・FABC総会第二週の討議テーマ「新たな現実」第3日ーポスト・コロナの養成、礼拝と、デジタル司牧、家庭の抱える問題と司牧

(2022.10.19 FABC news PRESS NOTE )

 討議テーマ「新たな現実」第3日のサブ・テーマはまず、「新型コロナ感染終息後の事態における養成、礼拝、デジタル司牧の新しい道を見つける」というタイトルで討議が始まった。た。

 最初の講演者は、マニラの聖トマス大学の神学教授で、FABCの教育と信仰養成の担当者でもあるパブリト・バイバド・ジュニア氏。「信仰に富んだ出会い」を含むあり方の必要性を強調し、「仕事に行く途中で教会の前を通りかかったオートバイの運転手とその家族生活」を例に挙げて、「家族の誠実さを大切にする養成、現実の社会をよく理解して人々に寄り添うことのできる人材の重要性について語った。

 次に、カトリック系のテレビ局 Eternal Word Television Network(EWTN)の地域マネージャーと務めるアレクサンダー・ ロペス氏は、教会のための安全なデジタル・プラットフォームを構築して運用する必要性を訴え、単なる約束ではなく、本当の答えを出すことが求められている、と述べた。

 ボンベイ大司教区のメディア部門、カトリック ・コミュニケーション センターで働いているブリンストン・ カルヴァリョ氏は、福音と愛を広める一助として、デジタルによる教理講習の活用を提案。また、デジタル・ メディアを通じた司牧的訓練、聖職者がSNSに参加することなどの重要性を強調し、「『羊たち』はソーシャル メディア上にある。羊飼いもそうあるべきだ」と訴えた。

 また、マレーシア・シンガポール・ブルネイ司教協議会の会長であるセバスチャン・フランシス司教は、礼拝と養成において、創造的で包括的で橋を架ける手段へのパラダイムシフトがいかに必要であるかを語り、「司祭、修道者、そして一般信徒が、喜び、憐れみ、希望の対話に携わることの価値を強調した。

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 次のサブ・テーマは、「今日のアジアの家庭にとっての課題、アジアの教会がどのように家庭への司牧的ケアに創造的に対応できるか」で、 Worldwide Marriage Encounter Leadership Teamのメンバーであるダニエル夫妻は、家庭生活の価値、その課題、家庭の中心としての夫婦について語り、家庭に対する司牧的ケアの改善策として、養成と訓練の強化、夫婦がそろって奉仕できる仕組みの工夫、家庭生活を充実させる活動などを提案した。

 タイの Christian Family Movementのリーダーをしているマイケル・ピチット夫妻は、家庭が直面している多くの課題、社会的偏見、世代間の関係悪化、経済的不安などについて話し、「教会はこれらの課題が互いに関係していることを認識し、事態を改善する前に癒しが必要であることを認めなければなりません」と述べた。

 三つ目のサブ・テーマは「使徒的勧告『(家庭における)愛の喜び』が効果的な司牧へアジアの教会に提供する機会」。最初の講演者で、中国地域司教協議会の会長でもある台湾・新竹教区のジョン・バプティスト・リー・ケミエン司教は、この回勅をもとにして、「結婚に対する真の、そして絶え間なく変化する課題」を取り上げ、婚前養成の重要性と回勅のタイトルである『家庭における愛の喜び』を目標とすることの重要性を強調した。

 またローマの Accademia Alfonsianaの教授であり、シノドス事務局の神学委員会のメンバーであるビマル・ティリマンナ神父 は、家庭と結婚がいかに教会の大きな関心事であるかについて語り、夫婦の司牧的ケアの重要性を強調し、証しと養成の機会として、結婚と家族のさまざまな事例を例証した。

 各セッションごとに、講演者との質疑応答、よび得られた教訓などについてグループ 討議と考察を行った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月24日

・菊地大司教の「FABC50周年記念の総会から」(その3)25日の朝の祈りは日本の担当

 菊地大司教の日記 2022年10月23日 (日)

Img_20221018_083850349 10月12日から30日までバンコク郊外の教区司牧センター「Baan Phu Waan」で開催されているアジア司教協議会連盟の創立50周年記念総会は、第二週目が終わり、最後の一週間に入ります。

 ボンベイのオズワルド・グラシアス枢機卿をトップとする企画準備委員会では、第一週目の各国からの報告の期間を「Visiting Asia」と名付けて、まずアジア全体の現実を知ることから始めました。

 そしてこの10月17日から22日までの第二週目は、「Emerging Realities」と名付けて、各国の報告から知った現実に基づいて、今アジアで何が起きているのかを深める時とすることを目指しました。そのために様々な分野に関係する信徒や修道者の声に耳を傾けるために,オンラインでの分かち合いを月曜から木曜まで行いました。

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 それぞれの日はテーマが設けられ,同時にそれに関連するフランシスコ教皇様の文書についての振り返りの時も持ちました。17日の月曜は、特に気候変動に目を向け、環境回勅「ラウダート・シ」への理解を深める日とされました。

 18日の火曜日は青年、女性、移民、移住者、人身取引などに焦点を当て、回勅「兄弟の皆さん」の学びを深めました。

 さらに19日の水曜日は、家庭や結婚の問題に焦点を当て、使徒的勧告「(家庭における)愛の喜び」の学びを深めました。

 その後20日の木曜日には、アジアで実際に起こっているミャンマーでの状況に思いをはせながら、平和、和解、対話をテーマとして、使徒的勧告「福音の喜び」についての学びの日でした。

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 21日の金曜日は、アジアに来られていた世界代表司教会議第16回総会の責任者でもあるルクセンブルク大司教のオロリッシュ枢機卿から、シノドスについての話を頂き、教皇様の顧問団の中心人物でもあるグラシアス枢機卿から、教皇庁改革にあたる教皇様の指針である「Predicate Evangelium」についての話をいただき、それを踏まえて「FABCの次の50年をいかになる道を通って歩むべきか」の考察を始めました。これは次週の大きなテーマです。

