☩教皇「女性に対する暴力という毒草の撲滅を」-25日の国連・女性に対する暴力をなくす国際デーに

Demonstration in Madrid on the International Day for the Elimination of Violence Against WomenDemonstration in Madrid on the International Day for the Elimination of Violence Against Women  (ANSA)

    11月25日は国連が定めた「女性と少女に対する暴力をなくすための国際デー」だが、教皇フランシスコは同日、X(旧ツイッター)への投稿で、「女性に対する暴力は、私たちの社会を悩ませる有毒な雑草。その根っこから引き抜かれなければなりません」と訴え、根絶のために、すべての人の尊厳を中心に置く教育的な措置をとるよう、世界の人々に呼び掛けられた。

 教皇は 「毒草は、偏見と不正義の土壌で育ちます。 こうした問題には、その人をその尊厳とともに中心に据える教育的措置で対抗しなければならない」と述べられた。

 女性と少女たちへの 暴力を防ぐ世界的な行動を呼びかける この国際デーは、国連総会の決議により、1981 年から毎年開かれている。16 日間の世界的な活動の始まりを示すこの記念日は、意識を高め、権利擁護を促進し、課題や課題について議論する機会を設けるための世界的な行動を呼びかけている。

  女性と少女に対する暴力は、依然として世界で最も蔓延し、蔓延している人権侵害の 1 つだ。 それは家族内で行われることも多く、11分ごとに女性がパートナーや家族によって殺害されているといわれる。 国連の最新データによると、世界中で7億人を超える女性(ほぼ3人に1人)が、生涯に少なくとも一度は身体的、あるいは性的な関係にあるなパートナーからの暴力、パートナー以外の性的暴力、またはその両方を受けている。

  この現象は職場やSNSによる仮想空間などさまざまな環境で激化しており、新型コロナの世界的大感染、世界各地で頻発する紛争、気候変動によってさらに悪化している。 女性と少女は、性暴力が戦争の武器として利用され、武力紛争の中で難民キャンプで特に弱い立場に置かれている。

「性暴力との戦いは、家庭や教会内の問題への認識から始まる」バチカン「いのち・信徒・家庭省」長官も声明

  バチカンの「いのち・信徒・家庭省」のケビン・ファレル長官は25日発表して声明で、性暴力と闘い、予防し、被害者に支援を提供するカトリック教会の取り組みの必要を改めて強調。 「教会には、暴力や搾取の被害者である女性に寄り添い続ける使命がある。具体的には、暴力の被害者に安全な住居を提供することから、精神的、精神的な支援に至るまで、さまざまな方法を取らればなりません。被害者自身がトラウマを克服し、虐待を報告できるよう支援する必要があります」 と、世界の教会関係者に要請した。

 またファレル長官は、重要な対応の一つは、女性を尊厳を大切にする教育にある、として、「それは家庭やキリスト教共同体内の問題を認識することから始まります。感情、愛情、他者への敬意、そして何よりも自分自身の人生について人々を教育することは、女性に対する暴力を防ぐために非常に必要であり、福音に強く深く根ざしている」と強調。世界中のすべての教会に対し、「家族、若者、婚約中のカップル、地域社会に女性に対する暴力を防止することを目的とした教育経路を提供する」行動を起こすよう促し、「これは司牧の責任であり、『平和の手段』となるという教会の使命です」と結論づけた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年11月26日

・「司祭から繰り返し性暴力」ー女性信者、神言会を相手取り、損害賠償訴訟へ-朝日新聞が報道

(2023.11.17 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が、外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかったとして、司祭が所属していたカトリック修道会、神言会(日本管区本部・名古屋市)を相手取り、慰謝料として3000万円の損害賠償を求めて東京地方裁判所に提訴することがわかった。

 16日夕、朝日新聞デジタルが報じた(https://www.asahi.com/articles/ASRCJ5401RBNUTIL01X.html)もので、それによると、 女性は東京在住の60代の看護師。女性や代理人の弁護士によると、女性は2012年、子どものころに受けた性暴力について、当時通っていた長崎市内の教会の外国人司祭に対し、告解で打ち明けた。すると、神父から「やり直しをしなければダメだ」などと言われ、霊的指導として17年末ごろまで繰り返し性交を強いられた、という。

 相談窓口や神言会の日本管区長に被害を伝えたところ、修道会は2019年に、その司祭に対して、「性犯罪を行い、貞潔の誓願を破ったと告発されていること」「彼の司祭としての行動は信者の間に嫌悪感を抱かせたこと」「将来スキャンダルを引き起こす可能性があること」を理由に聖職を停止し、共同生活から離れる3年の「院外生活」を決め、母国への帰国を認めた。だが、女性側は、調査は不十分で神父からの謝罪もないと主張。修道会が、その後再来日した神父の所在を把握していたにもかかわらず、女性側に伝えなかったなどと訴えている。神父については所在がわからないため、修道会のみを提訴する。

 朝日新聞デジタルによると、女性は性被害の影響で悩み、精神科に通院しており、取材に「救いを求めた教会で被害に遭った。信仰心を利用したこうした被害が起こっていることを知ってほしい」。代理人を務める秋田一恵弁護士は「神父は告解を利用して彼女の重大な秘密を知り、それに乗じて性加害を繰り返した。修道会は性被害の事実と加害者を組織的に隠蔽(いんぺい)している」と語っている。また、修道会の荒田啓示事務局長は取材に「神父は性行為を否定していた。訴状の内容を確認してから対応したい」と話している、という。

 神言会は、1875年に聖アーノルド・ヤンセン神父によって創られた宣教修道会で、1907年に日本で宣教活動を開始。現在、名古屋市に中学、高校、大学、長崎には中高を経営。新潟、仙台、東京、名古屋、福岡、長崎、鹿児島の各教区で約30の小教区を担当し、現在はカトリック東京教区、新潟教区の教区長に、それぞれ神言会出身の大司教、司教が就いている。

2023年11月17日

・スペイン司教団が性的虐待の被害者たちに謝罪、ただし「一部メディアの”44万人”は真実でない」と

Cardinal Omella at the press conference on the Gabilondo ReportCardinal Omella at the press conference on the Gabilondo Report  (ANSA)

 スペインのカトリック教会での性的虐待に関する第三者委員会の報告書の発表を受け、スペイン司教協議会(CEE)が10月30日にこの問題への対応について臨時総会を開くとともに、記者会見を行なった。

 会見でCEE会長のフアン・ホセ・オメラ枢機卿は、性的虐待について被害者たちに改めて謝罪する一方、同国の一部メディアが伝えた約44万人という被害者数は「真実ではない」と否定、「疑惑の影」が「すべての聖職者や聖職者に及ぶべきではない」と言明した。

 第三者委員会の調査報告は10月27日にスペイン議会下院に提出された。それによると、調査は8000 件の電話とオンラインによって行われ、質問を受けたスペインの成人の1.13%が、「子どもの頃に、司祭か教会の信徒指導者から性的虐待を受けた」と回答したとし、「スペインの教会は、聖職者による性的虐待とその隠蔽に対して措置をとってはいるが、十分ではない」と指摘していた。

