告が提出されるようにせねばならない。

2  本条に情報は、教会法第471条第2項およびカトリック東方教会法第244条第2項第2号の規定に従って、安全性、完全性、秘密性が保証されるよう取り扱われ、保護される。

3  第3条第3項に規定の場合を除いて、報告を受けた裁治権者は、直ちにこれを事件が起きたとされる場所の地区裁治権者 ならびに報告の対象者の裁治権者に伝達する。その2名の裁治権者間に別段の合意がある場合を除き、事件が起きたとされる場所の地区裁治権者が、具体的な事案について定められた法律規定に従い手続きを開始する義務を負う。

4  本章の効力に関して、Diocesi(ラテン教会の教区)はEparchie(カトリック東方諸教会の教区)に等しいものとし、 Ordinario(ラテン教会の裁治権者)は、Gerarca(カトリック東方諸教会の裁治権者)に等しいものとする。

第3条  報告

1  聖職者が内的法廷の職務を遂行する中で情報を知るに至った場合を除いて、聖職者、あるいは奉献生活の会または使徒的生活の会の会員が、第1条が規定する事案のうちのいずれかが犯されたと判断される情報を得るか、その根拠ある理由を見出した場合は、事案が起こった場所の地区裁治権者または、教会法第134条およびカトリック東方教会法第984条が規定する他の裁治権者に速やかに報告する義務を負うものとする。ただし本条第3項に規定する場合に関してはこの限りではない。

2  いかなる人も、特に教会における任務を負い職務を担う世俗の信者は、第1条に規定する行為につき報告することができる。その際は、前条に記載の方法、もしくは他の適切な方法において行うものとする。

3  報告の内容が第6条に示す人物に関わる場合、その報告は第8条および第9条に基づき特定の権限者宛てに行われるものとする。報告は、直接または教皇使節を介して 常時、管轄の省庁宛てに行うことができる。直接報告のあった場合、これを受けた省庁はその旨を教皇使節に連絡する。

4  報告は、できる限り詳細な内容を含むものとし、事案が起きた時刻や場所、関係する人物、事案について報告を受けた人物、さらに事案を慎重に評価するために有用とみなされるその他の全ての状況についても報告せねばならない。

5  情報は職権によって(ex officio)得ることも可能とする。

第4条  報告者の保護

1  第3条の規定に従って報告を行うことは、職務上の秘密を犯したことにはならない。

2  教会法第1390条およびカトリック東方教会法第1452条、第1454条に規定する事項を除いて、報告を行ったことを理由にその者に対する偏見を抱いたり、報復や差別を行ったりすることは禁じられる。これらは第1条第1項b)が規定する事柄を補完する行為となり得る。

3  報告者、被害を受けたことを認めている者、および証人に対しては、報告の内容について一切の黙秘の義務を課すことはできない。但し、第5条第2項に規定の内容は遵守されねばならない。

第5条 人々に対する配慮

1  教会当局は、被害を受けたことを認める人々が、その家族とともに、尊厳と敬意をもって扱われるように努め、これらの人々に対してとりわけ次の事柄を提供するものとする。

a  彼らを受け入れ、話を聞き、寄り添うこと。これらは特定の奉仕職を介しても行うことができる。

b  霊的な支援。

c  具体的事例に応じた医学的、治療的、および心理学的支援。

2  事件に関与させられた人々の名声やプライバシー、さらにその個人情報の秘密が正当に保護されるよう監察が行われねばならない。報告の対象者に対しては、第13条第7項の推定が適用される。但し、第20条に規定の内容が遵守されねばならない。

 

第2章 司教およびこれと同等の人々に関する規定

 第6条  適用される主体の範囲

 本章に記載の手続き規定は、第1条に定める事案のうち、以下の者によって犯された犯罪および行為に適用される。

a  枢機卿、総大司教、司教、教皇使節

b  ラテン教会またはカトリック東方諸教会の部分教会、あるいは属人教区を含む類似の団体の司牧的務めを委ねられた聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者が、在職期間中に起こした事件。

c  属人区の司牧的務めを委ねられた聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者が在職期間中に起こした事件。

d  聖職者の公的会 associazione pubblica clericale)の指導者である聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者で、司祭を入籍させる権限facoltà di incardinare のある者が、在職期間中に起こした事件。

