・ユダヤ人大量虐殺関連で新たな手紙とナチスの短剣が見つかるー教皇ピオ12世の役割巡る議論再燃(Crux)

(Pope Pius XII. (Credit: Vatican News.)Letter, Nazi dagger rekindle debates over wartime role of Pope Pius XII

(2023.9.18 Crux staff)

ローマ – 教皇ピオ12世に関する2つの新たな発見により、第二次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)における教皇の役割を巡る議論が再燃している。

 バチカン当局の了解を得てイタリアの新聞、Corriere della Seraが17日発行の日曜版で報じたところによると、バチカン文書館の職員でもある研究者が、教皇がホロコーストについてこれまで考えられていたよりも早くから知っていたことを示唆する手紙や、回心したナチス親衛隊将校が教皇に贈った短剣などを、文書館の未整理資料の中から発見した。

  この手紙は、バチカン文書館が公開する予定のピオ12世関係の一連の資料の一部。 この問題は、ローマのイエズス会運営のグレゴリアン大学で10月9日から11日に開く「The new documents from the pontificate of Pius XII and their significance for Jewish-Christian relations(ピオ12世の教皇職時代の新たに得られた文書と、ユダヤ人とキリスト教の関係における重要性」題された国際会議でも取り上げられる可能性が高い。

 掲載された写真の手紙は、反ナチのドイツ人イエズス会士、ローター・ケーニッヒ神父が、教皇ピオ12世の個人秘書で、ドイツ人のロバート・ライバー神父に宛てられたもので、日付けは1942年12月14日となっている。

 この手紙の中で、ケーニッヒ神父は、ドイツ占領下のポーランド、現在のウクライナ西部にあったベウジェツ強制収容所*で「毎日推定6,000人のユダヤ人とポーランド人が殺害されている」と報告している。またアウシュヴィッツとダッハウの強制収容所についても言及している。

 *ベウジェツ強制収容所=ナチス・ドイツが設置した三大ユダヤ人絶滅収容所の一つ。三つの絶滅収容所の中では最初に作られ、他の二つの絶滅収容所のモデルともなった。開設から閉鎖までのわずか1年の間に40万人にも及ぶ
ユダヤ人をはじめとして、ロマ民族・ポーランド人政治犯などが大勢ここで殺害されている。(「カトリック・あい」)

 手紙は、教皇フランシスコが2000年3月に、「1939年から1958年まで続いたピオ12世の教皇在任中の資料の全面公開」を決定した後、研究者が利用できるようになった数多くの未整理資料の一部。「大戦中、教皇ピオ12世は、ナチスの大量虐殺の範囲について散在的で矛盾した報告しか受けていなかったため、ホロコーストを明確かつ公けに非難しなかった」という、教皇を擁護する人々のこれまでの主張を支持するのをより難しくするものだ。

  この資料を発見したバチカン文書館の研究者、ジョバンニ・ココ氏は、Corriere della Sera紙とのインタビューで、その重要性を強調し、「私たちは、半世紀にわたって、間接的な情報の形で文書や情報源について議論してきましたが、今、直接の情報源を持つことになった。今後、恐らくほかの情報源も出てくるでしょう。 私たちは、ピオ12世が教皇として教会を導いた悲惨な時期を理解できるように、できるだけ誰でもが情報にアクセスできるように努めています。恐れや偏見なしに、すべてを明らかにせねばなりません」と語った。

 シスター・レーナは大戦中、ピオ12世に代わって、ユダヤ人を教会施設に保護する取り組みの調整役を務めていたが、彼女の話によると、「その短剣は、ナチの親衛隊将校が教皇に謁見した際、謁見の場に持ち込み、それを使って教皇を襲う計画を立てていたが、将校はその場で心変わりし、悔い改めのしるしとして、短剣を教皇に差し出した」ということだった。 短剣の写真は、Corriere della Sera紙の日曜版に載せられた。

  ピオ12世を批判する人々、長年にわたって、ホロコーストに対する彼の「沈黙」を批判してきたが、ピオ12世擁護派は、教皇がユダヤ人や他のナチスの犠牲者を救うために舞台裏で動かれた、と主張している。

 ココ氏は、ピオ12世が当時、公式声明を出すにあたっては、「いくつかの懸念が影響を与えた」とし、「ポーランド領内でのナチスの絶滅収容所運営を、教皇が直接非難した場合、ポーランドのカトリック教徒に危害が及ぶ可能性があった。非難声明を出せば、当時、ナチスの支配下にあった国や地域の司教たちとの関係を断つことを意味したでしょう」と説明した。

 その一方で、「反ユダヤ主義が関係している可能性があった」とも指摘。 「当時の世界のカトリック教会の大部分に、ユダヤ人に対する偏見が存在しており、ユダヤ教という宗教のレベルだけでなく、時にはユダヤ人そのものを憎む心理があったのは否定できない」と語った。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年9月19日

・教皇、東京大司教区の補佐司教にアンドレア・レンボ師を任命

 教皇フランシスコが16日、東京大司教区の補佐司教に、ミラノ外国宣教会・東アジア管区長のアンドレア・レンボ師を任命、これとともにムリア名義司教のタイトルを与えられた。司教叙階式は12月16日(土)を予定している。

 東京大司教区の補佐司教は、幸田和生師が、菊地大司教は、2017年12月に大司教に就任した半年後の2018年6月に、補佐司教を辞任して以来、5年余り空席が続いていた。

 レンボ被選司教は、1974年5月12日、イタリア・ロンバルディア州ベルガモ県トレヴィリオの生まれの49歳。イタリア・モンツァのミラノ外国宣教会(P.I.M.E)・国際神学院で勉学の後、米国デトロイトの同会共同体で1年間研修し、 フィリピンのDivine Word School of Theology で神学学士タイトル取得、北イタリア神学院(Facoltà Teologica dell’Italia Settentrionale)でさらなる学究を続けた。2004年6月12日、司祭叙階。2004年から2008年、P.I.M.Eヴィッラ・グルガーナ(イタリア)の共同体で宣教・召命に関する指導担当。2009年から2011年、日本で語学研修。板橋教会・叙任司祭(2011年〜2012年)。習志野教会・叙任司祭(2012年〜2017年)。2017年からミラノ外国宣教会・日本管区長。2023年から同東アジア管区長を兼務。府中教会・主任司祭(2017年〜2023年)。真生会館・理事長(2021年〜)。

(編集「カトリック・あい」)

2023年9月17日

・バチカンのズッピ・ウクライナ和平代表、中国外務省のユーラシア事務特別代表と会談-”対話促進”で合意?

