・性的虐待‐透明性を欠く高位聖職者への対応が教皇とバチカンの信頼を損なっている(LaCroix)

(2022.9.30 La Roix Robert Mickens | Vatican City)

 教皇フランシスコとバチカンの側近たちは、著名な聖職者による性的虐待についての訴え対処する際に、透明性を求める要求を無視し続けている。

 極めて残念なことだが、カトリックの司祭、あるいは司教から性的虐待を受けた方には、次のようなアドバイスをせざるを得ないー「犯罪がまだ時効になってない場合、どのような状況であっても、教会に、とくにバチカンの担当部局に被害の報告をしないように。直接、警察に行くのがいい。そうしないと、あなたの訴えが真剣に受け止められたり、公明正大な方向で捜査される保証はありません」と。

 教皇フランシスコとバチカンの当局者たちの最近の何回かの対応から得られる結論は、「性的虐待の訴えを受けた高位聖職者に関する取り調べは秘密裏に行う」ことであり、「調べの経過や結果については、被害者とされる人に通知することすらしない」ということだ。

 

*教皇の母国、アルゼンチンの司教が性的虐待で訴えられ、有罪となったが…

 最近起きた”事件”の一つに、教皇の出身国アルゼンチンのグスタボ・ザンケッタ司教のケースがある。フランシスコが教皇になった直後の2013年に司教に叙階されたが、神学生を性的に虐待したとして訴えられたが、教皇は訴えを信じるのを拒否。2017年8月に53歳で教区長を辞任するのを認めた教皇は、彼をバチカンで受け入れ、特別に作ったポストに就かせた。昨年 3 月、アルゼンチンの裁判所はザンゲッタに 禁錮4年半の刑を言い渡したが、どういうわけか修道院で刑期を過ごすことが認められたのだ。

 

*マカリック司教省長官への訴えを不問にした後に、集団訴訟が起こされた

 

 これで驚いてはいけない。バチカンの司教省長官のマルク・ウェレット枢機卿。母国カナダのメディアが昨年8月に、枢機卿が成人女性から「2008年に行われたある宴会で、望まない”接触”やキスをされた」と訴えられたのを明らかにし、これを受けたバチカンの報道官はこの件に関して、予備調査をしたことを認めたうえで、「彼女の主張は信用できない、と判断された」と不問に付したことを明らかにしていた。だが、今年8月になって、カナダで、この訴えをもとに、枢機卿と88人の司祭が性的虐待と対応の過ちを理由に、集団訴訟を起こされている。

 そして、バチカンの取り調べが、教皇フランシスコが発出した自発教令で示された「司教を捜査するための手続き」にも従っていないことも、明らかになった。この自発教令は2019年に出され、教会の高位聖職者に対する性的虐待に関する訴えに公平に対処するための”大きな一歩”となるはずだった。

 だが、それほど調べても、自発教令に「透明性」という言葉は出てこない。そして実際に、司教に対する訴えの取り調べを担当するバチカンの”教皇の部下”たちが、太古の昔から変わることない前任者と同じように、そのような考え方に居心地の悪さを感じていることが、ますます明らかになりつつあるのだ。

*ノーベル平和賞の東チモールの司教の処分も、バチカンは週刊誌報道の後で認める

 オランダのメディアが秘密の取材をもとに明るみに出したのは、東チモール独立に貢献し、ノーベル平和賞を受賞したが、性的虐待で訴えられたカルロス・ヒメネス・ベロ 司教に関するバチカンの対応だ。バチカン当局は、ベロ司教の問題について、3年前に虐待の訴えを受けて捜査を始めたことを認めたが、2020年に当時74歳の枢機卿に対する規制を緩和し、さらに一年後に規制を強化していた。訴えの内容が信用できると判断したため、と見られる。

 このことを私たちが、なぜ今になって知ったのか?それは オランダのニュース週刊誌 De Groene Amsterdammer が過去 20 年間に集めらた証言に基づいて司教ベロに関する暴露記事を掲載し、世界の記者たちがバチカンの報道官に説明を求めたからだ。記事が週刊誌に掲載されなければ、この司教がバチカンから調査を受け、処分されたことを、誰も知らなかったのだろうか?この性的虐待の訴えを報道した記者たちが、バチカンの取り調べの結果を非公式に知らされていたとしても、バチカンには、このことを公にするつもりがなかったことは明白だ。

 

*”マカリック事件”を彷彿とさせるバチカンの対応が繰り返されている

 ウェレット枢機卿の扱いと同じように、ベロ司教に対するバチカンの処分がメディアで明らかにされるまで、バチカンは沈黙を守った。さらに悪いことに、米国のセオドア・マカリック元枢機卿の場合と同様に、ローマと東ティモールの教会当局者は、長年にわたって司教の性的虐待の行状を十分に認識していたようなのだ。

 確かに、これらは当時は「単なるうわさ」だったが、教皇ヨハネ・パウロ2世と当時バチカンの福音宣教省長官だったクレッシェンツィオ・セペ枢機卿が2002年に、ベロ司教を54歳という若さで辞任させた表向きの理由は「健康上の都合」。そして、司教をモザンビークに送り出した。

 マカリックしたように、バチカン当局はベロ司教に対して、密かに多くの制限を課した。表に出さなかったのは、重大な不正と言わざるを得ない。それは、性的虐待を犯した者が公の場で辱められ、屈辱を受けるべきだからではなく、虐待被害者たちに、教会の司牧者や他の当局者が自分たちの訴えを信じているのかどうか知る権利があり、必要があるからだ。

 

*性的虐待に関するすべての案件を完全な透明性をもって処理しない限り、信頼は回復しない

 

 性的虐待の罪を犯し、密かに処分された司教や司祭は他に何人いるのだろうか?そして、彼らから虐待された被害者のうち何人が「誰も自分の訴えを信じてくれない」という恐れから訴えることが難しい、と泣き寝入りさせられてているのだろうか?

