・「偉大な母なるロシア…」の教皇発言に、ウクライナのギリシャ・カトリック司教団が「私たちに大きな痛みを与えている」と抗議(CRUX)

(2023.9.8  Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

    「戦争の犠牲者への司牧的支援」をテーマにしたギリシャ・カトリック司教協議会連盟総会が13日までローマで開かれているが、教皇の平和特使、イタリア司教協議会のマッテオ・ズッピ枢機卿が8日、総会に出席中のウクライナ司教団(UGCC)と会見、ロシアとの戦争における「勝利」は、「平和であり、敵の自尊心を奪うことではない。そうすることは、将来の敵意と敵対行為につながる」と述べた。

 この会見は、先日、ロシアのカトリック「青年の日」の会合にビデオ参加した教皇フランシスコがプーチン大統領が信奉するピヨートル大帝などを讃える発言をして、ウクライナはじめ世界的に物議を醸している中で行われた。教皇はロシアの若いカトリック信者たちに「偉大な母なるロシア」を称賛し、「ピョートル1世、エカチェリーナ2世の大ロシア、その偉大な啓蒙帝国」を称賛していた。

 この発言に対して、関係者間に、「教皇は、ロシアの『帝国主義プロパガンダ』を反芻している」と非難の声が上がり、ギリシャ・カトリック教会のウクライナ司教協議会会長、スビアトスラフ・シェフチュク司教も「教皇の言葉は、私たちに大きな痛みと懸念を引き起こした」と声明を発表するなど、ウクライナの人々や教会当局も強く反発している。

 これに対し、ズッピ枢機卿は、直接答えるのを避けつつ、2017年に亡くなったキエフ・ハリチの元大司教であるルボミル・フサール枢機卿を「偉大な霊的権威を持った方だった」と讃えたうえで、彼の言葉を引用する形で「私たち全員が、完全な意味で人間のように振る舞えば、真の最終的な勝利が可能になる。そうでない勝利は部分的または想像上のものであり、真の平和につながることは決してない」と述べた。

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 教皇は、物議を醸している発言の後、モンゴル訪問からの帰途の機中記者会見でこの問題について質問され、「私がそのような発言をした時、『帝国主義』は頭になかった。頭にあったのは『文化』でした。そして『伝統と文化』は決して『帝国主義』ではありません」と釈明したうえで、「世界には、自分たちのイデオロギーを押し付けたい帝国主義者がいます。文化が”蒸留”されてイデオロギーになるとき、毒になります。私たちは(このようなイデオロギーと文化を)区別する必要があります。ロシアの文化も、政治のために否定されてはなりません」と語っていた。

 この問題は、教皇が9月6日にUGCCの司教たちと会見した際にも取り上げられたが、会見後のバチカン広報の説明では、詳細なやり取りは明らかにされず、モンゴル訪問からの帰途の機上会見での教皇の言葉が繰り返されたことにとどまった。

 一方で、UGCCが発表した声明では、教皇と「率直な会話」をしたが、「ウクライナ国民の痛み、苦しみ、そしてある種の失望」を伝えた、とし、「ウクライナと世界中の私たちの信者が教皇に伝えたい言葉を私たちに託し、そのすべてのことを教皇に伝えた… その中には、教皇の特定の振る舞いや発言は『現在、尊厳と独立のための闘争で血を流しているウクライナの人々にとって、痛みであり、苦しみだ』との一部の司教の声を含まれている」と明言。

 声明はさらに、「ロシアのウクライナ軍事侵攻が始まって以来、バチカンとウクライナの間に”誤解”が生じており、これらの誤解は、ロシアのプロパガンダによって『ロシアの残忍なイデオロギー』を正当化するために利用されている」と指摘し、「私たちの教会の信徒たちは、真実と正義の普遍的な声であるはずの、教皇のすべての言葉に対して敏感に反応している」としたうえで、「教皇は、『殉教の次元』を体験しているウクライナの人々の側にいると表明されてが、それは十分に伝わっていない… 私たちは教皇に、戦争に直面し続けるウクライナの人々がしばしば経験する無力感を伝えた、と述べている。

 また、ウクライナの司教団は、教皇との会見で、昨年11月にロシア軍によって逮捕され、いまだに拘留されているイワン・レヴィツキー、ボフダン・ハレタ両神父の釈放を実現するための努力を続けてくれるよう求め、十字架や祈祷書、ロザリオなど二人の私物の一部を教皇の渡した。これに対し、バチカン国務長官のパロリン枢機卿は「二人のために祈っています」と述べるとともに、バチカンにとって現在の優先事項は、捕虜交換とロシアからのウクライナの子供たちの帰還の実現であり、これはズッピ和平特使がキーウとモスクワを訪問した際にも取り上げられている、と説明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年9月11日

・ロシアのウクライナ軍事侵略が恐るべき環境破壊を起こしている―「被造物のための祈願日」にギリシャ正教会総主教が声明

(2023.8.31 Vatican News By Lisa Zengarini)

     9月1日の「被造物のための祈願日」を前にした8月31日、ギリシャ正教会コンスタンティノープル・エキュメニカル総主教のバルトロマイ1世が声明を発表。「環境破壊」と「人権の損壊」の密接な関係を指摘し、具体的にロシアのウクライナ軍事侵略が引き起こしている「恐るべき環境破壊」を糾弾。 「あらゆる戦いの行為は、自然環境に重大な脅威をもたらす、創造物に対する戦争だ」と訴えた。

 ロシアの軍事侵略がウクライナでの恐るべき環境破壊をもたらしている

 声明で総主教は、ロシアがウクライナで続けているあらゆる種類の武器を使った攻撃が「大気、水、そして地球全体を汚染し、核兵器による大量虐殺の危険性を高め、原子力発電所からの放射能の放出、建物の爆撃による発がん性の粉塵発生、森林破壊、農地の破壊による食糧生産の減少など、ウクライナの人々と環境に計り知れない損失をもたらし、今ももたらし続けている」と強く非難し、戦闘の即時停止と「誠実な対話」の開始を、プーチン大統領を筆頭とする関係国首脳たちに改めて要求した。

 また総主教は、人権の概念が、今日では環境権を含む範囲に拡大しており、人権の尊重を求める闘いで、「気候変動、飲料水や肥沃な土壌、清潔な土壌の不足によって脅かされている現実を無視することはできない」と指摘。現在の地球環境の危機に、「何よりも、人権の観点から対処することが緊急に求められている」と訴えた。

 そして、「あらゆる側面と次元において、これらの権利は一つのものであり、分離できないことは自明。  過去数十年にわたって総主教庁が取り組んできた環境保全への取り組みに対する肯定的な反応を評価しつつ、「キリスト教世界だけでなく、他の宗教、政界、市民社会、科学、エコロジー運動や若者の間でも、同じ動きが進んでいる。自然環境の破壊は、何よりも貧しい人々に影響を与える」と強調した。

 そのうえで、環境保護に関する意識を高めるために教会が行ったすべての努力は「単なる追加的な活動ではなく、聖体祭儀の延長としての、本質的な表現と実現である」と、声明を締めくくっている。

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    9月1日の「被造物のための祈願日」は、教皇フランシスコが2015年に制定し、10月4日の祝日まで続く1か月にわたるキリスト教の「創造の季節」の始まりに位置付けられている。そして、この季節の最終日、10月4日のアッシジの聖フランシスコの祝日に、教皇は2015年に発出した環境回勅「ラウダート・シ」の第二部を発表する予定でだ。

 「被造物のための祈願日」を前にした8月31日、モンゴル訪問に立つ教皇は、X(旧ツイッター)への書き込みで、「明日から始まるこの #創造の季節 に、次のいくつもの鼓動について考えてみましょう―私たち自身の鼓動、私たちの母親や祖母の鼓動、創造の鼓動、そして神の心の鼓動―を」。 https://seasonofcreation.org

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年9月1日

(読者投稿)”シノドスの道”から外れ、信徒への思いやりと愛の無い”合併劇”

 大阪、高松の教区合併についての、コラム筆者の方の考えに賛同します。

 両教区の担当者たちが「合併」あるいは「吸収合併」でないことを強調するのは、宗教法人法との絡みがあるのではないでしょうか。今回の「合併」を文部科学省にどのように報告する(した)のか分かりませんが、「吸収合併」であれば、細かな規定に縛られて手続きが厄介なのでしょう。法律の専門家ではないので確信を持って言うことはできませんが。

 また、「吸収合併」だとすれば、吸収される高松教区に対して、丁寧な説明が必要となります。それを避けるために「統合」としたのかも知れません。

 これまでの経緯と今後の方針について、両教区の信徒たちには、何の具体的な説明もなされていないようです。私は二つの教区以外の教区の信徒ですが、高松 大阪両教区の信者の皆さんには、今回のバチカンの発表は、青天の霹靂だったのではないでしょうか。

