・「聖職者などによる性的虐待の規制厳格化の自発教令形式による教皇使徒的書簡」の全訳改

(2023.4.10 カトリック・あい=4.13付けで一部修正)

 

 教皇フランシスコが3月25日付けで、聖職者などによる性的虐待に対する規制厳格化のための自発教令形式による使徒的書簡『あなたがたは世の光である』Vos estis lux mundi改訂版を出された。対応の遅い日本の司教団はこの重要な使徒的書簡の日本語訳についても、いつ出すのかさえ判然としない。そこで有志の手により、日本語による全訳をいただいたので、以下に掲載する。

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 教皇フランシスコの自発教令形式による使徒的書簡『あなたがたは世の光である』Vos estis lux mundi 改訂版 2023年3月25日

「あなたがたは世の光である。山の上にある町は隠れることができない」(マタイ福音書5章14節)

 私たちの主イエス・キリストは、すべての信者が、徳や高潔さ、聖性の光り輝く模範となるよう呼びかけています。実際、私たちは皆、その生活において、特に隣人との関わりにおいて、キリストへの信仰を具体的に証明するよう求められているのです。

 性的虐待の犯罪は、私たちの主に背く行為であり、その犠牲者に身体的、心理的、霊的損害を与えるとともに、信者の共同体を傷つけるものです。いかなる形態であれ、このような出来事が二度と起こらないようにするためには、継続的、かつ心からの深い改心が必要とされ、それは全ての人を教会へ参与させる具体的かつ効果的な実践によって証明されるものなのです。そうすることで、一人一人の聖性と道徳的な努力とが一つとなって、福音のメッセージの信頼性と教会の使命の有効性をより高めることとなるのです。

 これは心に注がれる聖霊の恵みによってのみ実現されます。なぜなら、「私から離れては、あなたがたは何もできない」(ヨハネ福音書15章5節)と言うイエスの言葉を私たちは、常に胸に刻んでおかなければならないからです。

 これまですでに数多くのことがなされてきましたが、希望ある未来へ向かって行くために、私たちは過去の苦い経験から学び続けなければなりません。こうした責任を負うのは、特に神の民を司牧的に導く者として神により使命を与えられた使徒たちの後継者たちであり、彼らには常に神聖なる師の足跡の間近にあってこれを辿る努力を怠らないことが求められています。

 事実、彼らはその職務ゆえに、「キリストの代理者および使者として自分に託された部分教会を 助言、勧告、模範によって、また権限と聖なる権能をもって運営する。但し 年長者は最年少者のようにまた統治する者は仕える者のように行うことを念頭に置き、真理と聖性の中に自分の群れを育てる目的においてのみ、彼らはこの権能を行使する」(第二バチカン公会議『教会憲章』27項)のです。

 使徒たちの後継者たちに関わる喫緊の課題は、教会において様々な仕方で職務を引き受けている人、福音的勧告を宣誓した人、あるいはキリストを信じる民に仕えるよう招かれた人、これらすべての人々に関わる問題です。そのため、信者の信頼を裏切るこうした犯罪を予防および阻止するために、世界規模の体制が採用されることが望ましいのです。

 この目的において、2019年5月7日に私は3年間の暫定的(ad experimentum)規則を記した自発教令形式の使徒的書簡を発布しました。そして今、事前に定めたその期間が終了しました。

 司教会議およびローマ教皇庁の各省庁の見解を考慮し、この数年間の経験を評価したうえで、規定のより良い施行を実現するため、以下の通り定めます。

 

第1章 総則

 第1条  適用範囲

1  本規定は、聖職者、奉献生活の会または使徒的生活の会の会員 および使徒座により承認、もしくは創設された国際信者団体の総長に関して、次の事柄につき報告があった際に適用するものとする。

a

*神の十戒の第六戒に反する犯罪のうち、暴力または脅迫、権威の濫用により性的行為を行うように、もしくは受けるように他者に強要した場合。

**神の十戒の第六戒に反する犯罪を、未成年者、日常的に十分な判断を行うことが出来ない者、あるいは成年の弱者に対して行った場合。

***児童および日常的に十分な判断を行うことが出来ない者のわいせつ画像の購入、所持、公開、頒布につき、形式および手段の如何に関わらずこれを行った場合

****未成年者、日常的に十分な判断を行うことが出来ない者、成年の弱者に対して、わいせつな形で自らをさらすこと あるいは現実的もしくは仮想的なわいせつ物公然陳列に参加するよう誘ったり導いたりした場合。

b  本項 が規定する犯罪について上記第1項に定める人々に対し民事的、教会法的、行政的、もしくは刑事的に行う調査に関し、第6条に定める人々が、作為的、もしくは不作為的に干渉したり、これを回避したりした場合。

2  本規定を適用するにあたって下記の用語を以下の通り定義する。

a 「未成年者」:18歳未満の全ての者。 日常的に十分な判断を行うことが出来ない者も未成年者と同等とみなす。

b 「成年の弱者」:疾患を有する者、身体的もしくは精神的に不利な条件にある者、あるいは事実上、一時的であっても、理解力、意志能力、侵害に対する抵抗力が制限されていることから個人として自由を欠く状態にある全ての者。

c 「児童ポルノ素材」:使用される手段を問わず、実際のまたは仮想上の明白な性的行為に関係している未成年者の様子を表現する全てのもの、 および性的欲求を満たす目的、もしくは営利目的を有する未成年者の性器を表現する全てのもの。

第2条  報告の受理およびデータの保護

1  それぞれの司教協議会、総大司教教会(chiese Patriarcali)や主幹大司教教会(Chiese Archivescovili Maggiori)の司教会議(Sinodi dei Vescovi)、自治権を有する主都大司教教会(Chiese Metropolitane sui iuris)の裁治権者評議会(Consigli dei Gerarchi )により必要に応じて採用されてきた指針を考慮したうえで、ラテン教会の教区(Diocesi)およびカトリック東方諸教会の教区(Eparchie)は、それぞれ個別に、あるいは共同で、報告を受理するための一般利用しやすい組織や事務所を設けねばならない。その教会組織や事務所へこれらの報告が提出されるようにせねばならない。

2  本条に情報は、教会法第471条第2項およびカトリック東方教会法第244条第2項第2号の規定に従って、安全性、完全性、秘密性が保証されるよう取り扱われ、保護される。

3  第3条第3項に規定の場合を除いて、報告を受けた裁治権者は、直ちにこれを事件が起きたとされる場所の地区裁治権者 ならびに報告の対象者の裁治権者に伝達する。その2名の裁治権者間に別段の合意がある場合を除き、事件が起きたとされる場所の地区裁治権者が、具体的な事案について定められた法律規定に従い手続きを開始する義務を負う。

4  本章の効力に関して、Diocesi(ラテン教会の教区)はEparchie(カトリック東方諸教会の教区)に等しいものとし、 Ordinario(ラテン教会の裁治権者)は、Gerarca(カトリック東方諸教会の裁治権者)に等しいものとする。

第3条  報告

1  聖職者が内的法廷の職務を遂行する中で情報を知るに至った場合を除いて、聖職者、あるいは奉献生活の会または使徒的生活の会の会員が、第1条が規定する事案のうちのいずれかが犯されたと判断される情報を得るか、その根拠ある理由を見出した場合は、事案が起こった場所の地区裁治権者または、教会法第134条およびカトリック東方教会法第984条が規定する他の裁治権者に速やかに報告する義務を負うものとする。ただし本条第3項に規定する場合に関してはこの限りではない。

2  いかなる人も、特に教会における任務を負い職務を担う世俗の信者は、第1条に規定する行為につき報告することができる。その際は、前条に記載の方法、もしくは他の適切な方法において行うものとする。

3  報告の内容が第6条に示す人物に関わる場合、その報告は第8条および第9条に基づき特定の権限者宛てに行われるものとする。報告は、直接または教皇使節を介して 常時、管轄の省庁宛てに行うことができる。直接報告のあった場合、これを受けた省庁はその旨を教皇使節に連絡する。

4  報告は、できる限り詳細な内容を含むものとし、事案が起きた時刻や場所、関係する人物、事案について報告を受けた人物、さらに事案を慎重に評価するために有用とみなされるその他の全ての状況についても報告せねばならない。

5  情報は職権によって(ex officio)得ることも可能とする。

第4条  報告者の保護

1  第3条の規定に従って報告を行うことは、職務上の秘密を犯したことにはならない。

2  教会法第1390条およびカトリック東方教会法第1452条、第1454条に規定する事項を除いて、報告を行ったことを理由にその者に対する偏見を抱いたり、報復や差別を行ったりすることは禁じられる。これらは第1条第1項b)が規定する事柄を補完する行為となり得る。

3  報告者、被害を受けたことを認めている者、および証人に対しては、報告の内容について一切の黙秘の義務を課すことはできない。但し、第5条第2項に規定の内容は遵守されねばならない。

第5条 人々に対する配慮

1  教会当局は、被害を受けたことを認める人々が、その家族とともに、尊厳と敬意をもって扱われるように努め、これらの人々に対してとりわけ次の事柄を提供するものとする。

a  彼らを受け入れ、話を聞き、寄り添うこと。これらは特定の奉仕職を介しても行うことができる。

b  霊的な支援。

c  具体的事例に応じた医学的、治療的、および心理学的支援。

2  事件に関与させられた人々の名声やプライバシー、さらにその個人情報の秘密が正当に保護されるよう監察が行われねばならない。報告の対象者に対しては、第13条第7項の推定が適用される。但し、第20条に規定の内容が遵守されねばならない。

 

第2章 司教およびこれと同等の人々に関する規定

 第6条  適用される主体の範囲

 本章に記載の手続き規定は、第1条に定める事案のうち、以下の者によって犯された犯罪および行為に適用される。

a  枢機卿、総大司教、司教、教皇使節

b  ラテン教会またはカトリック東方諸教会の部分教会、あるいは属人教区を含む類似の団体の司牧的務めを委ねられた聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者が、在職期間中に起こした事件。

c  属人区の司牧的務めを委ねられた聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者が在職期間中に起こした事件。

d  聖職者の公的会 associazione pubblica clericale)の指導者である聖職者、または過去にこうした役割を担っていた聖職者で、司祭を入籍させる権限facoltà di incardinare のある者が、在職期間中に起こした事件。

e  教皇権の奉献生活の会または使徒的生活の会の総長、および自治修道院の院長、または過去にこうした役割を担っていた者が、在職期間中に起こした事件。

f  使徒座により承認もしくは創設された国際信者団体の総長である世俗の信者、または過去にこうした役割を担っていた者が、在職期間中に起こした事件。

第7条  教皇庁の管轄省庁

1  本章の規定に基づき、「管轄省庁 Dicastero competente)と言う場合、現行法規によって教理省に委ねられている犯罪に関しては、教理省がこれを管轄する。ただし、その他の全ての事案ならびにローマ教皇庁の固有法に基づく各管轄権に関しては以下の通りとする。

・東方教会省
・司教省
・福音宣教省
・聖職者省
・奉献・使徒的生活会省
・いのち・信徒・家庭省

2  より良い連携を確実に行うため、管轄省庁は、報告および調査の結果につき、教皇庁国務省ならびに直接関係する他の省庁に連絡するものとする。

3  本章に示す連絡のうち、管区大司教と聖座間の連絡は、教皇使節を通して行われるものとする。

第8条  ラテン教会の司教 および第6条に定める人物に関する報告の場合に適用可能な手続き

1  報告を受けた権限者は、管轄省庁ならびに報告の対象者が住所を有する地域の管区大司教にこれを回付する。

2  報告が管区大司教に関わるものである場合、または管区大司教座が空位である場合、報告は聖座ならびに管区所属の司教職位にある最年長者に対して行い、この場合、その促進のために管区大司教に関連する以下の規定が適用されます。同様に、聖座の直接管轄下にある教区の司牧的指導を行う者に関する報告も聖座に提出することとする。

