・バチカンは、中国政府・共産党が拘禁中の司教たちの解放を”暫定合意”再延長の必要条件とするか(BW)

    拘禁中の司教たちの解放を中国との”暫定合意”を更新する前提条件にすることによってのみ、バチカンは中国における高位聖職者の受難を終わらせることができる。

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意は、2020年10月に2年延長され、この10月に延長期限が切れる。 バチカンは再延長に合意するのだろうか? 中国の信徒たちは、「再更新が中国政府・共産党にとって最良の選択」であることを疑わないが、バチカンにとってもそうなのか?

Bishop Cui Tai. From Weibo.

 Bitter Winterの取材に答えたある信徒は、政府・党が管理・統制する「中国天主愛国協会」の”地上教会”と、同協会に属することを拒否する”地下教会”でなく、少なくとも”理論上”は一つのカトリック教会となっていることを、評価した。

 ”暫定合意”によって、「愛国協会の教会でミサにでることに、罪の意識を感じることが無くなった」というのだ。

 しかし、大多数の信徒は、”暫定合意”そのものに不満を持っている、あるいは”暫定合意”がもたらしている”結果”に失望しているのが実情だろう。中国で、政府・共産党の介入を受けずに世論調査を実施するのは不可能だが、信徒たちの行動を見ればわかる。

 ”地下教会”に通っていた人々の中に、”暫定合意”でバチカンが”地上教会”を認めることになったから、と愛国協会に所属する司教に従う信徒は、ほとんど見当たらない。”暫定合意”がもたらした混乱の中で、多くの信徒が”地上””地下”どちらの教会に行くのを止めた。

 Bitter Winterはまた、何十人もの司祭や信徒から話を聴いたが、彼らは教皇とバチカンへの敬意を持ちながら、”暫定合意”はバチカンのミスリードであり、中国政府・党を利するだけになっている、と判断している。

 そうした彼らが注目しているのは、”暫定合意”の再延長を狙う中国政府・共産党の、逮捕・拘禁中の”地下教会”の司教たちの扱いだ。その一人が、Bitter Winterがこれまでも取り上げている河南省新郷教区のヨゼフ・司教。昨年5月に逮捕されたが、その後の所在は不明のまま、1年が過ぎている。信頼できる筋によると、バチカンが彼の解放を求めたが、中国政府・共産党からは、何の対応も引き出せていない、という。

 中国の信徒の間で最も関心がもたれているのは、河北省宣化県の共同司教を務めていたアウグスティヌス崔泰司教(写真上)の扱いだ。 72歳の崔泰司教は、旧正月やその他の時期に数日間ずつ一時釈放されたが、それ以外は、2007年の逮捕・拘禁から15年も刑務所に入れられている。一時釈放の最長は 2020年1月から6月まで半年間だったが、再逮捕され、その後、どこに拘禁されれているのか不明のままだ。

 

Hong Kong’s Cardinal Zen (himself arrested in May, then released on bail) holding a sign calling for the liberation of Bishop Cui Tai. From Facebook.Hong Kong’s Cardinal Zen (himself arrested in May, then released on bail) holding a sign calling for the liberation of Bishop Cui Tai. From Facebook.

 崔泰司教は、バチカンによって任命されたが愛国協会への参加を拒否する、いわゆる”良心的兵役拒否者”の一人だ。

 政府・党から、「愛国協会に参加していなくても、バチカンと繋がっている」と信徒たちに語った、と非難されているが、彼が語っているのは事実。バチカンは以前から、「”良心的拒否”を奨励しないが、カトリック教徒としての誠意をもって拒否することは尊重すべきだ」という見解を公けにしている。

 崔泰司教は多くの信徒から支持されている聖職者であり、彼のが拘禁され続けていることは、バチカンにとって、計り知れない不祥事だ。信頼性の高い情報によると、司教は、愛国協会への参加強制を頑強に拒んでいるため、繰り返し拷問を受けている、という。

 崔泰司教が苦難にあり続けていることは、2018年の”暫定合意”に問題があることを証明している。多くの中国のカトリック信者は、張維柱・司教の解放に失敗したバチカンが今、崔泰司教の釈放も静かに求めている、と期待を込めて推測している。

 だが、「求める」だけでは十分でない。崔泰司教を含む”良心的兵役拒否司教”の釈放を、”暫定合意”再延長の前提条件とすべきだ。そうしなければ、司教たちは拘禁され続け、拷問を受け続けることになる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2022年6月25日

・天安門事件から33年ー香港、カトリック教会ついに追悼ミサも自粛

(写真は2019年6月4日に香港のビクトリア・パークで開かれた天安門事件30周年を記念する追悼集会=shutterstock.com photo)

 

(2022.6.5 カトリック・あい)

 中国政府・共産党が民主化要求運動を武力弾圧した天安門事件から6月4日で33年を迎えたが、香港では、追悼しようとする住民を、一昨年に施行した国家安全維持法(国安法)をもとに排除しようとする当局は警官隊を動員して排除した。

現地メディアによると、多数の住民が連行され、国安法施行後も、昨年まで犠牲者追悼ミサを続けてきたカトリック香港教区の各教会もミサ自粛に追い込まれた。

 さらに、昨年も続いて来たカトリック教会の追悼ミサさえ行われなくなったことで、公の場で犠牲者を悼む「自由」は、中国本土はもとより香港でも完全に過去のものとなった。

 追悼ミサの企画者の1人だった香港カトリック学生連盟の指導司祭、マーチン・イップ神父はフランスの通信社AFPの取材に対して「”香港の法律”に違反したくない、というのが私たちの出した結論です」と説明した。

 追悼ミサ自粛を判断せざるを得なくなった背景には、国安法をもとにした当局の規制が激しさを加えていることがある。

 香港では、国安法施行まで毎年、6月4日に犠牲者追悼集会が、年によっては十数万人を集めて開かれていたが、一昨年に施行された国安法をもとに、集会を主催してきた民主派団体「香港市民支援愛国民主運動連合会」が解散させられ、昨年から集会は中止。

 指導者たちは「国家転覆を狙う外国勢力の代理人」として逮捕、起訴。関連のウエブサイトやソーシャルメディアのアカウントも閉鎖され、香港の六つの大学にあった天安門事件記念碑も撤去された。

 さらに、民主化運動の精神的支柱となって来たカトリック香港教区の元教区長の陳日君・枢機卿がこのほど当局に逮捕、起訴されたことも、追悼ミサ断念の大きな動機となったと思われる。

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 (AFP Photo)

 AFPによると、6つの大学に立てられていた記念碑のうち、香港大学(HKU)の「恥の柱」はデンマークの芸術家イェンスガルスキオによる高さ8メートルの彫刻だが、鉄橋された後、HKUが所有する田舎の土地に残されている、という。 嶺南大学では、芸術家の陳偉明による壁のレリーフが地下貯蔵室に収容され、 香港中文大学の「民主の女神」像は、秘密の「安全な場所」に置かれている、という。