 そして22日の土曜日は、全体会で、これまでの議論を行ってきた中で取り上げられた様々なポイント以外に、FABCの将来に関わる重要な課題があるかの自由討議を行い、最後に、聖体降福式をもって一週間を締めくくりました。

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 この間、いくつかの特筆すべきことがあります。まず17日には、ラウダート・シにちなんで、近頃Youtubeで公開された「The Letter」という映画に実際に出演しているインドの環境活動家Ridhima Pandeyさんが出席され、彼女の話を伺い,さらに夜には参加者一同で「The Letter」を鑑賞しました。

 Ridhimaさんは,まだ14歳ですが,しっかりした考えをしっかりと発言される方でした。この映画はこちらで見ることができます。ただし英語の字幕で、90分ほどです。教皇様が気候変動について多くの方の意見を聞くために、バチカンに来るようにと招待状の手紙を送るところから始まり、世界各地から教皇様の元へ呼び集められた中に、Ridhimaさんもおられました。

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 次に、18日のオンラインでの分かち合いには,青年のテーマで、高松教区の高山徹(あきら)神父様が参加してくださいました。そして女性や人身取引、移民や難民のテーマでは、東京で活躍するメリノール会のシスター・アビーが,ローマからオンラインで参加してくださいました。

 これはすでに触れた,タリタクムの活動についての分かち合いで,会場にはタリタクムアジアの代表の一人として,メルセス会のシスター弘田も参加されていました。

 アジアの会議では英語が使われるので、分かち合いなども英語ができる方にお願いせざるを得ないのですが、日本に限らず英語を主に使っていない国からは、参加者を得ることが難しく、どうしても一定の国からの発言に偏ってしまう嫌いがあります。今回参加してくださった高山神父様やシスターアビー、シスター弘田、そして先の日曜日に参加してくださったシスター宇野には感謝申し上げます。

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 また18日の締めくくりには、私も事務局長として関わる企画準備委員会での成り行きから、私が、回勅「兄弟の皆さん」についての分かち合いを行うことになり、30分と言われて原稿を用意していきました。

 そうしたらこの日は結構スケジュールが押して、一日の最後の私が話す順番が近づいてきたら,グラシアス枢機卿から突然、「20分にしてくれ」との指示があり、かなり慌てました。その結果はこちらのビデオをご覧ください。最後の肝心な部分をかなりカットして、なんとか全体は19分で収まりました。

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 10月23日の日曜日は「世界宣教の日」です。この日のミサは毎朝のミサを行う聖堂ではなく会議場で行い、ネット中継されました。

 グラシアス枢機卿司式で、共同司式に私も参加しました。グラシアス枢機卿の説教にもありますが、共同司式で祭壇に上がったのは,インド、フィリピン、日本、ドイツ、ペルーの面々で、世界宣教の日にふさわしい顔ぶれになりました。

 また聖体拝領が始まると,なんと聖歌隊から日本語の歌が始まりました。わたし自身も子どもの頃良く歌った「主、我を愛す」であります。この日の聖歌隊の日本語ができる少女が、しっかりと歌ってくれました。上の写真、聖歌隊の向かって一番右端の方です。感謝。ミサはこちらからご覧いただけます。「主、我を愛す」は1時間09分くらいから始まります。

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 そのほか、私にとっては3年ぶりくらいでバンコクにあるカリタス・アジアの事務局員との再会となり、会議場近くのレストランで一緒に夕食をとりながら、いろいろと話を聞きながら、懐かしい面々と旧交を温める機会もいただきました。

 最終週となる第三週は、総会文書の全体的枠組みの承認、最終メッセージの採択、FABCの今後の方向性の承認などが控えており、また朝から晩まで、プログラムがしっかりと組まれている毎日となります。

 なお以前にもお願いいたしましたが、25日の火曜日は、会議に先立って行われる朝の祈りが日本の当番の日です。当番の日には,それぞれの国でFABCのために祈りをお願いすることになっていますので、25日の火曜日、一日のどこかで、アジア司教協議会連盟FABCのためにお祈りをお願いします。

(編集「カトリック・あい」)

2022年10月24日

・FABC総会第二週の討議テーマ「新たな現実」第2日ー「若者、女性の役割と参加など」

(2022.10.18 FABC news press note)

  2022 年 10 月 18 日、FABC 総会の「新たな現実」に関する討議の第二日は、オズワルド・グラシアス枢機卿の司会で、第一セッションの「若者:教会の声」で教会における若者の関心と役割に関するグループ討論から始まった。

*「司祭は若者にもっと耳を傾ける必要」

 最初に講演した日本の高松教区の青少年担当司祭の高山神父は、司祭が若者の声に耳を傾け、再福音化されること、若者と協力すること、家庭や会社、学校とは異なる教会において、若者たちを単なる労働力以上の存在とみることの重要性を強調。司祭や教会をリードする人たちが彼らを霊的に導き、その成長を見守ることを希望した。

 続いて、グラシアス枢機卿の求めに応じて演壇に立ったアンソニー・ジュディ氏、アシタ・ジミー氏の二人は「私たちの声に、教会はもっと耳を傾けてほしい」と願い、若者に信頼と真の関心を示し、若者と会話し、共に旅をする必要性を強く訴えた。

*「コロナ禍で”デジタル化された個人主義”に追い込まれている」

 マレーシアのクアラルンプール大司教区青年担当司祭であるグレゴリー・プラビン神父は、「新型コロナの大感染が、いかに人々を”デジタル化された個人主義”の世界での”自給自足”の状態に追い込み、主を渇望することがなくなったか」について説明。「若者がいない」から「私が若者の中にいない」に考えを改め、”羊飼い以上”の存在、探求者になるように、と参加者たちに呼びかけ、若者たちを教会活動を再び経験するような新しい仕組みと方法を考え出す必要性を強調した。

 次に講演したのは Ecclesia of Women in Asiaのメンバーでアテネオ・デ・マニラ大学神学部のステファニー・プエン教授、香港神学哲学神学校のメアリー・ユエン教授、そしてColombo Province of the Sisters of the Holy Familyの会員で人権活動家のシスター・ラシカ・ピエリスの3人。

