・イタリアの司教たちが性的虐待被害者と家族と面談、「対応不十分」と被害者団体(Crux)

 (写真は、イタリアの性的虐待被害者団体Rete L’ABUSO の創立者、フランチェスコ・ザナルディ氏と、「紫のベンチ」設置第一号(サボナ市で、Credit: Rete L’ABUSO)
founder Francesco Zanardi poses in front of a purple bench installed in Savona, Italy, on Feb. 24, 2024, commemorating victims of clerical sexual abuse

(2024.3.1 ) Crux     Senior Correspondent  Elise Ann Allen 

 CEI会長のマッテオ・ズッピ枢機卿は同日の声明で、「被害者や被害者の家族が経験した痛み、苦しみを深く理解するために、彼らとの真の交わりを築くために、そして、教会に何が求められているのかを知るために、虐待を受けた人々の声を聴くことが、欠かすことができません」と述べた。

 そして、「私たちに何が欠けているのか? 改善するには何ができるのか?などの問いへの答えを引き出すことで、私たちは、聖虐待の予防と被害者保護に向けて、日々前進することが可能になる」と強調した。

 この日の被害者たちとの面談には、ズッピ会長はじめ、CEI事務局長のカリアリのジュゼッペ・バトゥーリ大司教、未成年者保護担当部長のロレンツォ・ギッツォーニ大司教が出席し、虐待被害者とその家族のグループの話を聞いた。

 約3時間にわたって行われた面談について、ズッピ会長の声明は、「分かち合いと対話の中で、この問題への対応について、改善し、強化しなければならない重要な要素を引き出すことができた」と指摘。

 CEIのスポークスマン、ヴィンチェンツォ・コラード氏は、「昨年5月に続いて行われた今回の面談で、司教たちと被害者たちが体験を共有するとともに、こうした出来事が繰り返されないよう、 子どもたちと弱い立場にある大人を守るために、教会の組織や組織が一層、努力していくことへの希望を共有する重要な機会となりました」とし、「被害者の声に耳を傾け、被害者を教会に改めて進んで迎え入れることは、教会にとって重要な行動方針です」と述べた。

 これまで、イタリアの教会は、この問題に教会全体で取り組み、被害者に補償するために十分な努力をしていない、として被害者や援護団体から広く非難されてきた。CEIは2022年11月、聖職者による性的虐待への対応について初の報告書を発表し、2020年から2021年の間に特定された虐待案件は、訴えが89件、加害者として68人が挙げられた。89件のうち半数強が、最近なされた、あるいは現在なされているもの、という。ただ、虐待の形態、虐待者と被害者の両方の年齢と性別に関するいくつかの一般的な説明以外の、虐待に関与した司祭個人に関する詳細、訴訟の内容―民事訴訟あるいは教会訴訟か、 裁判が始まっているのか、結審しているなら、結果がどうなったのかなど、詳細は明らかにされていない。

 この報告が発表される以前に性的虐待被害者支援団体のネットワーク#ItalyChurchTooは、CEIに対して、他の欧米諸国の教会が実施しているように、詳細な内容の分析結果を公にするよう、要求していた。米国、アイルランド、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガルなどの司教協議会は、独立第三者機関と契約して、数十年前に遡る虐待に関する全国規模の調査を行い、膨大な数の性的虐待の加害者と被害者双方に関する具体的な調査分析をした報告書を出しているが、今回の報告書の内容はそれに程遠い。イタリア以外の国々の教区では、虐待の疑いで告発された司祭の名前の公表が始まっているが、イタリアのどの教区もそのような措置をとっていない。

  イタリアの主要被害者団体Rete L’Abuso(虐待ネットワーク)を設立・運営するフランチェスコ・ザナルディ氏は自身も聖職者による性的虐待の被害者だが、今回の報告書について、「わずか2年間で虐待者が68人という数字は、問題があることを示しているが、対象期間が短すぎ、多くのデータが除外されている。はっきり言って、この報告書は、恥ずかしいほど不十分だ」と批判した。。 

 イタリアの港湾都市サボナで2月24日、未成年者や弱い立場の成人に対する性的虐待に注意を促す「紫のベンチ」の第一号の設置記念式典が行われたが、出席した ザナルディ氏はあいさつで、サボナ市における虐待被害者の連帯や危険にさらされている人々を守る取り組みを称賛しつつ、「さらになすべきことは多くあります」と語った。「紫のベンチ」設置運動は、Rete L’Abuso、聖職者の虐待正義を終わらせるプロジェクト、イタリアの教会 Too Italian 調整プロジェクトが共同主催しているもので、 今後、数週間以内に、シチリア島のエンナやローマなどイタリア全土の都市でもベンチ設置が予定されている。

 式典後にRete L’Abusoとして発表した声明は、「このこのベンチは、大人たち、市民社会が、未成年者や弱者に対する虐待に目を閉じず、見て見ぬふりをせず、具体的に関与する呼びかけとして機能する必要がある。イタリアは他国に比べ、虐待がもたらす危機に対処において、はるかに遅れている。その原因の一つは、私たちそうしないからだ… 虐待の予防と広報を通じて、まず、子供たち、孫たち、愛する人たち、として自分自身を守らなければならないのです」とネットワークは述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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2024年3月2日

(評論)「言い訳をし、抽象的で役に立たない言葉の後ろに隠れているのか」と自問すべきは…「性虐待被害者のための祈りと償いの日」に

(2024.2.28 「カトリック・あい」)

 

 

*司教協議会会長は”長文“の「呼びかけ」を出しているが

 

 3月1日は「性虐待被害者のための祈りと償いの日」だ。いっこうに収まりを見せない聖職者による性的虐待に心を痛める教皇フランシスコが全世界の司教団に呼びかけて始まった。

 日本の司教団は、「四旬節第2金曜日」をこの日と定め、2017年3月から始め、今回は8回目となる。日本司協議会会長の菊地・東京大司教は2月16日付けの中央協議会ホームページに約1600字の”長文“の「2024年『性虐待被害者のための祈りと償いの日』にあたっての呼びかけ」を掲載している。また日本の教会の祈りの意向として3月を「性虐待被害者のために」とし、「聖職者によって心と体に深い傷を負った方々が、慈しみみ深い神の癒しによって慰められますように」と祈るよう勧めている。

 

 

*全15教区のうち1日が「祈りと償いの日」であることも「呼びかけ」の転載もしない教区が5つ、行事があるのは1教区だけ

 

 だが、肝心の各教区の対応はどうかというと、お寒い限りだ。会長メッセージは、司教団として合意の上で出されたのだろうか。

 日本に15ある教区のホームページを2月28日現在で見ると、行事予定も、司教協議会会長の呼びかけも何も載せていない教区が長崎、名古屋、福岡、那覇の5つ。3月1日が「祈りと償いの日」であることのみを載せているのが東京、鹿児島の二つ、司教協議会会長の呼びかけだけを載せているのが、さいたま、京都、大分の三つ。

 最大の信者数を抱える東京は、教区長の司教協議会会長が、中央協議会のホームページに「呼びかけ」を載せているから、それで事足れり、と判断したのか、教区のホームページには教区民あての、祈りと償いの日への参加呼びかけや、具体的な指針など皆無。教区としての行事予定も見られず、小教区レベルの取り組みもない。

 教区内の全小教区に対して、具体的な祈りと償いの指針を示し、それぞれで実施するよう求めているのが、札幌、横浜、新潟、仙台、広島の5つ。教区としての行事を予定しているのは大阪・高松教区たった一つに過ぎない。

*札幌教区の昨秋のアンケートで「『祈りと償いの日』を知らない」が7割、「そのためのミサや祈りに参加していない」が9割近い

 このような実態を、信者レベルで裏付けるデータが、札幌教区の教区報1月号に掲載された「祈りと償いの日」を前にした信者アンケートの結果概要でも明らかになっている。それによると、「祈りと償いの日を知らない」との答えが全回答の68%を占め、「ミサや祈りに参加しているか」の問いには「参加していない」「教会でそのようなことをしていない」との答えが合わせて86%に上っていることが分かった。性的なものも含めたいじめや”ハラスメント“が「ある」との答えも41%と、「ない」の35%を上回っている。

 

 

*「具体的に誰に対して、何を謝罪しているのか分からない、司教団のトップが謝って済むことか」の声も

 

 菊地会長の「呼びかけ」は、「教会にあって、率先して人間の尊厳を守り、共同体の一致を促進するべき聖職者や霊的な指導者が、命に対する暴力を働き、人間の尊厳をないがしろにする行為を働いた事例が、近年相次いで報告されています。そういった言動を通じて、共同体の一致を破壊するばかりか、性虐待という人間の尊厳を辱め蹂躙する行為によって、多くの方を深く傷つけた聖職者や霊的な指導者が存在することは事実です。長い時間を経て、ようやくその心の傷や苦しみを吐露された方々もおられます。なかには、あたかも被害を受けられた方に責任があるかのような言動で、さらなる被害の拡大を生じた事例もしばしば見受けられます」と述べている。

 そのうえで、「このように長期にわたる深い苦しみを生み出した聖職者や霊的指導者の行為を、心から謝罪いたします。また被害を受けられた方に責任があるかのような言動を通じて、人間の尊厳をおとしめた行為を、心から謝罪します」とし、長文の終わりにも「改めて、無関心や隠蔽も含め、教会の罪を心から謝罪いたします」としているが、教区レベルの対応が上記のようなありさまでは、説得力を欠く。