 各大学の構内に像が置かれた場所は、小石の形をした椅子と鉢植えの花が置かれた新しい庭に変えられ、キャンパスから”天安門”の痕跡を消し去る作業はさらに進んでいる。今年の初め、HKUのキャンパスで塗装された「6月4日」のスローガンをセメントで塗り消され、市内の公共図書館では、天安門関係の書籍の貸し出しが規制されている。

 

2022年6月5日

・陳枢機卿、香港裁判所での予審の後のミサで「教会で”殉教”は普通のこと、信仰を貫くために覚悟を」

Catholic Cardinal Joseph Zen leaves after an appearance at a court in Hong Kong as he was charged in relation to their past fundraising for activists, Tuesday, May 24, 2022. (Credit: Kin Cheung/AP)

 5人の被告たち全員が容疑を否認、全面無罪を主張したが、23日は、まだ裁判の始まりであり、法廷闘争は長くなると予想されている。実質的な審理は9月19日から開始されるが、AsiaNewsによれば、彼らが国家の安全保障上の脅威ではない、と判断されれば、最高1750ドルの罰金刑にとどめられる可能性もある。

 23日の初公判には、イタリアやドイツ、フランス、スウェーデンの外交官が出席し、陳枢機卿の裁判と香港国家安全維持法の裁判所と当局による扱いに強い関心を示している。

 一方、イエズス会士のチャウ・シンチー司教率いるカトリック香港教区は、この日、声明を発表し、「裁判の動きを注意深く見守っていく」としたうえで、 「陳枢機卿はいつの私たちの祈りの中にある。すべての人に教会のために祈ることを勧める」と信徒たちに呼びかけた

 また陳枢機卿は、西九龍法院を出た後、西湾河の聖十字架教会でミサを奉げ、キリスト教徒の助け、聖母マリア、上海の佘山(シェシャン)の聖母の執り成しを願った。UCANewsによると、枢機卿は、直接、自らの逮捕などには言及を避けつつ、ミサそのものは、「中国政府・共産党の支配に抵抗する”地下教会”と政府・党公認の『中国天主愛国協会』に属する教会とに分裂している中国の教会」のために捧げられた。

 そしてミサの説教で、陳枢機卿は、中国国内の司教選任に関するバチカンと中国の暫定合意について改めて批判、「善意でなされたものではあるが、”賢明”ではない」と述べた。

 そしてこれと関連して、「”地上教会”と”地上教会”を一つにすることは極めて望ましいことですが、まだその機は熟していないように思われます」と語り、ミサに参加した約300人の信徒たちに、「自由を妨げられ、今日のミサに参加できない私たちの兄弟姉妹」のために祈るよう勧めた。

 さらに、枢機卿は、今後、香港の教会にはさらに困難な時期が来る可能性を暗示しつつ、「私たちの教会では『殉教』は普通のこと… 私たちにとって、そうする必要はないかも知れませんが、信仰への忠誠を貫くために苦痛に耐え、自分自身を堅固にする必要があるかもしれません」と、信仰を守る心構えを説いた。

 陳枢機卿は、バチカンと中国の暫定合意について、それが発表された2018年秋以来、「中国に関す無知の産物」だと、世界のカトリックの高位聖職者の中で最も厳しい批判を続けてきた。今も、「暫定合意は、中国当局が進めている教会や宗教団体の活動への規制、迫害を正当化するために、利用されており、とくに”地下教会”の司教、司祭、信徒はその標的にされている」と主張している。

 非難の矛先は、バチカンのこの問題の直接の責任者であるパロリン国務長官にも向けられていたが、枢機卿逮捕の後、国務長官は、逮捕は「暫定合意ー中国共産党幹部との関係を作る”小さな機会の窓”を危険にさらす可能性がある」と警告。さらに「強く希望するのは、すでに十分複雑で容易でない対話の歩みをさらに面倒なことにしないことだ」と述べている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年5月26日

・陳枢機卿逮捕で緊張するバチカン・中国関係-教皇のメッセージは(LaCroix)

( 2022.5.24 LaCroix  Loup Besmond de Senneville | Vatican City)

 4月下旬のある午後、ローマのティベル島にある聖バルトロメオ大聖堂で、明の時代に中国で宣教活動を行ったイエズス会士、マテオ・リッチの友人、明代の著名な学者でキリスト教徒の徐光啓に関する新刊の発表会が開かれ、ジャーナリストと外交官たちが集まった。関係者の間で多くの議論を呼んだのは、その集まりの最前列に座ったのが、駐イタリア・中国大使館の代表者だったことである。中国はバチカンと外交関係を持っていない。

 そして5月12日、 香港で、中国政府・共産党による直接、間接の民主勢力弾圧に強く抗議してきた陳日君・枢機卿が、当局に逮捕された。枢機卿は間もなく保釈されたものの、犯罪者として法廷に立たされる。このことは、バチカンで極めて深刻に受け止められ、関係者の間に衝撃波が走った。枢機卿逮捕は、カトリック教会に対してだけでなく、枢機卿本人に対するメッセージと受け取られた。

 バチカンと中国の話し合いは中断されている。そして、もう一つの難題がテーブルの上に載せられた。バチカンと中国は2018年秋に、中国国内の司教選任で暫定合意し、多くの教会関係者から批判を浴びつつ、2年後に更新したが、来年10月に延長期限が切れる。バチカンは再延長を望みつつ、合意の内容に変更を加えることを考えて言われるというが、中国政府は、新型コロナウイルス感染の再拡大を理由に、予定していた話し合いを先延ばしにしている。

 そして、バチカンのある関係者は「バチカン側には、30年の努力が失敗に終わるのではないか、という深刻な懸念がある」とし、中国問題に精通しているある外交官は「バチカンは、中国を失うことはできない」とバチカン関係者の心理を説明する。

*ベネディクト15世の1919年の使徒的書簡

 徐光啓に関する新刊発表会には、講演者の1人として、福音宣教省長官のアントニオ・タグル枢機卿が参加した。枢機卿の講演はもちろん徐光啓をテーマにしたものだったが、現在の中国指導者に対するメッセージを含めだものとなった。

 講演の中で彼は、ベネディクト15世が宣教活動を復活させるために1919年に出した使徒的書簡「Maximumillud」を引用して、「福音宣教活動は、”西欧教会”の延長として行われたのではなく、普遍的な教会の表現なのです」と述べ、さらに、「福音宣教」と「西欧の植民地主義の関心」は全く別問題だということを強調した。

 そして、1659年にバチカンが出した指針を取り上げて、「フランス、スペイン、イタリア、あるいは欧州の他の国を中国に”移植”するよりも馬鹿げたことがあるでしょうか?」と問いかけ、「他地域にもたらすべきは、そのようなことではありません。いかなる人たちの儀礼や慣習を否定したり、害したりせず、それを守り、固める『信仰」です」と訴えた。