 また、一部のスペインのメディアはこの数字をスペインの成人人口に当てはめると、約44万人が未成年者の時代、ここ数十年間に聖職者、修道会の会員、信徒らから性的虐待を受けた可能性がある、と報道していた。

 30日のマドリードでの記者会見で、オメラCEE会長は、「30日のCEE臨時総会には88人の司教が出席し、一部の司祭たちによって引き起こされた虐待行為に対する痛みを表明した」と述べ、被害者たちに改めて赦しを乞うとともに、被害者に対して包括的な賠償、支援、保護の態勢強化、そして何よりも虐待の再発防止に力を合わせることを、改めて申し合わせた、と説明した。

 ただし、スペインの一部メディアが報じた約44万人という被害者の数字についてオメラ会長は「真実ではない。神の王国への奉仕に人生を捧げ、働く聖職者や修道者すべてに容疑がかかっているわけではない」とし、 CEE事務局長のフランシスコ・マガン司教も、「すべての司祭、すべての聖職者に闇と疑惑の影を広げるのは不公平で誤りである」と強調。オメラ会長も「わが国の司祭と修道者の大多数は忠実、かつ無私無欲で働いており、小教区と地域社会の両方で神の民に奉仕しているだけでなく、この国の最も辺鄙な地域で助けを必要としているすべての人々に仕えている」と強調した。

 なお、CEEは、今年初めに同国の法律事務所the Cremades & Calvo-Soteloに委嘱して、これまで表に出たすべての虐待事例を網羅し、聖職者による虐待に関する調査を勧めており、 結果は2024年上半期に発表される予定だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年11月1日

・カトリック聖職者に性的虐待を受けた未成年者は20万人以上ースペインの独立調査委員会が推計

(2023.10.28 カトリック・あい)

2023年10月28日

・教皇、英国の性的虐待被害者支援のLOUDfence代表と会見、活動に感謝される(Crux)

(2023.10.27 Crux  Managing Editor Charles Collins)

レスター(英国)発 – 性的虐待と闘う英国の団体が、教皇フランシスコから「希望の象徴」と呼ばれた。この団体は、 アントニア・ソボッキ氏が代表を務めるLOUDfence。ソボッキ氏はバチカンで教皇に会い、このほど帰国した。氏によると、教皇は謁見で「私たちを親しく、協力的に迎えてくださり、私たちの活動に感謝​​して、『希望の象徴です』と言ってくださいました」と語った。

 LOUDfenceは、英国国教会のジェームス・ニューカム主教が、女子生徒2人への性的虐待を犯した元聖職者の人物を支持するような文章を書いたことをきっかけに、性的虐待に抗議し、再発を防止する目的で、2020年に設立された。

 広義を受けたニューカム司教は、この表現を撤回し、”判断ミス”について謝罪した。英国の有力民間テレビ放送 ITVによると、ソボッキ氏は「このことは、英国国教会による児童への性的虐待に関する独立調査委員会の最終報告書と同じ週に発表され、大きな波紋を呼びました」とし、「この出来事は、とても温かく思いやりのある人々の教会共同体に大きな打撃を与えました。 彼らには声が必要で、それについてどう感じているかを伝える方法が必要でした。 彼らは本当のことを言いたかったのです」とLOUDfence設立の動機を語った。

 LOUDfence は「虐待の影響を受ける人々への支援と連帯を目に見える形で示すのが狙い。 それぞれの家の垣根に結ばれたリボンは、虐待の被害に遭った人々を支援し、擁護するために発言する人々の声を表している」とし、虐待の被害者全員に「あなた方を信じ、声を聞き、支援する。そしてこのような悲劇が二度と起きないようにするために、できる限りのことをする、ということを知って欲しい」と訴え、国中の 人々に「互いにリボンを結び、立ち止まって考え、祈りを捧げ、被害者と連帯するように」と運動への参加を呼び掛けている。

 ソボッキ氏は 「私の子供たちは、この運動を”中世のFacebook″と名付けました。 物理的なシンボルをあなたの知らない誰かに結びつけることができれば、被害者たちがそのシンボルを見つけに来ることができ、慰めの源となり、彼らにメッセージを送ることができるでしょう」と語った。

 教会法博士のベンジャミン・カーター師は「教会のあらゆる行為で、すべての人々を守ることが絶対に重要。虐待の影響を受けた人々と関わることが欠かせません。教会であろうと、周りの世界であろうと、どんな形でもいい、彼らに対する神の愛と思いやりを示しましょう」と述べ、 「教会が人々のケアを怠り、その影響を受けた人々。私たちは彼らの勇気を讃え、連帯しする方法を見つけることができなかったことに対して、深く反省することが必要」とも語った。

 またソボッキ氏は「以前の教会での私の経験は素晴らしいものでした。 それが、教会で何が起こったのかを知った時、本当に大きな衝撃を受けました。それはひどい、ひどい裏切りのように感じられ、多くの悲しみを引き起こしました。 そして、私は基本的に、教会が私にこれをしてくれるなら、教会が私を愛して受け入れ、世話してくれるなら、他の人たちにもそれができると絶対にわかっている、と考えるようになりました。」と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

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2023年10月28日

・教皇、ルプニクの性的犯罪に対し、教会法の「時効」解除、成人への性的虐待も厳罰の姿勢明確に(Crux)

(2023.10.27  Crux Staff)

ローマ発-バチカンは27日の声明で、教皇フランシスコが、バチカンの聖職者性的虐待に対処する「未成年者保護委員会」の要請に応え、スロベニアの著名な芸術家でもある元イエズス会士、マーク・ルプニク神父が関与した性的虐待事件の処理について、教会法が定める時効の解除を決めた、と発表した。

 ルプニク神父は、修道女など約25人の女性から性的、精神的、心理的虐待の訴えを受けている。バチカンでの教会法に基ずく裁判はどのような容疑で、いつ始められるかについては、声明は明らかにしていない。

 バチカンによる教皇の時効解除についての発表は、ルプニク神父がスロベニアの教区に再び受け入れられたというニュースが流れてから約48時間後に出された。

 68歳の神父は、成人女性に対する性的虐待やその他の形態の虐待の容疑が内部調査でかなりの信憑性があることが判明したため、6月に自身が所属していたイエズス会から追放処分を受けていた。だが、9月からのいくつかの情報から、神父が(教会法の時効などから)処罰を逃れたのではないか、との見方も一部に流れていた。スロベニアの教区で受け入れられた、との情報もその一部だった。

 バチカンの声明は、「9月にバチカンの未成年者保護委員会は、『マルコ・ルプニク神父事件の処理に重大な問題があり、被害者への支援が欠如している』ことを教皇に伝えていた」としたうえ、 「その結果、教皇は(聖職者による性的虐待案件を担当する)教理省に事件を再検討するよう要請し、手続きを進めるために、時効を解除することを決定した」としている。

