(評論)教皇、東ティモール訪問―司教などの未成年性的虐待スキャンダルに沈黙続ける教会、信者たちにどう対応(LaCroix)

(2024.9.9 La Croix (with AFP)

 東南アジア・オセアニア4か国歴訪中の教皇フランシスコは9日、3番目の訪問国、東ティモールに到着した。カトリック教徒の多いこの国で、教会内の未成年性的虐待スキャンダル依然として強い”沈黙”が敷かれている。聖職者による性的虐待問題が世界的に教会への信頼低下の大きな原因となり続けている中で、教皇はこの国の教会が抱える問題にどのように対応するのだろうか。

 東ティモールのこの痛ましいスキャンダルの中心にあるのは、独立闘争の英雄であるカルロス・ベロ司教をめぐるものだ。同司教は、約20年間にわたって未成年の少年を性的に虐待したとして告発され、2020年にバチカンから秘密裏に制裁を受けた。ベロ司教は、ポルトガルによる4世紀以上の植民地支配とインドネシアによる25年間の占領を経て2002年に独立したこの国で、人権擁護の中心的役割を果たしたとして、1996年にノーベル平和賞を受賞している。

 だが、2022年、オランダの週刊誌による衝撃的な調査で、裏付けとなる関係者の証言をもとに、1980年代から1990年代にかけて10代の若者を虐待し、性的暴行をし、金を払って彼らを沈黙させた、と告発され、バチカンは2年前に司教に課した制裁を公表せざるを得なくなった。LaCroixは、2023年に現地調査を実施し、この新興民主主義国で性的虐待の被害者を取り巻く沈黙を破ることの難しさを明らかにした。

 現在76歳で東ティモールの人々から尊敬されているベロ司教は、健康上の理由で2002年に職務を辞し、現在はポルトガルに住んでいる。強い非難を受けているにもかかわらず、彼は依然として、この国の130万人の住民(98%がカトリック教徒)の間で幅広い支持を得ている。東ティモール全国青年評議会のマリア・ダディ会長はAFP通信に「私たちは彼を失ったように感じています。彼がいなくて寂しい… 彼は東ティモールの戦いに本当に貢献しました」と語る。

 別のケースでは、アメリカ人司祭のリチャード・ダシュバッハが2021年に孤児や恵まれない少女たちを性的に虐待した罪で有罪判決を受け、聖職を剥奪された。だが、 12年の懲役刑を宣告されているにもかかわらず、彼は社会の上層部から支援を受け続けている。2023年、シャナナ・グスマン首相はダシュバッハ刑務所を訪れ、誕生日を祝いケーキを一緒に食べたことで物議を醸した。

 教皇の今回の東ティモールでの公式日程には被害者との面会は含まれておらず、バチカンもこの件についてコメントしていない。だが、2013年の選出以来、聖職者による性的虐待と高位聖職者などによる修文の隠ぺいに対して「ゼロ・トレランス」を誓ってきた教皇は、同国滞在中のスピーチの1つでこの問題に言及する可能性があり、それはこの問題に対する厳しい姿勢を確認するもの、と見なされるだろう。個人的に被害者と面会するかもしれない。

 こうした国内の反応に対して、他の国の被害者団体は厳しい見方をしている。北アイルランドを拠点とするドロモア・サバイバーズ・グループの創設者トニー・グリベン氏は、AFPの取材に「教皇は、東ティモールの信者たちに対して、教会関係者による性的虐待を認めねばならない」、 「東ティモールでベロ司教や他の聖職者から虐待を受けた人々は、問題のある聖職者への教会の継続的な対応の失敗について教皇が公式声明を出すことを期待している」と述べた。

 ただし、グリベン氏は、教皇の面会は被害者にとって「限られた価値」しかなく、2018年のアイルランド訪問時にフランシスコが行った謝罪と似ている、とも指摘する。「あのイベントは教会にとって巧妙に練られた広報活動でした。そして、その後も、アイルランドのカトリック教会では物事はいつも通り続いているのです」と批判している。

 聖職者虐待がもたらしている教会の危機を記録している米国の団体「ビショップ・アカウンタビリティ」は、影響力のある枢機卿に対して、「見捨てられた東ティモールの被害者のために」教皇に介入するよう求める手紙を書いたことを明らかにした。だが、多くの地元住民にとって、この問題は中心的な問題ではない。教皇にベロ司教が会うために、帰国することを許可されることを願う人さえいた。

 「国民として、私たちはベロ司教の不在を非常に残念に思います」と、58歳の学者フランシスコ・アマラル・ダ・シルバ氏は語った。「政府とカトリック教会は彼を招待すべきです」。しかし、首都ディリの住民の中には、彼の名前がこの非常に待ち望まれている訪問と結び付けられるかもしれない、という考えに、明らかに不快感を抱く者もいる。

 今月初め、教皇フランシスコを歓迎する看板の下の壁に描かれたベロ司教の肖像が、数日後に消し去られたのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年9月10日

・「言葉だけの謝罪は空虚、行動が必要」-アイルランドで「宗教団体運営の学校における性的虐待調査報告」を受け、カトリック司教や教育関係団体が声明

(2024.9.6  Crux  Managing Editor    Charles Collins)

 アイルランドのケビン・ドラン司教は、国内の宗教団体が運営する学校での性的虐待に関する報告書が発表されたのを受けて声明を発表、「被害者は、自分の話をする権利がある」と強調した。

 今週初めに発表された「宗教団体が運営する全日制学校と寄宿学校における歴史的な性的虐待に関するスコーピング調査の報告書」によると、アイルランドの宗教団体が運営する308の学校に関して、性的虐待の申し立てが2395件に上っている。また被害を申し立てた884人のうち約半数が亡くなっている。

 また、性的虐待の多くは、1960年代初頭から1990年代初頭にかけて発生し、報告件数が最も多かったのは1970年代初頭から半ばにかけて、となっている。

 この報告書を受けた声明で、ドラン司教は「私は、すべての段落の背後には、子供の頃に安全であるべき場所で虐待や暴力を受けた実在の人々の経験があることを認識している」と述べ、「報告書の悲劇は、単に彼らの数が非常に多いということではなく、彼らの多くが、他の誰かに話すのに十分な自由を感じる前に、何年もの間、自分の経験を一人で抱え込まなければならなかったこにあります」と指摘。

 そのうえで、ドラン司教は「学校での虐待の被害者は、私たちのすべての小教区に所属しています。彼らは私たちの兄弟姉妹です。司教として、教会の文脈で虐待の影響を受けたすべての人々に心から謝罪したいと思います」と述べ、「過去の経験から、このような謝罪の言葉は、どんなに善意のものであっても、生存者やその家族にとっては空虚に聞こえるかもしれない、と知っています。私は、行動が言葉よりも雄弁であることを、声高く述べたい。両教区の被害者保護チームとともに、私は、子どもの保護のために定められた方針と手続きが、引き続き完全に実施することを約束します」と強調した。

 報告書は、アイルランド政府に対し、全日制学校や寄宿学校での歴史的な性的虐待の被害者に対する救済計画を検討するよう求め、救済への貢献について関連する宗教団体に働きかけることなど、いくつかの勧告をしている。 アイルランドでは、小学校の90%近くがカトリック教会によって所有または管理されているが、中学校の数はずっと少ない。だが、修道会は国の多くの寄宿学校を管理している。

 The Catholic Education Partnershipも声明を発表し、今回の報告書は「子どもの保護に関して、深刻に機能不全で虐待的な教育制度における子どもと若者の犯罪的扱いを再び明らかにした」とし、「私たちは、アイルランド全土のカトリック教育コミュニティ全体を代表して、この報告書の重要性、生存者とその家族に引き起こされた深刻な被害、そして苦しんだが、もはや私たちと一緒にいない人々を認識したい。そして、カトリック学校が『2023年に見直された最新の児童保護手順』を保護者と生徒に保証することが重要と考える」と主張。

