(2020.9.1 カトリック・あい)
イタリアの司教団が多年にわたって策定を進めてきた新しいイタリア語ミサ典書が完成し、8月28日、教皇フランシスコに奉呈した。
バチカンの公式発表では、教皇が直接、イタリアの司教団から奉呈を受けたことだけで、新ミサ典書の内容は明らかにされていないが、複数のカトリック系のメディアが1日までに伝えたところによると、注目されるのは、以前から、日本語を含む各国語の訳の欠陥が指摘され、教皇ご自身も各国語の翻訳を改めるよう示唆されていた、カトリック教会で最も重要な祈り、「主の祈り」に修正が加えられたことだ。
その箇所は、現在は、イタリア語で「e non ci indurre in tentazione 」(英語では「lead us not into temptation」、日本語では
「わたしたちを誘惑におちいらせず」)とされているが、これを「 non abbandonarci alla tentazion」(英語「do not abandon us to temptation」、日本語試訳「誘惑に陥ろうとする私たちを見放さず」)に改める。
また、「栄光の賛歌」についても、現行の「[pace in terra agli uomini di buona volontà」(英語では「peace on earth to those people of good will」日本語では「地には善意の人に平和あれ」)を、「pace in terra agli uomini, amati dal Signore」(英語で「“peace on earth peace to those people, loved by God」、日本語試訳「地には主に愛された人に平和」)に改める。
イタリア司教協議会のクラウディオ・マニアゴ会長は、これらの語句の修正について「それらの言葉の持つ重要性について理解が不足していたことを意味します」と説明している。
新ミサ典書は、今後数週間のうちに国内の全教区、小教区に配布され、来年の復活節から使用が義務付けられるが、各教会では新ミサ典書を入手次第、司祭の判断で使用を開始してよい、という。
教皇ご自身が通常のミサでお使いになるのはイタリア語のミサ典書であり、その改定は、世界の教会のミサ典書改定を促すものとなりそうだ。
Pope Francis looks through the new edition of the Roman Missal in Italian Aug. 28, 2020, during a meeting with officials of the Italian bishops’ conference in the library of the Apostolic Palace at the Vatican. (Credit: CNS photo/Vatican Media.)
教皇フランシスコは2017年12月に、イタリアのテレビ放送TV2000のインタビューで、「主の祈り」にある「non ci indurre in tentazione」 (英語公式訳はこの直訳の「lead us not into temptation」 、日本語公式訳は「わたしたちを誘惑におちいらせず」)は「もっとよい表現」にすべきだ、との考えを明らかにしている。
教皇はこのインタビューで、「この翻訳の言葉はよくありません」とされ、その理由を「人々を誘惑に❝lead”(導く、おちいらせる)のは神ではなく、サタンであるからです」とし、「この表現は変えるべきです」と語った。
そして「(誘惑に)陥るのは私。私を誘惑に陥らせるのは彼(神)ではありません。父親は自分の子供にそのようなことをしない。すぐさま立ち直るように助けてくれます」と述べ、さらに「私たちを誘惑に導くのはサタン。それがサタンの役回りなのです」と強調しされた。
この箇所をどのように改めるべきかについては、より正確に、こうした神学的な見方に従って、「don’t let me fall into temptation」とするのが適当、とし、フランスの司教団がこのほど主の祈りを見直し、英訳にするとこれまで「“Do not submit us to temptation」としていたのを「Do not let us into temptation」と改めたのを妥当との判断を示した。
現在の主の祈りの言葉は、ギリシャ語訳をラテン語に翻訳したものをもとにしており、ギリシャ訳のもとは、イエスが実際に語られていたアラム語(ヘブライ語の古語)から来ている。教皇庁立グレゴリアン大学のマッシモ・グリリ教授は「ギリシャ語のこの箇所は『eisenenkês』で、文字通り訳すと『don’t take us inside』となると言い、そのように訳し直すべきだ、としている。
教皇フランシスコはこのほど、教会法の部分改正を実施、各国語の典礼文の表現について、バチカンから現地の司教団に権限の比重を移す決定をしたが、従来のようなラテン語訳からの文字通りの翻訳を続けるか、それともギリシャ語やアラム語の原本を重視すべきかの議論は続いている。
なお、このような教皇フランシスコの意向を受けて、日本の司教団が、「主の祈り」などの訳語を見直す作業に入っているかどうかは、明らかでない。
(2020.8.3 Crux ROME BUREAU CHIEF Inés San Martín)

A screen-caption of the abuse prevention seminar organized via Zoom by the center for child protection of Mexico´s Catholic University (CEPROME) and the Vatican Safeguarding Taskforce, on July 31, 2020. (Credit: CEPROME.)