Cardinal Matteo Zuppi leads a prayer for peace in BerlinCardinal Matteo Zuppi leads a prayer for peace in Berlin 

(2023.9.15 カトリック・あい)

    教皇フランシスコからウクライナ和平に向けた関係国との交渉を委ねられているマテオ・ズッピ枢機卿が13日から中国入りし、中国外務省でウクライナ問題を担当する李輝ユーラシア事務特別代表と協議、和平実現のための対話促進に両者が協力する必要を訴えた。

 現地時間14日午後、バチカン報道局が発表した声明によると、両者の会談は「オープンで心のこもった雰囲気の中で進められた」とし、「ウクライナ戦争とその悲劇的な状況について意見を交換し、対話を促進し、和平につながる道を見つけるための努力を重ねる必要性が強調された」と説明。

 また、世界の食糧生産国であるウクライナへのロシアの軍事侵攻によって、世界の食糧安全保障が危機にされていることについても、「特に最も危険にさらされている国々への穀物の輸出が速やかに保証されることを期待する」という形で両者が言及した、としている。

 ズッピ枢機卿は、ウクライナ和平への教皇の強い思いを受けて、6月上旬のウクライナを皮切りに、同月下旬にロシア、さらに7月中旬に米国を訪問し、各国政府や教会の担当責任者と会談、和平への協力を要請してきた。

 バチカン報道局は、今回の枢機卿の中国訪問に当たって、「人道的取り組みを継続し、公正な和平ににつながる道を追求するという教皇が果たそうとする使命の新たな一歩」としていた。

 李輝ユーラシア事務特別代表は、前職が駐露大使で、それ以前も旧ソ連時代の中国大使館勤務を長く続けて来た”ロシア通”。 5月にもモスクワを訪問し、ラブロフ外相や、独立国家共同体(CIS)を担当するガルージン外務次官と会談している。ただし、外相や次官よりも格下で、外交政策の実権を握る共産党におけるランクは高くないと見られる。しかも、中国では7月に秦剛外相が就任から半年余りで解任され、後任に前外相で外交を統括する王毅・中国共産党政治局委員が復帰したばかり、という状態で、今回の会談の結果が、中国のウクライナ和平への取り組みにどれほどの影響を与えるのか判然としない。

 

2023年9月15日

・教皇和平特使のズッピ枢機卿、13日から中国へーウクライナ和平努力の一環

File photo of Cardinal ZuppiFile photo of Cardinal Zuppi 

(2023.9.12 Vatican News  By Devin Watkins)

  バチカン報道局は12日、  マテオ・ズッピ枢機卿(イタリア司教協議会会長)が教皇の和平特使として13日から15日にかけて中国・北京を訪問する、と発表した。

 ズッピ枢機卿はこれまで、6月5~6日にキエフ、6月28~29日にモスクワ、7月17~19日にワシントンを訪れ、各国の政治や宗教指導者などと会い、ロシアのウクライナ軍事侵攻で問題となっている人道問題や和平実現に理解と協力を求めて来た。北京訪問もその一環だ。

 バチカン報道局の声明によると、「今回の訪問は、人道的取り組みを堅持し、公正な和平実現につながる方策を模索する教皇の決意のさらなる一歩」となることを目指す。

 ズッピ枢機卿は、聖エジディオ共同体が主催し、12日まで開かれていた国際平和会議に参加するために訪れたベルリンで、記者団に対し、ウクライナ和平実現に向けて努力を続けることの重要性を強調。「この努力には、世界の主要国すべてが関わらねばなりません。ウクライナの人々自身が平和を取り戻せるようにする必要があるのです。押し付けではなく、主要国すべての保証、献身、努力によってウクライナの人々自身が選ぶ平和でなければなりません」と強調している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年9月13日

・バチカン、30日の新枢機卿叙任式などの日程発表

 

(2023.9.12 カトリック・あい)

 バチカンの教皇儀典室が11日、新枢機卿の叙任に関する儀式などの日程を発表した。それによると、叙任式のミサは9月30日(土曜)午前10時から、聖ペトロ大聖堂で教皇フランシスコの司式で行われる。この後、午前11時30分から午後1時30分まで新枢機卿たちへの表敬が予定されている。また、世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会の開会日となる10月4日は、午前9時から聖ペトロ広場で、教皇が新たに叙任された枢機卿を含む枢機卿団とともに開会のミサを捧げられる。

詳細の公式英語訳全文は以下の通り。 

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Notice from the Office of Liturgical Celebrations, 11.09.2023

 

Notification

PAPAL CHAPEL
ORDINARY PUBLIC CONSISTORY FOR THE CREATION OF NEW CARDINALS
Saturday 30 September 2023

 

HOLY MASS
WITH THE NEW CARDINALS AND THE COLLEGE OF CARDINALS AND OPENING OF THE ORDINARY GENERAL ASSEMBLY OF THE SYNOD OF BISHOPS
Wednesday 4 October 2023

 

On Saturday 30 September 2023, at 10.00, in Saint Peter’s Basilica, the Holy Father Francis will hold an Ordinary Public Consistory for the creation of new Cardinals, for the imposition of the biretta, the consignment of the ring and the assignation of the Title or Deaconry

The Eminent Members of the College of Cardinals are requested to arrive by 9.30 at the Altar of the Confessio, wearing their proper choral habit.

The newly created Cardinals, in choral habit, without the ring, zucchetto or biretta, must be present by 9.30 at the Chapel of Saint Sebastian.

