・所属司祭の性的虐待で被害者が損害賠償を求める『神言会裁判』大詰めー9月7日に第16回、東京地裁で

(2026.9.1 カトリック・あい)

  聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が加害司祭(当時)が所属していた神言会に損害賠償を求める裁判の第16回が、9月7日午前11時から東京地裁第606号法廷で開かれる。裁判に続いて、地裁隣の弁護士会館509号室で原告被害者と弁護人による報告会と支援者集会が予定されている。

 第17回の裁判は10月1日午後3時から同法廷で開かれるが、裁判長はこれまでに「判決を遅くとも来年3月に出すことを前提に、証人訊問は10月ないし11月に行い、できる限り今年12月に結審したい」と異例のスケジュール公開をしており、2023年1月に始まった長期にわたる神言会裁判は大詰めを迎える。

 前回7月の裁判では原告・被害者を支援する会のメンバーなど30人以上の傍聴人を前に、原告側弁護人は民法だけでなく教会法の見地も合わせて、①加害司祭を叙階した司教と、司教に叙階を進言した神言会の責任②「告解(赦しの秘跡)」を悪用し、信徒を性的虐待するという危機に陥らせた司祭に対する注意務違反—を損害賠償を求める根拠に加える主張を、準備書面を通して行った。

 教会法との関係を取り上げたことについて裁判長から問われた原告弁護人は、「これまで被告側は『教区と修道会は異なる』として、神言会の賠償責任を回避してきたが、神言会所属の加害司祭の叙階は、教会法に基づいて司教が行うなど、教会法上からも”分離論”は通らない」と説明。そのうえで、①信徒は自らの信仰を守る権利(債権)があり、司祭はそうした信徒を正しく導く責任(債務)をもつことが教会法上の定めであり、これは民法上の『債権債務』の関係となる②「告解で得た知識を、告白した信徒に不利益を与えるやり方で使用することは絶対的に禁止する」という教会法の定めに反した加害司祭の行為を放置した神言会の対応は、労働契約法労働安全衛生法の「安全配慮義務違反」に相当する—と主張している。

 

2026年8月31日

(評論)教会の未解決問題―聖職者による性的虐待と隠蔽ーに聖職者主義が”寄与”(Global Catholic)

(2026.8.24   Global Catholic   David Timbs)

 聖職者主義をピオ10世から今日の性的虐待危機まで辿ると、オーストラリアの司教たちは、フランスやペルーの司教たちと同様に、公の場でひざまずき、許しを請い、「二度と繰り返さない」と誓うよう求められているように思われる。

*今に続く聖職者主義、教皇フランシスコは「教会を蝕む最大の歪みの一つ」と強く批判

 

  「……教会は本質的に不平等な社会、すなわち、司牧者と信徒という二つのカテゴリーの人々からなる社会である。司牧者は教会の階層の様々な段階において一定の地位を占め、信徒は多数派である。これらのカテゴリーは非常に明確に区別されているため、教会の目的を推進し、そのすべての構成員をその目的に導くために必要な権利と権威は、司牧者のみに与えられている。信徒の唯一の義務は、導かれることを受け入れ、従順な羊のように牧師に従うことである。」  ピオ10世教皇の回勅『Vehementer Nos(我々に激しい苦悩をもたらす)(1906年)。

 ピオ10世が1906年に書いたこの回勅は、主にフランスのカトリック司教団と聖職者に向けて書かれたもので、欧州で蔓延する世俗主義がもたらす有害な影響に対処することを目的としていた。

 回勅は、教会を”無垢な犠牲者”として描くイメージと、”教会の長女”であるフランスによる拒絶に対する憤りを織り交ぜている。教皇は、「教会の神聖な制度と階層構造は、国家によって作られた社会組織よりも優れている」と強調した。

 現在聖人となっているフランスの司祭、ジャン・ヴィアネ(1786 – 1859)、通称「アルスの司祭」は、著書『小教理問答』の中で、「神の次に、司祭がすべてである」と記している。おそらく、カトリック信徒を含む他のすべての人々は、「自分の立場をわきまえ」、静かにその立場に留まることが期待されていたのだろう。

 英国の影響力のある貴族出身でカトリックに改宗した聖職者、ジョージ・タルボット司教(1816 – 1886)は、ウェストミンスター大司教ヘンリー・エドワード・マニング(1808 – 1892)との会話の中で、同様のエリート主義を声高に主張した。

  「一般信徒の役割とは何でしょうか?狩猟、射撃、娯楽でしょうか?これらのことは理解しているかもしれませんが、教会の事柄に干渉する権利は全くありません。そして、このニューマンの件は純粋に教会の問題です。ニューマン博士はイングランドで最も危険な人物であり、陛下に対して一般信徒を利用するでしょう

 ジョン・ヘンリー・ニューマン(1801 – 1890=19世紀の英国の神学者で枢機卿。2019年10月に聖人、2025年11月、教会博士と認定)は、タルボットと同様、「ハイ・チャーチ」派の英国国教会から改宗した人物だった。ニューマンは、「教会のアイデンティティと使命をバランスよく理解するためには、信徒を、聖職者の不可欠なパートナーとして扱うべきだ」と主張したため、タルボットのような聖職者から嘲笑の的となった。

 ニューマンが直面したのは、英国における階級制度の教会版とも言えるものだった。神によって定められた地位に固執するエリート主義者たちは、聖職とその特有の隠語を、人々を分断し、距離を置き、神秘化するための道具として利用し、人々をそれぞれの立場に留め置こうとした。今日では、これは聖職者主義と呼ばれている。それは今もなお信徒を幼稚化させ、「聖職者依存」の状態に閉じ込め、結果として彼らの洗礼の尊厳を損なっている。

 フランシスコ教皇は、聖職者主義を「災い」「有害な病」「教会の歪み」と表現し、「(聖職者主義は)教会の可視性と秘跡性が、選ばれた少数の者だけでなく、神の民すべてに属することを忘れている。これは教会を蝕む最大の歪みの一つである」と述べた。聖職者主義は福音に反するものであり、教会の普遍的な使命を阻害する。

 そして、この聖職者主義が、聖職者による児童を含む性的虐待という惨事とその後の隠蔽工作に大きく寄与したという見解が、現在では広く受け入れられている。

*教会の最悪の危機は、教会内部の腐敗によってもたらされた

 ノルウェーのトロンハイム司教エリック・バルデンは先日、教皇レオのバチカン宮殿での2026年の四旬節黙想会で説教をした。ヴァルデン司教は、カトリック教会が”大規模な組織的失敗”という問題に直面していることを認めようとしない司教たちを批判した。「少数の腐ったリンゴ」について語っていたのではない。彼はこう語った。

 「教会にこれほど悲劇的な損害を与え、私たちの証しをこれほど損なったものは、教会内部で発生した腐敗以外にない。教会の最悪の危機は、世俗の反対勢力によってではなく、教会内部の腐敗によってもたらされたのだ」

 

 その関連で言えば、今こそ、豪州のカトリック司教たちが正義と涙を示す時だ。彼らが自らの劇的な悔恨、嘆き、そして回心という公の場での行動を通して、使命に立ち返ったことを示す時なのだ

『被害者への配慮』という根本的な精神を示す代わりに、『自らの安全と利益』を最優先に考えていた

 