 教皇フランシスコは自発教令などを通じて、「信者の信頼を裏切るこれらの犯罪を防止し、戦う」必要性について、多くの約束、多くの文書、および非常に強い言葉を出されている。だが、性的虐待被害者や関係者たちの信頼は、すでに裏切られている。そして、教皇、司教、その他の教会当局が、性的虐待に関するすべての案件を完全な透明性をもって処理し始めるまで、信頼が取り戻されることはない。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年10月6日

・レバノン戦争孤児支援で世界的名声を得た神父が、未成年性的虐待で司祭職はく奪(La Croix)

マンスール・ラバキー (Photo by PASCAL DELOCHE/PICTURE-ALLIANCE/GODONG/MAXPPPWorld-famous priest from Lebanon defrocked for abusing children

(2022.9.29 La Croix  Céline Hoyeau | Lebanon)

 戦争で荒廃したレバノンの再建を提唱し、戦争孤児のための施設建設などで世界的名声を得ていたレバノン出身のマロン派の司祭、マンスール・ラバキー(82)が「長期にわたって未成年者に性的虐待を働いた」として、司祭職をはく奪された。

 レバノンのマロン派カトリック総大司教・司教会議は9月27日、バチカン教理省が作成した解任命令に教皇フランシスコが署名された、と発表した。

 教理省はすでに2012年に、ラバキー神父が1976 年から 1997 年にかけて、「3 人の未成年者に対する性的虐待」する罪を犯した、と判断し、終生の祈りと痛悔を行うよう言い渡していた。だが、被害者たちは、この措置を不服として、司祭職の永久はく奪を求め続けてきた。

 そして昨年11月にフランスの刑事裁判所がラバキー神父に「未成年者たちに対する強姦と性的暴行」を働いたとして懲役15年の刑を言い渡し、それから1年弱でバチカンが、司祭職を解任する措置を決めたもの。

 有罪の対象となった犯罪行為は、1989年から1997年にかけてフランスのパリと北西部のドゥーブル・ラ・デリブランドでなされた性的虐待。当時、ラバキーはレバノン内戦で非難してきた若者たち、とくに孤児たちのための保護施設を運営しており、犯罪はそこで行われた。

  今回のバチカンの判断について、ラバキーの姪で、ラバキーから強姦と性的暴行の被害に遭い、勇気ある告発をした人々の一人、セレステ・アキキ女史は「フランスの裁判所が彼を有罪としなかったなら、バチカンは、司祭職のはく奪という厳しい措置は取らなかったでしょう。でもこの措置で、安堵以上の気持ちです」と語った。

 40年以上も、精神的な重荷を背負ってきた彼女は、過去を振り返り、被害を受けた当時、教会関係者に訴えようとしたが、10代の少女だった彼女は、「誰が私の言うこと信じてくれるだろうか」という不安が先に立って、できなかった。2011年、勇気を奮って、教会当局者の前で証言した時も「(世界的に高名な)彼に対して何もすることはできない。彼は触れられない」と言われ、気持ちが折れそうになった。

 それでも彼女には、同じように性的虐待の被害に遭い、放っておいてはいけない、良心に従って行動しようとする仲間がいた。そして、何年にもわたる誹謗中傷、脅迫などを受けながら苦労を重ね、ようやく、今回のバチカンの判断を勝ち取った。

 マロン派カトリック総大司教・司教会議は27日の発表で、ラバキー以外にも性的虐待で訴えられていたジョージ・バドルも司祭職をはく奪されたことを明らかにし、「今回の処分決定が、性的虐待の被害者たちと二人の司祭のために祈ります。今回の決定が、彼らの救いとなるように」と述べている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

 

 

2022年10月2日

・ノーベル平和賞受賞の東チモールの司教による性的虐待明らかに-バチカンは「処分済み」と

(2022.10.1 カトリック・あい)

 ノーベル平和賞受賞者の東チモールの司教が少年たちに性的虐待を繰り返してきたことが明らかになり、バチカン広報はこれを認めるとともに、同司教を懲戒処分とし、聖職者としての活動を制限していることを明らかにした。

バチカン、ティモールの告発後にノーベル賞受賞者を制裁

 性的虐待の事実を明らかにしたのは9月28日発行のオランダの週刊誌「De Groene Amsterdammer」。同誌によると、この司教は東チモールのカルロス・シメネス・ベロ司教(74)。サレジオ会士で、東チモールの独立に貢献し、独立以前の1996年にノーベル平和賞を受賞していたが、1980年代初めから90年代にかけて、首都ディリにある司教館などで、少年たちに性的虐待を行い、口封じのために現金を渡していた。

 当時14歳と16歳だった被害男性が証言し、「司教は極貧にあえぐ少年たちにひどいことをした」が、その権力と名声によって、「すぐに公けに訴え出ることはできなかった」とし、司教と教会に謝罪を求めている、という。また同誌によるとベロ司教は、司教になる以前も、1980年代にサレジオ会が運営する教育センターに勤務していた際、少年を虐待した、としている。

 この報道に対して、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は9月29日、声明を出し、バチカンで性的虐待問題を扱う教理省がすでに2019年に被害の申し立てを受け、東チモールなどでの未成年者との自発的接触を禁じるなどの制裁処分を行い、さらに昨年11月に制裁措置を強化している、と説明した。

 AP通信などによると、ベロ司教は54歳だった2002年にディリ教区の教区長を「精神的ストレスと健康不良」を理由に教皇に辞表を出して受理され、モザンビークに移り、司祭として働いた後、現在はポルトガルにいるといわれるが、サレジオ会のポルトガル管区事務所は彼の消息を把握していないというが、バチカンの報道官は、これにについてはコメントしていない。 (Credit: Neil Jacobs/AP.)

2022年10月1日

・教皇が教皇庁未成年者保護委員会のメンバーを刷新、男女同数にー「委員会そのものが”被害者の声”になる」とオマリー委員長

(2022.9.30  Vatican News)

   教皇フランシスコが9月30日、性的虐待などから子供たちを守るために教皇庁に設けている未成年者保護委員会のメンバーに新たに10人を任命した。委員長のショーン・パトリック・オマリー枢機卿はVatican Newsとの会見で、新たな使命として「地域社会の被害者の声」に耳を傾けることを強調している。

 同委員会は、先に教皇が実施した教皇庁の抜本的な組織改革で、教理省の委員会に位置付けられ、役割、権限が強化された。

 新任の10人のうち7人は女性、3人は男性。また再任された10人を合わせて20人では男女同数になる。地域別では、アジア/オセアニアとヨーロッパが各6人、南北アメリカ大陸が4人、アフリカから4人。また、司教が3人、女性修道者が3人、司祭が2人、一般信徒が10人、他のキリスト教会派が2人となった。

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 新体制での抱負についてオマリー委員長は、Vatican Newsの Christopher Wellsのインタビューで次のように語っている。

 

*バチカンに”保護の文化”を徹底する”模範”に

オマリー枢機卿: 教皇が始められたこの委員会は、これまでに大きく進化しました。そして教皇庁改革によって、委員会がもはや単なる独立機関ではなく、教皇庁の機関として活動することになり、教皇庁そのものの”保護の文化”を促進するという使命を遂行することになった。これは、私たちにとって、とても特別な機会を与えられたということです。

 私たちの存在が、聖座と教皇庁にとって、そして教会全体にとって、最高水準の「保護の模範」となるよう努めることが非常に重要であると感じています。この意味で、これまで教会内で保護を促進する努力の一部になれたことをうれしく思っています。

 教皇は、私たちに未成年者保護のガイドラインに関する新しい責任を与えられました。教皇は、私たちが世界の個々の司教協議会と従来以上に直接関わりを持ち、ガイドラインが順守される体制が整えられ、適切に実施されるように支援することを、望んでおられます。そして、現地の教区においてなされた虐待の訴えに関する報告が信頼でき、誰でもが入手可能となり、被害者を助けるものとなることを確実にするよう、希望されています。

 私たちは、世界の多くの地域で、このような教皇の希望に応じつことにできる人的、物的な資源が非常に不足し、これまでこの問題を十分に議論することがなかったのを知っています。ですから私たちにとっての課題は、そうした地域(の司教協議会、あるいは教区)と共に努力し、現地の人々に奉仕し、保護を進めることのできる人的、物的資源を見つけ、その種のセンターを作るのを助けることだ、と認識しています。

*教理省の組織の一部となって役割が明確になった

問:教皇庁改革で、委員会が教理省の組織の一部となったわけですが、実際に、委員会の仕事はどのように変わるのでしょうか?

