・天安門事件から33年ー香港、カトリック教会ついに追悼ミサも自粛

(写真は2019年6月4日に香港のビクトリア・パークで開かれた天安門事件30周年を記念する追悼集会=shutterstock.com photo)

 

(2022.6.5 カトリック・あい)

 中国政府・共産党が民主化要求運動を武力弾圧した天安門事件から6月4日で33年を迎えたが、香港では、追悼しようとする住民を、一昨年に施行した国家安全維持法(国安法)をもとに排除しようとする当局は警官隊を動員して排除した。

現地メディアによると、多数の住民が連行され、国安法施行後も、昨年まで犠牲者追悼ミサを続けてきたカトリック香港教区の各教会もミサ自粛に追い込まれた。

 さらに、昨年も続いて来たカトリック教会の追悼ミサさえ行われなくなったことで、公の場で犠牲者を悼む「自由」は、中国本土はもとより香港でも完全に過去のものとなった。

 追悼ミサの企画者の1人だった香港カトリック学生連盟の指導司祭、マーチン・イップ神父はフランスの通信社AFPの取材に対して「”香港の法律”に違反したくない、というのが私たちの出した結論です」と説明した。

 追悼ミサ自粛を判断せざるを得なくなった背景には、国安法をもとにした当局の規制が激しさを加えていることがある。

 香港では、国安法施行まで毎年、6月4日に犠牲者追悼集会が、年によっては十数万人を集めて開かれていたが、一昨年に施行された国安法をもとに、集会を主催してきた民主派団体「香港市民支援愛国民主運動連合会」が解散させられ、昨年から集会は中止。

 指導者たちは「国家転覆を狙う外国勢力の代理人」として逮捕、起訴。関連のウエブサイトやソーシャルメディアのアカウントも閉鎖され、香港の六つの大学にあった天安門事件記念碑も撤去された。

 さらに、民主化運動の精神的支柱となって来たカトリック香港教区の元教区長の陳日君・枢機卿がこのほど当局に逮捕、起訴されたことも、追悼ミサ断念の大きな動機となったと思われる。

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 (AFP Photo)

 AFPによると、6つの大学に立てられていた記念碑のうち、香港大学(HKU)の「恥の柱」はデンマークの芸術家イェンスガルスキオによる高さ8メートルの彫刻だが、鉄橋された後、HKUが所有する田舎の土地に残されている、という。 嶺南大学では、芸術家の陳偉明による壁のレリーフが地下貯蔵室に収容され、 香港中文大学の「民主の女神」像は、秘密の「安全な場所」に置かれている、という。

 各大学の構内に像が置かれた場所は、小石の形をした椅子と鉢植えの花が置かれた新しい庭に変えられ、キャンパスから”天安門”の痕跡を消し去る作業はさらに進んでいる。今年の初め、HKUのキャンパスで塗装された「6月4日」のスローガンをセメントで塗り消され、市内の公共図書館では、天安門関係の書籍の貸し出しが規制されている。

 

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2022年6月5日