・「香港は”警察国家”。24日を香港と中国で苦しむ人々のための祈りの日に」アジア司教協議会連盟会長が提唱(Crux)

(2022.5.16 Crux contributor  Nirmala Carvalho

 アジアのカトリック教会のリーダーの1人であるアジア司教協議会連盟会長のチャールズ・ボ枢機卿が14日、香港の陳日君・枢機卿が当局に逮捕されたことについて声明を発表。香港における人権の状況と宗教の自由について、重大な懸念を表明した。陳枢機卿逮捕に対して、バチカンの公式声明は、「懸念をもって、事態の進展と見守っている」とするにとどまっており、ボ枢機卿の声明はそれよりも、強い意見表明だ。

 枢機卿は声明で、「私が兄として敬愛する陳枢機卿が、裁判にかけられた香港の民主活動家を支援する基金の理事を務めいたという理由だけで逮捕され、起訴された。法の支配が存在する国では、裁判にかけられている人々の法定費用支払いを援助することは、適切であり、認められた権利である。被告人が法的弁護を受け、代理人を置くことを助けのが、どうして犯罪になるのだろうか」と今回の逮捕に強い疑問を示した。

 そして、世界のカトリック教徒を含むすべてのキリスト教徒に、香港のために祈るよう呼びかけるとともに、すべての国、国際機関が香港の人権状況の監視を続け、自由と正義が回復されるよう、香港政庁とその背後にある中国政府に働きかけることを求めた。

 枢機卿は「香港はかつてアジアで最も自由で最も開かれた都市の1つだった。それが今、警察国家に変えられてしまった… 言論の自由、報道の自由、集会と結社の自由、学問の自由はすべて奪われた。世界人権宣言の第18条に定められた信教の自由、および香港が締約国である国際規約で保障された市民的および政治的権利が脅かされている兆候がある」と批判した。

 一方、陳枢機卿が属する香港教区は先に発表した声明で「状態と安全について非常に懸念している」とし、「私たちは常に法の支配を支持してきた。今後も基本法の下で香港の宗教の自由を享受し続けると信じている」と抑制気味の表現にとどまっている。

 基本法は香港の事実上の憲法であり、1997年に英国から中国に返還された後に制定され、英国の統治下で享受されていた市民の自由を引き続き保証するとしていたが、香港政庁とその背後にある中国は、特に最近の3年間、その約束を反故にし、市民の自由と権利を守る運動への弾圧を強めて来た。

 ボ枢機卿は声明で、このような香港の状況が宗教指導者たちの”自己検閲”の拡大に繋がっている、とし、親”北京”メディアの「教会に対する攻撃的プロパガンダ」がそれを促進している、と非難。「宗教の自由を含む自由の灯台だった香港が、暗く、抑圧的な道を転がり落ちていくのを目の当たりにするのは、とても悲しい。中国政府が国際条約である米中共同声明でなされた約束を繰り返し、露骨に破るのを見るのは、ぞっとする思いです」と語った。

 ボーは、教会が5月24日に、中国の教会のための世界の祈りの日であり、中国ではこの日が「佘山の聖母の日」に当たることを指摘、「昨年、私はこれを毎年、祈りの週とするよう呼びかけました。世界中のカトリック教徒のグループが私の呼びかけを受け、中国のための世界的な祈りの週を設けてくれたことを心強く思っています」と述べた。

 そして、「今年、私は世界中のあらゆるキリスト教徒に対して、この祈りの州の間、特に香港のために、そして中国の教会、さらにウイグル人たち、チベット人たち、その他、中国で迫害に遭っている人たちのために、祈ってくださるよう、そして24日には、何よりも陳枢機卿のためにお祈りくださるよう、切にお願いします。聖母マリアが私たちを助けてくださいますように。可能であれば、教会はこの日のミサをこのために捧げてくださるようにお願いします」と参加を求めた。

 声明の最後で枢機卿は「香港の人々にとって自由に発言することが,いっそう難しくなっています。香港以外の地域に住み、声を上げることのできる方々は、彼らに代わって発言の自由を使い、彼らとの連帯を示すために祈り、行動することが求められています。いつの日か香港に自由が回復されることを願って」と訴えた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年5月17日