*「女性に対する”思いやりの文化”を作るように」

 「アジアの教会における女性の役割の新しい道」をテーマに、アジアの女性たちが直面している課題ー男女差別、女性蔑視、家庭人と社会人の一人二役の強制、収入の男女格差、家庭内暴力などーの背景にある問題から話を始めた。

 プエン教授は、「思いやりのある正義の概念」を紹介し、多くの女性にとって思いやりがいかに過小評価されているかを強調。思いやりはすべての人の責任であるべきであり、連帯、対話、信頼、尊敬をもってなされるべきであり、参加者たちに「思いやりの文化」を作るように求めた。

 またユエン教授は、自身の経験をもとに、特に新型コロナ大感染の後にアジアの女性が直面している社会的、経済的問題を指摘。司牧ケア、困窮者の支援、危機にある家庭の支援、人としての権利と尊厳の保証など、教会が取り組くことのできる司牧的見地からの対応を提案した。また、教会活動に消極的な女性の参加を促すことや、性差別が教会のどの場で起きているのかに注意を向けるように呼びかけた.

*「女性を平等に扱い、教会の意思決定に参加させよ」

 シスター・ピエリスは「しっかりした男性は、平等を求める女性たちの声にたじろぐことはありません」としたうえで、アジアの女性が社会変革の主体になることにつながるいくつかの考えを提唱。具体的には、男性優位の階層制を払拭する社会構造の変革、女性と少数者の闘いを反映した神学の構想、神のより包括的なイメージの構築、などを挙げ、「女性が本格的に意思決定に参加する市民となり、教会においても平等に扱われる信徒となる必要性を強調した。

 続いて講演した国際カトリック移民委員会(ICMC)のクリスティン・ネイサン氏は、「移住がいかに100万人以上の命に関わる大きなビジネスになっているか」について説明。多くの社会経済的闘争、人身売買、危険な仕事、奴隷労働、差別がもたらされていることを指摘し、労働契約の適正化、雇用機会の獲得支援など、教会がすることのできる移民・難民支援を具体的に提案した。

*「移民・難民に関連して起きている人身売買の廃絶に全力で取り組め」

 人身取引に反対する奉献生活者の国際ネットワーク「Talitha Kum Asia 」の地域コーディネーター、シスター・アビー・アベリーノは、その活動の現状について、草の根レベルで、人々と協力し、意識を高め、社会的弱者に寄り添い、人身売買の防止と被害者のケアの両方に取り組んでいること、被害者を癒し、力つけることを目指していること、などを説明した。

 インターネット参加の英国のイングランド・ウェールズ司教協議会のヴィンセント・ニコルズ会長は「人身売買に反対する人々の多くの努力にもかかわらず、”負け戦”になっている」と率直に語り、参加者たちに、人身売買廃絶に向けて可能な限りの時間と努力を捧げるように呼びかけた。

 バチカンの総合人間開発省のファビオ・バギオ神父は、同省での活動の範囲と目的、社会的使命への関わりについて説明し、会議の期間中、必要に応じて支援を提供することを申し出た。

*「現代の社会で、私たちが人々にどのように希望を広められるか、考えよう」

 カトリック教会の援助組織「Caritas Asia」の前会長、菊地功・東京大司教は、教皇フランシスコの回勅「兄弟の皆さん: 人類の友愛への呼びかけ」を取り上げ、教皇がこの回勅を出された当時、すでに新型コロナウイルスの世界的大感染が起きていたことに言及しつつ、回勅が教皇が強調されている「相互依存」「多様性と連帯の調和」の重要性を指摘。「すべてのキリスト教徒がどのように証しをするよう求められているか」について語り、参加者たちに「現在の世界で、私たちが、人々にどのように希望を広めることができるか」を考えるように求めた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月23日

・FABC50周年記念の総会から・菊地大司教(その2)

   アジア司教協議会連盟FABCの創立50周年を記念して開催されている総会も、半分が終わりました。あと一週間です。この一週間については別途、明日にでも掲載するとして、総会中にはいろいろな方に再会しています。

 そんな中でも、東京教区にとって大切な姉妹教会であるミャンマーの司教様たちと時間を共に過ごすことができるのは,感謝です。ミャンマーの現状のいろいろなお話を伺いました。なおいっそう、ミャンマーの安定と平和の確立のために、祈りを続けなければならないという思いが深まりました。

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 総会に参加されているミャンマーの司教様たちの中でも、神学生の養成などへの支援でも深く関わっているマンダレー教区のマルコ大司教様と再会できたことは大きな喜びでした。

 2020年2月、コロナ禍で全てが閉鎖される直前に東京教区の代表団が訪れて、ピンウーリン(メイミョー)の神学院を訪れたりして以来の再会でした。クーデターが発生して以降、マンダレーでも暴力的な状況が続き、先頭に立って平和の実現を求めるマルコ大司教様の様子もニュースなどで伝わってきています。命の危機を感じながら牧者としての務めを果たすことは本当に大変なことであろう、と想像いたします。マルコ大司教様のためにもお祈りください。

 マルコ大司教様からは、特に東京教区の皆様へ,お祈りと支援への感謝の言葉をいただきました。また東京で、ミャンマーの方々と共に、平和のために祈り続けていることに力づけられている、という感謝の言葉をいただきました。

 世界では様々な暴力的状況が発生し,その都度、祈りが必要となりますが、同時に解決されることなく時間の経過と共に忘れられてしまう人たちも多くおられます。東京教区としては、これまでの深い関わりもありますから、これからも忘れることなく、ミャンマーのために祈り続けたいと思います。

(編集「カトリック・あい」)

2022年10月22日

・FABC 総会第二週「新たな現実」テーマに討議・第1日「ポスト・コロナの痛みと機会など」

(2022.10.17 FABC News  PRESS NOTE)