アルゼンチン・ロサリオ発–新型コロナウイルスの世界的な大感染が続く中で、カトリック教会では公開ミサの中止など様々な影響を受けているが、ラテンアメリカでは、聖職者による性的虐待防止のための取り組みなど、いくつかの教会活動は続けられている。
7月31日には、メキシコのカトリック大学児童保護センター(CEPROME)とバチカンの安全防護タスクホースが共催し、ラテンアメリカ司教協議会の後援を受けた、聖職者による性的虐待への対応についての”バーチャル会議”が開かれ、Zoom やFacebookを使って”が約2000人の男女信徒、司祭、司教、修道士が参加して、率直な意見交換が行われた。
会議は、先月バチカンが発行した、聖職者による性的虐待の訴えに対する対応に関する指針についての「学際的考察」もテーマとなり、まず、4人のパネリストによる基調講演から始まった。
*イエスの「真理はあなた方を自由にする」という言葉を信じているのか?
バチカンの聖職者による性的虐待を専門に扱っているドイツ人イエズス会士のハンス・ゾルナー神父は講演で、「私たちは教会の中で、しばしばヨハネ福音書8章32節にあるイエスの言葉ー真理はあなたがたを自由にするーを本当に信じていないようです」と指摘。
「そうだとしたら、最も傷つきやすい人たちーイエスが側に来なさいと言われた人たちーが犯罪で受けた痛みと苦しみを認識するようになった時、人々がなぜ恐怖に陥るのかを、どのように説明するのですか?」と問いかけた。
また、教会に対して、過ちを犯したことを認め、法を行う勇気をもつよう求めるとともに、ほぼ全員が性的虐待問題の関係者であるこの会議の参加者に対して、教会に欠けているものを補ってくれる外部の専門家の協力を得ることを強く勧めた。
*口だけで「信頼して」と言っても信頼回復は無理ー虐待被害者を案内役に「有言実行」
そして、「教会は多くのところで、人々の信頼を失っている。信用と信頼は、『私を信頼してください』と言うだけでは取り戻せない。信頼回復は『有言実行』でしかできません」と強調した。
この意見には他の3人のパネリストも同感し、バチカンの安全保護タスクフォースのメンバー、マルタの一般信徒、アンドリュー・アゾパルディ氏も「虐待防止の各種組織・団体は、虐待被害者によって案内される必要があります。なぜなら、彼らの積極的な関与が、教会を安全な場所にするためのカギだからです」と述べ、「この世界で、教会は良い場を持っていますが、性的虐待に断固とした姿勢を見せなければ、信頼を回復することは絶対にできない」と強調した。
*多くの性的虐待被害者は、信仰を失い、教会に「正義」を期待していない
チリの女性信徒、リア・ホセフィナ・マルチネス・ベルナル氏は、同国の司教協議会が2011年に作った「性的虐待防止・虐待被害者対策全国会議」のメンバーで、悪名高いフェルナンド・カラディマ元神父の被害者3人が設立した非政府組織Fundacion para la Confianzaのメンバーとして活動しているが、彼女も虐待被害者の役割を強調し、性的虐待に対処する”cornerstone act”が、これまでの”沈黙”を破り、虐待被害を明るみ出したことを説明。
「多くの被害者が、虐待されたことで信仰を失い、教会が自分たちに正義を示してくれるという期待も持っていません。でも、ほとんどの人には、国の法律か教会法で訴えを起こす動機があります。『自分たちに起きたことを、二度と繰り返してはならない』という気持ちです」と述べ、教会にとって重要なのは、加害者側の動機を解明するだけでなく、性的虐待を起こさせた環境を啓明することだ、と強調した。
また、「熱狂的愛国主義と聖職者主義の共存は、健全な環境ー自己批判ができ、危険を伴わずに異議を唱えることができる環境-を作るのに何の助けにもなりません」と語り、「『神のご意志』という名の下に、(教会の当局者たちは)信徒たちを欺きました… 神聖な場所で、彼らは若者の信頼を裏切りました。十字架を背景にして、名乗り出た被害者を信用せず、あるいは『適切な措置を取る』と約束しながら、何もしなかったのです」と批判。
*教会は「隠ぺい」せず、真実を明らかにすべきだ