 教会法の出訴期限規定には、「(取得)時効」が定められており、性的犯罪の被害者が、被害を受けた時点で成人であったばあい、特例が認められない限り、時効の対象となる、との解釈が成り立つ。このためルプニク神父の支持者などから、教会からの制裁を受けない重要な根拠として使われてきた。 そして、バチカン教理省も2022年10月時点で、ルプニク事件で裁判を開始できなかった理由として「時効」を挙げていた。

 だが、教皇は9月中旬、ルプニクへの虐待容疑を「リンチの一種」と主張する支持者の1人と会い、数日後にローマ教区による捜査で、ローマにあるルプニクのセントロ・アレッティ芸術センターに、本人が健康(注:つまり、”リンチ”による精神的な障害はない)だということを明確にした。

 教皇は、(注:ルプニク擁護から厳罰への)自身の明らかな心変わりを説明するために、現在開かれているシノドス総会でのシノダリティ(共働性)に関する議論を引用した。そしてバチカンの声明は、「教会がシノドスから学ばなければならないことが一つあるとすれば、苦しんでいる人々、特に教会から疎外されている、と感じている人々の声に注意深く、思いやりを持って耳を傾けることであると、教皇は強く確信しておられる」と述べている。

(以下の部分はVatican Newsより)

【バチカンの未成年者保護委員会が教皇の決定に歓迎の声明】

 教皇の決定を受けて、バチカン未成年者保護委員会は27日夕、これ歓迎する声明を発表。「シノドス総会が閉幕に近づく中で、『保護の文化』の推進に司牧者、高位聖職者が果たすべき役割を改めて強調したい。教会が与えられた務めの核心は、誰もが安全に過ごせる場とすることであり、弱い人たちを脅威から守ることにある」と言明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年10月28日

・司祭による性的不祥事続出で管理責任問われ、ポーランドの司教が辞任

(2023.10.26 カトリック・あい)

 教皇フランシスコが24日、教区の司祭たちによる性的不祥事への管理責任を取る形でポーランドの司教から出されていた辞表を受理された。同時に、カトヴィツェ教区長のアドリアン・ガルバス大司教を使徒管理者として、新司教が任命されるまで教区をタンとさせる。

 この司教はポーランド南部、ソスノヴィエツ教区長のグジェゴシュ・カシャク司教。年齢は59歳で、いわゆる司教定年の75歳よりも16歳も若い。バチカンの24日付けの発表では辞表の受理の理由は明らかにされていないが、有力カトリック・メディアのCNSによると、同教区の司祭が8月に男性の”売春婦”との乱交パーティーを主催した疑いで逮捕され、地元メディア関係者などから、司教の責任を問う声が上がっていた。

 辞表が教皇に受理された後、カシャク司教は、教区のウエブサイトに教区の司祭、信徒たちに対する謝罪の言葉を掲載、「私の人間としての限界を赦していただきたいと思います。 私が誰かを怒らせたり、何かを無視したりしたとしたら、それを大変申し訳なく思います」と述べた。

 またこれより先、教区事務局が22日に発表したメディア向け声明によると、「教区内の町にある教会が所有する建物で8月30日夜に乱交パーティーがあったことを、教区はメディア報道で知った。現地メディアの報道によると、パーティー中の深夜に売春婦が意識を失って倒れ、救急車が呼ばれたことから、事件が発覚した。声明では「この事件については現在、当局が捜査中だが、問題の司祭の関与は疑問の余地がなく、事件のすべてが解明され、正式の処分がされるまでの間、同司祭の教会におけるすべての職務と権限を停止させた… 教会法は、そのような罪を犯した聖職者に対して、聖職者としての地位はく奪を含む厳罰を規定している」と声明は述べた。

 CNSによると、カシャク司教はまた、3月に司祭と助祭が突然死した事件の原因についても説明責任を果たしていない、と関係者から非難されていた。 非公式の報道によると、46歳の司祭が3月、26歳の助祭を刺殺した後、電車に飛び込み自殺したと、と伝えられている。さらに、カシャク司教が2009年にソスノヴィエツ教区長となった翌年、 2010年に教区神学校の校長を務める司祭が、クラクフのゲイクラブで性行為に及んだビデオが明らかにされたことから、バチカンが2013年に同行を閉鎖している。

 

2023年10月26日

・改・カトリック東京教区が「子どもと女性の権利擁護委員会」担当司祭を更迭、休養扱いに-説明は今後に

(2023.10.8=10.13改定 カトリック・あい)

 菊地功・東京大司教が8日付けで、今年度6度目の東京教区の司祭人事を発表。松戸、市川教会主任の伊藤淳師を「休養」扱いとするとともに、「子どもと女性の権利擁護委員会」の担当を解き、後任に赤岩聰・高輪教会主任を任命した。

 また、松戸、市川両教会については、松戸教会はサバティカル(自己研修のために認められた長期休暇)中だった、さいたま教区の高瀬典之師を「山野内・さいたま司教との話し合い」で、出向の形で「小教区管理者」とし、市川教会は「当面、教区本部事務局が担当する」としている。

 定期異動期とされている時期以外に、極めて変則的で理解しにくい人事が発表された理由について、少なくとも東京教区のホームページを見る限り、全く説明されていないが、教区側では、(「カトリック・あい」注:一般論として)「東京教区は、司祭が加害を訴えられたときには、教会外部の専門家で構成される第三者委員会が調査を行い、その結果が出た段階で、教区として正式に処分を決定した場合は、プライバシーに配慮しながら、その事実を公表する」としている。

 今回の人事に関わる問題と具体的対応については、今後の教区の対応を待つしかないが、すくなくとも女性や子供たちの権利を守る責任者の司祭が、何らの公的な説明もないまま突然更迭されたことは、さまざまな疑問を生み、「子どもと女性の権利擁護委員会」のみならず、教区そのものの信頼を大きく損ないかねない、と考えらる。具体的な信頼回復の努力が、教区、その責任者である大司教に求められよう。

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 日本の教会では、聖職者による性的虐待などに対する真剣な取り組みがなおざりにされる中で、次々と、問題が起きている。

 長崎教区は、司祭から性的虐待を受けたうえに、当時の大司教が彼女を傷つけるような言葉を公の場で発し、さらにPTSDが悪化したとの女性信徒の訴えに、長崎地裁から損害賠償命令の判決を受けている。だが、明確な謝罪、教区民への説明もないまま、さらに教区事務局に勤務していた信徒が司祭からパワハラを受けPTSDを発症したとして提訴、長崎地裁で公判が続いている。

 仙台教区でも、司祭から性的虐待を受けPTSDに苦しむ女性信徒の訴えを受けて続けられている仙台地裁での9月初めの公判で、被告証人として出廷した前司教が「知らない」『覚えていない』を繰り返し、傍聴席にいた前教区事務局長の司祭が居眠りをして裁判長から叱責される、という一般社会の常識では考えられない事態が起きている。