 豪州のロング・ヴァン・グエン司教は、性的虐待スキャンダルによって司牧上の義務を果たせなかった教会指導者たちによって神の民にもたらされた損害を深く認識している。

  「教会が、『被害者への配慮』という根本的な精神を示す代わりに、『自らの安全と利益』を最優先に考えていたことが明らかになりました。これは、『加害者とその共犯者だけでなく、教会全体が、福音を組織的に裏切った』という、恥ずべきことです」

 多くの司教は、州や国の政治家が自分たちの声をほとんど無視していると常に不満を漏らしてきた。彼らは、2016年にマーク・コールリッジ大司教が述べた次の言葉から、冷静な結論を導き出すべきだった。

 「キリスト教世界は終わったという事実を受け入れなければならないと思う。ここで言うキリスト教とは、大衆的で市民的なキリスト教のことだ。それは終わった。では、私たちはその事実にどう対処すべきか?…私たちはかつてのような権力をこの国で持っていないのだ」

 司教たちにとってさらに不吉な現実を突きつけるのは、聖職者による児童性的虐待スキャンダルの余波と、司教による隠蔽の歴史の結果、もはや彼らを真剣に受け止めるカトリック教徒はほとんどいないだろうということだ。

 

*今こそ、豪州などの司教たちは「正義と涙」を示す時だ

 ノルウェーのバルデン司教は、児童虐待とその後に続く悲劇の連鎖について四旬節の黙想の中で、「負った傷が癒えるには時間がかかるだろう。それは正義と涙を求めている」と力強く述べた。

 フランスの司教たちはひざまずき、数十万件に及ぶ聖職者による児童などの性的虐待事件における「組織的な責任」を公に認め、深い集団的後悔の念を示した。2026年5月25日の夜、ペルーのカトリック教会の枢機卿と司教たち もまた、同胞のカトリック教徒から数十年にわたり身体的・精神的虐待を受けてきた弱者グループの前でひざまずいた。

 司教たちは、現在弾圧されている教会運動「ソダリティウム・クリスティアネ・ヴィタエ」から農民たちを守れなかったことについて、農民グループに公然と許しを請いました。

 シドニーで開催された第5回オーストラリア総会第1回総会(2022年7月3日~9日)の4日目、出席者は嘆きの儀式に参加したが、非公開で行われ、ライブ配信は行われなかった。オーストラリアのカトリック教徒の大多数にとって、司教自身が対処しなければならない未解決の問題がまだ残っている。

 今こそ、オーストラリアのカトリック司教たちが正義と涙を示す時だ。彼らは自らの劇的な公の場での悔恨、嘆き、そして回心を示すことで、使命に立ち返る姿勢を示すべき時だ。彼らは、フランスとペルーの同僚たちの例に倣い、シドニーの聖マリア大聖堂の階段にひざまずき、被害者とその家族に許しを請い、「二度と繰り返さない」と誓うべきだ。

*David Timbs氏は、オーストラリアの聖書学者。長年にわたりオーストラリアの神学校で教鞭を執った。研究は主にパウロ書簡、共観福音書、聖書解釈学、釈義法に焦点を当てていた。豪州の教会における参加、説明責任、透明性の向上を推進する「カトリック刷新運動」の活動的なメンバーだった。

・・・・・・・・・・・・・・・

*Global Catholicはフランスに本拠を置くカトリックの独立系評論・ニュースサイト。バチカンと世界の教会を形作る動向について、詳細な分析と洞察力に富んだ解説を提供、優秀なライターチームは、無数のニュースサイトやソーシャルメディアプラットフォームに溢れる雑音の中から真実を見抜き、明瞭さ、文脈、そして誠実さを基盤とした、思慮深く独立したジャーナリズムを提供することに尽力している。質の高いカトリック系ジャーナリズムは、情報を提供し、人々にインスピレーションを与え、有意義な対話を促進するものであるべきだと考えており、広告や商業的な影響を一切、排除し、カトリック教会を含めて外部機関、企業からの財政支援は受けていない。このような趣旨を理解してくださる方の寄付が求められている。「カトリック・あい」もまさに、同様の趣旨のもとに発行しており、今回、Global Catholid の同意を得て、記事の翻訳、掲載をさせていただくことになった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年8月24日

・豪で、先住民の若者たちへの性的虐待13件で元カトリック司教に有罪判決、後任司教が信徒に陳謝

(2026.8.13  Crux /AP)

    (2008年4月17日にシドニーで開かれた「世界青年の日」のメディア向けイベントで、ディジュリドゥを吹こうとするサンダース司教=写真提供:ロブ・グリフィス/AP通信)

 豪パース発 ― 西オーストラリア州地方裁判所の陪審が13日、酩酊状態で司教館でパーティーを開くことで知られていた前カトリック司教に対し、若い先住民男性たちへの性的虐待で有罪判決を下した。

 カトリック教会では長年にわたって聖職者による性的虐待が教会の信用を毀損する深刻な問題であり続けているが、サンダースは有罪判決を受けた豪州の聖職者で最高位の人物の一人となる。

 この前司教は、クリストファー・サンダース(76)で、有罪判決は、2008年から2019年にかけて同国北西部のブルーム教区で犯したとされる19件の性的虐待容疑のうち13件についてなされ、うち1件は不同意性交、12件はわいせつ・暴行。

 検察側によると、サンダースは、教会の資金で購入した酒とタバコを若い先住民男性たちに振る舞い、教会所有の司教館に誘い込んだ。その際のルールとして、男性客は全員シャツを脱がなければならないというものがあったという。

サンダースは1996年から2021年に辞任するまで、辺境の地にあるブルーム教区の司教・教区長だった。担当地域は広大だが、人口はわずか5万人で、カトリック教徒のほとんどは先住民。辞任は、警察が、本人の性的暴行疑惑に関する刑事捜査を終えたと発表した直後だった。

バチカンは2022年に独自の調査を開始し、翌年、200ページに及ぶ調査報告書を西オーストラリア州警察に提出した。警察は刑事捜査を再開し、2024年にサンダース氏を起訴した。

 バチカンの報告書の内容は公表されなかったが、豪州のセブン・ネットワーク・テレビのニュース番組にリークされ、「サンダースが先住民の若者4人に性的暴行を加えた可能性が高く、さらに67人の先住民の若者や男性を誘惑した可能性がある」と報じていた。

 カトリック教会やその他の機関による児童虐待への対応に関する豪州全国調査によると、1950年から2010年の間にカトリック司祭の7%が児童への性的虐待で告発されていた。

 これまで豪州の高位聖職者で一審で有罪判決を受けた人物には、聖歌隊の少年たちへの虐待でジョージ・ペル枢機卿と児童性的虐待の隠蔽のフィリップ・ウィルソン大司教がいるが、いずれも控訴審で無罪となっている。

後任司教が被害者・家族に陳謝

(2026.8.13   Vatican News)

 サンダース前司教が性的虐待で有罪判決を受けたことに対し、後任のブルーム教区長であるティモシー・ノートン司教は13日、声明を出し、サンダースに性的虐待された被害者や家族に陳謝し、傾聴、説明責任、そして希望を柱とする教区の刷新を約束した。

 サンダース前司教は、有罪判決を不服として控訴すると言われているが、ノートン司教はこの判決を認め、この事件を陪審裁判に付した豪州当局に感謝するとともに、「自らの真実を語る」ために名乗り出た被害者、その他の証人たちに敬意を表した。