 中国との関係は、バチカン外交にとって、現在も優先事項であり、教皇フランシスコが直接、指揮を執っている。

 22日の正午の祈りの際、教皇は、中国のカトリック教徒に対する霊的な寄り添いを改めて確認され、「中国の信徒と司牧者たちの、時として”複雑”な生活と出来事を関心をもって見守り、毎日、彼らのために祈っています」と話され、「中国の教会が自由と平穏のうちに、世界の普遍教会との具体的な一致を生き、福音を皆に告げるその使命を行い、社会の精神的・物的発展に前向きな寄与ができるように祈りましょう」と世界のすべての信徒に促された。

 慎重な言い回しで、北京の当局者たちに対して、ご自身が常に重大な関心を持っていることを、はっきりと伝えた言葉だった。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2022年5月26日

☩24日は中国の信徒が崇敬する「扶助者聖母マリア」の日ー教皇、彼らのために祈る

 「中国の信徒と司牧者たちの、時として”複雑”な生活と出来事を関心をもって見守り、祈っている」と教皇

(2022.5.22 バチカン放送)

 5月24日は教会暦で「扶助者聖母マリア」の日、中国では、上海の佘山(シェシャン)の巡礼聖堂をはじめ、中国の多くの教会や家々で「扶助者聖母マリア」が保護者として崇敬されている。

 教皇フランシスコは22日の正午の祈りの説教の後で、このことに言及され、中国のカトリック信徒、司牧者たちに霊的な寄り添いを表明された。

 中国の信徒たちが「キリスト信者の助け手なる聖母」に深い信心を持っていることを思い起こされた教皇は、彼らへの霊的な寄り添いを改めて確認され、「中国の信徒と司牧者たちの、時として”複雑”な生活と出来事を関心をもって見守り、毎日、彼らのために祈っています」と話された。

 そして、「中国の教会が自由と平穏のうちに、世界の普遍教会との具体的な一致を生き、福音を皆に告げるその使命を行い、社会の精神的・物的発展に前向きな寄与ができるように祈りましょう」と世界のすべての信徒に促された。

(編集「カトリック・あい」)

2022年5月24日

・「香港は”警察国家”。24日を香港と中国で苦しむ人々のための祈りの日に」アジア司教協議会連盟会長が提唱(Crux)

(2022.5.16 Crux contributor  Nirmala Carvalho

 アジアのカトリック教会のリーダーの1人であるアジア司教協議会連盟会長のチャールズ・ボ枢機卿が14日、香港の陳日君・枢機卿が当局に逮捕されたことについて声明を発表。香港における人権の状況と宗教の自由について、重大な懸念を表明した。陳枢機卿逮捕に対して、バチカンの公式声明は、「懸念をもって、事態の進展と見守っている」とするにとどまっており、ボ枢機卿の声明はそれよりも、強い意見表明だ。

 枢機卿は声明で、「私が兄として敬愛する陳枢機卿が、裁判にかけられた香港の民主活動家を支援する基金の理事を務めいたという理由だけで逮捕され、起訴された。法の支配が存在する国では、裁判にかけられている人々の法定費用支払いを援助することは、適切であり、認められた権利である。被告人が法的弁護を受け、代理人を置くことを助けのが、どうして犯罪になるのだろうか」と今回の逮捕に強い疑問を示した。

 そして、世界のカトリック教徒を含むすべてのキリスト教徒に、香港のために祈るよう呼びかけるとともに、すべての国、国際機関が香港の人権状況の監視を続け、自由と正義が回復されるよう、香港政庁とその背後にある中国政府に働きかけることを求めた。

 枢機卿は「香港はかつてアジアで最も自由で最も開かれた都市の1つだった。それが今、警察国家に変えられてしまった… 言論の自由、報道の自由、集会と結社の自由、学問の自由はすべて奪われた。世界人権宣言の第18条に定められた信教の自由、および香港が締約国である国際規約で保障された市民的および政治的権利が脅かされている兆候がある」と批判した。

 一方、陳枢機卿が属する香港教区は先に発表した声明で「状態と安全について非常に懸念している」とし、「私たちは常に法の支配を支持してきた。今後も基本法の下で香港の宗教の自由を享受し続けると信じている」と抑制気味の表現にとどまっている。

 基本法は香港の事実上の憲法であり、1997年に英国から中国に返還された後に制定され、英国の統治下で享受されていた市民の自由を引き続き保証するとしていたが、香港政庁とその背後にある中国は、特に最近の3年間、その約束を反故にし、市民の自由と権利を守る運動への弾圧を強めて来た。

 ボ枢機卿は声明で、このような香港の状況が宗教指導者たちの”自己検閲”の拡大に繋がっている、とし、親”北京”メディアの「教会に対する攻撃的プロパガンダ」がそれを促進している、と非難。「宗教の自由を含む自由の灯台だった香港が、暗く、抑圧的な道を転がり落ちていくのを目の当たりにするのは、とても悲しい。中国政府が国際条約である米中共同声明でなされた約束を繰り返し、露骨に破るのを見るのは、ぞっとする思いです」と語った。

 ボーは、教会が5月24日に、中国の教会のための世界の祈りの日であり、中国ではこの日が「佘山の聖母の日」に当たることを指摘、「昨年、私はこれを毎年、祈りの週とするよう呼びかけました。世界中のカトリック教徒のグループが私の呼びかけを受け、中国のための世界的な祈りの週を設けてくれたことを心強く思っています」と述べた。

 そして、「今年、私は世界中のあらゆるキリスト教徒に対して、この祈りの州の間、特に香港のために、そして中国の教会、さらにウイグル人たち、チベット人たち、その他、中国で迫害に遭っている人たちのために、祈ってくださるよう、そして24日には、何よりも陳枢機卿のためにお祈りくださるよう、切にお願いします。聖母マリアが私たちを助けてくださいますように。可能であれば、教会はこの日のミサをこのために捧げてくださるようにお願いします」と参加を求めた。

 声明の最後で枢機卿は「香港の人々にとって自由に発言することが,いっそう難しくなっています。香港以外の地域に住み、声を上げることのできる方々は、彼らに代わって発言の自由を使い、彼らとの連帯を示すために祈り、行動することが求められています。いつの日か香港に自由が回復されることを願って」と訴えた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年5月17日

・陳枢機卿逮捕にバチカン国務長官は抗議せず、中国との”暫定合意”優先の姿勢

Cardinal Parolin at the Gregorian UniversityCardinal Parolin at the Gregorian University 

(2022.5.14 カトリック・あい)