The Patriarchs, Archbishops, Bishops and all those who, in conformity with the Motu Proprio “Pontificalis Domus” compose the Papal Chapel and who, having received the required Notification via celebrazioni@celebra.va, wish to participate in the Consistory, wearing their proper choral habit, are requested to be at 9.30 a.m. at the Altar of the Confessio, to occupy the place which will be indicated to them by the Pontifical Masters of Ceremonies.

 

***

On Saturday 30 September, from 11.30 to 13.30, the courtesy visits to the new Cardinals will take place.

 

***

On Wednesday 4 October, at 9.00, on the parvis of Saint Peter’s Basilica, the Holy Father will preside over the Eucharistic Celebration with the new Cardinals and the College of Cardinals, also on the occasion of the Opening of the Ordinary General Assembly of the Synod of Bishops.

The following may concelebrate with the Holy Father:

– newly created Cardinals, to be present in choral habit by 8.15 in the Gregorian Chapel;

– the College of Cardinals and the Patriarchs, to be present by 8.15 in the Chapel of Saint Sebastian, bringing with them the white damask mitra;

the Archbishops, Bishops and the Presbyters, members of the Synod, with the appropriate ticket, who will be in the Braccio di Costantino by 8.00, bringing with them: the Archbishops and Bishops, amice, surplice, cincture and white mitre; the Presbyters, amice, surplice and cincture;

– the other Archbishops and Bishops, provided with a special ticket, issued by the Office for the Liturgical Celebrations of the Supreme Pontiff through the procedure indicated on the website https://biglietti.liturgiepontificie.va/, who will be in the Braccio di Costantino by 8.00 bringing with them amice, surplice, cincture and white mitre;

– the Presbyters, provided with a special ticket, issued by the Office for Liturgical Celebrations of the Supreme Pontiff through the procedure indicated on the website https://biglietti.liturgiepontificie.va/, who will be present by 8.00 directly in the sector reserved for them in Saint Peter’s Square, where they will put on the amice, surplice, cincture and white stole that they will have brought with them.

The Patriarchs, Cardinals, Archbishops and Bishops and all those who, in accordance with Motu Proprio “Pontificalis Domus” make up the Pontifical Chapel and who, having received the required Notification through the email address: celebrazioni@celebra.va, wish to participate in the liturgical celebration without concelebrating, wearing their proper choral habit, are asked to be on the parvis of Saint Peter’s Basilica by 8.30.

Vatican City, 11 September 2023

 

By mandate of the Holy Father

✠ Diego Ravelli

Tit. Archbishop of Recanati
Master of Pontifical Liturgical Celebrations

2023年9月12日

・教皇、モンゴル訪問終え、ローマへの帰途に

(2023.9.4 Vatican News  By Devin Watkins)

    教皇フランシスコは4日昼、モンゴル訪問を終え、首都ウランバートルのチンギス・ハーン国際空港から空路ローマへの帰途に就かれた。ローマ現地時間の同日夕にフィウミチーノ空港に着陸する予定。

 モンゴル訪問最終日の4日は、朝、ウランバートル市内の使徒座知牧区公邸で非公開のミサを捧げられ、訪問を支えたスタッフと教皇滞在中同行した使徒座司牧苦司教のマレンゴ枢機卿に謝意を述べられた。その後、最後の公式行事として、カトリック教会が運営する貧困者の診療や家庭内暴力の被害者、ホームレス支援の「慈しみの家」の開所式に参加、祝福を与えられた。

2023年9月4日

・教皇、ボッカルディ駐日教皇大使の退任を承認-この重要な時期に”定年前倒し”の外交官規則”活用”とは?

(2023.9.1  カトリック・あい)

 バチカンの9月1日付けの公式発表によると、教皇フランシスコが同日付けで、駐日教皇大使、レオ・ボッカルディ大司教の大使退任願を受理、退任を認めた。後任は発表されていない。ボッカルディ大司教は、現職のまま急逝したジョセフ・チノッティ前大使の後を継いで、2021年3月に駐イラン大使から駐日大使に就任した。それからわずか2年半での退任となる。

 高位聖職者の役職定年は慣習的に75歳となっているが、バチカンには「70歳を迎えた時点で現職からの引退を前倒しできる」という外交官のための規則(art. 20, § 2)がある。今年4月15日に、70歳の誕生日を迎えた大司教は、この前倒しルールを使って引退願を出したものだ。

 司祭、信徒の急激な高齢化、減少への対応という重い課題を抱える日本の教会には、緊急にバチカンの判断や指導が求められているいつくかの問題がある。そのひとつは、5年近くの間、空席になっている東京大司教区の補佐司教の任命問題だ。2017年12月に就任した菊地大司教には、日本の司教協議会会長、アジア司教協議会連盟事務総長、さらに国際カリタス総裁などいくつもの重責を担っているにもかかわらず、補佐司教がいまだに教皇から任命されないというのは、常軌を逸している、とも言える。

 また、先月15日にバチカンが発表した大阪、高松両教区の合併を、両教区の信徒、司祭などの意向を反映しながらいかに円滑に進め、さらにこれを機に、日本の教会の教区再編・統合を含む抜本的な機構改革につなげるかも、差し迫った問題だ。

 バチカンと連携しつつ、課題解決に重要な役割を果たす立場にある教皇大使が、このような重要な時期に”前倒し退任”をする、というのは、その判断自体に首をかしげざるを得ないばかりでなく、日本の教会の取り組みにも大きな支障をもたらすことが懸念される。

2023年9月2日

【モンゴル訪問】教皇、ウランバートルに到着、「共に希望する」をモットーに訪問開始

(2023.9.1  バチカン放送)

   教皇フランシスコは、9月1日午前10時(日本時間同日午前9時)前、モンゴルの首都ウランバートルのチンギスハーン国際空港に到着、バトツェツェグ外相やマレンゴ・ウランバートル使徒座知牧区司教、中央アジア司教協議会会長でアルマトイ(カザフスタン)聖三位一体教区のシエラ司教らの出迎えを受けられた。

