(2022.6.30 Crux National Correspondent John Lavenburg)
ニューヨーク発=米ニューヨーク州・オルバニー教区のエドワード・シャーフェンバーガー司教が6月29日、聖職者の性的虐待の被害者に対する新補償制度“Victims/Survivors Path Forward Plan”を発表した。公正かつ公平な基準を設定し、金銭補償を最大限に引き上げるとともに、支払いを速やかにすることで、被害者からの訴訟の多発や教区の財政破綻を避けようとするものだ。
オルバニー教区は、現在、400件以上の被害者からの訴訟を抱えているが、新制度は、訴訟を担当するニューヨーク州最高裁の監督のもとに策定された。発表に当たって、シャーフェンバーガー司教は「私は、虐待被害者、友人や家族、そして彼らの虐待の話から多くを学んだ。辛い経験を語り、ニューヨーク州児童被害者法が約束する正義が行われることを忍耐強く待っていてくださるすべての人々に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と述べている。
ニューヨーク州児童被害者法は、2019年に施行され、検察官は、被害者が28歳になるまで刑法に基づく起訴ができ、被害者は55歳になるまで起訴に持ち込むことができる。時効になった古い案件も、改めて起訴することが可能だ。時効は2021年8月に廃止された。
また教区の新制度は、400件に上る訴訟案件を判決に至る前に裁判所での和解調停を推進することとし、和解調停には、教区代表、利害関係者、保険代理人、被害者が参加、教区、理解関係者、保険代理人の出資をもとに基金を設け、調停の乱用などを防ぐための和解調停の手続きを定める。調停参加者は、教会法で定めた手続きを通し、援助コーディネーターを伴い、教区の金銭負担により顧問弁護士と追加の支援を得ることができる。
シャーフェンバーガー司教は、「新制度は、被害者、教区の双方にとって有益。被害者にとっては、基金をもとに公平な補償を受けることが可能となる。また、和解調停が成立することで、訴訟継続に伴う弁護士費用など裁判費用の負担増が避けられる一方、教区も、長引く訴訟に財政負担の増大、連邦破産法位の適用による教区財務の再建などの事態も回避可能になる」と説明している。
ただし、29日にシャーフェンベーカー司教が発表したのは新制度の概要で、全容は近いうちに発表する、としている。
「教区の長期にわたる訴訟や破産という重い負担を負うことに対処する新制度は、財政問題を通し、関心を持つ人々に癒しの対話の道を開くもの。この新制度が、公平な者であり、すべての被害者を平等に扱う者となる、と信じている」とする一方、「経済的な援助や被害の回復だけでは、どの被害者の感情的、精神的、人間関係の傷に対応することができないことも、理解している」と強調。
「償いの一歩は、すべての教会で児童保護の強力なプログラムの実施、そのための、性的虐待の疑いのある案件の特定、報告が的確にできるための担当者の訓練と権限の付与です。さらに、努めるべきは、ケアを求める被害者と関係者に、司牧的、霊的な癒しをする選択肢の多様かです」
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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