e  教皇権の奉献生活の会または使徒的生活の会の総長、および自治修道院の院長、または過去にこうした役割を担っていた者が、在職期間中に起こした事件。

f  使徒座により承認もしくは創設された国際信者団体の総長である世俗の信者、または過去にこうした役割を担っていた者が、在職期間中に起こした事件。

第7条  教皇庁の管轄省庁

1  本章の規定に基づき、「管轄省庁 Dicastero competente)と言う場合、現行法規によって教理省に委ねられている犯罪に関しては、教理省がこれを管轄する。ただし、その他の全ての事案ならびにローマ教皇庁の固有法に基づく各管轄権に関しては以下の通りとする。

・東方教会省
・司教省
・福音宣教省
・聖職者省
・奉献・使徒的生活会省
・いのち・信徒・家庭省

2  より良い連携を確実に行うため、管轄省庁は、報告および調査の結果につき、教皇庁国務省ならびに直接関係する他の省庁に連絡するものとする。

3  本章に示す連絡のうち、管区大司教と聖座間の連絡は、教皇使節を通して行われるものとする。

第8条  ラテン教会の司教 および第6条に定める人物に関する報告の場合に適用可能な手続き

1  報告を受けた権限者は、管轄省庁ならびに報告の対象者が住所を有する地域の管区大司教にこれを回付する。

2  報告が管区大司教に関わるものである場合、または管区大司教座が空位である場合、報告は聖座ならびに管区所属の司教職位にある最年長者に対して行い、この場合、その促進のために管区大司教に関連する以下の規定が適用されます。同様に、聖座の直接管轄下にある教区の司牧的指導を行う者に関する報告も聖座に提出することとする。

3  報告が教皇使節に関わるものである場合、その報告は国務省に対して直接行うものとする。

 

第9条  カトリック東方諸教会の司教、およびに第6条に定める人物に関する報告の場合に適用可能な手続き

1  総大司教教会、主幹大司教教会、あるいは自治権を有する主都大司教会の司教またはこれに同等の人物に関わる報告の場合、その報告はそれぞれ総大司教、主幹大司教、あるいは自治権を有する教会の主都大司教に対して行うものとする。

2  報告が、総大司教会または主幹大司教教会の管区大司教に関わるものであり、当該管区大司教がこれらの教会の領域内で自らの職務を遂行している場合、報告はそれぞれの総大司教、または主幹大司教に対して行うものとする。

3  以上の事例において報告を受けた権限者は、東方教会省に対しても報告するものとする。

4  報告された人物が、総大司教教会、主幹大司教教会、あるいは自治権を有する主都大司教教会の領域外の司教、または管区大司教である場合、報告は東方教会省宛に行うものとし、必要と判断する場合、管轄の総大司教、主幹大司教、もしくは自治権を有する管区大司教にその旨を連絡することとする。

5  報告が総大司教、主幹大司教 自治権を有する教会の管区大司教、あるいは自治権を有するその他の東方教会の司教に関わるものである場合、これを東方教会省に対して行うものとする。

6  以下の管区大司教に関する規定は、本条に則り報告を受けた教会当局に適用される。

 

第10条  奉献生活の会または使徒的生活の会の総長に対し適用可能な手続き

 教皇権の奉献生活の会、または使徒的生活の会、ローマおよびローマ近郊の諸教区にある自治権を有する観想修道院につき、これらの総長あるいは元総長に関する報告の場合、これを管轄の省庁に対して行うものとする。

 

 

第11条  管区大司教がとるべき初期対応

1  報告を受けた管区大司教は、直ちに管轄省庁に対して調査開始のため職務委任を申請する。

2  管轄省庁は直ちに、すなわち教皇使節からの第一報を受けてから、または管区大司教から職務委任の申請を受けてから30日以内に、具体的な事案においてどのように手続きを進めるかにつき適切な指示を与え措置を講じる。

3  管区大司教は、報告が明らかに根拠を持たないと判断した場合は、教皇使節を通じてその旨を管轄省庁に報告する。 また、これにつき別段の定めがある場合を除き、事案の取下げを命じる。

 

第12条  管区大司教とは異なる人物への調査の委任

1  管轄省庁が、教皇使節の意見を聞いたうえで管区大司教とは異なる人物に調査を委任するのが適切と判断した場合、これらの人に対しその旨が連絡される。管区大司教は、全ての情報ならびに重要な資料を、管轄省庁から委任された人物に提供する。