さらに「教会は、実際に何が起きたのか、何がそのようなことを許したのかについて、隠ぺいするのでなく、真実を明らかにするようにすべきです。黙り込むのではなく、発言する自由をもち、被害者のことを忘れるのではなく、いつも頭に入れ、無難に済ますのではなく、正義を行う必要があります」と訴えた。
そして、「では、私たち一般信徒の役目はなんでしょうか?召集を受けるまで、待っているのですか?それとも、目を覚まし、意見を述べ、”群れ”として行動するのをやめ、問題に関わろうとしますか? たとえ、そうした努力が、教会の官僚組織の壁にぶつかり、『これが今の教会の現実なのだ』と感じ、無駄と思われるかもしれないとしても」と問いかけた。
4人の講師による約2時間にわたる基調講演に続く質疑応答で、マルチネス氏には「聖職者による性的虐待とその隠ぺいで大混乱となったチリの教会は、教皇フランシスコが二人の聖職者ーチャールズ・シクルナ大司教とジョルディ・ベルトメウ師ー を派遣して現地調査がされた後、どうなったのか」という質問があった。これに対して、彼女は、バチカンの調査が行われた後、司教たちの3分の一が交替したものの、どうして交替したのかの説明がなかった、問題があった司教たちの辞表は教皇によって受理されたが、なぜ受理されたのか公式の説明はなかった、と指摘した。
*バチカンの性的虐待対応の指針の意義は、教会のメンタリティの変革を求めたこと
二人の高位聖職者はいずれも、このバーチャル会議に出席しており、ベルトメウ神父は、先にバチカンが発表した性的虐待への対処についての指針の説明に多くの時間をかけ、指針を出したこと自体は評価しながら、「段落が長すぎる」「質疑に対する答が一般的すぎる」などの欠点を指摘、「早晩、改訂版を出す」必要がある、と述べた。
ただ、今回の指針は必要とされていたものであり、バチカンの教理省の聖職者による性的虐待の訴えの窓口担当者として、世界の司教たちからの問い合わせの多くに対する答えがまとめられている、とその意義も強調し、「指針は斬新である、とも言えます。それは、教会が、虐待被害者にとって安全な場所、司祭、信徒たちが健全な関係をもつ場所、子供たちや若者にとって安全な場所になるような、メンタリティの変革の必要性を明らかにしたからです」と説明した。
メキシコ大学の受け入れセンターの責任者であるダニエル・ポルティーヨ神父は、聖職者による性的虐待問題でメディアが果たした役割を高く評価し、「新聞各紙の一面に性的虐待の問題が掲載されたことで、教会が、神が私たちに求められておられることをしていなかったこと、私たちがキリスト教徒としてすべきことをしなかったこと、福音とは正反対のことがなされるのを許してきたこと、が明るみに出されました」と語った。
*変革には、「真実」を語る”預言者”が必要
そして「このような不祥事について、教会の信徒として、私たちは、被害者の痛みと、私たちの教会のメンバーたちの犯罪に思いをいたすだけでなく、自分たち自身が次世代の信徒たちにもっと良い場をつくるように強く求められていることを認識する必要があります… そのためには預言者が必要です。でも『預言』は『未来を語ること』ではない。『真実を話すこと』です」と述べた。
さらに、「率直に言って、信徒としての私たちに『素晴らしい物語』が待っているかどうかは、分かりません… もしもある日、教会内部の怠慢と免責が過去の歴史の一部となるとしても、それでも、とても重要なのは、私たちを聖霊に導いていただくこと、教会を曇らせている性的言虐待の風潮が消え去るように、私たちの努力を傾けること。そうすれば、それが教会の未来となるでしょう」と強調した。
( 2020.7.29 Crux MANAGING EDITOR Charles Collins)

Sam Brownback, U.S. ambassador-at-large for international religious freedom, speaks during a news conference at the State Department in Washington June 10, 2020. (Credit: Andrew Harnik, Pool via Reuters via CNS.)
バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意が9月下旬に更新期限を迎えるのを前に、中国政府の支援を受けたハッカーがバチカンと香港の教会関係組織を標的にしたサイバー攻撃を仕掛けたとニューヨークタイムス(https://www.nytimes.com/2020/07/28/us/politics/china-vatican-hack.html)(https://www.nytimes.com/aponline/2020/07/29/world/asia/ap-vatican-china-hacking.htmlなどで報じられている。
これについて、米国のサム・ブラウンバック「国際信教の自由」担当特使が26日、Cruxとのインタビューに応じ、「バチカンがこのことをよく見て、彼ら(注:中国政府・共産党)が(注:暫定合意の見直しについて)交渉しようとしている中身が何なのかを知るように、心から希望する」と警告した。
特使は「仮に私がバチカンの高官で、これが交渉の相手で、私と交渉するやり方だ、と分かれば、私をスパイしている人々をどうしたら信頼して交渉を続けられるかについて、立ち止まってじっくり考えるのを余儀なくされるだろう」と、交渉を中断して、期限延長の是非も含めて暫定合意そのものについて再考の期間を持つよう、暗にバチカンに求めた。
ブラウンバック氏は共和党きっての保守派で、2002年にカトリックに改宗。カンザス州知事、連邦下院議員、上院議員を経て、2017年にトランプ大統領から「国際信教の自由」担当大使に指名された。中国や北朝鮮の人権侵害、宗教弾圧についてはかねてから強く批判しており、中国政府は入国禁止で”報復”しているが、これについて「信教の自由の侵害と戦う私にとっての”名誉ある勲章”として受け取ることにする」と述べた。
中国での宗教に対する迫害は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人イスラム教徒の扱いに対する国際的な批判が強まって以来、情報が外部に漏れるのが従来以上に厳しく監視されるようになっているが、現在、推定で100万人を超えるウイグル人が強制収容所に収容されているとされ、イスラム教の信仰と文化を捨て、共産党に忠誠を誓うよう強制されている、と言われる。
さらに、ウイグル族の人々に(注:人口を減らすための)厳格な産児制限を課しているとして非難されており、米国の「国際信教の自由委員会」が、このような中国当局の行為は「国際法上の『genocide(大量虐殺)』に相当する可能性がある」として、国連と米政府に調査を要求している。
これについて、特使は「genocideという用語を使う判断は国務省がするものだが、用語はともかく、我々米国政府は、中国における信教の自由と人権の著しい侵害に対して、断固とした姿勢で臨んでおり、これからもそうした姿勢を続ける… 米国政府は、新疆ウイグル自治区における人権侵害に対して、世界のどの国よりも厳しい措置をとってきたが、このような中国の行為は、この地域に留まらない。中国は、こうした政策と体制を世界中で進める意図を持っている」と言明。
「宗教的迫害の対象は、ウイグル人イスラム教徒にとどまらず、キリスト教徒、仏教徒、法輪功の信徒などに広がり、多くの信徒を苦しめている… あらゆる宗教に対する”全面攻撃”を仕掛けている、と言っていい」と強く批判した。
また、香港には、英国からの返還の時点で一国二制度で市民の自由が保障されたにもかかわらず、中国政府は先月末、「香港国家安全維持法」を導入し、中国本土からの直轄規制を強行したが、これについて特使は「宗教に対する重大な脅威。返還の際の英国との取り決めに対する違反行為だ」と中国・共産党と強く非難。「今の中国は、冷戦時代のソ連が書いた演劇の脚本どおりに動いている… 支配を追求し、国民を支配し、支配を海外にまで及ぼそうとしているのです」と
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。
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神学者のアンヌ・スーパ氏(ピンク色のベストの女性)とバチカン大使に請願書を出した “All Apostles” の7人の女性たち (Photo by CORINNE SIMON/CIRIC)
「私たちは”違反行為”をせざるを得なくさせられているのです」ーこれは、今年5月、フランスのリヨン大司教候補に手を挙げたカトリック神学者のアンヌ・スーパ氏の言葉。
そして7月22日、さらに7人の”All Apostles”の女性たちが、現在は男性しか認められない、叙階を必要とする教会での職務に就くことを求める請願書を、フランス駐在のバチカン大使に提出した。