オマリー枢機卿:私たちの委員会はこれまでも、教理省と協力してきました。発足当初から、委員会のメンバーの一人は教理省から出ています。また、委員会が個々の事件や、保護の全分野の法的問題への対処に関して、何の役割も持たないことを明確するよう努めてきました。

 今回の教皇庁組織改革で、教理省の機関として位置付けられたことで、委員会の役割、機能が明確に、つまり未成年者の保護と予防がバチカンの司法制度とどのように関係を持っているかを明確にすることになりました。そして、私たちの委員会の役割をよりよく定義し、教理省に組み込まれることになった今回の組織改革で、独自に、しかも同省の関係機関とどのように密接に働くことができるかを具体的に明確にするため、多くの対話を関係者と続けています。

問: 委員会をこれまでの基本的に独立した機関から、教理省の機関に代わることに、どのような意味があるのでしょう?

オマリー枢機卿:はっきりしているのは、教理省が、すべてのケースにおいて、未成年者の保護に最大の責任を持っているということです。ですから、教理省の担当者と密接に関係を持つことは重要です。連携がうまく進めば、私たちが彼らの仕事に司牧的な要素をもたらすのを助け、彼らの仕事は私たちが虐待の現実と世界中で起こっていることをより深く理解するのを助けることができるでしょう。

*虐待被害者と教会の指導者たちを結びつける

問: あなたは司牧的要素についておっしゃいましたが、虐待の被害者が教会の司牧的関心事の中心にあるのは明白です。委員会は、被害者と彼らの幸せが優先事項であり続けることを、どのように保証しようとしていますか?

オマリー枢機卿:委員会は発足当初から、虐待被害者とその両親をメンバーに入れています。そして今回の委員会のメンバー刷新後も、それは続いています。そして、委員会のメンバーは皆、自分の国の被害者のグループや個々の被害者と絶えず接触しています。

 私自身、何年にもわたって何百人もの犠牲者と会ってきましたが、それがとても重要であると感じています。教会の指導者教育の際に、私たちが常に強く求めるのは、司教や修道会の責任者が被害者と個人的に会い、彼らの経験を理解できるようにすることです。

 これは被害者と教会の指導者と結びつけるという、委員会の仕事の非常に重要な部分だったと思います。メンバー全員がとても気にかけていることです。私たち委員会そのものが、”被害者の声”になりたいのです。

 

 

*世界の司教協議会による被害者保護の体制整備を支援する

問:被害者の立場と彼らへの理解を優先事項として、そして教会の司牧面での関心事として、今後、委員会が新たに何に取り組もうとしていますか?委員長としてどのような仕事にとりかかっていますか?

オマリー枢機卿:先週、新メンバーたちとZoomミーティングを行いました。10月には、ここローマでメンバー全員の会議を開き、今後の課題について話し合い、教皇が私たちに与えてくださった新しい役割について検討する予定です。

 私たちは、委員会の仕事に、より多くの人的、物的資源を確保しようとしています。そして、教皇が望んでおられる、世界のすべての司教協議会が未成年虐待についてバチカンへの報告を確実に行えるようなセンターの設立のために、必要な人的、物的資源を確保できるような支援を、とくに発展途上地域の司教協議会に行えるようにしたい、と考えています。

 私がいつも言っているのは、「人々が即興で”演奏”すると、どんなに善意があっても、多くの間違いを犯すだろう」ということです。そして、間違いが、多くの苦しみを引き起こします。被害者の権利と求めに応えようとする場合、加害者、教会共同体、政府や自治体との関係も考慮する必要があります。被害者に対する保護・支援プログラムの効果的な実施にも、十分な教育と訓練が必要です。

 様々な課題とこなしていくことで、教会が子供や青少年にとって安全な場所となることができるのです。

 

 

*教会が信頼を回復し、若者たちにとって真に安全な場所となって、初めて福音宣教が可能になる

 

問: 個人的なことをお聞きします。あなたは40年近く司教として、そして16年にわたって枢機卿として働いておられます。あなたは、ご自分の教会における聖職者としての仕事の多くで、教会における聖職者の性的虐待に焦点を当ててきた、と言われました。あなたは聖職者としての仕事をどのようにして続けておられますか。あなたと同じような立場にあり、複雑な状況の中で難しい判断を下さねばならない女性と男性、特に指導的立場にある女性と男性に、どのような励ましの言葉をおかけになりますか?

オマリー枢機卿:私がしている仕事は容易なものではありませんが、私にとって一番重要な聖職者としての仕事だと確信しています。教会は福音を宣べ伝えるために存在していますが、人々が私たちを信頼しないなら、いったい、どのように福音を宣べ伝えることができるでしょう?マルティーニ(バチカンの改革派で、教皇候補にも挙げられたイタリアのイエズス会士、カルロ・マリア・マルティーニ枢機卿。ミラノ教区長の前にバチカンの聖書学院長、グレゴリアン大学学長を歴任。聖書学者、教育者としても知られ、聖書釈義から詩、祈りの手引きまで、数多くの著作を残し、2012年8月に85歳で亡くなった)は、イエスの優先事項について語る素晴らしい著作の中で、イエスがもっとも重視されたのは「憐れみ」だった、なぜなら、憐れみは福音宣教の基本であり、伝える相手に、あなたがたを愛している、ということを知ってもらう必要があるから、と指摘しています。

 フランシスコが教皇に就任された時の、聖ヨセフに関する説教はとても素晴らしいものでした。教皇は語られましたー「ヨセフのように、私たちは賜物を守らねばなりません。それが教会が果たすべき機能です」と。

 私たちは主からの賜物を守り、子供たちを守らねばなりません。そうすることで初めて、私たちは、信頼を得、人々に声を聴いてもらえるに値する存在となるのです。私たちが子供たちを確かに愛していること、教会が若者たちにとって最も安全な場所となることを希望し、その実現に努めているのだ、ということを、人々が理解して、初めて、福音宣教が可能となるのです。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月1日