  この「呼びかけ」を読んだある西日本の女性信者は「誰に対してどのようなことについて、謝っておられるのか分からない。肝心の問題教区の司教がそっぽを向き、司教団のトップが代表して謝れば済むことなのでしょうか。抽象的で、心もこもっていない第三者のようです」という感想を「カトリック・あい」に寄せている。

 

*取り組みを始めて22年、“体制作り”以外に、何をしてきたのか

 

 また「呼びかけ」は、日本の司教団が2002年以来、ガイドラインの制定や、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」の設置など、対応にあたってきた・・・「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を通じて啓発活動を深めると共に、ガイドライン運用促進部門を別途設置し、それぞれの教区や修道会が、自らの聖職者や霊的な指導者の言動に責任をもって対応する態勢を整えつつあります」というが、体制着手から22年もかけて、どのような実績をあげたのだろうか。

 

 

*裁判に持ち込まざるを得なかった被害女性たちに心から耳を傾けたことがあるのか

 

 長崎教区、仙台教区では聖職者による性的虐待被害に遭った女性たちが、教区がまともに対応しないことから、裁判所に訴え、前者は長崎地方裁判所から教区、加害者に損害賠償命令が出され、後者は仙台地方裁判所の和解勧告を受け、教区側の消極姿勢で1年以上の”協議”を経て解決金の支払いとなったが、両教区とも、被害者たちに公の場で謝罪し、心身のケアに努め、教会に改めて迎え入れ、再発防止を約束した、という話は聞かない。それどころか、仙台教区の場合、被害者に対して「賠償金目当てだったんだろう」という心無い声をあびせさられ、教会に足を踏み入れることもできない状態、と聞く。

 「よびかけ」が、成果をする「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」についても、それに欠かすことのできない信頼を失墜する出来事が相次いでいる。長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となり、東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任、「休養」扱いとなり、それから数か月たった今も、何の説明もされていない。

 長崎教区の元職員は、長崎地裁に教区を相手取って損害賠償を求める訴えを起こし、現在裁判が続いているといわれるが、原告、被告共に情報開示を避けている。東京大司教と新潟司教と二人の高位聖職者を出している神言会の司祭が,告解に来た女性に繰り返し性的暴行を働いたケースは、同会日本管区本部が訴えを受け付けないどころか、その人物の所在さえ明らかにしないことから、被害者の女性が東京地裁に訴えている。3月11日に二回目の審理が予定されているが、初回の審理には、被告の神言会の責任者も代理人弁護士も出廷せず、書類提出だけで済ませているが、どこまでこのような誠意のない姿勢を続けるつもりなのか不明だ。

 

 

*シノドス総会第一会期の総括文書や著名な専門家は「司教とは別に司法的任務を担う機関の設置検討」

 

 このような日本の教会の現状から見えてくるのは、こうした高位聖職者の行為をいたずらに非難しても、教会の信頼を崩すような事態をなくすことができないのではないか、ということだ。

 参考になるのは、昨年10月にバチカンで開かれた、シノダリティ(共働性)に関する世界代表司教会議(シノドス)総会第一会期の総括報告書の「12:教会の交わりにおける司教」の【なお検討を要すること】だ。

 そこでは、「i) シノドス的教会にとって不可欠なのは、未成年者や弱い立場の人々の保護を目的とする手続における透明性と尊重の文化を確立することです。虐待防止に特化した組織をさらに発展させることが必要」とし、「虐待の取り扱いというデリケートな問題は、多くの司教を、『父としての役割と裁判官としての役割を両立させなければならない』という困難な立場に置きます。司法的任務を、教会法により規定される他の機関に委ねることの妥当性を検討すべきです」としている。

 バチカンの未成年者保護委員会委員として発足当初から聖職者による性的虐待問題に取り組み、現在はローマのグレゴリアン大学人類究所長を務める世界的に著名な性的虐待問題の専門家、ハンス・ゾルナー神父(イエズス会士)もLaCroixとの2月23日付けのインタビューでこう語っている。

 「(司教たちの中には)『虐待の問題は自分たちには関係ない』と言う人がおり、 その一方で、(バチカンで聖職者の性的虐待問題を担当する)教理省は、世界中から”事件簿”を受け取っている、と述べている… こうした認識の問題を超えて、司教たちは『自分が司祭の父親であり、裁判官でもなければならない』ということで困難に直面しています。その問題を乗り越える唯一の方法は、虐待問題が発生した場合に対処するための明確な手順を各教区で確立すること。 これには、事件簿の管理あるいは調査を、独立した第三者に委任することも含まれることも考えられる」。

 

 

*教皇が聖職者に求める「被害者の声に耳を傾ける積極的かつ敬意を持った心の広さ」、そして具体的な行動

 

 聖職者による性的虐待が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、昨年11月にフランス・ナント教区の聖職者による虐待被害者のグループと会見された際、聖職者による性的虐待の被害者たちが「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「『被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができるのです」と語られた。

 そして今年2月11日の 第32回世界病者の日の正午の祈りに先立つ説教では、この日のマルコ福音書にあるように「イエスのなさり方は、言葉を少なく、具体的に行動することです」と説かれ、最後に、「人々の話に耳を傾け、彼らの求めに応えられるようにしているか?」、それとも「言い訳をし、抽象的で役に立たない言葉の後ろに隠れているのか?」を自問するよう勧められた。

 

 「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を前に、このような自問こそ、日本の高位聖職者たちが率先して行うべきことではないか。そのうえで、具体的行動で、全信者に対して範を示すことを、心から求めたい。

(「カトリック・あい」代表・南條俊二)

2024年2月28日

・「バチカンは強力な規範を出したが、現地教会で完全には適用されていない」と聖職者性的虐待の著名批評家、ゾルナー師(LaCroix)

(2024,2,23 La Croix  Loup Besmond de Senneville)

 バチカンの未成年者保護委員会委員を創設以来務め、現在はローマのグレゴリアン大学人類学研究所所長の、聖職者性的虐待に関する著名批評家、ハンス・ゾルナー神父(イエズス会士)がLaCroixとの独占会見に応じ、聖職者の性的虐待に対処するために定められたバチカンの規範は「正しい方向性を示しているが、その実施を監視する仕組みがない」と指摘。2019年2月に教皇フランシスコが虐待問題に対処するために招集した歴史的な全世界司教協議会会長会議は「大きな一歩」ではあったが、その後に出された規則や手順は、「世界の現地の教区、教会では十分に、あるいは適切に運用されていない」と語った。

 インタビューの一問一答は以下の通り。

問 :聖職者の性的虐待問題への対処を話し合う全世界司教協議会会長会議が開かれてから5年が経ちましたが、この間の世界における教会内の性的虐待、特に小児性愛問題への取り組みをどう評価しますか?

答:  過去 5 年間で、私たちは大きな進歩を遂げてきました。 世界レベルでは、まとまった一連の規範「 Vox estis lux mundi」 など、いくつかのルールが確立されています。 すべての聖職者および修道者男女に対し、性的および精神的虐待を見つけた場合には上長に報告することが義務付けられている。 2019年に教皇フランシスコがこの司教協議会会長会議の開催を私たちに求めた時、教皇は、全世界の司教たちだけでなく、修道会なども含めた世界中のすべてのカトリック指導者に非常に強いメッセージを送りたいと考えておられたので、バチカンの幹部たち、男女修道会の総長たちにも参加を求め、被害者の証言を重視する考えから何人か方に参加を依頼されました。 これは長期的な影響を及ぼしました。 たとえば、英国の司教が最近、被害者が自身のミサで講話をすることを許可したが、5年前にはそんなことは問題外でしたから。

*バチカンは規範を出したが、運用に必要な手順と体制に問題がある

 

問:バチカンが出している規範は十分ですか?

答:  規範はどの機関が作ったものも完璧ではありません。 教会法など、いくつかの分野で改善の可能性があります。バチカンが導入した規範は正しい方向性を示していますが、現在、その実施を監視するメカニズムがありません。 一部の国では司教が機能不全を理由に辞任したケースもあります。なぜあるケースでは制裁が適用され、他のケースでは適用されないのでしょうか? 新しい規範が永続的で大きな効果をもたらすことを望むなら、それには、現地の教会の対応が変わらねばなりません。

問:透明性の問題でしょうか?

答:  それは問題の一部にすぎないと思います。 大きな問題は、運用に必要な手順と体制の問題です。司教が性的虐待をバチカンに報告しないという罪を犯したらどうなるでしょう? 誰がその問題を扱うのですか? 誰がそれを調査するのですか? バチカンでは誰がその結果に責任をもつのでしょう?同じ様に、世界の各地の教区、教会での規範の適用の違いも正確には把握されていません。 私たちが自由に使える正確なデータもないのです。

問:これはバチカン未成年者保護委員会が取り組むべき仕事ではありませんか?

答: 委員会がまとめる報告書で、おそらくこの分野での活動を監視することが可能になるでしょう。

*世界の司教たちは、司祭の”父親”であると同時に”裁判官”であるという問題を抱えている

問:司教たちはその問題を十分に認識しているでしょうか?