 「カトリックの教育部門は、効果的な子どもの保護を維持することに全力を尽くしており、これらの基準の開発、見直し、改善について常に政府、教育省と積極的に関わってきた。今後もそうしていく… 子供たちとその家族の信頼が、最も壊滅的な形で裏切られたことは、痛いほど明らか。私たちは、道徳的、市民的、および法定の責任を確実に支持することを確実にするために、利害関係者および州と協力することを約束する」と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年9月7日

・(評論)カトリック教会の”性的虐待危機”、収まる気配見えず、教皇の対応にも?(Crux)

(2024.8.23 Crux   Managing Editor  Charles Collins)

 聖職者による性的虐待が最近またニュースになっている。過去20年以上にわたって、性的虐待とその隠蔽に関する嫌悪すべき話は、英語圏やその他の国々でニュースの定番となってきたが、最近の一連の報道は、「教会が、本当に問題の根本に取り組もうとしているのか」という疑問を提起している。 

 今月初め、オーストラリアの西オーストラリア州議会・調査委員会は、宗教関係施設での児童虐待の被害者が受けることのできる支援に関する最終報告書を発表し、「カトリック教会やその他の宗教団体は、被害者に対してなすべきことよりも、自らの組織的および経済的”幸福”を優先してきた」と批判した。

 隣のニュージーランドでは先月、養護施設における虐待に関する王立調査委員会が、「養護施設における児童や弱い立場の成人への虐待に関する報告書」でカトリック教会を厳しく非難した。

 また先月には、アイルランドの新聞やテレビが、2017年に亡くなったイーモン・ケイシー司教が1990年代に性的不正行為で告発され、さらに亡くなる直前に3件の性的虐待の告発を受けていた、と報じている。

 北アイルランドでは、ダウン・アンド・コナー教区長のアラン・マクガッキアン司教が、1980年代にジェームズ・マーティン・ドナギー神父から青年時代に性的虐待を受けたパディ・マカファーティ神父に謝罪した。ドナギー神父は、 2012年に未成年者に対する性的虐待で有罪判決を受け、10年の刑に服した。

 マクガッキアン司教は、マカフェティ神父が受けた虐待の報告は「教区の児童性的虐待に焦点が当てられる中で、まともに取り上げられなかった。マカフェティ神父が2003年に詳細に文書で報告したドナギー神父の行為は、ことは明らかに犯罪的だった」と遅ればせながら反省の弁を述べた。

 英語圏でのこれらの報道は、イタリアで教皇フランシスコを取り巻く”性的虐待危機”が続く中でなされた。

 約30人の成人女性に性的虐待をしたとして告発されている元イエズス会士のマルコ・ルプニク神父は、現在も司祭であり続けており、その作品はバチカンのウェブサイトに今も掲載されている。

これは、バチカン広報省のパオロ・ルッフィーニ長官が6月に明言したことと関係している。長官は米ジョージア州アトランタで約150人のジャーナリストやメディア関係者に、ルプニク問題についてこう語った―「私たちは未成年者への虐待について話しているのではありません。私たちは知らない話について話しているのです、ルプニクの話を判断するのは私ではありません」。

 ごく最近のこと、教皇フランシスコの住まいを飾るルプニクの作品とされる画像が浮上した。それだけではない。昨年、教皇はシチリア島ピアッツァ・アルメリーナのロザリオ・ジザーナ司教を「良い」と評した。この司教は、未成年者に対する重い性的暴行で訴えられたジュゼッペ・ルゴロ神父をかばったとして告発されていた。そして、ルゴロは今年初めに有罪判決を受けている。

 ルゴロに性的暴行をされた被害者は、2020年に教皇に宛てた手紙の中で、「ジサーナ司教は、すべてを知っていたにもかかわらず、処罰を逃れさせるためにルゴロを異動させた」と訴えたが、バチカンが何の措置も取らなかったため、イタリアの司法当局に訴えた。

 教皇フランシスコは、昨年の声明で、ルゴロは「迫害され、中傷されたが、常に毅然とした態度で、公正な人だった」と弁護したが、このような対応は、虐待を隠蔽したと非難されていたチリのオソルノのフアン・バロス司教を2018年に教皇が擁護したのと似ている。教皇は中南米訪問中にこう述べていた―「(バロス司教が)虐待を隠蔽したという証拠は1つもありません。すべて中傷です。(隠蔽したというのは)本当ですか?」。

 教皇のバロス司教擁護の発言は、世界中で非難を巻き起こし、教皇自身が指名したバチカン未成年者保護委員会の委員長、ボストンのショーン・オマリー枢機卿からも非難された。そして、教皇は、調査官をチリに派遣し、虐待の被害者に謝罪し、善処すると約束した。

 これは6年前のことだが、それ以来、現在に至るまでに起きた事件(ここで概説したものだけでなく、他の多くの事件も)によって、「教皇が本当に教訓を学んだのか」、バチカン・ウオッチャーたちは疑問を膨らませ。被害者や支援者たちはますます怒りと不安を募らせている。

 なぜバチカンは、20年以上前に故ヨハネ・パウロ2世教皇のもとで、聖職者による性的虐待が表面化し、教会に危機が起き始めてから、真剣に対応策を学ぼうとしなかったのか?

 2002年に聖職者による児童虐待を米有力日刊紙Boston Globeがスクープし虐待行為と高位聖職者による隠ぺいが白日にさらされた後、教会関係者は問題に対処するためのガイドラインを発表し始めた。ガイドラインは国によって異なり、必ずしも厳密に守られてきたわけではない。それには、「教会の評判を守りたい」という願望から、「知らない人よりも知っている人を信じる」という人間の本性に典型的な傾向まで、さまざまな共通の理由がある。

 これは教皇フランシスコ自身の声明に見られる。バロスとルゴロは教皇の知人で、従来から友好的な会話を交わしていた。では、彼らを告発した人々は”知人”か?そうではない。

 教会関係者は、虐待の他の側面についても対処したがらない。たとえば、前述した北アイルランドのパディ・マカファーティ神父の事件は、彼が性的虐待を受けた時点で未成年ではなかったため、問題とされなかった。

 ルプニク事件に対する高位聖職者の態度も同様のようだ。ルプニクの被害者は成人で、ほとんどが女性である。バチカン広報のルッフィーニは、この芸術家兼司祭が「未成年者を虐待したとして告発されていないこと」を強調した。

 教会における虐待危機は消えてはいない。実際、拡大する可能性が高い。

 ニュージーランドにおける虐待に関する報告書は、虐待の疑いでパプアニューギニアに派遣されたニュージーランドとオーストラリアのカトリック司祭の調査を求めた。

 他の最近の報告書では、教会関係者が「問題のある」司祭を、調査を受ける可能性が低い地域に派遣することがよくある、と指摘されている。今後、こうした対応が問題として噴出する可能性もある。教会が”現実逃避”していることを示す証拠がたくさんあるのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月24日

・ブラジルの青少年司牧の司祭が、複数の少女たちを性的虐待、一人に中絶を強要した容疑で逮捕(Crux)

(2024.8.22Crux  Contributor  Eduardo Campos Lima)

 サンパウロ発 – ブラジルのアマゾナス州コアリ市で8月18日、少なくとも4人の10代の少女を性的に虐待、うち1人は妊娠させ、中絶を強要するなどしたとして、教区の青少年司牧の責任者の司祭が逮捕された。

 未成年者や社会的弱者に対する性交の強要、未成年者を巻き込んだポルノ動画の制作と保管、中絶の強要、女性への暴力脅迫などの罪で起訴される見通し。

 警察当局は、ダ・シルバが主導した犯罪行為には他の人々も関与していた可能性があるため、捜査を継続し、さらなる被害者が明らかになる可能性もある、としている。

 この神父はパウロ・アラウージョ・ダ・シルバ、31歳。2023年に匿名の人物から複数の少女が性的虐待を受けている、との通報があり、警察が捜査を開始。

 神父の被害者の1人に事情聴取したところ、その17歳の少女は、「ダ・シルバとの関係は14歳から始まり、ダ・シルバは、自分たちの性行為をビデオ撮影し、保管していた」と証言した。