2  前項の場合、以下の管区大司教に関わる規定は、調査の実施を委任された人物に対して適用される。

 

第13条  調査の実施

1  管区大司教は、管轄省庁から職務委任を受けた後、実施方法につき与えられた指示を順守し、本人自らまたは適切な一名あるいは複数の人物を介して以下のことを行う。

a  事件に関する重要な情報を収集すること。

b )教会事務局の記録庫に保管されている調査上必要な情報や文書資料を入手すること。

c  必要に応じて 他のラテン教会の裁治権者もしくはカトリック東方諸教会の裁治権者の協力を得ること。

d  必要に応じて、また以下第7項の規定を遵守したうえで、調査上有益な情報の提供が可能だと判断される人物や組織に情報提供を求めること。なお、これには民間の人物や組織も含む。

2  未成年者または成年の弱者から事情を聞く必要があると判断された場合、管区大司教は、こうした人々の状況および国の法律を考慮した上で適切な方法を採用するものとする。

3  調査に関する情報または文書資料の隠滅の可能性があると判断し得る根拠がある場合、管区大司教はこれらの保護のために必要な措置を講じることとする。

4  他の人物を介して調査が行われる場合であっても、管区大司教は引き続き調査の指揮および実施責任者であり、かつ第11条第2項が規定する指示を正確に遂行するうえでの責任者となる。

5  教会法第483条第2項およびカトリック東方教会法第253条第2項の規定に従って、任意に選任した公証官が管区大司教を補助する。

6  管区大司教には、公平性をもって行動しかつ利害対立関係が無いことが求められます。管区大司教は、自らが利害関係を有しているか必要な公平性を維持することができないため調査の完全性を保証することが困難であると判断した場合、自らこの役割を辞し管轄省庁に状況を報告する義務を有する。同様に、上に述べた利害の対立関係にあると考えられる人は全て、管轄省庁へ報告しなければならない。

7  調査の対象者には、推定無罪および正当な名誉の保護が認められる。

8  管区大司教は、管轄省庁からの要請に応じて、取り調べを受ける人物に対して、原告側として調査を実施する旨を通知し、事実関係を聴取し、抗弁書を提出するように求める。その際、取り調べを受ける人物は代理人を立てることができる。

9  管区大司教は、指示に従い、定期的に管轄省庁へ調査の状況を報告するものとする。

 

第14条  専門家の参加

1  調査における管区大司教への協力方法に関して、司教協議会、世界代表司教会議、またはカトリック東方教会の裁治権者協議会の特別の行動指針がある場合はそれに従って、各管区の司教たちが個別にまたは共同で専門家のリストを作成することが大変有用である。 その中から 管区大司教は事案の必要性に応じて、調査協力に適切な人物を選択することができる。その際、とりわけ教会法第228条およびカトリック東方教会法第408条に規定する 一般信徒により可能な協力を考慮して行う。

2  いずれにしても管区大司教は、同様に専門性を有するその他の人々を自由に選択することが可能である。

3  調査にあたり管区大司教を補佐する人は誰しも、公平性をもって行動し かつ利害の対立が無いことが求められます。もし自らが利害関係を有しているか必要な公平性を維持することができないため調査の完全性を保証することが困難であると判断した場合は、自らこの役割を辞し管区大司教に状況を報告する義務を有する。

4  管区大司教を補佐する者は、第13条第7項の規定を遵守し、適切かつ忠実に任務を遂行する旨の宣誓を行わねばならない。

 

第15条  調査期間

1  調査は短期間、すなわち、いかなる場合も第11条第2項に示す期日内に完了せねばならない。

2  正当な理由がある場合、調査状況につき報告書を送達した後に、管区大司教は管轄省庁に対して期間の延長を求めることができる。

 

第16条  保護対策

 事実関係または状況から必要とされる場合、管区大司教は管轄省庁に対して、調査対象者に対する適切な保護措置や対策を採用するよう提案する。省庁は教皇使節に聞き取りをしたうえで措置を講じる。

 

