・教皇の“偉大な母なるロシア”の失言にウクライナは遺憾表明、ロシアは謝意!(CRUX)

(2023.8.30  Crux Staff

ローマ –8月25日にサンクトペテルブルクで開かれた「ロシア青年の日大会」にビデオ参加した教皇フランシスコの発言が物議を醸している。教皇は、彼らに向けた講話で、カトリック教徒としての努力を励ます言葉を述べる中で、プーチン大統領が”模範”とするピヨートル大帝を讃えているように受け取られる発言と共に、彼らが「偉大な母なるロシアの後継者だ」と讃えるような表現をした、というものだ。

 ウクライナ政府の報道官は「『偉大な母なるロシアの後継者だ』というような言葉は、帝国主義的プロパガンダに当たる」と反論。同国のギリシャ・カトリック教会の指導者スヴャトスラフ・シェフチュク総大司教も「教皇の言葉が、私たちに大きな悲しみと懸念を引き起こした」と遺憾の意を表明している。

 これに対して、ロシア大統領府のペスコフ報道官はロシアのタス通信とのインタビューで、「ウクライナ戦争に対する、バランスの取れたアプローチだ。教皇はロシアの歴史を知っており、これは非常に前向きなことだ」と称賛。

 ロシア外務省のザハロワ報道官も29日のイタリア通信社アンサとのインタビューで、教皇の言葉に感謝を表明。「ウクライナ紛争を巡るバチカンとロシア政府の対話は、継続しており、両者の関係は相互尊重と建設的な精神で特徴付けられている」と強調。さらに、「クレムリンは、ウクライナ紛争に対するバチカンのバランスの取れたアプローチと、平和的解決を模索するバチカンと教皇個人の努力に深く感謝しているが、残念ながらキエフ政権はこれを拒否したている」と述べた。

 ザハロワ氏の発言は、ウクライナのゼレンスキー大統領が5月にバチカンで教皇と会見した際、ウクライナはロシアとの紛争において調停者を必要としないと述べるとともに、バチカンに対しウクライナの和平計画を支持するよう求めたことが念頭にあると思われる。

 この問題に関し、バチカン報道局は29日に、「ロシアの若者に対する教皇の発言は誤解されている。教皇には、ロシア皇帝の専制主義を称賛する意図はまったくなかった」と否定声明を出した。

 しかし、ウクライナのラテン典礼司教会議の議長であるスコマロフスキー司教は同日、「『偉大なるロシア』への言及は、残念だが、ウクライナに対して9年間も残忍で血なまぐさい戦争を繰り広げている国に対する”偉大な神話”を永続させることになる」と懸念を表明するとともに、「教皇のウクライナ国民に対する支持の姿勢に疑問の余地はない。一つの言葉を問題にするのでなく、ロシアのウクライナ軍事侵攻に対する教皇の姿勢全体を見るべきだ」とウクライナ国民に”自制”を求める一方で、今回のような”誤解”は「教皇とウクライナの間で、外交レベルと教会レベルの両方で、適切な対話が欠如していることによって引き起こされている」と指摘した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年8月31日