3  報告が教皇使節に関わるものである場合、その報告は国務省に対して直接行うものとする。

 

第9条  カトリック東方諸教会の司教、およびに第6条に定める人物に関する報告の場合に適用可能な手続き

1  総大司教教会、主幹大司教教会、あるいは自治権を有する主都大司教会の司教またはこれに同等の人物に関わる報告の場合、その報告はそれぞれ総大司教、主幹大司教、あるいは自治権を有する教会の主都大司教に対して行うものとする。

2  報告が、総大司教会または主幹大司教教会の管区大司教に関わるものであり、当該管区大司教がこれらの教会の領域内で自らの職務を遂行している場合、報告はそれぞれの総大司教、または主幹大司教に対して行うものとする。

3  以上の事例において報告を受けた権限者は、東方教会省に対しても報告するものとする。

4  報告された人物が、総大司教教会、主幹大司教教会、あるいは自治権を有する主都大司教教会の領域外の司教、または管区大司教である場合、報告は東方教会省宛に行うものとし、必要と判断する場合、管轄の総大司教、主幹大司教、もしくは自治権を有する管区大司教にその旨を連絡することとする。

5  報告が総大司教、主幹大司教 自治権を有する教会の管区大司教、あるいは自治権を有するその他の東方教会の司教に関わるものである場合、これを東方教会省に対して行うものとする。

6  以下の管区大司教に関する規定は、本条に則り報告を受けた教会当局に適用される。

 

第10条  奉献生活の会または使徒的生活の会の総長に対し適用可能な手続き

 教皇権の奉献生活の会、または使徒的生活の会、ローマおよびローマ近郊の諸教区にある自治権を有する観想修道院につき、これらの総長あるいは元総長に関する報告の場合、これを管轄の省庁に対して行うものとする。

 

 

第11条  管区大司教がとるべき初期対応

1  報告を受けた管区大司教は、直ちに管轄省庁に対して調査開始のため職務委任を申請する。

2  管轄省庁は直ちに、すなわち教皇使節からの第一報を受けてから、または管区大司教から職務委任の申請を受けてから30日以内に、具体的な事案においてどのように手続きを進めるかにつき適切な指示を与え措置を講じる。

3  管区大司教は、報告が明らかに根拠を持たないと判断した場合は、教皇使節を通じてその旨を管轄省庁に報告する。 また、これにつき別段の定めがある場合を除き、事案の取下げを命じる。

 

第12条  管区大司教とは異なる人物への調査の委任

1  管轄省庁が、教皇使節の意見を聞いたうえで管区大司教とは異なる人物に調査を委任するのが適切と判断した場合、これらの人に対しその旨が連絡される。管区大司教は、全ての情報ならびに重要な資料を、管轄省庁から委任された人物に提供する。

2  前項の場合、以下の管区大司教に関わる規定は、調査の実施を委任された人物に対して適用される。

 

第13条  調査の実施

1  管区大司教は、管轄省庁から職務委任を受けた後、実施方法につき与えられた指示を順守し、本人自らまたは適切な一名あるいは複数の人物を介して以下のことを行う。

a  事件に関する重要な情報を収集すること。

b )教会事務局の記録庫に保管されている調査上必要な情報や文書資料を入手すること。

c  必要に応じて 他のラテン教会の裁治権者もしくはカトリック東方諸教会の裁治権者の協力を得ること。

d  必要に応じて、また以下第7項の規定を遵守したうえで、調査上有益な情報の提供が可能だと判断される人物や組織に情報提供を求めること。なお、これには民間の人物や組織も含む。

2  未成年者または成年の弱者から事情を聞く必要があると判断された場合、管区大司教は、こうした人々の状況および国の法律を考慮した上で適切な方法を採用するものとする。

3  調査に関する情報または文書資料の隠滅の可能性があると判断し得る根拠がある場合、管区大司教はこれらの保護のために必要な措置を講じることとする。

4  他の人物を介して調査が行われる場合であっても、管区大司教は引き続き調査の指揮および実施責任者であり、かつ第11条第2項が規定する指示を正確に遂行するうえでの責任者となる。

5  教会法第483条第2項およびカトリック東方教会法第253条第2項の規定に従って、任意に選任した公証官が管区大司教を補助する。

6  管区大司教には、公平性をもって行動しかつ利害対立関係が無いことが求められます。管区大司教は、自らが利害関係を有しているか必要な公平性を維持することができないため調査の完全性を保証することが困難であると判断した場合、自らこの役割を辞し管轄省庁に状況を報告する義務を有する。同様に、上に述べた利害の対立関係にあると考えられる人は全て、管轄省庁へ報告しなければならない。

7  調査の対象者には、推定無罪および正当な名誉の保護が認められる。

8  管区大司教は、管轄省庁からの要請に応じて、取り調べを受ける人物に対して、原告側として調査を実施する旨を通知し、事実関係を聴取し、抗弁書を提出するように求める。その際、取り調べを受ける人物は代理人を立てることができる。

9  管区大司教は、指示に従い、定期的に管轄省庁へ調査の状況を報告するものとする。

 

第14条  専門家の参加

1  調査における管区大司教への協力方法に関して、司教協議会、世界代表司教会議、またはカトリック東方教会の裁治権者協議会の特別の行動指針がある場合はそれに従って、各管区の司教たちが個別にまたは共同で専門家のリストを作成することが大変有用である。 その中から 管区大司教は事案の必要性に応じて、調査協力に適切な人物を選択することができる。その際、とりわけ教会法第228条およびカトリック東方教会法第408条に規定する 一般信徒により可能な協力を考慮して行う。

2  いずれにしても管区大司教は、同様に専門性を有するその他の人々を自由に選択することが可能である。

3  調査にあたり管区大司教を補佐する人は誰しも、公平性をもって行動し かつ利害の対立が無いことが求められます。もし自らが利害関係を有しているか必要な公平性を維持することができないため調査の完全性を保証することが困難であると判断した場合は、自らこの役割を辞し管区大司教に状況を報告する義務を有する。

4  管区大司教を補佐する者は、第13条第7項の規定を遵守し、適切かつ忠実に任務を遂行する旨の宣誓を行わねばならない。

 

第15条  調査期間

1  調査は短期間、すなわち、いかなる場合も第11条第2項に示す期日内に完了せねばならない。

2  正当な理由がある場合、調査状況につき報告書を送達した後に、管区大司教は管轄省庁に対して期間の延長を求めることができる。

 

第16条  保護対策

 事実関係または状況から必要とされる場合、管区大司教は管轄省庁に対して、調査対象者に対する適切な保護措置や対策を採用するよう提案する。省庁は教皇使節に聞き取りをしたうえで措置を講じる。

 

第17条  基金の設立

1  教会管区、司教協議会、世界代表司教会議、およびカトリック東方諸教会の裁治権者評議会は、これらの調査に関する費用をまかなうための基金を設立することができる。これは、教会法第116条、第1303条第1項第1号、およびカトリック東方教会法第1047条の規定に従って設立され、教会法の規定に従って管理運営されるものとする。

2  調査の任務を委託された管区大司教の要請に基づき、基金の管理者は管区大司教が調査に必要な基金を使用できるようする。ただし管区大司教は、基金の管理者に対して調査終了時に決算報告書を提出する義務を有する。

 

第18条  調査記録および意見書(votum)の送付

1  調査が完了したら、管区大司教は管轄省庁に調査記録原本を送付する。その際、調査結果に関する自らの意見書(votum)、および第11条第2項が規定する指示書の中に質問事項がある場合はそれに対する回答も、併せて送付する。調査記録の写しは、管轄の教皇使節の記録庫に保管する。

2  管轄省庁から引き続き指示がある場合を除いて、管区大司教の権限は調査完了の時点で消滅する。

3  管轄省庁の指示に従い 管区大司教は要請に応じて、被害を受けたことを認めている者、またその場合、本件の報告を行った者、 もしくはこれらの者の法的代理人に対して調査結果を報告する。

 

第19条  その後の措置

 管轄省庁は、追加調査を命じる決定を行った場合を除いて、具体的な事案ごとに定められた法律規定に従って手続きを進めるものとする。

 

第20条  国の法律の順守

 本規定は、各地で国の法律により定められた権利および義務を損なうことなく適用されるものとする。特に、市民法上の管轄当局に報告する義務がある場合、これを遵守せねばならない。

 この自発教令形式の使徒的書簡は、『オッセルヴァトーレ・ロマーノ』紙上での発表をもって公布され、2023年4月30日より効力を生じること、さらに『使徒座官報』(AAS)においても公表されることとする。本書簡の発効に伴い、2019年5月7日公布の自発教令形式の前使徒的書簡は失効する。

 ローマ、聖ペトロの傍らにて 2023年3月25日 主の受胎告知の祝日 教皇在位第11年 フランシスコ

(仮訳はG.T師による)

2023年4月10日

・米メリーランド州司法長官が、カトリック・ボルチモア大司教区の600件以上の児童性的虐待で報告書(Crux)

(2023.4.6  Crux  National Correspondent   John Lavenburg) 

*2002年まで約60年間に156人の司祭たちが虐待

 ニューヨーク 発–米国メリーランド州のブラウン司法長官が5日、カトリック・ボルチモア大司教区の156人の加害者によってなされた児童に対する600件以上の性的虐待について詳述した報告書を発表した。 

 454ページにぼぼる報告書によると、告発された性的虐待の大部分は1940年代から2002年までに起きている。2002年は米国の司教団が「ダラス憲章」を公布し、全米の教区が性的虐待の申し立てに対処するために従わなければならない一連の手順を確立した年だ。 報告書は、2002年以降、これまでの20年間に、大司教区が被害者に対する保護の体制や独立調査委員会の設置など、被害者ケアや再発防止に努めたことを評価しつつ、被害の対応範囲をさらに広げることを求めている。

*大司教が改めて性的虐待被害者たちに謝罪

 

 報告書に対して、ボルチモアのウィリアム・ロリ大司教は、「2002年以降に、この問題への対応に改善が図られていても、過去に起こったことが否定されるわけではありません」と述べ、改めて性的虐待の被害者たちに改めて謝罪した。

*司祭など大司教区に蔓延した執拗な虐待と高位聖職者による隠ぺいが明らかに

 

 報告書では、「今回の調査によって明らかになった議論の余地のない過去の経緯は、司祭や他の大司教区の職員の間に蔓延した、執拗な虐待を明らかにしている。また、カトリック教会の高位聖職者による加害者免職の繰り返しと、虐待隠蔽の歴史でもある」と強く批判。 「被害者の調査を総合することで、『子供を性的に虐待する大人』と『それを隠ぺいすることでさらなる虐待を可能にする大人』に典型的な行動パターンが明らかになった」と指摘している。

 報告書はまた、大司教区の独立審査委員会が虐待の申し立てに対応する際の潜在的な限界を指摘。具体的に、「大司教区から提供された情報をもとにした審査にとどまり、調査能力がない」ことを挙げている。

*「対策の強化が過去に犯した過ちの言い訳にはならない」と大司教

 だが、そのような問題はあるものの、米国の司教団が 2002 年に「ダラス憲章」を公布して以来、大司教区に児童および青少年保護局と独立審査委員会を設けることが義務付けられ、ボルチモア大司教区における聖職者による性的虐待の申し立てに対処する方法は完全に変わった、とし、同大司教区が、信頼に足る告発を受けた司祭の名簿を公開した米国で最初の教区の 1 つとなったことを評価した。

 また、大司教区がカウンセリングのために被害者に経済的支援を行い、損害補償の直接支払いを求める被害者のための調停オプションを作成したことや、児童性的虐待の内部処理を大幅に改善したことも挙げている。