    Vatican News  が13日付けで伝えたところによると、バチカンのパロリン国務長官は13日、香港の陳枢機卿が当局によって逮捕された事件について、記者団にコメントし、「とても悲しんでいる」とする一方、「彼は釈放され、拘留中の待遇もよかったこと」にほっとしていると述べた。

 だが、このような当局の民主化運動や宗教活動に関わった長老的存在への脅しとも言える権力行使に対する抗議や批判はなく、Vatican Newsによれば、今回の枢機卿逮捕は、バチカンと中国政府の間に結ばれた中国国内での司教任命に関する”暫定合意”を「否定するもの、と受け止めてはならない」とするにとどまった。

 また、「最もはっきりした希望は、このような動きがバチカンと中国国内の教会との間の複雑で単純にはいかない対話をさらに複雑にしないように、ということです」と強調するなど”暫定合意”の維持を優先する姿勢を示している。

2022年5月14日

・河南省新郷教区の司教、バチカンの”介入”にもかかわらず拘留とかれず(Bitter Winter)

張維柱・司教 (Weibo)

 中国河南省の新郷県にあるカトリックの神学校が100人以上の公安職員に襲撃され、張維柱・司教と司祭10人、神学生10人が逮捕されて5月21日で一年がたつが、張司教は未だに拘留されたままだ。

 バチカンは2018年に、中国国内の司教任命について、事実上中国政府・共産党の”主権”を認める”暫定合意”を結び、現在も延長されているが、その際、バチカン

Another image of Bishop Joseph Zhang Weizhu. From Weibo.

は中国国内の司教、司祭、信徒に、中国政府・共産党の管理・統制に服する「中国天主愛国協会」への参加を拒む自由を認めるとの見解を示していた。

 これをもとに、バチカンは中国政府に対して釈放を求めたと言われるが、中国側は、司教は政府・共産党の管理下に入ることを拒むという”重罪”を犯

しており、釈放の要請に応じるわけにはいかない、と拒否したという。

 司教は逮捕当時、癌の手術を受けたばかりで、術後の手当てもされないまま拘留され、安否が気遣われている。

 なお、他の逮捕者は全員が釈放されたものの、10人の司祭は”教育センター”に送られ、10人の神学生は神学校に戻されたが、厳重な監視下に置かれている、という。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

 

 

2022年5月12日

・香港の公安当局が陳日君枢機卿を逮捕・起訴、バチカンが強い懸念表明

Cardinal Joseph Zen, Bishop Emeritus of Hong KongCardinal Joseph Zen, Bishop Emeritus of Hong Kong 

 香港では8日に、行政長官選挙が行われ、唯一の立候補者で中国の習政権の支持を受けた警察出身の李家超氏が圧倒的多数が当選した。李氏は、香港当局の人権、表現の自由の弾圧に抗議する市民たちの動きを厳しく抑え込む先頭に立って来た人物。

 習主席の後ろ盾を受けた強硬派の香港行政トップへの就任で、さらに統制が強まるとの懸念が内外で強まり、9日には、日米英独など主要7か国(G7)外相とEU上級代表が、今回の香港行政長官の選出プロセスについて「政治的多元性及び基本的自由に対する継続的な攻撃の一環として、我々の重大な懸念」と表明したばかり。

 そうした中での、人権・信教の自由を守る先頭に立つ陳枢機卿の逮捕は、そうした懸念をものともしない姿勢の露骨な表明以外の何ものでもない。バチカンの報道官は、この事態を憂慮するとともに、重大な関心をもって当局の動きを注視している、としているが、中国の習主席による宗教活動への規制が強まる中でなお、中国国内での司教任命に関する「暫定協定」を続けているバチカンが今後、どのような対応をするか注目される。

 陳枢機卿は、1932年1月に中国・上海市で生まれ。12歳でサレジオ会の修道院に入った。1949年中国共産党が政権を取った後、中国本土における修道会の神学校が閉鎖されたため、香港の華南大修道院に移ったあと、イタリアトリノのサレジオ大学に留学し、1961年司祭叙階1976年から1978年まで、マカオのサレジオ中学校で校長、1986年から1989年まで香港仔工業学校の院長を務めた後、1996年カトリック香港教区の協働司教、2002年に香港司教、2006年に教皇ベネディクト16世により枢機卿に任命された。香港司教としてのポストは、司教定年の2年後、2009年に辞任している。

 香港の民主化運動を弾圧する当局の動きには、2005年の香港の中国への返還時から一貫して反対の立場を取り、弾圧される人々を守る立場を続けてきた。また、バチカンが中国政府・共産党と融和の姿勢に傾く中で、中国国内で共産党の宗教規制を容認するのに利用されることを懸念し、とくに教皇の身に忠誠を誓い、中国政府・共産党の管理下に入ることを拒む”地下教会”の司教、司祭、信徒を守る必要を、バチカン、教皇に繰り返し訴えてきた。

そして、2018年9月に、バチカンが中国政府との間で、長年対立していた司教の任命権について「暫定合意」した際には、「バチカンは中国の信者を売り渡した。絶望している」と批判。同合意に基づいて教皇フランシスコが、中国政府任命の7人の司教を承認したのに対して「(教皇は)中国の体制を理解していない」「この合意は中国における『真の教会』の消滅につながる」「私が風刺漫画家なら、教皇がひざまずき、中国の習近平・国家主席に天国の鍵を差し出して、『どうか私を教皇として認めてください』と言っている絵を描くだろう」など、厳しく批判した。その後も、批判の姿勢を変えず、バチカンの対応の警鐘を鳴らしている。

(以下の部分は、11日付けVatican Newsによる)

 2002年から2009年まで香港教区の司教を務めた陳日君枢機卿が11日夜、香港当局の「中国の国家安全保障を監視するため」の部署によって逮捕された。湾仔警察署の外で撮影した陳枢機卿の写真を投稿した地元記者がソーシャルメディアで流した報告によると、枢機卿は保釈され、警察署を出た際、コメントなしで車に乗り込んだ、という。

 「612人道支援基金」は、市民の人権を守る運動で逮捕、虐待を受けている人々への訴訟費用や医療費などを財政支援する団体で、2019年に設立され、昨年10月に解散。陳枢機卿が同基金の評議員の1人だったことをもって、「外国軍との共謀」の罪を犯したとされたようだ。

 陳枢機卿逮捕について、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は、記者団の質問に対して、「聖座は枢機卿の逮捕のニュースを重大な懸念をもって聞き、状況の進展を細心の注意を払ってみている」と述べた。

 11日には、当局が同様の罪で、枢機卿の他、元野党議員で世界的にも知られる人権派弁護士 Margaret Ngを含む基金の主要メンバー3人も逮捕した。

 香港の地元メディアは今回の4人の逮捕について、当局は、中国政府・共産党が2020年5月に香港で試行した「国家安全法」に基づき、612人道支援基金による「外国勢力」との「共謀」の容疑に焦点を当てている、と報道した。これは、香港での民主化運動を抑圧することを目的とした同法に基づいて犯罪とされた「破壊」「分離」「テロ」と並ぶもので、最高刑はは終身刑だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2022年5月12日