  FABC 総会は17日、第 2 週目を迎え、「新たな現実」をテーマに一週間にわたる討議を始めた。

 会場のバンコクの聖ミカエル・ホールの討議は、司会のチャールズ・ボー枢機卿の下で始められ、冒頭、オズワルド・グラシアス枢機卿が、今週の討議で、教皇文書が示しているテーマをアジアの新たな現実にどのように反映していくか、について説明した。

 次いで、FABC の神学担当室のメンバーで道徳神学者のジェラルド・マティアス司教とベトナム・カトリック研究所の教義神学教授であるグエン・ハイ・ティン 神父が「ポスト・コロナの教会とキリストの聖体」について講演。

 マティアス司教は、新型コロナの大感染が引き起こした挫折、さらに重要なこととして、それがもたらした機会について語り、キリストの聖体である教会がどのように苦しんできたかを解明したうえで、治癒の可能性についての期待を述べた。

 ティン神父は、教会が痛み、苦しみ、変化に対して脆弱であることを、新型コロナ感染がどのように明らかにしたかについて語る一方、教会は、復活の神秘とシノダリティ(共に働く)教会であり、癒しと一体感に向かって進んでいる、と指摘。マティアス司教は、新型コロナ感染で明らかになった新しい司牧の道筋ー対話、養成、デジタル伝道、生態系の保護、そして典礼を一人一人の個人的なものとして復活させるプログラムーを提示した。

 弁護士で教育者、環境政策の専門家、アントニオ・ラ・ヴィーナ氏と、インドの環境活動家、リディマ・パンディ氏は、「気候変動の危機とそのアジアへの影響」について講演。気候危機の現在の状況について最新情報を提供した。

 ラ・ヴィーナ氏は、気候変動の危機がもたらす最悪の影響を可能な限り食い止めることの重要性を強調し、総会に参加する各国の教会代表者に指導力を発揮するよう求めた。また世界的な対策から地域的に対策まで、教会が果たすべき役割のポイントを、教皇フランシスコが出された「ラウダート・シ」と「兄弟の皆さん」の二つの回勅を土台にした枠組みとして提案した。

 リディマ・パンディ氏は、故郷の環境破壊の実情から始めて、気候変動の影響を受けたすべての子供たちのために行っているキャンペーンについて説明。「子供たちが今、路上で行動を起こしたのは、大人の世代が行動を起さなかったからです」と指摘し、「(地球温暖化の)あらゆる段階に対処することが重要… 私たちには、あなたの助けが必要です」と訴えた。また、教皇フランシスコ教皇から世界に向けた気候変動危機に対処するメッセージである映画「手紙」を紹介。映画は、討議後の夕刻に上映された。

 続いて、FABC の気候変動デスクの元責任者であるアルウィン・ダ・シルバ司教が、「(環境回勅)ラウダ―ト・シ、 責任ある管理者への呼びかけ」というテーマで語った。司教は、すべての人に「創造を賛美する歌」への参加を求めたうえで、回勅を考察した。司教は、「地球がすべての人にとって共通の家であり、創世記が、私たちが地球の管理者であり、地球を保護することを意図していることを伝えている」と強調。パンディ氏の発言を受け、「私たちは、どのような世界を、次の世代に残そうとしているのでしょうか」と問いかけた。また、「ラウダート ・シ」が、いかに教会の社会教説と深く結びついているかを示し、総会に参加する各国の教会代表者たちに、「キリスト教共同体を巻き込み、貧しい人々の権利を守り、地元の文化と自然の美しさを保護するアジアを目指すように」と強く求めた。

 バチカンの聖職者省長官のユ・フンシク枢機卿は「時代を画する変化の中での、司祭養成」について考察。 「どのような教会、どのようなタイプの司祭、どのような養成が必要とされているのでしょうか」と問題提起し、「すべては1冊の本ー聖書、1つの律法ー 相互愛の律法、そして1人の主人 ー 神にまでさかのぼります」と述べた。そして、「現在の急激な変化の時代において、教会は聖体祭儀の家であり、シノダリティ(共働性)を学ぶ学校になる必要」がある、とし、必要とされる司祭は、イエスの真の弟子であり、奉仕に召され、人類家族の一員として働く人々、その育成は、家庭と神学校の両方でなされる、と強調。また、日々の生活の一部としての神の言葉の重要性を強調して、講話を締めくくった。

 以上の全体討議を受けて、総会参加者たちが新たな分科会をもち、全体討議で示された提案などを、それぞれの司牧活動にどのように組み込むことができるかについて話し合い、考えを深めた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月22日

・FABC総会第二週の討議テーマ「新たな現実」第5日ー共働性、バチカン改革、そしてアジアの教会

 (2022.10.21 FABC News PRESS NOTE)

    FABC 総会の二週目のテーマである「新たな現実」についての討議は21日、 5 日目に入り、ラオス駐在教皇大使のリン・マンカネクーン枢機卿司式のミサ、そしてFABC会長のチャールズ・ボー枢機卿の冒頭あいさつで始まり、この日のテーマとして、シノダリティ(共働性)、バチカン改革の使徒憲章 Prædicate Evangelium、指導体制、統治、そしてFABC50年の考察が挙げられた。

 この日の会議の第一報告者は、来年と再来年の2期にわたって開かれることになった世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会の文書取りまとめの責任者であるクロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルク大司教)が、シノダリティの見地からシノドス総会を取り上げ、(”シノドスの道”の歩みについての)準備文書が作成された過程と自身の経験について語った。そして、シノドス総会に至る道に関連して、「教皇が強く願われているのは、全ての人が、誰一人残さず、共に歩むこと。カトリック教会のシノドスとしての今回総会の核心は人々が耳を傾け合うこと、教会の中心にキリストとその理念があること」を強調した。

 マレーシアのクラレンス・デヴァダス神父は、これまでの小グループでの討論の概要を説明するとともに、今週のテーマは「時のしるしを読む」ことにある、と強調。耳を傾ける、会話をする、回心する、交わるの四つの枠組みを使って、成功を祝う、互いの差を認識する、新たな道を探すことで将来の機会を見つける、の三つのポイントで小グループの討論を要約した。

