・教皇、性的虐待などスキャンダルにまみれの使徒的活動団体に関わるペルーの大司教の辞表受理(Crux)

(2024.4.2 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen)

  ローマ発 – 性的虐待などスキャンダルまみれのペルーの使徒的活動団体Sodalitium Christinae Vitae(SCV)信徒団体に対する捜査が続く中、バチカンは2日、この団体に所属する大司教の辞表を教皇フランシスコが受理した、と発表した。

 4月2日のVatican News速報によると、ピウラ大司教区のホセ・アントニオ・エグレン・アンセルミ大司教(67歳)で、SCVの会員。辞表受理は、1970年代にペルーの信徒ルイス・フェルナンド・フィガリによって設立されたSCVに対するバチカンの調査が行われている最中に行われた。

 疑惑は数年前からあったものの、2015年にペルー人ジャーナリストのペドロ・サリナス氏とパオラ・ウガス氏が、SCVの幹部らによる長年にわたる性的、身体的、心理的虐待疑惑を詳述した著書『半僧侶、半兵士』を出版したことで、SCVに関わるスキャンダルが一挙に表に出た。

 フィガリ自身も、未成年者への性的虐待を含む、コミュニティ内での身体的、心理的、性的虐待で告発された。 2017年に彼はバチカンから制裁を受け、グループのメンバーとのさらなる接触を禁止され、2度の控訴で敗訴した後、現在、亡命生活を送っている。

 自身が任命した外部指導者によるものも含め、いくつかの改革の試みが失敗に終わった後、教皇フランシスコは、SCVに関する正式な調査の開始を決め、マルタ大司教区長のチャールズ・シクルーナ大司教とスペイン人のジョルディ・ベルトメウ神父を責任者に任命して、監督するよう指示。二人は昨年7月下旬から8月上旬にかけてペルーを訪れ、SCVによる虐待の被害者やエグレン大司教を含む事件関係者らと面会した。

 エグレン大司教はSCVの問題が表面化して以来、重要な関心の源であり、ピウラ大司教区での汚職疑惑の中心人物であり、ウガス、サリナス両氏の著作に対する法的キャンペーンの扇動者でもあった。2018年、大司教は、「SCV関係者の虐待と隠蔽活動に加担しただけでなく、土地売買にも加担した」と自身を名指しした調査報道を、名誉毀損で刑事告訴した。

 教皇は2018年9月にバチカンでエグレン大司教と面談した。1年後、ウガス、サリナス両氏に対する名誉棄損訴訟で勝訴した直後、エグレン大司教は、ペルー国民、メディア、教会関係者の強い反発の中で、両ジャーナリストに対する告訴を撤回。ウガズ氏がSCV関連組織によるピウラ地域での土地売買に関するさらなる報告を出した際、大司教は2022年3月にバチカンで教皇と再度会談した。

 ピウラ県では何年にもわたって、農民グループと、サン・ファン・バウティスタ市民協会、エンプレサ・アグリコラ・サンタ・レジーナSAC、インベルジェネス・サンなど、SCVが運営、あるいはSCVと関係がある少数の企業との間で法廷闘争が繰り広げられてきた。

 中南米の多くの地域では、農民や貧しい階級の人々が、自分たちが住んでいる土地に対する正式な所有権を持たずに、安価な土地に根を張り、何十年、場合によっては何百年も荒らされることなくそこに住み続けるのが一般的だ。多くの場合、土地を買い占めよとする企業は地権者と契約し、脅迫、時には犯罪組織による暴力に訴えによって事実上、住民を町から追い出している。ピウラ県では、これらのコミュニティの 1 つがカタカオス町の農民グループで、犯罪グループからの脅迫と、彼らが占有している土地を手に入れようとする SCV関連 企業による訴訟の両方と戦っている。そして、この地域およびSCV内で保持してきた権力から、エグレン大司教は多くの告発の中心人物であり、農民を土地から追放するためのさまざまな計画の立案者とみなされ、非難されている。

 シクルーナ大司教などバチカンの調査団は、昨年夏の調査の一環として、リマ滞在中に、ピウラ県のカタカオス農村社会のサン・ファン・バウティスタの小作農グループと面会し、状況とSCVに対する申し立てについて話し合った。調査団には、ペルー国家人権調整官(CNDDHH)のジェニー・ダドール事務局長も参加。エグレン大司教とも面談した。

 エグレン大司教のピウラ大司教区長辞任は、バチカンがSCVに対し、さまざまな形態の虐待で告発された8人の著名メンバーに対して措置を講じるよう求める一連の書簡を送ったことを受けてのことであり、SCVにとって重大な打撃となる可能性が強い。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年4月3日