 世界中で止まることのない聖職者による性的虐待に深く心を痛めておられる教皇フランシスコは、「例外を認めない、徹底的な措置」を世界の教会、高位聖職者たちに繰り返し求められ、この問題などを背景に、大きな乱れを生じている世界の教会に、司教、司祭、信徒が耳を傾け合い、共に歩む教会の原点に戻るべく”シノドスの道”を提唱、その当面の終結の場として、世界代表司教会議(シノドス)総会が開かれているが、日本の教会のこのような状況を見ると、そのような歩みには程遠い、と慨嘆せざるを得ない。

 日本の教会を指導する立場にある人々、特に高位聖職者たちに、こうした現実としっかりと向き合い、「耳を傾け合い、共に歩む」未来の教会に向かって、真摯な反省と真剣な対応の構築、具体的な実施が強く求められている。

 

2023年10月9日

・「聖職者などによる性的虐待への対処が改められていない、真剣な対応の議論が必要」教皇の未成年者保護委員会が、新枢機卿叙任式とシノドス総会に強く求める声明

Bishops pray at the start of a session of the Synod of Bishops at the Vatican Oct. 9, 2018. (Credit: Paul Haring/CNS.)

(2023.9.27 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen

Pope’s own abuse commission blasts system that leaves victims ‘wounded and in the dark’

 聖職者による性的虐待問題などに関する教皇の諮問機関、未成年者保護委員会が27日、声明を発表し、「世界の教会指導者たちのによる性的虐待案件の隠ぺい、誤った対応だけでなく、新たな案件がさらに表面化している」と指摘、改めて真剣な取り組みを強く求めた。

 シノダリティ(共働性)をテーマにした2期連続の世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会が10月4日から始まる。総会を前に、30日には教皇フランシスコが新たに任命した21人の枢機卿の叙任式が行われるが、声明は、世界のすべての枢機卿に対して、「贖いを求められている血は、あなた方自身のものであり、司牧している人々の血ではない」としたうえで、「勇気ある自己犠牲の模範として、新たな枢機卿の叙任は、可能な限りあらゆる手段を用いて最も弱い立場にある人々を守り、擁護するという揺るぎない決意を反省し、悔い改め、新たにする絶好の機会となる」と強調。枢機卿たちに対し、虐待の被害者とその家族に対し正義と真実の両方を追求する決意を、「忠誠の誓い」の一部とするよう求めた。

 そして、この決意は、「すべての司教と宗教的指導者のならうべきもの」であり、10月4日から始まるシノドス総会は「教会内の性的虐待の現実について話し合い、変化を促す絶好の機会でもある」と指摘し、シノドスの全参加者に向けて、教育、さまざまな形態の奉仕、組織、統治などの場面に、虐待問題への対処を行きわたらせる議論を徹底するよう要請。

 「時には、それは気の遠くなるような問題のように思えるかもしれないが、福音を告げ知らせる教会の信頼性に対して、性的虐待がもたらしている脅威に、包括的な方法で対処できるよう、ぜひこの難題に取り組んでいただきたい」と強く要望した。

 さらに、総会での議論の「有意義な時間」を虐待への対処に充てること、生存者が体験談を共有する場を設けることを求め、教会のすべての奉仕活動が「虐待の被害者たちにとって歓迎、共感、そして加害者との和解の場となる日」を目指して努力するよう求め、 「被害者たちの訴えを沈黙させ、虐待への対処の重要性を矮小化し、再生への希望を抑圧する教会や社会の人々の間に蔓延する”自己満足”。それを非難する人々と協力しましょう」と呼びかけた。

 またシノドス総会参加者たちに対し、「教会が、その管理下で多くの人々が犯した過ちについて完全な説明と全責任を負う日」が来るために活動するよう促し、子供たちが「適切な安全政策と手順」によって守られる日が来ることへの希望を表明した。

また、教会や関連施設において さらなる透明性が必要であり、被害報告は、「許容可能な基準」に従って、誰でもが空く説できるようにする必要があるとし、「教区、学校、病院、修養施設や養成施設、その他の施設における子どもの保護とその責任が真剣に受け止められる日はまだ到来していない。多くの人にとってそれは遠い遠い先の話のように思われている」と述べ、 「こうした長期目標の達成に向けて、今総会の会議の1日や2日だけでなく、シノドスのプロセス全体を通して検討するよう強く勧めたい。その成功は、私たちが主の弟子として、より良い道を求め、傷ついた人々や忘れ去られた人々とともに歩んでいることのしるしとなるだろう」と強調した。

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 声明で、同委員会は世界の教会の性的虐待への取り組みなどについて、私たちは、教会内で責任ある立場に人々の言動、被害を受けた人々の叫び、信徒やその他の活動、そして教会活動の非常に多くの分野に関連した残虐な行為についての報告を聞き、動揺している」としたうえで、「性的虐待事件はメディアに取り上げられるものもあるが、黙殺されているケースもあり、多くの被害者が沈黙を強いられる中で苦痛にあえいでいる」と指摘した。

 「すべての虐待は、加害者によってだけでなく、それに対応できない、対応に消極的な教会によって、被害者たちをひどく傷つけ、激しい痛みをもたらしている」と述べ、そうした加害者や教会関係者には「自らが犯した行為がもたらした現実に対して考える気すらない」と強く批判。

 さらに、最近のいくつかの事件は「『加害者を罰し、不正行為に対処する義務を負う人々の責任を問うことを目的とした現行の規範』に致命的な欠陥があることを示している… 虐待事件の判決中も判決後も、心身に深い傷を負った被害者を暗闇の中に放置するような手続きの不備が、改められずに長い間放置されている」とも指摘。

 委員会は、「現法の規範、手続きの欠陥を調査、研究し、必要な見直しを行い、虐待を受けたすべての被害者が『真実、正義によって償いを受けられる』」ようにし、教会の権威ある立場にある人々に対し、「任務を効果的に遂行し、さらなる違反のリスクを最小限に抑え、すべての人にとって敬意を払う環境を確保するために、性的虐待の犯罪に対処する」よう強く求めていくことを約束した。

 声明ではまた、委員会が2014年に教皇フランシスコによって設立されて以来、性的虐待の現実と、虐待と「教会指導者による虐待への誤った対応」に対処する「断固とした改革」に向けた数多くの取り組みを監督してきたが、「児童保護に関する2019年の世界司教協議会会長会議が開かれた後も、深いフラストレーションが正義を求める人々の間に特に残っている、とし、「(性的虐待に正義を持って対応する取り組みに)容認できない抵抗が続いている。それは、教会内の多くの人々の決意の欠如を示しており、しばしば深刻な人的、物的な”資源不足”によってさらに悪化するケースもみられる… 教会指導者たちの司牧的回心がなければ、この分野で効果的な変革は、ほとんど期待できない」と言い切った。

 

 