答: (司教の中には)「虐待の問題は自分たちには関係ない」と言う人がおり、 その一方で、(バチカンで聖職者の性的虐待問題を担当する)教理省は、世界中から”事件簿”を受け取っている、と述べている。 この 2 つの間にはある種の矛盾があります。

 だが、この問題についての認識の問題を超えて、司教たちは「自分が司祭の父親であり、裁判官でもなければならない」ということで、困難に直面しています。その問題を乗り越える唯一の方法は、虐待問題が発生した場合に対処するための明確な手順を各教区で確立することです。 これには、事件簿の管理あるいは調査を独立した第三者に委任することも含まれる場合があるでしょう。

 実際に被害者から訴えを受けた場合の対処の仕方についても”訓練”が必要です。訴えを受けたとき、 司教は何をすべきでしょうか? この問題は、被害者に関連して教会法レベルで起きるだけでなく、有罪判決を受けた司祭とのコミュニケーションや対応でも起こります。バチカンは2020年に従うべき手順についてのマニュアルを発行していますが、十分な内容とは言えない。 司教たちは、何をすべきか頭では分かっていても、経験が不足していることがあります。

 

*「純粋で神聖な教会」という認識は、「犯罪の現実認めない」ことにつながる

問:あなたは虐待問題についての意識を高めるために世界中を旅しておられますがいますが、どのような抵抗を感じていますか?

答:  世界各地の教会を回って、「少しの誤りも考えられない、純粋で神聖な教会」のイメージを持ち続けている人たちがいることに気づきました。 これは、「教会員が犯した犯罪の現実を認めない」ことにつながります。 それは現在の教会の人間的な現実や人々の期待に対応していないイメージです。神の民は、「司祭が聖人ではなく、他の皆と同じように罪人であること」をよく知っているはずです。 カトリック教徒の中にはこのことを理解し、こうした罪を犯した司祭をある程度までは許すことができる人がいますが、なぜ司祭は完璧な存在だと主張し、犯罪者を擁護する信者がいるのか、誰も理解しない。キリストは福音書の中でこう言われました―「あなたが私の兄弟たちの中で最も小さい者のためにこれをしたのは、いつも私のためにした。…これら最も小さい者の一人のためにしなかったときはいつでも、あなたがたは私のためにしなかったのだ」

 

*被害者が求めるものは多様、どのケースにも必要なのは「耳を傾け、貢献を歓迎する」ことだ

問:被害者への配慮は十分になされているのでしょうか?

答 : この点に関して一般的な結論を出すことは不可能です。 私の経験から、被害者の期待は人によって大きく異なります。教会関係者の話を聞くことを要求する人もいますが、そうでない人もいます。 経済的損害に賠償を求める人もいれば、そうでない人もいます。 ケアを必要とする人もいれば、そうでない人もいます。 私が言えるのは、「彼らの声に耳を傾け、彼らの貢献を歓迎することを学ばなければならない」ということです。

問:現在、子どもに対する犯罪の悲劇に対する認識は高まっているように見えますが、成人に対する虐待については、そうではないようです。 どうすればこれを変えることができるでしょう?

答:  未成年に対する性的虐待に関しても、一度に認識が広まったわけではありません。 米国、英国、アイルランドでは、30年ないし40年前に始まりました。成人に対するさまざまな種類の虐待についても、おそらく同様の段階的なプロセスをたどることになるでしょう。 それは時間がかかります。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2024年2月28日

・元イエズス会士で著名な芸術家、ルプニクの性的虐待被害者が実名で会見、バチカン捜査に透明性求める(Crux)

Lawyer Laura Sgro, left, listens to Gloria Branciani during a press conference in Rome on Wednesday, Feb. 21, 2024. Gloria Branciani is one of the first women who accused Fr. Marko Rupnik, a once-exalted Jesuit artist of spiritual, psychological and sexual abuse. (Credit: Alessandra Tarantino/AP.)

Rupnik victims call for transparency as case moves forward

(2024.2.22 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

ローマ 発– 悪名高い性的虐待者で元イエズス会士司祭の芸術家、マルコ・イワン・ルプニクの被害者2人が21日、初めて公けの場に実名を明らかにしたうえで記者会見し、バチカンでのルプニクの犯罪に関する捜査が完全な透明性を持って行われるよう要求。また、この事件に関しイエズス会幹部や教皇フランシスコの対応などに問題がなかったかどうかについても徹底的な調査を求めた。

 イタリア新聞連盟(FNSI)ローマ本部での記者会見に出た被害者はミルジャム・コヴァチさん(62歳)とグロリア・ブランチアーニさん(60歳)の2人で、ルプニクとスロベニアのシスター・イヴァンカ・ホスタが共同設立した「ロヨラ共同体」の会員だった

 2人は会見で「ルプニクによる虐待について、私たちは1990年代初めから訴えてきましたが、ルプニクが施設にいる間は日常的に無視され続けました」とし、彼女たちと多くの姉妹たちが耐えてきた長年にわたる精神的、精神的、性的虐待を語った。

  スロベニア人のコヴァチさんは、ルプニクが施設で「少なくとも41人の姉妹を虐待していた。当時、私たちは皆、理想に満ちた若い女性で、私たちを導いてくれる人々への従順と信頼を教えられていましたが、彼はそれを、精神的、肉体的な様々な種類の性的虐待に悪用したのです」と訴えた。

 もう1人の被害者、イタリア人のブランチアーニさんは、「何年にもわたってルプニクから虐待を受け続けました」と述べた。

  彼女が芸術に関心を持つ若い医学生だったときに初めてルプニクに会った彼はとてもフレンドリーで優しく、気さくな人で、私の精神的、肉体的ニーズをすべてサポートしてくれました。私を褒め、特別な配慮を示してくれました。”霊的な父親”として、信頼できる人物ようにも見えましたが、私が友人たちを抱き合ったり、頬にキスすると、ひどく怒りました」。

  だが、「私のために頻繁に個人的ミサを捧げ、ミサ後に、私にキスをするようになり、回を重ねるごとに抱擁とキスが激しさを増していきました。そして、ルプニクの行為に疑念を抱いたり、要求に沿わないなら『神への不忠』と見なす、言われ、抵抗できなかった。1986年6月、イコン制作のためにギリシャに立つ前に、ミサを捧げるので来るように言われ、ミサ中に私に服を脱ぐように命じ、体をまさぐられるまでになった。

   彼女さんは1987年にロヨラ共同体に入ったが、その後、ルプニクの”身体的接触”が頻度を増し、暴力的になっていった。ルプニクはさまざまな任務のために頻繁に彼女を連れて車で長距離を移動し、その間に「処女の喪失を含む、より深刻な虐待」をされた。だが、 「私が、ルプニクにそのような行為は過ちだと話そうとするたびに、ルプニクは『そのように言うのは、あなたが厳格な性格であることと関係しているのだ』と言い、取り合ってくれませんでした。それどころが、永久誓願をして修道女となった後には、聖三位一体を模して、他の修道女と3人でセックスをしようと、ルプニクから持ち掛けられたのです。『あなた方の関係が三位一体に似ていることを証明するには、別の姉妹を性的関係になるように招待する必要がある』と言うのでした」。

  それだけではない。ルプニクは彼女に「あなたには自己中心的で健全な性を生きることができない。性格的に決意と強さが欠けている。性を通じて、正さねばならない」とまで言われ、ポルノ映画を見に2度も連れ出された。

 このようなことが繰り返されて、ブランチアーニさんはパニック発作を起こし、見当識障害に苦しむようになり、上長に相談しても取り合ってもらえず、結局、1994年にロヨラ共同体から出ることになった、という。

 コヴァチさんも、ルプニクとシスター・ホスタから心理的虐待と良心の侵害を受け、見当識障害と混乱状態の中で、ロヨラ共同体を去った。

2019年に同共同体の数人の修道女から訴えを受けたスロベニアのリュブリャナ教区の大司教が、ロヨラ共同体への調査を開始した際、コバチさんは、同共同体を去った他の修道女たちと連絡を取るよう求められ、彼女たちも声を上げるようになった。

 昨秋、ホスタさんは教会からルプニクによる虐待被害者と自分自身のために祈り続ける生活を認目られる一方、ロヨラ共同体は解散させられた。

 現在68歳のルプニクは、おそらくカトリック教会で最も有名な現代芸術家であり、その壁画はバチカンやルルドのマリア聖堂を含む世界中の聖堂、礼拝堂、大聖堂を飾っているが、教会の最も悪名高い虐待容疑者でもある。

 2020年、教会の最も重大な犯罪の一つである性的関係を持った女性を赦免したとして一時的に破門されたが、2週間後に破門は解除された。 delicta graviora(重大犯罪)は、バチカンの教理省が担当し、当時の長官はスペインのイエズス会士、ルイス・ラダリア枢機卿、教皇フランシスコ自身もイエズス会士だったことから、このような短期での破門解除がされた、との見方も出ていた。だが、翌 2021年に、ロヨラ共同体の元修道女9人がルプニクの虐待についてバチカンに訴え、2022年10月に、その虐待疑惑が表ざたになったが、当時の教理省は、教会法に基づく正式な調査の開始を拒否した。成人に対する虐待には時効が設けられており、すでに時効になっている、との判断からだった。

 だが、イエズス会そのものは、彼が聖職者としての活動を禁止し、旅行や新しい芸術プロジェクトの依頼を受けることも制限するとともに、ルプニクから被害を受けた人々に、名乗り出てくれるよう呼びかけ、新たな15件の訴えがされた。ルプニクが調査への協力を拒否したため、イエズス会は昨年6月、除名処分とした。