 記者会見した警察幹部、ホセ・バラダス・ジュニア氏は、「被害者が昨年警察に助けを求めた時、彼女はダ・シルバから多大な圧力を受けてい”た」と述べた。

 また、地元ニュースサイト Amazonas Atualによると、ダ・シルバは、「被害者たちを教区の建物に引き込んだだけでなく、自分との”関係”を続けるよう強要し、彼女たちに強い精神的暴力をふるっていた」、さらに「被害者たちが自分と会わなくなることを決して許さず、「自分と一緒にいないなら、他の誰とも一緒になることはない」とさえ脅迫した、という。

 警察の調べによると、被害者の1人は、2023年に妊娠させられ、ダ・シルバはただちに中絶するよう強要した。警察幹部は「現在逃亡中の34歳の男性も(この犯罪に)関わっている。ダ・シルバの友人で、少女に薬を渡し、服用させ、中絶に至らせた」と現地のニュースメディアG1に語った。

 身元が確認された被害者たちは全員、ダ・シルバが担当するコアリ教区の聖ペトロ教会の信者で、教会に通っていた。関係者が警察に語ったところよると、ダ・シルバは日常的に被害者たちに他の女の子を連れてくるように求め、集団セックスを繰り返し、それをすべてを録画していたという。

 警察が教区の建物を家宅捜査し、ダ・シルバを拘束した際、18歳になったばかりの女性とベッドにいた。「つまり、ダ・シルバは、未成年の女性とセックスしていたということです」と警察幹部は述べた。警察はダ・シルバのスマートフォンを押収し、司祭が未成年者との性行為を撮影した少なくとも260本のビデオを発見した。司祭はまた、寝室に3万レアル(約5500米ドル)を所持していた。

 コアリ教区によると、ダ・シルバ氏は1992年生まれで、2018年に叙階された。ダ・シルバの逮捕を受け、コアリ教区は声明を発表、「あらゆる形態の虐待と搾取を拒絶する」とし、「コアリ教区は被害者たちとその家族に寄り添い、ダ・シルバ神父の虐待によって引き起こされたトラウマを克服できるよう、支援する用意がある」と約束。また教区は、ダ・シルバの司祭としての職務の停止を含む「必要なすべての教会法上の措置」を講じ、警察当局に協力してさらなる調査を進める、と明言した。

 Cruxは、ダ・シルバの言い分を聞くため、本人の弁護人を探したが、見つけることができなかった。またダ・シルバが所属するコアリ教区やと教会奉仕に携わる信者たちに話を聴こうとしたが、誰もコメントしようとしなかった。

 コアリ教区のウェブサイトによると、ダ・シルバは地元の青少年司牧の責任者とされているが、どのくらいの期間、この地域の青少年の司牧に当たっていたか、は明らかにされていない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月23日

・バチカン、性的虐待や財政上の不正行為で訴えられたペルー最大の福音宣教運動の創始者を追放

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年8月18日

・「児童性的虐待の被害者への対応で、カトリック教会などは隠ぺいなど自己利益を優先している」西オーストラリア州議会の調査委員会報告が批判

  西オーストラリア州の州議会議事堂(クレジット:Steelkamp / Wikipedia)

(2024.8.16 Crux  staff)

New report in Western Australia says Catholic Church must do more to help abuse victims カトリック教会など宗教団体による児童性的虐待被害者への対応を調査していた西オーストラリア州議会の特別委員会が15日、「宗教団体が虐待被害者への適切な対応よりも、自分たちの制度的および財政的な利益を優先している」とする最終報告書を州議会に提出した。

 報告書は、「”不浄な沈黙の壁”を守り続けている(カトリック教会などの)団体は、虐待被害者に対応する際、公正なケアを提供するのではなく、自分たちの賠償責任を小さくするための戦略としての措置をとっている可能性がある」と批判した。

 そして、特にカトリック修道会の報告書を取り上げ、「彼らの”経済的生存能力”を守るために、自分たちの保護下にある子供たちの虐待に関する情報を隠そうとしている」と非難、委員の一人は州議会への報告で「虐待をめぐる秘密主義と制度的な”否定の陰謀”は、虐待を受けた人々が受けたトラウマを増すだけでなく、正義への道をも妨げている」と糾弾した。

 報告書は、「カトリック教会など宗教団体の施設における児童性的虐待の被害者たちに正義がなされるためには、さらに多くのことを行う必要がある」と強調している。

 西オーストラリア州のカトリック4教区(パース、バンバリー、ジェラルトン、ブルーム)は15日、報告書の指摘を認める共同声明を発表、「西オーストラリア州のカトリック教区は、聖職者と一般信徒による性的虐待の恐怖に苦しんでいるすべての人々に、心から謝罪します。4つの教区は、教会内で信頼を受けていた人々によって行われた児童性的虐待が被害者や生存者に与える生涯にわたる危害と影響を認識しています」と述べた。

 そのうえで、「児童保護は、西オーストラリア州の各カトリック教区にとって依然として最優先事項です。西オーストラリア州の各カトリック教区は、州議会の調査委員会の調査に対して、これまで情報とデータに対するすべての要求を完全に受け入れ、対応してきました。委員会の検討のために詳細な書面による資料も提出しました」と弁明。

 今後の対応については、「報告書とその後の勧告の内容を慎重に検討するために、適切な時間を取る必要がある」とし、検討が終わるまでは、「調査やその報告についてこれ以上コメントしない」とする一方で、「新たに児童性的虐待を訴えようとする人は、虐待を受けた時期に関係なく、直ちに警察当局に報告してもらいたい」と述べている。

2024年8月17日

・イタリアでカトリック学校の指導者の司祭が、未成年者への性的虐待で逮捕(Crux)

|Senior Correspondent  Elise Ann Allen

   ローマ – 元学校長で、北イタリアのカトリック学校連盟の元会長でもある著名な司祭が先週、思春期の少年を性的虐待した容疑で逮捕され、他の数人の少年に対する性的虐待疑惑の捜査が続いている間、拘留されている。

 この司祭はアンドレア・メリス神父(60)。少年が12歳の時から3年以上にわたって性的虐待をしたとして告発され、8月2日逮捕された。

 イタリアの複数のメディアの報道によると、逮捕容疑は、電子タバコ、プリペイドカード、有名ブランドの服、外食、ビデオゲームなどを与えるのと引き換えに、キス、抱擁、その他の性的行為を働いた、というもの。現在、自宅軟禁されており、ジェノヴァの検察当局から児童買春と加重暴力の容疑で捜査されている。

 ジェノヴァ大司教区は声明を発表、この事件について遺憾の意を表明するとともに、被害者とその家族に寄り添うことを約束した。また、被害の訴えを受けた後、すぐに教会法上の手続きを開始し、バチカンに報告した、と言い、「教会法で予見された措置は、当分の間、(メリスに対して)取られており、捜査当局にしている」と説明した。

 ジェノヴァの教区に属するメリスは、ジェノヴァを州都とするリグリア州のカトリック学校の連合体、Fidae Liguriaの元会長で、ジェノヴァのPadre Assarotti小学校と幼稚園の園長でもあった。また、パドヴァの聖アントニオの小教区の主任司祭もしていた。

 イタリアのメディアの報道によると、メリスは、13歳から15歳までの少なくとも7人の少年に対して性的虐待をしていた疑いがある。検察当局の逮捕は、そのうち3人の証言を基にしたものだが、他の4人についてはまだ捜査中だ。

 3年にわたって性的虐待を受けた少年を含む数人の少年たちは、アッサロッティ学校の元生徒であり、伝えられるところによると、メリスから「愛撫」、マッサージ、キスと引き換えに、ビール、栄養ドリンク、現金、デザイナー服などの贈り物を受け、「このことを両親には言わない」という約束をさせられていた、という。

