(2022.1.20 Vatican News Lisa Zengarini)
オランダに本部を置くキリスト教系の国際人権団体Open Doors Internationalが19日に発表した2022年版「世界監視リスト(WWL)」によると、2021年現在で世界中のキリスト教徒に対する迫害は大幅に増加し、3億6000万人以上に上った。特にアジアとアフリカ諸国で増え続けており、新型コロナの世界的大感染が事態をさらに悪化させている。
2022年版「世界監視リスト(WWL)」は、 2020年10月1日から2021年9月30日までの期間の調査をもとに、キリスト教徒に対する迫害がひどい50か国をランク付けしている。
*中国が上位に入らないのは・・・
トップは、イスラム過激派タリバンが政権を握ったアフガニスタン、北朝鮮かそれに次いでいるが、新疆ウイグル自治区やチベット自治区などで多数のイスラム教徒や仏教徒を迫害し続け、欧米などから強く非難されている中国が上位に入らず、17位にとどまっている。これは迫害調査の対象がキリスト教徒に限定されているためだ。
*5898人が殺害され、5110の教会が襲撃されている
調査結果をもとに International Institute for Religious Freedom (IRF)が分析したところでは、昨年、3億6000万人以上(世界の7人に1人)のキリスト教徒が自国で迫害を受け、前年比23.8%増の5898人が殺害され、13.8%増の5110の教会が襲われ、あるいは閉鎖に追い込まれた。さらに法的手続きなしで逮捕されたキリスト教徒は6175人と前年より44.3%も増加、誘拐された人は前年の2.2倍、3829人に上っている。
*最も危険な国はアフガニスタン
国別の迫害度では、アフガニスタンがイスラム過激派タリバンの政権奪取でキリスト教徒にとって最も危険な国となった。これまで20年間、最も危険な国とされ続けてきた北朝鮮は、トップの座を降りたものの、金正恩政権下での信教の自由の環境は悪化し続けており、アフガニスタンに次ぐ危険国であり続けている。
反キリスト教徒の暴力の割合が最も高い最初の5か国のうち4か国は、政情不安と宗教的過激主義の両方が拡大しているイスラム国家。アフガニスタン、北朝鮮に次いでソマリアが3位、リビアが4位、イエメンが5位に入っている。6位以下は、エリトリア、ナイジェリア、パキスタン、イラン、インド、サウジアラビア、ミャンマー、スーダン、イラク、シリアなどが続いている。
*ナイジェリアで反キリスト教勢力の暴力
反キリスト教勢力による暴力は、サヘル以南のアフリカ、特にサヘル地域(ニジェール、ブルキナファソ、マリ)とナイジェリアで依然として拡大している。ナイジェリアは、2020年に9位でトップ10に入った後、7位になりました。信仰のために殺されたキリスト教徒の数が最も多い国として確認された。暴力は主に、フラニ族の武装勢力、イスラム教徒の過激派ボコハラムのグループ、そして殺害、誘拐、レイプを続けるさまざまな犯罪グループによるものだ。
*インドで増加するキリスト教徒への攻撃
パキスタンは反キリスト教徒の暴力で2番目にランクされているが、最近では、インドでもキリスト教徒に対する攻撃が激しくなっている。ヒンドゥー教徒の民族主義者によって煽られた暴力行為が大幅に増加している。
*新型コロナ感染防止を口実にした迫害の増加
新型コロナの世界的大感染も、キリスト教徒のコミュニティに対する弾圧、支配の強化に利用されている。感染の封じ込めを理由に、独裁政権がキリスト教徒などの監視と行動制限を強化している。
*宗教迫害による難民も増えている
キリスト教徒に対する宗教的暴力の結果の1つは、強制移動だ。 2021年に世界で記録された約8400万人の国内避難民と2600万人の難民の多くは、サヘル地域、ナイジェリア、その他のアフリカ諸国でイスラム教徒の暴力から逃れたキリスト教徒。ミャンマーでは、キリスト教徒が多数を占めるチン州とカチン、カヤー、シャン州での国軍による弾圧により、20万人のキリスト教徒が追放され、約2万人が国外に脱出を余儀なくされた。
*キリスト教徒の女性への暴力も
キリスト教の信仰に関連する女性に対する暴力についても、実態調査に努力しているが、多くの女性が文化的および社会的理由で回答を躊躇しており、正確なデータを収集することは困難。そうした中で、2021年に3100件の暴力による被害と1500件の本人の意思に依らない強制結婚を確認した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)