Pope Francis with his Jesuit confreres in Singapore (Vatican Media)
(2024.9.11 Vatican News Salvatore Cernuzio – Singapore)
11日午後、東南アジア・オセアニア4か国歴訪の最後の訪問国、シンガポールに到着された教皇フランシスコは、初日の唯一の予定として、同国で奉仕するイエズス会士たちと懇談された。
シンガポールの市街地から30分の丘の上にある聖フランシスコ・ザビエル黙想の家のホールには、年齢の異なる25人のイエズス会士たちが集まり、冒頭、イエズス会士でバチカン文化教育省次官のアントニオ・スパダロ神父があいさつ。
今回の歴訪に同行し、それぞれの地で現地のイエズス会士と教皇の出会いの感想として、「若い人も、新しく叙階された人もいました。年配の人も、病気の人もいました。そして、教皇は彼らにとても優しく接されました。出会いはいつものように1時間ほど続き、いつものように、とても温かく、兄弟の出会いのようでした。教皇はもっと話し続けたかった、とても親密で家族のような雰囲気から離れたくないようでした」と語った。
この後すぐに教皇は質問を受けられたが、話題が多岐にわたる中で、特に現在、この地で教会に課せられた課題が多くを占めた。
スパダロ師によると、「教皇は、信仰が人類の課題に関与しなければならないことを明確にされ、今日のアジアの重要性を強調された」とし、イエズス会士は、非常に特殊な課題を抱えるこの地で活動するよう求められていることが改めて確認されたという。
教皇はまた、祈りの重要性を強調され、それは「挑戦」でもあり、「社会がもたらす挑戦に、ペドロ・アルペ神父の模範に倣い、祈りの精神で常に立ち向かう」こと、とされた。スペイン出身のアルぺ神父はイエズス会日本管区の管区長を務めるなど長く日本で活動し、1965年から1983年までイエズス会のトップ、総長を務め、現在、列福の手続きが進められている。
「教皇は、この偉大な総長の人物像について何度も話され、『自分はこの偉大な総長に非常に近い存在であり、この列福と列聖に至ることを切望しています』と強調されました」とスパダロ師は述べた。
教皇と会士たちとの会話で、司牧的なテーマも多く語られ、教皇は、特に召命について、例えば召命が実際に抱えている問題―修道生活に入りたいが、時にはそれができない人々、若者がいることについて語られた。そして、スパダロ師によると、「教皇は”期待値”を下げないよう勧められ、現代の課題に対処するための『質の高い適切な養成』の重要性を強調された」という。
また会話の中で、アルペ神父のほかに、中国への偉大なイエズス会の使徒マテオ・リッチもクローズアップされたといい、スパダロ師は、「彼もまた模範とすべき人物でした。なぜなら、彼はこの地のイエズス会にとって模範となる存在だったからです」と指摘した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(2024.9.11 Vatican News Devin Watkins)
教皇フランシスコは11日昼、3日間の東ティモール訪問を終え、首都ディリの国際空港から教皇専用機でシンガポールに向けて出発。現地時間同日午後3時過ぎにチャンギ国際空港に到着された。
教皇は、東ティモールを発たれる前に、最後のイベントとして、ディリのコンベンションセンターで約3000人の若者とお会いになり、「自由、献身、友愛の価値の重要性」について語られ、「自由を、他の人々ために善を行う機会とするように」と促された。
9日に東ティモールに着かれた教皇は、カトリック教徒が人口の大半を占めるこの国で3日間を過ごされ、政府首脳はじめ各界代表や教会関係者との会見、障害児学校の訪問、そして10日にはディリ近郊のタシ・トル広場で周辺国からの信者も含めて約60満人参加のミサを捧げられた。
今回の東南アジア・オセアニア4か国歴訪の最後となるシンガポールでは、11日午後に空港での歓迎式、続いて黙想センターでイエズス会関係者と私的な集いに参加される。12日は、国会議事堂での公式の歓迎式典、大統領への表敬、首相との会見、さらに各界代表や駐在外交団との会見の後、国立競技場でミサを捧げられる。訪問最終日の13日は、カトリック系施設に高齢者と病者を訪問、カトリック・ジュニア・カレッジで諸宗教の若者たちとの出会いを持たれるのを最後に、ローマへの帰途に就かれる予定だ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(2024.9.10 Vatican News Joseph Tulloch)
