・バチカンは、中国政府・共産党が拘禁中の司教たちの解放を”暫定合意”再延長の必要条件とするか(BW)

    拘禁中の司教たちの解放を中国との”暫定合意”を更新する前提条件にすることによってのみ、バチカンは中国における高位聖職者の受難を終わらせることができる。

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意は、2020年10月に2年延長され、この10月に延長期限が切れる。 バチカンは再延長に合意するのだろうか? 中国の信徒たちは、「再更新が中国政府・共産党にとって最良の選択」であることを疑わないが、バチカンにとってもそうなのか?

Bishop Cui Tai. From Weibo.

 Bitter Winterの取材に答えたある信徒は、政府・党が管理・統制する「中国天主愛国協会」の”地上教会”と、同協会に属することを拒否する”地下教会”でなく、少なくとも”理論上”は一つのカトリック教会となっていることを、評価した。

 ”暫定合意”によって、「愛国協会の教会でミサにでることに、罪の意識を感じることが無くなった」というのだ。

 しかし、大多数の信徒は、”暫定合意”そのものに不満を持っている、あるいは”暫定合意”がもたらしている”結果”に失望しているのが実情だろう。中国で、政府・共産党の介入を受けずに世論調査を実施するのは不可能だが、信徒たちの行動を見ればわかる。

 ”地下教会”に通っていた人々の中に、”暫定合意”でバチカンが”地上教会”を認めることになったから、と愛国協会に所属する司教に従う信徒は、ほとんど見当たらない。”暫定合意”がもたらした混乱の中で、多くの信徒が”地上””地下”どちらの教会に行くのを止めた。

 Bitter Winterはまた、何十人もの司祭や信徒から話を聴いたが、彼らは教皇とバチカンへの敬意を持ちながら、”暫定合意”はバチカンのミスリードであり、中国政府・党を利するだけになっている、と判断している。

 そうした彼らが注目しているのは、”暫定合意”の再延長を狙う中国政府・共産党の、逮捕・拘禁中の”地下教会”の司教たちの扱いだ。その一人が、Bitter Winterがこれまでも取り上げている河南省新郷教区のヨゼフ・司教。昨年5月に逮捕されたが、その後の所在は不明のまま、1年が過ぎている。信頼できる筋によると、バチカンが彼の解放を求めたが、中国政府・共産党からは、何の対応も引き出せていない、という。

 中国の信徒の間で最も関心がもたれているのは、河北省宣化県の共同司教を務めていたアウグスティヌス崔泰司教(写真上)の扱いだ。 72歳の崔泰司教は、旧正月やその他の時期に数日間ずつ一時釈放されたが、それ以外は、2007年の逮捕・拘禁から15年も刑務所に入れられている。一時釈放の最長は 2020年1月から6月まで半年間だったが、再逮捕され、その後、どこに拘禁されれているのか不明のままだ。

 

Hong Kong’s Cardinal Zen (himself arrested in May, then released on bail) holding a sign calling for the liberation of Bishop Cui Tai. From Facebook.Hong Kong’s Cardinal Zen (himself arrested in May, then released on bail) holding a sign calling for the liberation of Bishop Cui Tai. From Facebook.

 崔泰司教は、バチカンによって任命されたが愛国協会への参加を拒否する、いわゆる”良心的兵役拒否者”の一人だ。

 政府・党から、「愛国協会に参加していなくても、バチカンと繋がっている」と信徒たちに語った、と非難されているが、彼が語っているのは事実。バチカンは以前から、「”良心的拒否”を奨励しないが、カトリック教徒としての誠意をもって拒否することは尊重すべきだ」という見解を公けにしている。

 崔泰司教は多くの信徒から支持されている聖職者であり、彼のが拘禁され続けていることは、バチカンにとって、計り知れない不祥事だ。信頼性の高い情報によると、司教は、愛国協会への参加強制を頑強に拒んでいるため、繰り返し拷問を受けている、という。

 崔泰司教が苦難にあり続けていることは、2018年の”暫定合意”に問題があることを証明している。多くの中国のカトリック信者は、張維柱・司教の解放に失敗したバチカンが今、崔泰司教の釈放も静かに求めている、と期待を込めて推測している。

 だが、「求める」だけでは十分でない。崔泰司教を含む”良心的兵役拒否司教”の釈放を、”暫定合意”再延長の前提条件とすべきだ。そうしなければ、司教たちは拘禁され続け、拷問を受け続けることになる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2022年6月25日