 21日の記者会見でブランシアーニさんは、自分が2022年に教理省の求めに応じて証言をし、イエズス会が独自の内部調査を行った際にも証言をした。そして、教皇フランシスコは昨年秋、ルプニクの犯罪に対する時効を差し止め、バチカンでの裁判を認める決定をした。

  ブランシアーニさんとコバチさんは、バチカンから改めて事情聴取に応じるよう連絡を受けたが、弁護士抜きで応じたくなかったため回答を留保し、 民法と教会法の両方の資格を持つイタリアの著名な弁護士ラウラ・スグロ氏を代理人に選任したうえで、今回の記者会見を開いた。近いうちに、バチカンの事情徴収に応じるという。

 スグロ弁護士は記者会見で「この事件は立場の弱い成人に対する虐待として扱われている」とし、バチカンの裁判所で法廷でルプニクを民事告訴する可能性など他の対応も検討していることを示唆したが、詳細は明らかにしなかった。

 教理省が今後もルプニク事件の取り扱いを続けるのか、それとも1月30日に同省が「弱い立場の成人に関する明確化」で「成人が関与する虐待事件のみに責任を負う」との声明を発表したことから、この事件を別の機関に移管する可能性があるのか、という疑問が生じている。

 バチカンの報道担当、マッテオ・ブルーニ氏は21日の記者会見後の声明で、ルプニク事件は教理省が担当しており、「ここ数か月の間、関連する入手可能なすべての情報を得るために事件に関係する機関と連絡をとっている。これまで接触したことのない組織に調査範囲を広げ、すべての結果を得たうえでで、今後の手順を検討することになる」と説明した。

 ルプニクは 身体的虐待に加えて、霊的なイメージや象徴主義を使って”神の神秘的な体験”に仕立て上げる「偽の神秘主義」を使ったことでも告発されており、これは「信仰に反する犯罪」と考えられている。 教理省はこれまで何世紀にもわたって「偽の神秘主義」とそれに類するものを使った犯罪の訴追に努めてきたが、そうした犯罪は明確に定義されておらず、教会法にもこれらの犯罪に関する規定がないため、訴追は困難だ。

 そうしたことから、教会関係者の中には、「偽りの神秘主義」を使って性的虐待に及ぶようなルプニクの象徴される現代の”カリスマ聖職者”たちが罪を免れてしまうのではないか、と懸念する声も出ているが、これについてスグロ弁護士は、この問題にどう対処するのかについて、教理省は明示していない、とし、「今回の裁判に至る捜査には、透明性が求められます。被害者たちも、イエズス会も、そしてルプニク事件に関係する他の教会関係者すべてがその対象となる」とし、捜査の陰で、ルプニクの立場を有利にするため、訴え出た被害者たちの信用を傷つけようとするルプニクの支持者たちをけん制した。

 またこの記者会見を主催した、虐待被害者支援団体、Bishop Accountabilityの共同代表アン・バレット・ドイル氏は、「2019年に教皇フランシスコの意向で開かれた児童保護に関する世界代表司教会議から5年が経ちましたが、この間、性的虐待問題への教会の対応にほとんど進展が見られない… ルプニク事件でも、ひどい隠蔽が続いています。1990年代から現在に至るまでルプニクによる性的虐待を見て見ぬふりをしてきたルプニクの上長たちすべての対応を詳述する完全な報告書を作成すること、そこには教皇フランシスコ自身の役割に関する『最も憂慮すべき問題』も取り上げることを求めたい」と強調した。

  ブランシアーニさんも「今も聖職者による性的虐待をめぐる状況が変わったわけではありません。教会の上部構造には、事件当初から透明性がなかった」と批判したうえ、「公に声を上げる、という私たちの困難な決断が、透明性の促進に役立つことを期待します。私たちが望んでいるのは、真実が認識され、私たちが受けてきたルプニクの誤った行為が認定され、捜査の透明性が確保されることです。だが、当事者たちは私たちに、沈黙を続けること、”何らかの形で消える”ことを、いまだに要求して来る。私たちの信用を傷つけるような行為は、これ以上、受け入れられない」と言明。

 この 事件のこれからの扱いについて、ブランチアーニさんは「真実と正義が守られ、沈黙が破られることを望んでいます。…特定の集団が、私たちを(ルプニクに)夢中になっている弱虫だと決めつけるのを受け入れられません。 私たちが被っった被害は正当に認識されねばなりません」と訴えた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年2月25日

・豪州の前司教が多数の未成年性的虐待容疑で逮捕・起訴(Crux)

Bishop Christopher Saunders of Broome tries to play a digeridoo during a World Youth Day 2008 media event in Sydney, Australia, on April 17, 2008. Saunders, a retired Catholic bishop, has been charged, Thursday, Feb. 22, 2024, with child sex abuse offenses in a remote part of Australia’s northwest. (Credit: Rob Griffith/AP.)

(2024.2.23 Crux  Managing Editor Charles Collins)

 起訴の罪状は、性的虐待2件、わいせつ行為・暴行14件、児童に対するわいせつ行為3件。これらの行為は、2008年から2014年にかけてなされた、とされている。
 サンダース容疑者は現在、保釈中で、自宅に留まるよう命じられており、公判は6月に始まる予定だが、本人は無罪を主張している

  今回のサンダース容疑者の逮捕・起訴について、オーストラリア司教協議会のティモシー・コステロー会長は22日に声明を出し、「教会にとって非常に深刻であり、特に被害を訴えている人たちにとっては非常に憂慮すべきもの。容疑のすべてが徹底的に調査されることは正しく、適切であり、必要なことだ。 教会は司法当局に全面的に協力し、公正な捜査を妨げるような動きを避けるために必要なあらゆる措置を講じる」と言明した。

 サンダース容疑者は、かつて教区での権利擁護活動で知られ、彼の名を冠したビールもあったほどの”有名人”。 若者をキャンプや釣り旅行に連れて行ったことでも知られていた。性的不法行為に関する疑惑は2020年に初めて表面化し、警察が捜査したが、起訴には至らなかったものの、司教職を退き、”名誉司教”となっていた。

  だが、2022年になって、バチカンがサンダースの児童虐待疑惑について捜査を開始し、200ページにわたる報告書が流出するに至って、西オーストラリア州警察が捜査を再開した。

  昨年 9月、オーストラリアのテレビ局7Newsがサンダースを虐待で告発した2人にインタビューしているが、その1人の男性は、10代の未成年の時、司教館の庭の手入れをしたあと、シャワーを使おうとしたところ、サンダースが入って来て 「石鹸とシャンプーで私の体を洗い始め、陰部や前部など体中をこすり始めた語った。とても素晴らしい人だと思っていたので、とても恐ろしかった」と語っている。

 そして、サンダースは、彼に現金やプレゼントを渡すようになり、スポーツの試合を見るためにメルボルンまで飛行機で連れて行かれ、ホテルの同じ部屋に泊まらされたこともあった、と述べた。

  もう一人の男性は「司教は若者たちを酔わせてショートパンツやシャツを脱ぐよう要求した」とし、「私は彼がキスしたりハグしたり…そして陰部に触れたりしているのを見て、本当にショックを受けた」と語り、サンダースの言葉は「かなり不快だった」と付け加えた。

 被害者とされる1人は7Newsに対し、サンダースは「刑務所に入れられるか、そうでなければカトリック教会から追放されるべきだ」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年2月23日

・2024年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって日本カトリック司教協議会会長

(2024.2.16  カトリック中央協議会)  

日本のカトリック信者の皆様

2024年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 教会は、自分たちが「神との親密な交わりと全人類一致のしるし、道具」(第二バチカン公会議『教会憲章』1)となるよう呼ばれた召命を受け、その実現のために挑戦し続ける道をともに歩んでいます。

 もちろん教会を形作る私たちひとり一人は完全な存在ではなく、「神との親密な交わりと全人類の一致」を明確にあかしするしるしとはなり得ていません。とりわけ、教会が旅を続ける現代社会は、命に対する暴力が荒れ狂う世界であって、その現実の中で、賜物である命を最優先に守り抜き、人間の尊厳を尊重し、さらに全体として一致することは容易なことではありません。

 しかしながら教会は、その厳しい道を挑戦しながら歩むことをやめることはできません。なぜならば、教会にとって「イエスを宣べ伝えるとは、命を宣べ伝えることにほかならない」からです(ヨハネ・パウロ2世「命の福音」80)。

 その教会にあって、率先して人間の尊厳を守り、共同体の一致を促進するべき聖職者や霊的な指導者が、命に対する暴力を働き、人間の尊厳をないがしろにする行為を働いた事例が、近年相次いで報告されています。

 そういった言動を通じて、共同体の一致を破壊するばかりか、性虐待という人間の尊厳を辱め蹂躙する行為によって、多くの方を深く傷つけた聖職者や霊的な指導者が存在することは事実です。

 長い時間を経て、ようやくその心の傷や苦しみを吐露された方々もおられます。なかには、あたかも被害を受けられた方に責任があるかのような言動で、さらなる被害の拡大を生じた事例もしばしば見受けられます。

 このように長期にわたる深い苦しみを生み出した聖職者や霊的指導者の行為を、心から謝罪いたします。また被害を受けられた方に責任があるかのような言動を通じて、人間の尊厳をおとしめた行為を、心から謝罪します。責任は加害者にあるのは当然です。