 一切情報を開示せず、結論だけを事務的に公表するやり方は、「全体主義国家」「独裁組織」がすることでしょう。今日の民主的社会では通用しないはずです。「教会には民主主義は当てはまらない」と言うのは責任逃れの便法として使わているにすぎません。

 私の所属する教区では、6年前に教区の合併に関するアンケートを司祭を対象に取っています。しかし、アンケートを取ったこと自体、アンケート集計の結果は信者には一切知らされていません。「信者には関係ないことだ。口を出すな」が、教区の責任者の意識の根底にあるのでしょう。「トップが決めたことに従順に従うのが信徒のつとめ」と言ってはばからない姿勢―教皇フランシスコが最も嫌っておられる「聖職者中心主義」からきているようです。

 日本の多くの教区で、小教区で、教皇フランシスコが主導されている”シノドスの道”や共に歩む教会の建設について語られることは、ほとんどありません。今年の10月と来年の10月、二期にわたる世界代表司教会議(シノドス)総会が終わって文書が出てきたら、対応を考えよう、ということなのでしょう。教皇が常々言っておられる「共に歩む教会、シノダル(共働的)な教会」の意味が全く理解されていません。

 今回の大阪、高松教区の「合併劇」に関する、関係教区の責任ある立場の方々のおかしな対応は、教皇が主導される”シノドスの道”からまったく外れた「信徒への思いやりと愛のない合併劇」。それに尽きると思います。

(日本の南に住む一信徒より)

2023年9月1日

・教皇の“偉大な母なるロシア”の失言にウクライナは遺憾表明、ロシアは謝意!(CRUX)

(2023.8.30  Crux Staff

ローマ –8月25日にサンクトペテルブルクで開かれた「ロシア青年の日大会」にビデオ参加した教皇フランシスコの発言が物議を醸している。教皇は、彼らに向けた講話で、カトリック教徒としての努力を励ます言葉を述べる中で、プーチン大統領が”模範”とするピヨートル大帝を讃えているように受け取られる発言と共に、彼らが「偉大な母なるロシアの後継者だ」と讃えるような表現をした、というものだ。

 ウクライナ政府の報道官は「『偉大な母なるロシアの後継者だ』というような言葉は、帝国主義的プロパガンダに当たる」と反論。同国のギリシャ・カトリック教会の指導者スヴャトスラフ・シェフチュク総大司教も「教皇の言葉が、私たちに大きな悲しみと懸念を引き起こした」と遺憾の意を表明している。

 これに対して、ロシア大統領府のペスコフ報道官はロシアのタス通信とのインタビューで、「ウクライナ戦争に対する、バランスの取れたアプローチだ。教皇はロシアの歴史を知っており、これは非常に前向きなことだ」と称賛。

 ロシア外務省のザハロワ報道官も29日のイタリア通信社アンサとのインタビューで、教皇の言葉に感謝を表明。「ウクライナ紛争を巡るバチカンとロシア政府の対話は、継続しており、両者の関係は相互尊重と建設的な精神で特徴付けられている」と強調。さらに、「クレムリンは、ウクライナ紛争に対するバチカンのバランスの取れたアプローチと、平和的解決を模索するバチカンと教皇個人の努力に深く感謝しているが、残念ながらキエフ政権はこれを拒否したている」と述べた。

 ザハロワ氏の発言は、ウクライナのゼレンスキー大統領が5月にバチカンで教皇と会見した際、ウクライナはロシアとの紛争において調停者を必要としないと述べるとともに、バチカンに対しウクライナの和平計画を支持するよう求めたことが念頭にあると思われる。

 この問題に関し、バチカン報道局は29日に、「ロシアの若者に対する教皇の発言は誤解されている。教皇には、ロシア皇帝の専制主義を称賛する意図はまったくなかった」と否定声明を出した。

 しかし、ウクライナのラテン典礼司教会議の議長であるスコマロフスキー司教は同日、「『偉大なるロシア』への言及は、残念だが、ウクライナに対して9年間も残忍で血なまぐさい戦争を繰り広げている国に対する”偉大な神話”を永続させることになる」と懸念を表明するとともに、「教皇のウクライナ国民に対する支持の姿勢に疑問の余地はない。一つの言葉を問題にするのでなく、ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する教皇の姿勢全体を見るべきだ」とウクライナ国民に”自制”を求める一方で、今回のような”誤解”は「教皇とウクライナの間で、外交レベルと教会レベルの両方で、適切な対話が欠如していることによって引き起こされている」と指摘した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年8月31日

・「唐突な教区の『お知らせ』に違和感、信徒が知りたい情報が皆無」大阪教区との合併に、高松教区の有志信徒たちの声

(2023.8.28 カトリックあい)

 バチカンが15日に発表した大阪、高松両教区の合併は、日本の教会関係者の間に大きな波紋を広げているが、当事者である高松教区の信徒有志の方から、普段から教会の在り方などを真剣に考え、努力している若い信徒、中堅の信徒数人の意見をまとめて送っていただいたので、以下に紹介する。共感の声、あるいは異論、反論を歓迎。公平に掲載します。

 

合併の理由について、まず真摯な説明を聞きたい

 

*バチカンの発表を受けて、高松教区が出した「お知らせ」に違和感を覚える信徒が多いようだ。「新しい教区の設立であり、既存の大阪大司教区と高松司教区との合併ではありません」と言うだけで、あとはバチカンの発表そのまま。社会の一般常識からして、これは合併、あるいは吸収合併以外の何ものでもないが、なぜ、このような事態になったのか、なぜ合併される必要があるのか、信徒にとってに寝耳に水の発表になったのか、”新しい教区”になって、何が変わるのか、現在の高松教区はどのような形になるのか、などの疑問に全く答えていない。いや、答える意思さえないように思われる。

 「日本のカトリック現勢」2023年版によると、高松教区の登録信徒数は4208人で全国16教区の中で最も少なく、しかも主日のミサ参加者は平均で新潟、大分両教区と共に1000人を割り込んでいる。若者や中堅層の教会離れには理由があったのに、そのような訴えに、高位聖職者や教会運営に携わる人々は全く聞く耳を持たないどころか、「そんな信徒は要らん」と言い放つ人物までいたのだ。退任司教をはじめ、関わりを持った司祭、助祭たちに、まず、真摯な説明を聞きたい。

 

 

 

四国の教会を立ち直らせる機会にするために必要なことは

 

*今回の大阪、高松教区の合併は、四国の教会を立ち直らせる機会となる可能性がある。信徒数が減少の一途を辿っている四国の教会を、関西の援助も受けながら立て直す絶好のチャンスだと認識して、早急に動き始めることが大切だと思う。だが、その前に、高松教区の指導者たちは、これまで教区のために尽くしてきた信徒へ、真摯な説明をする必要がある。自分たちが率先して教会活性化に取り組むべきであったのに、何も努力しないどころが、前向きの取り組みをしようとする信徒たちを排除することさえしてきた。それが、今回の合併の根本的原因だと思う。しっかり反省し、合併の機会に、”トップダウン”から”ボトムアップ”の組織に転換することを期待する。

 

”大阪”が高松教区の現状を無視し、信徒を傷つけないか心配

*高松教区が無くなるのは決して良いことではない。 教区内で生じている問題を、合併で誕生する”大阪高松大司教区”が、しっかりと引き継ぎ、解決してくれるのだろうか。”新教区の誕生”という言葉はともかく、実際には弱小な高松教区が 大阪教区の中に組み込まれるわけだ。大阪教区の指導者たちが、高松教区の現状を蔑ろにし、信徒をいたずらに傷つけないか、懸念している。
「新教区の誕生」と言うと聞こえは良いが、率直に申し上げて、地理的にも心情的にも大阪と四国の間にはかなりの距離がある。合併の発表を聞いて私たちが動揺しているように、大阪教区の方々の中にも動揺されている方が少なくないのではなかろうか。 この動揺が、心理的、感情的な”すれ違い”となり、大きな軋轢を生むことがないように、新教区発足前に、まず、両教区の信徒の交流の場を作り、互いを知ることが必要だと考える。そのためにも、高松教区は、合併に備えた人事を行い、まともな信徒すらミサに参加できないような現在の教会運営の体制を改めることを求めたい。

 

“お金を回収する道具”のように扱ってきたのが原因か

 

*大阪教区への吸収合併を選択せざるを得なくなったのは、高松教区の政策の失敗だと思う。私の見方では、教区は、信徒をお金を回収する道具のように扱ってきた。キリストの教えとはあまりにもかけ離れ、善良な信徒を失うことに繋がったと考えられる。「法律に従う行為だ」と言いながら、個人の遺産をその人の意思に反して奪おうとするマフィアのボス的な行動も見られた。 お金を集めるためになりふり構わず権力を振るった結果、人もお金も離れてしまったのではないだろうか。合併されたら、こうした問題、責任が消えるわけではない。まず、真摯な反省の表明を伴った、信頼回復が必要だ。