 1997年から2012年までドイツの司教団の途上国地域への援助組織「Misereor」の事務局長で、FABC 50組織委員会のメンバーのヨセフ・セイヤー博士は、バチカン改革の使徒憲章 Prædicate Evangeliumの意義と、アジアの教会の新しい形の指導体制と統治の可能性について考察。教皇がこの憲章で強調した改革、発想の転換、参加の重要性、およびバチカンの機構改革の中で、特にアジアの教会に関連するポイントを概説した。

 シノドス第 16 回通常総会の準備に携わっている、フィリピンの東アジア司牧研究所のクリスチーナ・ケン教授は、今週のテーマである「新たな」について語り、教会における指導力と統治の形態は、シノドス的である教会会議のルーツに立ち返る必要がある、と指摘。そのようなシノドスの指導力と統治の原則に加えて、その原則を実践するための具体的な提案を行った。

 フィリピン司教協議会の会長のシオンコ・デビッド司教は、「新しい形の指導力をどのように促進できるか」をテーマに、エルサレムで開かれた最初の公会議の背後にある歴史と聖ペテロの果たした役割を考察。「時のしるし」にも対応する聖典に根をおいた存在としての教会を強調し、教皇のバチカン改革についての洞察を提供し、より良い道を歩むための方法にも焦点を当てた。

 米オハイオ州のケース・ウェスタン リザーブ大学のカトリック研究担当、ジョナサン タン教授は、来週の討議テーマ、「FABC 50 年: 課題を話し合い、機会をつかむ」を取り上げた。タン教授は、自身の研究テーマから初めて、移民の人口統計と人口動態、FABC の豊富な文書による記録を分析し、キリスト教が、地に足の着いた共同体から、バーチャルな、今ラインの信仰共同体へと移行している実態、これからの50年に生まれるであろう時代の流れについて語った。

 この日の討議は、ボー枢機卿の夕の祈りで締めくくられた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月22日

・FABC総会16日‐主日ミサと16人のパネリストによる”バーチャル・トークショー”

(2022.10.16 FABC PRESS NOTE )

 FABC総会の最初の主日となった16日は、会場バーン フー ワーンの聖ミカエル・ホールでの朝の祈りとミサで始まった。ミサは、シンガポール大司教のウイリアム・ゴー枢機卿が主主宰。ゴー枢機卿はミサ中の説教で、「私たちは、教会の”羊飼い”としてしっかりと立ち、聖霊に完全に導かれ、識別者との役割を果たす責任がある」ことを思い起こし、祈ること、聖職者が一般信徒と共に旅を続けること、の重要性を強調した。

 ミサの後、13か国から選ばれた16人のパネリストによる”バーチャル・トークショー”が行われ、他宗教の信徒による結婚の問題、家庭問題、ひとり親の問題から、政治経済問題、人口の高齢化、身障者、女性、先住民、気候変動、テロなど、さまざまなテーマが取り上げられた。

 司会のアルウィン・ディシルバ司教は、会に先立って、参加者たちに「自分は誰の隣人になれるか」を考えるように、人々の発言を耳を澄まして聞くように求め、パネリストたちは、人々にこれらのテーマについて考える機会と希望のメッセージを提供。パネリストへの感謝の言葉の中で、総会の統括責任者であるオズワルド・グラシアス枢機卿は「私たちの心はあなたと共に鼓動している」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月17日

・FABC総会13日‐15日:アジア各国司教協議会代表がそれぞれの現状と課題を報告

(2022.10.13‐15 FABCニュース)

 FABC総会2日目の10 月 13 日は、「Visiting Asia」(加盟各国それぞれの現状と課題についての報告)の初日として、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブルネイ、ネパールのそれぞれの司教協議会代表が報告した。報告では、各国の教会と地域社会が直面しているさまざまな懸念と課題が説明されたほか、歴史と教会の活動についても話された。

 またカトリックの国際援助組織であるカリタス・インターナショナルからも、アジアにおける活動の現状と課題について説明がなされた。

 このあと、参加した司教たちは、グループに分かれて、これらの報告をもとにした意見交換を行った。

 3日目の14日は、「Visiting Asia」の二日目で、カンボジア、ラオス、インドネシア、フィリピン、タイ、東ティモール、韓国、マレーシア、シンガポールの司教協議会代表から報告があり、これを参考にする形で、欧州司教協議会連盟から代表として出席したジンタラス・ライナス・グルサス大司教から欧州の教会の現状と課題、希望などについて講話がされた。

 「Visiting Asia」の三日目の15日は、日本、台湾、ベトナム、カザフスタン、キルギスタン、モンゴル、ミャンマー、香港の各国司教協議会から報告があり、それぞれの国や地域の歴史、成果や直面している課題などについて報告。

 オスカー・アザルコン・ソリス補佐司教(ロサンゼルス大司教区)が全米司教協議会(USCCB )を代表して、FABC のこれまでの努力を称えるとともに、今回の総会が実りの多いものとなるよう期待を表明したうえで、米国の教会の現状などについて概要を説明するとともに、FABC との USCCB 共通の願望と絆を強調した。

 続いて、フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学のCatholic Safeguarding Instituteから弱者保護などに関する活動について説明があり、各国の代表たちにも弱者保護についてしっかりとした対応をするよう求めた。

 このあと、総会運営グループの担当者から、各国司教協議会から出された報告の内容をもとに、「喜び」「懸念」「教会のこれまでの対応」「FABCがどのような変化をもたらすことができるか」の4つのテーマに分けて整理したものを提示した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月16日

・11月27日からの新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」等の実施に向け、新資料を発行

(2022.10.13 中央協議会ニュース)

  • 新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」等の実施に向けて 教皇庁典礼秘跡省は2021年5月23日(聖霊降臨の祭日)付で、日本の司教団から提出されていた「ミサの式次第と第一~第四奉献文」「ミサの結びの祝福と会衆のための祈願」「水の祝福と灌水」の式文を認証しました。