 また、メリスは司祭としての立場を利用して少年たちの尊敬を得ていたとみられ、自分が彼らの友人であり、「大人」が禁じていたことを彼らに許す、と約束していた。

 伝えられるところによると、性的虐待を受けた少年の両親、そして以前はメリスの祭壇の奉仕者であった少年の両親が、不審に思ったのをきっかけに告発に至った、という。

 イタリアのニュースサイトCorriere della Seraによると、少年の両親は、息子がデザイナーズ服を持ち帰ったことに疑念を抱き、どこで手に入れたのか質したところ、彼は説明できなかった。両親は、メリスが息子に「執拗な」興味を抱いていたのは、彼が13歳の時だった、と言い、ある時、メリスから「サルデーニャ島での休暇に行こう」と誘われ、高価な贈り物をもらった、と息子から聞いて、疑念を抱くようになった。

 性的虐待を続けたメリスは少年を夕食に連れて行き、デザイナーの服を彼に与え、少年の名前で登録されたプリペイドカードに合計約5500ドルを支払った。少年が高校に入学したとき、両親は彼がメリスに会うことを禁じようとした。

 だが、両親が息子の携帯電話を調べたところ、メリスとのチャットを発見し、二人の関係が続いていることが分かった。彼らは少なくとも10回は会っていたようで、そのほとんどがメリスが校長兼音楽教師を務めていた Assatorri高校でのことだった。両親が見つけたとされるメリスからの携帯電話のメッセージの一つには、「木曜日の夜に会って、お前をキス攻めにする…もう我慢できない」とあった。

 Corriere della Seraによると、捜査の一環として当局から聴取された別の母親は、「息子の携帯電話にメリスからの”心配なメッセージ”を見つけた」と述べ、その中には息子の体についての「不適切なコメントが含まれていた」という。また、メリスが贈ったとみられるデザイナーズ・スウェットシャツを着た少年の写真を見て送られた別のメッセージには、「なんてクールな男なんだ… 心が張り裂けそうだ」とあり、音声メッセージで「キスをした」とメリスは語っていた。

 メリスは、彼が”育てた”少年たちに、「高価なものを求めること、お金を持つことは、正しい」と教え込んでいたようで、ある携帯電話のメッセージでは「あなたの実際の生活費と活動費用は、あなたの両親が責任を持つべきです」としていた、という。

 何人かの男の子がメリスに「もう会えなくなった」と言ったとき、メリスから「会えなくて残念だ。(これまでの行為は)誠実な友情だと思っていた。スウェットシャツやタバコだけではない… 愛してる」と返事を受けた。

 また、ある少年が「神父さんの家に友達を連れて行きたい」と言ったところ、メリスは「私はいいともいけないとも言わないが、君と([二人きりに)なりたいし… おしゃべり、抱きしめる… 言ってくれれば、私がそれを整理する」と答えた、また少年は「彼らはあなたが小児性愛者であることを知っている、彼らはあなたを求めに来るだろう」とメールを返した、とも言われている。

 逮捕後にメリスのアパートを捜索した警察は、さまざまな性的な用具、性的刺激のための薬物、少年用の衣服、電子タバコ、そして彼が虐待したとされる少年との長年の関係を確認するメモも押収した、とされている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年8月6日

・北アイルランドの司教が、前任司教が成人の若者が受けた司祭による性的虐待を軽視したことを謝罪(Crux)

(2024.8.2 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

  北アイルランドのダウン・アンド・コナー教区長、アラン・マクガキアン司教が1日、前任の故パトリック・ウォルシュ司教による司祭の性的虐待への対応についての調査結果を発表。「若者への虐待は未成年者への虐待に劣らない」と強調した。

 この「若者」とは、現在、西ベルファストの教区で奉仕しているパディ・マカファーティ神父のことだ。

 神父は1980年代に、2012年に有罪判決を受け、10年の刑に服したジェームズ・マーティン・ドナヒー神父から、若者として性的虐待を受けた。 ドナヒーは、5年の刑期を終えて2017年に釈放されたが、その2年前の2015年に正式に司祭職を解かれた。

 マクガキアン司教は声明で「(ドナヒーの)被害者の一人はダウン・アンド・コナー教区の司祭、パディ・マカフェティ神父で、2000年代初頭にジェームズ・ドナヒーによる虐待を正当かつ完全に適切に報告した」とし、「マカフェティ神父は、危険にさらされる可能性のある他の人々への懸念から名乗り出た。教区の聖職者を含む多くの人々の不信、不信、敵意に直面しながらも、彼は勇気とリーダーシップを示した」と司教は続けた。

 さらに、虐待当時、マカフェティ神父は「弱い若者」だったが、「彼の虐待の報告は、教区が児童に対する性的虐待に重きを置いたことから、(聖職者による性的虐待問題の中で)影を潜めてしまったことは今や明らかだ。このようなことは起きてはならない。マカフェティ神父が2003年に詳細に文書で報告した(ドナヒーによる性的)虐待は、明らかに犯罪行為だ」と強調した。

 そして、「現在の教会法では、弱い立場の成人被害者に対する性的虐待は、未成年者に対する虐待と同等の重大性があるとしている。支配的な成人虐待者と弱い立場の若い被害者の問題については、当時、このような認識がなかった」と述べ、ドナヒーが重罪で有罪判決を受けた後の新聞記事で、「成人虐待者と弱い立場の成人は同等だ」という教区側の主張は「誤った判断であり、教区から支援を受けるべきだったのに、被害報告をまともに取り上げたもらえなかったマカフェティ神父に対して公平を欠いていた」と認めた。

 そのうえで、マクガキアン司教は、ダウン・アンド・コナー教区を代表して、マカフェティ神父に「心から」謝罪し、「2001年の最初の報告以来、このすべてが彼に何年にもわたって与えた重荷」を率直に認めた。

 また、2006年に教区が発表した声明は、検察当局がジェームズ・ドナヒーを不起訴とする判断を下したのを受けて、「被害者を犠牲にし、容疑者を支持するものだった。その後に、ドナヒーが有罪判決を受けたことを考えると、この声明は判断ミスだった」と述べ、「2006年の教区の声明は、すべての被害者の心痛と苦痛をさらに深めるものだったことは明らか。ドナヒーが最終的に有罪判決を受けた際、教区は不当な扱いをしたことについて被害者に謝罪したが、そこには明らかな後悔の念がなかった。この機会に、この事件とすべての事件のすべての被害者に心から謝罪したい」と述べた。

 「パディ神父の勇気ある訴えは、他の被害者たちが声を上げることを促した。私は、今度は虐待を受けたすべての人に名乗り出るよう勧める… 教区として、私たちは、被害者中心の、プロフェッショナルで公正な対応を心がける」と約束した。

 マカフェティ司祭は、マクガキアン司教の謝罪を歓迎し、「ここに至る道のりは、非常に長く苦しいものだった。青年時代、ジム・ドナヒー神父にレイプされ、虐待されていた時、私がとった方法は、何も起こっていないふりをすることだった。自分が暴力的な堕落行為にさらされていたにもかかわらず、何も”感じ”ず、心が自分の体を離れ、彼が自分にしていることを傍観することしかできなかった」と告白。

 さらに、「ドナヒーの私に対する虐待が止まってから何年も、私は心的外傷後ストレス障害に苦しんで来ました。2年半前、ドナヒーが引き起こした行為の重大さが、私に大きな衝撃を与えました。それは、私が今、自分が受けた苦しみの恐ろしさに立ち向かうのに十分な強さを持ったからです」とマカフェティ司祭は語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年8月3日

・被害者たちが切実な訴えーカトリック札幌教区が教会におけるハラスメント意識調査結果・後編を発表

(2024.7.30 カトリック・あい)

 カトリック教会の札幌教区では、教区内の全信者を対象に「ハラスメントのない教会共同体を目指して~教会におけるハラスメント意識調査~」を実施し、その結果の「前編」を教区ニュース4月号で公表していたが、同8月号でその「後編」として、調査で被害者たちが語った声をまとめて掲載した。次回、教区ニュース11月号では、調査結果から見えてきた課題と改善の道を探る特集を組むとしている。 

