・FABC総会第二週の討議テーマ「新たな現実」第2日ー「若者、女性の役割と参加など」

(2022.10.18 FABC news press note)

  2022 年 10 月 18 日、FABC 総会の「新たな現実」に関する討議の第二日は、オズワルド・グラシアス枢機卿の司会で、第一セッションの「若者:教会の声」で教会における若者の関心と役割に関するグループ討論から始まった。

*「司祭は若者にもっと耳を傾ける必要」

 最初に講演した日本の高松教区の青少年担当司祭の高山神父は、司祭が若者の声に耳を傾け、再福音化されること、若者と協力すること、家庭や会社、学校とは異なる教会において、若者たちを単なる労働力以上の存在とみることの重要性を強調。司祭や教会をリードする人たちが彼らを霊的に導き、その成長を見守ることを希望した。

 続いて、グラシアス枢機卿の求めに応じて演壇に立ったアンソニー・ジュディ氏、アシタ・ジミー氏の二人は「私たちの声に、教会はもっと耳を傾けてほしい」と願い、若者に信頼と真の関心を示し、若者と会話し、共に旅をする必要性を強く訴えた。

*「コロナ禍で”デジタル化された個人主義”に追い込まれている」

 マレーシアのクアラルンプール大司教区青年担当司祭であるグレゴリー・プラビン神父は、「新型コロナの大感染が、いかに人々を”デジタル化された個人主義”の世界での”自給自足”の状態に追い込み、主を渇望することがなくなったか」について説明。「若者がいない」から「私が若者の中にいない」に考えを改め、”羊飼い以上”の存在、探求者になるように、と参加者たちに呼びかけ、若者たちを教会活動を再び経験するような新しい仕組みと方法を考え出す必要性を強調した。

 次に講演したのは Ecclesia of Women in Asiaのメンバーでアテネオ・デ・マニラ大学神学部のステファニー・プエン教授、香港神学哲学神学校のメアリー・ユエン教授、そしてColombo Province of the Sisters of the Holy Familyの会員で人権活動家のシスター・ラシカ・ピエリスの3人。

*「女性に対する”思いやりの文化”を作るように」

 「アジアの教会における女性の役割の新しい道」をテーマに、アジアの女性たちが直面している課題ー男女差別、女性蔑視、家庭人と社会人の一人二役の強制、収入の男女格差、家庭内暴力などーの背景にある問題から話を始めた。

 プエン教授は、「思いやりのある正義の概念」を紹介し、多くの女性にとって思いやりがいかに過小評価されているかを強調。思いやりはすべての人の責任であるべきであり、連帯、対話、信頼、尊敬をもってなされるべきであり、参加者たちに「思いやりの文化」を作るように求めた。

 またユエン教授は、自身の経験をもとに、特に新型コロナ大感染の後にアジアの女性が直面している社会的、経済的問題を指摘。司牧ケア、困窮者の支援、危機にある家庭の支援、人としての権利と尊厳の保証など、教会が取り組くことのできる司牧的見地からの対応を提案した。また、教会活動に消極的な女性の参加を促すことや、性差別が教会のどの場で起きているのかに注意を向けるように呼びかけた.

*「女性を平等に扱い、教会の意思決定に参加させよ」

 シスター・ピエリスは「しっかりした男性は、平等を求める女性たちの声にたじろぐことはありません」としたうえで、アジアの女性が社会変革の主体になることにつながるいくつかの考えを提唱。具体的には、男性優位の階層制を払拭する社会構造の変革、女性と少数者の闘いを反映した神学の構想、神のより包括的なイメージの構築、などを挙げ、「女性が本格的に意思決定に参加する市民となり、教会においても平等に扱われる信徒となる必要性を強調した。

 続いて講演した国際カトリック移民委員会(ICMC)のクリスティン・ネイサン氏は、「移住がいかに100万人以上の命に関わる大きなビジネスになっているか」について説明。多くの社会経済的闘争、人身売買、危険な仕事、奴隷労働、差別がもたらされていることを指摘し、労働契約の適正化、雇用機会の獲得支援など、教会がすることのできる移民・難民支援を具体的に提案した。

*「移民・難民に関連して起きている人身売買の廃絶に全力で取り組め」

 人身取引に反対する奉献生活者の国際ネットワーク「Talitha Kum Asia 」の地域コーディネーター、シスター・アビー・アベリーノは、その活動の現状について、草の根レベルで、人々と協力し、意識を高め、社会的弱者に寄り添い、人身売買の防止と被害者のケアの両方に取り組んでいること、被害者を癒し、力つけることを目指していること、などを説明した。

 インターネット参加の英国のイングランド・ウェールズ司教協議会のヴィンセント・ニコルズ会長は「人身売買に反対する人々の多くの努力にもかかわらず、”負け戦”になっている」と率直に語り、参加者たちに、人身売買廃絶に向けて可能な限りの時間と努力を捧げるように呼びかけた。

 バチカンの総合人間開発省のファビオ・バギオ神父は、同省での活動の範囲と目的、社会的使命への関わりについて説明し、会議の期間中、必要に応じて支援を提供することを申し出た。

*「現代の社会で、私たちが人々にどのように希望を広められるか、考えよう」

 カトリック教会の援助組織「Caritas Asia」の前会長、菊地功・東京大司教は、教皇フランシスコの回勅「兄弟の皆さん: 人類の友愛への呼びかけ」を取り上げ、教皇がこの回勅を出された当時、すでに新型コロナウイルスの世界的大感染が起きていたことに言及しつつ、回勅が教皇が強調されている「相互依存」「多様性と連帯の調和」の重要性を指摘。「すべてのキリスト教徒がどのように証しをするよう求められているか」について語り、参加者たちに「現在の世界で、私たちが、人々にどのように希望を広めることができるか」を考えるように求めた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年10月23日