 そして、「彼らは、長く困難な過程を通じて、並外れた回復力と献身を示しました。思いやりを持って耳を傾けられ、尊厳をもって扱われるに値する存在でした」と被害者たちを称え、彼らが耐えてきた傷と恥に対し、深い悲しみを表明した。そのうえで、ブルーム教区が今回の前司教による性的虐待の影響を受けた人々に「手を差し伸べ、希望と癒やしへと導くために可能な限りのことを行う」と誓った。

 またノートン司教は声明で、サンダースによる性的虐待被害が「警察や法廷で証言した人々だけにとどまらないこと」とし、「信頼は裏切られ、裏切りと分裂による傷が教区全体に露呈した… その傷は、私たちの指導部や教会に信頼を寄せていた人々にも及んでいる… 多くのカトリック信者、とりわけ教区や地域社会に奉仕してきた人々に対し、難しい問いと未解決の感情を残している」ことを認めた。

 さらに、教区指導部になぜこのような信徒の信頼を裏切る行為が起きたのかを理解しようと苦悩する地元のカトリック共同体の痛みを認めたうえで、「ブルームの大聖堂からキンバリー地方の最も辺鄙なコミュニティに至るまで、教区を『安全、尊重、説明責任』が確保された場所にすること」「教区がすべての人々が尊厳と思いやりをもって扱われるよう努め、たとえ常に互いに意見が一致しない場合でも、真摯で平和的な関係を築くこと」と誓った。

 そして、司教は、今後数か月で、教区全域の小教区共同体を訪問し、「信徒たちが、より思いやりのある未来へ向けた”シノドスの道”を共に歩む中で、悲しみに寄り添い、声に耳を傾ける機会にしたい」と述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年8月14日

(評論)バチカンは、いまだに聖職者の性的虐待疑惑への対処法を学んでいない(Crux)

〈2026.7.26 Crux  Chief Editor  Charles Collins)

 先週のルプニクの裁判を巡るニュースは、教会法上の刑事訴訟手続きの不透明さを改めて浮き彫りにした。

 バチカンは、不名誉な元イエズス会士で、かつては著名な芸術家だった人物が、秘密裏に行われた教会裁判で無罪判決を受けたという噂を否定せざるを得なくなったのだ。

 マルコ・ルプニク神父は、どういうわけか今もなお聖職者としての地位を保っているようで、現在も故郷のスロベニアの教区で奉仕しており、教会法における刑事訴訟の秘密主義の問題を浮き彫りにしているだけではない。成人、特に女性に対する虐待が適切に対処されていない現状を如実に示している。

*ルプニク事件の概要

 

 ルプニク神父はこれまで複数の教会当局によって何度も調査を受けており、その都度、30年間にわたり数十人の女性に対して行われた神父の恐ろしい犯罪の証拠が明らかになり、確認されてきた。

 ルプニク神父を告発した人々の中には、イエズス会が1990年代半ばにはすでにルプニク神父の悪行について彼らから聞いていたとCrux Nowに語った者もいるが、ルプニク神父はその後も美術作品の依頼や称賛を受け続け、イエズス会の上司やバチカンの”寵愛”を受けていた。

 このスロベニア人司祭は、自身の「創作過程」を利用して、被害者を精神的、心理的、そして性的に操った疑いも持たれている。

 イエズス会は現在、彼が有罪であると信じており、その旨を表明している。バチカンの調査官は、聖職者の性的虐待問題を担当する教理省のためにこの件を調査し、2022年にルプニクに対する訴訟の可能性を認めたものの、犯罪そのものの時効は成立している、と判断した。

 ルプニクは2023年にイエズス会から追放されたが、その理由は「犯罪」ではなく、「不服従」だった。そしてその年の後半、故郷であるスロベニアの友好的な教区が、彼を教区聖職者として正式に受け入れた。

 メディアによる執拗な監視、教皇の側近からの公私にわたる圧力、そしてルプニク神父が司祭としての活動を続けることが許されるというニュースに対する世界的な激しい怒りを受け、フランシスコ教皇は時効を免除し、事件の再調査を命じた。それから、3年近く経つ。

 バチカンがルプニクに対する裁判を行うための裁判官団を任命した、と発表するまでに、ほぼ丸2年が経過したが、教会当局は裁判官が誰であるか、あるいは、彼がどのような具体的な罪に問われているかさえ、いまだに明らかにしていない。

 司祭が重大な容疑に直面していたにもかかわらず、フランシスコ教皇は在位中に居住していたマルタ館の私室に、彼の作品を展示し続けた。

ルプニク事件では、上記のような大まかな流れ以外にも多くの出来事があったが、これらは実に陰惨で、その複雑さは迷宮のようで、細部に至るまで恐ろしい、実に不気味な物語の簡潔な要約だ。

*バチカンが学んだ(あるいは学ばなかった)教訓

 

 しかし、重要な意味で、ルプニク事件は二つの関連する点に集約される。

 まず、この事業を取り巻く秘密主義は、被害者たちに大きな損害を与えた。彼らはあまりにも長い間待たされた挙句、ほとんど正義が実現されなかった。また、教会にも損害を与えた。信者たちは憤慨し、指導者たちは道徳的な信頼を失った。

第二に、この事件に関して我々が知ったことは、教会の指導者たちが、児童への性的虐待がもたらしている危機の暗黒の数十年間を通して用いてきたのと同じやり方を、今もなお続けていることを示している。

 その”手口”には、セラピー、聖職者による工作、そして賄賂が含まれる。さらに、見て見ぬふり、被害者非難と脅迫、矮小化、ごまかし、そして完全な否認までも含まれる。これら全ては、不正行為を隠蔽し、その話が新聞に載らないようにするための策略だ。

 カトリック教会が、2002年にボストン・グローブ紙が掲載した「スポットライト」シリーズで報じられた聖職者による児童虐待疑惑の影響に直面してから、ほぼ四半世紀が経つ。ボストン・グローブ紙は2014年にCruxを設立し、2016年に複数の株主によって運営されることになった。)

 この事件に対する信者たちの憤りを受け、米国カトリック司教協議会は2002年後半に、聖職者による児童虐待問題に対処するための「ダラス憲章」を策定した。米国司教協議会は今年春の総会でこの憲章を見直し、改訂した。この文書は、世界中の若者に対する性的虐待問題への対処における基準として、今もなお用いられている。

 だがこの憲章は、あまり健全とは言えない形で運用された例もある。聖職者たちは、「憲章違反ではない」というフレーズを様々な形で用い、虐待事件を関係当局に報告しなかった言い訳として、また、問題を起こした聖職者を他の場所、時には他の管轄区域にひっそりと異動させることを正当化するために利用してきた。

 加害者が、憲章の条文に違反していない場合、多くの司教は、何かをする義務をほとんど感じないケースがあまりにも多い。

 これは憶測ではない。Crux Nowの編集長は今年初め、テキサス州の裁判所で陪審員が重罪の性的暴行で有罪と判断し、終身刑が言い渡されたナイジェリア人司祭の事件を取材していた際、米国の主要な大司教区から、そのようなことを直接耳にした。

 テキサス州法では、聖職者、医療スタッフ、カウンセラーが、その立場を利用して他者に性行為への参加を促した場合、重罪となる。問題の司祭、ナイジェリアのウヨ教区のアンソニー・オディオン神父は、まさにそうした行為で告発され、裁判にかけられ、有罪判決を受けた。現在、教会の指導者たちは、具体的な教会法規に依拠することなく意思決定を行わなければならないが、テキサス州の事例のように、民事法や刑事法が適用される可能性はある。

 聖職者が売春婦と関係を持ったり、教区民と不倫関係を持ったり、聖職者としての誓いを破ったりする事例は数多く存在する。これは決して目新しいことではなく、ある意味では人間の本性であり、ごくありふれたことなのだ。司教たちは、すべての罪が犯罪であるわけではなく、判断の誤りを性的暴行と同一視すべきではないと、すぐに指摘するだろう(それは間違いではない)。

 私たちが人生の大半を過ごす広大なグレーゾーンでさえ、より濃い色合いとより薄い色合いが存在することを許容している。だが、司祭が教区民と不倫関係になった場合、どのような結果になるのだろうか?教区民が既婚者の場合はどうだろうか?司祭がその教区民のカウンセリングを担当していた場合はどうだろうか? 司祭が当局の売春摘発作戦に巻き込まれたらどうなるのか?彼が複数回逮捕されていたら、どうか?