 この調査では、全回答者548人のうち約4割、237人が「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思う」と回答。うち158人が自分自身がハラスメントを受けた被害者だ。その訴えのいくつかを以下に紹介する。

 被害を誰かに相談したのは106人で、その結果について「相談してよかったかどうかわからない」が47%、「相談すべきではなかった」が7%と否定的な受け止めが過半数を占め、中には「神父が『他人に言うと大事になる』と止めた」「(相談しても、)何も進展がない」など、「二次被害を受けた」との訴えもあり、そもそも「何をしても解決しないと思った」と答えた人が被害を誰にも相談しなかった62人の半分を占めている。

 またハラスメント行為への思いについての質問には、「教会(神の家)であることを考えると、絶対にあってはならない」「教会から離れるきっかけになってしまう」、さらに「教会に愛がない。愛が冷え切っている」などの答えがあった。

 そして、ハラスメントの中で最もひどい「性的虐待」についての経験も寄せられ、「私(男性)は少年期から青年初期のころ、ある司祭から性的虐待を受けた。自分の中に封印して生きてきたが、辛く耐えられなくなり、限られた何人かに打ち明けた…多くの被害者は教会から離れていると思われるが、教会が本当に被害者に真摯に向き合おうとするなら、被害者の声を聴く努力をしてほしい」「教会で…男性信者からいきなりお尻をつかまれた。男性信者がいきなり女性信者に覆いかぶさるのを見たこともある… 教会が祈りの場であり、神聖なところであることを忘れないでほしい」との訴えもある。

 あるいは、「二次被害、宗教ハラスメント」について、「傷つく思いをし相手に伝えると、否定される。周りに相談しても否定される。『あなたの思い過ごし、あなたの考えが間違っている、相手を非難している』・・といわれる。奉仕を強要され、断ると、『傲慢』『自信過剰』と非難され、聞き入れてもらえない…信者をやめることができない、という思いに苦しめられる」という悲痛な声も。

 そして「司祭は、なんでもご注進、ご注進と報告する信徒や役員の告げ口を信じ、自分の目でしっかり見ずに一方的に言葉を発し、対応するのは、すごく危険。司祭や信徒の言葉で教会から離れてしまった方がいるのは事実。心にとめておいてほしい」との批判を込めた、司祭への要望も出されている。

 

 「後編」の全文は、⇒パーソナル編集長PDFドキュメント (csd.or.jp)をクリックしてお読みになれます。

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参考【教会におけるハラスメント意識調査まとめ・前編】

・教会での性的虐待含むハラスメント、4割が「ある」と回答ーカトリック札幌教区が信者意識調査結果発表

(2024.4.17 カトリック・あい)

 カトリック札幌教区のハラスメント対応デスクは2017年から小教区を訪問し啓発活動を行っているが、新たな体制づくりと今後の啓発活動のため2023年7月1日から11月30日にかけて教区の全信者を対象とした札幌教区ニュース4月号で、調査結果の「前編」を公表した。

 「前編」では、全調査項目の集計結果と寄せられた具体的なハラスメント事案を紹介し、8月に公表する「後編」では、被害者の声を中心にまとめ、今、何が問題なのかを考えるとしている。

 聖職者による性的虐待など教会でのハラスメント行為は、教会への信頼を失墜させるものとして深刻な問題になり続けているが、日本の教会の取り組みは、隠ぺいを容認する従来からの体質もあって緩慢。日本のカトリック教会における性的虐待を含めたハラスメント意識調査の実施は15ある教区の中で、「カトリック・あい」が確認できたのは札幌教区のみだ。

 今回の札幌教区の調査は、全小教区の聖職者、修道者、信徒、求道者を対象に、無記名調査票とWEBによる自由回答の形で実施し、回答があった584件をもとに分析を行った。回答率は12.3%。

 回答者の内訳は、年齢は70歳代が最も多く31.3%、60歳代が23.8%、80歳以上が21.9%と続き、50歳代は11.1%、40歳代は4.3%、30歳代は2.1%と若くなるほど少なくなり、20歳代はわずか1.2%。受洗後の年数は20年以上が最も多く79.1%、次いで5年以上10年未満が11.3%、1年以上5年未満が9.2%など。

 性別は女性が60.6%を占め、男性が26.2%、無回答12.2%、答えたくないが1.0%となっている。

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*「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を知っている信者は3割

 質問は15問から成っているが、このうち、日本の教会の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」(今年は3月1日)について、知っているかどうか聞いたところ、「知らない」が37.7%、「聞いたことはあるが内容は知らない」も30.5%。「知っている」は30.7%にとどまっている。さらに、この日の行事に参加したか、との問いには、「ない」が61.5%、「教会ではやっていない」が24.1%で、「参加したことがある」はわずかに11.6%だった。

 

*「ハラスメントはある」が4割、うち「自分がされた」が7割弱

 札幌教区のハラスメント防止宣言を「知っている」のは22.6%、ハラスメントデスクを「知っている」も20.9%にとどまる一方、「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思うか」との問いには、40.6%が「あると思う」と答え、ハラスメントを「自分がされた」が66.7%に達している。受けたハラスメントの内容(複数回答)は「人前での感情的な叱責」が最も多く41.8%、「挨拶や話しかけを無視する行為」37.3%がこれに次ぎ、「人格否定や差別的な言葉による叱責」「悪質な悪口や陰口」「宗教的な経験年数や知識量での叱責や避難」「奉仕の強要」「私生活・プライバシーへの過度の介入」がいずれも20%を超えている。

 

 

*行為や言葉によるセクハラ、児童性的虐待も

 さらに、「教会内で、いじめ、いやがらせ、ハラスメントがあると思う」と回答し以上のような、事前に用意された選択肢以外に「その他」として、回答者が書き込んだ具体的経験で、「セクシュアル・ハラスメント」として、司祭・聖職者から「セクハラすれすれの行為を受けた」「ハグされる感じで抱かれて嫌な気持ちになった」「子宮摘出手術を受けた信徒に、聖職者が『じゃあ、もう女じゃないんだ』と言った」、信徒からは「教会で手伝いをしている時に、尻をつかまれた」「『元気をもらいたいから』と手を握られた」「酔った勢いで個人的に連絡された」などの指摘があった。

 また「児童に対する性的虐待」として、「少年期から青年期にかけて、聖職者から児童性的虐待を受けた」「体を触る、服の中に手を入れるなど性的行為をされた」や、「児童虐待」として、「侍者教育は児童虐待だった」「暴力を振るわれた」との回答があった。

*ハラスメントは「信徒同士」87%、「司祭・修道者から」24%

 ハラスメントがどのような関係で行われたか、との問いには、「信徒同士」86.9%に次いで、「司祭・修道者から求道者・信徒へ」が24.0%と多い。その後どうしたか、との問い(複数回答)に対しては、「どこにも相談できなかった」と「信徒に相談した」がいずれも39.2%と最も多く、「司祭に相談した」は14.6%にとどまり、さらに「ハラスメントデスクに相談した」はわずか1.3%しかない。また「どこにも相談できなかった」理由(複数回答)を聞いたところ、「自分が我慢すればよいと思った」が51.6%、「何をしても解決しないと思った」が41.9%を占めている。

*ハラスメント防止に必要なのは信徒、教会役員、聖職者の「意識改革」

 そして、「教会でのいじめ、いやがらせ、ハラスメントを防止するために必要な措置」(複数回答)として回答者が挙げたのは、意識改革と研修で、「信徒の意識改革」63.3%がトップ、「教会役員の意識改革」34.2%、「聖職者の意識改革」31.2%がこれに次いでいる。また、「信徒の研修」32.4%、「教会役員の研修」16.8%、「聖職者の研修」16.3%となっている。

2024年7月30日

・ニュージーランドの「養護施設における虐待調査委員会」が、国、宗教団体、特にカトリック教会の施設で「想像を絶する虐待」と指摘(Crux)