 2018年に教皇フランシスコは、「神の民に宛てた手紙」を公表され、その中で、性虐待問題について次のように呼びかけました。そこに記されている次の言葉を、日本の教会も共有いたします。

 「苦痛と無力感を伴う根深い傷を、ほかでもなく被害者に、しかしそればかりか家族と共同体全体に負わせる犯罪です。起きてしまったことに鑑みれば、謝罪と、与えた被害を償う努力が、十分になることなど決してありません。今後について考えれば、このような事態が二度と繰り返されないようにするだけでなく、その隠蔽や存続の余地を与えない文化を作り出す努力をするほかありません」

 教皇フランシスコは、この問題に教会全体が真摯に取り組み、その罪を認め、ゆるしを請い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽くすよう求め、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるようにと指示されました。日本の教会では、四旬節・第二金曜日を、この祈りと償いの日と定めました。2024年にあっては、来る3月1日(金)がこの日にあたります。

 日本の司教団は、2002年以来、ガイドラインの制定や、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」の設置など、対応にあたってきました。2021年2月の司教総会で、「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を決議し、教会に求められている命を守るための行動に積極的に取り組む体制を整えてきました。

 また「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を通じて啓発活動を深めると共に、ガイドライン運用促進部門を別途設置し、それぞれの教区や修道会が、自らの聖職者や霊的な指導者の言動に責任をもって対応する態勢を整えつつあります。

 改めて、無関心や隠蔽も含め、教会の罪を心から謝罪いたします。神の癒やしの手によって被害を受けられた方々が包まれますように、心から祈ります。また聖職者のためにも、お祈りくださいますようお願いいたします。

 どうぞ、四旬節第二金曜日に、またはその近くの主日に、教皇様の意向に合わせ、司教団とともに、祈りをささげてくださいますようにお願いいたします。

2024年2月14日 日本カトリック司教協議会 会長 菊地 功

2024年2月17日

・カナダで性的虐待集団訴訟の被告名簿に載った枢機卿が虐待を否定、大司教職は一時中断

(2024.1.30 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen )

ローマ発 – ケベック大司教区に対して性的虐待の損害賠償を求める集団訴訟でジェラルド・ラクロワ枢機卿が被告リストに載ったことに対し、同大司教区事務局は1月26日に声明を発表し、ラクロワ枢機卿が容疑を否定する一方、問題が解明されるまで「大司教区を指導する立場」から身を引くことを発表した。

 ラクロワ枢機卿は1月25日、1987年と1988年の2回、当時17歳だった少女に「不適切な接触」をしたと主張する原告側の法廷文書により、集団訴訟の被告リストに載せられた。

 ケベック大司教区は26日の声明で、ラクロワ枢機卿が「自身に対する容疑を断固として否定」し、容疑は「根拠がない」と考えている、と述べた。その一方で、枢機卿が「大司教区の指導から一時的に退く」ことを決めた、とした。そして、数日以内にラクロワ枢機卿は大司教区に「個人的な連絡を送り」、それが「メディアに中継される」予定としている。

 ラクロワ枢機卿は、教皇の枢機卿顧問会議のメンバーで、昨年10月の世界代表司教会議の第1会期会合で、今年10月の第2会期を経てまとめられる最終文書を監督するために選ばれた7人の1人で、第2会期の会合に参加する予定。

 だが、今回、集団訴訟の被告リストに載ったことで、2022年にバチカン司教省の元長官、マルク・ウエレ枢機卿が告訴(後に無罪)されて以来、性的虐待の被告とされた2人目のカナダ人枢機卿となった。 

 今回の ケベック大司教区に対する集団訴訟には約147人の被害者が参加している。 法廷文書には大司教区関係者15人の名前が挙げられているが、ラクロワ枢機卿が性的暴行をしたとされる相手の女性の身元は特定されていない。

 ケベック大司教区は声明の中で、ラクロワ枢機卿が大司教ポスト不在中に物事を進めるために「あらゆる手段を講じる。真実を尊重し、誠実に集団訴訟に対応する」とする一方、 性的虐待の被害者への補償について”関心”を持っている」としている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月31日

・カナダ・ケベックの枢機卿が現地の性的虐待集団訴訟の被告リストに

(2024.1.26  Crux Staff)

 この枢機卿は ジェラルド・ラクロワ・ケベック大司教で、25日に裁判所に提出された集団訴訟の書類の被告名簿に追加掲載された。(写真は、ケベック大司教のラクロワ枢機卿)
 この集団訴訟は、ケベック大司教区の100人以上の聖職者や信徒が行った性的虐待・暴行に対して損害賠償を求めるもので、原告代理人弁護士によると、これまでに147人が被害者として名乗り出ている。
 集団訴訟の代理人弁護士のアラン・アルセノー氏によると、加害者名簿に追加されたラクロワ枢機卿の具体的な容疑は、
35年前、2回にわたって、当時17歳の少女に不適切な行為を働いた、というもの。
 被害者とされる女性の身元は明らかにされていないが、現在、50歳代。1980年代後半、両親に付き添って聖書研究に教会に出かけた際、 当時30代前半だったラクロワ枢機卿が別室に引き込み、体をまさぐった後、その行為を外部に漏らすことは「自分を殺す」ことになるため、母親に話さないように”注意”した。両親がショックを受けるのを心配して、これまで名乗り出ることができなかったが、母親が亡くなったため、集団訴訟に参加することで、アルセノー弁護士に連絡を取った。
 集団訴訟そのものは2022年に裁判所に受理されている。ケベック大司教区事務局の聖職者や信徒によって1940年以降に性的虐待を受けた人たちが、大司教区に集団で損害賠償請求の訴えを起こしている。対象期間が長く、加害者、被害者も多数に上るため、裁判の事前準備に時間がかかっており、審理開始は来年になると見られている。
 ラクロワ枢機卿の広報担当者は25日、「ラクロワ枢機卿に対する疑惑に関しては様々なことが言われている。現在、解明に努めており、後日、正式なコメントを出したい」と語った。

 枢機卿は、教皇フランシスコによって2014年に枢機卿に任命され、2022年のカナダ訪問で主導的な役割を果たし、昨年3月、枢機卿顧問会議のメンバーに指名された。教会改革に関して教皇の最も重要な助言者の1人で、昨年10月の世界代表司教会議(シノドス)通常総会第一会期の総括文書とりまとめのメンバー7人の1人に選ばれていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月28日

(評論)傷ついた”羊”を守ろうとしない”牧者”たちは”シノドスの道”を歩めるか

「虐待に対する”沈黙”を打ち破る」ために教皇が求める「広い心」を日本の教会、司教団は持っているのか

 「司祭から繰り返し性暴力」‐東京の女性信者が神言会に損害賠償求める裁判始まるの記事を「カトリック・あい」に23日夕から掲載(朝日新聞も翌24日の朝刊に掲載)してわずか3日の26日夕現在で、閲覧件数が300件を大きく超えている。異例の閲覧件数の高さは、そのまま多くの日本の信徒、さらに司祭の間にも、大きな苦痛と不安の中であえて裁判に臨むことになった原告被害者への理解と共感が広がっていることを示しているように思われる。

 カトリック教会では、聖職者による性的虐待問題が世界的に深刻な問題となり、信者の教会離れにもつなっがっているが、1月に入ってからも、南米ボリビアで「性的虐待被害者の会」がイエズス会の司祭9人とボリビア管区を相手取って訴訟を起こしたことが明らかになるなど、いまだに終息を見せていない。

 日本でも、教会自体で責任ある対応ができずに訴訟になった、あるいはなっているケースが、確認できただけで長崎で2件、仙台で1件、そして今回の東京での1件があり、他にも問題のケースが数件あると見られる。

 このうち、仙台市の女性信徒の場合、カトリック仙台教区の司祭から性的暴行を受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症、その後の教区関係者の不適切な対応、発言もあって多大な精神的苦痛を受けたとして、同教区などに謝罪と損害賠償を求め、仙台地方裁判所に提訴していた事件が昨年12月、和解金の支払いなどで一応の決着を見た。

 だが、教区から本人への謝罪も公けにはなく、精神的なケアもなく、それどころか一部の信徒たちから「和解金目当てに裁判をやったのか」という本人の心の傷口にさらに塩をすり込むような声も出て、本人を教会に絶望させる事態に追い込んでいる、という。

 日本の司教団は、バチカンからの指示を受けて性的虐待防止などのガイドラインの作成や各教区の女性や子供の保護のための担当司祭、窓口の設置などはしている。だが、長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となり、東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任されるなど、窓口そのものの信頼を大きく損なう事態も起きている。

 また司教団は、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果を昨年9月に明らかにしたが、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった」などとするだけだった。
 具体的な教区名、申し立てやそれに対する教区の対応などの説明はなく、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるのみ。被害者に寄り添おうとする姿勢も、虐待問題に真剣に対応しようとする意志もうかがえない。

 聖職者による性的虐待が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、昨年11月にフランス・ナント教区の聖職者による性的虐待被害者のグループと会見された際、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「『被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができる」と語られている。

 傷ついた被害者に耳を貸そうとせず、それどころか代理人弁護士を立てて、加害者と見なされる司祭を守ろうとする人々に、教皇のこの言葉は届いているのだろうか。このような態度を続ける限り、司教も司祭も、そして信徒が互いに耳を傾け、共に歩もうと教皇が願って始められた”シノドスの道”を歩むことが、果たしてできるのだろうか。

