・「私は、ベネディクト16世の選出を阻止するために使われた」-教皇フランシスコが新刊本のインタビューで2005年教皇選挙の舞台裏明かす(Crux)

(2024.4.2  CRUX  Senior Correspondent   Elise Ann Allen

Pope Francis says he was used to try to block Benedict’s election in 2005

 ローマ-教皇フランシスコは、スペイン人記者が教皇とのインタビューをまとめた「The Successor」と題する3日発行の本の中で、2005年のベネディクト16世が選ばれた教皇選挙(コンクラーベ)についての質問に答え、自身が彼の選出を阻止する”策略”に利用されそうになったが、それに抵抗し、彼に投票し、4回目の投票で選出されたことを明らかにした。

 2005年の教皇選挙は、同年4月2日にヨハネ・パウロ2世教皇がなくなったのを受けて、4月18日から19日にかけて行われた。

 この教皇選挙でベネディクト16世が選ばれた経過について「The Successor」の章は、教皇フランシスコ(当時のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿)が、教皇選挙が終わった夜、食事に出かけたローマのアルゼンチン料理店のオーナーと友人になった経緯から始まる。

    食事を共にした司祭が、終わったばかりの教皇選挙で「ベルゴリオが教皇に選ばれそうになった」と”冗談”を言ったのをきっかけに、オーナーと友人として付き合うようになったのだが、教皇は、「あの教皇選挙で、周知の事実ですが、私は利用されたのです」と、この本の中で語った。

 選挙に参加した枢機卿たちは、選挙で起きたことについて秘密を守ることを宣誓するが、フランシスコは「教皇にはそれを語る権利があります」としたうえで、自分へ投票する動きが始まり、ある時点で、投票権を持つ115人の枢機卿のうち40人が自分を支持したことを明らかにした。

 そして、この40票は「(教皇ベネディクト16世となる)ヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿の教皇選出を阻止するのに十分でした。もし私への支持が続いていたら、彼は教皇選出に必要な3分の2の得票に達しなかったでしょうから」と教皇は説明した。

 「私はそのために利用されたわけですが、彼らはその背後で、すでに別の枢機卿を教皇候補として提案することを考えていました。具体的な候補者を誰にするか、その時点で彼らの中で合意には至らなかったが、公表寸前まで来ていました」と語った。

 そして、このような動きが、教皇選挙二日目の19日朝、第2回か第3回の投票を見て、何が起こっているかに気づいたベルゴリオは、コロンビアのダリオ・カストリヨン枢機卿(2018年逝去)のそばに行き、「 私の立候補について冗談を言わないでください。私は今まさに、『そのようなことは受け入れられません』と言おうとするところなんです。 私のことは放っておいてください」と告げた。

 そして、このことがあった後、「ラッツィンガー枢機卿が教皇に選ばれたのです。私自身も彼に投票しました。当時、教皇になることができるのは、彼一人だけでしたから」と述べ、その理由を「前任者のヨハネ・パウロ2世が非常に活動的で、外国訪問にも精力的なダイナミックな教皇で、その『革命的』な教皇職が27年続いた後、教会は、健全なバランスを保つ、過渡期の教皇を求めていたのです」と説明した。

 「もし、私のように問題を起こす人間が教皇に選ばれたら、教皇として何もできなかったでしょう。 当時は、そのようなことは不可能。ベネディクト16世は教会が求める『新しいスタイル』にぴったりでした。彼の教皇職は、バチカン内部で多くの抵抗に遭い、容易なことではありませんでしたが」と付け加えた。

 また、インタビュアーの「ベネディクトの選出に関して聖霊が何を語ったか」との問いに、フランシスコは、「聖霊のメッセージは明白でした―『ここは私が仕切る。 策を弄する余地はない』です」と答えた。

 2013年に歴史的な教皇職辞任で世界に衝撃を与えたベネディクト16世は、特に伝統的なラテン語のミサ、司祭の独身制、教会の道徳神学のさまざまな側面の問題をめぐって、教皇フランシスコの”イデオロギー的な敵対者”として風刺されることが多かった。

 フランシスコ自身は、こうした見方に繰り返し反論し、「自分は彼と良好な関係を築いており、バチカンにおいてアドバイスをいただける『賢いおじいさん』だった」と言明しているが、フランシスコはベネディクトの教皇職退任後に広がった”教皇並立”の見方を快く思わず、ベネディクトが2022年12月31日に亡くなるまで、さまざまな方法で彼のを口を封じしようとした、とも言われている。そして、フランシスコは、2023年1月5日にベネディクト16世の葬儀ミサを司式し、前任者の葬儀を主宰した史上初の教皇となった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年4月5日