ウランバートル知牧館で子どもたちからの歓迎を受ける教皇フランシスコ
(右の写真は、ウランバートル知牧館で子どもたちからの歓迎を受ける教皇フランシスコ)

 空港での歓迎式の後、ウランバートル市内の使徒座知牧館(司教館)に向かわれ、子どもたちからの歓迎を受けられた。9時間の飛行後でもあり、教皇はこの後、知牧館で過ごされ、2日から公式行事を開始。ウランバートル市内の広場での歓迎式や、政府宮殿での大統領や各界代表との会見、カテドラルでの教会関係者との集いなどを予定されている。

 今回の旅は、教皇フランシスコの第43回目の海外司牧訪問(イタリアを除く)で、歴代の教皇による初めてのモンゴル訪問となる。教皇のモンゴル訪問のモットーは、「共に希望する」。この訪問は、同国のカトリック共同体を励ますという司牧的性格と、モンゴル政府からの招きを受けた公式訪問としての性格を併せ持っている。

 ウランバートルには4日正午頃まで滞在された後、ローマに戻られる予定。

(編集「カトリック・あい」)

 

 

 

 

2023年9月1日

・教皇、「『第二ラウダ―ト・シ』はアッシジの聖フランシスコの祝日、10月4日に発表」

"Let Justice and Peace Flow"“Let Justice and Peace Flow” 

 教皇フランシスコが30日の水曜恒例一般謁見で、使徒的勧告「第二ラウダ―ト・シ」を、9月1日からの「創造の季節」が終わるアッシジの聖フランシスコの祝日、10月4日に発表する、と表明された。

 9月1日のカトリック教会「被造物を大切にする世界祈願日」の今年の教皇メッセージのテーマは、「正義と平和が流れるように」だ。そして、この日から始まる、教会にとっての「創造の季節」は、10月4日のアッシジの聖フランシスコの祝日で幕を閉じるが、教皇は「この日に、私は回勅、『第二のラウダート・シ』を発表するつもりです」と語られた。

 そして、「環境や気候の”不正義”の被害となっている人たちに寄り添い、酷い世界戦争が起きている私たちの”共通の家”で無意味な戦いを終わらせるために努める必要があります。 皆さんが、溢れる活気を取り戻せるよう、働き、祈っていただきたい」と訴えられた。

  教皇は既に発表されている「被造物を大切にする世界祈願日」のメッセージで、「私たちは、心、ライフスタイル、社会を支配する公共政策を変える決意をしなければならない」とされ、「『創造物を搾取されるべき対象』として考えるのではなく、『創造主からの神聖な贈り物として守られるべき現実』として考える必要があります」と強調。

 さらに、10月の世界代表司教会議(シノドス)通常総会のテーマになっている「シノダリティ(共働性)」の重要性にも言及。「この『創造の季節』の月間に、キリストに従って”シノドスの道”を歩む者として、私たちは暮らし、働き、祈り、私たちの”共通の家”が再び『命』で満たされることを願っています」と語られている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年8月30日

・教皇、31日から9月4日までロシア、中国と国境を隔てるモンゴルを訪問

The Sukhbaatar Statue in UlaanbaatarThe Sukhbaatar Statue in Ulaanbaatar 

    教皇フランシスコは8月31日から9月4日にかけて、歴代教皇として初のモンゴル訪問をなさる。

 29日の定例会見で、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道局長は、今回の訪問は教皇フランシスコにとって61か国目、43回目の海外訪問となり、訪問中に、この国の約1500人のカトリック教徒に向けて語ることを中心課題としている、と説明。

 「人類の活動の分野で重要な貢献をしているこの美しい国で、彼らに励ましと希望の言葉をかける予定だ」と述べた。

 モンゴルは東と南の二方向を中国、北をロシアとそれぞれ接する内陸国で、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が長期化しつつある今、地政学的にも重要な位置にある。教皇は実質3日間の訪問中の講話の少なくとも一つで、このことに言及する可能性が高い。

  モンゴルの教会の歴史は、モンゴル帝国が中国の一部にまで及んでいた時代、最初の司教が任命された 4 世紀初頭に遡る。 その後何世紀にもわたって、この地域におけるキリスト教徒は減り続け、共産主義独裁時代には完全に消滅した。

 1992年に、教会は活動を再開し、以来30年間、宣教師たち、特にイタリアの宣教修道会、Missionaries of the Consolataの宣教師たちの働きによって、活発になっている。そして、教皇は昨年、 同国の枢機卿として、ジョルジョ・マレンゴ・ウランバートル使徒座知牧区司教を任命されている。

 今回の訪問で、教皇は9月3日に首都ウランバートルの Steppe Arenaでミサを主宰され、首都に大部分が住むモンゴルの信者をはじめ、ロシア、中国、タイ、カザフスタン、キルギス、アゼルバイジャン、ベトナムなど近隣諸国からも約1,000人の信者が参加する予定だ。

 また6日の日曜日には、 Hun Theatreで、民族宗教や神道、仏教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教など様々な宗教の代表者との集いに出席されるが、ブルーニ報道局長は「 このイベントは、数十年にわたってモンゴル国民の特徴となってきた平和共存への使命の表れになる」と強調した。会合には、政府や大学の代表も出席する予定だ。

 報道局長はまた、教皇が、仏陀の10番目の生まれ変わりとされる子供を含むチベット仏教の代表者たちと会見することや、ミサ後にロシアと中国のキリスト教徒と個人的に会見する可能性について、「現時点では、教皇は私的な会見は予定されていない。諸宗教との集いには、モンゴルの多数派宗教である仏教徒を含むすべての宗教団体が参加する」と説明。 教皇が隣国中国の問題に言及する可能性についての記者団の質問に対して、 「教皇が27日の正午の祈りの最後に語られたように、今回の訪問を、幸せと大きな敬意を持って待望されている。現地で多くの人々に会いたいと強く願っておられるが、それ以上のことは申し上げられない」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年8月30日