*{お知らせ」では「新しい教区の設立で… 合併ではありません」としているが、誰が聞いても吸収合併である事は明らかだ。なぜこのような事態になったのか、一切説明がないが、実質的に財政破綻したのが、理由ではないか。率直かつ誠実な説明がないまま、合併されても、信徒の教会離れがさらに進むのではなかろうか。現状を見る限り、教区挙げて信頼に努めることは、残念ながら期待できない。

 

2023年8月28日

・大阪教区、前田教区長名で同様の大阪、高松両教区の統合の”お知らせ”

(2023.8.17 カトリック・あい)

 バチカンが15日付けで発表した大阪、高松両教区の”統合”について、大阪教区も16日の日付の教区ホームページで、前田大司教名のお知らせを、教区の司祭、信徒たち関係者に伝えた。高松教区と同様、バチカンの公式発表で「incorporazione (合併あるいは統合の意味)」としているのに対して、「新しい教区の設立であり… 合併ではありません」と、「合併」と見なされることに、わざわざ断りを入れている。

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台風7 号の通過により多くの教会では、聖母被昇天のお祝いを中止にされたことと思います。皆様のご家庭におかれても被害が出ていないことをお祈りしています。
さて、8 月15 日バチカン時間12 時(日本時間19 時)に、教皇庁は以下の発表をいたしました。

教皇フランシスコは、大阪と高松の両教区を統合し、新たに大阪高松大司教区を設立した。
また、教皇フランシスコは、現大阪大司教区大司教のトマス・アクィナス前田万葉枢機卿を新大司教区の初代大司教に任命した。

この度の発表は、新しい教区の設立であり、既存の大阪大司教区と高松司教区との合併ではありません。これから、それぞれの教区の担当者によって意見交換を重ねて、神様が新大司教区に求められていることを識別し、新体制を整えていきます。様々な面でご不安をおかけするかもしれませんが、新しい歩みの中でシノドス的な教会を築いていけるように進んでまいりますので、皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

なお、新大司教区の設立記念ミサや着座に関しては、今後、改めてお知らせいたします。

感謝と祈りのうち

2023年8月17日

・高松教区管理者名で教区の司祭、信徒に”新教区設立、新教区長任命”のお知らせ

(2023.8.17 カトリック・あい)

 バチカンが16日発表した大阪、高松教区の”統合”について、高松教区は17日、教区ホームページで、教区の司祭、信徒などに対する教区管理者名の以下のような通知を掲載した。

 その中で、今回の発表は「新しい教区の設立であり、既存の大阪大司教区と高松司教区との合併ではありません」と強調している。バチカンの公式発表では「incorporazione(統合、合併)」によって大阪・高松大司教区が新たに作られた、とされており、一般常識的には誰が見ても「合併」、むしろ大司教区による小規模な教区の「吸収合併」以外の何物でもない。

 「新しい教区」というような抽象的な美辞麗句よりも、教区信徒、司祭にとって重要なのは、合併、統合をどのように進めていくのか、合併、統合後の四国の教会はどのように運営されていくのか、自分たちはどう受け止め、対応すればいいのか、など具体的な説明だろう。今回の発表は、教皇が突然、決定したものではなく、かなりの期間にわたって、バチカンと関係教区責任者と話し合いがされてきた結果だと言われている。そうであれば、教区関係者にそうした説明をする準備の時間はあったはずではなかろうか。

 なお、大阪教区のホームページは、17日午前10時現在、7月31日更新のままであり、教区合併に関する「おしらせ」は掲載されていない。

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カトリック高松司教区の皆様

カトリック高松司教区 教区管理者 イスマエル.ゴンザレス神父

新教区設立と新教区長任命のお知らせ

主の平和

 かねてより新しい司教さまの任命に向けてお祈りをお願いしておりましたが、 このたび、8月15日バチカン時間12時(日本時間19時)に、教皇庁は以下の発表をいたしました。

 教皇フランシスコは、大阪と高松の両教区を統合し、新たに大阪高松大司教区を設立した。また、教皇フランシスコは、現大阪大司教区大司教のトマス アクイナス前田万葉枢機卿を新大司教区の初代大司教に任命した。

 この度の発表は、新しい教区の設立であり、既存の大阪大司教区と高松司教区との合併ではありません。これから、それぞれの教区の担当者によって意見交換を重ねて、神さまが新大司教区に求められていることを識別し、新体制を整えていきます。私たちの祈りに応えて示された神さまのみ旨に信頼し、み旨を理解し、 み旨のより豊かな実現に向け、教区一丸となって努力しましよう。予想外のことであり、様々な面でご不安やお手間をおかけするかもしれませんが、皆さまのさらなるお祈りとご理解•ご協力をよろしくお願いいたします。

 なお、新大司教区の設立記念ミサや着座に関しては、今後、改めてお知らせいたします。感謝と祈りのうちに

2023年8月17日

(特集)教皇、大阪大司教区と高松教区を合併し「大阪・高松大司教区」にー教区の再編・統合含む抜本改革が司教団の緊急課題(8月25日追加)

(2023.8.16 カトリック・あい=17、19、25日に追加、修正)

 教皇フランシスコはローマ時間8月15日正午、大阪教区と高松教区を合併し、新たに大阪高松大司教区を設立、その初代大司教として前田万葉・枢機卿を任命することを発表された。大阪高松大司教区の設立式と前田・新大司教着座式は10月9日、大阪カテドラル聖マリア大聖堂で行われる。新宗教法人としての開始日は、今後関係省庁と協議の上進めていく予定という。なお、これまでのところ、大阪教区の補佐司教である酒井敏弘師の扱いは明らかにされていない。

 日本の教会は、戦後になって1947年に琉球使徒座管理区(後に那覇教区)、1961年に宮崎知牧区改編される形で大分教区が誕生したのを除くと、第二次世界大戦前の1936年までに出来た教区体制が事実上、この90年以上にわたる教会内外の大きな変化の中で、変わらずに続いてきた。教区が削減されるのは、日本の教会が始まって以来、初めてである。

 今、日本の教会は、信徒の教会離れ、信徒数の減少・高齢化、司祭の減少・高齢化などが深刻化しており、希望ある将来につなげるための、教区の再編・統合も含めて、抜本的な体制改革が緊急の課題となっている。司教団が、今回の大阪、高松の教区合併を”一過性の現象”に終わらせず、この課題に真剣に取り組む契機とすることが求められる。

 この「カトリック・あい」の記事の閲覧件数は、16日に掲載を始めてわずか3日足らずで200件を大きく上回る、教皇訪日以来の記録的水準に達しており、日本全国の教会関係者がこの問題に強い関心を持っていることを示している。それはとりもなおさず、日本の司教団が教区の再編を含めた教会の抜本改革にどのように対応していくかに、多くの信者が注目していることの証左でもある。

 なお、この合併について、高松教区のホームページには17日になって、教区管理者(司教は空位)の名前で、教区の司祭、信徒あてに「お知らせ」が掲載された。大阪教区の公式ホームページにも「16日」の日付けで同様の内容が前田大司教名で掲載されたのが確認された。

 ただその内容は、バチカンの公式発表の短い、事実のみを伝えることに限られている。バチカンの15日付けのバチカンの公式発表を、直接関係する小教区、司祭、信徒たちに真っ先に、しかも今後の対応も含めて具体的に、ていねいに、理解を得られるよう伝えるべきだと思われるが、そうなっていないようだ。ここにも、教皇フランシスコが繰り返し訴えておられる「Synodal(共に歩む、共働的)教会」の理念からほど遠い高位聖職者の意識が見て取れ、日本の教会改革にはまず、高位聖職者の意識改革から始めねばならないことを、図らずも示している、と言えるだろう。

 

*信徒数4位の大阪教区が最少の高松教区を”吸収合併”したが、日本にはまだ教区が15も

 

 事実上”吸収合併”されることになった高松教区は、1904年、徳島、香川、愛媛、高知の四国4県は、大阪教区から分離されて四国使徒座知牧区となったのが始まりで119年の歴史を持つ。1949年に知牧区長館が徳島市から高松市に移され、1963年9月に司教区に昇格して高松教区となった。

 カトリック中央協議会が公表している「カトリック教会現勢」の最新版(2022年)によると、大阪教区の信徒数は東京教区、長崎教区、横浜教区に次いで第4位の4万6817人、司祭数は東京教区に次いで2位の148人。高松教区の信徒数は全国16教区の中で最も少ない4208人、日本最大の小教区、東京・麹町教会の4分の1にも満たず、司祭数は13位の34人。合併後の大阪・高松教区ではそれぞれ、5万1015人、182人となるが、順位に変化はない。

 なお大阪教区は大阪、兵庫、和歌山の3府県、高松教区は徳島、香川、愛媛、高知の四国4県を管轄しており、合併により新教区の管轄は7府県、、管轄都道府県数では日本最大の教区となる。