・コロナ禍で、中国における”宗教の自由”はさらに悪化しているー米国際宗教自由委員会が年次報告(BW)

 米国の国際宗教自由委員会(USCIRF)が25日、年次報告書を発表したが、その中国における現状に関する項では、中国政府・共産党は新型コロナウイルスの大感染が続く中にあっても、国内の多くの宗教団体と信徒、その活動に対する迫害行為を一段と強めている、と警告している。

 USCIRFは米国の1998年国際宗教の自由法に基づき、大統領と連邦議会指導者によって任命された委員で構成する超党派の独立委員会だ。

 今回の年次報告の中国の項では、「中国では、『宗教の中国化』が引き続き推進されており、国内の全ての宗教団体と信徒は中国共産党の定めた規則と主義・綱領に従うことを強制されている」とし、それが、新規に策定された公式文書と規制の実施、実際の迫害・強制行為を通じてなされている、と指摘。

 政府・党レベルの具体的な動きとして、習近平主席はじめ、党・政府や、軍の代表者、新疆ウイグル自治区の関係者などが参加して昨年12月に北京で開かれた第二回「宗教活動に関する全国会議」で、習主席が基調演説し、「宗教の中国化」政策を含む宗教問題に関する党の理論と政策を「完全に実施する」ことを強調、「宗教の管理・監督を強化し、マルクス主義の宗教観の遵守を求め、国家管理の宗教団体は、中国共産党の規則とその宗教政策への支持すること」と言明した。

 そしてこの会議を受けて、「すべてのレベルの政府当局と国家管理の宗教団体が、この習主席の演説を研究し、政策を実施するために、個々に会議を開いた。趙克志・国務委員・公安相(当時)は会議の1つを招集し、公安省として、「宗教的領域内の主要なリスクを効果的に防止および解決し、国家安全保障と統一、民族統一、社会的安定を保護しなければならない」と強調。具体的には、 「宗教的過激派の思想と活動」、「違法な宣教活動」、「カルト」、「ダライ・ラマに関連する宗教的活動」、「インターネット上の違法な宗教的活動」に対する取り締まりを徹底するよう指示した、としている。

 また、2021年に「国家宗教事務局(中国共産党中央統一戦線工作部の直接管理下にある政府機関)や他の機関が新たな法的措置を実施し、聖職者、宗教学校、インターネット上の宗教コンテンツに対する取り締まりをさらに強化している」という。

 具体的に、迫害されているのは、中国政府・共産党の管理・監督を拒否しているカトリックの”地下教会”の信徒、プロテスタントの”家庭教会”、法輪功の学習者、イスラム教徒、チベット仏教徒などであり、中国刑法第300条に基づいて”邪教”のレッテルを貼られた「法輪功」と「全能神教会」は特に強い迫害の対象となっている、と報告書は指摘している。

 また報告書は、新疆ウイグル自治区で”教育キャンプ”などを使ったウイグル人イスラム教徒の迫害の実態についても詳細に説明しており、「当局は88万人ものイスラム教徒の子供たちを両親から引き離し、また新疆ウイグル自治区の全域で重要な宗教的、文化的な場を破壊、あるいは冒涜し​​ている」と述べた。

 さらに、こうした残虐行為について、2021年中に、世界のいくつかの国が公式に「ジェノサイド」であることを確認したとしたうえで、委員会が集めた情報を分析した結果、「中国当局が、以前は公認していた回族イスラム教徒に対しても、中国全土で抑圧的政策を実施し始めたことを示唆している」とも述べている。

 バチカンは中国政府と、中国国内での司教任命について暫定合意を継続しているが、報告書は、この暫定合意にもかかわらず、「当局は、河北省新郷の張維柱・司教など、国家管理の天主愛国協会への参加を拒否するカトリック司祭を迫害し、拘留し続けている」と批判。

 プロテスタントの聖職者に対しても、国家管理の三自愛国教会への参加を拒否する指導者たちを、貴州省貴陽市の教会の長老や牧師のように、逮捕・拘束し、肉体的に虐待するという行為がなされている。また四川省成都市の王怡牧師は、健康状態が悪化しているにもかかわらず、9年の刑を言い渡され、投獄されたままになっている。

 さらに、「中国全土で、当局は定期的に教会を襲撃し、キリスト教徒を拘留し、宗教資料を没収。『宗教の中国化』キャンペーンの名の下に、新疆ウイグル自治区の聖心カトリック教会を含む聖堂建物と十字架を取り壊した」

 宗教信者の他の誰よりも中国当局に迫害されているのは、中国語版”反カルト・イデオロギー”の犠牲者である”邪教”のレッテルを貼られた人々だ。 「2021年、当局は数千人の法輪功学習者に嫌がらせと逮捕を行い、892人に懲役刑を言い渡した。当局の迫害によって少なくとも101人が死亡している」と報告書は述べ、全能神教会の迫害も激化しており、大規模な逮捕、拷問、超法規的殺害が行われている、としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年4月29日

*「宗教団体は、党を愛し、社会主義を愛せよ」ー中国共産党統一戦線工作部が”宗教の中国化”推進の新指令

2022年3月21日の「StudyTimes」

(2022.3.24 Bitter Winter Xia Qiao)

 国際社会の関心がロシアによる残虐非道なウクライナ軍事侵略に向いている中で、中国政府・共産党は国内の宗教活動に対する規制を一段と強化している。国内の宗教活動全般を監督・規制している中国共産党統一戦線工作部が王作安・副部長の署名付きの「宗教の中国化」に関する新指令を、3月21日付けの中央委員会党学校の機関誌「学習時報」に掲載、発表した。An article on sinicization appeared on “Study Times” of March 21, 2022.

