・「性的虐待の深刻な現実に目覚めよ」バチカン専門家がイタリア司教団の対応遅れ批判(LaCroix)

(2022.3.29 La Croix  Loup Besmond de Senneville | Italy)

 イタリアのカトリック教会、そして一般社会は、未成年者の性的虐待の現実に立ち向かうのに時間がかかっている。そうした状況に変化の兆しがある、と多くの関係者が希望的観測をする中で、教会のリーダーである司教団には、対処への努力がまだ十分になされていない、という厳しい見方がある。

 その一人が、教皇フランシスコが2014年に設置された未成年者保護のための教皇庁委員会で委員を務めるErnesto Caffoだ。児童心理学者のCaffoは、子どもの権利を促進し子どもや青少年に対するあらゆる種類の虐待や暴力と戦うイタリアの非営利団体「SOS ! Telefono Azzurro」の代表を務め、欧州児童青年精神医学会(ESCAP)元会長、2008年から「国際行方不明および搾取された子供センター(ICMEC)」の理事を務めている。

以下は、La Croixとのインタビューでの一問一答。

La Croix:イタリアでは教会の未成年性的虐待に関する認識が高まっていますか?

Ernesto Caffo:そうですね。2年前、イタリアの司教協議会はこの問題について、ルールを全面的に改め、具体的な取り組みをコロナ禍の中でも進めていますが、主な対応が始まったのは、特に、ドイツとフランスで聖職者による性的虐待の報告が出た後でした。

 教会の内外から対応への圧力が強まっていますが、司教に”主権”があるため、教皇によって奨励されている具体策で足並みがなかなかそろいません。司教協議会のレベルで決定を下すだけでは十分ではない。一部の司教が積極的でも、他の司教はそれほど積極的ではありません。

 誰もが、性的虐待の被害者にもっと注意を払い、「敵」ではなく、「耳を傾けなければならない相手」と見るようにしなければなりません。被害者たちは自分たちを襲った悲劇に対し、黙ったままという経験を頻繁にしています。教皇フランシスコが強く促しておられるように、私たちは、犠牲者たちに中心的な役割を与えねばなりません。

La Croix:司教たちの中には、被害を受けた方々と過去に起来た悲劇を軽視することにつながるとしても、まず、再発を防ぐべきだ、と主張する方もいます。

Ernesto Caffo:その通りです。再発を防ぐための教育を含む措置を取るべきことは言うまでもありませんが、過去に何が起きたか理解するためにできる限りのことをする必要がある。その努力を通して、問題の透明性を確保し、将来に備える答えを見つけることができます。多くの被害者は、自分の受けた悲劇に対する答えを求めています。それは、彼らがこれまで、訴えを、受け入れてもらったり、聴いてもらったりする経験がなかったからです。

La Croix:司教たちは過去の性的虐待被害者との和解の重要性を認識していますか?

Ernesto Caffo:多くの司教は、そうです。しかし、司教たちが皆、”防御的”な態度よりも”建設的”な態度をとるよう促すために、この動きを増幅する必要があります。司教たちは、性的虐待の責任を特定した後、現実を直視し、何が起きたかを理解し、すべての側面を分析し、そこから学ばねばなりません。

La Croix:イタリアの司教たちは教会における未成年性的虐待に関する説明に着手すべきでしょうか?

Ernesto Caffo:イタリアは、性的だけでなく、教会に限らない、あらゆる形の虐待に対する取り組みを行なう必要があります。性的虐待はイタリア社会全体で、あらゆる分野で、そして長い間、問題となってきたことから、幅広い取り組みが必要です。ですから、調査を命じる責任は政府または議会にあります。その調査の一部として、教会は自分の範囲の中で、恐れと抵抗を排除して、調査を行わねばなりません。

La Croix:政府・議会と教会の二重の取り組みは可能な限り早期に始めるべきですが、イタリアの国民はその用意がありますか?

Ernesto Caffo:ごく少数の人々は、多くの賛同者を得ないまま、何年もこの問題について話し合ってきました。それが国民の間、教会関係者の間になかなか広がらないのは、性的虐待の現実を直視することを望まないイタリアの文化特有の事情があるからです。専門家の警告にもかかわらず、性に関連するすべての問題は、強い抵抗を引き起こします。これは、メディアによって示されたこの問題への関心の低さに反映されています。

 最近、スペインの司教たちに対応を促す調査報告書が出ましたが、イタリアでは想像できないような内容でした。性的虐待はあたかも目に見えないかのようです。この文脈で、教会の役割は、この重大な問題を最前線に持ってくることです。私たちは皆、性的虐問題に,目を覚まさねばなりません。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年4月2日