 また大阪教区は教区長の前田大司教・枢機卿と酒井補佐司教で、高松教区は教区長の諏訪司教が2022年9月に定年で退任し、空位。このため、司教職に関係する人事は、前田・大阪大司教がそのまま、大阪・高松大司教となる以外に変わりはない。

 今回の合併で、日本のカトリック教会の教区数は16教区(3大司教区・13教区)から15教区(3大司教区・12教区)に一つ減る。

 

*15の教区の中に、東京・麹町教会の信徒数よりも少ない教区が7つもある

 ちなみに、日本の小教区で信徒数が最も多いのは東京教区の麹町教会で1万7152人(2019年12月末現在。次が長崎教区の浦上教会で約7000人と言われている=公表データが見つからない)。麹町教会一つよりも信徒数の少ない教区は、札幌(1万4958人)、仙台(9196人)、鹿児島(8420人)、新潟(6676人)、那覇(6132人)、大分(5607人)、高松(4208人)と7つ。今回の合併で、一つ減るが、麹町教会よりも信徒数が少ない教区が高松を除いでも6つもある現状は、信徒数も、司祭の数も減り続ける中で考え直す必要があるようだ。

 

*ミサ参加者、受洗者、司祭数など激減の中で、教区によってばらつきも

 

 先ごろカトリック中央協議会が公表した「カトリック教会現勢」を10年前に公表された「現勢」と合わせて算定した結果は、別掲しているが、ここで改めて説明すると、2022 年 12 月末現在の日本の聖職者、一般信徒などを合わせた「信者数」は」42 万 2450 人で、10 年前の 2012 年の 44 万 4441人より 2万1991人、 4.95%減った。日本の総人口に占める割合は2022年が 0.335 %、2012 年は 0.351 %で、毎年、小幅ながら日本の総人口の減少を上回る減り方を続けている。またミサ参加者は、日本でコロナ大感染が始まる直前の2019年と比べて、主日、復活祭、クリスマスともに4割前後も激減しており、信者減少に対する長期的な取り組みと共に、コロナ禍で激減したミサ参加者、教会を離れた信徒を、どのように回復するのかも、教会にとって大きな課題となっていることが明瞭に浮かび上がっている。

 全国で16ある教区別に見ると、信徒数が最も多いのは東京で9万2001人、これに長崎の5万6826人、横浜の5万2929人、大阪の4万6817人が続き、最も少ないのは高松の4208人など、1万人未満が大分、那覇、新潟、仙台、鹿児島をあわせて6教区もある。2012年から10年間で減り方が最も大きいのは仙台の11.04%で、これに札幌9.70%、大阪9.20%、鹿児島8.22%、それに長崎の7.80%が次いでおり、減少数では長崎が4808人と最も多くなっている。

 ちなみに東京は2.38%の減少にとどまり、那覇とさいたまは、それぞれ4.16%、2.43%の増加。特に後者は、外国人の顕著な流入が影響していると見られる。

 

*”中心教会”の一つであるはずの長崎教区が…

 

 聖職者・修道者・神学生の減り方を教区別に見ると、大幅な減少率の中で、教区によるばらつきがみられ、最も大幅な減少率を示したのは仙台で44.03%、ついで、新潟、福岡、鹿児島、高松が30%を超えている。大きく落ち込むなかでもばらつきがみられるのは、2022年までの十年間の主日のミサ参加者の減り方で、東京が51.92%と半減しているほか、札幌が48.15%、横浜が46.17%、鹿児島が41.87%、長崎が41.58%を4割を上回る減少。対して、大阪は12.17%の減少にとどまっている。

 年間の受洗者数を見ると、2022年の全国総数4089人のうち、トップは東京の996人、ついで横浜527人、名古屋503人、大阪419人で、信徒数で2位の長崎は237人で東京の4分の1、横浜、名古屋の半分以下だ。2012年に比べた受洗者の減り方もっとも大幅なのは鹿児島で64%、次いで新潟60.52%、長崎が52.88%で三番目に大きい落ち込み。対して、広島2.75%、名古屋2.90%、さいたま3.85%と小幅の落ち込みにとどまる教区もある。

 以上の教区別の動きを見ると、特に日本のカトリック教会の中心教区の一つとされてきた長崎が、信徒数の減少、主日のミサ参加者の減少、新規受洗者の減少率がそろって大幅になっているのが目立つ。その原因として考えられることについて、ここでは明らかにすることは避けるが、当事者も含めて心当たりの方も少なくないだろう。一言で言えば、信頼回復の努力、体制の見直しも含めた抜本的な教会改革、その前提として高位聖職者の意識改革が必要、ということではなかろうか。

 

*戦前、20年余りの間に11の教区が新たに作られたが、戦後78年で減る教区はただ一つ

 日本の現在のカトリック教会は1846年(弘化3年)に日本代牧区が設置されたことに始まり、1876年(明治9年)に、近畿、中国、四国、九州を管轄する「南緯代理区」と、中部、関東、東北、北海道を管轄する「北緯代理区」の”2教区体制”に分けられ、前者は1888年に「南緯代理区」(九州管轄、1891年に長崎教区に名称変更)と「中部代理区」(近畿、中国、四国管轄、1891年に「中部教区」)に、後者は1891年に「東京大司教区」(関東7県、中部9県管轄)と「函館教区」(北海道、東北管轄)の”4教区体制”となった。

 1900年代に入って、1904年に中部教区から「四国知牧区」が分かれた。その後、函館教区から1912年に「新潟知牧区」、1915年に「札幌知牧区」が分かれ、1923年に中部教区から「広島代理区」が分かれ、それより一年前の1922年に東京教区から「名古屋知牧区」が分かれ、さらに長崎教区から1927年に「鹿児島教区」と「福岡教区」が分かれ、1935年に「宮崎知牧区」(後に再編されて「大分教区」に)が分かれた。

 1937年に中部教区から「京都知牧区」が、東京教区から「横浜教区」が、1939年にはさらに、横浜教区から「浦和知牧区(現在のさいたま教区)」が分かれた。1936年に函館から仙台に函館教区の司教座が移され、事実上の「仙台教区」が生まれるといった具合に、第二次世界大戦前の20年余りの間に異常とも言える速さで11教区が新たに誕生した。

 戦後になって、1947年に琉球使徒座管理区(後に「那覇教区」)、1961年に長崎教区から「大分教区」が分かれて誕生したが、現在の教区の体制は、戦前、1936年までに事実上、出来上がっていたわけで、逆に、大分教区誕生以来、教会内外の環境激変の中で、60年以上も、新たな再編統合に全く手を付けてこなかったことが奇異に感じられる。

 

*半世紀前、教会改革の目玉、”首都圏教区”構想が潰されたのは…

 今から半世紀前、第二バチカン公会議での、世界に開かれ、共に歩む教会を目指す改革の方針決定を受けて、日本の司教団の中にも積極的な取り組みの動きがあり、具体的には、東京教区と横浜、さいたま教区を再編・合併して「首都圏教区」とし、日本の教会改革の推進力とするアイデアが浮上した。だが、多くの司教たちの反対で日の目を見ることができなかった。

 「再編統合の動きが、自分たちの関係する教区にも広がり、教区が削減、教区長である司教ポストも削減されるのは困る、自分の任期中にそのようなことがあっては困る」というのが、反対者たちの”本音”との見方もあったが、それが真実とすれば、誠に低レベル、目先の自分の利害しか考えない、聖職者にあるまじき対応だったといえよう。このようなことが、繰り返されないよう願いたい。

 

************

 なお、日本時間8月16日午前9時過ぎにバチカンのホームページに掲載された内容、公式英語訳は以下の通り。上記の信徒数などに若干の違いがあるが、これは定義の違い、日本からの報告の時期の違いなどによるものと思われるが、大きな差はない。

Erection of the metropolitan archdiocese of Osaka-Takamatsu, Japan, and appointment of first metropolitan archbishop

The Holy Father has erected the new metropolitan archdiocese of Osaka-Takamatsu, Japan, by incorporating the archdiocese of Osaka and the diocese of Takamatsu.

The Holy Father has appointed His Eminence Cardinal Thomas Aquino Manyo Maeda, until now archbishop of the archdiocese of Osaka, as first metropolitan archbishop of the new archdiocese of Osaka-Takamatsu.

Curriculum Vitae

His Eminence Thomas Aquino Manyo Maeda was born on 3 March 1949 in Tsuwasaki, Kami Goto, Prefecture of Nagasaki, in the archdiocese of the same name. After completing his studies at the Nanzan High School of Nagasaki, he entered the Saint Sulpice Major Seminary of Fukuoka.

He was ordained a priest on 19 March 1975 and incardinated in the archdiocese of Nagasaki.