・「不適切な行為はない、私を中傷する行為だ」クエレット枢機卿、訴えを否定する声明

 カナダでの女性に対する性的虐待で集団代表訴訟を起こされたバチカン・司教省長官のマーク・クエレット枢機卿が19日、声明を発表し、「性的に不適切な行為はしていない」とし、今後の裁判の行方次第では、虚偽の訴えと名誉棄損で逆告訴する用意のあることを明らかにした。‎

 クエレット枢機卿の声明は、バチカン広報省長官が、教皇はこの問題に関し、教会法に基づく捜査をしないと判断された、と発表した翌日に出された。‎

 AP通信によると、枢機卿は、集団代表訴訟で自身がケベック大司教当時の2010年にケベック市で行われた行事の場で、女性の背中に手を入れるなど、性的に不適切な行為をした訴えられているのに対して、声明で‎「彼女に対して不適切な振る舞いをしたとの指摘を、私は断固として否定する。こうした虚偽を拡散させることは、私を中傷する行為だ」と強く反論。この訴訟を受けた裁判が始まれば、真実が立証され、無実が認められるよう、積極的に参画していく」と言明している。‎

2022年8月21日

・教皇、クエレット枢機卿に対する教会法に基づく捜査せず、と判断

Cardinal Marc OuelletCardinal Marc Ouellet  (Vatican Media)

 バチカンの司教省長官、マーク・クエレット枢機卿に性的虐待を受けたとするカナダ人女性の訴えについて、教皇フランシスコは、予備捜査の結果を踏まえて、教会法に基づく捜査を行わないことを決めた。

 バチカン広報省のマッテオ・ブルーニ長官が18日の声明に明らかにしたもので、それによると、「女性”F”に関するクエレット枢機卿の性的虐待についての教会法に基づく捜査を開始するのは、根拠が不十分だ」と教皇は判断された、としている。

 枢機卿に対する訴えは先日、明るみに出たもので、10年以上前、枢機卿がカナダのケベック大司教時代に性的虐待がなされた、というもの。声明によると、女性からの訴えを受けて、教皇はジャック・セルべ神父に予備捜査を命じたが、同神父による報告では、クエレット枢機卿の性的虐待容疑について正式な捜査を始める根拠は見つからなかった、という。

 (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年8月19日

・バチカン司教省長官、カナダでの性的虐待集団代表訴訟で加害者リストに名前

 米国司教団のニュースサイトCNSが17日報じたところによると、聖職者による性的虐待の被害者101人がカナダ・ケベック大司教区を相手に集団代表訴訟を起こし、その訴訟で加害者リストにバチカン司教省長官のマルク・ウエレット枢機卿が載っていることが明らかになった。(ニュースの全文はCardinal Ouellet, Vatican official, among clergy accused of abuse in lawsuit – Catholic News Service

 枢機卿はケベック大司教だった2010年6月に、前教皇ベネディクト16世によって司教省長官に任命され、75歳の役職定年を超えた今も、教皇フランシスコの判断で役職が延長されている。2005年と2013年の教皇選挙の際には”候補者”の一人に挙がったこともある。

 集団代表訴訟は、米国などで採用されている訴訟方式の一つ。利害を共通にする多数の人の集団の1人または数人が,その集団の全員を代表して訴訟を起こすものだ。今回の訴訟は、「1940年から現在に至る期間に、教区の聖職者、あるいは修道者、教区スタッフ、一般信徒やボランティアによってなされた性的虐待の被害者すべてを代表する形で起こされ、今年5月19日付けでケベック州上級裁判所が事前審査で適正と判断していた。

 CNSが伝える裁判所に出された訴状によると、ウエレット枢機卿による問題行為は、司教長官に就任する前、ケベック大司教だった2008年8月に始まった。

 ある会合で、大司教区の職員として働いていた若い女性に後ろから近づき、肩や背中を必要に触りまくり、女性は「体が固まり、どうしていいかわからなくなった」。数か月後には、あるレセプションに出た枢機卿は、同じ女性に接吻したうえ、抱きしめて背中を撫でまわした。さらに一年以上たった2010年2月のあるパーティーで再会したこの女性に、「また接吻しても害はない」と言って迫り、背中から尻にかけて撫でまわした。ショックを受け、怖くなった女性は、以後、枢機卿と会う可能性のある会議などあらゆる機会を避けるようにした、という。

 女性は、2020年に開かれた性的虐待に関するワークショップの後で、「ウエレット枢機卿のとった行動は、合意のない性的接触であり、”性的攻撃”だったことが分かりました」とし、被害者としての自覚をもった。枢機卿のこのような行動は、この女性だけではないと思われる、と判断した。このことをケベック大司教区の幹部に伝え、大司教区の「未成年者および弱者保護のための委員会」から要請を受けた被害女性が2021年2月、教皇に直接、個人的な親書をメールで送った。これを受信したバチカンでは、教皇がこれを読み、ジャック・セリべ神父( Casa Balthasar霊性・識別研究所長)を担当者に選び、調査を命じている。‎

 集団代表訴訟の”加害者”リストには、1977年から1995年までケベック大司教区で働き、2001年に死亡したジャン=ポール・ラブリー補助司教も入っている。ケベック州のサン・ビクター・ド・ボースの神学校の指導者だった1968年に性的虐待をした、とされている。

 また、原告の代表者のうちの二人は、50年以上前に、教区司祭から性的虐待を受けた、といい、その司祭の一人は、虐待の訴えがあった後、「休暇」のために担当を外れ、後に他の教区に移動させられたが、それ以上の処罰はなかった。もう一人の司祭は、カトリック・アクションの指導司祭で、被害者が一緒に映画を見に出かけた際に、性的虐待を受けた、という。二人の司祭は訴状に、数回も名前が出ている。

 

2022年8月18日

・「複数の神父からパワハラ、PTSD発症」で裁判始まるー被告の長崎大司教区は全面否認

(2022.8.2 テレビ長崎)

 カトリック長崎大司教区の複数の神父からパワハラを受け、精神的被害を受けたとして、元職員が慰謝料などを求めている裁判が長崎地裁で始まり、 被告の長崎大司教区は事実関係について全面的に争う姿勢を示しました。

 訴えを起こしたのは、長崎大司教区で起きた性暴力や人権侵害の相談業務を行っていた長崎県内在住の元職員。 訴状によりますと、元職員は2017年から2020年までに長崎大司教区の複数の神父から業務を批判されたり、辞めさせると怒鳴られ、パワハラ行為によりPTSD ( 心的外傷後ストレス障害)を発症。カトリック長崎大司教区が安全配慮義務を怠ったとして、慰謝料など約5384万円の支払いを求めています。