 ロリ大司教は「大司教区が過去の虐待を忘れることがあってはならない」とし、さらに「被害者保護と透明性が、現在では大幅に強化されましたが、それは、被害者たちが耐えてきた長く続く精神的、心理的、感情的な被害のもとになった過去の過ちに言い訳にはなりません」と自戒し、 「今日の大司教区にもたらされた変化と説明責任をさらに改善し、構築し続けます」と約束している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年4月8日

・教皇、聖職者の性的虐待に対処する規範徹底へ改定自発教令を発出

(2023.3.25  Vatican News)

 教皇フランシスコが25日、2019 年5月に出された自発教令「Vos estis lux mundi (あなたがたは世の光)」の改訂版を発出された。4月30日に発効する。

 使徒的書簡の形で2019年5月に発出されたこの自発教令は、教会における信徒たちなどへの虐待や暴力に対処する手続きを明確にし、性的虐待などの通告を義務づけるなど、世界の司教たち、修道会総長たちのとるべき姿勢を徹底することを目的としていた。この4年間に行われた関連の制度改革と整合させ、対象をバチカンが承認した信徒の国際的な協会の指導者などに対象を広げ、未成年者および脆弱な成人に対する性的虐待を防止および対処するための教会の規範の徹底を図るのが狙いだ。

New norms for the whole Church against those who abuse or cover up

*一般信徒の国際的団体の指導者も規範の対象に

 改訂版で示された現行教令からの最も重要な変更は、「司教、修道会総長、および特定の教会または高位聖職者を担当する聖職者の責任」を規定した条項に関するもの。現行の書簡になかった「使徒座によって承認または設置された一般信徒の国際的な団体の長、あるいは長であった一般信徒は、ポスト在任中に行われた行為に対して[責任がある]」と明記した。

 また、2019年からこれまでに導入された関連の規範、制度改革と整合性を図るため、さまざまな修正がなされているが、その中には、自発教令「 Sacramentorum sanctitatis tutela(2021 年に修正された規範)」、教会法典の第 6 巻に加えられた変更(2021 年改定)、およびローマ教皇庁に関する新憲章「 Praedicate Evangelium (2022 年公布)が含まれている。

 

*「脆弱な成人」に対する虐待の報告の対象に

 また、現行教令の修正個所として注目すべき修正の 1 つは、規範に「脆弱な成人」を含めることに関するものだ。現行教令では、報告を上げるべき対象として、「未成年者または脆弱な人物との性行為」と表現していたが、これを、「未成年者、または習慣的に思考・判断能力が不完全な人、または脆弱な成人との間で犯された十戒のいましめに対する犯罪」としている。

 もう 1 つの変更点は、虐待の疑いについて報告した人物の保護に関するものだ。現行教令で「虐待の疑いを報告した人」に、沈黙を強制してはならない、としているが、「心を傷つけられたと訴えた人および目撃者であった人」に対象を広げた。一方で、「関係者全員の名声とプライバシーの正当な保護」と、有罪か否かの判断のために調査を受けている人々の「推定無罪」としての保護の要請を強調している。

 また、現行教令で、教区は、一般の人々が利用しやすい、虐待の訴えを受ける「安定したシステム」を運用しなければならない、としていたのを、「組織、あるいは事務局」を…と明確化。訴えられた虐待の案件の捜査は、虐待が起きたとされる場所を管轄する「司教あるいは直轄権を持つ聖職者の責任の下に」なされることも明記している。

 

 

*「職権乱用」による性的暴力、ハラスメントも対象

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年3月27日

*破産手続きで合意した米サンタフェ教区の大司教が、性的虐待被害者たちに陳謝の公開書簡(Crux)

(2023.3.22 Crux  National Correspondent  John Lavenburg)

   ニューヨーク発 – サンタフェ大司教区が 破産手続きで原告と合意に達してから 3 か月も経たない22日までに、教区長のジョン・ ウェスター大司教が、性的虐待を受けた信徒たちに謝罪する公開書簡を出した。

 公開書簡で、大司教は、「聖職者の性的虐待によってあなたがたにもたらされた悲劇的で赦しがたい損害について、深い遺憾と悲しみを表明したいと思います」としたうえで、 「サンタフェ大司教として、あなたがた一人ひとりひとり、この大司教区でカトリック聖職者が犯した性的虐待によって傷ついたすべての人々に謝罪します」と述べ、大司教区が「虐待の全責任を負います」と付け加えた.

 続けて、「私はあなたがたに起きたことを恥じており、カトリック教会が信徒を保護すべき場で起きたことをさらに恥じています」と大司教は述べ、 「私がどれほど申し訳なく思っているか、この大司教区が子供と若者の安全を守るためにどれほど熱心に取り組んでいるかを伝える言葉を持ちません」としている。

 また大司教は、虐待被害者に対して、「『受けた虐待の責任は自分にある』と感じるべきではありません」と強調。「悲しいことに、聖職者による性的虐待の被害者が受けた虐待に対して罪悪感を抱くことは、珍しくない。 この罪悪感は、しばしば加害者によって助長されていますが、このような罪悪感には、まったく根拠がありません」と指摘。 「あなたがたは完全に無実であり、『未成年者に対する性的虐待』という恐ろしい犯罪を受けるに値する行為も、助長することも、支持することも、いっさい、していないのですから」と述べている。

 そして、破産手続きでの原告との合意が、性的虐待被害者に、何らかの正義をもたらすことを望んでいる、とし、「この瞬間が、癒しのプロセスの新たな一歩となり、神から与えられたあなたがたの権利である『平安と幸福』をあなたが見つけられることを祈っています」と締めくくっている。

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 サンタフェ大司教区は、1940 年代にさかのぼる聖職者の性的虐待の約 400 件の申し立てに直面し、膨大な慰謝料支払いなどで、 2018 年 12 月 3 日に破産を申請。 大司教区と原告の4年間の協議の結果、2022年12月29日に合計1億2150万ドルの慰謝料支払いを行うことなど、破産手続きで合意に達した。合意に基づき、大司教区は和解基金に 7500 万ドルを入れ、残りの 4650 万ドルを保険会社が支払う。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年3月25日

・教皇ヨハネ・パウロ二世のクラクフ大司教時代の”隠蔽疑惑”報道でポーランド国内に波紋

(2023.3.13  カトリック・あい)

 米国の大手メディアが所有するポーランドのニュースチャンネルTVN24が6日に報道した内容が、同国内で大きな波紋を呼んでいる。

 内容は、教皇ヨハネ・パウロ二世が教皇の選出される前、1970年年代にカロル・ウォイテワ枢機卿として母国ポーランドのクラクフ大司教を務めていた当時、未成年者に対する性的虐待で告発されていた3人の司祭を処罰せず、隠ぺいしたまま、他教区などへ移動させた、というもので、ウォイテワ枢機卿が、欧州で強い影響力を持っていたウイーン大司教、ケーニッヒ枢機卿に送った関係の書簡とされる資料も明らかにされている。

 米国の通信社APによると、この報道に対して、ポーランドではモラヴィエツキ首相を含む政府関係者は、故教皇を「国民的英雄であり、国の最高の道徳的権威」と強く擁護する一方、 左派の政治家たちは、ヨハネ・パウロ二世教皇が”未成年者を食い物”にする司祭を故意に保護していた、と非難し、街の通りや学校に付けられた教皇の名前を削除するよう求める声も上がっている、という。

 ポーランド司教協議会のガデツキ大司教は9日、故教皇を強く擁護し、彼の遺産を破壊しないよう、「善意のすべての人々」に訴え、バチカンの聖ペトロ大聖堂のヨハネ パウロ 2 世の墓でミサを捧げ、故教皇の信用を傷つけようとしている人々のために祈ったという。また、この報道で、引用された資料の一部は「教会を危険にさらそうとしていた共産主義時代の秘密警察のファイルからのものだった」という関係者の指摘を引用し、「真実と善への関心という名目で、ヨハネ・パウロ2世自身と彼の遺産の信用を傷つけようとする試みが行われていることにショックを受けている」とも述べた。

 APによると、カデツキ大司教はその一方で、故教皇の「聖人としての資質と偉大さ」は「過ちを犯すことがなかった」ことを意味しない、とも語り、当時、教会と社会全体が虐待に対して今とは異なる対応をしており、「問題を解決することに、現在とは異なる社会的意識と慣習的な方法があった」としている。

2023年3月13日

・菊地大司教が「性虐待被害者のための祈りと償いの日」に改めて呼び掛けー10日の主日にミサを

(2023.3.10 菊地大司教の日記)

 3月10日、四旬節第二金曜日は「性虐待被害者のための祈りと償いの日」です。また12日の日曜日、教皇様の意向にあわせて、関口教会で午前10時の主日ミサを、私が司式します。

 以下、二つの呼びかけ文を掲載します。すでに東京教区、ならびに中央協議会のホームページで、それぞれ公表されています。まず、今年の祈りと償いの日のためのに、2023年03月06日に発表した、東京教区の皆様への私からの呼びかけ文です。

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カトリック東京大司教区の皆様 2023年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 四旬節第二金曜日は、教皇様の意向に従って、日本の教会における「性虐待被害者のための祈りと償いの日」と定められています。今年は今週の金曜日、3月10日がこの日にあたります。東京教区では例年通り、この日に、または直後の四旬節第三主日に、教皇様の意向に合わせて祈りを捧げます。

 コロナ禍の闇からやっと抜け出そうとしている今、世界はこの3年間で実質的にも精神的にも荒廃してしまったと感じます。神から与えられた賜物である命を徹底的に守り、その尊厳を守り高める務めが、私たちにはあります。世界各地で命に対する暴力は止むことなく、特にウクライナのような紛争地帯や長く内戦が続く地域では、今も多くの命が危機に直面しています。命の福音を宣べ伝える教会は、社会の中で率先して、命の大切さを説き、目に見える形でいのちの尊厳を高めていかなくてはなりません。

 それにもかかわらず、教会がその使命を果たすことなく、あまつさえ、先頭に立つべき聖職者や霊的指導者が、その使命を放棄したかのように、命に対する暴力を働き、人間の尊厳をないがしろにした事例が、過去にさかのぼって、世界各地で多数報告されています。

 教会は命を守るために発言し行動してきました。人間の尊厳を守り高めるために発言し、行動してきました。その尊い行動の意味を失わせるような選択をした聖職者や霊的指導者の存在を、残念に思います。命の尊厳を説くのであれば、私たちは人間の尊厳を真っ先に大切にして守り高めるものでなくてはなりません。

 性虐待という人間の尊厳を辱め蹂躙し、被害者の方々に長期にわたる深い苦しみを生み出した聖職者や霊的指導者の行為を、心から謝罪いたします。

 東京教区でも日本の司教団が定めているガイドラインを遵守し、こうした行為の報告があった時にはそれぞれの直接の上長が責任を持って対応するように努め、また指導し、さらに聖職者をはじめ教区全体で啓発活動にも努めていきたいと思います。

 改めて、無関心や隠蔽も含め、私たち教会の罪を心から謝罪いたします。神の慈しみの手による癒やしによって、被害を受けられた方々が包まれますように、心から祈ります。同時に、私たち聖職者のためにもお祈りくださるようにお願いいたします。

 カトリック東京大司教区 大司教 菊地功

 日本の教会の「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」は以下の通りです。

 

【未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン】

はじめに
教皇ヨハネ・パウロ二世は2002年4月23日、米国の枢機卿と司教協議会代表にあてた声明で、子どもに対する性虐待は「いかなる基準によっても悪であり、社会から正当に罪悪と見なされるものであって、神の目には忌まわしい罪である」1と述べました。未成年者と弱い立場におかれている成人(以降、未成年者の表記に含める。)を守ることは、教会の使命の不可欠な事柄です。日本の司教協議会もこの使命を真摯に受けとめ、2002年以来、さまざまな形で取り組んできました2。わたしたちは、この歩みをさらに徹底するために本ガイドラインを作成し、日本の教会に委ねられている未成年者のいのちを守る使命を果たしていきます。