 

*習主席の指導に従って”中国化”を進めよ

 この指令は、2021年12月に開かれた宗教問題に関連する全国会議での習近平主席の演説をもとにしたもので、指令のポイントは、中国国内で活動するすべての宗教の「中国化」にあり、「習主席が国内の宗教団体の活動について行った、主要な革新的声明、社会主義社会に適応するよう宗教団体を積極的に導くための主要な戦略的措置、および党の宗教の主要な歴史的課題」を内容とする、と説明されている。

 また、「中国化」は「科学」、より正確には「科学としてのマルクス主義」の一部をなすものであり、その意味と技術を理解することは、容易なことではない、宗教を「科学的に」非難しない者もいるが、それは重大な過ちにつながる、と”警告”。

 「中国化」とは、マルクスとエンゲルスによって確立された「宗教の存続と発展の法則に準拠」しており、ブルジョアの宗教研究は、宗教的現象を説明するために単に「精神的要因」を使うが、マルクス主義は宗教を「物質的要因」の「産物」、ある段階での「人間社会の発展の産物」と見る、と言明。「マルクスとエンゲルスが、宗教が人類の歴史においていくつかの「否定的な役割」を果たしてきたことを強調したことは否定できない。外国の宗教が他の国を植民地化するとき、この指摘は特に適切だ」と述べている。

*道教以外はすべて外国からの”輸入”、問題を起こしてきた

 また、中国では5つの宗教が認可されているが、このうち道教だけが真の中国のものであり、仏教、イスラム教、プロテスタント、カトリックは海外から輸入されたものだ、としたうえで、マルクスとエンゲルスが宗教の否定的な側面しか見ていなかったと信じている人々は間違っており、彼らは宗教を「ポジティブとネガティブの両方が共存する社会現象」と見なしていた、と指摘。

 宗教におけるポジティブな点は、「ある段階から次の段階への社会の進歩のツールとしての役割を果たすこと」であり、「宗教の信者がまだ存在している段階では、宗教が反動的な役割ではなく、進歩的な役割を果たすように導くべき」だとし、中国は、今、社会主義の段階にあり(まだ最終的に目指している共産主義の段階ではない)、宗教が果たすことのできる積極的な役割は、宗教を信じる人々が「社会主義社会」に適応し、「社会主義の価値観」を受け入れるように導くことだ、と言明した。

 そして、「中国ではほとんどの宗教が海外から来ており、問題を引き起こしたため、宗教が自らを改革し、社会主義の補助的な力となるプロセスが、習主席によって「中国化」として科学的に定式化された」と述べ、過去において、毛沢東主席は「わが国の宗教界における主要な改革を導き、推進し… 社会主義社会に適応させる正しい道」を歩ませ、鄧小平主席は「私たちの社会の重要な変化と宗教分野の新しい状況に照らして、宗教問題に対処する正しい方策を模索した」。そして、さまざまな段階を経た今も、「社会主義社会に適応するように宗教を積極的に導くことは、宗教活動の基本的な目標であり、前向きな結果を達成している」と語っている。

*外国の敵対勢力が、我が国を破壊するために宗教を利用している

 指令によると、宗教の「中国化」の科学理論は習主席によって2015年に立てられ、継続的に推進、精緻化、実装されている。だが、「主席は、宗教が社会主義の社会に適応するために行っている努力は、まだ十分ではない」としており、 「過去の適応は現在の適応を意味するものではなく、現在の適応は必ずしも将来の適応を意味するわけではない」とも指摘した。

 また、すべての宗教が中国化できるわけではなく、外国の教育モデルをコピーし、外国の価値観を標準として採用し、外国の力の命令と支配さえ受け入れる人々の改革できないし、さらに悪いことに、「外国の敵対勢力と過激派勢力は、宗教を利用して我々の国に侵入し、妨害し… 社会主義の道から逸脱する方向に、宗教を導くことを試み、混乱をもたらす。わが国を抑え込み、破壊するための政治的陰謀の一部となる」と警告。

*”正しい政治的方向”に従うのを拒否する宗教は断固として根絶

 「正しい政治的方向性に従うことを拒否する宗教は、断固として抑圧され、根絶されるべきだ。社会主義社会と両立し、中国化された宗教だけが、我々の社会の安定に貢献できる」と断定している。

 最後に、中国共産党は、「宗教界の思想的および政治的指導を強化し、宗教界の政治的意識を向上させ、中国共産党と社会主義制度の指導的役割を支援するように宗教団体を指導する」ために必要なことを行う… 習近平同志を中心に党中央委員会のもとに緊密に団結し、中国の特徴を備えた社会主義の道をしっかりと歩んでいく」と言明。

*党や社会主義への愛情を植え付ける役割を果たさない宗教は容認せず

 具体的には、「新時代の中国の特徴を備えた社会主義についての”習近平思想”を真剣に研究し、党の歴史、新中国の歴史、改革と開放の歴史、そして対象を絞った社会主義の発展、そして『党を愛し、国を愛し、社会主義を愛する』を主題とした徹底的な教育を実施すること」を命じ、「党の宗教活動に関する理論、原則、政策を深く体系的に研究するために、宗教界を指導する必要がある」「”中国化”されていない宗教、つまり、信者に社会主義や中国共産党のの指令を伝え、党や社会主義に対する愛情を植え付ける役割を果たさない宗教は、違法な宗教活動の一部であり、”後戻り”であることも理解する必要がある。党は、このような宗教を容認しない」と宣言している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2022年3月26日

・”ウクライナ”の陰でー中国共産党の習主席、”人権”の扱いについて「党への絶対服従」を公安当局に指示(BW)

Xi Jinping’s speech of March 1. Source: Government of the People’s Republic of China.

 中国共産党の習主席が3月1日に行った演説は、指令が公安職員に調査を義務付けている唯一の文書ではない。主席が2月25日に中国共産党中央委員会の政治局の第37回共同勉強会で行った演説がある。これは、公安職員が「人権を侵害している」と批判される可能性があり、その批判が正当化されるかどうかを自問する可能性があるため、重要だ、という。

 1日の演説で、習主席は「人権活動に対する党の絶対的な指導」の原則を説明、「世界に共通する”人権”はない…。それぞれの国には人権を定義する権利があり、中国の特徴を備えた人権は欧米の定義する”人権”ではない、と西洋の人権と同じではない」と言明。

 「人権活動に対する党の絶対的な指導」の原則は、貧困との戦いを優先し、その戦いは、貧困を根絶するために何をする必要があるかを、個人やグループよりもよく知っている党の指導者に従うことによってのみ勝利することができる。

 そのために、党とその指令の理由がわからない場合も、党とその指令に従うことを意味する」「人権が尊重されていないように見えても、党は人権を保護するために何をする必要があるかをよく知っており、実践している」とも述べている。

 3月9日に、公安省の党委員会とその理論学習センターグループは、王暁宏・公安副大臣の下で会合したあと、中国各地の公安事務所に派遣された。中国全土で、訓練と形成のための新しい指令は、中国の法執行官にどの原則を教えるべきかを示し、彼らの日常業務を指導する必要があるため重要だ。

 新しい指令の中心にあるのは、習主席が2022年春学期の中央党学校における青年および中年幹部を対象とした訓練科目がスタートした3月1日に行ったスピーチへの言及だ。

 そのスピーチで、習主席は「腐敗」というお気に入りのテーマに戻り、「腐敗した警官が国と党を裏切ることがあるので、この指令は公安警官にとって重要」としている。ただし、習主席にとって「腐敗」が何を意味するのかを理解することが重要だ。主席は3月1日の演説で、「一部の官僚は泥棒であるが、党を愛せず無条件に従わない人々は、金を盗んだり、賄賂を受け取ったりしなくても、すでに”心の泥棒”だ」と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年3月26日