・教皇、環境回勅「Laudato si(ラウダ―ト・シ)」第二部を執筆中ー現在の地球規模の異常気象、災害に焦点

2023.05.22 Storia Laudato si' Ecuador, progetto Otonga

(2023.8.21  Vatican News )

    教皇フランシスコは現在、2015年に公開された環境回勅「Laudato si(ラウダ―ト・シ)」の第二部を、最近の地球規模の異常気象とそれがもたらしている大規模災害に焦点を当てて執筆中だ。

 教皇が21日、欧州評議会加盟国の弁護士代表団と会見された際に明らかにされたもので、教皇は「『ラウダート・シ』の第二部を『現在の問題』に合わせる形で新たに執筆しています」と語られた。

 そして、「『若い世代には、美しく、住みやすい世界を私たちから受け取る権利がある』ということを、私たちは決して忘れてはなりません。このことは、私たちが神の寛大な手から受けた創造物に対して、重大な責任を負っていること、を意味します」と強調された。

 バチカン報道局は、教皇の発言を受けた声明で、「ラウダート・シ」の第二部では、「特に五大陸の人々に影響を与えている最近の異常気象現象や大惨事に焦点を当てることになる」と説明した。

 「ラウダート・シ」は教皇が2013年に就任されて出された2番目の回勅。 2015年6月18日に発表され、執筆日として同年5月24日の聖霊降臨祭の日付が記されている。

 回勅の 「共に暮らす家を大切に」という副題は、聖フランシスコの「生き物の賛美歌」の冒頭から引用されており、次の言葉で始まっている。

 「『“’LAUDATO SI’, mi’ Signore’―私の主よ、あなたは称えられますように』。アッシジの聖フランシスコは、この美しい賛美の言葉の中で、私たちに思い起こさせてくれます―私たちの共通の家は、人生を共にする姉妹のようなものであり、両手を広げて私たちを抱きしめてくれる美しい母親のようなものである、と。主よ、私たちを支え、治め、色とりどりの花やハーブでさまざまな実を結ぶ、私たちの姉妹である母なる地球を通して、あなたが讃えられますように』」(回勅1項参照)。

 回勅が発出された直後に開かれた「現代の奴隷制度と気候変動による都市の取り組み」をテーマにしたワークショップの参加者との会見で教皇は、この回勅の意味について、次のように語られている。

 「環境を大切にする文化は、単なる『グリーン(私は言葉の本当の意味で言います)に対する態度ではなく、それをはるかに超えたものです。 環境を大切にするということは、人間として環境保全に対する姿勢を持つことを意味します。 つまり、人類が”ここ”にいて、創造物、つまり環境が”そこ”にある、ではない。 環境は全体であり、人間もその中にある。 これがこの回勅で、私が表現しようとしたことです。人間は他の存在と切り離すことはできない。 環境が人に与える影響と、人が環境に与える影響、互いに影響を与え合う関係にあるのです。 環境が乱暴に扱われると、その影響は人間に跳ね返ります」

 「 ですから、私はある人に『この回勅は”グリーン回勅”ですか』と尋ねられて、「いいえ、そうではありません。”社会回勅です」と答えました。 なぜなら、社会で、人類の社会生活で、環境への配慮を忘れることはできないからです。 環境に配慮することは社会的な態度であり、環境は何らかの意味で、私たちを社会化します。それぞれの人が環境に自分の選んだ意味を与えることができ、環境が私たちを受け入れることを可能にします。私は、イタリア人が環境について語る時の、このような言い回しが好きです-『被造物、贈り物として私たちに与えられるもの、それはすなわち、環境だ』」。

 この回勅で、教皇は、ご自分の教皇職の導き手、励ましとして「フランシスコ」という名前を選んだことを思い起こされ次のように書いている。

 「 私は信じています。聖フランシスコが傷つきやすい者への気遣いの最良の手本であり、喜びと真心をもって生きた、総合的な環境保全の最高の模範だ、と。彼は環境保全の分野で研究や仕事に携わるすべての人の守護聖人であり、キリスト者でない人々からも深く愛されています。彼は特に、神が創造された物、貧しい人々や見捨てられた人々に思いやりを示しました。愛に生き、その喜び、寛大な献身、開かれた心のために、深く愛されました。飾ることがなく、神と、他者と、自然と、自分自身との見事な調和の中で生きた神秘家、巡礼者でした。自然への思いやり、貧しい人々のための正義、社会への積極的な関り、そして内的な平和―これらの結びつきが、どれほど分かち難いものであるかを、彼は私たちに示してくれます」(同10項参照)

 そして教皇はこの回勅で、「全人類にとってより良い未来を築くため、私たちの共通の家を守ること」と強く訴えられている。

 「私は、『自分たちの地球の未来をどのように形作っていくかに』ついての新たな対話を始めるよう、強く訴えます。 私たちが経験している環境問題とその人間的な根源は、私たち全員に関係し、影響を与えるものであり、私たち全員が参加する対話が必要なのです。 世界的な環境保全のための運動はすでにかなりの進歩を遂げ、環境保全に関する課題に対する人々の意識を高めることに取り組む組織が数多く作られてきました。しかし 残念なことに、環境危機を解決するための具体策を実行しようとする多くの努力は、強い抵抗に遭い、そればかりか広範な、環境問題への関心の欠如のために、結果が出せずにいます。環境保全の努力を阻む動きは、信者の中にも存在し、環境に問題があることの否定から、無関心、あきらめ、技術的な対応への盲信など、多岐にわたります。私たちは、新たな普遍的な連帯を必要としています。南アフリカの司教団が述べているように、『神の創造の御業を人類が濫用して生じさせた傷を修復するには、あらゆる人の才能と関与が必要』なのです。私たちは皆、被造物を養い育てる神の道具として、それぞれの文化、経験、関わり方、才能に応じて、力を合わせることができるのです」(同14項参照)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年8月22日

・教皇、大阪大司教区と高松教区を合併し「大阪・高松大司教区」にー教区の再編・統合含む抜本改革が司教団の緊急課題

(2023.8.16 カトリック・あい)