 2日、長崎地裁で行われた第一回口頭弁論で、被告側は全面的に争う姿勢を示しました。 原告側の中鋪美香・弁護士「原告が主張している事実について、ほぼ全面的に否認している状態」とする一方、 被告である長崎大司教区の代理人弁護士は「裁判中なのでコメントは差し控える。これまで通り誠実に対応する」と語っている。次回は10月4日に行われる予定です。

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*(カトリック・あい)なお、長崎大司教区がこのほど発表した2021年度決算報告によると、経常支出の部の「諸委員会活動費」にある「子供と女性の人権相談室」の決算額はゼロ、となっている。この決算で見る限り、長崎大司教区では、同室の活動が停止していることになる。

 聖職者による未成年など信徒への性的虐待が世界の教会で深刻な問題となり、教皇フランシスコが被害者への救済、発生予防に徹底した対策を世界の全教区に求め、その一環として日本の教会も全教区に窓口である「子供と女性の人権相談室」を設けている。

 長崎大司教区は、先日、長崎地方裁判所での性的虐待裁判で賠償金支払い命じる判決を受け、さらに、今回、長崎大司教区で起きた性暴力や人権侵害の相談業務を行っていた元職員を原告とする裁判が始まった。そうした長崎大司教区での「子供と女性の人権相談室」の”支出ゼロ”は、何を物語るのだろうか。

 

(関連記事)長崎教区、今度は教区事務局の元職員に「パワハラでPTSD発症」で訴えられる

(2022.4.28 カトリック・あい)

 教区司祭の女性信者へのわいせつ行為に関連して、長崎地方裁判所から被害女性に対する損害賠償を命じる判決を受けたばかりのカトリック長崎教区が、今度は、この被害女性のケアや教区の2億5000万円にのぼる巨額損失発生問題などの対応に当たっていた同教区事務局の元職員から26日、「複数の司祭からパワハラを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した」として損害賠償を求める訴えを起こされた。長崎新聞など新聞、テレビ各社が27日までに報じた。

 長崎教区は、今回の損害賠償を求める提訴について、報道各社の「訴状が届いていないのでコメントできない」と答えているというが、間違っても”不都合な真実”から目を背け、”嵐”が去るまでだんまりを決めるような無責任な態度は許されまい。

 相次ぐ裁判がらみの不祥事に、2月の長崎地裁判決の翌日に着座したばかりの中村倫明・大司教が、どのように原告たちに誠実な対応を示し、大きく低下した信頼の回復に取り組むか注目される。

 報道によると、原告の代理人弁護士が26日の提訴後に会見し、原告について、この長崎教区事務局の元職員は、司祭などによる性的虐待や人権侵害などの信徒たちからの相談業務を担当していたが、複数の司祭からパワハラを繰り返し受け、PTSDを発症。2020年6月から休職を余儀なくされ、今年3月に退職したが、現在も就労可能な程度まで回復していない、という。

 原告は、弁護士を通じて、「宗教内部の特殊性を背景に、言葉にできないくらいの苦しみがあった。同じ痛みを抱えている人がいると思う。こういう立場になって初めて、被害者がいつもどれだけの思いで相談に来ていたか痛感した。一人でも多くの方々が被害者の方々と歩んでくだされば」と語っている。

 また弁護士は会見で、「宗教団体は信徒に対して聖職者に優位性があり、圧倒的な権威を持つ聖職者に盾つくことは難しい」「加害者、被害者双方の当事者がいる組織内で相談業務を担うこと自体が困難で、大司教区は担当者に精神的な圧力がかからないように配慮する義務があった」と説明している。

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 2019年2月に長崎教区の司祭の多くが参加した会合で、原告は、この無断流用問題の経緯を説明させられが、参加した司祭などから、「自分の思い通りになると思うなよ」「一信者のくせに」と罵声を浴びせられ、ある参加者が元職員を修道者と呼び間違えると、嘲笑さえ起き、精神的に追い込まれ、PTSDを発症した。しかも、こうした対応を問題とする関係者の指摘にも、教区側は聴く耳を持たず、さらにこの会合の議事録として配布された文書には、原告を誹謗中傷するような事実無根の言葉が記載され、心の傷を深めた、という。

 今回の提訴と、2月に損害賠償を命じる判決が出た原告のケースに共通するのは、教皇フランシスコが繰り返し、司教や司祭たちに強調されている、弱い人たちの側に立ち、寄り添う心の欠落ではなかろうか。そして教皇が最も嫌われる”聖職者主義”から未だに脱することが出来ずにいる、少なくない司教、司祭の実態ではないだろうか。どこの信徒が好き好んで、自分の属する教会を訴えるだろうか。

 訴えるだけでも、大変な勇気と犠牲が伴うし、長期にわたる公判に加わる心理的苦痛は想像を絶する。彼らをそのような事態に追い込む前に、教区司教も、関係司祭も、なぜ、彼らの訴えに真摯に耳を傾け、心から謝罪し、心身のケアに努めようとしなかったのか。

 長崎地裁の2月22日の、長崎教区に原告女性に対し損害賠償の支払いを命じる判決が出た後、すでに2か月が経過している。関係者への取材によると、長崎教区はこの判決を不服として控訴することはしない、と裁判所側に伝え、判決が確定している。

 だが、当事者の長崎教区からは、この判決に関していまだに、何の発表もなく、長年この問題を追い続けてきたジャーナリストの質問にも応じる気配すらない、という。このような態度からうかがえるのは、原告への思いやりも含めて、何の反省もしていない、ということではないだろうか。これが、”迷える羊たち”の司牧者の態度だろうか。

 長崎教区は、今回の損害賠償を求める提訴について、報道各社の「訴状が届いていないのでコメントできない」と答えているというが、これは、2月の長崎地裁の判決が出た時の答えと同じだ。

 2月の判決に納得できないのなら、堂々と控訴して、原告の主張に反論すればいいし、判決を受け入れるのなら、公に謝罪し、賠償を行なうだけでなく、長崎教区の信徒としての”復権”を含む心身のケアに努めるべきだろう。今回の提訴についても、教区側が誠実に対応し、過ちを認め、教区事務局への復職、精神的ケアを含め、女性を教会に改めて迎え入れるなどに努めれば、女性に判決までの苦しく長い道のりを歩ませずに済む可能性も生まれるはずだ。

 一連の長崎教区の対応は、同教区だけでなく、日本の教会の信頼を大きく傷つけている。真面目に教会を思い、信徒として日々を送っている人の間にも、司教、司祭の振る舞いに疑問をもち、それを見て見ぬふりをする自らの教区の聖職者たちにも批判的な目を向ける動きも出ている。もはや長崎教区だけで済む問題ではなくなっていることを、関係者は強く認識する必要があるだろう。

2022年8月8日

☩「聖職者の性的虐待に対する断固とした措置に妥協はない」ロイターとの会見で

Pope Francus during interview with ReutersPope Francus during interview with Reuters 