彼女たちの 思い切った行動は、様々な背景を持つ女性たちの象徴的な、強い意思表示であり、ハチの巣をつつくような行為だった。7人のうち何人かは、女性司祭を認めるよう積極的な運動をしており、その他の人は、今回の誓願で教会における女性の役割に関する議論を加速させることを目的にしている。
スーパ氏は「これまでの歴史で、女性は、何よりも男性に与えられているのと同じ権利を要求するで、自分たちの場を得るのを常としてきました。そうして、自分たち自身のスキームを創出してきたのです… それは長い目で見て、男性と同じ役職を手にしたい、という事を意味しません」と語る。
7人のうちの1人、女性助祭になることを希望したマリー=オートン・テポ氏は「私は自分が最適の”候補者”でないことを知っています。それでも、『自分たちには、失うものが多すぎて(注:手を上げることが)できません』と私に訴えた女性たちすべてのために、思い切ったのです」と理由を説明した。
「女性を(注:司牧者として)聖別すべきではない、と言われていますが、これは非常におかしな主張です… そのようにして、教会によって脇に置かれ、一生を”補佐役”に甘んじさせられてきた女性たちのために、私たちは何をしたらいいのですか」と問いかける。
*「私たちは教会で自己表現できる手段が欲しい!」
こうした女性たちの主張、行動について、イエズス会士の神学者、フランソワ・ユーヴェ師はこう評価する。「スーパ氏は、女性を司祭にすることが正しい答えではない、ということをよく知っています。こうした行動に出ることで、(注:教会における女性の役割の抜本的向上についての)議論を公けにすることに貢献しています」。そして「教会における女性の役割を些細な問題として扱うことはできません。多くの人が関わるべき問題です。たとえ、それが最初は苛立ちを起こすことがあるとしても、です」と強調した。
いずれにしても、今回のようなやり方は、教会における女性の役割の問題が前進することを希望する女性たちの間でさえも、疑問の声が出てはいる。
フランス西部にある教会に所属する一般信徒、アドリエンヌ・ドゥ・バルモン氏は「このようなやり方に完全に同意はしていませんが、歓迎しています… でも、長い間、教会で活動している経験からしても、女性の役割について議論を始めるための他の方法を、教会が提供するかどうか、定かではありません」とし、「あまり挑発的な態度をとると、逆効果になる」ことを畏れている。教会に対する彼女の願いは「私たちが別のやり方で自分を表現する方法」を示すことだ。
これに近い意見を持つのは、4人の子どもを持つ未亡人のブリジット・ジャンジャン氏だ。聖イグナチオ・ロヨラの霊性に基づく世界的ない一般信徒のの組織、 Christian Life Communityのフランス支部長を務めている。「私は今回の女性たちの行動にまったく反対しませんが、これが教会の関係者に聞く耳を持たせる最善の方法がどうか、分からない」と言う。
例えば、昨年、ドイツの信徒たちが、「小教区でストライキ」をすることで、自分たちの要求に関心を引こうとしたことがあったが、「そうやって対立を引き起こすよりも、ほかに主張を通す方法があるのではないか」とし、「逆ピラミッドに従った、下から上に向かう一般信徒の実際の表現」を提案している。
*内側から変えていく
これは、8月1日にスイス・フライブルク州のドイツ語圏の教会代表となることが予定されているマリアンヌ・ポール=ヘンゼンがたどっている道だ。「私は女性として、教会にとどまり、内側から変えていく道を選びました… 忍耐が必要です。途中経過があって、徐々に変えていくのです」。それでも、スーパ氏のとった行動は、「教会の位階制構造に揺さぶりをかける、素晴らしいことだと思います」と評価している。
一方で、スーパ氏や7人の女性のやり方に批判的な女性もいる。
「あの人たちは、真実よりも論争に関心があるに違いありません。そして、キリスト教的な行動様式をほんのわずかしか持っていない」とリヨン大司教区から終生独身として教会奉仕する聖別を受けているサンドラ・ビュロー氏は言う。フランスの日刊紙 Le Figaroにスーパ氏のリヨン大司教への”立候補”を受けて投稿し、「教区の多くの女性は、テクニックだけでなく、聖霊に満たされた生活を求める責任を果たすように求められています。彼女たちを二流の協力者にすることではありません」と反対の立場を明確にした。
だが、いずれにしても、”すべての使徒たち”の活動がメディアの注目を引いたことは、形式と実体の両面での議論を前に進めるに違いない。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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5月1日のドイツ中西部、ケーヴェラー(ドイツ中西部、オランダ国境沿いの町、カトリックの巡礼地として知られ、毎年80万人を超える巡礼者が訪れる)のカトリック教会で (FABIAN STRAUCH / ZUMA PRESS / REA)