 ポルノ画像の所持、不倫、その他多くの信者がメロドラマの中だけで取り上げられることを願うような事柄についても、同様の疑問が投げかけられる可能性がある。

*責任、説明責任、透明性

 手続きや透明性がなければ、司祭による比較的軽微な性的過ちでさえ、より深刻な性的暴行事件と混同される可能性があり、特に長年のスキャンダルに疲弊した信者の目にはそう映るだろう。手続きや透明性の欠如は、非常に悪質な行為者が、時には非常に長い間、非常に悪質な行為をしても罰せられないという事態を招く。特に、手続きや透明性の欠如が、社会やリーダーシップ文化に根付いた、精神的、心理的、そして性的な力関係がどのように絡み合っているかを認識しない態度と結びついている場合に顕著だ。

 このことは、かつて枢機卿だったセオドア・マッカーリックの事例で特に顕著に表れた。彼は児童虐待の疑いが確たる形で浮上した後、ようやく聖職を解かれた。しかし、教会指導者たちが最終的にマッカーリックを訴追するまでの数十年間、この聖職者が若い神学生たちと寝床を共にする習慣は公然の秘密であり、彼が若い男たちと親密な「パーティー」を開いているという噂が何年も前から広まっていた。 それでも、マッカーリックの評価は上昇し続けた。

 「スポットライト」の報道を受けて過ぎ去った何か月は、カトリック教徒の間では2002年の「長い四旬節」として知られるようになった。バチカンから世界の中の末端の教区に至るまで、教会の指導者たちが成人虐待危機の性質と規模に早急に気づかなければ、 21世紀半ばに、「長い四旬節」の続編が訪れることになるだろう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
 Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.
2026年7月30日

(評論)ルプニク事件で明らかにされたバチカンの秘密主義、”法律家”の教皇はどう対応するか(Crux)

(2026.7.24 Crux Editor クリストファー・R・アルティエリ)

 著名な芸術家で司祭、元イエズス会士による性的虐待裁判でのバチカンの透明性の欠如に対する長年の不安が今週爆発し、統治上の重大な問題が鮮明に浮き彫りになった。この問題は、一言で言えば、「教会法における刑事裁判はなぜ秘密裏に行われるのか?」。教会の司法制度で活動する刑事弁護士、刑事司法の専門家、そして改革推進者たちを長年悩ませてきた問題だ。

 長年にわたり数十人の被害者を性的に虐待していたとされる、スロベニア出身の元イエズス会司祭、モザイク画家および精神的指導者として世界的に名声を得たマルコ・イヴァン・ルプニク神父の裁判は、この問題の縮図と言えるだろう。

 21日、ルプニク氏を告発した5人の弁護士の一人、ローラ・スグロ氏は、教会がこの事件で正義を実現しようとする努力を痛烈に批判し、手続き上の不備、遅延、そしてほとんど”カフカ的”な透明性の欠如に抗議した。これと前後して、広まり始めたルプニク氏の無罪判決の噂を受ける形で、バチカン報道局は、翌日、声明を出し、「秘密保持は、手続きそのものへの敬意と、関係者へのさらなる苦痛を避けるために必要だ」と説明した。

 問題は、この説明が、必ずしも「真実を語っていない」ということ、少なくとも「必ずしもそうとは限らない」ということであり、バチカンもそれを承知している、ということにある。バチカン市国の刑事裁判制度(厳密には「民事」管轄)は、その紛れもない証拠だ。バチカン市国の刑事裁判所における裁判は、長年にわたり公開されているのだ。

 ジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチウ枢機卿が汚職と横領の容疑で裁判にかけられたことは、「公開」の一例だ。枢機卿は2021年に初めて裁判にかけられ有罪判決を受けたが、自身は無罪を主張しており、現在進行中の控訴審で事件は大きく進展している。バチカンはベッチウ枢機卿に対する具体的な告発内容を公表し、証人たちは公の場で証言を行い、認定を受けたジャーナリストたちが審理の様子を取材した。

 2021年から2024年にかけてバチカン市国で行われたガブリエレ・マルティネッリ神父とエンリコ・ラディーチェ神父の裁判もその一例だ。マルティネッリは、当時バチカン敷地内にあった聖ピウス10世小神学校の学生だった際に、同級生への虐待容疑で起訴された。一方、ラディーチェは、これらの犯罪が疑われた当時、同神学校の学長を務めており、共犯の容疑で起訴された。マルティネッリは「未成年者へのわいせつ行為」というより軽い罪で有罪判決を受け、ラディチェは無罪となった。

 ”バチリークス”で名高い2件の機密漏洩裁判も同様に公開され、ベネディクト16世の元執事、国務省のIT専門家、ファム・ファタールのPRコンサルタント、そして2人のイタリア人ジャーナリスト(いずれも一般人)が、スペイン人司教とその助手(こちらも一般人)とともにバチカン市国の裁判所で裁かれた。執事のパオロ・ガブリエーレは文書窃盗の罪で有罪判決を受け、18か月の禁固刑を言い渡され、バチカンで服役した。また、費用負担も命じられた。IT担当のシアペレッティも有罪判決を受け、最終的に2か月の執行猶予付き禁固刑と5年間の保護観察処分となった。

 ファム・ファタールのフランチェスカ・チャウキは有罪判決を受け、執行猶予付きの10か月の禁錮刑を言い渡された。司教のアンヘル・ルシオ・バジェホ・バルダは有罪判決を受け、18か月の禁錮刑を言い渡された。バジェホの助手である信徒のニコラ・マイオは無罪となった。ジャーナリストのジャンルイージ・ヌッツィとエミリアーノ・フィッティパルディに関しては、裁判所は、被告らがバチカン領内で容疑とされる犯罪行為を一切行っていないとして、被告らに対する正当な管轄権はないとの判決を下した。

 これらの裁判はすべて、メディアで大きく報道された。ジャーナリストたちは、証言(中には非常に高位の聖職者によるものもあった)を聞き、動議や判決を検討するために現場に駆けつけた。人々は報道で裁判の進行状況を知り、裁判の進め方について意見を述べた。裁判は、決して完璧ではなかったが、意義深い形で一般に公開された。

 教会法に基づく裁判が、原則として有意義な形で公開されない理由は何もない。教会が秘密主義に固執する姿勢は、教会法における司法手続きの公正さを損ない、被害者を積極的に苦しめている。被害者の多くは何年も、中にはルプニクの被害者のように数十年も、加害者とされる人物に正義が下されるのを待ち続けているのだ。

