・「破産申請の可能性が極めて高い」と米サンフランシスコ大司教が表明―聖職者の性的虐待訴訟の重圧で

Cathedral of St. Mary of the Assumption in San FranciscoCathedral of St. Mary of the Assumption in San Francisco. | Credit: Sundry Photography/Shutterstock

(2023.8.8 カトリック・あい)

 米国の有力カトリック・ニュースサイトCNAが5日付けで伝えたところによると、同国のサンフランシスコ教区長、サルバトーレ・コルディオーネ大司教が4日、教区に対して起こされている数百件の聖職者による性的虐待訴訟により、近い将来、破産申請する「可能性が非常に高い」ことを明らかにした。

 サンフランシスコ大司教区はサンフランシスコ市を中心に88の小教区に44万人の信徒をもち、初代大司教就任から200年近い歴史を持つ米国の拠点教区の一つ。

 米国では2002年に、聖職者による未成年などへの性的虐待がメディアによって明るみに出されたのをきっかけに、虐待被害者やその家族などから損害賠償訴訟が相次いで起こされ、敗訴したり、和解したりすることで重い賠償負担を抱えて、破産に追い込まれる教区が増えている。CNAによると、これまでに米国内で破産を申請したカトリック教区は20を超えているという。

 だが、米国で古い歴史を持つ基幹教区が性的虐待訴訟で破産に追い込まれる事態となったのは初めてと見られ、性的虐待がもたらしている事態の深刻さを改めて浮き彫りにしている。

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 コルディオーネ大司教は4日、教区のウエブサイトで、このことを明らかにしたが、その中で、「特定の性的虐待申し立ての時効が2019年カリフォルニア州法で撤廃されたのを受けて、被害申し立てが急増し、500件を上回る民事訴訟が起こされている」とし、「訴訟の対象となっている性的虐待の容疑の大部分は1960年代、1970年代、1980年代に起きたもので、関与したとされる司祭は既に死亡しているか、司牧活動を止めている。また、匿名の個人、あるいは大司教区が感知しない名前のある個人が関与したものもあるが、これらの申し立てを解決する最善の選択肢を模索している」と説明。

 そのうえで、「熟考と祈りの結果、破産法第11章に基づく教区財政の再建が行われる可能性が非常に高いことをお知らせしたい」と述べ、破産申し立てにより、「大司教区が一度に1件ずつではなく、数百件の事件をまとめて処理できるようになり、数百人の被害者にとってより速やかな解決がもたらされると考える。公正な補償が行われ、その結果として、平和と決着がもたらされるのを願っている」と教区民の理解を求めている。

 

 *コルデリオーネ・サンフランシスコ大司教の声明全文は次の通り

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2023年8月8日