1.目的と適用範囲
本ガイドラインは、日本カトリック司教協議会の管轄する地域の教会活動において、未成年者の権利擁護ならびに保護を確かなものとするために、教会のあらゆるレベル──司教協議会、教区、奉献生活の会、使徒的生活の会など──における取り組みを促進するための方針を示したものである3

本ガイドラインの運用により、教会が虐待や暴力のない安心・安全な居場所となるよう努力し、互いの尊重や思いやりに溢れた教会共同体を確立し、維持する。

本ガイドラインの実施において、未成年者の保護に関する教会法4ならびに日本の法令5を、厳密に遵守し、関連する教皇庁文書6、「児童の権利に関する条約」7に基づく保障を確実にしなければならない。

本ガイドラインの適用範囲は、日本のカトリック教会で宣教や司牧に携わるすべての人──教区、修道会・宣教会、神学校ならびにカトリック関連施設で奉仕する聖職者(司教、司祭、助祭)、修道者、職員、ボランティアを含む──である8

2.用語の定義

  1. 虐待
    本ガイドラインにおいて、「虐待」とは、未成年者に対する身体的虐待(殴る、蹴る、叩くなど。)、性虐待(後記(2)項で定義する。)、ネグレクト(家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にするなど。)および心理的虐待(言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱いなど。)をいう9
  2. 性虐待
    本ガイドラインにおける性虐待に関する定義は、教会法10ならびに教皇庁関連文書11を基本とする。
    性虐待(性的搾取を含む。)は、未成年者に対して行われる神の十戒の第六戒に反する犯罪である12。具体的には、暴力または脅迫、権威の濫用により他者に性的行為を行うように、もしくは受けるように強要すること、合意のあるなしにかかわらず、未成年者と性的行為を行うこと、性的な意味をもった身体的接触、露出、自慰、児童ポルノ素材の制作・公開・所持・頒布、売買春への誘導、各種コミュニケーション手段を用いたものも含む性的な会話及び提案を行うことであり、加害者が聖職者や修道者である場合、より重大な犯罪として、教理省に留保される13

このガイドラインにおいては、用語を以下のとおり定義する。

  • 未成年者:18歳未満の全ての人または法律によってこれらの人と同等とみなされる人。
  • 弱い立場におかれている成人:18歳以上の身体的、精神的な疾患や障がいによって、あるいは事実上、一時的であっても、理解したり、意思を表したり、侵害に対して抵抗することなどが制限されている個人の自由を欠く状態にある全ての人。
  • 児童ポルノ素材:使用される手段(媒体)を問わず、現実または仮想上いずれかの明白な性的行為に関係している未成年者の表現、もしくはもっぱら性的な目的を有するあらゆる未成年者の性器に関する表現。

3.未成年者保護のための担当者
教区司教、修道会・宣教会の上長は、未成年者保護のための窓口となる担当者を任命しなければならない。この担当者は、未成年者の権利を尊重し、あらゆる虐待や搾取14の根絶に向けて配慮する共同体となるために、ガイドラインが適切に履行されるよう対処する。さらに担当者は、司牧活動に携わる人々の虐待に関する予防と研修を実施し、被害を訴える人とその家族を受け入れ支えるよう特別に配慮しなければならない。

4.適性判断と養成

  1. 聖職者、修道者ならびに志願者の召命の識別と養成
    ① 司教ならびに修道会・宣教会上長は「召命を正しく識別する」という責任を持っている15。召命を正しく識別し、志願者、聖職者、修道者を健全に人間的、霊的に養成するために、使徒的勧告『現代の司祭養成』で示された規定と教皇庁当該機関の指針に基づき、堅固な養成を継続的に行わなければならない16
    ② 聖職者、修道者が、人事異動により他の教区へ派遣、または移籍する場合、該当者の経歴などの情報が、派遣先、移籍先の司教と完全に共有されなければならない。神学生、志願生も同様である。
    ③ 司牧者の選定は、適切な調査を通して、その適性が確認されなければならない。
    ④ 司牧者は、未成年者の性虐待、虐待、搾取の危険性について、またそれらの犯罪を特定し防止する方法について、適切な養成を受けなければならない。
  2. 教会ならびにカトリック関連施設の職員、奉仕者、ボランティアの人選と養成
    ① 司牧活動、教育機関、カトリック関連施設に携わる者の選定や雇用においては、適切な調査を通して、その適性が確認されなければならない。
    ② 司牧活動に携わる者、教育機関、カトリック関連施設の職員は、未成年者の性虐待、虐待、搾取の危険性について、またそれらの犯罪を特定し防止する方法について、適切な養成を受けなければならない。
    ③ 司牧活動に協力する者、奉仕者、ボランティアは、未成年者と関わる際の注意事項および禁止事項を知らなければならない。

5.意識啓発

  1. 未成年者の人権と尊厳を擁護し、虐待防止のための意識啓発、ならびに安全な居場所作りのために、教区や学校内での共同体教育への取り組みを実施しなければならない。
  2. 教区ならびに修道会、宣教会においては、特に日本カトリック司教協議会が定めた「聖職者による性虐待被害者のための祈りと償いの日」のミサ、その前後の行事を通して、虐待防止に向けて取り組まなければならない。

6.司牧活動での遵守事項

  1. 未成年者と関わる司牧活動では、未成年者の保護が優先される。したがって、その活動においては、司牧者は以下のことを守らなければならない。
    •  慎重さと尊敬をもって接すること。
    •  未成年者の模範となること。
    •  未成年者といるときは、必ず第三者から見えるようにすること。
    •  潜在的であったとしても、危険な行動が見られた場合は、担当者17に報告すること。
    •  未成年者のプライバシーを尊重すること。
    •  活動内容と取り決めについて、保護者に事前に通知すること。
    •  電話やソーシャルネットワークなどを用いて未成年者とコミュニケーションをかわす際は、しかるべき注意を払うこと。
  2. 司牧者が未成年者に対して以下のことを行うことは、固く禁じられる。
    •  体罰を科すこと。
    •  特定の未成年者と優先的な関係をもつこと。
    •  精神的あるいは身体的に危険となりうる状況に未成年者を置くこと。
    •  不快な態度、不適切または性的なことを示唆する行動を取ること。
    •  特定の個人やグループを差別すること。
    •  未成年者に秘密を守るよう強いること。
    •  特定の個人に贈り物をするなど、グループ内で差別化を図ること。
    •  個人的な目的で、未成年者の写真や動画を撮影すること。
    •  未成年者が特定できる画像を、ウェブやソーシャルネットワークなどで、保護者の同意なしに公開したり配布したりすること18
  3. 司牧活動は、未成年者の年齢と発達段階に応じた場で行われなければならない。未成年者が目の届かない場所や危険なところに立ち入ったりとどまったりしないよう、司牧者は特別に注意を払う必要がある19
  4. 未成年者間での不適切な行動やいじめには、たとえそれが犯罪を成立させるものでなかったとしても、公平かつ慎重に対処しなければならない。

7.保護者のインフォームド・コンセント20

  1. 未成年者が活動に参加する際には、保護者の同意が必須である。また、活動内容、責任者の名前と連絡先情報を、保護者に知らせなければならない。
  2. 未成年者の写真や動画の撮影、未成年者が写っている写真やビデオの公開、電話やソーシャルネットワークを通じて未成年者と直接連絡を取ること、そのいずれの場合も保護者の同意が必要である。
  3. 重要な個人情報を含む同意書は、慎重かつ厳重に保管されなければならない21

8.性虐待、虐待の申し立ての取り扱い

  1. 宣教司牧に携わるすべての人22は、未成年者が性虐待、虐待の被害を受けたとの情報を得た場合、直接または担当者23を通して、当該責任者24に報告しなければならない25。また、当該被害者あるいは被害を受けたと思われる者が18歳未満の場合、法律に基づき、市町村、都道府県が設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならない26
  2. 性虐待、虐待の被害を訴える者およびその家族は、受け入れられ、守られる権利を有する。適切な霊的支援、彼らの名誉とプライバシーおよび個人情報の保護を確実にしながら、教会共同体の責任者は、直接または担当者を通して、彼らの訴えに耳を傾け、被害を訴える者および関係者が精神的ケアや霊的同伴を受けられるよう配慮する。
  3. 支援者27は、虐待やその被害者への応対についての知識と経験があり、理解している信徒が望ましい。支援者は訴えの進行状況に関する情報を、被害を訴える者に提供し、適切な支援が受けられるように助言する。
  4. 被害を訴える者には、有益な法律情報をはじめ、急を要する治療や心理的支援を含む医療支援および社会的支援も提供されなければならない。
  5. 被疑者が聖職者、あるいは修道会・宣教会の会員である場合、担当者は直ちに責任者に報告しなければならない。責任者は、被害が起きた教区の司教に報告する義務がある。
  6. 未成年者への虐待の事例について教区司教は、教区対応委員会または修道会・宣教会の担当者に、報告書の作成を要請する。
  7. 訴えが事実に基づかないことが明白でない限り、事案が集結するまでの間、被害を訴えているものを保護し害が及ばないようにするため、責任者は自己の権限において、被疑者の活動を制限するなど、必要な措置を講じなければならない。
  8. 訴えに対応する過程で、以下のことが注意されなければならない。
    •  直ちに適切な方法で、被害を訴えている者の証言を得ること。
    •  被害を訴えている者を心身両面でサポートする適切な機関を紹介すること。
    •  自ら、あるいは代理人を通して証言したり質問に答えたりすることも可能なことも含めて、被害を訴えている者に保証されている権利やその行使の方法を説明すること。
    •  被害を訴えている者が望む場合、手続きの各段階の結果を知らせること。
    •  被害を訴えている者に、弁護士や教会法の専門家の支援を利用するよう勧めること。
    •  被害を訴えている者やその家族を、脅迫や報復から保護すること。
    •  被害を訴えている者の名誉やプライバシーをはじめ、個人情報を保護すること。
    •  すべての関係者の精神的ケアに努めること。
  9. 予備調査、教会裁判等の手続きについては、教理省『聖職者による未成年者への性的虐待事例を扱う手続きにおけるいくつかの点に関する手引き書』28に準拠する。
  10. 被疑者の名誉を保護するため、無罪の推定がつねに保証されなければならない。これに反する重大な理由がない限り、被疑者は自身を守るため、告訴や告発について知らされなければならない。弁護士や教会法の専門家の支援を受けるよう勧められるべきであり、霊的、精神的支援も提供されなければならない。
  11. 調査の結果、犯罪が行われた可能性が高いと判断された場合、修道会・宣教会の上長は、当該教区29の司教に報告しなければならない。なお、教区司教、修道会・宣教会の上長は日本カトリック司教協議会会長ならびに教理省に報告しなければならない。無罪と判断された場合は、裁治権者は訴えを却下することを正式に指示し、調査内容とその結論に至った理由を記録する書類を、記録保管庫に保存しなければならない。
  12. 犯罪が繰り返されると信じるに足る理由がある場合、直ちに適切な予防措置を取らなければならない。

9.監査
日本カトリック司教協議会は、各教区における本ガイドラインの遵守状況を確認し、監査結果を公表する。

おわりに
教会における性虐待、性暴力を根絶できるかどうかは、司教や修道会責任者をはじめ、信徒を含む教会全体の強い責任感と意志にかかっています。
わたしたちは、今も苦しみの中にいる被害者への寄り添いを大切にするという姿勢を徹底しながら、キリストが望まれる教会共同体建設を目ざし、弱い者の側にたつキリストの生き方に徹底的に従う教会のあかしを目に見えるものにしていく努力をしなければなりません。
同時に、組織内だけで問題を解決しようとする内向きの姿勢を変えていくことも喫緊の課題です。そのためにはしかるべき情報を公開し、教会内外を問わず多くの人の意見に耳を傾け、その協力を仰いで、教会としての決断に反映させるシステムを作る必要があります。
以上の提言と私たちの決意を込めたこのガイドラインが、日本における「すべてのいのちを守るため」の教会と社会づくりに寄与する指針となることを願ってやみません。