 バチカン報道局は声明で、ルプニク氏の無罪判決の噂を「全く根拠のないもの」と断じ、「この事件はまだ裁判官の判断に委ねられている」と述べた。だが、どのように説明しようとも、バチカンにおける司法秘密主義の根拠の弱さを露呈しているという事実は変わらない。

 レオ14世が教皇に選ばれたコンクラーベで、彼が候補者として魅力的だったのは、教会法に関する訓練と経験があったからだ。枢機卿たちはまた、彼が生来の制度主義者であることも理由の一つとして挙げた。教会の司法制度全体を、根本から改革することは、いかなる人間にも、そしておそらく、いかなる教皇も在位期間に成し遂げられない、途方もない事業となるだろう。

 とはいえ、教皇の手の届く範囲で実行可能な対策はいくつか存在する。彼は、ルプニク神父に対する具体的な容疑を公表するよう命じることができし、担当裁判官の名前を公表するよう命じることもできる。弱い立場にある人々や正当な機密情報を保護するため、報道内容を事前審査することなどを条件に、記者に申し立てや判決へのアクセスを許可することができる。

 証言者へのアクセスは確かに難しい問題だ。なぜなら、教会法における裁判は、ほとんどが「書類に手続き」であり、証人尋問が行われる場合でも、法廷ではなく、アメリカの法曹界における証言録取のような場で行われることが多いからだ。

 いずれにせよ、たとえ裁判が、非常に不完全な制度と規則の下で行われているとしても、「法学者レオ」が既に進行中の裁判に介入することをためらう気持ちは、理解でき、共感でき、さらには”称賛に値する”と言える。だが、先に筆者が述べたような措置は、裁判のプロセスへの干渉には当たらないだろう。これらは、最低限の透明性を確保するための常識的な措置であり、それがなければ、正義を執行する能力に対する教会に対する信頼はますます損なわれるばかりだろう。

 いずれにせよ、教皇レオ14世のもとで、今後のバチカンにおける裁判は、フランシスコ教皇がこの問題に関与していたこととは、全くかけ離れたものとなるだろう。

 フランシスコ教皇はベッチウ枢機卿の裁判中に法律をいくつか改正したが、その中には枢機卿をバチカン市国の刑事裁判所で裁くことを認める特別勅令も含まれていた。ルプニク事件でレオ教皇ができる最も重要なことは、正義が実現されること、そしてそれが実現されたことが人々に認識されるようにすることだ。

 教皇はルプニク事件を引き起こしたわけでも、虐待と隠蔽の危機を長引かせる指導者文化のより広範な問題を作り出したわけでも、教会が正義を実現する能力に対する国民の信頼を損なう秘密のシステムを設計したわけでもない。彼はペテロの司教座への就任を受諾した際、それら全てを文字通り丸ごと買い取った。今、我々は、彼がそれらに対処するための措置を講じるかどうかを見守っているところだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
 Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2026年7月27日

・バチカン報道局、性的虐待の著名芸術家・司祭、ルプニク氏の無罪判決の”噂”を否定

(2026.7.22  Crux Editor クリストファー・R・アルティエリ)

 バチカン報道局が22日、声明を発表、著名な芸術家兼司祭の元イエズス会士、マルコ・ルプニク神父の教会裁判で判決が下されたという噂を否定した。失脚した聖職者の無罪判決の噂がローマで広まり始めていたのを受けたものだ。

 声明で報道局は、「マルコ・イヴァン・ルプニク神父の事件を担当する裁判官による審議に関する報道は、全く根拠のないものだ」と言明した。声明は、ルプニク神父を告発した5人の弁護士が21日に、教会による事件解決に向けた取り組みを痛烈に批判し、手続き上の不備や不透明な情報開示を訴えたわずか1日後に発表された。

 ルプニクの性的虐待被害者たちは、この人物に正義が下されるのを何年も、中には数十年も待ち続けている。しかし、ルプニクはバチカン当局から極めて寛大な扱いを受け、危うく完全に法の裁きを免れるところだった。

 原告被害者の弁護人ローラ・スグロ氏はCrux Nowの取材に応じ21日に発表した書簡は依頼人の要請に基づいて作成したものだ、とし、「私自身も原告被害者も、裁判が始まっていることすら正式に知らされたことは一度もなく、訴訟手続きがどの程度進んでいるのかも知らされていない」とバチカンの法務当局への不信を露わにした。

 これに対し、バチカン報道局は声明で、「この件の評価は現在も進行中だ。裁判官団は現在、関係する教区、イエズス会、利害関係者、そして報道機関から寄せられた文書を精査している」と述べている。

 また、教会法に基づいて行われているこの手続きの秘密性が、その手続きの遅さと、ほぼ完全な不透明性から、関係者の間で激しい批判の対象となっているが、声明は「審理期間中は、進行中の作業に関する情報をいかなる形でも共有してはならない、とされている」とし、秘密保持の理由について、「手続きそのものへの敬意と、ここ数日のように関係者にさらなる苦痛を与えることを避けるためだ」と説明。

 さらに、「秘密保持は、あらゆる司法手続きと同様だ」と述べているが、バチカン市国における刑事裁判(厳密には別の「民事」管轄区域)は、長年にわたり公開されており、この説明は正確さを欠いている。その一例が、汚職と横領の容疑で起訴されたジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチウ枢機卿の注目度の高い公開裁判だ。枢機卿は2021年に初めて裁判にかけられ有罪判決を受けたが、無罪を主張して、控訴し、控訴審が大きな進展を見せている。バチカンは枢機卿に対する具体的な告発内容を公表し、証人たちは公の場で証言し、適格とされたジャーナリストたちが審理の様子を取材ている。

 また、2021年から2024年にかけてバチカン市国の刑事裁判所で行われた、ガブリエレ・マルティネッリ神父とエンリコ・ラディーチェ神父の虐待および関連犯罪の容疑に関する裁判も、ジャーナリストによって広く報道された。マルティネッリ神父は検察側が提示したものより軽い有罪判決を受け、ラディーチェ神父は無罪となった。

 教会の司法制度で活動する刑事弁護士、刑事司法の専門家、そして改革推進者たちは皆、「教会法に基づく裁判が実質的に公開されない理由は、原則として何もない」と主張している。

 教会法における裁判は、往々にして極めて時間がかかり、意図的に秘密裏に進められることで知られているが、原告、被告の代理人弁護士は通常、少なくともある程度は裁判手続きにアクセスできる。だが、スグロ弁護士によると、「ルプニク神父の裁判では、原告たちは証言を求められておらず、事件を担当する裁判官の名前も原告側に知らされていない。原告が訴訟手続きにおいて被害者として認められるよう申し立てた件に関する裁判官の判断すらまだ受け取っていない」という。

 同弁護士は、「これらは、30年以上前に初めて虐待を報告した被害者に関わる刑事訴訟に関する、いくつかの基本的かつ根本的な問題だ」と指摘するが、バチカン報道局は声明で「さらなる情報が必要と判断した場合、必要な情報を入手するために自らの権限を行使するのは、自身の責任になる」としか説明していない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年7月27日

・『神言会裁判』15回目、原告側「告解を性的虐待に使った加害司祭」「司祭叙階の司教、神言会」の責任を、民法のみならず教会法上も問う

(2026.7.9 カトリック・あい)

  聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が加害司祭(当時)が所属していた神言会に損害賠償を求める裁判の15回目が、9日午前11時から東京地裁第708号法廷で開かれ、原告支援者など30人以上の傍聴人を前に、原告側弁護人は民法だけでなく教会法の見地も合わせる形で、①加害司祭を叙階した司教と、司教に叙階を進言した神言会の責任②「告解(赦しの秘跡)」を悪用し、信徒を性的虐待するという危機に陥らせた司祭に対する注意務違反を、損害賠償の根拠に加える主張を、準備書面を通して行った。

 9日の裁判で、これまで触れて来なかった教会法との関係を取り上げたことについて裁判長から問われた原告弁護人は、「これまで被告側は『教区と修道会は異なる』として、神言会の賠償責任を回避してきたが、神言会所属の加害司祭の叙階は、教会法に基づいて司教が行うなど、教会法上からも”分離論”は通らない」と説明。

 そのうえで、①信徒は自らの信仰を守る権利(債権)があり、司祭はそうした信徒を正しく導く責任(債務)をもつことが教会法上の定めであり、これは民法上の『債権債務』の関係となる②告解で得た知識を告白した信徒に不利益を与えるやり方で使用することは絶対的に禁止するという教会法の定めに反した加害司祭の行為を放置した神言会の対応は、労働契約法労働安全衛生法の「安全配慮義務違反」に相当する、と述べた。

 裁判に続いて東京弁護士会館で開かれた説明会・原告被害者支援集会では、参加者たちから、特に「告解」を悪用して性的虐待に及んだ加害司祭のあるまじき行為に非難が集中。参加者の一人の司祭からは「告解の悪用は、司祭職に値しない恥ずべき行為。本来なら、即、司祭職はく奪すべきものだ。『告解』の信頼を揺るがす、あってはならない行為がなされたこと、それに適切な対応をしなかったことの責任を、徹底的に追求せねばならない」と自戒を込めた発言があった。

 次回16回裁判は9月7日午前11時から東京地裁第606法廷、17回裁判は10月1日午後3時から同法廷で開くことになった。前回裁判で裁判長は、「判決を遅くとも来年3月に出すことを前提に、証人訊問は10月ないし11月に行い、できる限り今年12月に結審したい」と異例のスケジュール公開をしており、2023年1月に始まった長期にわたる神言会裁判はいよいよ大詰めを迎える。

 

2026年7月9日

・『神言会裁判』15回目、7月9日午前11時から、東京地裁第708号法廷。年内結審へ

(2026.7.7 カトリック・あい)

  聖職者による性的虐待で深い傷を負った女性信者が加害司祭(当時)が所属していた神言会に損害賠償を求める裁判の15回目は、9日午前11時から東京地裁第708号法廷で開かれる。裁判後、隣接する東京弁護士会館507号室で原告と原告弁護人による説明会と支援者集会が予定されている。

 15回目の裁判は当初、6月3日に予定されていたが、大型台風接近のため、7月9日に延期されていた。前回3月の裁判は、原告支援者など約30人が傍聴。原告、被告双方の代理人弁護士から事前提出された準備書面について、双方と裁判長から特に目立った意見は出されなかったが、注目されたのは、裁判長から裁判の今後のスケジュールが明らかにされたこと。それによると、「判決を遅くとも来年3月に出すことを前提に、証人訊問は10月ないし11月に行い、できる限り今年12月に結審したい」というものだ。

 これによって、被告の神言会が所属司祭による女性信徒への繰り返し性的虐待を加えたことの責任を言を左右にして認めようとせず、2023年1月に始まった審理を際限なく引き伸ばそうとしてきたこの裁判の道筋が、ようやく見えてきたことになる。

 6月3日の裁判は延期されたが、弁護士会館での支援集会は予定通り開かれ、参加した一般信徒、司祭、修道女など30人以上が、これまで3年以上も、裁判での神言会の不誠実な対応に苦しんできた原告被害者の努力を称えるとともに、最後まで被害者に寄り添うことを誓い合った。

 原告弁護人は、「性的虐待を犯した司祭も問題だが、これは個人の犯罪でなく、所属修道会である神言会の”犯罪”。それがこれまでの神言会側の不誠実な対応で明確になった。この問題を個人でなく、組織による犯罪として告発していく」と述べている。

 

2026年7月7日

・英ノーサンプトン教区の現職司教が未成年強姦容疑で逮捕・起訴、教皇がウェストミンスター大司教を教区長代行に任命

(2026.6.30  Crux Now Staff)

  英ノーサンプトン教区長のデイヴィッド・オークリー司教が警察から未成年強姦容疑で起訴されたことを受け、教皇レオ14世は30日、ウェストミンスター大司教区のリチャード・モス大司教を同教区の使徒座管理者に任命した。

 『Crux Now』は詳細情報を得るため、ノーサンプトン教区、ウェストミンスター大司教区、およびイングランド・ウエールズ司教協議会に問い合わせたが、3者ともすでに公開されている情報に言及するにとどまった。教会当局が昨年のオークリー逮捕を公表しなかったことに加え、『Crux Now』の調査により、オークリーが同じく昨年10月に、聖職者や修道者志望者の適性評価を行う「セント・ルーク・センター」の所長職からひっそりと退いていたことも判明している。

 英国カトリック教会による、このような対応は、教会指導者による児童保護手順の遵守や、透明性のある統治への取り組みについて深刻な疑問を投げかけている。

 オークリー司教は昨年10月、具体的な理由は明かされていない「個人的な理由」により公的職務から退いていたが、最近になって、警察が昨年9月に未成年の少女に対する強姦容疑で同司教を逮捕していたことが明らかになっていた。

 そして、管轄のスタッフォードシャー警察は先週、声明を発表し、オークリー司教が「16歳未満の女性に対する強姦罪2件」で起訴されたことを明らかにするとともに、「オークリーは8月14日にキャノック治安判事裁判所に出廷する予定だ」と述べた。警察によると、オークリーの容疑は2000年2月と2001年2月、彼がバーミンガム教区の教区司祭を務めていた際にスタッフォードシャーで発生した。

 暫定的にノーサンプトン教区の統括を引き受けることになったウェストミンスター大司教のリチャード・モス大司教は、「ウェストミンスター大司教としての職務に加え、ノーサンプトン教区の使徒座管理官という使命を私に委ねてくださった、教皇レオ14世の御信頼に深く謙虚な思いを抱いている」とし、「私が奉仕するよう召された方々に、主がこれらの職務を全うするために必要な霊的な導きと知恵を、引き続き私に与えてくださるよう、私のために祈っていただきたい」と述べている。

 スタッフォードシャー警察による発表を受け、ノーサンプトン教区はこのニュースを認める声明を発表。「ノーサンプトン教区は、過去のものである児童保護に関する申し立てに対する調査の結果、デビッド・オークリー司教が起訴されたことを確認できる」と述べ、「これは関係者全員にとって非常に辛いことであると理解している」とする一方、「教区としては「進行中の法的手続きについてはこれ以上コメントできない」としている。

 イングランド・ウェールズカトリック司教協議会も、スタッフォードシャー警察の発表を受けて出した声明で、「この疑惑の報道が、多くの人々の心に痛ましい記憶を呼び覚ます可能性があることを深く認識しており、イングランドおよびウェールズのカトリック教会における虐待によって傷つけられた方々に対し、改めて心からの謝罪を申し上げる」と述べ、「この際、児童・青少年保護に対する教会の取り組みについて、司牧的見地から安心感を提供したい」と約束した。