 教皇の言われる「受け手」としての日本の教会、そして何より司教団は、昨年12月の仙台での和解とその後の教会の対応、今回の東京での裁判開始を機に、改めて、この教皇の言葉をかみしめる必要がある。

(カトリック・あい 南條俊二)

2024年1月26日

・バチカン裁判所の控訴審で、イタリア人神父を未成年性的行為で懲役2年6か月の逆転有罪に

(2024.1.24   Vatican News)

 バチカン裁判所は控訴審で24日、イタリア・コモ出身のガブリエレ・マルティネッリ神父(31)に、バチカンの聖ピオ神学校の学生だった2008年8月9日から2009年3月19日までに犯した未成年者に対する性的行為の罪で懲役2年6か月、罰金1000ユーロの判決を下した。

  マルティネッリ神父は、「L.G.」という名の元神学生から出された告訴状をもとに起訴され、一審では、本人が16歳未満だった2008年8月2日までに犯した事実については処罰の対象とされず、告訴した元神学生に対する強姦と猥褻行為の罪について7か月の懲役刑が宣告されていた。

  この判決を、バチカンの検察官、ロベルト・ザノッティ氏とマルティネッリ神父の代理人弁護士ローラ・スグロ氏の双方が不服として控訴し、ほぼ1年にわたる二審での審理の末、2021年10月6日に、証拠不十分で、すべて無罪の判決を受けていた。

 聖ピオ神学校の元学長エンリコ・ラディチェ神父は性的行為の幇助と教唆の罪で告発されていたが、証拠不十分で無罪となった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2024年1月26日

・改「司祭から繰り返し性暴力」‐女性信者が神言会に損害賠償求める裁判始まる・第二回は3月11日、東京地裁の第606号法廷で。傍聴自由。

(2024.1.23=2.24改 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が、外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかったとして、司祭が所属していたカトリック修道会、神言会(日本管区の本部・名古屋市)を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の審理が1月23日、東京地方裁判所で始まった。

 第二回の審理は3月5日を予定していたが、一回目の法廷の部屋の傍聴席が満杯となったため、広い部屋を用意する都合から、3月11日(月)午前10時から、606号法廷で開かれることになった。傍聴は自由。審理終了後には今回も、被害者と傍聴者との面談が予定されている。本件に関心をお持ちの方の傍聴、真相解明への参加を、原告、原告弁護人は期待している。

 1月23日の審理には原告の田中時枝さん(東京教区信徒)と代理人の秋田一惠弁護士が出廷、被告の神言会とその代理人弁護士は文書提出のみで欠席のまま、今後の審理の進め方などについて裁判所側から意見を聞いた。

 裁判の前に、原告田中さんと代理人の秋田弁護士が、原告の支持者たち20数人と会見し、原告が訴訟に至った経緯などについて改めて説明。田中さんは、「救いを求めた教会の司祭に、真実を打ち明け、神の赦しを得るはずの『告解』という機会を利用され、肉体だけでなく、精神的に深い傷を負わされた。今も夜中に目が覚め、恐ろしさがよみがえり、絶望感に襲われることがしばしば。修道会もまともに対応してくれない。こんなことが繰り返され、同じように不幸な人を作ってはならない、との思いで、あえて実名も出し、訴訟に踏み切った」と語った。

 代理人弁護士などの説明によると、田中さんは、子供時代に性的虐待を受け、トラウマに苦しみ続け、今から約十年前、50代になってようやく気持ちの整理がつき、当時在籍した長崎の教会で告解をした。ところが告解を聴いた神言会士の司祭から、教会の外の建物に連れて行かれ、性的暴行を受けたが、「逃げると殺される」という恐怖感から抵抗できず、4年半も繰り返され、回を重ねるごとに酷さが増した。

 神言会の日本管区長などに被害を伝えたところ、2019年に、その司祭に対して、「性犯罪を行い、貞潔の誓願を破ったと告発されていること」「将来スキャンダルを引き起こす可能性があること」などを理由に聖職を停止し、共同生活から離れる3年の「院外生活」を決め、母国への帰国を認めた。だが、その後、この司祭は日本に戻り、還俗して他の女性と結婚し、東京都内にいるという情報もあるが、神言会は「所在不明」と言い続けているという。

 代理人の秋田一惠弁護士は「神父は告解を利用して彼女の重大な秘密を知り、それに乗じて性加害を繰り返した。修道会は性被害の事実と加害者を組織的に隠蔽(いんぺい)している」と語っている。
 
 神言会は、1875年に聖アーノルド・ヤンセン神父によって創られたカトリックの宣教修道会で、日本では1907年に宣教活動を開始。現在、名古屋市に中学、高校、大学を、長崎には中高を経営。新潟、仙台、東京、名古屋、福岡、長崎、鹿児島の各教区で約30の小教区を担当し、東京教区、新潟教区の教区長に、それぞれ同出身の大司教、司教が就いている.

(解説)教皇が言われる「虐待に対する”沈黙”を打ち破る」ために教会、司教団が求められることは

 カトリック教会では、聖職者による性的虐待問題が世界的に深刻な問題となり、信者の教会離れにもつなっがっているが、1月に入ってからも、南米ボリビアで「性的虐待被害者の会」がイエズス会の司祭9人とボリビア管区を相手取って訴訟を起こしたことが明らかになるなど、いまだに終息を見せていない。

 日本でも、教会自体で責任ある対応ができずに訴訟になった、あるいはなっているケースが、確認できただけで長崎で2件、仙台で1件、そして今回の東京での1件があり、他にも問題のケースが数件あると見られる。

 このうち、仙台市の女性信徒の場合、カトリック仙台教区の司祭から性的暴行を受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症、その後の教区関係者の不適切な対応、発言もあって多大な精神的苦痛を受けたとして、同教区などに謝罪と損害賠償を求め、仙台地方裁判所に提訴していた事件が昨年12月、和解金の支払いなどで一応の決着を見た。

 だが、教区から本人への謝罪も公けにはなく、精神的なケアもなく、それどころか一部の信徒たちから「和解金目当てに裁判をやったのか」という本人の心の傷にさらに塩をこすりつけるような声も出、本人を教会に絶望させる事態に追い込んでいる、という。

 日本の司教団は、バチカンからの指示を受けて性的虐待防止などのガイドラインの作成や各教区の女性や子供の保護のための担当司祭、窓口の設置などはしている。だが、長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となり、東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任されるなど、窓口そのものの信頼を大きく損なう事態も起きている。

 また司教団は、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果を昨年9月に明らかにしたが、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった」などとするだけだった。
 具体的な教区名、申し立てやそれに対する教区の対応などの説明はなく、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるのみ。被害者に寄り添おうとする姿勢も、虐待問題に真剣に対応しようとする意志もうかがえない。

 聖職者による性的虐待が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、昨年11月にフランス・ナント教区の聖職者による性的虐待被害者のグループと会見された際、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「『被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができる」と語られている。

 「受け手」としての日本の教会、そして何より司教団は、今回の東京での裁判開始を機会に、改めて、この教皇の言葉をかみしめる必要がある。

(カトリック・あい 南條俊二)

2024年1月23日

・ボリビアで性的虐待被害者の会がイエズス会士9人とボリビア管区を相手取る訴訟(Crux)

(2024.1.20 Crux Contributor  Eduardo Campos Lima)

 サンパウロ(ブラジル)発-イエズス会ボリビア管区の司祭による40年以上にわたる80件以上の性的虐待事件の暴露を受けて設立されたボリビアの「虐待被害者の会」が、イエズス会ボリビア管区を相手取って訴訟を起こしている。

 「イエズス会は長年にわたり事件を隠蔽しようとしてきた。 彼らは何が起こっているのかについての情報を持っていましたが、それを司法当局に届けることをしなかった。 私たちは彼らが組織的に犯罪を犯したと考えている。彼らは責任を負わなければなりません」と、「虐待被害者の会」の会長で自身も性的虐待の被害者であるワイルダー・フローレス氏は語った。

 「虐待被害者の会」は昨年10月にボリビアの裁判所にイエズス会の司祭9人と同会の元ボリビア管区長を相手取って訴訟を起こした。訴えを受理した裁判所が現在、調査中だが、 イエズス会ボリビア管区の広報担当者はCruxの取材に、「会は被害者との連帯に尽力しており、刑事捜査と民事捜査の両方に全面的に協力している」と述べた。

 「虐待被害者の会」はボリビアでの聖職者による性的虐待被害者25人によって結成され、現在、100人以上の被害者が新たに加わっている、という。その中にはまだ正式に会のメンバーになっていない人もいるが、虐待に関する情報を会に提供しており、会ではさらに多くの被害者たちと連絡を取り合っている。

 会の 創設メンバーの多くは、ボリビアの3番目の都市、コチャバンバにあるイエズス会の寄宿学校Colegio Juan XXIIIの元生徒たちだ。

 彼らが在籍していた当時の校長は「ピカ神父」として知られるスペイン生まれのイエズス会士、アルフォンソ・ペドラハス神父(故人)。2023 年 4 月にスペインの新聞El Pais が報道した同神父の日記には、1960 年代から 2000 年代にかけて、自分が犯した数多くの性的虐待事件が書かれており、 少なくとも当時未成年だった85人が性的虐待を受けたことが明らかになった。