第17条  基金の設立

1  教会管区、司教協議会、世界代表司教会議、およびカトリック東方諸教会の裁治権者評議会は、これらの調査に関する費用をまかなうための基金を設立することができる。これは、教会法第116条、第1303条第1項第1号、およびカトリック東方教会法第1047条の規定に従って設立され、教会法の規定に従って管理運営されるものとする。

2  調査の任務を委託された管区大司教の要請に基づき、基金の管理者は管区大司教が調査に必要な基金を使用できるようする。ただし管区大司教は、基金の管理者に対して調査終了時に決算報告書を提出する義務を有する。

 

第18条  調査記録および意見書(votum)の送付

1  調査が完了したら、管区大司教は管轄省庁に調査記録原本を送付する。その際、調査結果に関する自らの意見書(votum)、および第11条第2項が規定する指示書の中に質問事項がある場合はそれに対する回答も、併せて送付する。調査記録の写しは、管轄の教皇使節の記録庫に保管する。

2  管轄省庁から引き続き指示がある場合を除いて、管区大司教の権限は調査完了の時点で消滅する。

3  管轄省庁の指示に従い 管区大司教は要請に応じて、被害を受けたことを認めている者、またその場合、本件の報告を行った者、 もしくはこれらの者の法的代理人に対して調査結果を報告する。

 

第19条  その後の措置

 管轄省庁は、追加調査を命じる決定を行った場合を除いて、具体的な事案ごとに定められた法律規定に従って手続きを進めるものとする。

 

第20条  国の法律の順守

 本規定は、各地で国の法律により定められた権利および義務を損なうことなく適用されるものとする。特に、市民法上の管轄当局に報告する義務がある場合、これを遵守せねばならない。

 この自発教令形式の使徒的書簡は、『オッセルヴァトーレ・ロマーノ』紙上での発表をもって公布され、2023年4月30日より効力を生じること、さらに『使徒座官報』(AAS)においても公表されることとする。本書簡の発効に伴い、2019年5月7日公布の自発教令形式の前使徒的書簡は失効する。

 ローマ、聖ペトロの傍らにて 2023年3月25日 主の受胎告知の祝日 教皇在位第11年 フランシスコ

(仮訳はG.T師による)

2023年4月10日

・米メリーランド州司法長官が、カトリック・ボルチモア大司教区の600件以上の児童性的虐待で報告書(Crux)

(2023.4.6  Crux  National Correspondent   John Lavenburg) 

*2002年まで約60年間に156人の司祭たちが虐待

 ニューヨーク 発–米国メリーランド州のブラウン司法長官が5日、カトリック・ボルチモア大司教区の156人の加害者によってなされた児童に対する600件以上の性的虐待について詳述した報告書を発表した。 

 454ページにぼぼる報告書によると、告発された性的虐待の大部分は1940年代から2002年までに起きている。2002年は米国の司教団が「ダラス憲章」を公布し、全米の教区が性的虐待の申し立てに対処するために従わなければならない一連の手順を確立した年だ。 報告書は、2002年以降、これまでの20年間に、大司教区が被害者に対する保護の体制や独立調査委員会の設置など、被害者ケアや再発防止に努めたことを評価しつつ、被害の対応範囲をさらに広げることを求めている。

*大司教が改めて性的虐待被害者たちに謝罪

 

 報告書に対して、ボルチモアのウィリアム・ロリ大司教は、「2002年以降に、この問題への対応に改善が図られていても、過去に起こったことが否定されるわけではありません」と述べ、改めて性的虐待の被害者たちに改めて謝罪した。

*司祭など大司教区に蔓延した執拗な虐待と高位聖職者による隠ぺいが明らかに

 

 報告書では、「今回の調査によって明らかになった議論の余地のない過去の経緯は、司祭や他の大司教区の職員の間に蔓延した、執拗な虐待を明らかにしている。また、カトリック教会の高位聖職者による加害者免職の繰り返しと、虐待隠蔽の歴史でもある」と強く批判。 「被害者の調査を総合することで、『子供を性的に虐待する大人』と『それを隠ぺいすることでさらなる虐待を可能にする大人』に典型的な行動パターンが明らかになった」と指摘している。

 報告書はまた、大司教区の独立審査委員会が虐待の申し立てに対応する際の潜在的な限界を指摘。具体的に、「大司教区から提供された情報をもとにした審査にとどまり、調査能力がない」ことを挙げている。

