・未成年者性的虐待の罪で公判中のマカリック元枢機卿が認知症理由に提訴棄却を申請(Crux)

Ex-Cardinal McCarrick asks court to dismiss sex assault case

2006年5月の記者会見で答えるマカリック元枢機卿 (Credit: J. Scott Applewhite/AP.)

(2023.3.1  カトリック・あい)

 米国の主要報道機関が28日までに伝えたところによると、かつて米国を代表するカトリック高位聖職者で未成年性的虐待で公判中の元枢機卿、セオドア・マカリック(92)の弁護人が27日、提訴棄却を申請した。申請理由は「本人が認知症を患い、公判に耐える力がない」というもの。

 マカリックは、1974 年 6 月に ウエルズリー・カレッジで行われた結婚披露宴で当時16歳の少年を性的虐待したとして訴えられ、公判中。本人は2021 年 9 月に無罪を主張していた。弁護人は、マッカリックがジョンズ・ホプキンス大学医学部の精神医学・行動科学担当教授の検査を受け、「アルツハイマー病による認知症になっている可能性が高い」と判断されたという。

 弁護人は「本人はすべての罪状について無罪を主張しているが、自分に刑事訴訟手続きについて限られた理解しか持っておらず、進行性で修復不可能な認知障害により、弁護人との有意義な協議や自身の弁護を効果的に裏付けることができなくなっている」と弁護人は説明している。

 所轄のノーフォーク地方検事局によると、同検事局は、マカリックの判断能力に関するセカンドオピニオンを実施するため独自の専門家に委託する予定であるとすること以外、コメントを拒否した。

 現在、ミズーリ州ディットマーに住む マカリック は、14 歳以上の未成年に対する 3 件のわいせつな暴行罪で訴えられている。検察官によると、当時16歳だった少年のケースの場合、性的虐待は何年にもわたって続き、兄弟の結婚披露宴に出席した際に再び起きた。マカリックは少年の父親から「少年が家でいたずらをしていて、教会のミサに出ないので話をしてほしい」と相談を受け、大学のキャンパスで散歩しながら話をし、結婚披露のパーティーに戻ったところで、コートルームで少年に性的暴行した。そして、部屋を出る前にマカリックは、少年に「アヴェ・マリア」と「私たちの父」の祈りを唱えるように言ったという。

 1958 年にニューヨークで司祭として叙階されたマカリックはその後、米国とバチカンの指導者の間で「神学生と寝ていた」ことが広く知られていたにもかかわらず、教会の地位を上げ、米国のカトリック教会で最も有力な高位聖職者に上り詰め、2002 年に性的虐待を行う司祭に対して「ゼロ トレランス」政策が実施された際、司教団のスポークスマンを務めさえしていた。

 彼の凋落は、 2017 年に、元祭壇奉仕の少年が、 10 代の頃にニューヨークでマカリックに体を触られたと訴えたことから始まった。翌年、ニューヨーク大司教区は、主張が「信頼でき、実証された」ものであるとして、マカリック大司教の司教職解任を発表する一方、ニュージャージー州の 2 つの教区は、大人が関与したマカリックの過去の性的不品行に関する訴えが解決したことを明らかにしました。

 教皇フランシスコは、バチカンの調査により、マカリックが未成年者だけでなく成人にも性的虐待を行っていたと判断し、2019 年にマカリックの枢機卿職を解いた。AP通信によると、バチカンは2 年間の内部調査で、過去30 年間にわたって、司教、枢機卿、教皇が「聖職者による性的な不正行為の報告を軽視したり、却下した」ことが判明。 2020年に発表された調査結果は、マカリックが神学生と一緒に寝ていたことを確認する調査が求められたにもかかわらず、ワシントンD.C.のマカリック大司教を枢機卿に任命した前教皇ヨハネ・パウロ2世に多くの責任があることを突き止めた、としている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年3月1日