(2024.7.24 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年7月28日

・「ペルーの司教が複数の女性と不倫」との告発、バチカンが調査(CRUX)

(2024.7.22 Crux  Contributor   Eduardo Campos Lima)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年7月23日

・「パリ外国宣教会の釈明文に疑義」ー帯広での性的虐待被害者の代理人弁護士が勝谷・札幌司教に書簡

(2024.7.22 カトリック・あい)

 日本在住の仏人男性が札幌教区の帯広教会で、パリ外国宣教会の司祭から繰り返し性的虐待をされたとされる問題で、訴えを聴いた札幌教区長の勝谷司教が、同修道会に対して「速やかな情報公開」を求め、同修道会本部から司教と教区関係者あてに「性的虐待の訴えをバチカン教理省と仏司法当局に報告、捜査中。被害者に寄り添い、札幌司教と日本の教会のお詫びする」との釈明文が送られてきていた。

 だが、パリ外国宣教会は被害者に「寄り添っている」事実はないなど、この釈明文には疑義がある、との見解が、被害を訴えているB氏の仏リヨン在住の代理人弁護士から勝谷司教あてに送られた文書で明らかになった。なお、札幌教区は、パリ外国宣教会からの文書は日本語訳にして公開しているが、この文書は22日現在も公開していない。

 代理人弁護士から勝谷司教あてに送られた文書は以下の通り。

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札幌司教区ベルナルド勝谷太治司教様

 私は、フィリップ・リッタースハウス神父から性暴力を受けたB氏のフランス人弁護士です。

 B氏は、2024年4月8日付のパリ外国宣教会(MEP)からの通知文書へ応答したいと望んでいます。この文書は彼の状況に言及していますが、事実に反する情報が記されています。彼はあなたに対し、以下のプレスリリースを、MEP文書と同様に公表することを求めています。

―――――
パリ外国宣教会(MEP)の司祭による犯罪性のある性暴力の被害者であるB氏の訴えに関して、MEPは2024年4月8日付けで、札幌司教と教区関係者あてに文書を送りました。MEPはこの文書で「B氏に寄り添ってきた」と述べていますが、B氏本人は異議を唱えています。B氏はフランスでは障害者と同様に社会的弱者と見られています。

 加害者のフランス人司祭は当時日本に在留しており、事件は日本で起きたにもかかわらず、MEPは彼を離日させたことに責任があります。被害者であるB氏は妻と子どもとともに日本に住んでいましたが、MEPは彼に対してもフランスへの帰国を求めました。MEPは日本の当局にこの状況を報告しませんでした。

 フランスに一時帰国したB氏はMEPから事情を聴かれましたが、その前後にMEPからは何の支援もありませんでした。MEPからB氏に対する支援はなく、これは司祭活動に関する倫理規範に反するものであり、B氏はフランスでトラウマ状態のなか、医療的、法的、社会的に必要な手立てをたった一人で取らねばなりませんでした。MEPは旅費(航空運賃)の全額ではなく一部しか負担しませんでした。

MEPがB氏に紹介した「The Commission for Recognition and Reparation(認定・賠償委員会)」は、B氏の件に対応できる機関ではありませんでした。

現在、当該司祭はMEPの監視を受けておらず、この件で取られた措置は被害者に一切伝えられていません。MEPは外部監査の実施を公表していますが、それは、MEPの複数の指導者や司祭が性暴力に関与したことや、そうした性暴力を糾弾しなかった過ちを訴えられているからです。

B氏は、MEPが札幌教区とその信者に事態の深刻さを伝えず、被害者を日本で支援しようとしなかったことを遺憾に思っています。MEPは監査開始から1年半後に札幌教区に対し、信者から証言が得られるどうか尋ねていますが、この監査は終わりに近づいています。性暴力の証言は日本の司法当局にまず報告されなければならず、次いで補完的・副次的にGCPS(監査を委託された企業)にも報告されるべきです。その順序が逆であってはならないのです。
―――――
Nadia DEBBACHE

120 rue de seze 69006 LYON Tel: 04.78.62.39.02 Fax: 04.78.24.88.54 Debbache.avocat@club-internet.f

 

パリ外国宣教会から札幌教区ベルナルド勝谷司教様と信徒の皆様へ

フランス人の成人男性 T 氏が、同じフランス人である本会の司祭 P 神父を2022年7
月に不同意性交をしたと告発しました。その時までP 神父は札幌教区で奉仕していました。
この重大な告発に対して、パリ外国宣教会(以降 MEP と省略)は、両者から事情を聴き
ました。P 神父は断固としてこの告発内容を否定しています。
両者ともフランス人であったため、2022年8月2日、MEP はフランスの司法当局に
この件を報告しました。フランス警察の捜査はいまだ行われており、完了しておりません。
MEP は、この件をバチカンの教理と信仰省にも報告しました。また、フランスの教会刑
事裁判所に委託された教会法に基づく調査を開始しました。
MEP は、T 氏の訴えに衝撃を受け、この件で傷ついた氏に寄り添ってまいりました。私
たちは、この件で札幌教区の勝谷司教様とご信者の皆様が傷つかれたことに困惑し、申し訳
なく思い、司教様と日本のカトリック教会にお詫び申し上げます。
フランス警察と教会裁判所で調査は現在進行中なので、結果が出るまでは何も動くこと
ができません。調査の秘密は尊重されなければなりません。裁判所の裁量に委ねられなけれ
ばなりません。
この調査が続いている間、P 神父は MEP によって待機処分を受けています。
数人の MEP の長上たちと、さらに数人の司祭は、それぞれたいへん多くの時間を T 氏
の話を聞くことに費やしました。また、フランスの教会の性的被害者支援の団体の専門の弁
護士と心理学者を彼に紹介しました。
MEP はまた、T 氏がフランスに来て話をするための旅費、滞在費に必要と思われる額(T
氏の求める額には達しませんでしたが)を負担しました。
MEP は、必要な措置を講じるため、MEP の性暴力問題について外部監査を実施すること
を決定したことをお知らせします。 MEP は、英国の独立系企業 GCPS Consulting にこの
監査の実施を委任しました。 (https://gcps.consulting)。 この監査は 2024 年 12 月に終
了の予定です。
MEP の会員によって行われた可能性のある性的暴力を懸念して情報を提供したい方は、
GCPS 監査チームに次のアドレスから連絡できます: mep_review@gcps.consulting
この問題に関しては、GCPS への連絡をお願いしたいのですが、当然ながら、法に触れ
る懸念のある問題であれば、該当する管轄部署に問い合わせることを妨げるものではあり
ません。
パリ外国宣教会、パリ、2024 年 4 月 8 日
media-communication@missionsetrangeres.com

 

2024 年 3 月 19 日 札幌教区の皆様 カトリック札幌教区 司教 勝 谷 太 治 「リ ッ タースハウス ・フィ リ ップ神父に係る報告」

一昨年 、 フィ リ ップ神父が所属するパ リ外国宣教会の指示に よ り急遽帰国 した こ とに
ついて皆様にご報告いた します。
フィ リ ップ神父はフランス人男性 T 氏より 、不同意性交で告発 され、現在フランスで調
査中 です 。 まだ裁判等は開始 され てお らず 、今後 ど う な るかは不明 です 。今回の件に
ついて札幌司教区は フ ィ リ ッ プ神父の帰国後その情報を入手 し 、パ リ外国宣教会に対
して報告を求めてまい りま したが、何 ら具体的な回答や情報開示はな く 、札幌司教区 と
して明確な事実確認ができないまま今日に至っております。
T 氏 とは数回の面会の他、 メールで何度も対話 してまいりま した。T 氏は本件につい
ての公表を希望 されてお りますが 、札幌司教区 と しては事実確認が一切できない状況
での公表については控えてまい りま した。 しか し T 氏の心痛苦 しみを思 う時、経過につ
いてあ りのままを教区信徒の皆様へお伝えすべき と判断致 しま した。
T 氏はフ ィ リ ップ神父が着任 した小教区を訪問 し、ご自身の現状を訴えられてお りま
す 。信徒の皆様におかれ ま しては 、前述の経過を ご理解いただ き 、対応にお困 りの際
には札幌司教区本部事務局へご連絡 くだ さいますよ うお願いいた します。
なお、札幌司教区 としては今後も T 氏に寄り添いながら、東京教会管区 とも連携 し、
パリ外国宣教会に対 して速やかな情報公開を求めていきたい と考えてお ります。