 日本司教団はこの認証を受けて、2021年度日本カトリック司教協議会第1回臨時司教総会において、これらの新しい式文によるミサを2022年11月27日(待降節第1主日)から実施することを決定しました。

今後、上記の期日からの実施に向けて、各共同体で準備を進めることになりますが、そのための資料として『新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」の変更箇所-2022年11月27日(待降節第1主日)からの実施に向けて』が発行されました。

この冊子には、改訂作業の経緯や基本方針などのほか、認証された式文の全文とおもな改訂箇所の解説が掲載されています。今後予定されている各教区における新しい式文の説明会や各共同体での勉強会などの機会にもご活用ください。(※情報を随時追加いたします。)

*各共同体での準備のために

 

*新しい「ミサの賛歌(ミサ曲)」の楽譜と音源について

以下は、11月27日(待降節第一主日)から新しい「ミサの式次第と奉献文」の実施に向けて、日本カトリック典礼委員会が準備した「ミサの賛歌(ミサ曲)」の楽譜と音源です。練習のために楽譜をコピー、印刷してお使いください。

今回は「一般用」の楽譜のみを掲載しますが、後日「伴奏用」も掲載します。
また、「ミサの式次第」の楽譜も準備が整い次第、掲載します。




2022年10月14日

・アジア司教協議会連盟総会は30日までー「最終文書でアジアの教会のビジョンを明確にする」とグラシアス枢機卿

(2022.10.13  カトリック・あい)

 12日から始まったアジア司教協議会連盟の創立50周年記念総会の詳細な日程が明らかになった。

 総会の総括責任者であるオズワルド・グラシアス枢機卿(インド・ボンベイ大司教)が、総会冒頭で説明したもので、それによると、総会は12日から30日まで開かれ、「より良いアジアのために生き、活動する教会の使命を再確認し、現在から未来に向けてその在り方を刷新し、活性化するという大きな責任を負る」としている。

 そして14日までの最初の3日間は、連盟に属する 29 か国のすべての司教協議会代表から、それぞれの国の政治、社会、経済、宗教、およびカトリック教会にとっての現状と課題について説明を聞く。その内容は会議参加者限定で、中継などで公開されることはないが、16日の日曜日に行われるオンラインのトークショーなどで説明される予定。

 17日からの一週間は、それまでの各国からの報告や問題提起などをもとに、アジアの教会に影響を与えている新たな現実について深く考える。これまでの準備の過程では、新型コロナウイルスの世界的大感染、グローバリゼーション、デジタル化、都市化、気候変動、移民・難民、政治的な統治、文化の変容、宗教や家庭についての価値観の変化、若者や女性の役割ーなどが、テーマとして挙げられている。

 同時に、教皇フランシスコがこれまでに出された回勅「兄弟の皆さん」「ラウダ―ト・シ」、使徒的勧告「福音の喜び」「(家庭における)愛の喜び」などについて理解を深め、アアジアの現実についての意見交換の中で明らかになった課題についての対応を考えるヒントを得る。具体的な対応を考える課題としては、家庭の司牧ケアの重視、礼拝、養成などの刷新、オンラインの活用、対話、平和構築、和解、若者への対応の強化、教会における女性の役割の向上、諸宗教間の対話、シノダル(共働的)な教会の統治のあり方などが想定されている。

 23日の日曜には、参加者たちがアジア諸国のさまざまな小教区を仮想訪問し、福音宣教の現場での問題などへの認識を深め、総会での話し合いが単なる理論的なものにとどまらず、現場に密着した、愛ある奉仕を通して”王国の構築”につながるようにする。

 24日からの最後の週は、「より良いアジアのために働く教会」に向けた新たな道を見極め、思い描くことに費やされる。専門家が新しい方法論を使って参加者たちを導く。

 グラシアス枢機卿は冒頭説明で、「私たちは、アジアの人々の奉仕において、予言的で、関連性があり、応答性の高いアジアの教会になることを約束する」とし、30日の閉幕には、声明と最終文書を出し、「アジアにおける教会の道の新しいビジョンを明確にする」と述べた。ただし、この総会をもって取り組みは終わるのでなく、今後の FABC 中央委員会の年次会合、来年3月のアジア大陸会議で、アジアの教会の新たな道筋と方向性についてさらに検討を加える。

 

することを約束します。私たちの最後の FABC 50声明は今後数か月で取り組まれ、新しい道筋を実行に移し、今後数年間、そして次の10年に向けてアジアの教会を活性化することに専念します.

2022年10月13日

・「歴史が招き、聖霊が動くーアジアの教会を前進させよう」アジア司教協議会会長が開会あいさつ

(2022.10.13 FABC news)

 アジア司教協議会連盟(FABC) を代表して、大きな喜びと歓喜とともに、私の兄弟である司教、司祭、修道女、そして神の民の皆さまを温かく歓迎いたします。 生き、愛し、解放してくださる神イエスの祝福が、私たちすべてと共にありますように。

 私たちはこの恵みの瞬間を待っていました!創立50周年の記念の瞬間! おめでとうございます。

 これは、アジアの教会にとって輝かしい瞬間であり、FABC は50周年を迎えています。 キリスト教の第三の千年紀が進む中で、歴史が手招きし、御霊が動きます。 私たちは共に言いますー 「アジアの教会を前進させよう! 」と。これはアジアの教会にとって記念すべき瞬間です。創立50周年を迎えた喜びは、今世紀を、”シノドスの道”への招き、アジアと世界にとっての朗報の呼びかけとするかもしれません。

 これらは恵みと感謝の瞬間です。 まず第一に、私たちの優雅なホストであるフランシス・ザビエル・クリエンサック・コヴィタヴァニー枢機卿とタイ教会に感謝します。 このイベントの計画と準備に多くの日数を費やされたすべての方々に、祝福のシャワーが降り注ぎますように。 ここにいる私たちは、大きな恵みを感じています。