2023年9月29日

☩「子供たち、弱い人々の苦しみの中に、性的加害者がイエスの眼差しを見るように」中南米未成年保護研修委員会の代表たちに

File photo of Pope FrancisFile photo of Pope Francis  (Vatican Media)

 

2023年9月27日

・「2023年3月まで一年間で性虐待の申し立ては4教区、5件」とは―”ガイドライン”決定から2年半かかって「日本の教区における性虐待に関する監査報告」

(2023.9.23 カトリック・あい)

 日本カトリック司教協議会が19日、「2022年度日本の教区における性虐待に関する監査報告」をカトリック中央協議会のホームページで発表した。世界で聖職者による性的虐待が大きな問題になる中で、日本の司教協議会は2021年2月になって「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」決定、公表した。それによれば、「日本カトリック司教協議会は、各教区における本ガイドラインの遵守状況を確認し、監査結果を公表する」としているが、どのようなペースで監査を実施し、いつ発表するのか、定かでなかったが、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果が明らかになった。

 ただ、その内容を見ると、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった。司祭・修道者の研修を実施した教区は10教区、性虐待被害者のための祈りと償いのミサを実施した教区は15教区、教区内における性虐待防止に関する行事・研修会を実施した教区は5教区であった」とするだけで、具体的な教区名、申し立ての内容などは明らかにされず、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるだけで、どのような「所見」と通知したのか、「さらなる対応」はどのようなものなのか、まったく判然としない。まさに、木で鼻をくくったような表現の羅列ではないだろうか。

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 「ガイドライン」には冒頭で、「教皇ヨハネ・パウロ二世は2002年4月23日、米国の枢機卿と司教協議会代表にあてた声明で、子どもに対する性虐待は「いかなる基準によっても悪であり、社会から正当に罪悪と見なされるものであって、神の目には忌まわしい罪である」と述べました。未成年者と弱い立場におかれている成人(以降、未成年者の表記に含める。)を守ることは、教会の使命の不可欠な事柄です。日本の司教協議会もこの使命を真摯に受けとめ、2002年以来、さまざまな形で取り組んできました2。わたしたちは、この歩みをさらに徹底するために本ガイドラインを作成し、日本の教会に委ねられている未成年者のいのちを守る使命を果たしていきます」と約束していた。

 そして「おわりに」で、「教会における性虐待、性暴力を根絶できるかどうかは、司教や修道会責任者をはじめ、信徒を含む教会全体の強い責任感と意志にかかっています。わたしたちは、今も苦しみの中にいる被害者への寄り添いを大切にするという姿勢を徹底しながら、キリストが望まれる教会共同体建設を目ざし、弱い者の側にたつキリストの生き方に徹底的に従う教会のあかしを目に見えるものにしていく努力をしなければなりません」と述べ、「同時に、組織内だけで問題を解決しようとする内向きの姿勢を変えていくことも喫緊の課題です。そのためにはしかるべき情報を公開し、教会内外を問わず多くの人の意見に耳を傾け、その協力を仰いで、教会としての決断に反映させるシステムを作る必要があります… 私たちの決意を込めたこのガイドラインが、日本における『すべてのいのちを守るため』の教会と社会づくりに寄与する指針となることを願ってやみません」と決意を語っていた。

 今回の監査報告に、そのような約束、決意が具体的に読み取れるだろうか。長崎教区では、聖職者から性的虐待を受け、さらにその問題に関する高位聖職者の心無い言葉でPTSDを発症した女性に対して、長崎地方裁判所から被告の教区に対し損害賠償命令が出された。仙台教区では、性的虐待被害者の女性の訴えを受けた仙台地方裁判所が、原告の女性と仙台教区に和解協議に入るよう命じたものの、1年以上経ても、教区側が原告が求める誠実な謝罪を拒み続け、9月初めに再び公判が再開する事態になっている。この二つに共通するのは、ガイドラインの言う「今も苦しみの中にいる被害者への寄り添いを大切にするという姿勢を徹底しながら、キリストが望まれる教会共同体建設を目ざし、弱い者の側にたつキリストの生き方に徹底的に従う教会のあかしを目に見えるものにしていく努力をしなければなりません」とは程遠い実態でなかろうか。

  監査報告をまとめた「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」運用促進部門に、内容表現に限界があるとすれば、監査報告に書かれたこと、書かれていないことも含めて、司教協議会として、「今も苦しみの中にいる被害者」そして多くの関係者に、日本全国の信者に対して、「弱い者の側にたつキリストの生き方に徹底的に従う教会のあかしを目に見えるものにしていく努力」を改めて表明するとともに、具体的な姿勢を表明する必要があると思われる。

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(2023.9.19 カトリック中央協議会ニュース)

 日本カトリック司教協議会は、未成年者の保護に関する教会法、関連する教皇庁文書、教皇庁未成年者保護委員会のガイドライン、児童福祉法、児童虐待の防止等に関する法律等を参考に、2021年2月、「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」、2022年2月「『未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン』監査細則」を作成した。

 日本カトリック司教協議会は、ガイドライン「9.監査」の規定に従って、2023年3月、全16教区に対してガイドラインの遵守状況を調査し、確認書を司教協議会会長宛に提出するよう依頼した。同年6月、監査細則第2条に基づいて選出された2名の監査役による監査(1)を実施。

注:1. 「ガイドラインに示す『監査』とは、日本カトリック司教協議会が、各教区におけるガイドラインを遵守しているかを確認することである」(「『未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン』監査細則第2条」。2. 性虐待の申し立てについては、事案の発生は必ずしも2022年度内とは限らず、それ以前に発生した事案も含まれる。

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参考*未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン 2021/12/17

未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン

はじめに

1.目的と適用範囲
本ガイドラインは、日本カトリック司教協議会の管轄する地域の教会活動において、未成年者の権利擁護ならびに保護を確かなものとするために、教会のあらゆるレベル──司教協議会、教区、奉献生活の会、使徒的生活の会など──における取り組みを促進するための方針を示したものである3

本ガイドラインの運用により、教会が虐待や暴力のない安心・安全な居場所となるよう努力し、互いの尊重や思いやりに溢れた教会共同体を確立し、維持する。

本ガイドラインの実施において、未成年者の保護に関する教会法4ならびに日本の法令5を、厳密に遵守し、関連する教皇庁文書6、「児童の権利に関する条約」7に基づく保障を確実にしなければならない。

本ガイドラインの適用範囲は、日本のカトリック教会で宣教や司牧に携わるすべての人──教区、修道会・宣教会、神学校ならびにカトリック関連施設で奉仕する聖職者(司教、司祭、助祭)、修道者、職員、ボランティアを含む──である8

2.用語の定義

  1. 虐待

    本ガイドラインにおいて、「虐待」とは、未成年者に対する身体的虐待(殴る、蹴る、叩くなど。)、性虐待(後記(2)項で定義する。)、ネグレクト(家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にするなど。)および心理的虐待(言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱いなど。)をいう9

  2. 性虐待

    本ガイドラインにおける性虐待に関する定義は、教会法10ならびに教皇庁関連文書11を基本とする。

    性虐待(性的搾取を含む。)は、未成年者に対して行われる神の十戒の第六戒に反する犯罪である12。具体的には、暴力または脅迫、権威の濫用により他者に性的行為を行うように、もしくは受けるように強要すること、合意のあるなしにかかわらず、未成年者と性的行為を行うこと、性的な意味をもった身体的接触、露出、自慰、児童ポルノ素材の制作・公開・所持・頒布、売買春への誘導、各種コミュニケーション手段を用いたものも含む性的な会話及び提案を行うことであり、加害者が聖職者や修道者である場合、より重大な犯罪として、教理省に留保される13

このガイドラインにおいては、用語を以下のとおり定義する。

  • 未成年者:18歳未満の全ての人または法律によってこれらの人と同等とみなされる人。

  • 弱い立場におかれている成人:18歳以上の身体的、精神的な疾患や障がいによって、あるいは事実上、一時的であっても、理解したり、意思を表したり、侵害に対して抵抗することなどが制限されている個人の自由を欠く状態にある全ての人。

  • 児童ポルノ素材:使用される手段(媒体)を問わず、現実または仮想上いずれかの明白な性的行為に関係している未成年者の表現、もしくはもっぱら性的な目的を有するあらゆる未成年者の性器に関する表現。

3.未成年者保護のための担当者
教区司教、修道会・宣教会の上長は、未成年者保護のための窓口となる担当者を任命しなければならない。この担当者は、未成年者の権利を尊重し、あらゆる虐待や搾取14の根絶に向けて配慮する共同体となるために、ガイドラインが適切に履行されるよう対処する。さらに担当者は、司牧活動に携わる人々の虐待に関する予防と研修を実施し、被害を訴える人とその家族を受け入れ支えるよう特別に配慮しなければならない。

4.適性判断と養成

  1. 聖職者、修道者ならびに志願者の召命の識別と養成

    ① 司教ならびに修道会・宣教会上長は「召命を正しく識別する」という責任を持っている15。召命を正しく識別し、志願者、聖職者、修道者を健全に人間的、霊的に養成するために、使徒的勧告『現代の司祭養成』で示された規定と教皇庁当該機関の指針に基づき、堅固な養成を継続的に行わなければならない16

    ② 聖職者、修道者が、人事異動により他の教区へ派遣、または移籍する場合、該当者の経歴などの情報が、派遣先、移籍先の司教と完全に共有されなければならない。神学生、志願生も同様である。

    ③ 司牧者の選定は、適切な調査を通して、その適性が確認されなければならない。

    ④ 司牧者は、未成年者の性虐待、虐待、搾取の危険性について、またそれらの犯罪を特定し防止する方法について、適切な養成を受けなければならない。

  2. 教会ならびにカトリック関連施設の職員、奉仕者、ボランティアの人選と養成

    ① 司牧活動、教育機関、カトリック関連施設に携わる者の選定や雇用においては、適切な調査を通して、その適性が確認されなければならない。

    ② 司牧活動に携わる者、教育機関、カトリック関連施設の職員は、未成年者の性虐待、虐待、搾取の危険性について、またそれらの犯罪を特定し防止する方法について、適切な養成を受けなければならない。

    ③ 司牧活動に協力する者、奉仕者、ボランティアは、未成年者と関わる際の注意事項および禁止事項を知らなければならない。

5.意識啓発

  1. 未成年者の人権と尊厳を擁護し、虐待防止のための意識啓発、ならびに安全な居場所作りのために、教区や学校内での共同体教育への取り組みを実施しなければならない。

  2. 教区ならびに修道会、宣教会においては、特に日本カトリック司教協議会が定めた「聖職者による性虐待被害者のための祈りと償いの日」のミサ、その前後の行事を通して、虐待防止に向けて取り組まなければならない。

6.司牧活動での遵守事項

  1. 未成年者と関わる司牧活動では、未成年者の保護が優先される。したがって、その活動においては、司牧者は以下のことを守らなければならない。

    •  慎重さと尊敬をもって接すること。

    •  未成年者の模範となること。

    •  未成年者といるときは、必ず第三者から見えるようにすること。

    •  潜在的であったとしても、危険な行動が見られた場合は、担当者17に報告すること。

    •  未成年者のプライバシーを尊重すること。

    •  活動内容と取り決めについて、保護者に事前に通知すること。

    •  電話やソーシャルネットワークなどを用いて未成年者とコミュニケーションをかわす際は、しかるべき注意を払うこと。

  2. 司牧者が未成年者に対して以下のことを行うことは、固く禁じられる。

    •  体罰を科すこと。

    •  特定の未成年者と優先的な関係をもつこと。

    •  精神的あるいは身体的に危険となりうる状況に未成年者を置くこと。

    •  不快な態度、不適切または性的なことを示唆する行動を取ること。

    •  特定の個人やグループを差別すること。

    •  未成年者に秘密を守るよう強いること。

    •  特定の個人に贈り物をするなど、グループ内で差別化を図ること。

    •  個人的な目的で、未成年者の写真や動画を撮影すること。

    •  未成年者が特定できる画像を、ウェブやソーシャルネットワークなどで、保護者の同意なしに公開したり配布したりすること18

  3. 司牧活動は、未成年者の年齢と発達段階に応じた場で行われなければならない。未成年者が目の届かない場所や危険なところに立ち入ったりとどまったりしないよう、司牧者は特別に注意を払う必要がある19

  4. 未成年者間での不適切な行動やいじめには、たとえそれが犯罪を成立させるものでなかったとしても、公平かつ慎重に対処しなければならない。

7.保護者のインフォームド・コンセント20

  1. 未成年者が活動に参加する際には、保護者の同意が必須である。また、活動内容、責任者の名前と連絡先情報を、保護者に知らせなければならない。

  2. 未成年者の写真や動画の撮影、未成年者が写っている写真やビデオの公開、電話やソーシャルネットワークを通じて未成年者と直接連絡を取ること、そのいずれの場合も保護者の同意が必要である。

  3. 重要な個人情報を含む同意書は、慎重かつ厳重に保管されなければならない21

8.性虐待、虐待の申し立ての取り扱い

  1. 宣教司牧に携わるすべての人22は、未成年者が性虐待、虐待の被害を受けたとの情報を得た場合、直接または担当者23を通して、当該責任者24に報告しなければならない25。また、当該被害者あるいは被害を受けたと思われる者が18歳未満の場合、法律に基づき、市町村、都道府県が設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない26

  2. 性虐待、虐待の被害を訴える者およびその家族は、受け入れられ、守られる権利を有する。適切な霊的支援、彼らの名誉とプライバシーおよび個人情報の保護を確実にしながら、教会共同体の責任者は、直接または担当者を通して、彼らの訴えに耳を傾け、被害を訴える者および関係者が精神的ケアや霊的同伴を受けられるよう配慮する。