On 13 June 2011 he was appointed bishop of the diocese of Hiroshima, and received episcopal consecration on the following 23 September. Since 2014 he has served as metropolitan archbishop of Osaka, and was created a cardinal on 28 June 2018, of the Title of San Pudenziana.

Statistical data

Osaka Takamatsu Osaka-Takamatsu
Area (km sq) 15,031 18,804 33,835
Inhabitants 15,307,909 3,766,866 19,074,755
Catholics 47,170 (0.31%) 4,243 (0.11%) 51,413 (0.27%)
Parishes 77 28 105
Diocesan priests 48 19 67
Religious priests 90 16 106
Permanent deacons 1 3 4
Major seminarians 3 0 3
Men religious 17 1 18
Women religious 543 49 592
Educational institutes 91 27 118
Charitable institutes 89 24 113

 

2023年8月16日

(特集)教皇、大阪大司教区と高松教区を合併し「大阪・高松大司教区」にー教区の再編・統合含む抜本改革が司教団の緊急課題

(2023.8.16 カトリック・あい)

 教皇フランシスコはローマ時間8月15日正午、大阪教区と高松教区を合併し、新たに大阪・高松大司教区を設立、その初代大司教として前田万葉枢機卿を任命することを発表された。新しい教区の日本語における正式名称は、後日、大阪教区より発表される予定。

 日本の教会は、戦後になって1947年に琉球使徒座管理区(後に那覇教区)、1961年に宮崎知牧区改編される形で大分教区が誕生したのを除くと、第二次世界大戦前の1936年までに出来た教区体制が事実上、この90年以上にわたる教会内外の大きな変化の中で、変わらずに続いてきた。

 今、日本の教会は、信徒の教会離れ、信徒数の減少・高齢化、司祭の減少・高齢化などが深刻化しており、希望ある将来につなげるための、教区の再編・統合も含めて、抜本的な体制改革が緊急の課題となっている。司教団が、今回の大阪、高松の教区合併を”一過性の現象”に終わらせず、この課題に真剣に取り組む契機とすることが求められる。

 なお、16日午前10時時点で、この合併について、大阪、高松いずれの教区の公式ホームページには一言も掲載されておらず、まず情報が提供されるべき小教区、信徒たちには知らされていないようだ。ここにも、教皇フランシスコが繰り返し訴えておられる「Synodal(共に歩む、共働的)教会」の理念からかけ離れた高位聖職者の意識が見て取れ、日本の教会改革にはまず、高位聖職者の意識改革から始めねばならないことを、図らずも示しているようだ。

 

*信徒数4位の大阪教区が最少の高松教区を”吸収合併”したが、日本にはまだ15の教区

 

 事実上”吸収合併”されることになった高松教区は、1904年、徳島、香川、愛媛、高知の四国4県は、大阪教区から分離されて四国使徒座知牧区となったのが始まりで119年の歴史を持つ。1949年に知牧区長館が徳島市から高松市に移され、1963年9月に司教区に昇格して高松教区となった。

 カトリック中央協議会が公表している「カトリック教会現勢」の最新版(2022年)によると、大阪教区の信徒数は東京教区、長崎教区、横浜教区に次いで第4位の4万6817人、司祭数は東京教区に次いで2位の148人。高松教区の信徒数は全国16教区の中で最も少ない4208人、日本最大の小教区、東京・麹町教会の4分の1にも満たず、司祭数は13位の34人。合併後の大阪・高松教区ではそれぞれ、5万1015人、182人となるが、順位に変化はない。

 なお大阪教区は大阪、兵庫、和歌山の3府県、高松教区は徳島、香川、愛媛、高知の四国4県を管轄しており、合併により新教区の管轄は7府県、、管轄都道府県数では日本最大の教区となる。

 また大阪教区は教区長の前田大司教・枢機卿と酒井補佐司教で、高松教区は教区長の諏訪司教が2022年9月に定年で退任し、空位。このため、司教職に関係する人事は、前田・大阪大司教がそのまま、大阪・高松大司教となる以外に変わりはない。

 今回の合併で、日本のカトリック教会の教区数は16教区(3大司教区・13教区)から15教区(3大司教区・12教区)に一つ減る。

 

*東京・麹町教会の信徒数よりも少ない教区が7つもある

 ちなみに、日本の小教区で信徒数が最も多いのは東京教区の麹町教会で1万7152人(2019年12月末現在。次が長崎教区の浦上教会で約7000人と言われている=公表データが見つからない)。麹町教会一つよりも信徒数の少ない教区は、札幌(1万4958人)、仙台(9196人)、鹿児島(8420人)、新潟(6676人)、那覇(6132人)、大分(5607人)、高松(4208人)と7つ。今回の合併で、一つ減るが、麹町教会よりも信徒数が少ない教区が高松を除いでも6つもある現状は、信徒数も、司祭の数も減り続ける中で考え直す必要があるようだ。

 

*ミサ参加者、受洗者、司祭数など激減の中で、教区によってばらつきも

 

 先ごろカトリック中央協議会が公表した「カトリック教会現勢」を10年前に公表された「現勢」と合わせて算定した結果は、別掲しているが、ここで改めて説明すると、2022 年 12 月末現在の日本の聖職者、一般信徒などを合わせた「信者数」は」42 万 2450 人で、10 年前の 2012 年の 44 万 4441人より 2万1991人、 4.95%減った。日本の総人口に占める割合は2022年が 0.335 %、2012 年は 0.351 %で、毎年、小幅ながら日本の総人口の減少を上回る減り方を続けている。またミサ参加者は、日本でコロナ大感染が始まる直前の2019年と比べて、主日、復活祭、クリスマスともに4割前後も激減しており、信者減少に対する長期的な取り組みと共に、コロナ禍で激減したミサ参加者、教会を離れた信徒を、どのように回復するのかも、教会にとって大きな課題となっていることが明瞭に浮かび上がっている。

 全国で16ある教区別に見ると、信徒数が最も多いのは東京で9万2001人、これに長崎の5万6826人、横浜の5万2929人、大阪の4万6817人が続き、最も少ないのは高松の4208人など、1万人未満が大分、那覇、新潟、仙台、鹿児島をあわせて6教区もある。2012年から10年間で減り方が最も大きいのは仙台の11.04%で、これに札幌9.70%、大阪9.20%、鹿児島8.22%、それに長崎の7.80%が次いでおり、減少数では長崎が4808人と最も多くなっている。

 ちなみに東京は2.38%の減少にとどまり、那覇とさいたまは、それぞれ4.16%、2.43%の増加。特に後者は、外国人の顕著な流入が影響していると見られる。

 

*”中心教会”の一つであるはずの長崎教区が…

 

 聖職者・修道者・神学生の減り方を教区別に見ると、大幅な減少率の中で、教区によるばらつきがみられ、最も大幅な減少率を示したのは仙台で44.03%、ついで、新潟、福岡、鹿児島、高松が30%を超えている。大きく落ち込むなかでもばらつきがみられるのは、2022年までの十年間の主日のミサ参加者の減り方で、東京が51.92%と半減しているほか、札幌が48.15%、横浜が46.17%、鹿児島が41.87%、長崎が41.58%を4割を上回る減少。対して、大阪は12.17%の減少にとどまっている。

 年間の受洗者数を見ると、2022年の全国総数4089人のうち、トップは東京の996人、ついで横浜527人、名古屋503人、大阪419人で、信徒数で2位の長崎は237人にとどまっている。2012年に比べた受洗者の減り方もっとも大幅なのは鹿児島で64%、次いで新潟60.52%、長崎が52.88%で三番目に大きい落ち込み。対して、広島2.75%、名古屋2.90%、さいたま3.85%と小幅の落ち込みにとどまる教区もある。

 以上の教区別の動きを見ると、特に日本のカトリック教会の中心教区の一つとされてきた長崎が、信徒数の減少、主日のミサ参加者の減少、新規受洗者の減少率がそろって大幅になっているのが目立つ。その原因として考えられることについて、ここでは明らかにすることは避けるが、当事者も含めて心当たりの方も少なくないだろう。一言で言えば、信頼回復の努力、体制の見直しも含めた抜本的な教会改革、その前提として高位聖職者の意識改革が必要、ということではなかろうか。

 

*戦前、20年余りの間に11の教区が新たに作られたが、戦後78年で減る教区はただ一つ

 日本の現在のカトリック教会は1846年(弘化3年)に日本代牧区が設置されたことに始まり、1876年(明治9年)に、近畿、中国、四国、九州を管轄する「南緯代理区」と、中部、関東、東北、北海道を管轄する「北緯代理区」の”2教区体制”に分けられ、前者は1888年に「南緯代理区」(九州管轄、1891年に長崎教区に名称変更)と「中部代理区」(近畿、中国、四国管轄、1891年に「中部教区」)に、後者は1891年に「東京大司教区」(関東7県、中部9県管轄)と「函館教区」(北海道、東北管轄)の”4教区体制”となった。