 そして、聖職者による性的虐待からの未成年者の保護に努める,バチカンの未成年者保護委員会のオマリー委員長(枢機卿)、スモール事務局長の「勇気ある活動」を讃えるとともに、今後も活動を支援していくことを確認された。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年7月10日

・米オルバニー教区、聖職者による性的虐待被害者補償の新制度(Crux)

(2022.6.30 Crux National Correspondent  John Lavenburg)  

ニューヨーク発=米ニューヨーク州・オルバニー教区のエドワード・シャーフェンバーガー司教が6月29日、聖職者の性的虐待の被害者に対する新補償制度“Victims/Survivors Path Forward Plan”を発表した。公正かつ公平な基準を設定し、金銭補償を最大限に引き上げるとともに、支払いを速やかにすることで、被害者からの訴訟の多発や教区の財政破綻を避けようとするものだ。

 オルバニー教区は、現在、400件以上の被害者からの訴訟を抱えているが、新制度は、訴訟を担当するニューヨーク州最高裁の監督のもとに策定された。発表に当たって、シャーフェンバーガー司教は「私は、虐待被害者、友人や家族、そして彼らの虐待の話から多くを学んだ。辛い経験を語り、ニューヨーク州児童被害者法が約束する正義が行われることを忍耐強く待っていてくださるすべての人々に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と述べている。

 また教区の新制度は、400件に上る訴訟案件を判決に至る前に裁判所での和解調停を推進することとし、和解調停には、教区代表、利害関係者、保険代理人、被害者が参加、教区、理解関係者、保険代理人の出資をもとに基金を設け、調停の乱用などを防ぐための和解調停の手続きを定める。調停参加者は、教会法で定めた手続きを通し、援助コーディネーターを伴い、教区の金銭負担により顧問弁護士と追加の支援を得ることができる。

 シャーフェンバーガー司教は、「新制度は、被害者、教区の双方にとって有益。被害者にとっては、基金をもとに公平な補償を受けることが可能となる。また、和解調停が成立することで、訴訟継続に伴う弁護士費用など裁判費用の負担増が避けられる一方、教区も、長引く訴訟に財政負担の増大、連邦破産法位の適用による教区財務の再建などの事態も回避可能になる」と説明している。

 ただし、29日にシャーフェンベーカー司教が発表したのは新制度の概要で、全容は近いうちに発表する、としている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2022年7月1日

・性的虐待の被害者が前教皇ベネディクト16世に損害賠償請求訴訟

(2022.6.22 Crux / Catholic News Service Contributor)

 ミュンヘン発—ドイツのカトリック系通信社KNAが22日までに伝えたところによると、ミュンヘン・フライジンク教区での聖職者による性的虐待に関連して、被害者が前教皇ベネディクト16世を訴えた。

 原告の訴訟理由は、約40年前に当時司祭だったペーター・Hから性的虐待を受けたが、当時ミュンヘン・フライジンク教区の大司教だった前教皇は、Hが性的虐待者として知られていたにもかかわらず、バイエルンのある小教区の主任司祭に任命した、それが虐待をうける原因となったので、損害賠償する必要がある、というもの。現地の公共放送Bayerischer Rundfunkは22日、「この訴訟は、前教皇が、この性的虐待事案について部分的な責任を負っていることを立証するのが狙い」と伝えた。

 元教皇は、これまで、Hに関する情報を受けていたことを否定し、その人事にも関与していなかった、と主張しているが、原告弁護士によると、Hが1970年代にエッセン教区で犯した未成年者虐待に関する教会法に基づく判決、および独自調査に基づいて訴訟に踏み切った、とし、この時の判決では当時の教会の担当幹部が義務違反をした、と主張。独自調査では、当時大司教だった前教皇が虐待事件に関して部分的に責任があることの証拠をつかんだ、としている。

 Hは1980年に治療のためにミュンヘンに送られ、これについては、ラッツィンガー大司教も同意していたが、その後まもなく、H.は教区の主任司祭として”復活”。Hは、1986年に数人の少年を性的に虐待したとして現地の刑事裁判所から執行猶予付きの判決を受けたにもかかわらず、再び小教区の主任司祭に任命され、仕事を続けたあと、 2010年に解任、今月に入って、本人の申し出により司祭を解雇されている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)南條)

2022年6月23日

・イタリアの性的虐待被害者たち「司教団の努力が足りない」と強く批判(Crux)

(2022.5.28 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen)

  イタリア司教協議会の新会長に就任したマッテオ・ズッピ枢機卿(Credit: AP Photo/Alessandra Tarantino.)

 ローマ発–イタリア司教協議会(CEI)は27日まで開いた定例総会で、新会長にボローニャ教区長で教皇フランシスコの”同盟者”であるマッテオ・ズッピ枢機卿を選出した。総会後に記者会見したズッピ新会長は、聖職者による性的虐待の事案に関する新たな報告の方針を発表したが、虐待被害者たちは、その内容について、強い不満を表明している。

 イタリアの唯一の性的虐待被害者の組織「Rete L’Abuso(被害者ネットワーク)」のフランチェスコ・ザナルディ代表は、「司教たちの示した対応は、”役立たず”で、情けない。極めて不満だ」と言明した。

 ここ何が月もの間、イタリアの性的虐待被害者たちとその支援団体は、イタリアの司教団と政府当局に、聖職者による性的虐待について独立調査委員会による全国調査を、過去数十年に遡って実施し、他の欧州諸国にならって包括的な報告にまとめるよう強く求めて来た。

 ズッピ新会長は、記者会見で、「聖職者による性的虐待に関する調査は独立の調査センターに分析などを任せ、最初の年次報告は11月発表を目指す」とする一方、「対象となる虐待の案件は、2020年から2021年までの過去2年間に司教団に報告されたもののみが対象になる」とし、その後の調査でも「教理省から得られるデータも2001年以降の者に限られている」と、被害者側が求めていた内容よりも大幅に限定されたものになるとの見通しを述べた。

 このような新会長の発言に対して、ザナルティ代表は、「他の欧州諸国の司教団の先例にならおうとしていない」と批判、何人かの被害者たちも「過去20年に遡っての調査は可能。これでは、多くの被害者が、自分たちが性的虐待を受けたことを認めてもらえないままになる」と強い不満を示した。

「Rete L’Abuso(被害者ネットワーク)」は、国内の被害者たちや関係団体に広く呼び掛け、インターネットを使って性的虐待の再発を防ぎ、被害者の意識を高める「#ItalyChurchToo」運動を始めており、公正で広範な調査の実施へ司教団にさらに求めていく方針だ。すでに、今回のCEIの総会以前に、イタリアの司教たちとバチカンの担当部署の長に対して公開書簡を送り、全国規模の調査、教区の資料の公開、全教区における被害者の訴えを聴くセンターの充実、などを要請している。