 だが、オークリーは、教区に対する統治権限は失っているものの、公式には依然としてノーサンプトン司教の地位にある。『Crux Now』がバチカン報道局に送った質問―「バチカンがオークリーに対する疑惑をいつ知ったか」「彼の逮捕をいつ初めて知ったか」、そして「バチカンが本件を独自に調査する予定があるか」などについては、即時の回答は得られていない。

2026年7月2日

・教皇、バチカン未成年者・弱者保護委員会の保護取り組み強化へ新たな規約と任務を承認

A view of St. Peter's BasilicaA view of St. Peter’s Basilica 
(2026.6.13  Vatican News)

   教皇レオ14世は13日、未成年者および脆弱な立場にある人々を性的虐待などから保護に対する教会の取り組みを強化するため、バチカン未成年者・弱者保護委員会の新規約を公布された。

 新規約は、2015年に公布された現行規約を置き換えるもので、委員会の組織と任務を使徒憲章『Praedicate Evangelium』に整合させた。3年間のad experimentum(試験的)期間が設けられている。

 パロリン国務長官が署名した勅令によると、教皇は2026年5月20日の謁見で改訂案を承認し、直ちに発効するよう命じておられた。

*説明責任の促進における教皇庁委員会の役割

 

 規約の公布に伴うプレスリリースによると、未成年者。弱者保護委員会は、改訂された条文が全世界の教会における保護対策の実践を促進する委員会の役割を強化するものであり、「保護対策が、教会の活動と組織に完全に統合されることを確保する」という、さらに広範な取り組みの一環だ。

 ティボー・ヴェルニー委員長は「新規約は、最も弱い立場にある人々を保護し、ケアする』という私たちの共通の責任を深める上で重要な一歩となる… これらは、被害者・生存者、保護の専門家、そして現地教会の経験に耳を傾けたことを反映しており、保護が依然として中心的な優先事項であることを再確認するものだ」と新規約の意義を強調した。

*委員会の任務における新たな側面

 委員会によると、新規約は委員会の任務と実務上の有効性を強化し、被害者や生存者の声を反映したアプローチを引き続き重視している。また委員会のバチカン他省や機関との関係を明確にし、「説明責任、透明性、そして世界的な適切な保護実践」を促進する委員会の役割を強化している。

 委員会は教皇に直接報告を行い、未成年者や脆弱な人々を虐待から守るための助言を行う。プレスリリースは「同委員会は教理省と並立して設置されており、情報交換、保護手法の開発、年次報告書の作成、および養成プログラムにおいて、同省と緊密に協力している。委員長または事務局長は教理省の指名メンバーであり、教理省の長官は、委員会の総会へのオブザーバーとして、同省の職員1名以上を指名する」と説明。 同委員会は統治を行うものではないが、バチカンの各省、機関の世界の現地教会における責任と権限を促進することで、普遍教会に対する教皇庁の奉仕を導く一助となる、としている。

 委員会が強調した進展の一つとして、現地教会が保護の枠組みを構築し、安定的で利用しやすい通報システムや、「被害者/生存者を歓迎し、耳を傾け、寄り添う」相談センターを推進することを継続的に支援していることが挙げられる。その際、機密性と個人データの保護も徹底されている。

*年次報告書の作成責任

 

 委員会はまた、「保護に関する教会の政策と手続に関する年次報告書」を作成する責任についても言及。報告書は、各省・機関や現地の教会組織からの報告を基に、検証済みの政策、表明された実践、受け取った情報、制度的な課題、および提言を整理することで、「世界教会における保護の現状」を把握することを目指している。

 教皇は昨年5月の就任以来、「未成年者や脆弱な立場にある人々の保護は、教会の基本的な責任であること」を繰り返し確認してこられた。委員会は、新規約がこの取り組みを再確認するものであり、「世界中の各地の教会が保護活動を強化する過程で、それらに寄り添う」という委員会の使命を支えるもの、と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年6月13日

・スペイン訪問中の教皇、マドリードで聖職者による性的虐待被害者と面談、善処を確約

(2026.6.8 VaticanNews   Deborah Castellano Lubov and Salvatore Cernuzio)

 スペイン訪問中の教皇レオ14世はマドリード滞在3日目の8日、同国内で聖職者による虐待を受けた被害者たちと非公開の面談をされた。今回の面談は、スペインの教会によって企画され、教皇がローマを発たれる前に確認されていた。面談の詳細な内容については、被害者のプライバシーを尊重しつつ、まもなく公表される予定という。

 バチカン報道局のマッテオ・ブルーニ局長が明らかにしたもので、教皇は、被害者の支援とケアに当たる教会関係者に付き添われた6人の虐待被害者と面談された。

 局長によると、1時間近く続いた面談で、出席者一人ひとりが、自らの痛ましい個人的体験に基づき、悲劇的な事例に対する教会の対応を効果的なものにするための数多くの対策を提案。教皇は、愛情と注意を払って耳を傾け、自身だけでなく教会共同体全体が彼らに寄り添っていることを伝え、受け取った提案がさらなる取り組みの礎となるよう努めることを確約された。

 局長は「そうすることで、教会が真に安全で霊的に健全な場所となり、傷ついた人々が慰めと癒やしを見出せるようにするためです」と説明。また、「被害者たちは、教皇が自分たちの苦しみを自らのものとして受け止めてくれたと感じました」と述べた。

 聖職者による信者たちへの性的虐待問題は、スペイン教会にとって依然として痛ましい課題であり続けている。教会は近年、予防と償いを目的とした様々な取り組みを行い、3月にはスペイン司教協議会、修道会協議会、大統領府が、この痛ましい現実を「真実と正義をもって対処」するための協定に合意した。

 今回の教皇による非公開の対話会合は、その形式において前任者たちのものと類似していた。ベネディクト16世教皇は、2008年の米国訪問時、また英国、オーストラリア、ドイツ訪問時に、虐待被害者と面談。フランシスコ教皇もまた、アイルランド、チリ、ポルトガル、ベルギーへの訪問中に同様の面談をされている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年6月9日

教皇スペイン訪問・訪問中に聖職者による性的虐待被害者と面談を予定

(2026.6.5  Vatican News   Salvatore Cernuzio)

  6月6日に始まる教皇レオ14世のスペイン訪問で、同国での聖職者による虐待の被害者たちとの面談も予定されている。

 バチカンのマッテオ・ブルー報道局長が5日、一部の報道機関の報道を確認したもので、局長は「面談はスペイン教会によって企画されたもの。面会後、被害者とその意向、プライバシーを尊重した上で、さらなる情報が提供される可能性がある」と述べた。

 聖職者による信徒たちへの性的虐待問題への対応は、スペインの教会にとって依然として深刻な課題である続けている。近年、予防と救済を目的とした様々な取り組みを実施し、今年3月も、スペイン司教協議会、修道会協議会、大統領府が、この問題に対して「真実と正義」をもって対処するための協定で合意した。