  フローレス会長も、ピカ神父の性的虐待の被害者の一人だった。虐待は1993年に行われたが、神父はすでに校長をやめていた。

  会長によると、この寄宿学校の生徒の大半は地元の貧しい家の出身で、鉱山労働者の子供も含まれており、学校に入ることは、貧困を脱却する機会と見なされていた。 

 会長は、虐待を受けた時の様子を「ペドラハス神父が学校を訪ねてきた当時、私は13歳でした。神父は非常に重要な人物として私たちに紹介され、そこで1週間を過ごしました… ある晩、彼が私のところにやって来ました。 そして性的虐待を受けたのです。私は 何時間も泣きました。 まるで悪夢のようでした」と振り返った。

 翌日の夜、フローレス氏は、神父がまた生徒たちの宿舎にやって来て、同僚の生徒一人を部屋から連れ出したところを目撃した、という。

  フローレス氏は今、「長年にわたって性的虐待を繰り返した後も、なぜ、このような異常な小児性愛者が十代の若者たちの育成を担当することができたのか」と強い疑問を感じているとCruxに語った。「私が虐待を受けた当時の校長は、ペドラハス神父の後任でしたが、二人ともスペイン生まれで、友人同士だった。校長はペドラハスに性的虐待の性癖があることを知っていたはずですが、それでも彼を学校に訪問させたのです」と批判した。

 ペドラハス神父は、日記の中で、さまざまな機会に、イエズス会の上長や他の会士に自分の罪を告白したと書いているが、告白を聴いた誰も、司法当局に彼を訴えることはしなかった。 「神父は日記で、85人の被害者について言及していますが、私たちは、この寄宿学校だけで150人以上が被害を受けていると考えています」とフローレス氏は断言した。

 また、フローレス氏が被害に遭った当時の寄宿学校の校長は、スペイン東部カタルーニャ出身のフランセスク・ペリス神父で、ボリビアに赴任する前に欧州で虐待で訴えられていた。被害者の一部から公に非難され、職を追われている。だが、 「ぺリス校長の後任となったカルロス・ビジャミル神父も虐待を犯しました。20年以上にわたって、この寄宿学校の校長を務めた5人が生徒たちを性的に虐待していたのです」と氏は語った。

 「虐待被害者の会」は、これまでにイエズス会士の小児性愛者が関与した他の事件の報告も受けており、告発の対象となる司祭の数は9人に増えた。このようにイエズス会士の加害者が多数に上ることから、訴訟をボリビアのイエズス会に対して起こすことになった、という。加害者とされる司祭9人のうち生存しているのはぺリス神父など2人だが、適切な対応を怠った罪でイエズス会の元ボリビア管区長らも訴訟の対象としている。

 これに対して、イエズス会ボリビア管区の広報担当、セルジオ・モンテス神父は、2018年以来、イエズス会は潜在的な虐待事件を調査し、対処するために、いくつかの体制を作っおり、イエズス会士が関与した一部の事件が正規の手続きで適切に捜査され、検察に送致され、開示されることが保証された、とCruxに説明した。

  モンテス神父によれば、ペドラジャスの事件は公けになる直前に、当局から予備的な捜査を受け、管区に対する隠蔽の告発は検察によって捜査されている。

 「イエズス会は、告発された事件に関して持っているすべての文書を検察に提出している。公正な捜査と司法手続きを経て、有罪とされれば、イエズス会士は法で定められ決定に従わなければならない」とする一方、「ボリビアの法律では、犯罪は組織ではなく人々のみに責任がある、とされている。裁判所の 命令は各個人に対するものでり、(隠ぺいで、イエズス会管区が)刑事責任を負うことはない」が、「イエズス会ボリビア管区は、何よりもまず被害者たちに連帯を表明し、法的・心理的支援を提供してきた。一部のイエズス会士が犯した酷い犯罪について謝罪し、会としても虐待防止のために規律強化などの努力をしている」と説明した。

 だが、フローレス氏は、「イエズス会が被害者に現在のような対話の道を開いたのは、ペドラハスによる虐待が発覚した後になってからだ。イエズス会は、すでに死亡した会員が犯した犯罪の責任だけを認め、会が関与したそれ以外の存命の神父たちの事件を隠蔽しようとしている」と批判。

 さらに、 「私たちは『個人的な野心を持っている』と非難されてきた。だが、私たちが望んでいるのは、これ以上、若者たちが性的虐待を受けないようにすることだけなのです」と訴えている。

 また、同氏は、「虐待被害者の会」は、イエズス会以外の修道会の会員による虐待の報告も受けているが、それらに対応する体制ができていないため、イエズス会のみを対象とせざるを得ない。それだけでも長い戦いになると思います。十分な準備が必要です」とも語っている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2024年1月21日

・教皇、醜聞にまみれたインドの司教の辞表を受理、だが聖職者としての活動に制限はない?(CRUX)

(2024.1.15 Crux  Contributor  Nirmala Carvalho)

   ムンバイ発 -バチカン広報は13日、インド南部マイソールで性的不法行為、汚職など複数の罪で告発されているカンニカダス・アンソニー・ウィリアム司教(58)の辞表を教皇フランシスコが受理された、と発表した。

 インド・カトリック司教協議会のフェリックス・アンソニー・マチャド事務局長(大司教)も同日声明を発表、「教区の悲惨な状況を考慮し、司牧的理由から、ウイリアムの辞任を受け入れた」と述べている。

 マイソール教区は、インド第三の大都市、バンガロールの郊外に位置し、 約80の小教区に約11万3000人の信徒がいる。ウイリアムはここで6年間司教を務めていた。バチカンが司教辞任を発表した13日には、ミサの最中だったが、信徒たちに、自分は教区から離れる形での「医療休暇」を(バチカンに)求めている、と語っていたという。

 マイソール教区の37人の司祭のグループは2019年に、バチカンに、少なくとも4人の愛人を持ち、子供まで倦ませており、汚職がらみの政治家や官僚、警察関係者とも強いつながりをもち、組織犯罪と結びついていた、として、バチカンにウィリアムの司教辞任を求める書簡を送付。他の告発と相まって、バチカンの指示を受けたインドの高位聖職者3人による2021年2月からの調査につながった。

 さらにこの後、司祭22人を含む113人で構成する「Save Mysore Diocese Action Committee(マイソールを救う行動委員会)」が、バチカン福音宣教省のアントニオ・タグレ副長官に、ウィリアムの辞任を求める書簡を送った。

 またマイソール教区のグナナ・プラカシュ神父も2022年7月に、インド駐在のバチカン大使に書簡を送り、2019年にバチカンに送ったウィリアム告発の書簡に署名した37人のうちの4人が不審死を遂げていることにウイリアムが関わっていること、性的暴行、非生殖器性交、横領の罪を犯していることを訴えている。

 こうした中で、2022年8月に、インドの最上位高位聖職者のオズワルド・グラシアス枢機卿(ムンバイ大司教)がウィリアムと(彼がもうけたとされる子供についての)親子鑑定についての会話の記録が明らかになり、枢機卿は「記録は編集・加工されたもの。私はウイリアムに検査を受けるよう勧めたが、その結果に影響を与えるようなことを彼に提案したことは絶対にない」と、この醜聞の隠ぺいに関わっていない旨の釈明を余儀なくされた。

 これらの告発、訴えに対して、ウィリアム本人は当初から全面否定を続けており、教区には一定の支持者がいる。   1月9日、マイソールのコミュニティリーダーのグループが、ウィリアム告発に加わった何人かの司祭が彼を殺害する陰謀を企んでいる、とし、彼らの司祭職はく奪などを要求するとともに、ウィリアムの消息を明確にするよう求めた。

 グループの代表は、「我々はウィリアムにここ(マイソール)にいて欲しい。彼はマイソールの教会指導者だ」と主張。さらに、2021年にバチカンの指示で実施された調査で機密漏洩の疑いがある、調査チームのメンバーの1人がウィリアムに罪を着せるために情報を漏洩した、とも述べている。

 13日のバチカンの発表も、インド司教協議会の声明も、ウィリアムの今後の扱いについて明確にしていないが、司教協議会のマチャド事務局長は、ウィリアムの肩書は「前マイヨール司教」であり、聖職者としての活動には何も制限がない、つまりミサを司式することも、他の秘跡を行うこともできる、と述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年1月16日

・コートジボワールの司教が「妻子連れの司祭」や「性的虐待司祭」の告発を信徒たちに要請(CRUX)

(2024.1.8 Crux  Africa Correspondent  Ngala Killian Chimtom)

 

Ivory Coast bishop urges laity to report priests with wives and children

 緊急書簡を出したのは、コートジボワール共和国のトンキピ州の州都マンを中心としたカトリック・マン教区のガスパール・ベビ・グネバ司教。全教区民あての書簡を送るとともに、地元のカトリック・ラジオ局で書簡を朗読した。

 べビ・グネバ司教は書簡で 「司祭が独身に忠実ではないこと、妻や子供をもっていること、性的虐待や経済犯罪を犯したことを知っている信徒は、司教に告発する勇気を持たなければなりません。さもなければ、司祭は神の前に共犯の罪を犯すことになります」とし、 「教皇は、このような聖職者に対して、寛容の姿勢はお取りになりません」と訴えた。

 そして、妻や子供を持つすべての司祭に対し、彼らの幸せに専念するために聖職を離れるよう求め、 「できるだけ早く私に会いに来て、辞意を表明しなければならない」と強調。そうした司祭たちが「司祭の禁欲が任意であるかのような印象」を与えていることに遺憾を表明した。