東ティモール訪問中の教皇フランシスコは10日夕、東ティモールの海岸部にあるタシ・トルの広場に集まったこの国の人口のほぼ半分、約60万人と共に野外ミサを捧げられ、「子供たちは”祝福”であると同時に、しるしなのです」と語られた。
教皇はミサ中の説教の冒頭で、第一朗読に記された預言者イザヤの言葉―「我らのために子供が生まれ、我らに与えられた息子が」を取り上げられた。
「この言葉は、エルサレムの住民に向けられたものですが、当時のエルサレムは繁栄していると同時に、道徳的退廃が著しく進んでもいた。莫大な富を保有していましたが、貧しい人々は見捨てられ飢え、不信心が蔓延し、宗教的な行為は、単なる形式主義に陥っていました… このような状態に対して、預言者イザヤは、神によって開かれた『新たな地平』を宣言するために来ました。そして、神は、軍隊、武器、富の力ではなく、御子を賜物とすることによって、彼らを救おうとされるのです」と説かれた。
続けて教皇は、「世界のどこでも、子供の誕生は、喜びと祝福の輝かしい瞬間であり、善への欲求、純粋さと素朴への回帰を印象付けるもの」とされた。
そのうえで、「ここ東ティモールにこれほど多くの子供たちがいるというのは、なんと素晴らしいことでしょう。あなた方は若い国であり、あなたの国の隅々まで生命にあふれているのを、私たちは見ることができます… これは素晴らしい贈り物であると同時に、『しるし』であり、子供、小さな子供たちのために場所を作り、歓迎し、世話をすることの重要性を思い起させます」と強調された。
さらに、「子供の誕生は、自分を『小さく』することの重要性についての教訓でもあります。恐れてはなりません。神とお互いの前で自分を小さくすること、時間を捧げること、兄弟姉妹が回復し幸せになれるよう何かを犠牲にして計画を見直すことを。そして、必要なときに計画の規模を変更すること、つまり縮小するのではなく、自らの贈り物と他者の歓迎によってさらに美しくすることを、恐れてはなりません」と励まされた。
ミサの終わりに教皇は、「子供の世話をすること」の重要性を改めて強調。滞在中に通った東ティモールの村について語り、「その村の一番の魅力は、子供たちの笑顔でした」とされ、「子供たちに笑顔を教えてくれる町は、未来のある町です」と希望を語られる一方、「文化を変え、歴史を変えようとする”ワニ”に気をつけるように」と忠告された。
そして、「皆さんがこれからもたくさんの子供を産んでくださることを願っています… 子供たちの世話をしてください。しかし、この土地の記憶である年長者の世話もしてください」と願われた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(2024.9.9 Vatican News Christopher Wells)
9日午後、東ティモールに入られた教皇フランシスコは同日夕、大統領官邸で政府指導者、市民社会の代表、外交団と会見され、東ティモールの人々が「信仰に触発されて未来への選択を行う」ことを希望された。
あいさつで教皇はまず、この国が独立を目指して四半世紀以上も「暗く困難な日々」を続けた末に、「再び立ち上がることができ… 平和と自由の夜明けを迎えたこと」を神に感謝され、人々の中に「平和への道筋を見つけ、新たな発展段階の始まり、生活環境の改善、そしてこの土地の手つかずの素晴らしさと自然資源、人的資源へのあらゆるレベルでの感謝の気持ちが芽生えたこと」を称えられた。
とくに、独立闘争の「劇的な」時期に東ティモールの人々が決して希望を失わなかったことを強調され、「インドネシアの兄弟姉妹との完全な和解を達成するための熱心な努力」を称賛され、この国だけでなく、「世界のさまざまな場所での他の紛争でも、平和と浄化への願いが勝利する」よう、神に祈られた。
教皇は、この国に開かれた「新たな地平」に言及する一方で、「移民、農村部の貧困、アルコールの過剰な摂取、若者の強盗団など、この国が直面している新たな問題、解決すべき新たな課題」を指摘され、「だからこそ、私はこう言いたいのです。過去に皆さんを啓発し、支えてきた信仰が、現在と未来にインスピレーションを与え続けますように」と願われた。
そして、ポルトガル語で「Que a vossa fè seja a vossa cultura」(「あなたの信仰があなたの文化となりますように」)と励まされ、「それが福音に即した原則、プロジェクト、選択を刺激しますように」と付け加えられた。