*本ガイドラインは、2021年度定例司教総会において、日本カトリック管区長協議会および日本女子修道会総長管区長会代表の参加のもと、日本カトリック司教団により、2021年2月17日に承認された。

(編集「カトリック・あい」)
2023年3月10日

・「『祈りと償いの日』を誰が”風化”させているのか」に共感の声相次ぐ

(2023.3,9 カトリックあい)

 3月10日の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を前に、「カトリック・あい」は「『祈りと償いの日』を誰が”風化”させているのか」と題する評論を掲載し、日本の司教たちの多くが聖職者による性的虐待問題への取り組みに消極的で、『祈りと償いの日』への参加を小教区や信徒たちへの呼び掛けることもほとんどしていない”無関心の文化”に警鐘を鳴らしました。

 この評論は掲載開始からわずか3日で既に50件近い閲覧をいただいており、読者の皆様のご関心の高さを示しています。共感の声も、一般信徒、司祭の方々から寄せられていますので、投稿してくださった方が特定されることでご迷惑をおかけしないように、ポイントだけご紹介します。

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保身、自己防衛に走るのは人間の性(さが)であり、なかなかそれを捨てることは難しいのですが、「他者への愛」のかけらもないと受け取れる聖職者が、信徒から訴えられ、そればかりが裁判所から損害賠償命令を出されても回心なさらないのは、嘆かわしい限りです。

性的虐待の問題についてバチカンからは教令や指針の改訂版が2021年、22年に出されていますが、いまだに日本語訳がない。やる気のなさを感じています。教令や指針を学ぶ以前に、翻訳すらしようとしない司教団とは何なのでしょうか。聖職者による性的虐待への対応、姿勢は、まったく旧態依然と言うほかありません。

・やたらと「正義だ」「平和だ」と言いたがる司教さんたちがやっていることに、「正義」も「平和」も感じられない… というのは、まったくもっておかしな話です。これだから日本の教会は常識を持つ多くの日本人から信用されない。信者も増えるわけがない、と思っています。

・率直に申し上げて、聖職者で、信者に対する虐待行為について真剣に考えている方は、少なくとも私の周りにはおられません。聖職者の性的虐待の問題が報道されても、知っていても反応する信者もない…おかしな話です。当然、私たちの教区では「性虐待被害者のための祈りと償いの日」に具体的な予定はなく、小教区への「祈りと償い」の呼びかけもありません。

・聖職者主義がまかり通り、神父さま大好き信者が教会で幅を利かしている限り、流れは変わらない。性的虐待を批判するどころか女性信者側から司祭の手や体を触ったりすることが平気でなされ、司祭の中には「性的虐待は、相手の同意もあるのだから」と平然とおっしゃる方もいます。

・結局、司祭、司教は守られているのです。皆が批判的なまなざしを向けない限り、司教団、司祭団は、何もしないでしょう。このような体質を根本的に改めない限り、教皇フランシスコが”シノドスの道”で繰り返し呼び掛けられている―「神の民」すべてが互いに耳を傾け合い、共に歩む教会―にはなり得ません。

2023年3月9日

(評論)3月10日「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を誰が”風化”させているのか

 日本のカトリック教会にとって、3月10日は7回目となる「性虐待被害者のための祈りと償いの日」だ。以下のようなことを書くのは、信徒としての本意ではないし、まことに辛く、悲しい思いだが、聖職者から性的虐待を受け、いまも苦しんでいる方々が癒され、そして、日本の教会が信頼を取り戻し、司祭も信徒も互いに率直に耳を傾け合い、心から、主の愛の光に向かって”シノドスの道”を共に歩むことができるよう願い、あえて筆を執った。

(「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

*「性的虐待被害者のために祈り、赦しを求めるだけなく、具体的行動が必要」と教皇は訴えるが

 

 教皇フランシスコは3月の祈りの意向を、「虐待の犠牲者のために」とされ、ビデオメッセージで「性的虐待被害者のために祈り、赦しを求めるだけでは十分ではない。教会は虐待の犠牲者を第一に考え、隠蔽を避けねばならない」と強調。被害者の痛みと心理的トラウマは「彼らが受けたひどい行為が償われ、二度と繰り返されないために具体的な行動がとられた場合にのみ、癒されるのです… 教会は、犠牲者の声を聞き、心理的に支え、保護するための安全な場所を提供しなければなりません」と訴えておられる。だが、残念ながら、日本の司教たちはこのメッセージを”わがこと”として受け止めているとは思われない。

 

*「祈りと償い」どころか「無視と忘却」に陥りつつある

 「カトリック・あい」は昨年3月の評論で「『性虐待被害者のための祈りと償いの日』を『祈り』で済ませてはならない」とのタイトルで、日本の教会、なかんずく司教団に真剣かつ誠意ある取り組みを求めた。だが、現状を見ると、司教協議会会長のこの日に向けた「2023年『性虐待被害者のための祈りと償いの日』にあたっての呼びかけ」が2月17日に早々と出されたものの、それ以外には、主な教区のホームページを見ても、公式の関連行事予定は皆無。大半の教区レベルでは、「祈りと償い」どころか、「無視と忘却」になってしまった、と言わざるを得ない。

 カトリック教会の聖職者による性被害を訴える国内の信徒たちが長崎市で集会を開き、被害の掘り起こしや当事者間の連携を目指して「カトリック神父による性暴力被害者の会」を発足させたのは2020年6月のことだった。だが、新型コロナの大感染が長期化する中で活動が停滞したまま。それが、司教たちに”安心感”を与えているのだろうか。

 

 

*ほとんどの教区が「祈りと償い」の具体的予定なし

 

 東京教区は、菊地大司教が自身のホームページ「週刊大司教」で「10日金曜日、またはその直後の日曜日に、教皇様の意向にあわせてミサを捧げます。私も関口教会の主日ミサを司式します」としている。

 だが、日本でただ一人の枢機卿が教区長を務める大阪教区のホームページは、「性虐待、性暴力、ハラスメント防止決意表明」という3年前、2020年3月19日の前田・教区長(枢機卿)のメッセージを掲載しているだけだ。

 長崎教区は、司教協議会会長メッセージを”他人事”のようにホームページに載せているのみ。仙台教区のホームページには関連行事予定はなく、司教協議会会長メッセージすら掲載されていない。

 

 

*裁判所から損害賠償命令を受けた長崎教区、和解協議が進まない仙台教区は…

 長崎教区では、昨年2月、「2018年に司祭からわいせつ行為を受けたことで発症したPTSD(心的外傷後ストレス障害)を、高見大司教(当時)の不用意な発言でさらに悪化させ、精神的な苦痛を受けた」とする原告の訴えが認められ、長崎地方裁判所から2月賠償を命じられている。これに教区としてどのように対応したのか、被害者に謝罪し、精神的なケアをしたのか、などの説明は、教区報にも教区ホームページにもいまだにされていない。

 さらに、この被害女性のケアや教区の2億5000万円にのぼる巨額損失発生問題などの対応に当たっていた教区事務局の元職員が昨年4月、「複数の司祭からパワハラを受け、PTSDを発症した」として損害賠償を求める訴えを同じく長崎地方裁判所に起こしている。

 仙台教区では、2020年9月、教区司祭から性的虐待を受けた女性が、仙台地方裁判所に、加害者司祭(当時)を「被害者原告に対する性的虐待の直接的な加害者」、司教(当時)を「加害者を指導・監督すべき仙台教区裁治権者としての注意義務違反、原告被害者への不適切な発言および対応による二次被害の加害者」、カトリック仙台教区を「信徒への安全配慮義務違反、本件事案の調査義務違反、被害事実の隠蔽、加害者への適切な処分ならびに被害者への適切な対応についての不作為があった」として、三者に損賠賠償を求める民事訴訟を起こし、その後の和解の話し合いに進展が見られない。

 原告の女性は以前から、被害について教区に訴えており、2016年7月に教区が設置した第三者委員会がその年の10月に「性的虐待行為があった可能性が高い」と判断する報告書を出していたが、教区は事実上、この問題を放置してきた。

 「カトリックあい」は昨年3月27日付けの評論で、「3月19日、仙台教区では、2020年3月に平賀司教が引退して以来、約2年の間空席となって教区長・司教ポストにエドガル・ガクタン司教が就任した。長崎教区長には、一足先に、中村倫明・新大司教が補佐司教から昇格している。新たにリーダーとなった方々には、速やかに、被害者(教区側に言わせれば、「と称している人」=これは長崎地裁が長崎教区に出した賠償命令の根拠となった高見・大司教=当時=の言葉でもあるが)の立場に立った、公正かつ”心”のある判断による和解の実現で”模範”を示し、仙台教区はもとより、長崎問題なども合わせて、損なわれた日本の教会の信用を回復するために、具体的な努力を始めることが期待される」と願った。だが、その期待は現時点で見る限り、まったく現実のものとなっていない。

 

*長崎からわざわざ「被害者の集い」に出向き、”謝罪”し、性的虐待に立ち向かう、と約束したが

 「カトリック神父による性暴力被害者の会」発足の中心になった竹中勝美氏は、自身が幼少期に某修道会司祭から受けた性的虐待被害について、約20年前から修道会や司教団の担当者に調査と結果公表、責任の明確化を訴えてきたが、いっこうに進展がなく、2019年4月に東京で開かれた「虐待被害者の集い」でも、同様の訴えをした。

 この集いには、招待も受けていないカトリック司教協議会会長で高見・大司教(当時)がはるばる長崎からやって来て、「私たちが十分なことをできず、苦しい思いをさせていることを本当に申し訳ないと思っている」と竹中氏に謝罪、「世界で起きている様々な性的虐待に教会は立ち向かっていかねばならない。世論を高め、専門的な知識を結集して、改善に取り組みたい」と約束していた。その後、高見大司教も司教団も目立った動きを見せず、それが被害者の会発足の要因となったのだが、歩いても行ける長崎での発足総会に高見大司教が姿を見せることはなかった。

 その長崎教区では、被害者の会発足の半年前、2019年11月の教皇フランシスコ来日の直前に、時事通信が「長崎県のカトリック信徒の女性が、司祭にわいせつな行為をされ、長崎教区に訴えた… 教区は司祭の職務を停止したが、信徒たちには『病気療養中』とだけ説明。女性は心身性ストレス障害(PTSD)で長期入院を余儀なくされた… この問題への見解、対応もいまだに公にされていない」と報じた。教皇離日後の同年11月27日になって会見した長崎教区は「大変深刻に受け止めている」とし、警察の捜査の推移も見ながら、状況に応じて発表や会見をする予定、と説明。2019年8月に、長崎教区が女性に謝罪し慰謝料を払うことで女性との間で示談がいったん成立していた。

 

*「不起訴」で態度を翻し、不用意な言動で被害者のPTSDを悪化させ、損害賠償訴訟に追い込んだ…

 

 ところが、問題の司祭が強制わいせつ容疑で2020年2月に長崎地検へ書類送検された後、2020年4月、理由が明らかにされないまま、不起訴処分となったのを機に、それを逆手に取るかのように、高見大司教が、ある会議の席で、被害女性について「『被害者』と言えば『加害が成立した』との誤解を招くので、『被害を受けたと思っている人』など別の表現が望ましい」などと、「不起訴」を「無罪」と錯覚したような発言。