教皇は、この総会中に、被害者の訴えを聴くセンターをイタリアのすべての教区に設置し、教会の指導者たちの間での被害者保護の努力について年次監査を実施し、対策が適切にされているか、変える必要のあるものは何か、を明らかにし、説明責任を果たすことに努めるよう、司教団に対して求めた。

このような教皇の要請にもかかわらず、イタリアの司教団の対応は不十分だ、とザナルディと「#ItalyChurchToo」のメンバーは言う。「新会長に示した方針は、『国の調査は受けない』ということを確認し、国の司法機関のデータは使わず、教会がもっている役に立たないデータだけで対応することを明確にした。これでは、被害者にとっての正義は行われない」とするザナルディ代表は、「この問題に対処し、”クリーン”になろうとする世界の教会の流れに逆行することを表明するようなものだ」と反している。

 イタリアで被害者の声を聴くセンターを設置している教区は、全体の7割にとどまっているが、ズッピ新会長は、これを10割に上げるともに、被害者の声への対応や被害者との接見など、センター担当者はじめ若者たちと司牧活動をするすべての人々のための訓練課程の開設する方針を示し、また、CEIは、小児性愛や児童ポルノを取り締まる国の監視機関に客員として既に参加しているが、さらに協力を深めていく、とも説明した。

 この新会長の会見に先立って、記者会見した「#ItalyChurchToo」の関係者は、「私たちが先に出した公開書簡に対する回答は、これまでのところ、CEIからもバチカンの関係部局からもなされていない」と述べた。 ザナルディ代表はCruxの取材に対して、「独立委員会での調査が今後行われることは、期待できない。希望していたが、裏切られた」とする一方で、ズッピ新会長から面談の誘いがきており、可能な限り早く応じたい」とも語っている。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年5月29日

・アルゼンチンの修道女たちが大司教ら司祭3人を「性的差別による虐待」で提訴(Crux)

(2022.4.29 Crux ローマ支局長 イネス・サン・マルティン)

 ローマ発= 教皇フランシスコのお膝元、アルゼンチンの大司教区で、修道女たちのグループが大司教などを相手取り、司祭から性的差別による虐待を受けたとして提訴した。

 アルゼン​​チンでは今年3月に、サルタ州オランの裁判所が、グスタボ・ザンチェッタ元司教に対し、2人の元神学生に継続的な性的虐待を犯したとして、4年6か月の禁固刑を言い渡している。

 今回の提訴があったのは、同国のサルタ大司教区。教区長であるマリオ・カルグネッロ大司教に対して、跣足カルメル会の聖ベルナルド修道院所属の修道女たちによってなされた。

 訴えの相手は、カルグネッロ大司教とサント・ドミンゴ教区のマルティン・デ・エリザルデ引退司教とルシオ・アジャヤ神父の3人。サルタ大司教区は、この件について沈黙しており、カルグネッロ大司教も、メディアの会見要請に応じていない。

 修道院の弁護士団は、訴状は特定の犯罪に焦点を当てていないが、「大司教自身あるいは他者の助けを借りた威圧的な要求と振る舞いで特徴付けられる、優越的な立場、高慢、”男らしさ”からもたらされる(大司教と修道女の間の)長年にわたる込み入った関係がある」と説明している。

 一方で被告弁護団は、こうした訴えを全面否定し、教会法に定めた修道院が守るべき資質への不服従そのものである、と決めつけている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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2022年4月29日

・長崎教区、今度は教区事務局の元職員に「パワハラでPTSD発症」で訴えられる

(2022.4.28 カトリック・あい)

 教区司祭の女性信者へのわいせつ行為に関連して、長崎地方裁判所から被害女性に対する損害賠償を命じる判決を受けたばかりのカトリック長崎教区が、今度は、この被害女性のケアや教区の2億5000万円にのぼる巨額損失発生問題などの対応に当たっていた同教区事務局の元職員から26日、「複数の司祭からパワハラを受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した」として損害賠償を求める訴えを起こされた。長崎新聞など新聞、テレビ各社が27日までに報じた。

 長崎教区は、今回の損害賠償を求める提訴について、報道各社の「訴状が届いていないのでコメントできない」と答えているというが、間違っても”不都合な真実”から目を背け、”嵐”が去るまでだんまりを決めるような無責任な態度は許されまい。

 相次ぐ裁判がらみの不祥事に、2月の長崎地裁判決の翌日に着座したばかりの中村倫明・大司教が、どのように原告たちに誠実な対応を示し、大きく低下した信頼の回復に取り組むのか、注目される。

 報道によると、原告の代理人弁護士が26日の提訴後に会見し、原告について、この長崎教区事務局の元職員は、司祭などによる性的虐待や人権侵害などの信徒たちからの相談業務を担当していたが、複数の司祭からパワハラを繰り返し受け、PTSDを発症。2020年6月から休職を余儀なくされ、今年3月に退職したが、現在も就労可能な程度まで回復していない、という。

 原告は、弁護士を通じて、「宗教内部の特殊性を背景に、言葉にできないくらいの苦しみがあった。同じ痛みを抱えている人がいると思う。こういう立場になって初めて、被害者がいつもどれだけの思いで相談に来ていたか痛感した。一人でも多くの方々が被害者の方々と歩んでくだされば」と語っている。

 また弁護士は会見で、「宗教団体は信徒に対して聖職者に優位性があり、圧倒的な権威を持つ聖職者に盾つくことは難しい」「加害者、被害者双方の当事者がいる組織内で相談業務を担うこと自体が困難で、大司教区は担当者に精神的な圧力がかからないように配慮する義務があった」と説明している。

 2019年2月に長崎教区の司祭の多くが参加した会合で、当時、教区事務局の職員だった原告は、この無断流用問題の経緯を説明させられが、参加した司祭などから、「自分の思い通りになると思うなよ」「一信者のくせに」と罵声を浴びせられ、ある参加者が元職員を修道者と呼び間違えると、嘲笑さえ起き、精神的に追い込まれ、PTSDを発症した。しかも、こうした対応を問題とする関係者の指摘にも、教区側は聴く耳を持たず、さらにこの会合の議事録として配布された文書には、原告を誹謗中傷するような事実無根の言葉が記載され、心の傷を深めた、という。

 今回の提訴と、2月に損害賠償を命じる判決が出た女性のケースに共通するのは、教皇フランシスコが繰り返し、司教や司祭たちに強調されている、弱い人たちの側に立ち、寄り添う心の欠落ではなかろうか。そして教皇が最も嫌われる”聖職者主義”から未だに脱することが出来ずにいる、少なくない司教、司祭の実態ではないだろうか。どこの信徒が好き好んで、自分の属する教会を訴えるだろうか。