  3. 支援者27は、虐待やその被害者への応対についての知識と経験があり、理解している信徒が望ましい。支援者は訴えの進行状況に関する情報を、被害を訴える者に提供し、適切な支援が受けられるように助言する。

  4. 被害を訴える者には、有益な法律情報をはじめ、急を要する治療や心理的支援を含む医療支援および社会的支援も提供されなければならない。

  5. 被疑者が聖職者、あるいは修道会・宣教会の会員である場合、担当者は直ちに責任者に報告しなければならない。責任者は、被害が起きた教区の司教に報告する義務がある。

  6. 未成年者への虐待の事例について教区司教は、教区対応委員会または修道会・宣教会の担当者に、報告書の作成を要請する。

  7. 訴えが事実に基づかないことが明白でない限り、事案が集結するまでの間、被害を訴えているものを保護し害が及ばないようにするため、責任者は自己の権限において、被疑者の活動を制限するなど、必要な措置を講じなければならない。

  8. 訴えに対応する過程で、以下のことが注意されなければならない。

    •  直ちに適切な方法で、被害を訴えている者の証言を得ること。

    •  被害を訴えている者を心身両面でサポートする適切な機関を紹介すること。

    •  自ら、あるいは代理人を通して証言したり質問に答えたりすることも可能なことも含めて、被害を訴えている者に保証されている権利やその行使の方法を説明すること。

    •  被害を訴えている者が望む場合、手続きの各段階の結果を知らせること。

    •  被害を訴えている者に、弁護士や教会法の専門家の支援を利用するよう勧めること。

    •  被害を訴えている者やその家族を、脅迫や報復から保護すること。

    •  被害を訴えている者の名誉やプライバシーをはじめ、個人情報を保護すること。

    •  すべての関係者の精神的ケアに努めること。

  9. 予備調査、教会裁判等の手続きについては、教理省『聖職者による未成年者への性的虐待事例を扱う手続きにおけるいくつかの点に関する手引き書』28に準拠する。

  10. 被疑者の名誉を保護するため、無罪の推定がつねに保証されなければならない。これに反する重大な理由がない限り、被疑者は自身を守るため、告訴や告発について知らされなければならない。弁護士や教会法の専門家の支援を受けるよう勧められるべきであり、霊的、精神的支援も提供されなければならない。

  11. 調査の結果、犯罪が行われた可能性が高いと判断された場合、修道会・宣教会の上長は、当該教区29の司教に報告しなければならない。なお、教区司教、修道会・宣教会の上長は日本カトリック司教協議会会長ならびに教理省に報告しなければならない。無罪と判断された場合は、裁治権者は訴えを却下することを正式に指示し、調査内容とその結論に至った理由を記録する書類を、記録保管庫に保存しなければならない。

  12. 犯罪が繰り返されると信じるに足る理由がある場合、直ちに適切な予防措置を取らなければならない。

9.監査
日本カトリック司教協議会は、各教区における本ガイドラインの遵守状況を確認し、監査結果を公表する。

おわりに
教会における性虐待、性暴力を根絶できるかどうかは、司教や修道会責任者をはじめ、信徒を含む教会全体の強い責任感と意志にかかっています。
わたしたちは、今も苦しみの中にいる被害者への寄り添いを大切にするという姿勢を徹底しながら、キリストが望まれる教会共同体建設を目ざし、弱い者の側にたつキリストの生き方に徹底的に従う教会のあかしを目に見えるものにしていく努力をしなければなりません。
同時に、組織内だけで問題を解決しようとする内向きの姿勢を変えていくことも喫緊の課題です。そのためにはしかるべき情報を公開し、教会内外を問わず多くの人の意見に耳を傾け、その協力を仰いで、教会としての決断に反映させるシステムを作る必要があります。
以上の提言と私たちの決意を込めたこのガイドラインが、日本における「すべてのいのちを守るため」の教会と社会づくりに寄与する指針となることを願ってやみません。

*本ガイドラインは、2021年度定例司教総会において、日本カトリック管区長協議会および日本女子修道会総長管区長会代表の参加のもと、日本カトリック司教団により、2021年2月17日に承認された。

2023年9月23日

・元イエズス会士による性的虐待の被害者たちが教皇に公開書簡ー「”Zero Torelance(容赦ない処罰)”はPRキャンペーンに過ぎない」(Crux)

(2023.9.20  Crux Staff)

 ローマ – 元イエズス会士で著名なスロベニア人芸術家、マルコ・ルプニク神父による性的虐待の被害とされる女性5人がこのほど、教皇フランシスコやイタリア司教協議会長、バチカンで修道会を管轄する責任者などに宛てた連名の公開書簡を発表。

 「最近の教会関係者の対応は、聖職者による性的虐待に対して教皇フランシスコが強調する”Zero Torelance(容赦ない処罰)”が、単なるPRキャンペーンに過ぎないことを明らかにしている。醜聞を頻繁に隠し、虐待の当事者のために支援、もみ消しさえしている」と強く抗議した。

 公開書簡は、9月15日に教皇がルプニクを擁護するイタリアの神学者を謁見したこと、さらに、18日にカトリック・ローマ教区が声明で、ルプニクが設立した「セントロ・アレッティ」は「健全な共同体生活を育んでいる」と讃えたことを批判し、イエズス会がルプニクを、性行為の相手の女性を赦免するために告解室を利用したとして短期間だけ破門したことにも異議を唱えた。

 そして、このような教会や修道会の対応に「私たちは言葉を失い、もはや抗議の声を叫ぶ気力も失った… 教皇のルプニク支持者謁見とローマ教区の声明は、教会は被害者や正義を求める人々に全く関心がないことを示している」と批判した。

 また、教皇は8月下旬から「世界青年の日」大会出席のためポルトガルを訪問した際、「誰でも、どんな人も、教会は歓迎します」と主張しているが、「教会には、不快な真実を思い出す人々の居場所はない」と言明。

 さらに、ルプニクを間接的にかばうようなローマ教区の声明について、「性的虐待の犠牲者の苦痛だけでなく、高位聖職者たちの、頑なで傲慢な対応によって致命傷を負った教会全体の苦痛をも嘲笑するものだ」と述べた。また、ルプニクの長年の同僚で現在はセントロ・アレッティ会長を務めるマリア・カンパテッリに教皇謁見が認められたことは、「これまで教皇が、ルプニクによる性的虐待の犠牲者とされる人物の誰にも会っていない、という事実とは、全く対照的だ」とも批判した。

 また、ルプニクの活動と関係のあった女子修道会Loyola Communityの現会員と元会員が教皇あてに出した4通の手紙にも返答しておらず、 「被害者たちは、こうした対応による新たな虐待に声にならない叫びをあげるしかない」とも述べた。

  ルプニクによる性的虐待については、これまでに約20人の女性が、30年以上にわたるさまざまな形の性的、精神的、心理的虐待で本人を告発している。 68歳のルプニクは7月にイエズス会修道会から追放されたが、依然としてカトリックの司祭だ。だが、ルプニクが今後どこに活動の拠点を置くのか、また他の懲戒処分が今後されるのかどうかは明らかではない。