 この発言が載った会議議事録を見せられた女性が改めてショックを受けて、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を悪化させ、長崎教区を相手取って損害賠償を求める裁判を起こしたが、口頭弁論に立った高見大司教は、「言葉足らずで勘違いをさせた。『被害者が被害を受けたと思い込んでいる』という意味ではない。加害行為が存在しなかったとは考えていない」と、原告の”勘違い”で片付けるような”釈明”にとどまり、謝罪や賠償に応じる姿勢は見せていなかった。長崎地方裁判所は、判決で「大司教の発言は『性被害自体が存在しなかった』などという旨の言動であり、2次被害を受けないようにする注意義務に違反する行為だ。女性の受けた精神的苦痛は多大だ」とし、長崎教区に賠償金の支払いを命じた。

 この際、「カトリック・あい」は、「民事裁判とは言え、カトリック教会の高位聖職者が、司祭の性的虐待行為に関連する裁判で明確に責任に問われたのは、わが国では初めてであり、教会に対する信頼は揺らぎかねない」と警告したが、その後、長崎教区ホームページや教区報を見る限り、信頼回復の具体的な努力も、原告被害者に対する損害賠償金の支払いも、謝罪も、教会への復帰の支援などについても、いっさい報じられていない。

 

*日本の教会の3月の祈りの意向は「無関心からの解放」というが、説得力なし

 「カトリック・あい」が掲載中の3月の日本の教会の祈りの意向は、「性虐待被害者のために… 無関心から解放され、被害を受けられた人たちが神のいつくしみの手による癒やしに包まれますように」となっている。だが、教会のリーダー、なかんずく被害の訴えを起こされ、賠償命令まで受けている教区の司教が。このような「無関心」の状態では、全く説得力がない。

 司教協議会会長の呼び掛けでは、「率先して命を守り、人間の尊厳を守るはずの聖職者や霊的な指導者が、命に対する暴力を働き、人間の尊厳をないがしろにする行為を働いた事例が、近年相次いで報告されています。『性虐待』という人間の尊厳を辱め、蹂躙する聖職者や霊的指導者の行為によって深く傷つけられた方々が、長い時間の苦しみと葛藤を経て、ようやくその心の思いを吐露された結果である、と思います。そのように長期にわたる深い苦しみを生み出した聖職者や霊的指導者の行為を、心から謝罪いたします」としている。

 司教協議会会長がこのように言われても、当事者たる教区司教や関係の司祭たち、あるいは一般信徒が横を向いていては、謝罪の心は被害者には伝わらない。

 また呼び掛けでは、「日本の司教団は、2002年以来、ガイドラインの制定や、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」の設置など、対応にあたってきました。2021年2月の司教総会で「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を決議し、教会に求められている命を守るための行動に積極的に取り組む体制を整えてきました。昨年には、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」が啓発活動にさらに取り組むよう、司教協議会会長直属の部門としてガイドライン運用促進部門を別途設置し、責任をもって対応する態勢を整えつつあります」とある。

 だが、このような「ルールや体制の整備」がどのように具体的に効果を上げ、何件の相談があり、どのように対応したのか、解決したのか、解決できていないのか、その原因はどこにあるのか、など中身の説明が全くない。世間一般では当たり前のようになりつつある「説明責任」も教会には通用しないようだ。

 

*「ガイドラインの遵守状況を確認し、監査結果を公表」はされていない

 「2002年以来、ガイドライン制定」とあるが、長崎、仙台両教区に代表されるような対応を見ると、ガイドラインが守られているとは思えない。さらに、 2021年2月の司教協議会総会で承認されたという現在のガイドラインには「日本カトリック司教協議会は、各教区における本ガイドラインの遵守状況を確認し、監査結果を公表する」とあるが、具体的に、何を、誰が、どの組織が監査するのか、どのような頻度でするのか、結果の公表はどうするのか、指摘された問題への対応はどこがするのか、問題の責任者の処遇はどうするのか、など肝心の点がすべて不明。遵守状況を確認、監査結果が公表されたことも、今もって、ない。

 司教協議会は昨年1月13日に開いた定例常任司教委員会で「聖職者による性虐待問題に取り組むための体制について 子どもと女性の権利擁護のためのデスクからの提案である『未成年者と弱い立場におかれている成人 を保護するためのガイドライン』推進のために司教協議会会長を責任者として修道会・宣教会との連携、神学校での養成、司祭生涯養成、教区間などの横断的なつながりを推進する組織を作ることを承認し、今後組織体制を整えていくことを申し合わせた」とあった。これが、今回の会長メッセージにある「司教協議会会長直属の部門としてガイドライン運用促進部門を別途設置…」と思われるが、”承認”から一年たっても、まだこの段階なのだ。

 

*「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」のホームページは…事実上の白紙

 また、子どもと女性の権利擁護のためのデスク」は各教区に置かれたはずだが、その担当者の女性がパワハラで職場を去り、裁判を起こさざるを得ない状況にある長崎教区の場合、ホームページのどこを探しても、そのデスクは見つからない。以前、長崎教区の関係者から、「加害者を守るための部署になっている」との声を聞いたことがあるが、このような状態では、たとえ被害者が訴えようにも、訴えられまい。

 それどころか、肝心の司教協議会の「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」(責任司教 松浦悟郎 司教、担当司教 森山信三 司教)のページを見ると、今回の「祈りと償いの日」の各教区の行事予定などは一切なく、関連冊子…申し込み方法・社会福音化推進部 … 関連のお知らせ…性虐待被害者のための祈りと償いの日(四旬節第2金曜日)(2017/03/02)『聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル』(2013/07/24)と5年以上前の情報のみ。それでも、と©子どもと女性の権利擁護のためのデスクHP を開いたら、[ご不便をおかけしております。現在、こちらのサイトはメンテナンス中です。ご理解のほど、宜しくお願いいたします」と白紙の状態。「啓発活動にさらに取り組む」どころではない。

 

 

*2年前に不完全な”アンケート結果”は公表、だがフォローアップもない

 欧米の教会では、相次いで聖職者による性的虐待のニュースが続いており、米国では性的虐待被害者の損害賠償請求訴訟がカリフォルニア州などで相次ぎ、多額の負担に耐えかねて破産を申し立てる教区が続出している。

 欧州の教会では、フランス、ドイツ、ポルトガル、ベルギー、アイルランドなどで、政府の委員会や、外部の専門家に委嘱した独立委員会による厳格かつ詳細な調査が行われ、フランスで過去半世紀に推定33万人の未成年者が聖職者などの性的虐待の犠牲になっていることが明らかになるなど、深刻な実態が明らかにされ、取り組みが遅れているイタリアやスペインでも、関係者の強い要請で独立委員会の設置などが進んでいる。

 だが、日本では、このような実態把握の取り組みは、司教協議会が2020年4月に「聖職者による未成年者への性虐待の対応に関するアンケート」を1年がかりでまとめ、公表したのみ。

 しかも、その内容を見ると、全国16の教区、40の男子修道会・宣教会、55の女子修道会・宣教会から得た回答では、1950年代から2010年代に「聖職者より性虐待を受けた」とされる訴えはわずかに16件、加害聖職者は、教区司祭7名、修道会・宣教会司祭8名、他1名は不明。

 加害を認めた者が4件、否認が5件、不明が7件。加害聖職者の措置(事件発覚時)は、職務停止は2件に過ぎず、退会も1件のみ。異動で済ましたものが8件(国内外含)、ほか5件は不明という内容。強制調査権も何もない、ただ各教区から報告を受動的に受け取る”アンケート“の限界を露呈した形となった。

 発表文では「本調査の目的は、日本の教会が未成年者への性虐待に関する対応についての実態を把握し、今後の対策を検討すること」としているものの、「教会という密接な関わりをもつ共同体の中での犯罪は、被害者が声を上げるのが難しく、「今回調査においての該当件数も、言葉にできた勇気ある被害者の数であり… 性虐待・性暴力全体の被害者の実数は把握しきれない」「事実確認の段階で被疑者が否認や黙秘をしている場合は、教区司教や頂上による謝罪で終わるなど、消極的な対応事例も少なくない」と言い訳のような表現が目立つ。

 「本調査によって訴えが上がってこなかった教区・修道会・宣教会においても、『被害がない』という短絡的な捉え方をするべきではない。被害者が安心して声を上げられる環境かどうかを見直し、教会全体として、性虐待・性暴力根絶に向けた、たゆまぬ努力が必要である」と述べていたが、具体的にどのような行程表を作り、形だけでない内実を伴った取り組みをしようとしているのか、各教区に何を期待するのか、明確な説明は、2年たった現在に至るまで皆無である。

 

 

*声を上げにくい日本の教会の”風土”に安住ー具体的行動を!

 被害者が声を上げにくい、まして聖職者、しかも高位聖職者を訴えるなど思いもよらない、という信徒が圧倒的な日本の風土も影響して、表面に出ている虐待案件が数えるほどしかないことに、日本の司教団は”安心”しているのだろうか。以上述べたように、危機感も、取り組みへの真剣さも、ほとんど感じられない。

 司教協議会会長の”呼び掛け”一本で、”不都合な真実”に目を背け、”嵐”が過ぎ去り、”風化”するのを待っている、とは思いたくない。だが、教皇が、全信者が互いの声に耳を傾け、共に歩む教会の実現に向けて始められた”シノドスの道”の歩みに日本の教会が消極的なのは、「不都合な真実が耳に入るのを避けたい」という、およそ教皇の思いとは程遠い、いや正反対の思惑が裏にあるからではないか、とさえ考えざるを得ないと言うほかない。

  司祭不足が深刻さを増している中で、3月21日、東京教区では新司祭が4人誕生する。司教団には、後輩たちの模範となり、希望となるために、教皇の言われる「具体的な行動」を見せてもらいたい。

2023年3月6日

☩「性的虐待被害者のために祈り、赦しを求めるだけでは不十分、具体的な行動が必要」と教皇、3月の祈りの意向で

Pope Francis attends his weekly general audience in the Paul VI Hall at The Vatican, Wednesday, Dec. 14, 2022. (Credit: Domenico Stinellis/AP.)

(2023.3.2 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen)Pope Francis dedicates March to praying for victims of abuse

 ローマ – 教皇フランシスコは3月の祈りの意向のビデオ・メッセージで、「性的虐待被害者のために祈り、赦しを求めるだけでは十分ではない。教会は虐待の犠牲者を第一に考え、隠蔽を避けねばならない」と強調された。

 教皇は「赦しを求めることは必要ですが、それだけでは十分ではありません。聖職者や教会関係者が赦しを求めることは被害者にとって良いことですが、被害者がすべての『中心』に置かれる必要があります」と言明。

 被害者の痛みと心理的トラウマは「彼らが答えを見つけた場合、つまり 彼らが受けたひどい嫌悪を償い、二度と繰り返されないために具体的な行動がとられた場合にのみ、癒されるのです」と訴えられた。

 「教会関係者による過ちのせいで苦しんでいる人々のために共に祈りましょう。被害者たちが、その痛みと苦しみに対する具体的な振る舞いを教会そのものの中に見出すことができますように( #PrayerIntention #ClickToPray pic.twitter.com/ucuw1lOaI8)」 

 教皇はまた、聖職者による性的虐待について、高位聖職者など教会関係者が隠ぺいしたことを念頭に、「教会はいかなる種類の虐待の悲劇も隠そうとしてはならない」とされ、さらに、これは、「家庭、集会所、その他の種類の施設」で発生する虐待にも当てはまります… カトリック教会は問題の解決を進めるために模範を示し、社会と家族にそれを明らかにする必要があります」と語られた。

 続けて教皇は、「教会は、犠牲者の声を聞き、心理的に支え、保護するための安全な場所を提供しなければなりません」と指摘され、「教会員による過ちのために苦しんでいる人々のために」共に祈るよう、世界のすべての信者に求められた。

 そして、「被害者たちが自分の痛みと苦しみに対する具体的な答えを、教会の中に見つけることができますように」と祈られた。 3月の教皇の祈りの意向のビデオ・メッセージは、暗い子供のプレイルームのイメージで始まり、壁にはしおれ、影で枯れている花の写真があり、教皇はフレームの間に姿を見せ、彼のメッセージを伝える。 暗かった部屋を光で満たし、花が生き返るのを助ける・・・ 

