・バチカン司教省長官、カナダでの性的虐待集団代表訴訟で加害者リストに名前

 米国司教団のニュースサイトCNSが17日報じたところによると、聖職者による性的虐待の被害者101人がカナダ・ケベック大司教区を相手に集団代表訴訟を起こし、その訴訟で加害者リストにバチカン司教省長官のマルク・ウエレット枢機卿が載っていることが明らかになった。(ニュースの全文はCardinal Ouellet, Vatican official, among clergy accused of abuse in lawsuit – Catholic News Service

 枢機卿はケベック大司教だった2010年6月に、前教皇ベネディクト16世によって司教省長官に任命され、75歳の役職定年を超えた今も、教皇フランシスコの判断で役職が延長されている。2005年と2013年の教皇選挙の際には”候補者”の一人に挙がったこともある。

 集団代表訴訟は、米国などで採用されている訴訟方式の一つ。利害を共通にする多数の人の集団の1人または数人が,その集団の全員を代表して訴訟を起こすものだ。今回の訴訟は、「1940年から現在に至る期間に、教区の聖職者、あるいは修道者、教区スタッフ、一般信徒やボランティアによってなされた性的虐待の被害者すべてを代表する形で起こされ、今年5月19日付けでケベック州上級裁判所が事前審査で適正と判断していた。

 CNSが伝える裁判所に出された訴状によると、ウエレット枢機卿による問題行為は、司教長官に就任する前、ケベック大司教だった2008年8月に始まった。

 ある会合で、大司教区の職員として働いていた若い女性に後ろから近づき、肩や背中を必要に触りまくり、女性は「体が固まり、どうしていいかわからなくなった」。数か月後には、あるレセプションに出た枢機卿は、同じ女性に接吻したうえ、抱きしめて背中を撫でまわした。さらに一年以上たった2010年2月のあるパーティーで再会したこの女性に、「また接吻しても害はない」と言って迫り、背中から尻にかけて撫でまわした。ショックを受け、怖くなった女性は、以後、枢機卿と会う可能性のある会議などあらゆる機会を避けるようにした、という。

 女性は、2020年に開かれた性的虐待に関するワークショップの後で、「ウエレット枢機卿のとった行動は、合意のない性的接触であり、”性的攻撃”だったことが分かりました」とし、被害者としての自覚をもった。枢機卿のこのような行動は、この女性だけではないと思われる、と判断した。このことをケベック大司教区の幹部に伝え、大司教区の「未成年者および弱者保護のための委員会」から要請を受けた被害女性が2021年2月、教皇に直接、個人的な親書をメールで送った。これを受信したバチカンでは、教皇がこれを読み、ジャック・セリべ神父( Casa Balthasar霊性・識別研究所長)を担当者に選び、調査を命じている。‎

 集団代表訴訟の”加害者”リストには、1977年から1995年までケベック大司教区で働き、2001年に死亡したジャン=ポール・ラブリー補助司教も入っている。ケベック州のサン・ビクター・ド・ボースの神学校の指導者だった1968年に性的虐待をした、とされている。

 また、原告の代表者のうちの二人は、50年以上前に、教区司祭から性的虐待を受けた、といい、その司祭の一人は、虐待の訴えがあった後、「休暇」のために担当を外れ、後に他の教区に移動させられたが、それ以上の処罰はなかった。もう一人の司祭は、カトリック・アクションの指導司祭で、被害者が一緒に映画を見に出かけた際に、性的虐待を受けた、という。二人の司祭は訴状に、数回も名前が出ている。

 

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2022年8月18日