2024年7月22日

・ポルトガルの性的虐待被害者たちが、司教団に「被害の”上塗り”を止める」よう訴え(CRUX)

(2024.7.15 Crux   Contributor Eduardo Campos Lima)

 サンパウロ発 – ポルトガルの聖職者による性的虐待の被害者で構成する団体が14日、ポルトガルの司教協議会(CEP)に対し、現在の被害者の報告の取り扱いと補償についての教会のやり方について苦情を申し立て、司教たちに「被害をさらに重ねるような行為」をやめるよう要求した。

 数十人の被害者で構成する団体「Associação Coração Silenciado」(沈黙の心の会=ACS)は10日にコインブラでCEPとの会合を持ったが、創設者の1人であるアントニオ・グロッソ氏はCruxのインタビューに、ACSがCEPに対し、教会に性的虐待をもたらしている危機の管理について懸念を表明した、と次のように語った。

 「私たちは彼らと話をしました。彼らが態度を変えてくれることを願っています。新聞の見出しに、以上の言葉は必要ありません―『彼らには積極的に行動してほしい』」

 教会での性的虐待の報告に関して、「ポルトガルの司教団は、何年も、何もしていない」と批判されてきたが、2021年になって、スキャンダルに関する真剣な調査を要求するカトリック信徒たちが組織した運動の強い圧力を受け、1950年から現在までの教会での虐待事件を調査する独立委員会の設置を決めた。

 委員会は、精神医学や司法制度など、さまざまな分野の専門家によって構成され、さまざまな地域や年齢の被害者から500件を超える訴えをもとにまとめた最終報告書で、「1950年からこれまでにポルトガルの教会関係で少なくとも4815人にのぼる性的虐待の被害者がいた」と結論付けた。

 「おそらく司教団は、これほど多くの被害者が声を上げ、自分たちの受けた虐待について語るとは想像していなかったのでしょう。テレビ局、特にSICやRTPなどのポルトガルの大手ネットワークが被害者にインタビューし、大衆に彼らの事件を伝えることも予想していなかったに違いない」と、司教団のこの問題に対する無神経ぶりを強く非難している。

 他の関係者も、「ポルトガルの司教団は教会の虐待問題に対処するための具体的な措置を講じる意思がなく、委員会の報告書は(虐待問題の解決に)何の影響も及ぼさない、という印象を与えた」と語っていた。

 その後、CEPは、昨年末に、被害報告を受け被害者に寄り添って支援するとともに虐待再発の防止に努める組織として「Grupo Vita」を設立し、今年5月に、「98人の被害者から相談があり、うち18人は心理的な治療を受け、32人は金銭的補償を求めている」と発表。また、その一か月前の4月には、「補償を希望するすべての被害者は、12月までに正式な要求を、どのような虐待を受けたかの説明と共に文書でGrupo Vitaに届け出る必要がある」と公表している。

 このような一方で、マスコミは虐待事件を報道し続け、グロッソ氏ら被害者たちは、他の教会による虐待の被害を受けた人々を集め、自分たちの目的のために戦うための会として、昨夏にACSを設立、活動しており、これまでに新たに数十人の被害者から相談を受けているという。

 ACSは、CEPの役員との面談を要請して実現し、14日の面談で、CEP会長のホセ・オルネラス司教から、2022年から2023年の間に独立調査委員会に提出された報告を識別するために使用されていたコードが破棄され、それは、「個人情報の漏洩を防ぐためだった」と説明を受けた。

 グロッソ氏は、「要するに、独立調査委員会に自分の被害を報告し、補償を希望していた被害者は、受けた虐待などを、Grupo Vitaに、改めて説明しなければならない、ということです」と指摘。「2022年から2023年の間に独立調査委員会に訴えた被害者たちは、具体的な対応をしてくれるものと思っていたのですが、何も得られるものはなかった、と思い知らされたのです」と述べ、「誰もが何年も前に受けた虐待を繰り返し思い出したくありません。それは辛いこと。再び被害者になれ、と言っているようなものです」と司教団の誠実さに欠けた態度を批判した。

 またCEPは、「それぞれの性的虐待の被害について吟味してから、個別に金銭的補償を決定する」ことを計画しているが、ACSはこれに強く反対、グロッソ氏は、「彼らは、被害者一人一人の苦しみの度合いをどうやって測るつもりなのでしょうか? 秤でですか。巻尺でですか。 まったく馬鹿にしている」と怒りをあらわにしている。

 ACSは、被害者個別に異なる補償額を決めるのは、被害者たちを”分断”する行為であり、教会が持つべき「友愛と平等」に反すると批判。「CEPは補償額を各被害者同一にすべきだ」と主張している。

 またCEPに対して、「テレビなどを通じて、すべての被害者が補償金を請求できるように、請求先の電子メールと電話番号を全国に広報する」ように要請。CEPは、ACSの一連の要求について検討を約束した、という。

 「司教たちが(言葉だけの)謝罪では十分ではないことを理解することが重要です。彼らは具体的に行動せねばならないが、被害者は”物乞い”ではありません。金を払えば済む、と言っているわけではない。私たち被害者に真剣に顔を向けるべきなのです」とグロッソ氏は強調している。

2024年7月19日

・フランスの故人の“聖人”神父が「数人の女性を性的虐待した」と本人が設立した福祉団体が報告書

(Photo by Studio Harcourt / CC BY 3.0)

(2024.7.18   La Croix  Matthieu Lasserre)

 フランスで社会的弱者への救済活動に尽力し、多くの人から敬愛されている故アベ・ピエール神父が、実は1970年代末から2005年にかけて7人の女性に性的虐待やセクハラを繰り返していた―同神父が創設した社会福祉団体「 Emmaus International」が17日発表した調査報告書で明らかにしたもので、他にも被害者がいるとみられ、”聖人”の裏の顔が明らかにされたことでフランスのカトリック教会や社会は衝撃を受けている。 Emmaus は、さらに被害者の証言を集めるため、被害者ホットライン(☎+33.1.89.96.01.53 (voicemail with callback) Eメール at emmaus@groupe-egae.fr.)を開設した。

 ”事件”の発端は、2023年6月に、フランスのある女性が、 Emmaus のリーダーに連絡を取り、未成年だった1970年代後半に、アンリ・グルエス(通称ピエール神父)から(性的虐待を含む)”深刻な行為”を受けたと告白したのが始めり。その3か月後、Emmausの代表者たちはその女性と面会して事情を聴いたうえで、フランスの性差別および性的暴力との戦いで主導的な役割を果たしているカロリーヌ・ドゥ・ハース氏が率いるエガエ社に調査を依頼、同社は2か月の作業と12回の関係者とのインタビューなどをもとに調査報告書をまとめ、Emmaus Internationalが7月17日に発表した。

 調査報告書では、 8ページにわたって、2007年に亡くなったピエール神父の被害者とされる7人からの証言の抜粋がまとめられている。匿名希望の彼女たちの証言で明らかにされた神父の問題行為は、1970年代後半から2005年までの約30年間にわたり、7人のうち6人の女性が性的暴行と判断される神父の行為、もう一人は、神父の性差別的な発言や不快な勧いについて語っている。

 証言した7人のうち1人は、「16歳から17歳にかけて、自分より50歳近く年上のピエール神父が、両親の招きで自宅を定期的に訪れた際、胸を何度も触られ、さらに1982年、成人となった自分がイタリア旅行から戻り、あいさつした際に、いきなり強引に(彼女の)口に舌を入れました」と述べ、さらに「1980年代後半に自宅に来た際には、神父から『一緒にベッドに入る』よう要求された」と語った。この件では、神父は存命中の2003年に、父親の前で謝罪した、という。

