・「皆に開かれた場となったいたのか」-WYDリスボン大会に参加したアフリカ系ブラジル人の若者たちが、差別的言動を受けたと訴え

Educafro activists attenting World Youth Day in Lisbon, Portugal, Aug. 1-6, 2023. (Credit: Photo courtesy Educafro.)

(2023.8.9 Crux  Contributor  Eduardo Campos Lima)

Black Brazilian group reports racist incidents during World Youth Day

 サンパウロ 発– 8月1日から6日までポルトガルのリスボンで開かれた世界青年の日(WYD)大会に(ポルトガルの植民地にされていた)ブラジルから参加した黒人のグループが帰国後の9日、大会に参加していた若者たちから人種差別的な攻撃を受けことを明らかにした。

 彼らが8月4日に撮影したビデオには、ブラジルの国旗を掲げたマルコリーノ・ビエイラ氏とすれ違う際に、白人の若者たちが猿の鳴き声を真似して、彼を揶揄している様子が映っている。

 ビエイラ氏は語る。「町の中を私たちのグループと歩いていたのですが、道に迷い、グループからはぐれてしまった。気が付くと、白人の若者たちに囲まれており、私を見て笑い、猿の鳴き声を真似したのです。スペインでの試合中に様々な人種差別的攻撃を受けたブラジルの黒人サッカー選手、ビニ・ジュニアとミリトンの名前を叫ぶ人もいました」。

 「私はポルトガル語以外の言語を話せないので、手振りで、彼らの振る舞いが何を意味するのか尋ねようとしました。すると、 彼らはすぐに私を取り囲みました。身の危険を感じ、近くの店に逃げ込んだのです」。 

 「このことを私は警察に届けようとしました。WYDのボランティアに相談しましたが、警察に届けるのを助けようとはしてくれなかった。むしろ、届けるのを思いとどまらせようとしている、と感じました。警察も届を受け付けてくれはしましたが、ビデオのコピーを提出することは求められず、この問題がどのように扱われたのか分からないままです」。

 29歳のビエイラ氏は、ブラジルがポルトガルの植民地だった時代にアフリカから奴隷として連れて来られ、逃亡した人々の共同体の流れをくむ”quilombola community”のメンバー。WTDリスボン大会には、フランシスコ会修道士のデビッド・サントス神父が設立したブラジルでの黒人の教育の権利を求める非政府組織Educafroの活動家たちと参加した。

 両親はカトリック教徒だが、自身はアフリカの伝統宗教を基礎にしたブラジルの民間信仰、Candombleの信奉者だ。リスボン滞在中は、郊外の小教区で受け入れられ、自分の人生と霊性について語ることができた。「ほとんどが、地元の人たちで、私の話を、敬意を持って聴いてくれました。彼らに歓迎されていると感じました」と語るビエイラ氏だが、大会そのものの場では、外国のグループから、たくさんの敵意にさらされた、という。

 ブラジルからの彼のグループは、 quilombolasのメンバーや黒人活動家、性同一障害者などで構成されていたが、メンバーの医師、ギルマー・サントス氏によると、大会初日の1日、グループが欧州の参加者たちに取り囲まれ、『泥棒』と罵声を浴びせられた。「その場所はとても混雑していて、歩くのに苦労していたのですが、突然、『お前たちの中にスリがいる』と叫んだのです。集団暴行を受けるのでは、と不安を感じました」。性同一障害の友人も、大会中、毎日のように嫌がらせを受けていた。「ある時、若い男性のグループがそばに来て、『お前は男だ。ここには居場所がないぞ』と言って、暴力を振るいそうになり、逃げざるを得なかった」という。 
 

 5日に、リスボンのテージョ公園で教皇フランシスコが主宰された「世界青年の日(WYD)」大会の夕の祈りの後、徹夜で過ごすことになった時にも問題が起きた。

  広場はさまざまな各グループごとに区画が割り当てられ、その区画にいることが求められたが、会場は多くの参加者で非常に混雑しており、彼らのグループは一つにまとまれず、バラバラになってしまった。

 「それで、私たちが欧州から来た若者たちのグループの近くで、横たわっていると、彼らは露骨に不快感を示し、私たちが割り当てられた場所はどこなのか聞いてきました。まわりには他の地域から来た人たちもたくさんいましたが、私たちだけが、立ち退くよう求められた。彼らはWYDのボランティアを呼び、移動するよう強制され、割り当てられた区画がとても遠かったので、やむなく、公園近くの歩道で寝ることにした」という。

  ビエイラ氏はリスボン大会を振り返って、「私たちは、WYD 大会に参加した全員と共に、自分たちの大会の主人公になれると期待して参加しました。でも、大会は、白人主体のイベントでした。カトリック教会は、人種差別に対する教皇フランシスコの思いを受け止め、それを実行する必要があります」と述べた。

 また、グループのメンバーたちがこのような、様々な不快の経験をしたことについて、サントス神父は「カトリック教会が、すべての人を歓迎したいのであれば、多くの内部変革が必要です。福音宣教とは、世界中のあらゆる差別と闘うこと、と理解すべきだ。(ブラジルについて言えば)カトリック校に入学する際の民族差別をなくすことや、黒人や先住民の司教や司祭を増やすことなど、広範な行動が求められます。初聖体や堅信の秘跡の際に、若い信徒たちに差別はいけないことを教えることも必要です」と述べたうえで、WYD大会で人種差別的な言動をした若者たちに責任を問らせる措置を求め、「彼らの身元を特定し、侮辱したブラジルの若者たちに謝罪させ、司教も人種差別を罪として非難する書簡を出す必要があります」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2023年8月12日