*「対策の強化が過去に犯した過ちの言い訳にはならない」と大司教

 だが、そのような問題はあるものの、米国の司教団が 2002 年に「ダラス憲章」を公布して以来、大司教区に児童および青少年保護局と独立審査委員会を設けることが義務付けられ、ボルチモア大司教区における聖職者による性的虐待の申し立てに対処する方法は完全に変わった、とし、同大司教区が、信頼に足る告発を受けた司祭の名簿を公開した米国で最初の教区の 1 つとなったことを評価した。

 また、大司教区がカウンセリングのために被害者に経済的支援を行い、損害補償の直接支払いを求める被害者のための調停オプションを作成したことや、児童性的虐待の内部処理を大幅に改善したことも挙げている。

 ロリ大司教は「大司教区が過去の虐待を忘れることがあってはならない」とし、さらに「被害者保護と透明性が、現在では大幅に強化されましたが、それは、被害者たちが耐えてきた長く続く精神的、心理的、感情的な被害のもとになった過去の過ちに言い訳にはなりません」と自戒し、 「今日の大司教区にもたらされた変化と説明責任をさらに改善し、構築し続けます」と約束している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年4月8日

・教皇、聖職者の性的虐待に対処する規範徹底へ改定自発教令を発出

(2023.3.25  Vatican News)

 教皇フランシスコが25日、2019 年5月に出された自発教令「Vos estis lux mundi (あなたがたは世の光)」の改訂版を発出された。4月30日に発効する。

 使徒的書簡の形で2019年5月に発出されたこの自発教令は、教会における信徒たちなどへの虐待や暴力に対処する手続きを明確にし、性的虐待などの通告を義務づけるなど、世界の司教たち、修道会総長たちのとるべき姿勢を徹底することを目的としていた。この4年間に行われた関連の制度改革と整合させ、対象をバチカンが承認した信徒の国際的な協会の指導者などに対象を広げ、未成年者および脆弱な成人に対する性的虐待を防止および対処するための教会の規範の徹底を図るのが狙いだ。

New norms for the whole Church against those who abuse or cover up

*一般信徒の国際的団体の指導者も規範の対象に

 改訂版で示された現行教令からの最も重要な変更は、「司教、修道会総長、および特定の教会または高位聖職者を担当する聖職者の責任」を規定した条項に関するもの。現行の書簡になかった「使徒座によって承認または設置された一般信徒の国際的な団体の長、あるいは長であった一般信徒は、ポスト在任中に行われた行為に対して[責任がある]」と明記した。

 また、2019年からこれまでに導入された関連の規範、制度改革と整合性を図るため、さまざまな修正がなされているが、その中には、自発教令「 Sacramentorum sanctitatis tutela(2021 年に修正された規範)」、教会法典の第 6 巻に加えられた変更(2021 年改定)、およびローマ教皇庁に関する新憲章「 Praedicate Evangelium (2022 年公布)が含まれている。

 

*「脆弱な成人」に対する虐待の報告の対象に

 また、現行教令の修正個所として注目すべき修正の 1 つは、規範に「脆弱な成人」を含めることに関するものだ。現行教令では、報告を上げるべき対象として、「未成年者または脆弱な人物との性行為」と表現していたが、これを、「未成年者、または習慣的に思考・判断能力が不完全な人、または脆弱な成人との間で犯された十戒のいましめに対する犯罪」としている。

 もう 1 つの変更点は、虐待の疑いについて報告した人物の保護に関するものだ。現行教令で「虐待の疑いを報告した人」に、沈黙を強制してはならない、としているが、「心を傷つけられたと訴えた人および目撃者であった人」に対象を広げた。一方で、「関係者全員の名声とプライバシーの正当な保護」と、有罪か否かの判断のために調査を受けている人々の「推定無罪」としての保護の要請を強調している。

 また、現行教令で、教区は、一般の人々が利用しやすい、虐待の訴えを受ける「安定したシステム」を運用しなければならない、としていたのを、「組織、あるいは事務局」を…と明確化。訴えられた虐待の案件の捜査は、虐待が起きたとされる場所を管轄する「司教あるいは直轄権を持つ聖職者の責任の下に」なされることも明記している。

 

 

*「職権乱用」による性的暴力、ハラスメントも対象

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年3月27日