・「中国での取材・報道活動は”憂慮される方向”に」ー在中国・外国人記者クラブが報道の自由・年次報告

(2022.1.31 カトリック・あい)

 在中国・外国人記者クラブ(FCCC)が1月31日、中国のおける報道の自由に関する年次報告2021年版「Locked Kicked down or out covering China」を発表した。それによると、中国では報道の自由を妨げるさまざまな措置が取られており、外国人記者は「前例のない障害」に直面しているとし、当局から法的措置をほのめかされ、インターネット上では脅迫の標的にされ、国外追放で人員不足に追い込まれる例も出ている、としている。

 年次報告は、「中国当局が、外国人記者を相手取って訴訟を起こすことを『奨励している』ようだ」とし、相手の同意のもとに取材したあと、かなりの時間がたってから、相手に訴えられるケースもある、と指摘。さらに「国家を後ろ盾にした報道機関への攻撃、特にオンライン上での書き込みによる嫌がらせ」によって取材・報道活動に支障が出ているだけでなく、外国メディアを敵視する人々の感情をあおる形になっており、「中国における取材活動が困難を極めている」と訴えた。

 また、年次報告には、外国人記者たちの”勇気”ある発言も載せており、ある日本の中国駐在記者は、中国公安の記者に対する妨害行為は従来よりも、徹底かつ広範になされるようになってきており、宗教や少数民族など”微妙なテーマ”を取材しようとする時に、特にそれが顕著になってきている、と述べている。

 英有力誌Economist北京支局のDavid Rennie支局長も、中国での報道を巡るリスクが「水面下で変わりつつある。報道する内容次第で、法的制裁や民事訴訟の対象になる、国家安全保障上の捜査対象になる可能性もある、と報道機関は警告を受けている」と語り、記者の”ブラックリスト”が作られ、報道記者証やビザの発給制限などこれまでの報道統制のやり方が「憂慮すべき方向」に変わってきていることに強い懸念を示している。

(年次報告の全文はhttps://fccchina.org/wp-content/uploads/2022/01/2021-FCCC-final.pdf?x39796)

 

 

2022年2月1日

・チベット自治区の人々への弾圧が北京冬季五輪を前に繰り返されている(BW)

Tibetan monks arrested in 2008, the year of Beijing’s Summer Olympics. Credits. 2008年、北京五輪の年に、チベット仏教の僧たちがの逮捕が相次いだ(写真左)

新型コロナ・ウイルスの変種株、オミクロンが世界中で猛威を振るう中で、中国は、冬季五輪を開催することで経済大国としての世界に対する影響力を誇示しようとしている。それだけではない、新疆ウイグル自治区やチベット自治区などでのイスラム教徒や仏教徒などの少数民族に対する宗教的、文化的”大量虐殺”を覆い隠するツールに、五輪大会は使われているのだ。

 中国のチベット自治区などに住むチベット仏教徒に対する中国当局の弾圧は、2008年の北京五輪当時に比べ、さらに悪化している。2009年以降これまでに155件以上の焼身自殺が報告され、「国家の安全保障」「分離主義活動の防止」「国民の統一」などの美名のもとに、中国当局は、権威主義的支配を通じてチベット仏教徒を逮捕、投獄し、拷問しいる。

*中国当局によるチベット仏教破壊は前例のない規模に

 チベット仏教徒に対する中国共産党の弾圧は、何年にもわたって深まってきたが、文化大革命当時のような激しい攻撃が昨年来さらに強まっている。

 四川省のカンゼ・チベット族自治州北東部に位置するセルタル県のチベット仏教徒のコミュニティでは、昨年5月、県当局によって出家者の教化を目的とした政治教育が実施され、僧院の僧侶たちは「偉大な祖国・中国、中国文化、中国共産党、そして中国の特徴を備えた社会主義」を受け入れることを強制された。

 昨年7月には、多数の警官を動員して、僧侶と尼僧の僧院からの強制退去と僧院の強制閉鎖を強行したが、そうした動きはチベット仏教徒が住む国内の地敷く全体に広がっている。10月、青海省チベット自治区のツォンゴン県(あるジャギョン僧院とディツァ僧院からの多くの僧侶が退去、追放された。

 昨年11月の報告によると、青海省チベット自治区のツォルホ県の中国共産党幹部が、「行動規範」の下で、仏教徒が自宅に置いて信仰を実践することも含めて宗教活動を行うことを禁止。

 さらに、12月には、四川省のチベット仏教徒が住むカム・ドラクゴ地域で、約50年前の大地震で亡くなった数千人の供養のために地元住民の多額の寄付で作られた約30メートルの高さの仏像が、当局によって解体され、僧院の周囲に建てられた45本のマニ車も撤去され、タルチョ(祈りの旗)は焼却された。今週初めには、ドラクゴの僧院にある10メートルの高さの弥勒菩薩像が破壊された。仏像の破壊は中国全域に広がっている。

*チベット語は絶滅の危機に瀕している

 チベットの人々への中国当局の弾圧は仏教だけではない。チベット語の絶滅を図る動きも昨年からエスカレートし、”文化的大量虐殺”の目的が露骨だ。

 具体的には、チベット自治区全域で始められた、公示や通知、横断幕などにおける中国語使用の強制。昨年7月には、すべての保育所のチベット人幼児に中国語の標準語を学ぶことを強制する法令が施行された。中国語標準語は、偽の「バイリンガルシステム」の下で、チベット自治区のすべての学校でチベット語に取って代わられた。チベット人の子供たちは、母国語を維持するために学外でチベット語を学ぶために別途、授業料を払うのを余儀なくされている。さらにます。 2021年10月、チベット高原のアムド地域を管轄する当局は、冬休み中に学外でチベット語を学ぶことも禁止した。

 これ以前も、 2020年に甘孜県のザチュカ地域でチベット語のクラスをもつ私立のチベット語学校は閉鎖され、生徒たちは公営校への入学を強要された。同様に昨年7月、アムド地域のゴログにあるSengdruk Taktse MiddleSchoolという私立学校が強制的に閉鎖された。

 別の報告では、昨年8月、甘孜県の甘孜県立学校は、中国人を言語教員として受け入れない場合、強制閉鎖する、と警告を受けた。10月にはカム・ドラクゴ地域のチベット仏教とチベット文化の学習拠点となっていた仏教学校Gaden NangtenSchoolの閉鎖が命じられた。

*「強制労働プログラム」で、昨年だけで70万人のチベット人が”政治的教化”を受けた

 2020年以降、中国政府はチベット自治区全域にわたって、大規模な強制労働プログラムを開始、チベット人は強制的に思想変革、監視、政治的再教育、軍事的訓練を受け、拒否すれば”懲罰的処罰”を受けるようになっている。