 ここ数年、数か月の間に、フランス、スペイン、ドイツ、ポルトガルなど欧州全土の国々で、何十年にもわたる性的虐待事件で、何千人もの加害者、そして 数十万人の潜在被害者がいることが明らかになっている。

 ポルトガルの カトリック教会の聖職者による性的虐待を調査する独立委員会は2 月 13 日に発表した報告書で、1950 年以降の虐待被害者が約 5000 人に上ると推定し、しかも、これらの数字は「氷山の一角」に過ぎない可能性が高い、と述べている。教皇は今年8月にポルトガルの首都リスボンを訪れ、「世界青年の日」国際大会に参加される予定です。このイベントには、世界中から何千人もの若者が集まる。そのポルトガルで大きな不祥事が表に出たわけだ。

 性的虐待で告発され、その内容が信頼できると判断された枢機卿の解任にも踏み切った教皇にとって、性的虐待が教会にもたらしている危機克服への課題として重視しているのは、すでに発生した事案に対処するだけでなく、まだ”進行中”にとどまっている「隠ぺい」行為に対し、多くの人々が要求している新たなルールを頻繁に適用することだ。

 教会関係者による成人に対する性的虐待も、教皇が正面から取り組むべき課題だ。スロベニア出身の高名な芸術家でイエズス会士のマルコ・イワン・ルプニク神父による性的虐待事件では、教皇が関与を否定しているにもかかわらず、疑いが晴れていない。.ルプニクは、数人の修道女を含む約 30 人を性的、心理的、精神的に虐待したとして告発されている。

 性的関係を持っていた女性を「告解による免責」を利用して”黙らせた”として2020年にいったん破門されたものの、「罪を悔い改めた」として、すぐに破門解除となった。そして、昨年、性的暴行の訴えを受けたバチカン裁判所は、内容を検討したものの、行為がなされた時期から判断して「時効が成立している」として、訴訟を棄却した。

 イエズス会本部は、独自の内部調査を行っており、すでに聖職者としての活動を制限しているのに加えて、懲罰的措置をとる可能性がある。だが、教皇がこの問題でどのような役割を果たしたのか、あるいは果たさなかったのかについて、多くの人が疑問を抱き続けている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年3月4日

・未成年者性的虐待の罪で公判中のマカリック元枢機卿が認知症理由に提訴棄却を申請(Crux)

Ex-Cardinal McCarrick asks court to dismiss sex assault case

2006年5月の記者会見で答えるマカリック元枢機卿 (Credit: J. Scott Applewhite/AP.)

(2023.3.1  カトリック・あい)

 米国の主要報道機関が28日までに伝えたところによると、かつて米国を代表するカトリック高位聖職者で未成年性的虐待で公判中の元枢機卿、セオドア・マカリック(92)の弁護人が27日、提訴棄却を申請した。申請理由は「本人が認知症を患い、公判に耐える力がない」というもの。

 マカリックは、1974 年 6 月に ウエルズリー・カレッジで行われた結婚披露宴で当時16歳の少年を性的虐待したとして訴えられ、公判中。本人は2021 年 9 月に無罪を主張していた。弁護人は、マッカリックがジョンズ・ホプキンス大学医学部の精神医学・行動科学担当教授の検査を受け、「アルツハイマー病による認知症になっている可能性が高い」と判断されたという。

 弁護人は「本人はすべての罪状について無罪を主張しているが、自分に刑事訴訟手続きについて限られた理解しか持っておらず、進行性で修復不可能な認知障害により、弁護人との有意義な協議や自身の弁護を効果的に裏付けることができなくなっている」と弁護人は説明している。

 所轄のノーフォーク地方検事局によると、同検事局は、マカリックの判断能力に関するセカンドオピニオンを実施するため独自の専門家に委託する予定であるとすること以外、コメントを拒否した。

 現在、ミズーリ州ディットマーに住む マカリック は、14 歳以上の未成年に対する 3 件のわいせつな暴行罪で訴えられている。検察官によると、当時16歳だった少年のケースの場合、性的虐待は何年にもわたって続き、兄弟の結婚披露宴に出席した際に再び起きた。マカリックは少年の父親から「少年が家でいたずらをしていて、教会のミサに出ないので話をしてほしい」と相談を受け、大学のキャンパスで散歩しながら話をし、結婚披露のパーティーに戻ったところで、コートルームで少年に性的暴行した。そして、部屋を出る前にマカリックは、少年に「アヴェ・マリア」と「私たちの父」の祈りを唱えるように言ったという。

 1958 年にニューヨークで司祭として叙階されたマカリックはその後、米国とバチカンの指導者の間で「神学生と寝ていた」ことが広く知られていたにもかかわらず、教会の地位を上げ、米国のカトリック教会で最も有力な高位聖職者に上り詰め、2002 年に性的虐待を行う司祭に対して「ゼロ トレランス」政策が実施された際、司教団のスポークスマンを務めさえしていた。

 彼の凋落は、 2017 年に、元祭壇奉仕の少年が、 10 代の頃にニューヨークでマカリックに体を触られたと訴えたことから始まった。翌年、ニューヨーク大司教区は、主張が「信頼でき、実証された」ものであるとして、マカリック大司教の司教職解任を発表する一方、ニュージャージー州の 2 つの教区は、大人が関与したマカリックの過去の性的不品行に関する訴えが解決したことを明らかにしました。

 教皇フランシスコは、バチカンの調査により、マカリックが未成年者だけでなく成人にも性的虐待を行っていたと判断し、2019 年にマカリックの枢機卿職を解いた。AP通信によると、バチカンは2 年間の内部調査で、過去30 年間にわたって、司教、枢機卿、教皇が「聖職者による性的な不正行為の報告を軽視したり、却下した」ことが判明。 2020年に発表された調査結果は、マカリックが神学生と一緒に寝ていたことを確認する調査が求められたにもかかわらず、ワシントンD.C.のマカリック大司教を枢機卿に任命した前教皇ヨハネ・パウロ2世に多くの責任があることを突き止めた、としている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年3月1日

・サクラメント教区も破産検討ー聖職者性的虐待訴訟急増で、カリフォルニア州だけで3教区目

Bishop Jaime Soto of Sacramento, Calif., speaks at the headquarters of the U.S. Conference of Catholic Bishops in Washington Jan. 17, 2018. On Aug. 7, 2020 (Credit: Tyler Orsburn/CNS.)

 (2023.2.28 Crux  National Correspondent John Lavenburg)

 ソト司教は教区のウエブサイトで、「破産にも費用がかかり、時間のかかるプロセスになる」が、破産が認められれば「破産裁判所の監督下ですべての性的虐待の当事者の訴えをまとめ、利用可能な教区の財産で基金を設置、可能な限り公平な形で賠償請求を解決する枠組みができる 」と説明。

 そのようなプロセスを踏むことが出来なければ、「最初の一人の裁判の対応で教区の資金が使い果たされ、被害を訴えている他の人たちへの補償財源は何も残らなくなる恐れがあります」と述べた。

 また司教は、正確な訴訟件数と賠償請求額はまだ完全に把握していないが、「すべての訴えに対して、可能な限り公平に解決することを約束します。 しかし、訴訟の件数の多さから、補償額が教区財産を上回る可能性があることは否定できない。破産を選択した場合も、どのような対応ができるか考えねばなりません」とも語った。

  カリフォルニア州では、州法2019年修正法で、昨年末まで3年間に限って、被害者が被害に遭った時期の制限なしに訴訟を起こすことが認められたことから、聖職者による性的虐待の訴えが急増。昨年12月にサンタローザ教区が、そして2月中旬にはサンディエゴ教区が破産申請の検討を表明しており、サクラメント教区はそれに次ぐもの。

 教区が抱えている性的虐待訴訟はサンタローザが130件以上、サンディエゴが約 400 件に上っているが、サンディエゴ教区の被害者弁護団は、先週、教区が「未成年性的虐待の訴訟増加を見越して、それ以前に、所有する不動産資産を小教区に不正に移転している」として追加の訴訟を起こした。移転資産の総額は 4 億 5000 万ドルを超えるとされているが、教区はそれを否定している。

2023年3月1日

・イエズス会、性的虐待容疑のルプニク神父で声明発表、さらに厳しい措置(VN)

Jesuit Curia in RomeJesuit Curia in Rome 

 また今後の調査などで、仮に、バチカンの教理省の権限が及ばない犯罪に該当するとされた場合、イエズス会総長が行政政治訴訟を決断する可能性もあるがその場合は、会からの退出の手続きは進めることができない。また犯罪とされないこの種の手続きには、時効は適用されないことにも注意が必要だ。また、告発が却下されることもあり得る。だが、一定の罪科について、会の総長はまた、会からの退去ではなく、他の措置をとる可能性もある。

Jesuits impose new restrictions on Rupnik as questions linger on Vatican role

 いずれにしても、ヴェルシューレン神父は当面、イエズス会の内部的な措置をさらに進める考えだ。神父に対する様々な面での行動制限を強化する。すでに、聖職者としての公的活動、公的な意思疎通、イタリア・ラツィオ州外への移動どを禁止しているが、さらに、いかなる形の公的な芸術活動も禁じ、特に教会や、関係機関の施設、舞台、礼拝堂、黙想・霊操の家などでの行為は禁じるなどだ。

 そして、今後の対応について、「犯された罪に正義が行われるように、責任ある人々によって、真実が全面的に解明されるようにする必要がある」と声明を結んでいる。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年2月22日

・3月10日の「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を前に日本カトリック司教協議会会長が呼びかけ

(2023.2.19 カトリック・あい)

 日本のカトリック司教協議会は毎年3月10日を「性虐待被害者のための祈りと償いの日」と定めているが、その日を前に2月17日付けで菊地・司教協議会会長名で呼びかけを発表した。この問題については、「カトリック・あい」としての見解を後日掲載するが、ここでは発表全文のみをコメントなしで掲載する。

日本のカトリック信者の皆様

2023年「性虐待被害者のための祈りと償いの日」にあたって

 命に対する暴力が荒れ狂う世界にあって、神が命を私たちに賜物として与えてくださったと信じるキリスト者には、命を守り、人間の尊厳を守る務めがあります。教会にとって「イエスを宣べ伝えるとは、命を宣べ伝えることにほか」ならないからです(ヨハネ・パウロ2世「命の福音」80)。

 その教会にあって、率先して命を守り、人間の尊厳を守るはずの聖職者や霊的な指導者が、命に対する暴力を働き、人間の尊厳をないがしろにする行為を働いた事例が、近年相次いで報告されています。「性虐待」という人間の尊厳を辱め、蹂躙する聖職者や霊的指導者の行為によって深く傷つけられた方々が、長い時間の苦しみと葛藤を経て、ようやくその心の思いを吐露された結果である、と思います。そのように長期にわたる深い苦しみを生み出した聖職者や霊的指導者の行為を、心から謝罪いたします。

 なかでも保護を必要とする未成年者に対する性虐待という、きわめて卑劣な行為を行った聖職者の存在や、司教をはじめとした教会の責任者が、聖職者の加害行為を隠蔽した事例が、過去にさかのぼって世界各地で報告されています。

 教皇フランシスコは、この問題に教会全体が真摯に取り組み、その罪を認め、赦しを請い、また被害にあった方々の尊厳の回復のために尽くすよう求め、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるようにと指示されました。日本の教会では、四旬節・第二金曜日を、この祈りと償いの日と定めました。2023年にあっては、来る3月10日(金)がこの日にあたります。

 日本の司教団は、2002年以来、ガイドラインの制定や、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」の設置など、対応にあたってきました。2021年2月の司教総会で「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を決議し、教会に求められている命を守るための行動に積極的に取り組む体制を整えてきました。

