☩「性的虐待被害者のために祈り、赦しを求めるだけでは不十分、具体的な行動が必要」と教皇、3月の祈りの意向で

Pope Francis attends his weekly general audience in the Paul VI Hall at The Vatican, Wednesday, Dec. 14, 2022. (Credit: Domenico Stinellis/AP.)

(2023.3.2 Crux  Senior Correspondent Elise Ann Allen)Pope Francis dedicates March to praying for victims of abuse

 ローマ – 教皇フランシスコは3月の祈りの意向のビデオ・メッセージで、「性的虐待被害者のために祈り、赦しを求めるだけでは十分ではない。教会は虐待の犠牲者を第一に考え、隠蔽を避けねばならない」と強調された。

 教皇は「赦しを求めることは必要ですが、それだけでは十分ではありません。聖職者や教会関係者が赦しを求めることは被害者にとって良いことですが、被害者がすべての『中心』に置かれる必要があります」と言明。

 被害者の痛みと心理的トラウマは「彼らが答えを見つけた場合、つまり 彼らが受けたひどい嫌悪を償い、二度と繰り返されないために具体的な行動がとられた場合にのみ、癒されるのです」と訴えられた。

 「教会関係者による過ちのせいで苦しんでいる人々のために共に祈りましょう。被害者たちが、その痛みと苦しみに対する具体的な振る舞いを教会そのものの中に見出すことができますように( #PrayerIntention #ClickToPray pic.twitter.com/ucuw1lOaI8)」 

 教皇はまた、聖職者による性的虐待について、高位聖職者など教会関係者が隠ぺいしたことを念頭に、「教会はいかなる種類の虐待の悲劇も隠そうとしてはならない」とされ、さらに、これは、「家庭、集会所、その他の種類の施設」で発生する虐待にも当てはまります… カトリック教会は問題の解決を進めるために模範を示し、社会と家族にそれを明らかにする必要があります」と語られた。

 続けて教皇は、「教会は、犠牲者の声を聞き、心理的に支え、保護するための安全な場所を提供しなければなりません」と指摘され、「教会員による過ちのために苦しんでいる人々のために」共に祈るよう、世界のすべての信者に求められた。

 そして、「被害者たちが自分の痛みと苦しみに対する具体的な答えを、教会の中に見つけることができますように」と祈られた。 3月の教皇の祈りの意向のビデオ・メッセージは、暗い子供のプレイルームのイメージで始まり、壁にはしおれ、影で枯れている花の写真があり、教皇はフレームの間に姿を見せ、彼のメッセージを伝える。 暗かった部屋を光で満たし、花が生き返るのを助ける・・・ 

 ここ数年、数か月の間に、フランス、スペイン、ドイツ、ポルトガルなど欧州全土の国々で、何十年にもわたる性的虐待事件で、何千人もの加害者、そして 数十万人の潜在被害者がいることが明らかになっている。

 ポルトガルの カトリック教会の聖職者による性的虐待を調査する独立委員会は2 月 13 日に発表した報告書で、1950 年以降の虐待被害者が約 5000 人に上ると推定し、しかも、これらの数字は「氷山の一角」に過ぎない可能性が高い、と述べている。教皇は今年8月にポルトガルの首都リスボンを訪れ、「世界青年の日」国際大会に参加される予定です。このイベントには、世界中から何千人もの若者が集まる。そのポルトガルで大きな不祥事が表に出たわけだ。

 性的虐待で告発され、その内容が信頼できると判断された枢機卿の解任にも踏み切った教皇にとって、性的虐待が教会にもたらしている危機克服への課題として重視しているのは、すでに発生した事案に対処するだけでなく、まだ”進行中”にとどまっている「隠ぺい」行為に対し、多くの人々が要求している新たなルールを頻繁に適用することだ。

 教会関係者による成人に対する性的虐待も、教皇が正面から取り組むべき課題だ。スロベニア出身の高名な芸術家でイエズス会士のマルコ・イワン・ルプニク神父による性的虐待事件では、教皇が関与を否定しているにもかかわらず、疑いが晴れていない。.ルプニクは、数人の修道女を含む約 30 人を性的、心理的、精神的に虐待したとして告発されている。

 性的関係を持っていた女性を「告解による免責」を利用して”黙らせた”として2020年にいったん破門されたものの、「罪を悔い改めた」として、すぐに破門解除となった。そして、昨年、性的暴行の訴えを受けたバチカン裁判所は、内容を検討したものの、行為がなされた時期から判断して「時効が成立している」として、訴訟を棄却した。

 イエズス会本部は、独自の内部調査を行っており、すでに聖職者としての活動を制限しているのに加えて、懲罰的措置をとる可能性がある。だが、教皇がこの問題でどのような役割を果たしたのか、あるいは果たさなかったのかについて、多くの人が疑問を抱き続けている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年3月4日