 1900年代に入って、1904年に中部教区から「四国知牧区」が分かれた。その後、函館教区から1912年に「新潟知牧区」、1915年に「札幌知牧区」が分かれ、1923年に中部教区から「広島代理区」が分かれ、それより一年前の1922年に東京教区から「名古屋知牧区」が分かれ、さらに長崎教区から1927年に「鹿児島教区」と「福岡教区」が分かれ、1935年に「宮崎知牧区」(後に再編されて「大分教区」に)が分かれた。1937年に中部教区から「京都知牧区」が、東京教区から「横浜教区」が分かれ、1939年にはさらに、横浜教区から「浦和知牧区(現在のさいたま教区)」が分かれた。1936年に函館から仙台に司教座が移され、事実上の「仙台教区」が生まれるといった具合に、20年余りの間に11教区というm「異常ともいえる速さで速い分離・独立が繰り返された。

 戦後になって、1947年に琉球使徒座管理区(後に「那覇教区」)、1961年に長崎教区から「大分教区」が分かれて誕生したが、現在の教区の体制は、戦前、1936年までに事実上、出来上がっていたわけで、逆に、大分教区誕生以来、教会内外の環境激変の中で、60年以上も、新たな再編統合に全く手を付けてこなかったことが奇異に感じられる。

*教会改革の目玉、”首都圏教区”構想をつぶしたのは誰か

 ちなみに、第二バチカン公会議での、世界に開かれ、共に歩む教会を目指す改革の方針決定を受けて、今から半世紀前、日本の司教団の中にも積極的な取り組みの動きがあり、具体的には、東京教区と横浜教区を再編・合併して「首都圏教区」とし、日本の教会改革の推進力とするアイデアが浮上したが、多くの司教たちの反対で日の目を見ることができなかった。

 再編統合の動きが、自分たちの関係する教区にも広がり、教区が削減、教区長である司教ポストも削減されるのは困る、自分の任期中にそのようなことがあっては困る、というのが、反対者たちの”本音”との見方もあったが、それが真実とすれば、誠に低レベル、目先の自分の利害しか考えない、聖職者にあるまじき対応だったといえよう。このようなことが、繰り返されないよう願いたい。

 

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 なお、日本時間8月16日午前9時過ぎにバチカンのホームページに掲載された内容、公式英語訳は以下の通り。上記の信徒数などに若干の違いがあるが、これは定義の違い、日本からの報告の時期の違いなどによるものと思われるが、大きな差はない。

Erection of the metropolitan archdiocese of Osaka-Takamatsu, Japan, and appointment of first metropolitan archbishop

The Holy Father has erected the new metropolitan archdiocese of Osaka-Takamatsu, Japan, by incorporating the archdiocese of Osaka and the diocese of Takamatsu.

The Holy Father has appointed His Eminence Cardinal Thomas Aquino Manyo Maeda, until now archbishop of the archdiocese of Osaka, as first metropolitan archbishop of the new archdiocese of Osaka-Takamatsu.

Curriculum Vitae

His Eminence Thomas Aquino Manyo Maeda was born on 3 March 1949 in Tsuwasaki, Kami Goto, Prefecture of Nagasaki, in the archdiocese of the same name. After completing his studies at the Nanzan High School of Nagasaki, he entered the Saint Sulpice Major Seminary of Fukuoka.

He was ordained a priest on 19 March 1975 and incardinated in the archdiocese of Nagasaki.

On 13 June 2011 he was appointed bishop of the diocese of Hiroshima, and received episcopal consecration on the following 23 September. Since 2014 he has served as metropolitan archbishop of Osaka, and was created a cardinal on 28 June 2018, of the Title of San Pudenziana.

Statistical data

Osaka Takamatsu Osaka-Takamatsu
Area (km sq) 15,031 18,804 33,835
Inhabitants 15,307,909 3,766,866 19,074,755
Catholics 47,170 (0.31%) 4,243 (0.11%) 51,413 (0.27%)
Parishes 77 28 105
Diocesan priests 48 19 67
Religious priests 90 16 106
Permanent deacons 1 3 4
Major seminarians 3 0 3
Men religious 17 1 18
Women religious 543 49 592
Educational institutes 91 27 118
Charitable institutes 89 24 113

 

2023年8月16日

・「皆に開かれた場となったいたのか」-WYDリスボン大会に参加したアフリカ系ブラジル人の若者たちが、差別的言動を受けたと訴え

Educafro activists attenting World Youth Day in Lisbon, Portugal, Aug. 1-6, 2023. (Credit: Photo courtesy Educafro.)

(2023.8.9 Crux  Contributor  Eduardo Campos Lima)

Black Brazilian group reports racist incidents during World Youth Day

 サンパウロ 発– 8月1日から6日までポルトガルのリスボンで開かれた世界青年の日(WYD)大会に(ポルトガルの植民地にされていた)ブラジルから参加した黒人のグループが帰国後の9日、大会に参加していた若者たちから人種差別的な攻撃を受けことを明らかにした。

 彼らが8月4日に撮影したビデオには、ブラジルの国旗を掲げたマルコリーノ・ビエイラ氏とすれ違う際に、白人の若者たちが猿の鳴き声を真似して、彼を揶揄している様子が映っている。

 ビエイラ氏は語る。「町の中を私たちのグループと歩いていたのですが、道に迷い、グループからはぐれてしまった。気が付くと、白人の若者たちに囲まれており、私を見て笑い、猿の鳴き声を真似したのです。スペインでの試合中に様々な人種差別的攻撃を受けたブラジルの黒人サッカー選手、ビニ・ジュニアとミリトンの名前を叫ぶ人もいました」。

 「私はポルトガル語以外の言語を話せないので、手振りで、彼らの振る舞いが何を意味するのか尋ねようとしました。すると、 彼らはすぐに私を取り囲みました。身の危険を感じ、近くの店に逃げ込んだのです」。 

 「このことを私は警察に届けようとしました。WYDのボランティアに相談しましたが、警察に届けるのを助けようとはしてくれなかった。むしろ、届けるのを思いとどまらせようとしている、と感じました。警察も届を受け付けてくれはしましたが、ビデオのコピーを提出することは求められず、この問題がどのように扱われたのか分からないままです」。

 29歳のビエイラ氏は、ブラジルがポルトガルの植民地だった時代にアフリカから奴隷として連れて来られ、逃亡した人々の共同体の流れをくむ”quilombola community”のメンバー。WTDリスボン大会には、フランシスコ会修道士のデビッド・サントス神父が設立したブラジルでの黒人の教育の権利を求める非政府組織Educafroの活動家たちと参加した。

 両親はカトリック教徒だが、自身はアフリカの伝統宗教を基礎にしたブラジルの民間信仰、Candombleの信奉者だ。リスボン滞在中は、郊外の小教区で受け入れられ、自分の人生と霊性について語ることができた。「ほとんどが、地元の人たちで、私の話を、敬意を持って聴いてくれました。彼らに歓迎されていると感じました」と語るビエイラ氏だが、大会そのものの場では、外国のグループから、たくさんの敵意にさらされた、という。

 ブラジルからの彼のグループは、 quilombolasのメンバーや黒人活動家、性同一障害者などで構成されていたが、メンバーの医師、ギルマー・サントス氏によると、大会初日の1日、グループが欧州の参加者たちに取り囲まれ、『泥棒』と罵声を浴びせられた。「その場所はとても混雑していて、歩くのに苦労していたのですが、突然、『お前たちの中にスリがいる』と叫んだのです。集団暴行を受けるのでは、と不安を感じました」。性同一障害の友人も、大会中、毎日のように嫌がらせを受けていた。「ある時、若い男性のグループがそばに来て、『お前は男だ。ここには居場所がないぞ』と言って、暴力を振るいそうになり、逃げざるを得なかった」という。 
 

 5日に、リスボンのテージョ公園で教皇フランシスコが主宰された「世界青年の日(WYD)」大会の夕の祈りの後、徹夜で過ごすことになった時にも問題が起きた。

  広場はさまざまな各グループごとに区画が割り当てられ、その区画にいることが求められたが、会場は多くの参加者で非常に混雑しており、彼らのグループは一つにまとまれず、バラバラになってしまった。

 「それで、私たちが欧州から来た若者たちのグループの近くで、横たわっていると、彼らは露骨に不快感を示し、私たちが割り当てられた場所はどこなのか聞いてきました。まわりには他の地域から来た人たちもたくさんいましたが、私たちだけが、立ち退くよう求められた。彼らはWYDのボランティアを呼び、移動するよう強制され、割り当てられた区画がとても遠かったので、やむなく、公園近くの歩道で寝ることにした」という。