 私たちは、霊的な広大な風景が広がりを目の当たりにし、多様で色とりどりの人々のきらびやかな存在に遭遇しています。私たちは、偉大な諸宗教の発祥地であり、偉大な諸文化の本拠地、活気あふれる多様性をもつ偉大なアジア大陸を与えてくださったことを、主に感謝します。すべての文化、すべての言語、すべての国を歓迎します。この瞬間ー教会のを歴史におけるアジアの瞬間ーを作るために、共に力を合わせましょう。今日、すべての計画と希望が収れんします。

 アジアのすべての教区は、ここ数年、シノダル(共働的)なやり方で、創立50周年記念総会に向けて準備を進めてきました。この交わりに参加してくださったすべての司教、修道者、司祭、そして神の民に心から感謝します。

 50周年を記念するに当たり、その霊がこの集まりと共におられる聖ヨハネ・パウロ二世教皇の呼びかけを思い起こしたいと思います。 教皇は、1999 年のアジア地域シノドス(代表司教会議)に出席され、次のように宣言されました。

 「(FABC創立30周年を迎える)特別の年は『世界の救世主がアジアで生まれた』ことを宣言する機会です。その通りです。今日、私たちはその主張を受け入れます。アジアで生まれたキリストは、この最も大きな大陸の極めて多くの人々に宣べ伝えられる必要があります」。

 主に感謝するために、私たちが喜びをもって集まり、記念の年の祝いの中で、私たちは聖ヨハネ・パウロ二世教皇に導かれ、教皇が言われたように、「感謝をもって過去を思い起し、熱意を持って現在を生き、自信を持って未来を待ち望みます」。

 私たちはこれまでなされてきた多くのことに感謝します。アジアの神学的考察、文化、宗教、貧困との対話、女性や若者への配慮、大きな試練の中での協力、迫害された兄弟姉妹への支援、多くのアジア諸国での健康と教育、そして文化を超えた継続的な協力によって、FABC は堅牢な組織になりました。

 私たちは、アジアの神の民、脅威の中で動じることなく、挑戦の中で寛大さを持ち続け、多くの国でカトリック共同体が小規模であるにもかかわらず熱意を持っていることに、感謝します。彼らはアジアの教会の光であり、種であり、酵母です。

 聖ヨハネ・パウロ二世教皇は「希望を持って、現在を生きるように」と呼びかけられ、教皇フランシスコは、ミャンマーでの諸宗教の会合でこのように言われました。「私たちが正義、平和、そして一人ひとりの人間の尊厳の永遠の価値を声をそろえて主張するとき、私たちは希望の言葉を語るのです」。アジアの教会は、キリストの夢がアジアに戻るように、正義と平和への福音宣教に熱意を示すように、求められています。

 未来は確信にあふれた巡礼を求めています。歴史が手招きします。聖霊は、私たちを動かします。アジアの教会への福音宣教を宣言しましょう。21世紀を、アジア全体にイエスの福音を伝える世紀にしましょう。アジアがキリストのメッセージが宣言された最初の大陸であることを忘れないようにしましょう。アジアは、使徒トマス、フランシスコ・ザビエルなど偉大な人々、そして無数の男女が、福音宣教に惜しみなく奉仕した大陸です。彼らの模範的行為に拍車をかけましょう

 この集まりを、神が聖霊で満たしてくださいますように。この会議の期間中、いくつもの言語、いくつもの文化を、神が呼びかける同じ言葉で聞きましょう。聖霊が私たちの言葉を振る舞いに生気を与えてくださいますように。

 私たちに課せられた任務は、 FABC 創立50周年総会のテーマに示されていますー「アジアの諸民族として、共に旅する…彼らは別の道を通って…行った(マタイ福音書2章12節)」。そして、「アジアにおける教会の現実と、これまでもあり、また新たに浮上してきた課題」を反映したものになることを目的としています。

 東方の賢者たちのように、私たちはイエスに出会い、受肉の神秘に触発されるためにここに集まりました。彼らのように、希望の星にさまざまなやり方で導かれますが、目的地は同じー人類を悪魔と人的災害の支配から解放された確固たる存在にする、というイエスの夢です。福音宣教の希望の星であり、マグニフィカット(我が心、主を崇め)の聖母マリアが、私たちの存在と会議のすべての瞬間を祝福してくださいますように。会議の終わりに、私たちが聖母マリアと共に歌うことができるように、執り成してくださいますように。

 最後に、FABC と会議の出席者全員を代表して、微笑みの国、タイの方々の素晴らしい寛大さに感謝いたします。皆様を心から歓迎いたします。50周年記念の祝いを始めましょう。聖霊が私たちの目を開き、私たちの心が、三位一体の宣教師の熱意の恵みで祝福されますように。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月13日

☩「聖霊があなたがたに語っているのは何だろうか」教皇がアジアの司教たちに問いかけ

 

*「未来に目を向け、聖霊が今、何を求めているかを識別せよ」

 また、教皇は未来に目を向けられ、アジアの司教たちに「未来に目を向け、聖霊が今日、あなたがたに何を求めているかを識別するように」促された。そして、「あなたがたは今、集まりを開こうとしています。私は、あなたがたが取り組もうとしている友愛と意見交換の務めに、何らかの形で同行したい、と思っています」と述べられた。

 さらに、「地域の司教協議会の集まりが努めて会合を持つことは重要であり、そうすることで教会が形成されます。その歩みの基本的となるのは、聖霊が、アジアの教会に何を語っているか、ということあり、その言葉に、あなたが答えねばならないということです」と説かれた。

*「普遍教会は、”均一の教会”ではない、それぞれの特徴を大事にする教会」

 教皇はまた、一般信徒に向けて次のように語られた。

 「一般信徒が、洗礼を受け、信徒としての役割を果たし、それぞれの個性を大事にしますように。なぜなら、普遍的な教会は、”均一の教会”ではなく、普遍的であり、それぞれの教会の特徴を尊重する教会だからです」

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2022年10月13日

・アジア司教協議会連盟の設立50周年記念総会始まるー多様性の中で共に歩む道を定める

(2022.10.12 カトリック・あい)