 訴えるだけでも、大変な勇気と犠牲が伴うし、長期にわたる公判に加わる心理的苦痛は想像を絶する。原告たちをそのような事態に追い込む前に、教区司教も、関係司祭も、なぜ、原告たちの訴えに真摯に耳を傾け、心から謝罪し、心身のケアに努めようとしなかったのか。

 長崎地裁の2月22日の、長崎教区に原告女性に対し損害賠償の支払いを命じる判決が出た後、すでに2か月が経過している。関係者への取材によると、長崎教区はこの判決を不服として控訴することはしない、と裁判所側に伝え、判決が確定している。だが、当事者の長崎教区からは、この判決に関していまだに、何の発表もなく、長年この問題を追い続けてきたジャーナリストの質問にも応じる気配すらない、という。このような態度からうかがえるのは、原告たちへの思いやりも含めて、何の反省もしていない、ということではないだろうか。これが、”迷える羊たち”の司牧者の態度だろうか。

 長崎教区は、今回の損害賠償を求める提訴について、報道各社の「訴状が届いていないのでコメントできない」と答えているというが、これは、2月の長崎地裁の判決が出た時の答えと同じだ。

 2月の判決に納得できないのなら、堂々と控訴して、原告の主張に反論すればいいし、判決を受け入れるのなら、公に謝罪し、賠償を行なうだけでなく、長崎教区の信徒としての”復権”を含む心身のケアに努めるべきだろう。今回の提訴についても、教区側が誠実に対応し、過ちを認め、教区事務局への復職、精神的ケアを含め、原告を教会に改めて迎え入れるなどに努めれば、原告に判決までの苦しく長い道のりを歩ませずに済む可能性も生まれるはずだ。

 一連の長崎教区の対応は、同教区だけでなく、日本の教会の信頼を大きく傷つけている。真面目に教会を思い、信徒として日々を送っている人の間にも、司教、司祭の振る舞いに疑問をもち、それを見て見ぬふりをする自らの教区の聖職者たちにも批判的な目を向ける動きも出ている。もはや長崎教区だけで済む問題ではなくなっていることを、関係者は強く認識する必要があるだろう。

 

 

 

 

 

2022年4月28日

・「性的虐待の深刻な現実に目覚めよ」バチカン専門家がイタリア司教団の対応遅れ批判(LaCroix)

(2022.3.29 La Croix  Loup Besmond de Senneville | Italy)

 イタリアのカトリック教会、そして一般社会は、未成年者の性的虐待の現実に立ち向かうのに時間がかかっている。そうした状況に変化の兆しがある、と多くの関係者が希望的観測をする中で、教会のリーダーである司教団には、対処への努力がまだ十分になされていない、という厳しい見方がある。

 その一人が、教皇フランシスコが2014年に設置された未成年者保護のための教皇庁委員会で委員を務めるErnesto Caffoだ。児童心理学者のCaffoは、子どもの権利を促進し子どもや青少年に対するあらゆる種類の虐待や暴力と戦うイタリアの非営利団体「SOS ! Telefono Azzurro」の代表を務め、欧州児童青年精神医学会(ESCAP)元会長、2008年から「国際行方不明および搾取された子供センター(ICMEC)」の理事を務めている。

以下は、La Croixとのインタビューでの一問一答。

La Croix:イタリアでは教会の未成年性的虐待に関する認識が高まっていますか?

Ernesto Caffo:そうですね。2年前、イタリアの司教協議会はこの問題について、ルールを全面的に改め、具体的な取り組みをコロナ禍の中でも進めていますが、主な対応が始まったのは、特に、ドイツとフランスで聖職者による性的虐待の報告が出た後でした。

 教会の内外から対応への圧力が強まっていますが、司教に”主権”があるため、教皇によって奨励されている具体策で足並みがなかなかそろいません。司教協議会のレベルで決定を下すだけでは十分ではない。一部の司教が積極的でも、他の司教はそれほど積極的ではありません。

 誰もが、性的虐待の被害者にもっと注意を払い、「敵」ではなく、「耳を傾けなければならない相手」と見るようにしなければなりません。被害者たちは自分たちを襲った悲劇に対し、黙ったままという経験を頻繁にしています。教皇フランシスコが強く促しておられるように、私たちは、犠牲者たちに中心的な役割を与えねばなりません。

La Croix:司教たちの中には、被害を受けた方々と過去に起来た悲劇を軽視することにつながるとしても、まず、再発を防ぐべきだ、と主張する方もいます。

Ernesto Caffo:その通りです。再発を防ぐための教育を含む措置を取るべきことは言うまでもありませんが、過去に何が起きたか理解するためにできる限りのことをする必要がある。その努力を通して、問題の透明性を確保し、将来に備える答えを見つけることができます。多くの被害者は、自分の受けた悲劇に対する答えを求めています。それは、彼らがこれまで、訴えを、受け入れてもらったり、聴いてもらったりする経験がなかったからです。

La Croix:司教たちは過去の性的虐待被害者との和解の重要性を認識していますか?

Ernesto Caffo:多くの司教は、そうです。しかし、司教たちが皆、”防御的”な態度よりも”建設的”な態度をとるよう促すために、この動きを増幅する必要があります。司教たちは、性的虐待の責任を特定した後、現実を直視し、何が起きたかを理解し、すべての側面を分析し、そこから学ばねばなりません。

La Croix:イタリアの司教たちは教会における未成年性的虐待に関する説明に着手すべきでしょうか?

Ernesto Caffo:イタリアは、性的だけでなく、教会に限らない、あらゆる形の虐待に対する取り組みを行なう必要があります。性的虐待はイタリア社会全体で、あらゆる分野で、そして長い間、問題となってきたことから、幅広い取り組みが必要です。ですから、調査を命じる責任は政府または議会にあります。その調査の一部として、教会は自分の範囲の中で、恐れと抵抗を排除して、調査を行わねばなりません。

La Croix:政府・議会と教会の二重の取り組みは可能な限り早期に始めるべきですが、イタリアの国民はその用意がありますか?

Ernesto Caffo:ごく少数の人々は、多くの賛同者を得ないまま、何年もこの問題について話し合ってきました。それが国民の間、教会関係者の間になかなか広がらないのは、性的虐待の現実を直視することを望まないイタリアの文化特有の事情があるからです。専門家の警告にもかかわらず、性に関連するすべての問題は、強い抵抗を引き起こします。これは、メディアによって示されたこの問題への関心の低さに反映されています。

 最近、スペインの司教たちに対応を促す調査報告書が出ましたが、イタリアでは想像できないような内容でした。性的虐待はあたかも目に見えないかのようです。この文脈で、教会の役割は、この重大な問題を最前線に持ってくることです。私たちは皆、性的虐問題に,目を覚まさねばなりません。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年4月2日