  ビエイラ氏はリスボン大会を振り返って、「私たちは、WYD 大会に参加した全員と共に、自分たちの大会の主人公になれると期待して参加しました。でも、大会は、白人主体のイベントでした。カトリック教会は、人種差別に対する教皇フランシスコの思いを受け止め、それを実行する必要があります」と述べた。

 また、グループのメンバーたちがこのような、様々な不快の経験をしたことについて、サントス神父は「カトリック教会が、すべての人を歓迎したいのであれば、多くの内部変革が必要です。福音宣教とは、世界中のあらゆる差別と闘うこと、と理解すべきだ。(ブラジルについて言えば)カトリック校に入学する際の民族差別をなくすことや、黒人や先住民の司教や司祭を増やすことなど、広範な行動が求められます。初聖体や堅信の秘跡の際に、若い信徒たちに差別はいけないことを教えることも必要です」と述べたうえで、WYD大会で人種差別的な言動をした若者たちに責任を問らせる措置を求め、「彼らの身元を特定し、侮辱したブラジルの若者たちに謝罪させ、司教も人種差別を罪として非難する書簡を出す必要があります」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

2023年8月12日

・カトリック長崎教区は9日の平和祈願祭を台風接近で中止、浦上天主堂でのミサは9日午前11時過ぎから

(2023.8.8 カトリック長崎教区)

平和祈願祭中止のお知らせ

 台風6号の接近に伴い、参列者の安全確保のため、2023年8月9日(水)18時開催予定であった長崎教区主催「平和祈願祭」(平和祈願ミサおよびたいまつ行列)は中止いたします。

 なお、浦上教会では、8月9日(水)11時02分から、原爆により亡くなられた方々の追悼に合わせて、平和祈願の意向によるミサが行われます。このミサには、駐日バチカン大使のボッカルディ大司教様、そしてアメリカ合衆国から来られているニューメキシコ州のサンタフェ大司教区のウェスタ―大司教様、並びにワシントン州のシアトル大司教区のエチエンヌ大司教様も共にミサをささげます。

 ミサに参加できない方々におかれましても、原爆や戦争で亡くなられた方々のため、また平和への願いを込めてささげられるミサに心を合わせ、ともに祈っていただければ幸いに存じます。

2023年8月8日 カトリック長崎大司教区 大司教 ペトロ中村倫明

2023年8月9日

・カトリック広島教区の原爆投下8月6日のすべての戦争犠牲者追悼ミサなど行事

8月6日(日)

○ 6:15~ 7:15 宗教者平和の祈り 原爆供養塔前(平和記念公園内): 仏教・神道・キリスト教などの宗教者がともにより集い、原爆犠牲者を思い起こし平和を祈ります。
○ 8:00~ 9:00 原爆・すべての戦争犠牲者追悼ミサ *ライブ配信 *手話通訳付き 世界平和記念聖堂:原爆や戦争で犠牲になられた方々の永遠の安息と地上の平和を祈りましょう。

○ 10:00~ 主日ミサ
○ 11:15~13:15 特別講演 *ライブ配信 *手話通訳付き 世界平和記念聖堂
「忘れられた叫びが聞こえますかー戦火に生きる母子たちを支援してー」兵頭 博さん(ポーランド クラクフ サンスター日本語学校校長):ポーランドでウクライナ避難民を支援されている現場の声を伺い、ZOOMを繋ぎ現地の声を届けていただきます。

〇14:00~16:00 8・6キリスト者平和の祈り
○18:00~ 原爆犠牲者のためのスピリチュアルコンサート  世界平和記念聖堂 REQUIEM(フォーレ作曲)*エリザベト音楽大学同窓会
◆ノートルダム清心中高等学校ボランティアによる聖堂案内  集合場所 大聖堂入口  ①8/5 11:30~12:00 ②8/5 15:00~15:30 ③8/6 9:30~9:30
◆ウクライナ避難民の子供たちの絵画展 2023/7/30~8/6 世界平和記念聖堂

2023年8月6日

・8月1日からWYDリスボン大会-豪、加から若者の大巡礼団が参加

Portuguese pilgrims dance ahead of the World Youth Day celebrations in Lisbon, PortugalPortuguese pilgrims dance ahead of the World Youth Day celebrations in Lisbon, Portugal  (AFP or licensors)

    カナダとオーストラリアからの大勢の若い巡礼者たちが、8月1日から6日までポルトガルの首都リスボンで開かれる「世界青年の日(WYD」大会に向けた旅を開始した。世界各国の教区から参加予定の多くの若者たちも、1週間にわたる総会行事を心待ちにしている。

 オーストラリアからは20日、3000人を超える若者たちが、WYD大会が開かれるポルトガルに向けて出発した。活気に満ちた派遣団の中心になるのは、シドニー、メルボルン両大司教区の若者たちで、それぞれ500人以上が参加。教会関係の国際的な行事への参加規模としては最大級という。この大巡礼団には、18人の司教も参加しており、若者たちの霊的な成長を助け、導く役割を果たそうとしている。

 同国司教協議会の担当委員長を務めるプラウズ大司教は、教皇フランシスコの大会への招きに対する若者たちの熱狂的な反応に喜びを表明。 「聖ヨハネ・パウロ二世がこの素晴らしい大会を始められてから約40年が経過したが、今も世界中の若いカトリック教徒に霊的刺激を与え続けています。新型コロナウイルスの世界的大感染で中止され、2019年以来となる今大会を前に、若者たちの熱気が絶えずに続いているのは心強い」と語った。

  オーストラリアを上回る大巡礼団を準備しているのがカナダだ。同行の司教協議会によると、5000人を超える若者たちが、大会に参加する準備を熱心に進めているという。 WYD大会は 1986 年に始まったが、2002 年にはカナダが主催国となり、聖ヨハネ・パウロ 2 世教皇をトロントに迎えている。

 オンタリオ、ケベックなどの州などの若者を中心とするカナダ代表団は、リスボンでの大会で講演会、祈祷会、礼拝、世界中の才能ある若者を紹介する文化祭など、さまざまな行事に参加する予定。 また、先住民の若者たちにとって、大会参加は、昨年の教皇フランシスコの歴史的なカナダ訪問、カトリック教会関係者による先住民の子弟虐待への謝罪、癒しと和解の後を受ける、特別な意味を持つ。

 今回のWYDリスボン大会は、若い巡礼者の信仰の旅に後々まで影響を与える、重大かつ感動的なイベントになることになる、と期待される。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年7月21日

・ピオ12世の第二次大戦下の対応に焦点―10月にグレゴリアン大学主催の国際学術会議(Crux)

Undated file photo of Pope Pius XII. Pope Francis has ordered the online publication of 170 volumes of its “Jews” files from the recently opened Pope Pius XII archives, the Vatican announced Thursday, June 23, 2022, amid renewed debate about the legacy of its World War II-era pope. (Credit: AP.) 

(2023.7.13   Crux Staff)

   ローマ 発– 教皇ピオ12世とホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺)に関する彼の「沈黙」を巡る論争「Pius Wars」が、新たに公開された資料によって再燃して1年、イエズス会が運営する教皇庁立グレゴリアン大学が主催する大規模な国際学術会議が、10月に開かれることになった。

 この会議は、「教皇ピオ12世に関係する新資料と、ユダヤ人とキリスト教の関係にとってのその意味」と題され、10月9日から11日までローマで開かれる。共催者として、バチカン公文書館のほか、バチカン文化教育省、ユダヤ人との宗教関係委員会も名を連ね、イスラエルと米国の在バチカン大使館や米国の特使も協力者となっている。

 グレゴリアン大学がVaticanNewsを通して発表した資料によると、この会議には歴史学者と神学者の両方が参加し、ホロコースト中の教皇ピオ12世の役割だけでなく、より広範に「複数のレベルでの」カトリックとユダヤ人の関係に焦点を当てる予定という。

その他、会議では、反ユダヤ主義を非難し、カトリックの新時代の到来を告げた第二バチカン公会議の宣言「Nostra Aetate(キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度について)」の取りまとめに貢献した歴史的運動について、最近公開された資料で明らかにされたものすべて検討する予定。参加者名や具体的な議題などの詳細は、9月に明らかにするという。

*教皇フランシスコが命じたピオ12世下の資料公開を機に起きた論争

 

 教皇フランシスコは2020年3月、第二次世界大戦期を含め1939年から1958年まで続いたピオ12世の治世に関する約1600万ページに上る資料を研究者に公開するよう命じていた。

 この新資料に部分的に基づいて、おそらく19世紀と20世紀のイタリアの歴史に関する米国の第一人者とされているブラウン大学の歴史学者、デイビッド・ケルツァー教授は、著書『戦争中の教皇』の中で、1939年に教皇に選出された直後のピオ12世とアドルフ・ヒトラーの間で、これまで知られていなかった交渉があったことを明らかにした。