教皇はさらに、この国が直面している困難に立ち向かうために、教育の必要性、特に、将来、国家を率いることのできる人材を育成する必要性を強調され、「『カトリック教会の社会教説』が、そのような人材育成の基盤を提供できます。それは『不可欠かつ信頼できる柱』であり、さらなる進歩の基盤であり、さまざまなアプローチが総合的な発展に役に立つかそうでないかかを判断する手段なのです」と説かれた。
あいさつの最後に教皇は、人口の65%以上が30歳未満の「東ティモールの若々しい顔」を強調され、若者たちに、「あなた方の持つ新鮮さと機知に富んだ精神から恩恵を受けるように」と呼びかけられた。また、高齢者たちに対しても、「あなたがたの経験と知恵は、素晴らしい資源。(それを生かすことに)消極的になることはもちろん、悲観的になることも許されません」と励まされた。
そして、改めて東ティモールが「大きな苦難の時代」に立ち向かった「忍耐と決意、勇敢さ」を称賛され、最近達成されたことを踏まえて、「あなたがたの国が、過去と同じように今日の困難や問題に知的かつ創造的に立ち向かうことができる、と確信する理由が私にはあります」とあいさつを締めくくられた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
(2024.9.8 Vatican News Renato Martinez)
パプアニューギニア訪問最終日の9日午前、教皇フランシスコは首都ポートモレスビーのサー・ジョン・ギーズ・スタジアムで若者たちとの出会いを持たれ、「愛と奉仕の言語」を実践するよう促された。
教皇は、準備していたスピーチ原稿を脇に置き、スタジアムに集まった推定1万人の若者たちと対話をなさった。
冒頭、教皇は「パプアの皆さんは800以上の言語を話しますが、共通言語を共有しています。それは愛と奉仕です」と強調された。
伝統衣装を着た若者たちのカラフルな歓迎ダンスに続いて、キンベ教区のジョン・ボスコ・オーラム司教が教皇に挨拶し、「家族や社会の中でキリスト教の価値観を生きること」「成長と発展の機会が限られていること」「社会、政府、さらには教会からの期待が満たされないこと」などから生じるフラストレーションなど、パプアニューギニアの若者が直面している大きな課題を指摘した。
その後、数人の若者が壇上に上がり、教皇に語りかけた。
一番目は、カトリック専門家協会のメンバーであるパトリシア・ハリクネン・コルポック氏で、「娯楽産業、ソーシャル メディア、テクノロジーの影響を強く受けた社会の中で、カトリックの信仰と道徳を証しすることの難しさ」について述べた。
次にライアン・ヴルム氏が、「家庭崩壊で幼少期に辛い経験をしたが、教会が自分の避難所になった」としたうえで、パプアニューギニアの多くの若者が同じ問題に苦しんでおり、両親が別居、あるいは不在の中での、コミュニケーションの難しさ、を説明。「このようなことが、薬物乱用、違法行為、そして希望の喪失につながることが多い」と語った。
最後に発言したのは、 Legion of Maryの会員のメンバーであるベルナデット・トゥルモニ氏で、「家族による虐待が若者に与える壊滅的な影響」を取り上げ、「被害者は『自分は愛されていない』と感じ、『大切にされていない』と感じ、それが自殺や家族を見捨てることにつながる可能性があります」と指摘。また、豊かな天然資源にもかかわらず、貧困問題を抱える、この国の現状にも言及し、そうした中で、「多くの若者が学校を中退し、麻薬取引、窃盗、物乞いに手を染めています」と訴えた。
彼らの話を聴いた教皇は、まず、「海、山、熱帯林の国、パプアニューギニアで時間を過ごせたこと」の喜びを表明。「パプアは若者でいっぱいの若い国であり、希望の笑顔で未来に立ち向かうよう求められています。皆さんの喜びと、海と空が出会う場所、夢が生まれ、課題が生まれる場所、パプアの美しさを共有してくれたことに感謝します」と述べた。そのうえで、「皆さんは、若者は未来の希望。その皆さんと会わずに、この国を去ることはできない」と強調したうえで、聖書に書かれたバベルの塔の物語を教訓として示され、「混乱と分裂につながる生き方と、神や仲間の人間との出会いを通して調和を育む生き方の二つ」のうち、後者を選び、その実践に努めるよう、励まされた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)