 教皇フランシスコはローマ時間8月15日正午、大阪教区と高松教区を合併し、新たに大阪・高松大司教区を設立、その初代大司教として前田万葉枢機卿を任命することを発表された。新しい教区の日本語における正式名称は、後日、大阪教区より発表される予定。

 日本の教会は、戦後になって1947年に琉球使徒座管理区(後に那覇教区)、1961年に宮崎知牧区改編される形で大分教区が誕生したのを除くと、第二次世界大戦前の1936年までに出来た教区体制が事実上、この90年以上にわたる教会内外の大きな変化の中で、変わらずに続いてきた。

 今、日本の教会は、信徒の教会離れ、信徒数の減少・高齢化、司祭の減少・高齢化などが深刻化しており、希望ある将来につなげるための、教区の再編・統合も含めて、抜本的な体制改革が緊急の課題となっている。司教団が、今回の大阪、高松の教区合併を”一過性の現象”に終わらせず、この課題に真剣に取り組む契機とすることが求められる。

 なお、16日午前10時時点で、この合併について、大阪、高松いずれの教区の公式ホームページには一言も掲載されておらず、まず情報が提供されるべき小教区、信徒たちには知らされていないようだ。ここにも、教皇フランシスコが繰り返し訴えておられる「Synodal(共に歩む、共働的)教会」の理念からかけ離れた高位聖職者の意識が見て取れ、日本の教会改革にはまず、高位聖職者の意識改革から始めねばならないことを、図らずも示しているようだ。

 

*信徒数4位の大阪教区が最少の高松教区を”吸収合併”したが、日本にはまだ15の教区

 

 事実上”吸収合併”されることになった高松教区は、1904年、徳島、香川、愛媛、高知の四国4県は、大阪教区から分離されて四国使徒座知牧区となったのが始まりで119年の歴史を持つ。1949年に知牧区長館が徳島市から高松市に移され、1963年9月に司教区に昇格して高松教区となった。

 カトリック中央協議会が公表している「カトリック教会現勢」の最新版(2022年)によると、大阪教区の信徒数は東京教区、長崎教区、横浜教区に次いで第4位の4万6817人、司祭数は東京教区に次いで2位の148人。高松教区の信徒数は全国16教区の中で最も少ない4208人、日本最大の小教区、東京・麹町教会の4分の1にも満たず、司祭数は13位の34人。合併後の大阪・高松教区ではそれぞれ、5万1015人、182人となるが、順位に変化はない。

 なお大阪教区は大阪、兵庫、和歌山の3府県、高松教区は徳島、香川、愛媛、高知の四国4県を管轄しており、合併により新教区の管轄は7府県、、管轄都道府県数では日本最大の教区となる。

 また大阪教区は教区長の前田大司教・枢機卿と酒井補佐司教で、高松教区は教区長の諏訪司教が2022年9月に定年で退任し、空位。このため、司教職に関係する人事は、前田・大阪大司教がそのまま、大阪・高松大司教となる以外に変わりはない。

 今回の合併で、日本のカトリック教会の教区数は16教区(3大司教区・13教区)から15教区(3大司教区・12教区)に一つ減る。

 

*東京・麹町教会の信徒数よりも少ない教区が7つもある

 ちなみに、日本の小教区で信徒数が最も多いのは東京教区の麹町教会で1万7152人(2019年12月末現在。次が長崎教区の浦上教会で約7000人と言われている=公表データが見つからない)。麹町教会一つよりも信徒数の少ない教区は、札幌(1万4958人)、仙台(9196人)、鹿児島(8420人)、新潟(6676人)、那覇(6132人)、大分(5607人)、高松(4208人)と7つ。今回の合併で、一つ減るが、麹町教会よりも信徒数が少ない教区が高松を除いでも6つもある現状は、信徒数も、司祭の数も減り続ける中で考え直す必要があるようだ。

 

*ミサ参加者、受洗者、司祭数など激減の中で、教区によってばらつきも

 

 先ごろカトリック中央協議会が公表した「カトリック教会現勢」を10年前に公表された「現勢」と合わせて算定した結果は、別掲しているが、ここで改めて説明すると、2022 年 12 月末現在の日本の聖職者、一般信徒などを合わせた「信者数」は」42 万 2450 人で、10 年前の 2012 年の 44 万 4441人より 2万1991人、 4.95%減った。日本の総人口に占める割合は2022年が 0.335 %、2012 年は 0.351 %で、毎年、小幅ながら日本の総人口の減少を上回る減り方を続けている。またミサ参加者は、日本でコロナ大感染が始まる直前の2019年と比べて、主日、復活祭、クリスマスともに4割前後も激減しており、信者減少に対する長期的な取り組みと共に、コロナ禍で激減したミサ参加者、教会を離れた信徒を、どのように回復するのかも、教会にとって大きな課題となっていることが明瞭に浮かび上がっている。

 全国で16ある教区別に見ると、信徒数が最も多いのは東京で9万2001人、これに長崎の5万6826人、横浜の5万2929人、大阪の4万6817人が続き、最も少ないのは高松の4208人など、1万人未満が大分、那覇、新潟、仙台、鹿児島をあわせて6教区もある。2012年から10年間で減り方が最も大きいのは仙台の11.04%で、これに札幌9.70%、大阪9.20%、鹿児島8.22%、それに長崎の7.80%が次いでおり、減少数では長崎が4808人と最も多くなっている。

 ちなみに東京は2.38%の減少にとどまり、那覇とさいたまは、それぞれ4.16%、2.43%の増加。特に後者は、外国人の顕著な流入が影響していると見られる。

 

*”中心教会”の一つであるはずの長崎教区が…

 

 聖職者・修道者・神学生の減り方を教区別に見ると、大幅な減少率の中で、教区によるばらつきがみられ、最も大幅な減少率を示したのは仙台で44.03%、ついで、新潟、福岡、鹿児島、高松が30%を超えている。大きく落ち込むなかでもばらつきがみられるのは、2022年までの十年間の主日のミサ参加者の減り方で、東京が51.92%と半減しているほか、札幌が48.15%、横浜が46.17%、鹿児島が41.87%、長崎が41.58%を4割を上回る減少。対して、大阪は12.17%の減少にとどまっている。