 ほかの女性の証言では、ピエール神父は「オフィス」「階段の下」「ホテルの部屋」など、人目に付きにくい場所と瞬間を利用して被害者に近づき、話をしている間に、”行為”に及ぶことが多く、ある女性は、「話をしている間に、私の左胸を愛撫し始めました… 1977年から1980年の間のことです。さらに 12年後に会った際には「あいさつをしようと手を伸ばした時、神父は私を窓の方に引っ張ろうとしました。私は『神父様、やめて』と繰り返し拒否し、彼は立ち去りました」と述べた。

 他の3人の女性は、1995年から2005年の間に、同意もしないのに胸を触られ、時には、それらの行為の後に、また会おうと誘われることもあり、「手紙を寄こしたり、電話をかけてきました。『あなたに会いたい』という内容です… 1、2か月後には、言ってこなくなりました」と1人の女性は説明した。

 また、この報告書は、ピエール神父は、自分の行動の違法性を自覚し、女性たちが断固として拒否したときに止めるべきタイミングを知っていた、とも書いているが、それでも、女性たちはこの神父の行動にショックを受けた。「私は自分を守ることに慣れています。でも相手は、神(の代理人)です。神があなたにそんなことをしたら、どうするでしょう?」とある女性は語っている。

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 ピエール神父は、第二次大戦中、ユダヤ人を保護し、レジスタンス組織に参加した元カプチン会の修道士だった。最も貧しく最も疎外された人々を助けることに生涯を捧げ、教会を超えて、多くのフランス人の間で幅広い名声を得た。1954年には厳冬の中でラジオ放送で「友よ、助けて!」と叫び、国民の支持を得て、多くのホームレスを凍死から救った。 その後、メディアの関心の対象から遠ざかっていたが、30年後、「新たな貧困層」、つまり不法移民の擁護者となり、「フランスのお気に入りの人物」に16回選ばれ、そのオーラは数十年にわたってフランス社会に付きまとった。

 Emmaus から調査を受託したエガエ社のドゥ・ハース氏は、そうした神父の名声が、彼が犯したとされる暴行事件についての沈黙を長引かせた理由について、「女性たちは、自分たちの証言が社会に与える影響を認識していました。そして、被告人がその献身によって評価され、崇拝さえされている場合、その同一人物が犯した行為を信じてもらうことの難しさを、われわれも認識している」と説明した。

 ただし、この報告書は、ピエール神父のいくつかの暗い部分が明らかにしたが、調査を被害者の証言を集めることに限定し、神父の(心身の)健康状態、教会での地位、当時の社会的地位に関する文脈などに踏み込んだ調査はなく、 「調査の狙いは、事件の性質を特定し、その範囲を推定することだった」とデ・ハース氏は述べた。

 また、主な関係者が亡くなっているため、女性たちの証言の“反証”をとることが困難であり、一部の証言は表面的なものにとどまり、事件の性質を完全には捉えていない。一方で、集められた証言は、ピエール神父が65歳の頃のものであり、今後のさらなる調査で、それ以前の問題行為が浮上する可能性が高い。

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 ピエール神父は、人生の終わりに、貞操の誓いを破ったことを認めた。2005年出版の本人のインタビュー集で、「私は性欲を経験し、その非常にまれな満足感を味わいました」と述べ、いくつかの伝記には、彼がメディアの有名人になったことで「一部の女性から崇拝されいた」ことが記されている。20年にわたって彼の知人だったピエール・ルネル氏はLa Croixに、「それはほとんど耐え難いものでした。女性たちは彼のカソックやベレー帽にキスをしました… しかし、20年間、彼が女性に対して不適切なジェスチャーをするのを見たことはありません。一度も!それでも、私は長期間、時には4、5年間、毎日彼を追いかけました!」と語った。

 1957年、痛みを伴うヘルニアを患い、思い病気で働きすぎだったピエール神父は、スイスの病院に入り、公式には「回復のため」にEmmausの指導者から外された、とされているが、歴史家アクセル・ブロディエ・ドリノ氏が2009年に書いた伝記によると、彼が解任された理由は、彼の「貞操違反」や「軽率な行動」、その他の「失態」が世間に知れ渡れば「スキャンダルになってしまう」という恐れからだった」と言い、仏国立科学研究センター(CNRS)の研究員アクセル・ブロディエ・ドリノ氏は、「彼は、女性に対して抑えきれない衝動を持っていました。相手の同意の問題が今のようにまったく理解されていなかったとしても、少数の人々はそのことを知っていました」と説明した。

 ある話は、神父の、以上で述べたことよりも”深刻な行為”をした可能性を示している。エガエ社が行ったインタビューで、ある人物が「1950年代か1960年代に”事件”を目撃した」ことを認めている。ピエール神父は女性とボートに乗っていて、「彼女に飛びかかった」というのだ。「それは彼の性格の一部でした。私たちは被害を最小限に抑えようとしました」と言う。

 Emmausのメンバーの間では、ピエール神父の”行動”は知られていた。「それは1回だけの”事件”ではありませんでした… エガエ社が面接したある人物が、そう言っています…』私たちは『彼が落ち着いた、(もう問題行動を)繰り返さない思っていました」、また「当時のEmmausの職員たちは、女性の場合、ピエール神父と2人きりで会わないように、指示されていた、と説明している」と報告書は述べている。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2024年7月19日

・性暴力の被害者が神言会に損害賠償求める裁判で、被告側は性的虐待をしたとされる司祭を「補助参加人」に

(2024.7.17 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が「外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかった」として司祭(加害当時)が所属していた修道会、神言会(日本管区の本部・名古屋市)に損害賠償を求めた裁判の第4回口頭弁論が17日、東京地方裁判所第615法廷で、原告・田中時枝さん(東京教区信徒)の支援者たち約50人が傍聴席を埋める中で行われた。

 神言会側代理人弁護士は(神言会司祭だったヴァルガス・F.O.サビエルによる被害者への性的虐待行為を)これまで「否認」していたが、さらに前回5月の口頭弁論で、「不知(知らない)ではない」と言明、さらに今回、準備書面に、「虐待行為があったとする原告の主張は虚偽」という内容のバルガス本人の言葉まで加えられた、という。

 被告側は、当事者である神言会の代表は裁判当初から今回に至るまで出廷せず、代理人弁護士のみの出廷が続いているが、今回は、新たにバルガスを「補助参加人」としたうえ、その代理人弁護士2名が加わった。

 このような被告神言会側の対応に、原告代理人の秋田一惠弁護士は裁判後の支援者の集会で、「私たちが訴えているのは、神言会が『適切な対応を取らなかった』ことであるにもかかわらず、それに反論せずに、『否認』し続け、さらに、ヴァルガスがまだ何の答弁もしていない前に、ヴァルガスに成り代わって『当人は性的虐待をしていない』と被告神言会が主張したり、ヴァルガスが原告を中傷していた内容まで法的主張として準備書面上で述べるのは、原告の心を二重、三重に傷つける行為以外の何ものでもない」と、修道会としての誠意を欠いた姿勢を強く批判。

 さらに、「信者から告解を聴き、キリストに代わって赦しを与える、という司祭としての重要な権能を悪用して、性的虐待行為を繰り返したことについて、ヴァルガスが所属していた神言会は、責任がない、というのはそもそも、理解できない」と言明。

 「『使用責任(民法715条)は争わない』としながら、『彼は性的虐待行為をしていない』と(使用責任を持つ当事者のような)主張を続けたうえに、ヴァルガスを『補助参加人』として代理人弁護士を二人加える一方で、本人の現在の居所などについては準備書面の閲覧制限を申し立ているのも、筋が通らない」と非難している。

 次回は、10月17日午後3時から東京地裁第615法廷で行われる予定。

2024年7月17日