 昨年2月、中国当局は、70万人のチベット自治区のの農民と遊牧民を強制労働プログラムの対象とする「職業技能訓練」の計画を発表した。 前年の前半までにすでに50万人以上のチベット人が強制的な軍事訓練を受けている。「強制労働プログラム」は、チベットの文化とアイデンティティを、中国文化に同化する中国の政策の一環として行われるものだ。

*チベット人のアイデンティティを抹消する中国のキャンペーンは、国営の学校全体に広がっている

 Tibet Action Institute が昨年12月に出した報告によると、約80万人のチベット人の学生、生徒が家族から強制的に引き離され、国営の寄宿学校に入学させられた。これは、チベットの人々の文化と言語を一掃することを目的とする当局の活動の一環だ。中央集権化された寄宿学校の広大なネットワークは、チベットの子供たちを操作し、教化するために、当局によってて効果的に使われている。学校では、チベット人の学生、生徒が集中的に政治的教化を受け、中国語を勉強せざるを得ず、宗教や文化を実践することを禁じられている。

*中国当局の広範な弾圧に続く、もう1つの歴史的なチベットの反乱

 2008年の北京五輪と冬季五輪を控えたチベット自治区の状況は、非常によく似ている。 2008年のチベット自治区での歴史的な民族蜂起は、2007年の初めに中国当局が、あらゆるやり方でチベット仏教とチベット文化への弾圧を強化したのが引き金になった。

 2008年の大規模な蜂起の間、中国政府は平和的なチベット人の抗議者たちを残忍なやり方で激しく弾圧し、少なくとも227人のチベット人を殺害、6810人以上を逮捕、拘留して鎮圧した。

 2008年の北京五輪と当時のチベット人弾圧、そしてチベット人の人権の蹂躙、”文化的虐殺”がもたらした、彼らの蜂起の試みは、間もなく始まる北京冬季五輪を機にしたチベット人の再蜂起の可能性を示唆している。

 チベット人作家のツェーリン・トプギャル氏は、チベット自治区での2008年の蜂起の根本的な原因は、チベット人が抱いたアイデンティティ喪失への不安にあった、と考えており、次のように警告している。「厳しく継続的なチベット人への弾圧は、彼らの間に大きな恨みと不安を煽っている。チベット人が怒りを再び発散するのは、時間の問題のように思われる」。

 中国共産党が2008年以降、強硬政策を継続し、チベット文化とアイデンティティを抹殺するための「中国化」キャンペーンを強化したことは、チベット人の根底にある不満がはっきりと無視されてきたことを意味する。そして、中国政府とその政策に対する恨みはチベット全体に広がっている。

 チベットの古都で、チベット文化の中心地であるラサをはじめ、シガツェ、チャムド、ドラクゴ、ガバ、レブコンなどの都市では、北京冬季五輪を前に、中国軍部隊が大量動員され、住民に厳しい移動制限が課されるなど、治安対策が強化されている。中国当局がチベット自治区などでチベット仏教徒に対するさらなる取り締まりと弾圧を勧めれば、チベット人の蜂起と中国軍の武力弾圧で、チベット自治区の壊滅、荒廃が起こる可能性もある。

*結論

 関係途上国に対する”借金漬け外交”、”人口統計学的”侵略、南シナ海での覇権確立を含む「戦狼外交」による中国の国際的侵略。新型コロナウイルスの世界的感染再拡大がもたらしている危機の最中での、中国当局の無謀さは、途方もない荒​​廃を各地域に引き起こすだろう。北京冬季五輪と軌を一にして進むチベット自治区や新疆ウイグル自治区はじめ、他の”占領地域”での巨大な人道危機は、チベット仏教徒やイスラム教ウイグル人たちにとって不可逆的な荒廃を引き起こす懸念が強まっている。国際社会に、中国共産党の人道に対する罪に正面から向き合うことが求められている。

Tenzin Yountenは、インド・チェンナイのマドラス大学で国際関係修士号を取得。 国連事務局や欧州連合事務局などでインターンとして働いた後、インド・ダラムサラにあるチベットの亡命政権「中央チベット政権」のチベット人擁護部門とチベット政策研究所の下で人権デスクを務めている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

2022年1月28日

・キリスト教徒に対する迫害が世界的に増加、3億6000万人以上にー国際人権団体調査

2021.01.14 WWL Open Doors 2021 persecuzione cristiani

*5898人が殺害され、5110の教会が襲撃されている

 調査結果をもとに International Institute for Religious Freedom (IRF)が分析したところでは、昨年、3億6000万人以上(世界の7人に1人)のキリスト教徒が自国で迫害を受け、前年比23.8%増の5898人が殺害され、13.8%増の5110の教会が襲われ、あるいは閉鎖に追い込まれた。さらに法的手続きなしで逮捕されたキリスト教徒は6175人と前年より44.3%も増加、誘拐された人は前年の2.2倍、3829人に上っている。

*ナイジェリアで反キリスト教勢力の暴力

 反キリスト教勢力による暴力は、サヘル以南のアフリカ、特にサヘル地域(ニジェール、ブルキナファソ、マリ)とナイジェリアで依然として拡大している。ナイジェリアは、2020年に9位でトップ10に入った後、7位になりました。信仰のために殺されたキリスト教徒の数が最も多い国として確認された。暴力は主に、フラニ族の武装勢力、イスラム教徒の過激派ボコハラムのグループ、そして殺害、誘拐、レイプを続けるさまざまな犯罪グループによるものだ。

*インドで増加するキリスト教徒への攻撃

 パキスタンは反キリスト教徒の暴力で2番目にランクされているが、最近では、インドでもキリスト教徒に対する攻撃が激しくなっている。ヒンドゥー教徒の民族主義者によって煽られた暴力行為が大幅に増加している。

*新型コロナ感染防止を口実にした迫害の増加

 新型コロナの世界的大感染も、キリスト教徒のコミュニティに対する弾圧、支配の強化に利用されている。感染の封じ込めを理由に、独裁政権がキリスト教徒などの監視と行動制限を強化している。

*宗教迫害による難民も増えている

 キリスト教徒に対する宗教的暴力の結果の1つは、強制移動だ。 2021年に世界で記録された約8400万人の国内避難民と2600万人の難民の多くは、サヘル地域、ナイジェリア、その他のアフリカ諸国でイスラム教徒の暴力から逃れたキリスト教徒。ミャンマーでは、キリスト教徒が多数を占めるチン州とカチン、カヤー、シャン州での国軍による弾圧により、20万人のキリスト教徒が追放され、約2万人が国外に脱出を余儀なくされた。

*キリスト教徒の女性への暴力も

 キリスト教の信仰に関連する女性に対する暴力についても、実態調査に努力しているが、多くの女性が文化的および社会的理由で回答を躊躇しており、正確なデータを収集することは困難。そうした中で、2021年に3100件の暴力による被害と1500件の本人の意思に依らない強制結婚を確認した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年1月22日