 昨年には、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」が啓発活動にさらに取り組むよう、司教協議会会長直属の部門としてガイドライン運用促進部門を別途設置し、責任をもって対応する態勢を整えつつあります。

 もちろん、命を守り、人間の尊厳を守るための務めに終わりはありません。聖職者をはじめ教会全体の意識改革など、すべきことは多々あり、教会の取り組みもまだ十分ではありません。ふさわしい制度とするため、見直しと整備の努力を続けてまいります。

 改めて、無関心や隠蔽も含め、教会の罪を心から謝罪いたします。神の慈しみの手による癒やしによって被害を受けられた方々が包まれますように、心から祈ります。同時に、私たち聖職者がふさわしく務めを果たすことができるように、お祈りくださいますようお願いいたします。

 どうぞ、四旬節第二金曜日に、またはその近くの主日に、教皇様の意向に合わせ、司教団とともに、祈りをささげてくださいますように、お願いいたします。

2023年2月17日 日本カトリック司教協議会 会長 菊地 功

(編集「カトリック・あい」=内容は発表通り、表記を当用漢字表記に統一しました)

2023年2月19日

・ポルトガルの教会でも性的虐待の被害者が過去70年間で5000人にー独立調査委員会報告(Crux)

(2023.2.14 Crux  Senior Correspondent   Elise Ann Allen)

 ローマ発 – 今夏の「世界青年の日ワールド」に教皇フランシスコの参加が予定されている、そのわずか数か月前の13日、開催国ポルトガルのカトリック教会で過去70年の間に約5000人の未成年者が聖職者など教会関係者によって性的に虐待されていたことが明らかになった。

 ポルトガル司教協議会から委嘱され、聖職者による性的虐待について調べていた独立委員会が報告書で明らかにしたもので、1950年以降に性的虐待を受けた未成年者は確認できたものだけで4815人にのぼる。

 加害者の8割弱は姿勢で、被害者の大半は男性。性的虐待が行われたのは、司祭は虐待者の約 77% を占め、被害者のほとんどは男性であり、報告書によると、虐待場所は神学校、教会、教会が運営する学校、さらに告解室まで多岐に及んでいる。

 13日の報告書発表のための記者会見で、独立委員会の委員長で児童精神科のペドロ・ストレヒト医師は、「子供時代に虐待の被害を受け、これまで沈黙していた方々が、勇気をもって声を上げたことに、心からの敬意を表したい」と述べた。

 報告書によると、委員会の調査作業は、被害者が匿名で回答することのできるウエブサイトを開設することから始め、実名で名乗りを上げた512人に直接、聞き取り調査をしたほか、多くの教会に会った関係資料の収集・分析、さらに国内の19人の司教たち、13の修道会の責任者を含む聖職者に対する聞き取り調査を実施、その結果をまとめた。得られた証言で犯罪と判断されたものうち、時効になったものを除く25件を検察庁に送った。

 実名で被害に遭ったことを証言した被害者の大半は男性で、虐待された時点での年齢は10歳から14歳、平均年齢は11歳。虐待は1960 年代から 1990 年の間にされたものが最も多く、全体の 58% を占め、1991 年以降になされた虐待は 21% だった。

 性的虐待の具体的内容としては、わいせつな言葉、接触、自慰行為、オーラル・セックス、アナル・ セックス、性器の挿入、児童ポルノの閲覧など。加害者の大半は男性で、大部分が司祭だった。また特定された被害者のほとんどが被害を自分以外に話したのは成人した後で、まず家族に打ち明けている。

 また報告書によると、虐待された被害者の約7割は、教会の責任者に被害を訴えることをしなかったため、虐待が起きた時点で、加害者に対して何の措置も取られず、法廷に訴え出た被害者はわずか4パーセントにすぎなかった。

 それは、ほとんどの被害者は、加害者側から、「性的虐待の行為には『神聖な目的』がある。黙っているように」と言われたためで、今に至るまで精神的な影響が残っている被害者も少なくない。

 また、聖職者から性的虐待を受けたことが明確な被害者の中で、 7 人が自殺している。虐待を受けた人々のほとんどは、今でも信仰を持っており、カトリック教徒であり続けているが、大部分が教会の中で活動していない。

 教会の資料で虐待の疑いがあるとされたものうち、いくつかの訴えは調査と訴訟につながり、虐待の加害者には、蟄居、異動や監視下に置く、 などの措置が取られたが、聖職のはく奪はごく一部にとどまっている。

 2010年以降、数十年前の被害申告を含めて文書化された事件の数が”指数関数的”に増加した。同年以降は、 教区と修道会は申告を受けた場合、予備調査の実施、教区からバチカンの教理省への報告、必要なら刑法手続きの開始など、規定に従って対応することが定められたが、2010年以前は、対応に「非常に大きな裁量の余地」があり、記録として残されないこともあった。また、「教会法によって定められた規則に従わず、記録が削除された可能性が高いケース」もあった、と報告書は述べている。

 さらに、性的虐待に教会当局がどのように対応したかについて、1950 年代から 70 年代にかけての当局の主な関心は「教会の名声を守ること」にあり、大部分の性的虐待は隠蔽され、虐待されたとの訴えを受けても、被害者の苦しみには十分な配慮が払われていなかった、と指摘している。

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 報告書は、ポルトガルのカトリック教会と市民社会の両方に対する勧告で締めくくられている。

 勧告では、性的虐待の再発防止のための監視と研究を継続するため、教会の内外両方の専門家で構成する対策委員会の設置するなど、再発防止への具体的取り組みを提言。 教会当局に対しては、「例外なしの対応」を厳格に守り、性的虐待の疑いがあれば行政当局に報告し、調査に協力する道徳的義務について明確にするよう求めた.

 また、教会が、過去の虐待について謝罪し、性的虐待防止のための教会関係者の外部での教育と監督を実施するよう求め、”閉鎖された物理的空間”で教会行事を行わないなど再発防止措置の徹底を要請した。

 教会が提供すべき虐待被害者とその家族への支援として、特に、国民保健サービス (SNS) と連携して、将来にわたって被害者に継続的な精神的支援をあげ、政府に対しては、児童の性的虐待に関する全国調査を実施し、児童の権利を「明確に」認識し、児童と家族が学校レベルで権限を与えられるようにすることを勧告した。

 さらに、政府に対して、「性的虐待被害を受けた未成年者の上限年齢」を引き上げることで、性犯罪の時効を調整するよう求め、被害訴えへの司法的対応の迅速化を促した. また、性的虐待の調査におけるメディアの役割を強化し、特に愛やセックスなどのトピックに関して、子供や若者の発達における感情リテラシーを改善することを提案している。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年2月15日

・未成年性的虐待で訴訟400件ー米サンディエゴ大司教区が破産申請へ(Crux)

 (サンディエゴ教区長のウォルター・マケルロイ枢機卿。昨年8月に教皇フランシスコから新任された、最も新しい枢機卿20人のうちの一人だ= Credit: Andrew Medichini/AP.))

(2023.2.14 Crux National Correspondent  John Lavenburg)

 ニューヨーク発 – 米国のカリフォルニア州法の2019年修正法で、被害者が被害に遭った期間の制限なしに訴訟を起こすことが認められていることを背景に、サンディエゴ教区では、聖職者、修道者、一般信徒の未成年者に対する性的虐待に関する訴訟が急増、現在、約 400 件の訴訟に上っており、教区長のウォルター・マケルロイ枢機卿は14日までに、教区が破産申請を余儀なくされる可能性がある、と教区の全聖職者、信徒に通知した。

 Facing 400 sex abuse lawsuits, San Diego diocese ponders bankruptcy2019 年のカリフォルニア州法改正法を受けて破産申請の可能性を公表し同州の教区は、昨年12月のサンタ ローザ教区に次いで二番目だ。

 サンディエゴ司教区は、カリフォルニア州のサンディエゴ、インペリアル両郡を担当地域にもち、96の教区、司祭は151人(定年も含む)。総人口346万人のうち138万人がカトリック信者だ。

 マケルロイ枢機卿は通知の中で、サンディエゴ教区は、すでに 2007 年に 144 件に上る性的虐待の被害申し立てに対して和解などに 1 億 9800 万ドル(約260億円)を費やしており、教区の資産のほとんどが「使い果たされている」と窮状を訴えた。

 そして、2007年に支出した額と訴訟件数から現在の新たな訴訟件数に対する和解金や賠償金の総額を推定すれば5億ドルから6億ドルに上る可能性があり、「訴訟保険があっても、教区は現在起きている訴訟に対処することはできないと思われる」とし、「破産は、性的虐待のすべての被害者への補償が公平になされることを保証する道筋を提供する一方、信仰の育成、司牧活動、貧しい人々や疎外された人々へに対する教会の奉仕を継続することを可能にする」と説明した。

 これに対して、性的虐待被害者の弁護団は、「和解や損害賠償のための資産がない、という教区の主張に異議がある」とし、来週にも新たな訴訟を起こす方針。

 弁護団の代表者、アーウィン・ザルキン氏はCruxの取材に対し、「教区は2019年に、保有資産を性的被害者への潜在的な支払いから逃れさせる狙いで、小教区の不動産持ち株会社に移している。その資産の評価額は、課税対象に限っても6 億ドル近くに上る」と述べ、「このような資産の移管は(被害者に対する)支払いを回避する試みだ。資産を教区に戻す必要があり、その訴訟は州裁判所の扱いとなるか、破産裁判所のある会となるか、いずれにしも 問題になるだろう」と語っている。

 一方でマケルロイ枢機卿は、破産申請は、まだ訴えを起こしていない性的虐待被害者から今後賠償を求められた場合の資金を提供するとともに、75年前までさかのぼる被害訴訟の波に終止符を打つことに繋がる、と破産の正当性を強調する一方、サンディエゴ教区、そしておそらく他のカリフォルニア州の教区にとっての更なる懸念は、州法で定めた訴訟対象となる案件の期間についての制限を無くし、州内の教区を訴訟に対して永遠に脆弱にする、修正法にある、と述べている。

  これに対して、ザルキン氏は「マケルロイ枢機卿たちは、破産が何を意味するのかを分かっていない。このような主張は不信感を高めるだけだ。彼らの頭に最初に浮かぶのは、被害者たちの正当性が否定され、訴訟が却下され、そして公正な補償が与えられないことだ」と強く批判した。

 サンディエゴ教区によると、過去 3 年間に提出された 約400 件の被害訴訟の 70% は 1945 年から 1975 年の間の被害に対するもので、一番最近の被害は1996 年。加害者として訴えられ、現在生存している者は4人のみといい、「このような数字は、教会が未成年者に対する性的虐待を根絶し、未成年者を保護するために多大な努力を重ねてきた、という現実を反映している」と強調。 「それでも教区は、これらの新たな訴訟に対応するための莫大な法的費用に直面でねばなりません」と説明している。

 サンディエゴ教区の広報担当者はCruxに対して、「破産申請の決定は 5 月下旬か 6 月上旬になる可能性が高い」とするとともに、「枢機卿がこの時期に、実情を説明したのは可能な限りの透明性を確保し、被害者のために私たちが最大限できることを明らかにするために重要なことだった」と述べた。

 また、「補償や和解に必要が金額と保険から支払わる額との差が大きすぎる場合は、選択肢を検討する必要があり、そのために今後数か月、多くの時間が費やされることになる。課題は、被害者の生活再建を支援するために、どの資産を売却または譲渡できるかの判断を可能な限りオープンにすることです」と語った。

 マケルロイ枢機卿はまた、「教区で起きた性的虐待を決して忘れることはない」と強調し、「司祭による未成年者に対する性的虐待と教会の対応は、過去の私たちの教会の最大の罪を構成しています。私たちはこれまで以上に、未成年者を手厚く保護し、虐待された人々を癒すための措置を提供し、被害を受けた人々への補償に教区の資産を使っていくことが求められている」とも述べている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2023年2月15日