 教皇の訪問に先立ち、複数の地元メディアがこの問題を報じており、一部の報道では、多くのスペイン人性的虐待被害者が教皇に謁見を求める手紙を送ったと伝えられていた。

 教皇の海外訪問の際の性的虐待被害者との面談は、ベネディクト16世が2008年の米国訪問をはじめ、英国、オーストラリア、ドイツへの訪問時に教皇ベネディクト16世がされ、フランシスコも、チリ、アイルランド、ポルトガル、ベルギーへの訪問時に実施されている。それに倣い、教皇レオ14世も、非公開の形で性的虐待被害者との面談をなさることになった。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年6月6日

・フランスの女性信徒、司祭の10年にわたる性的虐待を告発する回顧録を出版

(2026.5.28  Crux  Europe Correspondent   Fionn Shiner)

 フランスの女性カトリック信徒が28日、回顧録を出版、「エマニュエル共同体*の司祭から10年にわたって性的虐待を受けた」と告発した。
 この女性は、同共同体の奉献信徒、クロディーヌ・ブランシャール氏。ランスの大司教が序文を寄せた回顧録『赤いソファ:支配から自由へ』で、「B神父」と呼ばれる司祭から性的虐待を受けたことを明らかにし、「ある神父の影響下で、私は10年間、気づかぬうちに虐待を受けていた… 虐待は2003年に始まり、エマニュエル共同体が運営する拠点があるリール=ブシャールとパレ=ル=モニアルで起きた」と述べている。
 
 *注:1972年にフランスで設立された「属人区・แสวงหา (信徒共同体)」。独身者、既婚者、司祭が共に神の愛を分かち合う、国際的な信仰運動とされている。

 フランスのカトリック紙『ラ・クロワ』は、同書の内容を照合し、共同体のメンバーへの取材を行った結果、「B神父」は「ベルナール・ペイロ神父」と推定されると報じている。ペイロ神父はボルドー教区の司祭であり、同共同体の元メンバーでもある。現在、「成人女性に対する強姦および性的暴行」の容疑で正式な捜査を受けているが、本人は刑事上の不正行為を否定しており、推定無罪が適用される、としている。

 「ベルナール・ペイロ神父は、『司祭職と相容れない関係』を持っていたことは認めているが、刑法に違反する行為を行ったことは否定している」と、神父の弁護を担当するシャルル・デュフラン弁護士は『ラ・クロワ』紙に語った。弁護士は、この本は「エマニュエル共同体の評判と著者の個人的な利益を守るために出版された… 法的な訴因の内容とは乖離があり、その訴因は非常に脆弱だ」と述べた。

 ブランシャール氏の主張によれば、この虐待は、ラルシュ(L’Arche)の創設者ジャン・ヴァニエによる虐待と同様、「霊的指導や精神的な助言という関係」の中で行われた。2020年、ラルシュは内部報告書を公表し、ヴァニエが「1970年から2005年にかけて6人の女性に性的虐待を行っていたこと」を明らかにしている。

 回顧録によると、2005年、ブランシャール氏はペイロ神父に対し、自分にとって「神が彼に求めた『父』となってほしい」と求める手紙を書いた。その後、神父は、彼女を自分のオフィスに連れて行き、お腹を撫でたという。その瞬間から、この行為が「全裸にされること、完全な屈辱、さらにはレイプに至るまで」エスカレートした、と彼女は主張している。

 回顧録に序文を寄せたランス教区のエリック・ド・ムーラン=ボーフォール大司教(昨年までフランス司教協議会長)は、「才能豊かで寛大な人物が、いかにして自ら嫌悪する行為へと駆り立てられるのか、私たちは驚きと計り知れない悲しみをもって知ることになる」と語っている。

  ・・・・・・・

 2017年、ボルドー教区とエマニュエル共同体は、ある女性が霊的指導のセッション後にペイロ神父から「マッサージを受け、トラウマを負った」と主張したのを受け、神父に対し制限措置を課した。ペイロは数か月の間、フォンゴンボー修道院へ送られ、その後の2年間はトゥールーズ教区で病人の付き添いと葬儀の司式のみを行うことが許された。

 『ラ・クロワ』紙によると、ボルドー教区は2019年に、同神父について教会法上の調査を開始し、その結果、神父に対してさらなる制限が課され、トゥール教区のル・イル・ブシャールへの帰還を3年間禁じる措置が取られた。

 2021年、ブランシャール氏はペイロ神父を刑事告訴し、神父は2024年に司法捜査の対象となった。神父の弁護士、デュフラン氏は「エマニュエル共同体が明確に巻き込まれたまさにその瞬間、その指導者たちはペイロの事件を刑事事件として扱おうと主導権を握り、彼との距離をさらに置こうとしていると、思わざるを得ない」と述べた。 ブランシャール氏が現在も所属するエマニュエル共同体は、使徒的査察の対象となっており、本件に関する独立した調査委員会の設置を求めている。

 ブランシャール氏の回顧録が刊行される2日前、エマニュエル共同体は支援者に向けたメッセージの中で、同氏への「支援に失敗した」ことを認め、「彼女の証言は、他の人々の証言と同様、真実の探求と、私たちに課せられた責任感の一部。私たちは、同じ決意を持って自らの歴史を再検討し続けなければならない」と反省の弁を述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年5月30日

・「性的暴行被害者の訴えにもかかわらず、司祭を説教壇に留めていた」米ニューオーリンズ大司教区が認める

(2026.5.16 Crux    Managing Editor   Christopher R. Altieri)

  米ニューオーリンズ大司教区の指導者たちは、複数の被害者に対する連続性的暴行の容疑で刑事裁判中のオディオン神父に対する訴えが出ていたにもかかわらず、その司祭が長年にわたり司牧活動を続けることを容認していたことを、大司教区がCrux Nowの取材に対して認めた。

 ニューオーリンズ大司教区を含む様々な教会指導者や管轄区域によるオディオン事件の対応について、『Crux Now』は、包括的な調査をもとに回答を求めたのに対し、ニューオーリンズ大司教区は「アンソニー・オディオンに関するニューオーリンズ大司教区の記録を精査した結果、オースティンから報告された不祥事は成人を対象としたものであったことが判明した」とし、「当時、大司教区当局は、その報告についてオディオン本人と直接話し合うことを選択した… 最終的に2023年にオディオンを聖職から解任した」と説明。

 さらに、「当時、追加情報が明らかになるにつれ大司教区は、すでにその申し立てを調査していた法執行機関に通報した」と釈明したが、大司教区は2019年にオディオンに関してオースティン教区から報告を受けていたにもかかわらず、大司教区もオースティン教区も、信徒へのその旨の注意勧告を行わず、オディオンの教区での活動を事実上放置していた。

 ナイジェリア出身のアンソニー・オディオン神父(57)は、2006年から2012年までテキサス州オースティンで、2015年から2023年までルイジアナ州ニューオーリンズで奉仕していたが、同神父の虐待的な行動のパターンを明らかにした調査報道を受けて、ニューオーリンズ大司教区が2023年に彼を停職処分とした旨の声明を発表した。

 停職処分から実に4年も前の2019年、オースティン教区はオディオン神父に対する被害者からの訴えについてニューオーリンズ大司教区に伝えていた。しかし、声明によると、ニューオーリンズ大司教区はオースティン教区と同様に、信徒への通知を見送った。その理由は、申し立てが「成人を巻き込んだもの」であったことから、代わりに神父と直接問題に対処することを選んだため、としていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
 Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2026年5月20日

・米国のテキサス州の司祭に対する性犯罪裁判が迫り、教区の対応へ疑問が噴出(Crux)

*事件の概要

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2026年5月14日