プロテスタントの父とカトリックからプロテスタントに改宗した母の間に生まれたララは、信仰の中で育てられたが、あまり厳格に教えを受けることはなかった。「私はキリスト教に一連の価値観があると思います。神は私にとって心強い存在です。だからといって、教会での祭儀に出ることで信仰に敬意を払う必要があるとは感じていません」。
これが、この30歳のベルリンに住む女性が、信徒名簿から籍を抜き、所属教会からすぐにも離れたい、と考えている理由だ。そして、彼女のように、教会に背を向けるドイツ人が急速に増えている。
ドイツ・カトリック司教協議会とドイツ福音教会が6月26日に発表した年次統計によると、2019年に教会の信徒名簿から籍を抜いた信徒は、カトリックが27万2771人、プロテスタントが27万人で、合わせて54万人を超えた。前年に比べて24パーセントも増えている。記録的な増え方だ。
司教協議会のイエズス会士、ハンス・ランゲンドルファー事務局長は「この数字は私をゾッとさせ、心配させます。なぜなら、(注:教会を離れて行く人たちは)人の自由と神との絆について語る私たちのメッセージを、もはや受け取らないからです」と述べ、「こうした絆の喪失を理解するために、公明正大で率直な原因分析をする必要があります」と語った。
*社会の世俗化と個人主義の高まり
信徒たちの教会離れについては様々なことが書かれてきたが、いくつかの理由がある。
人口の高齢化に加えて、信徒の教会への信頼は、過去10年間、教会内部の金銭スキャンダルと聖職者による性的虐待によって、大きく揺さぶられてきた。教会改革を求める人々は、女性の教会における役割の向上、同性愛者の受け入れについての教会の保守的姿勢によって、意欲を失った。
だが、ドイツ福音教会の理事を務めるステファニー・スプリンゲル女史は、「教会を離れる信徒の規模の大きさは、そのような説明だけでは説明しきれないことを示している… 社会の世俗化と個人主義の増大が関係している、と思います。参加人数の減少は、スポーツでも、人道支援の分野でも、大きな流れになっています」と語り、さらに、消費主義の蔓延にも原因がある、と指摘。
「昨年のこと、地中海で移民たちの為に救援船に共同出資をしたのですが、私たちの教会の信徒の中に、これにあからさまに異議を唱え、『教会から出たい』と言う人が現れたのです。以前は、自分は賛成でなくても、教会の決定には満足していたのですが…」と、信徒の間に出てきた態度の変化を悲しんだ。
*教会離れは宗教税の納税義務の放棄に
財政的な問題も見過ごせない。ドイツには「教会税」というものがあり、洗礼を受けたすべての人に納税義務が課せられ、所得税の8ないし9%を占めている。つまり、教会から籍を抜く、ということは、教会税の納税を拒否することを意味するのだ。
インターネットで情報サイトを運営するRenéMeintzの調査によると、調査に応じた人の41㌫が「教会税を納めないために、教会から籍を抜いた」と答えた。とくに若者に目立っている、という。
こうした結果について、フライブルグ大学で教会法を専門にするゲオルグ・バイエル教授は「教会はもはや、人々の問いかけに答えることができず、彼らの生活に意味を与えることがでなくなっているのです」と説明し、さらに、「自分が属していると思えなくなった教会に金を払い続けることに、疑問を抱いている」と指摘した。
冒頭に登場したララは、これまで月々、40ユーロ(約5000円)から50ユーロ(約6000円)の教会税を払ってきたが、「教会税を払っていなかったら、(注:納税義務のない)子供の時のように、消極的な信徒のままだったでしょう」と語る。
*教会への信頼回復へ全関係者挙げて「シノドスの旅」を始めたが…
だが、ドイツのカトリック教会あるいは福音派教会が教会税という財源を放棄するつもりがないのは、疑いの余地がない。ランゲンドルファー事務局長は「教会税は、教会収入と相関関係にあるため、経済的に適切な税制であり、とても重要なものです。なぜなら、そのような財源がある為に、私たちは十分な司牧ができ、若者たちや国際的な連帯の活動にも支援の手を差し伸べることができるから」と、教会活動にとっての教会税の意味を強調した。
そして、教会が信徒たちの信頼を取り戻すことのできる唯一の方法は、信徒1人ひとりとの個人的な絆を刷新することだ、と指摘し、「人々との関係を深め、福音のメッセージを伝えようとする際に、教皇フランシスコがなさるように、私たちに求められているのは、自分の信仰についてもっと話し、実生活でそれを実践すること」と自戒を込めて語っている。そして、このことこそ、ドイツのカトリック教会が昨年12月から取り組みを始めた「シノドスの旅」ー全国230人の司教たち、教会の代表者たち、そして一般信徒たちが一緒になってカトリックを刷新しようとする運動ーの目的なのだ。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
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