・ロシアのウクライナ軍事侵略が恐るべき環境破壊を起こしている―「被造物のための祈願日」にギリシャ正教会総主教が声明

(2023.8.31 Vatican News By Lisa Zengarini)

     9月1日の「被造物のための祈願日」を前にした8月31日、ギリシャ正教会コンスタンティノープル・エキュメニカル総主教のバルトロマイ1世が声明を発表。「環境破壊」と「人権の損壊」の密接な関係を指摘し、具体的にロシアのウクライナ軍事侵略が引き起こしている「恐るべき環境破壊」を糾弾。 「あらゆる戦いの行為は、自然環境に重大な脅威をもたらす、創造物に対する戦争だ」と訴えた。

 ロシアの軍事侵略がウクライナでの恐るべき環境破壊をもたらしている

 声明で総主教は、ロシアがウクライナで続けているあらゆる種類の武器を使った攻撃が「大気、水、そして地球全体を汚染し、核兵器による大量虐殺の危険性を高め、原子力発電所からの放射能の放出、建物の爆撃による発がん性の粉塵発生、森林破壊、農地の破壊による食糧生産の減少など、ウクライナの人々と環境に計り知れない損失をもたらし、今ももたらし続けている」と強く非難し、戦闘の即時停止と「誠実な対話」の開始を、プーチン大統領を筆頭とする関係国首脳たちに改めて要求した。

 また総主教は、人権の概念が、今日では環境権を含む範囲に拡大しており、人権の尊重を求める闘いで、「気候変動、飲料水や肥沃な土壌、清潔な土壌の不足によって脅かされている現実を無視することはできない」と指摘。現在の地球環境の危機に、「何よりも、人権の観点から対処することが緊急に求められている」と訴えた。

 そして、「あらゆる側面と次元において、これらの権利は一つのものであり、分離できないことは自明。  過去数十年にわたって総主教庁が取り組んできた環境保全への取り組みに対する肯定的な反応を評価しつつ、「キリスト教世界だけでなく、他の宗教、政界、市民社会、科学、エコロジー運動や若者の間でも、同じ動きが進んでいる。自然環境の破壊は、何よりも貧しい人々に影響を与える」と強調した。

 そのうえで、環境保護に関する意識を高めるために教会が行ったすべての努力は「単なる追加的な活動ではなく、聖体祭儀の延長としての、本質的な表現と実現である」と、声明を締めくくっている。

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    9月1日の「被造物のための祈願日」は、教皇フランシスコが2015年に制定し、10月4日の祝日まで続く1か月にわたるキリスト教の「創造の季節」の始まりに位置付けられている。そして、この季節の最終日、10月4日のアッシジの聖フランシスコの祝日に、教皇は2015年に発出した環境回勅「ラウダート・シ」の第二部を発表する予定でだ。

 「被造物のための祈願日」を前にした8月31日、モンゴル訪問に立つ教皇は、X(旧ツイッター)への書き込みで、「明日から始まるこの #創造の季節 に、次のいくつもの鼓動について考えてみましょう―私たち自身の鼓動、私たちの母親や祖母の鼓動、創造の鼓動、そして神の心の鼓動―を」。 https://seasonofcreation.org

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年9月1日