 著書の中で教授は、この交渉は、「ナチス支配地域におけるバチカンとカトリック教会の制度上の利益」を守るのと引き換えに、「ヒトラーやナチスに対する公の非難を避ける」というピウス12世治世下の”一般的なパターン”の予兆となった、と主張。ピオ12世の擁護者たちがしばしば主張しているように、教皇が舞台裏でユダヤ人の命を救うために働いていたのは事実」と認めつつ、「一般的にそうした努力は、主にカトリックに改宗したユダヤ人、あるいはカトリック教徒として生まれたユダヤ人に向けられたものだった」と指摘している。

 さらに、ピオ12世のこの問題に対する慎重な姿勢の例として、「1943年10月16日のナチス占領軍によるローマのユダヤ人一斉検挙に対してバチカンがより積極的に反応しなかったこと」を挙げた。

  バチカン当局はこれらの指摘に激しく反応、バチカンの日刊紙新聞「オッセルヴァトーレ・ロマーノ」はイタリアのモリーゼ大学の歴史家で国際関係の専門家のマッテオ・ルイージ・ナポリターノ教授の批判的論考を掲載。ケルツァー教授は、1939年のピウス12世とナチス当局との接触に関する自身の主張する”発見”の重要性を誇張しているが、このようなやり取りは外交書簡の交換は日常的に行われており、秘密ではなかった」と批判し、その内容も「カトリック教会とドイツ政府の1933年協定が、当時のチェコスロバキアやオーストラリアなどナチス・ドイツ占領地域まで対象として含むか否か、という専門的な協定解釈に関する問題だったが、占領地域での信教の自由に関してヒトラーが譲歩を求めたのに対し、ピオ12世は受け入れを拒み、交渉は決裂したのだ」と反論した。

 また、1943年のローマのユダヤ人追放に関しても、ナポリターノ教授は「ケルツァー教授の指摘は事実と違う」と批判。ケルツァー教授が著書で「ピオ12世はユダヤ人追放の三日後に駐バチカン米国大使と会見したが、このことについて何も語らず、懸念の欠如を示していた」と書いているのに対しても、「会見が行われたのは、ユダヤ人が一斉検挙された2日前だった」と主張した。

 *2020年時点でのバチカンの「ピオ12世擁護」は、教皇フランシスコの「ウクライナ問題中立姿勢」への批判対策?

 おそらく偶然ではないだろうが、ケルツァー教授の著書が出版されたのとほぼ同じ時期、2020年にバチカンは資料の一部を研究者が利用できるようにデジタル版にして公開した。内容は、スペインのあるユダヤ人難民がピオ12世に訴え、 強制収容所から脱出できるように助けを受け、母親のいる米国に渡り、化学者としてのキャリアを続けることができた、というものだった。

 バチカン関係筋の中には、バチカンがピオ12世を批判から守ることに異常に積極的な姿勢を示したのは、ウクライナ危機に対して、侵略者(この場合はロシア)に公の場で強い非難を控え、舞台裏の人道的取り組みを好む教皇フランシスコの外交的中立を維持する姿勢に非難の声が上がっていた時期と符合していた、と指摘する声もあった。言い換えれば、関係筋の中に、「ピオ12世を擁護することで、間接的にフランシスコを擁護している」との見方だ。

  10月の国際学術会議の発表資料は、会議が「Pius Wars」の泥沼にはまるのを避ける努力を示唆しているが、(ピオ12世の第二次大戦中の対応をめぐって)緊張が表面化するのはおそらく避けられないだろう。バチカン関係者たちは、戦時下の教皇の中の”栄光の道”を妨げていると認識されている問題に関するヒントを含め、この会議で何が明らかになるか、に細心の注意を払うことになるだろう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年7月13日

(評論)教皇フランシスコの健康を案じるなら、改革派教皇レオ13世の”術後”を振り返ろう(Crux)

 

教皇レオ13世 作: イタリアの写真家(2023.6.8 Crux  Editor  John L. Allen Jr.)

   健康上の問題を抱えた新教皇が選出された。彼は着座の当初から「教皇職に長くとどまるつもりはない」と周囲の人々に語っていた。だが、誰もが予想していたよりも長く教皇職を務め、深刻な手術を必要とする健康上の危機に直面し、多くの人々が終わりが近づいていると考えるようになった。だが、手術が成功し、彼はそれからさらに4年間、つまり米国の大統領の任期に相当する期間、聖ペトロの座に留まることになる。彼の長寿は驚くべきもので、バチカン内部の関係者たちが「我々は教皇を選んだと思っていたが、実際は“永遠の父”を選んだのだ!」と冗談を言うほどだ…

 この教皇は、ローマのジェメッリ病院での2年ぶり2回目の手術から回復中の教皇フランシスコを指すことになるかも知れない。だが、実際には、レオ13世教皇— 1878 年に選出され、1903 年に 93 歳で亡くなるまで教皇職を務め、聖ペテロ、ピウス 9 世、ヨハネ・パウロ2世に次いで史上 4 番目に長い在任記録を作った教皇—を指しているのだ。(ちなみに、現在、86歳の教皇フランシスコは、120年前にレオ13世が亡くなって以来、在位中の最高齢の教皇となっている。)

 つまり、この「レオ13世の生涯」は、教皇フランシスコの現在の闘病に過度に“関心”を持つ人への“警告”と言えるかもしれない。

 レオ 13 世とフランシスコの類似点は、健康上の難題に直面した際の回復力にとどまらない。2人とも「政治的急進派」ではないが、教皇在任時のカトリック教会の標準から見れば「改革者」、穏健派からは「進歩派」である。

 1891 年に回勅『Rerum Novarum(新しい事柄について)-資本と労働の権利と義務』によって、カトリック教会が社会問題について取り組むことを明確にしたのがレオ 13 世だったことは、よく知られている。また、近代民主主義の台頭と政教分離に対してカトリック教会の位置づけを変えたのも教皇レオ 13 世だった。ピオ9世の下での“絶対的な拒否”から”慎重な開始”へと移行し、それは、1929年のラテラノ協定、そして最終的には信教の自由に関する第2バチカン公会議の宣言『Dignitatis humanae(人間の尊厳)』につながった。

 1899 年の手術成功から 4 年後の教皇職の終わりまでの間に、レオ 13 世が何を達成したかを列挙すると以下のようになる。

 ・1899年、ローマで第1回ラテンアメリカ会議を主宰した。この会議は、ラテンアメリカの現地のさまざまな教会の大陸的な連帯意識を促進する会議であり、これは第2バチカン公会議後にCELAM(ラテンアメリカ司教評議会)の創設で開花した。
・イエスの聖心への人類の奉献に関する回勅『Annum Sacrum 』を公布した。カトリックの精神性の特徴となっている「初金(月の最初の金曜日)の信心」を促進した。
ジャン=バティスト・ド・ラ・サールを列聖した。ラ・サールは近代教育の先駆者。当時、西欧では上流階級の子女だけが家庭教師からラテン語による教育をうけるのが一般的だったが、彼は、平民の子供を集め、日常用語であるフランス語で教育を行う、現代の学校教育のシステムに通じる革新的な教育法を実践した。レオ13世は、このような教育法を危険視した伝統主義者たちからの強い抵抗を押し切り、彼を列聖した。

 ・”アメリカ主義”に警告を発した。同主義は、欧州の一部のカトリック思想家が 19 世紀後半の米国で指摘した個人主義と組合教会主義(独立自治の原則に立ち,上からの支配を否定する教会を肯定する主義)を基礎にし、異端と見なされた思想。その中身の多くは作り話だったが、それが元で起きた論争は、バチカンと普遍教会とつながったアメリカ・カトリックを思い起こさせた。

 ・1899年から1903年の間に32人の新しい枢機卿を任命し、教皇選挙権を持つ枢機卿の過半数を確保した。(だが、レオ13世に選ばれた枢機卿たちは、後継の教皇にピオ10世を選び、新教皇は、レオ13世が解放した教会改革のエネルギーを抑圧する「反近代主義」の強硬策に手を付けた)

 ・手術後の1900年の大聖年を主宰し、イタリアにおける民主主義擁護者とその反対者を和解させる回勅を出し、東方カトリック教会内の団結を促進し、録画と録音の両方を活用した最初の教皇となった。 これにより、教皇の「大衆文化の名士」としての伝統が始まった。

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 このようなレオ13世と同じように、教皇フランシスコが手術後に大きな業績を残す可能性は十分にある。8月初めの、「世界青年の日」世界大会出席のためのポルトガル訪問、そしてモンゴル、マルセイユへの訪問がすでに計画されていることに加えて、今年と来年の10月の2回にわたる世界代表司教会議総会を主宰、さらに2025年には大聖年を予定している。

 もちろん、人の命には何の保証もないし、予定外の何かが起こる可能性がある。だが、フランシスコのこれまでの実績を考えると、現時点で彼をこのような予定から除くことが賢明な賭けであるかどうかは疑わしい。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

2023年6月9日