 また、修道女たちが虐待される場になったとされるLoyola Communityの元総長、シスター・イヴァンカ・ホスタに対しても、公開書簡は「ルプニクの残虐行為を30年間、隠蔽し、彼の計画に反対する人々を精神的奴隷に貶めてきた」と批判しているが、彼女に対する調査、処分はこれまでどこからも全くされていない。

2023年9月22日

・「破産申請の可能性が極めて高い」と米サンフランシスコ大司教が表明―聖職者の性的虐待訴訟の重圧で

Cathedral of St. Mary of the Assumption in San FranciscoCathedral of St. Mary of the Assumption in San Francisco. | Credit: Sundry Photography/Shutterstock

(2023.8.8 カトリック・あい)

 米国の有力カトリック・ニュースサイトCNAが5日付けで伝えたところによると、同国のサンフランシスコ教区長、サルバトーレ・コルディオーネ大司教が4日、教区に対して起こされている数百件の聖職者による性的虐待訴訟により、近い将来、破産申請する「可能性が非常に高い」ことを明らかにした。

 サンフランシスコ大司教区はサンフランシスコ市を中心に88の小教区に44万人の信徒をもち、初代大司教就任から200年近い歴史を持つ米国の拠点教区の一つ。

 米国では2002年に、聖職者による未成年などへの性的虐待がメディアによって明るみに出されたのをきっかけに、虐待被害者やその家族などから損害賠償訴訟が相次いで起こされ、敗訴したり、和解したりすることで重い賠償負担を抱えて、破産に追い込まれる教区が増えている。CNAによると、これまでに米国内で破産を申請したカトリック教区は20を超えているという。

 だが、米国で古い歴史を持つ基幹教区が性的虐待訴訟で破産に追い込まれる事態となったのは初めてと見られ、性的虐待がもたらしている事態の深刻さを改めて浮き彫りにしている。

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 コルディオーネ大司教は4日、教区のウエブサイトで、このことを明らかにしたが、その中で、「特定の性的虐待申し立ての時効が2019年カリフォルニア州法で撤廃されたのを受けて、被害申し立てが急増し、500件を上回る民事訴訟が起こされている」とし、「訴訟の対象となっている性的虐待の容疑の大部分は1960年代、1970年代、1980年代に起きたもので、関与したとされる司祭は既に死亡しているか、司牧活動を止めている。また、匿名の個人、あるいは大司教区が感知しない名前のある個人が関与したものもあるが、これらの申し立てを解決する最善の選択肢を模索している」と説明。

 そのうえで、「熟考と祈りの結果、破産法第11章に基づく教区財政の再建が行われる可能性が非常に高いことをお知らせしたい」と述べ、破産申し立てにより、「大司教区が一度に1件ずつではなく、数百件の事件をまとめて処理できるようになり、数百人の被害者にとってより速やかな解決がもたらされると考える。公正な補償が行われ、その結果として、平和と決着がもたらされるのを願っている」と教区民の理解を求めている。

 

 *コルデリオーネ・サンフランシスコ大司教の声明全文は次の通り

2023年8月8日

・性的虐待で訴訟中の元米司教が結婚を”宣言”、バチカン・ルールに構造的欠陥?(CRUX)

(2023.8.2 Crux By Crux Staff)

   米国のニューヨーク州で7件の性的虐待の訴えを受けて公判中のカトリックの元司教が、バチカンから訴訟が解決するまで待つよう指示されたのを無視して、女性と民法上の結婚をした。

 この振る舞いは、聖職者による性的虐待への対処という深刻な問題を抱えるバチカンを困難な立場に追い込み、高位聖職者による性的虐待と虐待や隠ぺいの申し立てに対処するためにバチカンが最近導入した制度の構造的欠陥と、バチカンの指示に従わず勝手な行動をとる聖職者への教皇の対応の困難さを浮き彫りにしている。

 問題の元司教は、1977年から2014年までニューヨーク州の首都オールバニーの教区長を務めていたハワード・ハバード、84歳。自らの性的虐待についての虐待疑惑は否定しているものの、教区長時代に、司祭による性的虐待について訴えを受けていたにもかかわらず、これを隠ぺいしていたことは認めている。

 ニューヨーク州では他の多くの州と同様に、未成年者に対する性的虐待についての民事,刑事いずれの申し立ても、時効を一時解除する措置をとっているが、2022年の裁判所による事情聴取で、ハバートは、司祭による性的虐待について訴えを受けたことを警察に報告しなかった理由について、「 法律でそうすることを義務付けられていないと思った。醜聞が表ざたになるのを避け、司祭職を尊重する考えによるものだ」と”釈明”していた。

 教皇フランシスコは、2019年に聖職者による未成年に対する性的虐待に対処する教会法上のルールを明示した使徒的書簡 『Vos estis lux mundi(あなたがたは世の光)」を出しており、これに基づいて、ハバートに制裁を課すことも可能だったはずだ。

 だが、バチカンはこれまで、このルールを積極的に活用することをせず、ニューヨーク州が未成年性的虐待の時効を一時解除した2022年に、ハバードは聖職者としての役務を停止するか否かを判断するよう指示するにとどまった。

 ハバードがバチカンに聖職離脱を申し出たのは、民事訴訟の棚上げ停止後の2022年秋だった。バチカンは彼に、民事訴訟がすべて決着するまで、離脱を待つように求めたのに対し、 ハバードは声明を出し、「私を助け、世話し、信じてくれるた素晴らしい女性と恋に落ちました」とし、その女性を「この旅の愛情深い支えとなる仲間」と呼び、「自分はそうすることができる」と述べた。

 訴訟が決着する前に、彼は91歳か92歳になる可能性がある。 アルバニーの現教区長、エドワード・シャーフェンバーガー司教は、ハバードが民法上結婚したというニュースを「想定外。まだ対応を始めたばかりだ」としたうえで、 「教会は(ハバードの)の結婚を有効なものとして認めていない」と言明している。

 オールバニー教区は、ニューヨーク州が未成年性的虐待の時効を一時停止したことに伴い、虐待被害者などから数百件の損賠賠償請求訴訟を出され、教区財政は賠償負担に耐えられないとして、今年初めに破産を申請している。

  ハバードの今回の「性的虐待訴訟中の婚姻」について、これまでのところバチカンからコメントは出ていないが、ハバードが懲戒処分の対象となる可能性がある。ちなみに、 この事件を担当することになるとみられるバチカン司教省の長官は、先に教皇から枢機卿に指名され、9月に叙任される、ハバートと同じ米国人のロバート・プレボスト大司教だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年8月3日

・米司教団が未成年性的虐待など2022年・年次報告ー年間の被害訴え1998人、2704件に“減少”だが

File photo of a US bishop praying during an annual meeting of the USCCBFile photo of a US bishop praying during an annual meeting of the USCCB 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年7月19日