  カトリックの司祭が誓約に反して妻子をもつことの問題は、長年にわたって強いタブー視されてきたが、アフリカの教会当局が対応を試みたのは今回が初めてではない。2009年当時、バチカンの福音宣教省長官だったロバート・サラ・ギニア大司教が実施した調査で、中央アフリカ共和国の高位聖職者が教区施設で妻子と暮らしていたことが発覚して辞任に追い込まれた。

  最近では2020年3月に、コンゴ民主共和国の司教協議会が、各司教あての文書で、妻子を持つ司祭に対し、聖職の自主的な離脱を求めるよう要請した。文書では、 「親の子供に対する権利と義務、子供たちの親に対する権利と義務、そして、家庭における父親としての役割と、社会における奉仕や司祭の生活を両立することが困難であることを考慮し、私たちは子どもを持つすべての司祭に対し、(子どもに)完全に献身し、そのために教皇に対しt、司祭としての義務の免除を求めるよう求めることが必要」としている。

 前年の 2019年、バチカンの聖職者省が、妻子を持つ司祭に関する非公式の内部ガイドラインの存在を認めた。これは、もともとカトリック司祭の子弟で、 世界中の司祭の子や孫の利益保護を目的とする団体「Coping International」の創設者でもあるアイルランド人の信徒、ビンセント・ドイル氏が公けにしたもの。

 この問題に詳しい 批評家は「教会は妻子を持つ司祭たちの現実に十分に対処できておらず、問題を隠蔽する傾向が強い」と批判。 ドイル氏は最近のインタビューで、「バチカンはこの問題への対処でもたつき、私たちを”目に見えない存在”、”目に見えない子供”扱いしてきた」と語っている。

  総人口3000万人のうち約2割をカトリック教徒が占めるコートジボワール共和国が、妻子を持つ司祭に関して特別な課題に直面しているという兆候はない。 だが、この国の司教たちは一般に、性道徳の問題に関して伝統的な立場をとっていることで知られており、同国の司教協議会は最近、同性カップルの祝福を条件付きで認めるバチカンの宣言「 Fiducia Supplicans」を受けて声明を発表。

  「同性カップルの祝福が、地元の教会内で混乱やスキャンダルを引き起こすリスクを隠すことはできない」と批判。「家族の価値観、そして神が最初から望まれた男女の結婚の秘跡に対する私たちの愛着を再確認」し、司祭たちに「同性カップルや“不規則な状況”にあるカップルに祝福を与えるのを控えるよう」求めている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

 

2024年1月8日

(評論)性的虐待に絡む仙台の裁判で和解-日本の教会は、司教団は苦しむ声に”耳を傾けて”いるか

 カトリック教会では、聖職者による性的虐待問題が世界的に深刻な問題となり、信者の教会離れにもつなっがっている。日本の教会でも、西欧などの教会に比べれば件数は少ないが、”沈黙”の風土の変化を背景に被害者が声を上げるケースが増える傾向にある。

 長崎教区では、女性信者が司祭から性的虐待を受けたとされる事件があり警察当局が捜査に入ったものの、事の性質から立件が難しく不起訴となったが、それを受けた教区長(当時)の高見三明・前大司教の不適切発言などから(PTSDが悪化したとして、被害女性が教区を相手に損害賠償訴訟を長崎地方裁判所に起こし、20222月、教区に対し110万円の損害賠償命令が出されている。

 司祭の性的虐待に関係する訴えで、裁判所が被告の教区に損害賠償を命じたり、和解を勧告したのは、今回の仙台が二件目とみられるが、男子修道会・神言会の司祭の性的虐待に関して同会に損害賠償を求める被害女性の訴えを受けた裁判が、東京地方裁判所で新年1月に始まる予定であり、他にも声を上げようとする被害者が複数いることが、取材の過程で把握されている

 日本の司教団では、バチカンからの指示を受けて性的虐待防止などのガイドラインの作成や各教区の女性や子供の保護のための担当司祭、窓口の設置などはしているものの、長崎教区では窓口の担当職員が複数の司祭のパワハラでPTSDを発症、休職に追い込まれ、窓口は一時、閉鎖となった。東京教区のように担当司祭が、理由も公開されないまま、人事異動期でもないのに突然、解任されるなどの事態も起きている。

 また司教団は、ガイドライン決定から2年半たって、ようやく一回目の監査結果を今年9月に明らかにしたが、「各教区から提出された確認書によれば、2022年4月から2023年3月の間に性虐待の申し立てがあったのは4教区、5件であった」などとするだけで、具体的な教区名、申し立てやそれに対する教区の対応などの説明はなく、「性虐待の申し立てのあった各教区には、監査役から提出された調査報告書に記載された所見を通知し、ガイドラインに基づいてさらなる対応をするよう求めた」とあるのみ。被害者に寄り添おうとする姿勢も、虐待問題に真剣に対応しようとする意志もうかがえない。

 今回、一応の決着を見た仙台での裁判の過程でも、それが象徴的に表れた。

 原告被害者の女性は約40年前、24歳だった時に、気仙沼市に赴任してきた司祭に、夫の家庭内暴力などの悩みの相談に行ったが、その際に性的虐待に遭った。その後、「自分が教会を汚した」と罪の意識にさいなまれ、子育てに懸命になったものの、アルコール依存症やギャンブル依存症に陥り、離婚も経験するなど悲惨な人生を続けたが、約30年経って、主治医の精神科医から「あなたは悪くない」と言われたことで、性的虐待は自ら望んだものではなく、被害に遭ったことを認識。

 加害司祭や教会から虐待行為を認め、謝罪を受けることで、精神的に立ち直りたい、との一心で教会に被害を申告したが、第三者調査委員会による調査報告は「申告行為は存在した可能性が高い」としたものの、教区や加害司祭は何の対応もせず、謝罪と損害賠償を求める提訴に踏み切らざるを得なかった。裁判所の勧告による和解協議でも、性的虐待の行為があったことを認めない教区の姿勢は変わらず、今回の決着まで3年3か月を要した。

 その間の裁判所での聴取でも、原告側証人の精神病理学者が「教区側の対応は原告のPTSD症と密接に関係している」などと証言したのに対し、被告仙台教区の代理人が「原告は、夫や義父母からのパワハラを受けていた…性的虐待をしたとする神父やその後の教区の対応だけとは言えない」としたり、元司教は原告、被告双方の代理人弁護士の尋問に「よく覚えていません」「分かりません」とあいまいな答えに終始。あげくに、教区事務局長として対応に当たっていたはずの司祭が傍聴席で居眠りをし、裁判長から「眠るなら法廷の外に出なさい」と異例ともいえる叱責を受けるなど、原告女性をさらに精神的に傷つけるような対応をしていた。

 法律によると「強制性交」の刑事の時効は15年、民事の時効は5年ないし20年とされている。幼少期あるいは青年期に被害を受けた場合、家族や知人に打ち明けることは難しく、まして公的機関に相談したり、訴えることは通常は極めて困難であり、司法当局に訴えるのに時間を要し、時効になる可能性が高い。事の性質から第三者の証言を得るのは難しく、物証も確保しておくことが至難であることから、刑事上の処罰を求めることは、長崎のケースを見ても、ほとんど不可能だ。

 まして、”聖職者主義”がいまだに支配的な日本の多くの教会で、訴えを起こすことは司祭、さらには司教と対峙する、教会の信者たちからも批判的な目で見られ、教会から離れることも覚悟せねばなららない。被告の教会側は、教区の予算で弁護士を雇えるが、原告側はそうした手続きに不慣れなうえ、費用も自分で負担せねばならない。つまり、被害者は、正当な裁きを求め、心の救いを得ようとしても、圧倒的に不利な立場に置かれている、ということだ。

 以上のことから引き出さる結論は、教会として、司教団として、被害者が司法に頼らざるところまで追い込まれないように、訴えを受けた事案に対して、公正、客観的な調査を行い、加害者とされる司祭などに真実を語らせ、それに基づいて加害者とされる司祭や、その人事・管理責任を持つ関係者に対する厳正な措置をとるようにすること。

 また、この過程で、被害を申告した人を精神的に傷つけないよう十分に配慮し、調査結果を公表し、さらに最も大事なことは、申告者に対して、十分な精神的ケアがされるようにし、司祭、信者によって温かく教会に受け入れられるようにすることだ。そのためには、現行のガイドラインの徹底的な見直し、具体的な体制の整備、そして何よりも、被害を受けたとされる人に寄り添い、その声に真摯に耳を傾け、心を癒やすことに努める姿勢を、教会関係者に徹底することだ。

 聖職者による性的虐待問題が後を絶たないことに心を痛める教皇フランシスコは、11月28日にフランス・ナント教区の聖職者による性的虐待被害者のグループと面会された際、聖職者による性的虐待の被害者が「家族とともに何が真実で善であるかを追求してきた場で、最大の悪に苦しんでいる」とされ、「被害者や生存者の声に耳を傾ける』という積極的かつ敬意を持った心の広さが、受け手にあれば、虐待に対する”沈黙”は打ち破ることができる」と語られている。「受け手」としての日本の教会、そして何より司教団は、この言葉をかみしめる必要があるだろう。

(「カトリック・あい」南條俊二)

2023年12月28日