 年間の受洗者数を見ると、2022年の全国総数4089人のうち、トップは東京の996人、ついで横浜527人、名古屋503人、大阪419人で、信徒数で2位の長崎は237人にとどまっている。2012年に比べた受洗者の減り方もっとも大幅なのは鹿児島で64%、次いで新潟60.52%、長崎が52.88%で三番目に大きい落ち込み。対して、広島2.75%、名古屋2.90%、さいたま3.85%と小幅の落ち込みにとどまる教区もある。

 以上の教区別の動きを見ると、特に日本のカトリック教会の中心教区の一つとされてきた長崎が、信徒数の減少、主日のミサ参加者の減少、新規受洗者の減少率がそろって大幅になっているのが目立つ。その原因として考えられることについて、ここでは明らかにすることは避けるが、当事者も含めて心当たりの方も少なくないだろう。一言で言えば、信頼回復の努力、体制の見直しも含めた抜本的な教会改革、その前提として高位聖職者の意識改革が必要、ということではなかろうか。

 

*戦前、20年余りの間に11の教区が新たに作られたが、戦後78年で減る教区はただ一つ

 日本の現在のカトリック教会は1846年(弘化3年)に日本代牧区が設置されたことに始まり、1876年(明治9年)に、近畿、中国、四国、九州を管轄する「南緯代理区」と、中部、関東、東北、北海道を管轄する「北緯代理区」の”2教区体制”に分けられ、前者は1888年に「南緯代理区」(九州管轄、1891年に長崎教区に名称変更)と「中部代理区」(近畿、中国、四国管轄、1891年に「中部教区」)に、後者は1891年に「東京大司教区」(関東7県、中部9県管轄)と「函館教区」(北海道、東北管轄)の”4教区体制”となった。

 1900年代に入って、1904年に中部教区から「四国知牧区」が分かれた。その後、函館教区から1912年に「新潟知牧区」、1915年に「札幌知牧区」が分かれ、1923年に中部教区から「広島代理区」が分かれ、それより一年前の1922年に東京教区から「名古屋知牧区」が分かれ、さらに長崎教区から1927年に「鹿児島教区」と「福岡教区」が分かれ、1935年に「宮崎知牧区」(後に再編されて「大分教区」に)が分かれた。1937年に中部教区から「京都知牧区」が、東京教区から「横浜教区」が分かれ、1939年にはさらに、横浜教区から「浦和知牧区(現在のさいたま教区)」が分かれた。1936年に函館から仙台に司教座が移され、事実上の「仙台教区」が生まれるといった具合に、20年余りの間に11教区というm「異常ともいえる速さで速い分離・独立が繰り返された。

 戦後になって、1947年に琉球使徒座管理区(後に「那覇教区」)、1961年に長崎教区から「大分教区」が分かれて誕生したが、現在の教区の体制は、戦前、1936年までに事実上、出来上がっていたわけで、逆に、大分教区誕生以来、教会内外の環境激変の中で、60年以上も、新たな再編統合に全く手を付けてこなかったことが奇異に感じられる。

 ちなみに、第二バチカン公会議での、世界に開かれ、共に歩む教会を目指す改革の方針決定を受けて、今から半世紀前、日本の司教団の中にも積極的な取り組みの動きがあり、具体的には、東京教区と横浜教区を再編・合併して「首都圏教区」とし、日本の教会改革の推進力とするアイデアが浮上したが、多くの司教たちの反対で日の目を見ることができなかった。

 再編統合の動きが、自分たちの関係する教区にも広がり、教区が削減、教区長である司教ポストも削減されるのは困る、自分の任期中にそのようなことがあっては困る、というのが、反対者たちの”本音”との見方もあったが、それが真実とすれば、誠に低レベル、目先の自分の利害しか考えない、聖職者にあるまじき対応だったといえよう。このようなことが、繰り返されないよう願いたい。

 

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 なお、日本時間8月16日午前9時過ぎにバチカンのホームページに掲載された内容、公式英語訳は以下の通り。上記の信徒数などに若干の違いがあるが、これは定義の違い、日本からの報告の時期の違いなどによるものと思われるが、大きな差はない。

Erection of the metropolitan archdiocese of Osaka-Takamatsu, Japan, and appointment of first metropolitan archbishop

The Holy Father has erected the new metropolitan archdiocese of Osaka-Takamatsu, Japan, by incorporating the archdiocese of Osaka and the diocese of Takamatsu.

The Holy Father has appointed His Eminence Cardinal Thomas Aquino Manyo Maeda, until now archbishop of the archdiocese of Osaka, as first metropolitan archbishop of the new archdiocese of Osaka-Takamatsu.

Curriculum Vitae

His Eminence Thomas Aquino Manyo Maeda was born on 3 March 1949 in Tsuwasaki, Kami Goto, Prefecture of Nagasaki, in the archdiocese of the same name. After completing his studies at the Nanzan High School of Nagasaki, he entered the Saint Sulpice Major Seminary of Fukuoka.

He was ordained a priest on 19 March 1975 and incardinated in the archdiocese of Nagasaki.

On 13 June 2011 he was appointed bishop of the diocese of Hiroshima, and received episcopal consecration on the following 23 September. Since 2014 he has served as metropolitan archbishop of Osaka, and was created a cardinal on 28 June 2018, of the Title of San Pudenziana.

