ロリ大司教は5日の声明で、「メリーランド州司法長官からの本日の報告は、何人かの教会の司祭によって無実の子供や若者に多大な損害を与えたことを何よりも悲しく痛感させます。虐待の詳細な説明は衝撃的で、魂を焦がします」としたうえで、「私は大司教区を代表して、すべての被害者に心からお詫び申し上げるとともに、引き続き連帯し、皆さんのケアに努めることを誓います… あなたとあなたの勇気ある声が変化をもたらしたと確信しています」と述べた。
ブラウン司法長官も声明を発表し、「この報告書を可能にしたのは生存者の勇気でした」と語った。メリーランド州司法長官室は、ボルチモア大司教区における児童への性的虐待と、大司教区の指導者によるその虐待の連続隠蔽について、2018年から調査してきた。報告書には、カトリックの現職または元の聖職者、神学生、助祭、修道会の会員、大司教区の職員の中で、メリーランド州における児童性的虐待についての信頼に足る申し立ての対象となり、司法長官室が把握した全員が含まれている。
*司祭など大司教区に蔓延した執拗な虐待と高位聖職者による隠ぺいが明らかに
報告書では、「今回の調査によって明らかになった議論の余地のない過去の経緯は、司祭や他の大司教区の職員の間に蔓延した、執拗な虐待を明らかにしている。また、カトリック教会の高位聖職者による加害者免職の繰り返しと、虐待隠蔽の歴史でもある」と強く批判。 「被害者の調査を総合することで、『子供を性的に虐待する大人』と『それを隠ぺいすることでさらなる虐待を可能にする大人』に典型的な行動パターンが明らかになった」と指摘している。
報告書の一部は、大陪審の機密資料を保護するために編集され、156人の虐待者のリストに9人の名前がその対象となった。
また、報告書は、虐待の加害者とそれを隠蔽した人々のほとんどは死亡しているため、これらの人々を起訴することは困難だが、大司教区の児童性的虐待の過去の経緯を公開することで、「ある程度の説明責任を果たすことができる」とし、いくつかの勧告を行っている。
その一つは、児童性的虐待を含む民事訴訟の時効の修正。 メリーランド州議会は 5 日に修正のための法案を可決し、ウェス・ムーア知事に送付した。現在の州法では、被害者は 38 歳まで民事訴訟を行うことができるとしているが、同州のカトリック教会はこれを「違憲」かつ「不公平」として、修正を求めている。
勧告の二つ目は、大司教区が信頼に足る告発を受けた者の対象を、司祭だけではなく、大司教区の下で児童虐待行為を行った人を含めることだ。
報告書はまた、大司教区の独立審査委員会が虐待の申し立てに対応する際の潜在的な限界を指摘。具体的に、「大司教区から提供された情報をもとにした審査にとどまり、調査能力がない」ことを挙げている。
*「対策の強化が過去に犯した過ちの言い訳にはならない」と大司教
だが、そのような問題はあるものの、米国の司教団が 2002 年に「ダラス憲章」を公布して以来、大司教区に児童および青少年保護局と独立審査委員会を設けることが義務付けられ、ボルチモア大司教区における聖職者による性的虐待の申し立てに対処する方法は完全に変わった、とし、同大司教区が、信頼に足る告発を受けた司祭の名簿を公開した米国で最初の教区の 1 つとなったことを評価した。
また、大司教区がカウンセリングのために被害者に経済的支援を行い、損害補償の直接支払いを求める被害者のための調停オプションを作成したことや、児童性的虐待の内部処理を大幅に改善したことも挙げている。
ロリ大司教は「大司教区が過去の虐待を忘れることがあってはならない」とし、さらに「被害者保護と透明性が、現在では大幅に強化されましたが、それは、被害者たちが耐えてきた長く続く精神的、心理的、感情的な被害のもとになった過去の過ちに言い訳にはなりません」と自戒し、 「今日の大司教区にもたらされた変化と説明責任をさらに改善し、構築し続けます」と約束している。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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