 アジア司教協議会連盟(FABC)の設立50周年を記念する総会が12日からタイの首都、バンコクで2週間の予定で始まった。

 総会のテーマは「アジアの諸民族として共に旅する…彼らは別の道を通って…行った(マタイ福音書2章12節)」で、 日本、中国、台湾、インドなど27のメンバー国の司教協議会と特別行政区の香港、マカオから、枢機卿、大司教、司教あわせて270人以上が参加して、2週間にわたって協議を続ける。

 アジアのカトリック通信社LiCAS.newsによると、総会の冒頭、主催国のタイの司教協議会から「私たちは誇りと喜びをもって創立50周年の総会に参加し、この歴史的な会議の成功のために聖霊の導きを祈ります」と歓迎の声明が出された。

 総会の目的については、総括責任者であるオズワルド・グラシアス枢機卿(インド・ボンベイ大司教)から事前に、「アジアの教会を再確認し、更新し、活性化し、今後数十年にわたる、共に歩む旅の方向を定めること」が示されている。

 また教皇フランシスコからも前もってのメッセージが出されており、今総会が「広大なアジア大陸の豊かに多様な人々、文化、社会的現実の間で福音を広めるための友愛の交わりと宣教の熱意において、アジアの教会を新たにするものとなるように」との期待を表明されている。

 2週間の総会では、司教たちによる全体会議と部会のほか、ビデオ会議に一般信徒が参加するイベント、アジア中から選ばれた14の小教区での教会活動などの実情をオンラインで伝える”バーチャル訪問”なども計画されている。

 なお、FABC は、「アジアの教会と社会の福祉のために、連帯と共同責任を育むこと」を狙いとして、教皇庁の承認を得て1970年に設立されたアジアの司教協議会が集まった「任意団体」。そのステータスを、他の地域の司教協議会連盟並みに引き上げることについても意見が交わされる可能性がある。

2022年10月12日

・菊地・司教協議会会長がアジア連盟50周年総会に当たって祈りのお願い

(2022.10.12 カトリック・あい)

 アジア司教協議会連盟(FABC)の50周年記念総会が12日からバンコクで始まったが、日本の司教協議会会長の菊地・東京大司教が11日付けで、日本の信者あてに以下のお願い状を出した。

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日本のカトリック信者の皆様  FABC50周年総会開催にあたってのお祈りのお願い

 アジア各国の司教協議会の連盟組織であるアジア司教協議会連盟(FABC)は、1970年に誕生し、すでに50年以上にわたり、アジアにおける牧者である司教たちの協働性を具体化し、アジアにおける福音宣教のために協力し合い、またそのためにアジアの教会独自の道を模索する研究や啓発活動を続けてきました。

 このたび、コロナ禍で2年遅れてしまいましたが、創立50年を記念した総会が、バンコク大司教区の司牧センターを会場に、10月12日から10月30日まで開催されることになりました。

 今回の総会は、「FABC50周年:アジアの諸民族としてともに旅する…彼らは別の道を通って…行った(マタイ福音書2章12節)」をテーマと定め、アジアの教会に対する主の呼びかけを識別し、これまでの活動を振り返りながら、アジア各地の教会の現状に目を向け、将来に向けての機構改革を視野に、FABCの在り方そのものを見直す機会とされています。

 そのため、通常よりも参加人数を拡大し、通常であれば各国・地域二名程度の司教の参加であるところ、例えば日本からも前田枢機卿様やわたしをはじめ、6名の司教が参加することになっています。さらに会期中には、オンラインを活用して信徒の方々の声に耳を傾ける機会を設けており、日本からの声も届けられる予定です。

 また教皇様はご自分の特使として、アントニオ・タグレ枢機卿様を派遣され、枢機卿様は閉会のミサを司式されることになっています。

 会期中、毎日の朝の祈りは参加各国・地域に割り振られ、事前に作成したビデオでの祈りが行われます。組織委員会から、それぞれの国・地域が担当する日には、司教たちだけでなく、その国・地域の教会全体で祈りをささげてほしいという希望が寄せられています。

 日本が朝の祈りを担当するのは10月25日(火)となっています。この日には、ぜひ一日のうちどこかで、司教たちのために、FABCのために、アジアの教会のために、お祈りいただければ幸いです。また総会期間中、司教たちの上に聖霊の導きがあるように、皆様からお祈りいただけましたら、幸いです。

2022年10月11日 日本カトリック司教協議会 会長 カトリック東京大司教 菊地功

2022年10月12日

・「忘れられた人道危機を生きる人びと、ロヒンギャと共に」国境なき医師団が10月8日にトークイベント

(2022.9.27  カトリック・あい)                                              © Elizabeth D. Costa/MSF

© Elizabeth D. Costa/MSF 国境なき医師団(MSF)が、難民や移民の人びとが置かれた状況や医療ニーズについて紹介する「エンドレスジャーニー展・大阪~終わらせたい、強いられた旅路~」を開くのに合わせて、10月8日に大阪の会場とオンラインで、ミャンマー国軍による迫害で5年以上も避難生活を余儀なくされているロヒンギャの人々に光を当てたトークイベントを開催する。

 世界の難民や国内避難民は、国連難民高等弁務官事務所によると1億人*を超えている。しかし、そうした危機に置かれた人びとの声や思いは十分に知られていません。MSF主催のエンドレスジャーニー展は、難民や移民の人びとが置かれた状況や医療ニーズについて紹介するもので、トークイベントもその一環。

 今年の7月にバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプを視察した国境なき医師団日本事務局長の村田慎二郎のほか、在日ロヒンギャ女性で通訳・翻訳家の長谷川留理華さん、数々のロヒンギャ難民の現地取材を行ってきたルポライターの増保千尋さんをゲストに迎え、現在進行形のこの人道危機のみならず、ロヒンギャの人びとの文化や歴史についても理解を深めるのが狙いだ。

開催要領は以下の通り。*開催日時=10月8日(土)午後4時半から6時 *会場=関テレ扇町スクエア 1Fイベントスペース(大阪市北区扇町2-1-7)およびオンライン(YouTube)

  *申し込み=https://www.msf.or.jp/event/detail/20221008.html

2022年9月27日