Statistical data

Osaka Takamatsu Osaka-Takamatsu
Area (km sq) 15,031 18,804 33,835
Inhabitants 15,307,909 3,766,866 19,074,755
Catholics 47,170 (0.31%) 4,243 (0.11%) 51,413 (0.27%)
Parishes 77 28 105
Diocesan priests 48 19 67
Religious priests 90 16 106
Permanent deacons 1 3 4
Major seminarians 3 0 3
Men religious 17 1 18
Women religious 543 49 592
Educational institutes 91 27 118
Charitable institutes 89 24 113

 

2023年8月16日

・教皇の来年元旦の世界平和メッセージのテーマ「AI(人工知能)と平和」でバチカン総合人間開発省が声明

People taking photos and videos of Pope Francis at the weekly General AudiencePeople taking photos and videos of Pope Francis at the weekly General Audience  (AFP or licensors)

 バチカンの総合人間開発省が8日、声明を発表し、来年2024年元旦の「世界平和の日」に教皇フランシスコが出されるメッセージが「AI(人工知能)と平和」となることを明らかにする共に、「破壊的な可能性と、プラスの効果をもつAIの新技術の意味についてのオープンな対話」を呼びかける教皇の意向を強調している。

 AIについては、最近、それが持つ潜在的な大きな可能性と共に、情報の恣意的な摂取、改ざん、公共の安全や福祉を脅かす懸念が強まっており、教皇のメッセージのテーマが、AIのプラス面を強調しているように受け取られかねない、との懸念から、メッセージ発出の5か月も前に、異例の声明を出したもの、と見られる。(この項、「カトリック・あい」)

 声明では「AIの分野での目覚ましい進歩」と、それが「人間の活動、個人生活、社会生活、政治、経済に与える影響が急速に増大している」とし、教皇は元旦のメッセージで、「破壊的な可能性とプラスの効果という相反する潜在性を備えたAIなどの新技術の意味についてのオープンな対話」を呼びかけ、「最も脆弱で排除された人々を犠牲にして、そのような機器の製造と使用に暴力と差別の論理が根付かないように」十分な配慮が必要であると強調することにされている、と述べた。

 さらに声明は、「AIを人類に奉仕させ、私たちの共通の家の保護に役立てることを目的とし、AIの概念と利用を責任ある方法で方向付ける必要性」についても触れ、その目的は、倫理的な配慮」を「教育と法律」の分野にまで広げなければ達成できない」と強調している。

 そして、「個人の尊厳の保護と、人類家族全体に実質的に開かれた友愛への配慮」が、「世界の正義と平和の促進に貢献するための技術開発にとって不可欠な条件である」と述べて、生命は締めくくられている。

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 カトリック教会は 毎年1月1日、聖母マリアの祝日を「世界平和の日」とすることが、 1967 年に教皇パウロ 6 世によって定められ、平和構築の取り組みに関連して重要な主題について考えるようすべての人々に奨励する教皇からのメッセージが発出されることになっている。今年のメッセージで、教皇フランシスコは、「誰も一人では救われない。 共に新型コロナウイルス感染症と闘い、平和の道を一緒に歩み始めよう」だった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年8月9日

【教皇 ポルトガル訪問最終日】教皇、6日午後、世界青年の日(WYD)大会ボランティアとの集いの後、帰国

(2023.8.6 バチカン放送)

 6日、ポルトガル訪問の最終日を迎えられた教皇フランシスコは、午前、リスボン市内のテージョ公園で、世界青年の日(WYD)大会の記念ミサ(閉会ミサ)を捧げられた後、午後、リスボン郊外、パッセイオ・マリティモ・デ・アルジェスで、WYD大会のボランティアたちとお会いになった。そして、フィーゴ・マドゥーロ軍用飛行場で見送りを受けた教皇は、特別機でリスボンを後にし、ローマへ戻られた。

 今回のポルトガル訪問は、首都リスボンで開かれたカトリックの若者たちの祭典「世界青年の日(WYD)大会の各種公式行事への参加を主な目的としていた。2日から5日間にわたるポルトガル訪問で、教皇はWYD大会の諸公式行事の会場となったリスボンを拠点に、カスカイスへの訪問、ファティマ巡礼などを交えながら、様々な形で若者たちとの交流を深めた。

 また、教皇はポルトガル滞在中、マルセロ・レベロ・デ・ソウザ大統領をはじめ、同国の各界要人や、カトリック教会を代表する人々とも会見された。

 ポルトガル訪問最終日、教皇は午前中リスボンのテジョ公園でワールドユースデー大会閉会に伴う記念ミサをとり行い、午後にはパッセイオ・マリティモ・デ・アルジェスで大会ボランティアたちの労をねぎらわれた。

 そして、教皇は夕方、フィーゴ・マドゥーロ軍用飛行場で大統領や教会関係者に見送られ、現地時間18時20分、特別機でリスボンを後にされた。

 教皇を乗せた特別機は、同日午後9時40分、ローマ・フィウミチーノ国際空港に到着。ご自身の第42回海外司牧訪問(イタリアを除く)を終えられた。

(編集「カトリック・あい」)

2023年8月7日

・教皇、ポルトガル訪問とWYDリスボン大会を前に、聖母に保護を祈る

ローマの聖マリア大聖堂に伝わる聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」の前で祈る教皇フランシスコ ローマの聖マリア大聖堂に伝わる聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」の前で祈る教皇フランシスコ  

 ポルトガル司牧訪問を2日後に控えた7月31日、教皇フランシスコはローマの聖マリア大聖堂(サンタ・マリア・マッジョーレ)を訪問され、今回の訪問とその主たる目的である世界青年の日(WYD)リスボン大会の成功と保護を聖母マリアに祈られた。

 教皇は、同大聖堂の聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」(ローマ人の救い、の意味)が掲げられたボルゲーゼ礼拝堂に入られ、始まるポルトガル訪問と、WYDリスボン大会を聖母の保護に託して祈られた。

 教皇が「サルス・ポプリ・ロマーニ」の前で祈りの時を持たれたのは、これで109回目。海外訪問の前後をはじめ、様々な機会に、教皇はこのイコンの前で祈って来られた。最近では、6月16日、ローマのアゴスティーノ・ジェメッリ総合病院を退院し、バチカンに戻る途中、聖マリア大聖堂に立ち寄り、感謝の祈りを捧げられている。

(編集「カトリック・あい」)

2023年8月1日