・改・カトリック東京教区が「子どもと女性の権利擁護委員会」担当司祭を更迭、休養扱いに-説明は今後に

(2023.10.8=10.13改定 カトリック・あい)

 菊地功・東京大司教が8日付けで、今年度6度目の東京教区の司祭人事を発表。松戸、市川教会主任の伊藤淳師を「休養」扱いとするとともに、「子どもと女性の権利擁護委員会」の担当を解き、後任に赤岩聰・高輪教会主任を任命した。

 また、松戸、市川両教会については、松戸教会はサバティカル(自己研修のために認められた長期休暇)中だった、さいたま教区の高瀬典之師を「山野内・さいたま司教との話し合い」で、出向の形で「小教区管理者」とし、市川教会は「当面、教区本部事務局が担当する」としている。

 定期異動期とされている時期以外に、極めて変則的で理解しにくい人事が発表された理由について、少なくとも東京教区のホームページを見る限り、全く説明されていないが、教区側では、(「カトリック・あい」注:一般論として)「東京教区は、司祭が加害を訴えられたときには、教会外部の専門家で構成される第三者委員会が調査を行い、その結果が出た段階で、教区として正式に処分を決定した場合は、プライバシーに配慮しながら、その事実を公表する」としている。

 今回の人事に関わる問題と具体的対応については、今後の教区の対応を待つしかないが、すくなくとも女性や子供たちの権利を守る責任者の司祭が、何らの公的な説明もないまま突然更迭されたことは、さまざまな疑問を生み、「子どもと女性の権利擁護委員会」のみならず、教区そのものの信頼を大きく損ないかねない、と考えらる。具体的な信頼回復の努力が、教区、その責任者である大司教に求められよう。

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 日本の教会では、聖職者による性的虐待などに対する真剣な取り組みがなおざりにされる中で、次々と、問題が起きている。

 長崎教区は、司祭から性的虐待を受けたうえに、当時の大司教が彼女を傷つけるような言葉を公の場で発し、さらにPTSDが悪化したとの女性信徒の訴えに、長崎地裁から損害賠償命令の判決を受けている。だが、明確な謝罪、教区民への説明もないまま、さらに教区事務局に勤務していた信徒が司祭からパワハラを受けPTSDを発症したとして提訴、長崎地裁で公判が続いている。

 仙台教区でも、司祭から性的虐待を受けPTSDに苦しむ女性信徒の訴えを受けて続けられている仙台地裁での9月初めの公判で、被告証人として出廷した前司教が「知らない」『覚えていない』を繰り返し、傍聴席にいた前教区事務局長の司祭が居眠りをして裁判長から叱責される、という一般社会の常識では考えられない事態が起きている。

 世界中で止まることのない聖職者による性的虐待に深く心を痛めておられる教皇フランシスコは、「例外を認めない、徹底的な措置」を世界の教会、高位聖職者たちに繰り返し求められ、この問題などを背景に、大きな乱れを生じている世界の教会に、司教、司祭、信徒が耳を傾け合い、共に歩む教会の原点に戻るべく”シノドスの道”を提唱、その当面の終結の場として、世界代表司教会議(シノドス)総会が開かれているが、日本の教会のこのような状況を見ると、そのような歩みには程遠い、と慨嘆せざるを得ない。

 日本の教会を指導する立場にある人々、特に高位聖職者たちに、こうした現実としっかりと向き合い、「耳を傾け合い、共に歩む」未来の教会に向かって、真摯な反省と真剣な対応の構築、具体的な実施が強く求められている。

 

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2023年10月9日